説明

蓄熱システムおよびその蓄熱システムを備えた構造物

【課題】蓄熱効率に優れた蓄熱システムを提供すること。
【解決手段】媒体が入出可能な上部流通口と下部流通口とが鉛直方向に離間して設けられ、内部に温度が異なる前記媒体からなる温度成層が形成される蓄熱槽と、前記蓄熱槽に供給される前記媒体を設定温度とする熱源機器と、前記蓄熱槽から供給される熱を利用する熱利用手段と、前記蓄熱槽内の前記上部流通口と前記下部流通口の間の位置に配置された除去手段とを備え、前記除去手段は、前記蓄熱槽内に存在する前記媒体であって、前記設定温度とされた設定温度媒体を除く設定温度外媒体を選択的に除去する蓄熱システムとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄熱システムおよびその蓄熱システムを備えた構造物に関し、より詳細には、隣接する温度成層を良好に分離できる蓄熱効率に優れた蓄熱システムと、前記蓄熱システムを備えたエネルギーを有効に利用できる構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、集合住宅やビルなどの構造物に備えられ、空調などに利用される熱エネルギーを貯蔵する様々な蓄熱システムが提案されている。熱エネルギーを効率よく蓄熱できる蓄熱システムとしては、温度成層型の蓄熱システムが挙げられる。温度成層型の蓄熱システムは、蓄熱に使用する媒体の温度と密度の関係を利用して、蓄熱槽内に鉛直方向に温度成層を形成させて蓄熱するものであり、蓄熱槽内の温度レベルが均一化してしまうことによる熱効率の低下を防止することができる。
【0003】
しかしながら、従来の温度成層型の蓄熱システムでは、高温層の水と低温層の水とが混合し、隣接する温度成層間に混合域が形成されて、温度成層が乱されることにより、熱効率が低下してしまうことが問題となっている。
この問題を解決する方法として、高温層の水と低温層の水とが混合されるのを防ぐことができるS字型連通管を利用して、蓄熱槽の流通口を形成する方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、S字型連通管を利用しても、隣接する温度成層間に混合域が形成されてしまう場合があり、熱効率を向上させる効果が十分に得られなかった。また、S字型連通管を利用しても、熱効率を向上させる効果が十分に得られないため、蓄熱槽の全ての流通口を、S字型連通管を利用して形成する必要があった。このため、蓄熱槽が複数の槽からなる場合には、使用するS字型連通管の数が非常に多くなり、蓄熱システムの設置や管理に要する手間や費用も非常に多くなってしまうことが問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、混合域に起因する温度成層の乱れを抑止することができ、隣接する温度成層を良好に分離できる蓄熱効率に優れた蓄熱システムを提供することを目的としている。
また、上記の蓄熱システムを備えたエネルギーを有効に利用できる構造物を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の蓄熱システムは、媒体が入出可能な上部流通口と下部流通口とが鉛直方向に離間して設けられ、内部に温度が異なる前記媒体からなる温度成層が形成される蓄熱槽と、前記蓄熱槽に供給される前記媒体を設定温度とする熱源機器と、前記蓄熱槽から供給される熱を利用する熱利用手段と、前記蓄熱槽内の前記上部流通口と前記下部流通口の間の位置に配置された除去手段とを備え、前記除去手段は、前記蓄熱槽内に存在する前記媒体であって、前記設定温度とされた設定温度媒体を除く設定温度外媒体を選択的に除去することを特徴とする。
本明細書において「設定温度」とは、蓄熱槽に畜冷または蓄熱させる場合に予め設定される温度であり、蓄熱槽に供給される媒体に熱源機器が与える温度である。
【0007】
このような蓄熱システムにおいては、媒体が貯留されている蓄熱槽に設定温度とされた設定温度媒体が熱源機器から供給されると、設定温度媒体と蓄熱槽に貯留されていた媒体である設定温度外媒体とによって温度成層が形成される。また、蓄熱槽に設定温度媒体が流入されることにより、蓄熱槽に貯留されていた設定温度外媒体からなる温度成層が乱されて、蓄熱槽に流入された設定温度媒体と蓄熱槽に貯留されていた設定温度外媒体とが混合され、混合媒体が形成される。混合媒体は、設定温度外媒体であり、熱源機器からの設定温度媒体の供給に伴って、下部流通口から上部流通口に向かって、または上部流通口から下部流通口に向かって、設定温度媒体に押し出されるように蓄熱槽内を移動する。
【0008】
上記の蓄熱システムによれば、蓄熱槽に設定温度媒体の流入を開始してから、蓄熱槽内の除去手段が配置された位置に設定温度媒体からなる温度成層が到着するまでの間、蓄熱槽内の設定温度外媒体、すなわち、蓄熱槽に貯留されていた媒体と混合媒体とからなる設定温度外媒体は、除去手段によって選択的に除去される。したがって、混合媒体に起因する温度成層の乱れを抑止することができ、熱効率を向上させることができる。
【0009】
また、上記の蓄熱システムにおいて、蓄熱槽は、複数の槽からなり、複数の槽は、媒体が流入される槽から媒体が流出する槽まで直列に連結されているものであってもよい。
本明細書において「直列に連結された」とは、連通管を適切な位置に設ける方法などにより各槽間が連結され、蓄熱槽内に鉛直方向に形成される温度成層を保ったまま、下部流通口から上部流通口に向かって、または上部流通口から下部流通口に向かって、媒体が各層間を移動可能とされていることを意味する。
【0010】
このような蓄熱システムとすることで、蓄熱槽の高さを鉛直方向に高くすることなく蓄熱槽の容量を増大させることができ、しかも、蓄熱槽の高さを鉛直方向に高くした場合と同様に温度成層が形成される蓄熱システムとすることができる。このため、構造物に蓄熱システムを設置する際に、蓄熱槽を設ける場所を容易に確保することができる。例えば、構造物の基礎部の空間などを利用して蓄熱槽を設けることが可能である。
また、上記の蓄熱システムにおいては、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかを、蓄熱槽に貯留される媒体の温度と熱利用手段によって利用される熱の温度との関係によって決定することができる。また、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかは、季節や用途などに応じて選択することができ、適宜変更することができる。
