説明

蓄熱容器

【課題】棚の支持強度を高くした棚受部を備え、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱容器を提供する。
【解決手段】箱型の外壁3と、外壁3の内方にある箱型の庫内壁9と、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置され、所定の温度で固相から液相へ可逆的に相転移する潜熱蓄熱材7と、庫内壁9内方であって貯蔵物を貯蔵する貯蔵室10と、貯蔵室10内で貯蔵物を載置する棚21を支持するために庫内壁9の一部を貯蔵室10内に突出させた棚受部11と、外壁3と庫内壁9との間の領域の棚受部11の庫内壁9側に配置され、液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持する支持部材12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には蓄熱容器として、箱内壁面の全体もしくは一部に潜熱蓄冷材を備え、断熱材と潜熱蓄冷材との二層構造である蓄冷型保冷庫が開示されている。特許文献2には蓄熱容器として、内壁と外壁との間に断熱材と相転移物質が充填された冷蔵庫が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−219379号公報
【特許文献2】特開平7−4807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような冷蔵庫には庫内に貯蔵物を載置する棚が配置されている。棚は庫内の内壁から突出する棚受部に支持されている。棚には種々の貯蔵物を載置しても撓まない強度が要求される。さらに、棚受部には貯蔵物を載置した棚を確実に支持する強度が要求される。しかしながら、引用文献1及び2のいずれも棚受部の強度について記載していない。一般に冷蔵庫の内壁は樹脂材料を薄い厚さに成型した樹脂成型品を用いている。このため、貯蔵物を載置した棚を支持する棚受部を内壁だけでは作製できないという問題がある。引用文献1または2に記載された冷蔵庫では、内壁近傍に配置された潜熱蓄熱材を棚受部内に充填して強度補強に用いることが考えられるが、潜熱蓄熱材が相転移により液化すると所望の強度が得られなくなるという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、棚の支持強度を高くした棚受部を備え、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、箱型の外壁と、前記外壁の内方にある箱型の庫内壁と、前記外壁と前記庫内壁との間の領域の前記庫内壁側に配置され、所定の温度で固相から液相へ可逆的に相転移する潜熱蓄熱材と、前記庫内壁内方であって貯蔵物を貯蔵する貯蔵室と、前記貯蔵室内で前記貯蔵物を載置する棚を支持するために前記庫内壁の一部を前記貯蔵室内に突出させた棚受部と、前記外壁と前記庫内壁との間の領域の前記棚受部の前記庫内壁側に配置され、前記液相に相転移した前記潜熱蓄熱材より高い支持強度で前記棚を支持する支持部材とを有することを特徴とする蓄熱容器によって達成される。
【0007】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記外壁と前記庫内壁との間に充填された断熱材をさらに有することを特徴とする。
【0008】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記支持部材は、前記断熱材と同一材料で形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記支持部材は、熱または光で硬化する硬化性樹脂であることを特徴とする。
【0010】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記支持部材に機械的強度を高める材料が含有されていることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記支持部材は、前記潜熱蓄熱材に機械的強度を高める材料を含有したものであることを特徴とする。
【0012】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記潜熱蓄熱材はゲル化剤を含んでいることを特徴とする。
【0013】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記潜熱蓄熱材はパラフィンを含んでいることを特徴とする。