【0011】
また、蓄熱槽が複数の槽からなる蓄熱システムにおいては、媒体が流入される槽に、除去手段が配置されているものとすることができる。
蓄熱槽内に形成された混合媒体は、予め決定された媒体が流入される槽への設定温度媒体の供給に伴って、媒体が流入される槽から媒体が流出する槽に向かって、蓄熱槽に流入された設定温度媒体に押し出されるように蓄熱槽内を移動しながら増大し、蓄熱槽内が流入された設定温度媒体で満たされると同時に、媒体が流出する槽から流出する。
上記の蓄熱システムにおいては、媒体が流入される槽に除去手段が配置されているので、混合媒体が形成されてから短時間のうちに混合媒体を除去することができる。このため、蓄熱槽内の移動に伴って増大する混合媒体の量が少なく、蓄熱システムの熱効率をより一層向上させることができる。
【0012】
また、上記の蓄熱システムにおいては、媒体が流出する槽に、除去手段が配置されているものとすることができる。
このような蓄熱システムとすることで、形成された混合媒体が蓄熱槽内の移動に伴って増大したとしても、媒体が流出する槽において除去することができるので、混合媒体が除去手段によってより一層確実に除去されるものとなり、混合媒体に起因する温度成層が乱れをより一層効果的に抑止することができる。
【0013】
また、上記の蓄熱システムにおいて、蓄熱槽が、複数の槽からなり、複数の槽が、媒体が流入される槽から媒体が流出する槽まで直列に連結されている場合、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかを変更しても、蓄熱槽内における高温側と低温側との配置関係は変化しない。したがって、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかを変更する場合、媒体が流入される槽と媒体が流出する槽とが変更前と反対になり、混合媒体が形成される槽が変更前の媒体が流出する槽になるとともに、蓄熱槽に流入された媒体が移動する方向が変更前の反対方向になる。
【0014】
上記の蓄熱システムにおいては、媒体が流出する槽に、除去手段が配置されているので、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかを変更した場合に、混合媒体が形成される媒体が流入される槽、すなわち変更前の媒体が流出する槽で混合媒体が除去される。したがって、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかを変更した場合に、混合媒体が形成されてから、短時間のうちに混合媒体を除去することができるものとなる。よって、蓄熱槽に畜冷させる場合と蓄熱させる場合のいずれの場合であっても、蓄熱槽内の移動に伴って増大する混合媒体の量が少なく、熱効率に優れた蓄熱システムを実現できる。
【0015】
上記の蓄熱システムにおいては、蓄熱槽を構成する全ての槽に、除去手段が配置されているものとすることができる。
このような蓄熱システムとすることで、混合媒体が除去手段によってより一層確実に除去されるものとなり、混合媒体に起因する温度成層が乱れをより一層効果的に抑止することができ、より一層熱効率を向上させることができる。
【0016】
また、上記の蓄熱システムにおいては、除去手段は、媒体が設定温度以上である場合に、設定温度外媒体を除去するものとすることができる。
このような蓄熱システムでは、蓄熱槽に畜冷させる場合、すなわち蓄熱槽に貯留されていた設定温度外媒体よりも低温とされた設定温度媒体が熱源機器から蓄熱槽に流入される場合に、設定温度外媒体を非常に効率よく除去することができる。したがって、より一層熱効率を向上させることができる。
【0017】
また、上記の蓄熱システムにおいては、除去手段は、媒体が設定温度以下である場合に、設定温度外媒体を除去するものであってもよい。
このような蓄熱システムでは、蓄熱槽に蓄熱させる場合、すなわち蓄熱槽に貯留されていた設定温度外媒体よりも高温とされた設定温度媒体が熱源機器から蓄熱槽に流入される場合に、設定温度外媒体を非常に効率よく除去することができる。したがって、より一層熱効率を向上させることができる。
【0018】
また、上記の蓄熱システムにおいては、除去手段は、温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉される制御弁を備え、前記制御弁が開かれることにより前記設定温度外媒体が除去されるものであってもよい。
このような蓄熱システムとすることで、除去手段は、設定温度以上または設定温度以下であることを判断して自動的に開閉する制御弁を備えたものとなり、熱源機器から蓄熱槽に流入された設定温度媒体を除去することなく、設定温度外媒体のみを非常に効率よく除去できる除去手段を得ることができる。したがって、より一層熱効率に優れた蓄熱システムを実現することができる。
【0019】
また、上記のいずれかの蓄熱システムにおいては、除去手段によって除去された設定温度外媒体は、熱源機器に供給されて設定温度媒体とされることにより、熱利用手段に熱を供給するものとすることができる。
このような蓄熱システムとすることで、除去された設定温度外媒体を、設定温度媒体として利用することが可能なものとなる。また、このような蓄熱システムによれば、蓄熱槽内から採取した設定温度外媒体を、熱源機器によって設定温度媒体とし、得られた設定温度媒体の熱を熱利用手段に供給することができるので、蓄熱槽に蓄熱しなくても媒体を介して熱利用手段に熱を供給することが可能となる。したがって、追いかけ運転と呼ばれる運転を行うことが可能となり、高性能な蓄熱システムとすることができる。
【0020】
また、上記のいずれかの蓄熱システムにおいては、媒体は、利用可能なものであればいかなるものであってもよく、特に限定されないが、取り扱い易さや、蓄熱温度範囲の任意性、比熱の大きさなどの観点から、水であることが望ましい。
【0021】
また、上記の課題を解決するために、本発明の建造物は、上記のいずれかの蓄熱システムを備えたことを特徴とする。
このような建造物とすることで、熱効率に優れた蓄熱システムを備えたエネルギーを有効に利用できる構造物を実現することができる。
また、上記の建造物では、特に、熱利用手段が空調設備である場合に、エネルギーの有効利用が効果的に実現される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の蓄熱システムおよび構造物をより詳細に説明する。
「第1実施形態」
図1は、本発明の蓄熱システムの一例を説明するための概略図である。図1に示す蓄熱システム1は、媒体である水を貯留することによって蓄熱する蓄熱槽10と、蓄熱槽10に供給される水を設定温度とするものであり、ヒートポンプなどが用いられる熱源機器20と、蓄熱槽10から供給される熱を利用する熱利用手段である空調設備30と、蓄熱槽10に熱源機器20から流入される設定温度とされた水(以下、「設定温度媒体」という)と異なる温度の水(以下、「設定温度外媒体」という)を選択的に除去する除去手段70とを備えている。
【0023】
さらに、図1に示す蓄熱システム1は、蓄熱時に使用される蓄熱用ポンプ21と、熱利用時に使用される熱利用手段用ポンプ31と、蓄熱システム1の利用状況に応じて水の流れを制御するための弁61、62、63、64、65、66、67、68とを備えている。
【0024】
蓄熱槽10は、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14とからなり、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14とは、連通管41、42、43によって直列に連結されている。連通管41、42、43は、第1槽11が低温側、第4槽14が高温側となるように形成され、各槽の間を貫通して隣接する低温側の槽の水面近くと高温側の槽の底部とを連結するものであり、水が流入される槽から水が流出する槽に向かって、温度成層を保ったまま水が移動できるようにされている。
【0025】
除去手段70は、蓄熱槽10内から、設定温度外媒体を選択的に除去するものである。設定温度外媒体は、蓄熱槽10に熱源機器20から設定温度媒体を流入する時点で蓄熱槽10に貯留されている設定温度媒体の温度と異なる温度の水と、設定温度媒体と設定温度外媒体とが混合されてなる混合媒体とからなり、蓄熱槽10に畜冷させる場合には、設定温度以上の水であり、蓄熱槽10に蓄熱させる場合には、設定温度以下の水である。
【0026】
除去手段70は、第1槽11に配置された制御弁51と、第2槽12に配置された制御弁52と、第3槽13に配置された制御弁53と、第4槽14に配置された制御弁54と、制御弁51と制御弁52との間を接続するとともに、除去した設定温度外媒体を熱源機器20に供給する除去用配管71と、制御弁53と制御弁54との間を接続するとともに、除去した設定温度外媒体を熱源機器20に供給する除去用配管72とを備えている。
【0027】
制御弁51、52、53、54は、設定温度以上であって、なおかつ設定温度以下である場合にのみ開かれるものであり、制御弁51、52、53、54が開かれると、蓄熱用ポンプ21の搬送動力によって低温側の除去用配管71または高温側の除去用配管72を介して設定温度外媒体が除去されるようになっている。制御弁51、52、53、54としては、例えば、図2に示す制御弁などが好ましく使用される。図2に示す制御弁は、設定温度以上である場合に開かれる低温制御弁Aと、設定温度以下である場合に開かれる高温制御弁Bとを備えている。
図1に示す蓄熱システムを利用して空調する場合、低温制御弁Aにおける設定温度は、畜冷時に熱源機器20によって低温度とされる設定温度媒体の温度に応じて決定される。また、高温制御弁Bにおける設定温度は、蓄熱時に熱源機器20によって高温度とされる設定温度媒体の温度に応じて決定される。
【0028】
低温制御弁Aおよび高温制御弁Bは、温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉されるものであり、例えば、図3に示す制御弁などが好ましく使用される。
図3は、図1に示す蓄熱システムに使用される制御弁の一例を説明するための概略断面図である。図3に示す制御弁100は、対向する2つの開閉動力部110、110と、2つの開閉動力部110、110の間に配置された取水部120と、2つの開閉動力部110、110と取水部120との間をそれぞれ接続する接続部130、130を備えている。
【0029】
開閉動力部110、110は、本体114と、温度変形バネ112と、温度非変形バネ111と、温度変形バネ112と温度非変形バネ111との間に配置された可動板117と、固定軸115とを備えている。
温度変形バネ112を構成する螺旋構造の中心軸と温度非変形バネ111を構成する螺旋構造の中心軸とは、温度変形バネ112および温度非変形バネ111の螺旋構造を貫通する固定軸115によって位置合わせされ、固定されている。また、可動板117は、可動板117を貫通する固定軸115によって、固定軸115の長さ方向に可動可能に取り付けられている。
【0030】
温度変形バネ112は、形状記憶合金からなり、所定の範囲内の温度変化に対応して長さが著しく変化するものである。温度変形バネ112の長さが著しく変化する温度の範囲は、形状記憶合金の材質によって決定される。したがって、図3に示す制御弁100は、温度変形バネ112を形成する形状記憶合金の材質を適切に選択することによって、低温制御弁Aとしても高温制御弁Bとしても好ましく使用される。
【0031】
取水部120は、平面視円形の支持板124と、支持板124に支持され、支持板124を貫通するソケット125と、支持板124に対向して設けられ、支持板124と平面視同形状の止水板123とを備えている。
ソケット125は、止水板123側の端部が取水口129とされ、止水板123と反対側の端部が除去用配管に接続するための接続部とされている。止水板123は、対向する縁部が開閉動力部110、110の可動板117にそれぞれ固定されることにより、可動板117の動きに追従して可動するようにされている。そして、止水板123が可動されることにより、取水口129が開閉されるようになっている。また、図3に示す制御弁100は、取水口129が開かれると、支持板124と止水板123の間の隙間を介して水が取水されるようになっている。
【0032】
接続部130、130は、それぞれ2つの断面L字型の固定部材131、132と、第1の接続部材133、133と、第2の接続部材134とを備えている。
第1の接続部材133、133は、開閉動力部110を構成する本体114に2つの固定部材131、132の一端をそれぞれ固定するものである。