【0014】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記潜熱蓄熱材は、定常運転において前記貯蔵室内で制御可能な温度と、前記貯蔵室の周囲の雰囲気の温度との間の温度で固相から液相へ可逆的に相転移することを特徴とする。
【0015】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記貯蔵室に熱交換器が配置されていることを特徴とする。
【0016】
上記本発明の蓄熱容器であって、前記熱交換器は冷却器であることを特徴とする。
【0017】
上記本発明の蓄熱容器を有する冷蔵庫であって、前記貯蔵室の上側に設けられた支持部材の支持強度は、前記貯蔵室の下側に設けられた支持部材の支持強度より高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄熱容器の棚受部の棚を支持する強度を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による蓄熱容器としての冷蔵庫1の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による棚受部11a近傍の断面図である。
【図3】比較例に係る棚受部11a近傍の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による棚受部11a近傍の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による棚受部11a近傍の断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態による棚受部11a近傍の断面図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態による棚受部11a近傍の断面図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態による冷蔵庫1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態による蓄熱容器について図1及び図2を用いて説明する。なお、以下の全ての図面においては、理解を容易にするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせて図示されている。図1は、本実施の形態による蓄熱容器として直冷式の冷蔵庫1の断面を示している。冷蔵庫1は設置状態で鉛直方向に高いほぼ直方体の外形を有している。直方体の一側面には開口部が設けられており、開口部の内側の空間が冷蔵室になっている。開口部には開閉可能な扉(不図示)が設けられている。図1では、設置状態の冷蔵庫1を開口部の設けられた一側面に平行な平面で切った断面を開口部側から見た状態を示している。
【0021】
冷蔵庫1は、一側面が開口した鋼板製の箱型の外壁3を有している。外壁3の一側面から外壁3の内方に、ABS樹脂等で射出成型により成型した箱型の庫内壁9が嵌め込まれて固定されている。
【0022】
冷蔵庫1の庫内壁9内方は貯蔵物を貯蔵する貯蔵室としての冷蔵室10となっている。冷蔵室10内の上部には熱交換器として冷却器19が配置されている。
【0023】
外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側には潜熱蓄熱材7が配置されている。潜熱蓄熱材7の配置状態については後程詳説する。
【0024】
外壁3と庫内壁9との間の残余の領域には断熱材5が配置されている。断熱材5は、所定温度に冷却されている冷蔵室10に冷蔵庫1の外部から熱が伝わらないように断熱するために配置されている。断熱材5は、繊維系断熱材(グラスウール等)、発泡樹脂系断熱材等の形成材料を用いて形成される。本実施の形態では断熱材5として発泡ウレタンが外壁3と庫内壁9との間の残余の領域に充填されている。
【0025】
庫内壁9の左右の側面部には、水平対向位置に一対の棚受部11が設けられている。冷蔵室10上段には一対の棚受部11a、11a´が設けられている。冷蔵室10中段には一対の棚受部11b、11b´が設けられている。冷蔵室10下段には一対の棚受部11c、11c´が設けられている。各棚受部11にはそれぞれ棚21の端部が載せられている。
【0026】