【0033】
第2の接続部材134は、2つの固定部材131、132の他端同士を接続しするとともに、取水部120を構成する支持板124の縁部に2つの固定部材131、132の他端を固定するものである。また、第2の接続部材134は、一方の固定部材131と止水板123と支持板124と他方の固定部材132とを順に貫通するボルト135を備えている。そして、一方の固定部材131と支持板124と他方の固定部材132とが、4つのナット136によってボルト135に固定されている。
【0034】
また、図3に示す制御弁100では、2つの接続部130、130にそれぞれ備えられたボルト135、135の長さ方向、2つの開閉動力部110、110にそれぞれ設けられた固定軸115、115の長さ方向は、全て同じ向きとなるように配置されている。したがって、ボルト135が貫通された止水板123は、第2の接続部材134によってボルト135の長さ方向、すなわち固定軸115の長さ方向に可動可能に支持されている。
【0035】
また、図3に示す制御弁100では、形状記憶合金からなる温度変形バネ112、112の長さが、所定の範囲内の温度変化に対応して変化すると、可動板117、117が可動して、可動板117の動きに追従して可動板117、117に対向する縁部が固定された止水板123が可動し、取水口129が開閉される。すなわち、温度変形バネ112の長さが、短くなると図3(a)に示すように取水口129が開かれ、長くなると図3(b)に示すように取水口129が閉じられる。
【0036】
また、図3に示す制御弁100は、取水口129が開かれると、支持板124と止水板123の間の隙間を介して水が取水されるようになっているので、例えば、止水板123を取り外した状態で取水される場合と比較して、取水口129の開閉が蓄熱槽10内の温度成層の形成に支障をきたすことを防止できる。
なお、支持板124および止水板123の形状は、蓄熱槽10内に形成される温度成層への影響を防ぐために、平面視円形であることが望ましいが、他の形状であってもよい。
【0037】
次に、図1に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明する。
はじめに、図1に示す蓄熱システムを利用して畜冷、冷房する場合について説明する。図1R>1に示す蓄熱システムを利用して畜冷、冷房する場合には、弁64、65が閉じられ、弁62、63が開けられる。
【0038】
(畜冷時)
畜冷する場合には、弁68が閉じられ、弁61、66、67が開けられ、蓄熱用ポンプ21が機動される。そして、蓄熱用ポンプ21の搬送動力により、設定温度外媒体が除去手段70を介して除去されるとともに、熱源機器20によって例えば5℃程度の所定の低温度とされた設定温度媒体が下部流通口81から供給される。
【0039】
畜冷が開始されると、図4に示すように、設定温度媒体91と蓄熱槽10に貯留されていた設定温度外媒体94である貯留媒体92とによって温度成層が形成される。また、図4に示すように、蓄熱槽10に設定温度媒体91が流入されることにより、蓄熱槽に貯留されていた貯留媒体92からなる温度成層が乱されて、蓄熱槽10に流入された設定温度媒体91と貯留媒体92とが混合され、混合媒体93が形成される。混合媒体93は、設定温度外媒体94であり、設定温度媒体91の供給に伴って、下部流通口81から上部流通口82に向かって、設定温度媒体91に押し出されるように貯留媒体92とともに蓄熱槽10内を移動する。
【0040】
除去手段70を構成する制御弁51、52、53、54は、設定温度媒体91の流入が開始されてから、第1槽11の制御弁51が配置された位置に設定温度媒体91が到着するまで自動的に開かれ、設定温度外媒体94が除去される。除去手段70によって除去された設定温度外媒体94は、熱源機器20に供給されて設定温度媒体91とされ、下部流通口81から供給される。また、図5に示すように、設定温度媒体91が、第1槽11の制御弁51が配置された位置に到着すると、制御弁51が自動的に閉じられ、第2槽12の制御弁52が配置された位置に到着すると、制御弁52が自動的に閉じられ、第3槽13の制御弁53が配置された位置に到着すると、制御弁53が自動的に閉じられ、第4槽14の制御弁54が配置された位置に到着すると、制御弁54が自動的に閉じられ、除去手段70による設定温度外媒体94の除去が終了する。
そして、供給された設定温度媒体91が、上部流通口82が配置された位置に到着することにより、蓄熱槽10内の換水が終了し、畜冷が完了する。
【0041】
(冷房時)
冷房する場合には、弁68が開けられ、弁61、66、67が閉じられ、熱利用手段用ポンプ31が機動される。そして、熱利用手段用ポンプ31の搬送動力により、設定温度媒体91が下部流通口81から空調設備30に供給され、蓄熱槽10から空調設備30に畜冷された熱が供給されるとともに、空調設備30に利用されることよって熱エネルギーが消費されて設定温度外の温度とされた例えば15℃程度の設定温度外媒体94であって、畜冷時における貯留媒体92が上部流通口82から供給される。
【0042】
そして、冷房が開始されると、図6に示すように、再び、温度成層および混合媒体94が形成され、設定温度外媒体94の供給に伴って、上部流通口82から下部流通口81に向かって、設定温度媒体91が設定温度外媒体94に押し出される。
【0043】
また、図1に示す蓄熱システムでは、冷房時に、弁61,66、67を開け、蓄熱用ポンプ21を機動させることにより、追いかけ運転と呼ばれる運転を行うことができる。
追いかけ運転が開始されても、除去手段70を構成する制御弁51、52、53、54は、第4槽14の制御弁54が配置された位置に設定温度外媒体94が到着するまで開かれない。設定温度外媒体94が、第4槽14の制御弁54が配置された位置に到着すると、制御弁54が自動的に開かれ、設定温度外媒体94が除去される。除去手段70によって除去された設定温度外媒体94は、熱源機器20に供給されて設定温度媒体91とされ、空調設備30に供給される。
【0044】
さらに、設定温度外媒体94が、第3槽13の制御弁53が配置された位置に到着すると、制御弁53が自動的に開かれ、第2槽12の制御弁52が配置された位置に到着すると、制御弁52が自動的に開かれ、第1槽11の制御弁51が配置された位置に到着すると、制御弁51が自動的に開かれる。制御弁51、52、53を介して除去された設定温度外媒体94も、制御弁54を介して除去された設定温度外媒体94と同様に、熱源機器20に供給されて設定温度媒体91とされ、空調設備30に供給される。
このように、図1に示す蓄熱システムでは、冷房が終了されるまで、設定温度外媒体94を介して空調設備30に熱が供給される。
【0045】
次に、図1に示す蓄熱システムを利用して畜熱、暖房する場合について説明する。図1に示す蓄熱システムを利用して畜熱、暖房する場合には、弁64、65が開けられ、弁62、63が閉じられる。
【0046】
(畜熱時)
畜熱する場合には、弁68が閉じられ、弁61、66、67が開けられ、蓄熱用ポンプ21が機動される。そして、蓄熱用ポンプ21の搬送動力により、設定温度外媒体が除去手段70を介して除去されるとともに、熱源機器20によって例えば50℃程度の所定の高温度とされた設定温度媒体が上部流通口82から供給される。
【0047】
暖房する場合の畜熱時と上述した冷房する場合の畜冷時とでは、蓄熱槽10に流入された設定温度媒体の移動方向が反対方向となるが、暖房する場合も畜熱が開始されると、上述した冷房する場合の畜冷時と同様に、温度成層および混合媒体が形成され、上述した冷房する場合の畜冷時と同様にして、設定温度外媒体が除去される。
【0048】
すなわち、除去手段70を構成する制御弁51、52、53、54は、設定温度媒体の流入が開始されてから、第4槽14の制御弁54が配置された位置に設定温度媒体が到着するまで自動的に開かれ、設定温度外媒体が除去される。また、設定温度媒体が、第4槽14の制御弁54が配置された位置に到着すると、制御弁54が自動的に閉じられ、第3槽13の制御弁53が配置された位置に到着すると、制御弁53が自動的に閉じられ、第2槽12の制御弁52が配置された位置に到着すると、制御弁52が自動的に閉じられ、第1槽11の制御弁51が配置された位置に到着すると、制御弁51が自動的に閉じられ、除去手段70による設定温度外媒体の除去が終了する。
そして、供給された設定温度媒体が、下部流通口81が配置された位置に到着することにより、蓄熱槽10内の換水が終了し、蓄熱が完了する。
【0049】
(暖房時)
暖房する場合には、弁68が開けられ、弁61、66、67が閉じられ、熱利用手段用ポンプ31が機動される。そして、熱利用手段用ポンプ31の搬送動力により、設定温度媒体が上部流通口82から空調設備30に供給され、蓄熱槽10から空調設備30に蓄熱された熱が供給されるとともに、空調設備30に利用されることよって熱エネルギーが消費されて設定温度外の温度とされた例えば40℃程度の設定温度外の温度とされた設定温度外媒体であって、蓄熱時における貯留媒体が下部流通口81から供給される。
【0050】
そして、暖房が開始されると、再び、温度成層および混合媒体が形成され、設定温度外媒体の供給に伴って、下部流通口81から上部流通口82に向かって、設定温度媒体が設定温度外媒体に押し出される。
【0051】
さらに、図1に示す蓄熱システムでは、暖房時にも、弁61,66、67を開け、蓄熱用ポンプ21を機動させることにより、冷房時と同様に、追いかけ運転と呼ばれる運転を行うことができる。
すなわち、追いかけ運転が開始されても、除去手段70を構成する制御弁51、52、53、54は、第1槽11の制御弁51が配置された位置に設定温度外媒体が到着するまで開かれず、設定温度外媒体が、第1槽11の制御弁51が配置された位置に到着すると、制御弁51が自動的に開かれ、設定温度外媒体が除去される。除去手段70によって除去された設定温度外媒体は、冷房時と同様に、熱源機器20に供給されて設定温度媒体とされ、空調設備30に供給される。
【0052】
さらに、設定温度外媒体が、第2槽12の制御弁52が配置された位置に到着すると、制御弁52が自動的に開かれ、第3槽13の制御弁53が配置された位置に到着すると、制御弁53が自動的に開かれ、第4槽14の制御弁54が配置された位置に到着すると、制御弁54が自動的に開かれる。制御弁52、53、54を介して除去された設定温度外媒体も、制御弁51を介して除去された設定温度外媒体と同様に、熱源機器20に供給されて設定温度媒体とされ、空調設備30に供給される。
このように、図1に示す蓄熱システムでは、暖房が終了されるまで、設定温度外媒体を介して空調設備30に熱が供給される。
【0053】
なお、図1に示す蓄熱システムにおいて、弁66、67は、制御弁51、52、53、54が、設定温度以上であって、なおかつ設定温度以下である場合にのみ自動的に開かれるものであるので、常に開けられていてもよいし、設けられていなくてもよいが、例えば、蓄熱槽10の清掃や点検、熱利用手段用ポンプ31、蓄熱用ポンプ21、制御弁51、52、53、54の点検など蓄熱システムのメンテナンス時などにも使用可能であるため、設けられていることが望ましい。
【0054】
このような蓄熱システムは、除去手段70を備えているので、蓄熱槽10に設定温度媒体91の流入を開始してから、蓄熱槽10内の除去手段70が配置された位置に設定温度媒体91が到着するまでの間、設定温度外媒体94が除去される。したがって、混合媒体93に起因する温度成層の乱れを抑止することができ、熱効率を向上させることができる。
【0055】
また、蓄熱槽10が、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14の4槽からなり、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14とが、連通管41、42、43によって直列に連結されているので、構造物に蓄熱システムを設置する際に、蓄熱槽10を設ける場所を容易に確保することができる。
【0056】
また、蓄熱槽10を構成する全ての槽に除去手段70が配置されているので、混合媒体92が除去手段70によって除去されずに残ってしまうことを防ぐことができ、より一層確実に混合媒体92を除去することができる。
例えば、畜冷時または蓄熱時の初期の段階で、1つの除去手段70によって蓄熱槽10内の混合媒体92を除去したにもかかわらず、除去されずに残ってしまった場合や、畜冷中または蓄熱中に再び混合媒体92が形成されてしまった場合に、他の除去手段70が配置された位置に混合媒体92が到着した段階で、混合媒体92を除去することが可能なものとなる。