図2は、図1に示す冷蔵室10上段の左側面部の棚受部11aの近傍の断面を拡大して示している。棚受部11aは、冷蔵室10内で貯蔵物を載置する棚21を支持するために庫内壁9の一部を冷蔵室10内に突出させて形成されている。庫内壁9は棚受部11aの上下でほぼ鉛直方向に一直線に延びる直線状断面を有している。図2に示す棚受部11aでは、鉛直上方から下延してきた庫内壁9が所定半径の1/4円弧状に右方に曲げられた後、所定距離だけ水平方向に延びている。続いて庫内壁9は、所定半径の1/4円弧状に下方に曲げられて所定距離だけ鉛直方向に延びている。続いて庫内壁9は、左斜め下方に直線的に延びて鉛直下方から上延してきた庫内壁9に接続されている。
【0027】
棚受部11aでの庫内壁9の断面形状は上部の一部領域が水平に冷蔵室10内に突出し、突出先端部より根元部の幅が広い片持ち梁状になっている。また、棚受部11aは図1及び図2の紙面の奥行方向に延びている。このような形状をしているので、棚受部11aが十分な支持強度を有する場合は、棚21の左側端辺を棚受部11aの庫内壁9の水平領域に載せて棚21を支持することができる。図示は省略したが、冷蔵室10上段の右側面部の棚受部11a´での庫内壁9の断面形状は上部の一部領域が水平に冷蔵室10内に突出し、突出先端部より根元部の幅が広い片持ち梁状になっている。また、棚受部11a´は図1及び図2の紙面の奥行方向に延びている。棚受部11aでの庫内壁9の断面形状と棚受部11a´での庫内壁9の断面形状とは線対称になっている。このような形状をしているので、棚受部11a´が十分な支持強度を有する場合は、棚21の右側端辺を棚受部11a´の庫内壁9の水平領域に載せて棚21を支持することができる。
【0028】
図1に示す冷蔵室10中段の左側面部の棚受部11b、右側面部の棚受部11b´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。また、冷蔵室10下段の左側面部の棚受部11c、右側面部の棚受部11c´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。
【0029】
棚受部11aの根元部、すなわち、鉛直上方から下延してきた庫内壁9が1/4円弧状に右方に曲げられる辺りと、先端部から左斜め下方に直線的に延びて鉛直下方から上延してきた庫内壁9に接続される辺りとの間の図中破線の楕円で示す領域αには、潜熱蓄熱材7が配置されていない。さらに、領域αの両側の外壁3と庫内壁9との間にも潜熱蓄熱材7が配置されていない。同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部(領域α)を含む外壁3と庫内壁9との間にも潜熱蓄熱材7が配置されていない。一方、棚受部11a、11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部と外壁3との間以外の庫内壁9には所定厚さで潜熱蓄熱材7が貼り付けられている。図1に示すように潜熱蓄熱材7は全体的には庫内壁9の周囲全体に配置されている。
【0030】
蓄熱とは、熱を一時的に蓄え、必要に応じてその熱を取り出す技術をいう。蓄熱方式としては、顕熱蓄熱、潜熱蓄熱、化学蓄熱等があるが、本実施形態では、潜熱蓄熱を利用する。潜熱蓄熱は、物質の潜熱を利用して、物質の相転移の熱エネルギーを蓄える。蓄熱密度が高く、出力温度が一定である。潜熱蓄熱材7としては、氷(水)、パラフィン、無機塩などが用いられる。なお、潜熱蓄熱材は、ABSやポリカーボネート等、樹脂製のフィルムまたは薄い板で囲まれて形成されてもよい。
【0031】
本実施形態の潜熱蓄熱材7は、パラフィンを含んでいる。パラフィンとは、一般式C2n+2で表される飽和鎖式炭化水素の総称をいう。本実施形態では潜熱蓄熱材7の固相から液相へ可逆的に相転移する相転移温度は、4℃から6℃程度が望ましい。
【0032】
また、潜熱蓄熱材7は、パラフィンをゲル化(固化)するゲル化剤を含んでいる。ゲルとは、分子が架橋されることで三次元的な網目構造を形成し、その内部に溶媒を吸収し膨潤したものをいう。ゲル化剤はパラフィンに数重量%含有させるだけでゲル化の効果を生じる。
【0033】
外壁3と潜熱蓄熱材7の間は断熱材5が充填されている。断熱材5により外壁3と潜熱蓄熱材7の間は密着されている。棚受部11aの内方及び、棚受部11aの根元部と外壁3との間に潜熱蓄熱材7が配置されていないので、断熱材5の充填時に棚受部11a内方まで断熱材5が充填される。棚受部11a内方にまで充填された断熱材5の発泡ウレタンは、棚受部11aの片持ち梁形状において棚21を支持するのに十分な強度を有している。
【0034】
本実施形態の棚受部11a内方に充填された断熱材5は、外壁3と庫内壁9との間の領域の棚受部11aの庫内壁9側に配置され、液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持する支持部材12aとして機能する。このように、本実施形態では支持部材12aは断熱材5と同一材料で形成されている。