さらに、蓄熱槽10を構成する全ての槽のうち、いずれかの1つの槽に配置された除去手段70が故障したとしても、他の槽に配置された除去手段70によって混合媒体92を除去することが可能なものとなる。
【0057】
また、制御弁51、52、53、54が、設定温度以上であって、なおかつ設定温度以下である場合にのみ自動的に開かれるものであるので、蓄熱槽10に畜冷させる場合であっても、蓄熱槽10に蓄熱させる場合であっても、設定温度外媒体94を非常に効率よく除去することができる。
さらに、制御弁51、52、53、54を、温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉される制御弁を備えたものとしたので、設定温度以上または設定温度以下であることを判断して自動的に開閉するものとなり、熱源機器20から蓄熱槽10に流入された設定温度媒体91を除去することなく、設定温度外媒体94のみを非常に効率よく除去できる。
【0058】
また、除去手段70によって除去された設定温度外媒体94が、熱源機器20に供給されて設定温度媒体91とされ、空調設備30に供給されるものとしたので、除去された設定温度外媒体94を、設定温度媒体91として利用することが可能となり、媒体である水を循環させて利用できる蓄熱システム1となる。
【0059】
また、蓄熱槽10内から採取した設定温度外媒体94を、熱源機器20によって設定温度媒体91とし、得られた設定温度媒体91の熱を空調設備30に供給することができるので、蓄熱槽10に蓄熱しなくても設定温度媒体91を介して空調設備30に熱を供給することが可能となる。したがって、追いかけ運転と呼ばれる運転を行うことが可能となる。その結果、気温や季節などによって変動する熱需要量に対して、より一層柔軟に対応することができる蓄熱システムとなる。
【0060】
「第2実施形態」
図7は、本発明の蓄熱システムの他の例を説明するための概略図である。図7に示す蓄熱システム2において、図1に示す蓄熱システム1と同様の構成については、同じ符号を付すとともに詳細な説明を省略し、異なる部分のみ詳細に説明する。
【0061】
図7に示す蓄熱システム2において、蓄熱槽10Aは、第1槽15が低温側、第4槽18が高温側となるように形成され、最も低温側に配置された第1槽15と、第1槽15に連結された第2槽16と、最も高温側に配置された第4槽18と、第4槽18に連結された第3槽17と、第2槽16と第3槽17との間に配置されて連結された複数の槽とが連通管によって直列に連結されたものである。
【0062】
また、除去手段74は、第1槽15に配置された制御弁55と、第2槽16に配置された制御弁56と、第3槽17に配置された制御弁57と、第4槽18に配置された制御弁58と、全ての制御弁55、56、57、58の間を接続するとともに、除去した設定温度外媒体を熱源機器20に供給する除去用配管73とを備えている。
【0063】
制御弁55、56は、設定温度以上である場合にのみ開かれるものであり、制御弁55、56が開かれると、蓄熱用ポンプ21の搬送動力によって除去用配管73を介して設定温度外媒体が除去されるようになっている。制御弁55、56としては、例えば、第1実施形態において説明した低温制御弁Aからなるものなどが好ましく使用される。
また、制御弁57、58は、設定温度以下である場合にのみ開かれるものであり、制御弁57、58が開かれると、蓄熱用ポンプ21の搬送動力によって除去用配管73を介して設定温度外媒体が除去されるようになっている。制御弁57、58としては、例えば、第1実施形態において説明した高温制御弁Bからなるものなどが好ましく使用される。
【0064】
また、図7に示す蓄熱システム2は、蓄熱システム2の利用状況に応じて水の流れを制御するための弁83、84、85、86を備えている。なお、図7に示す蓄熱システム2を構成する弁85、86は、水の分岐や合流を行う場合に使用されるヘッダーと呼ばれる装置であり、蓄熱システム2の用途に応じて利用される。
【0065】
次に、図7に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明する。
はじめに、図7に示す蓄熱システムを利用して畜冷、冷房する場合について説明する。
(畜冷時)
畜冷する場合には、弁83が閉じられ、弁84が開かれ、蓄熱用ポンプ21が機動される。
【0066】
除去手段74を構成する制御弁55、56は、設定温度媒体の流入が開始されてから、第1槽15の制御弁55が配置された位置に設定温度媒体が到着するまで自動的に開かれ、設定温度外媒体が除去される。また、設定温度媒体が、第1槽15の制御弁55が配置された位置に到着すると、制御弁55が自動的に閉じられ、第2槽16の制御弁56が配置された位置に到着すると、制御弁56が自動的に閉じられ、除去手段74による設定温度外媒体の除去が終了する。
そして、供給された設定温度媒体が、上部流通口82が配置された位置に到着することにより、蓄熱槽10A内の換水が終了し、畜冷が完了する。
【0067】
(冷房時)
冷房する場合には、弁83、84が閉じられ、熱利用手段用ポンプ31が機動される。
【0068】
次に、図7に示す蓄熱システムを利用して畜熱、暖房する場合について説明する。
(畜熱時)
畜熱する場合には、弁83が開かれ、弁84が閉じられ、蓄熱用ポンプ21が機動される。
【0069】
除去手段74を構成する制御弁57、58は、設定温度媒体の流入が開始されてから、第4槽18の制御弁58が配置された位置に設定温度媒体が到着するまで自動的に開かれ、設定温度外媒体が除去される。また、設定温度媒体が、第4槽18の制御弁58が配置された位置に到着すると、制御弁58が自動的に閉じられ、第3槽17の制御弁57が配置された位置に到着すると、制御弁57が自動的に閉じられ、除去手段74による設定温度外媒体の除去が終了する。
そして、供給された設定温度媒体が、下部流通口81が配置された位置に到着することにより、蓄熱槽10A内の換水が終了し、蓄熱が完了する。
【0070】
(暖房時)
暖房する場合には、弁83、84が閉じられ、熱利用手段用ポンプ31が機動される。
【0071】
このような蓄熱システムは、除去手段74を備えているので、蓄熱槽10Aに設定温度媒体の流入を開始してから、蓄熱槽10A内の除去手段74が配置された位置に設定温度媒体が到着するまでの間、設定温度外媒体が除去される。したがって、混合媒体に起因する温度成層の乱れを抑止することができ、熱効率を向上させることができる。