【0035】
同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の内方に充填された断熱材5もそれぞれ支持部材12b、12c、12a´、12b´、12c´として機能する。
【0036】
図1に戻り、冷蔵室10上部には熱交換器としての冷却器19が配置されている。冷却器19は冷媒を蒸発させる蒸発機構(不図示)を内部に挟んで対向配置された平板状部材を有している。冷却器19の表面部材は冷蔵室10内に露出している。
【0037】
冷蔵庫1の内側には冷却器19内の不図示の蒸発機構に冷媒を供給する配管(不図示)が配置されている。配管は冷蔵庫1の底部に配置されたコンプレッサ(不図示)に接続されている。これによりガス圧縮式の冷却装置が構成されている。なお、ガス圧縮式の冷却装置に代えて、ガス吸収式の冷却装置やペルチェ効果を用いた電子式の冷却装置を用いることも可能である。
【0038】
次に、本実施の形態による冷蔵庫1の動作について説明する。冷蔵庫1の不図示の電源がオン状態において、コンプレッサで圧縮された冷媒は、配管内で凝縮され次いで膨張させられて冷却器19に達する。冷却器19は、膨張した冷媒が蒸発する際の気化熱により、冷蔵室10内を冷却する。例えば冷蔵室10の温度は約3℃になるように冷却することができる。
【0039】
冷蔵室10内に露出した冷却器19と庫内の空気との間で熱交換が行われる。庫内の所定位置には不図示の温度センサが設置されている。温度センサで計測された庫内温度に基づき冷蔵庫1に設けられた不図示の温度制御装置により冷却装置の駆動が制御され、冷却器19で庫内温度を制御するための熱移動が行われる。
【0040】
庫内の空気に温度分布が生じると対流が生じて相対的に高温の空気は上昇し低温の空気は下降する。冷却器19は庫内の内壁上部に配置されているので、効率よく相対的に高温の空気の熱を冷却器19に移動させることができる。
【0041】
冷蔵室10の庫内壁9の外側に配置された潜熱蓄熱材7も庫内壁9を介して冷却されて相転移温度以下の固相状態に維持される。固相状態を維持した潜熱蓄熱材7は庫内の温度の時間変化分布を平坦化させる機能を奏する。
【0042】
潜熱蓄熱材7は、定常運転において冷蔵室10内で制御可能な温度と、貯蔵室10の周囲の雰囲気の温度との間の温度で固相から液相へ可逆的に相転移する必要がある。本実施の形態では潜熱蓄熱材7を構成するパラフィンとして、ノルマル(直鎖型構造)テトラデカン(C1430)を用いている。ノルマルテトラデカンの融点は、約5.9度である。
【0043】
停電等により冷蔵庫1の不図示の電源がオフ状態になると、不図示の温度制御装置や冷却装置への電力供給が停止して、冷却装置による冷却能力は失われる。本実施の形態による冷蔵庫1は、停電等により冷却装置による冷却能力が失われると、潜熱蓄熱材7による保冷が開始される。冷蔵室10内の空気は、庫内壁9の外側に貼り巡らされている潜熱蓄熱材7により一定期間、所定温度範囲に維持される。より具体的には、潜熱蓄熱材7が固相から液相へ相転移するまでの期間において、庫内温度が6℃程度に維持される。
【0044】
庫内の空気に温度分布が生じると対流が生じて相対的に高温の空気は上昇し低温の空気は下降する。庫内壁9上部にも潜熱蓄熱材7が配置されている。このため、効率よく保冷効果を奏することができる。このように本実施の形態の冷蔵庫1によれば、停電等により冷蔵庫1の不図示の電源がオフ状態になってしまっても、庫内の温度を所定の低温度に一定期間維持することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、停電等により冷蔵庫1の電源がオフ状態になり潜熱蓄熱材7による保冷効果が得られる一方、潜熱蓄熱材7は徐々に液相へ相転移して硬度が低下する。しかしながら、棚受部11の支持部材12には周囲温度に支持強度が影響を受けない断熱材5が用いられているため、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず確実に棚21の支持を維持できる。本実施の形態によれば、棚受部11の撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を高くした、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱容器を実現できる。なお、棚受部11には潜熱蓄熱材7がないが、代わりに断熱材5があるので冷蔵室10内の冷却装置による冷却効果が低下することはない。
【0046】