【0072】
また、設定温度以上である場合に開かれる制御弁55、56が、第1槽15および第2槽16に配置されているので、蓄熱槽10Aに畜冷させる場合に、混合媒体が形成されてから短時間のうちに混合媒体を除去することができ、蓄熱槽10A内の移動に伴って増大する混合媒体の量が少なく、蓄熱システム2の熱効率をより一層向上させることができる。
【0073】
また、設定温度以下である場合に開かれる制御弁57、58が、第3槽17および第4槽18に配置されているので、蓄熱槽10Aに蓄熱させる場合にも、混合媒体が形成されてから短時間のうちに混合媒体を除去することができる。
したがって、蓄熱槽10Aに畜冷させる場合と蓄熱させる場合のいずれの場合であっても、蓄熱槽10A内の移動に伴って増大する混合媒体の量が少なく、熱効率に優れた蓄熱システム2を実現できる。
【0074】
また、設定温度以上である場合に開かれる制御弁55、56と設定温度以下である場合に開かれる制御弁57、58とを備え、制御弁55、56、57、58を、温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉される制御弁を備えたものとしたので、設定温度以上または設定温度以下であることを判断して自動的に開閉するものとなり、熱源機器20から蓄熱槽10Aに流入された設定温度媒体を除去することなく、設定温度外媒体のみを非常に効率よく除去できる。
【0075】
「第3実施形態」
図8は、本発明の蓄熱システムの他の例を説明するための概略図である。図8に示す蓄熱システム3において、図1に示す蓄熱システム1と同様の構成については、同じ符号を付すとともに詳細な説明を省略し、異なる部分のみ詳細に説明する。
【0076】
図8に示す蓄熱システム3において、除去手段75は、第1槽11に配置された制御弁51A、51Bと、第2槽12に配置された制御弁52A、52Bと、第3槽13に配置された制御弁53A、53Bと、第4槽14に配置された制御弁54A、54Bとを備えている。さらに、除去手段75は、制御弁51Aと制御弁52Aとの間を接続する除去用配管71Aと、制御弁53Aと制御弁54Aとの間を接続する除去用配管72Aと、制御弁5B1と制御弁52Bとの間を接続する除去用配管71Bと、制御弁53Bと制御弁54Bとの間を接続する除去用配管72Bとを備えている。
【0077】
制御弁51A、52A、53A、54Aは、設定温度以上である場合にのみ開かれるものであり、制御弁51B、52B、53B、54Bは、設定温度以下である場合にのみ開かれるものである。
制御弁51A、52A、53A、54Aとしては、例えば、第1実施形態において説明した低温制御弁Aからなるものなどが好ましく使用され、制御弁51B、52B、53B、54Bとしては、例えば、第1実施形態において説明した高温制御弁Bからなるものなどが好ましく使用される。
【0078】
また、図8に示す蓄熱システム3は、蓄熱システム3の利用状況に応じて水の流れを制御するための弁87、88、89、90とを備えている。そして、図8に示す蓄熱システム3では、蓄冷時には、弁87が開けられ、弁88、89、90が閉じられ、蓄熱時には、弁88が開けられ、弁87、89、90が閉じられる。また、冷房時および冷房時の追いかけ運転時には、弁89が開けられ、弁87、88、90が閉じられ、暖房時および暖房時の追いかけ運転時には、弁90が開けられ、87、88、89が閉じられる。
【0079】
図8に示す蓄熱システム3においても、図1に示す蓄熱システム1と同様の効果が得られる。
【0080】
なお、本発明の蓄熱システムは、上述した例に限定されるものではなく、例えば、上述した例における制御弁に代えて、設備機器などにおける凍結防止弁や過熱防止弁などに使用されるワックス弁と呼ばれるタイプの制御弁を使用してもよい。
【0081】
図9は、ワックス弁の一例を説明するための概略図である。
図9に示すワックス弁300は、内部にワックスが充填される開閉動力部310と、内部の中心を貫通して底面に向かって開口する取水口323が設けられ、開閉動力部310を除去用配管に接続するためのねじ部322と、除去用配管にねじ部322を接続する際に使用されるナット状の形状を有する下部321とを備えた側面視ボルト型の接続部320とから構成されている。
図9に示すワックス弁300は、温度変化に対応するワックスの容積変化を利用して開閉されるものであり、上述した例における制御弁と同様に使用することができる。また、図9R>9に示すワックス弁300は、ねじ部322とナット状の形状を有する下部321とを備えた側面視ボルト型の接続部320を有するものであるので、容易に除去用配管に接続することができる。
【0082】
また、本発明の蓄熱システムにおいては、槽の数は何槽でもよく、蓄熱槽の容量や設置場所の条件などに応じて決定することができ、特に限定されない。
また、上述した例においては、除去用配管を、2つの制御弁の間またはすべての制御弁の間を接続するものとしたが、除去用配管によって制御弁の間を接続せず、除去用配管を1つの制御弁毎に個別に設けてもよい。
【0083】
図10は、本発明の建造物の一例を説明するための概略図である。
図10に示す建造物は、第1実施形態または第2実施形態の蓄熱システムを備えたものである。図10において、符号G.Lは地表面の位置を示し、符号201は基礎部に設けられた地下ピットを示している。地下ピット201には、蓄熱システムを構成する蓄熱槽が設けられ、蓄熱槽から供給される熱が各階に備えられた空調設備30によって利用されるようになっている。
【0084】
このような建造物は、第1実施形態または第2実施形態の蓄熱システムを備えたものであるので、エネルギーを有効に利用できる。
また、地下ピット201を利用して蓄熱槽を設けることができる。
【0085】
以下、本発明を構成する制御弁の動作特性を例を示して説明する。
図3に示す制御弁に用いられる温度非変形バネと温度変形バネとを連結して連結バネとし、温度と変形特性との関係を調べた。
その結果を図11に示す。図11は、バネの温度と変形特性との関係を示したグラフである。なお、横軸は温度であり、縦軸は温度が40℃のときのバネの状態を0として示した温度変形の相対比である。
図11より、連結バネは、43℃以上または40℃以下になると著しく変形することがわかる。よって、この連結バネの変形を利用して、制御弁を開閉することが可能であることが確認できた。また、温度変形バネを用いた制御弁を、43℃以上または40℃以下であることを判断して自動的に開閉する除去手段として使用可能なことが確認できた。
【0086】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、蓄熱槽に設定温度媒体の流入を開始してから、蓄熱槽内の除去手段が配置された位置に設定温度媒体からなる温度成層が到着するまでの間、蓄熱槽内の設定温度外媒体が除去手段によって選択的に除去されるので、混合媒体に起因する温度成層の乱れを抑止することができ、熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蓄熱システムの一例を説明するための概略図である。
【図2】図1に示す蓄熱システムに使用される制御弁の一例を説明するための概略断面図である。
【図3】図1に示す蓄熱システムに使用される制御弁の一例を説明するための概略断面図である。
【図4】図1に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明するための図である。
【図5】図1に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明するための図である。
【図6】図1に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の蓄熱システムの他の例を説明するための概略図である。
【図8】本発明の蓄熱システムの他の例を説明するための概略図である。
【図9】ワックス弁の一例を説明するための概略図である。
【図10】本発明の建造物の一例を説明するための概略図である。
【図11】バネの温度と変形特性との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1、2、3…蓄熱システム
10…蓄熱槽
11、15…第1槽
12、16…第2槽
13、17…第3槽
14、18…第4槽
20…熱源機器
21…蓄熱用ポンプ
30…空調設備
31…熱利用手段用ポンプ
41、42、43…連通管
51、52、53、54、55、56、57、58、100…制御弁
61、62、63、64、65、66、67、68、83、84、85、86、87、88、89、90…弁
70、74、75…除去手段
71、72、73…除去用配管
81…下部流通口
82…上部流通口
91…設定温度媒体
92…貯留媒体
93…混合媒体
94…設定温度外媒体
110…開閉動力部
111…温度非変形バネ
112…温度変形バネ
114…本体
115…固定軸
117…可動板
120…取水部
123…止水板
124…支持板
125…ソケット
129…取水口
130…接続部
131、132…固定部材
133…第1の接続部材
134…第2の接続部材
135…ボルト
136…ナット
201…地下ピット
300…ワックス弁
310…開閉動力部
320…接続部
321…下部
322…ねじ部
323…取水口
A…低温制御弁
B…高温制御弁
G.L…地表面の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が入出可能な上部流通口と下部流通口とが鉛直方向に離間して設けられ、内部に温度が異なる前記媒体からなる温度成層が形成される蓄熱槽と、
前記蓄熱槽に供給される前記媒体を設定温度とする熱源機器と、
前記蓄熱槽から供給される熱を利用する熱利用手段と、
前記蓄熱槽内の前記上部流通口と前記下部流通口の間の位置に配置された除去手段とを備え、
前記除去手段は、前記蓄熱槽内に存在する前記媒体であって、前記設定温度とされた設定温度媒体を除く設定温度外媒体を選択的に除去することを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記蓄熱槽は、複数の槽からなり、
前記複数の槽は、媒体が流入される槽から媒体が流出する槽まで直列に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記媒体が流入される槽に、前記除去手段が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記媒体が流出する槽に、前記除去手段が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記蓄熱槽を構成する全ての槽に、前記除去手段が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記除去手段は、前記媒体が設定温度以上である場合に、前記設定温度外媒体を除去するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記除去手段は、前記媒体が設定温度以下である場合に、前記設定温度外媒体を除去するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の蓄熱システム。
【請求項8】
前記除去手段は、温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉される制御弁を備え、
前記制御弁が開かれることにより前記設定温度外媒体が除去されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の蓄熱システム。
【請求項9】
前記除去手段によって除去された前記設定温度外媒体は、前記熱源機器に供給されて前記設定温度媒体とされることにより、前記熱利用手段に熱を供給するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の蓄熱システム。
【請求項10】
前記媒体が水であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の蓄熱システム。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の蓄熱システムを備えたことを特徴とする建造物。
【請求項12】
前記熱利用手段が、空調設備であることを特徴とする請求項11に記載の建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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