次に、発泡ウレタンの注入工程について簡単に説明する。まず、外壁3の内方に庫内壁9が嵌め込まれた冷蔵庫前組箱体をウレタン発泡治具内に格納する。次いで、発泡治具を45℃程度に保持しながら外壁3と庫内壁9の間の空間にポリオール液とイソシアネート液等、発泡ウレタンの原液をそれぞれ同時に注入する。これにより外壁3と庫内壁9の間の空間に発泡ウレタンが充填される。この後、発泡ウレタンが充填された冷蔵庫箱体を発泡治具から取り外す。本実施形態による潜熱蓄熱材7の流動性が増加する温度は70〜80℃以上なので、発泡ウレタンの注入工程中に潜熱蓄熱材7が周囲に流動することはない。
【0047】
図3は比較例に係る冷蔵庫の棚受部11a近傍を示している。図3(a)、(b)は、比較例に係る棚受部11a近傍を示している。図3(a)、(b)共に図2(a)に示す棚受部11a近傍の断面と同様の断面を示している。図3(a)、(b)に示す比較例に係る棚受部11a近傍において、本実施の形態に係る冷蔵庫1と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0048】
比較例に係る棚受部11aの根元部の領域αと断熱材5との間には潜熱蓄熱材7が配置されている。同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部の領域αと断熱材5との間にも潜熱蓄熱材7が配置されている。さらに、棚受部11a内方にも支持部材31aとして潜熱蓄熱材7が充填されている。棚受部11a内方に充填された潜熱蓄熱材7による支持部材31aは、図3(a)に示すように、冷蔵庫1の電源がオン状態で冷却装置が機能している場合には、棚受部11aの片持ち梁形状において棚21を支持できる強度を有している。
【0049】
しかしながら、図3(b)に示すように、停電等で冷蔵庫1の電源がオフ状態で冷却装置が機能しなくなった後に潜熱蓄熱材7が液状になると支持部材31aは棚21を支持できる強度を失う。このため棚21に対する耐荷重が小さくなるので、棚21の重量により棚受部11aの片持ち梁形状が下方に垂れる形状に変化してしまう。これにより、棚21の支持が不安定になり、載置してある貯蔵物が移動してしまったり、落下したり、棚21自体が外れて落下したりする。
【0050】
これに対し、本実施形態の蓄熱容器は、箱型の外壁3と、外壁3の内方に嵌め込まれて固定された箱型の庫内壁9と、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置され、所定の相転移温度で固相から液相へ可逆的に相転移する潜熱蓄熱材7と、庫内壁9内方であって貯蔵物を貯蔵する貯蔵室10と、貯蔵室10内で貯蔵物を載置する棚21を支持するために庫内壁9の一部を貯蔵室10内に突出させた棚受部11と、外壁3と庫内壁9との間の領域の棚受部11の庫内壁9側に配置され、液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持する支持部材12とを有する。そして、支持部材12には潜熱蓄熱材7ではなく断熱材5が配置されている。このため、潜熱蓄熱材7が液相になっても支持部材12の支持強度は変化しない。よって、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず常時確実に棚21を支持できる。本実施の形態によれば、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱容器において、棚受部11の棚21を支持する強度を高くすることができる。
[第2の実施の形態]
【0051】
次に、本発明の第2の実施の形態による蓄熱容器について図4を用いて説明する。第1の実施の形態による蓄熱容器と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態の蓄熱容器は図1に示したのと同様の直冷式の冷蔵庫1である。但し、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置された潜熱蓄熱材7は、棚受部11a、11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部の領域αと断熱材5との間にも配置されている。従って、潜熱蓄熱材7は庫内壁9全域を囲むように配置されている。断熱材5は外壁3と庫内壁9との間の潜熱蓄熱材7以外の残余の領域に配置されている。本実施の形態では断熱材5として発泡ウレタンが用いられている。
【0052】
図4は、冷蔵室10上段の左側面部の棚受部11aの近傍の断面を拡大して示している。棚受部11aは図2に示す棚受部11aと同様の根元部の幅が広い片持ち梁状の断面形状を有して冷蔵室10内に突出している。冷蔵室10中段の左側面部の棚受部11b、右側面部の棚受部11b´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。また、冷蔵室10下段の左側面部の棚受部11c、右側面部の棚受部11c´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。
【0053】
棚受部11aの根元部の領域αと断熱材5との間には、潜熱蓄熱材7が配置されている。同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部と断熱材5との間にも潜熱蓄熱材7が配置されている。本実施形態の潜熱蓄熱材7は、ゲル化させたパラフィンを含んでいる。潜熱蓄熱材7の相転移温度は、4℃から6℃程度が望ましい。
【0054】
棚受部11aの内方の支持部材13aとして熱硬化性樹脂が充填されている。棚受部11aの根元部の領域αと断熱材5との間に潜熱蓄熱材7が配置されているが、棚受部11a内方の支持部材13aの熱硬化性樹脂は、棚受部11aの片持ち梁形状において棚21を支持するのに十分な強度を有している。このため、本実施形態の支持部材13aは液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持することができる。
【0055】
同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の内方に充填された熱硬化性樹脂もそれぞれ支持部材13b、13c、13a´、13b´、13c´として機能する。
【0056】
本実施の形態においても、停電等により冷蔵庫1の不図示の電源がオフ状態になると、不図示の温度制御装置や冷却装置への電力供給が停止して、冷却装置による冷却能力は失われる。本実施の形態による冷蔵庫1は、停電等により冷却装置による冷却能力が失われると、潜熱蓄熱材7による保冷が開始される。冷蔵室10内の空気は、庫内壁9の外側に貼り巡らされている潜熱蓄熱材7により一定期間、所定温度範囲に維持される。
【0057】
また、本実施形態によれば、停電等により冷蔵庫1の電源がオフ状態になり潜熱蓄熱材7による保冷効果が得られる一方、潜熱蓄熱材7は徐々に液相へ相転移して硬度が低下する。しかしながら、棚受部11の支持部材13には周囲温度に支持強度が影響を受けない熱硬化性樹脂が用いられている。このため、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず確実に棚21の支持を維持できる。
【0058】
次に、発泡ウレタンの注入工程について簡単に説明する。まず、外壁3の内方に庫内壁9が嵌め込まれた冷蔵庫前組箱体をウレタン発泡治具内に格納する。次いで、発泡治具を45℃程度に保持しながら外壁3と庫内壁9の間の空間にポリオール液とイソシアネート液等、発泡ウレタンの原液をそれぞれ同時に注入する。これにより外壁3と庫内壁9の間の空間に発泡ウレタンが充填される。この後、発泡ウレタンが充填された冷蔵庫箱体を発泡治具から取り外す。本実施形態による潜熱蓄熱材7の流動性が増加する温度は70〜80℃以上なので、発泡ウレタンの注入工程中に潜熱蓄熱材7が周囲に流動することはない。
【0059】
棚受部11の内方に充填した熱硬化性樹脂の熱硬化は、潜熱蓄熱材7を配置する前に予め行ってもよい。例えば、常温(例えば、25℃)で比較的長時間かけて硬化する熱硬化性樹脂を用いてもよい。また、発泡ウレタン注入時の熱温度で硬化させるようにしてもよい。例えば、熱硬化性樹脂を塗布後、室温(例えば、20℃)である程度硬化させ、潜熱蓄熱材7を庫内壁9外側及び棚受部11の根元部に貼り付けた後、発泡ウレタンの注入工程の温度を利用して硬化を完成させるという手順を用いることも可能である。
【0060】
次に本実施形態の変形例について説明する。本変形例では、棚受部11aの内方の支持部材13aとして熱硬化性樹脂に代えて光(UV)硬化性樹脂が充填されている。棚受部11a内方の支持部材13aの光硬化性樹脂は、棚受部11aの片持ち梁形状において棚21を支持するのに十分な撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を有している。このため、本実施形態の支持部材13aは液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持することができる。同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の内方に充填された光硬化性樹脂もそれぞれ支持部材13b、13c、13a´、13b´、13c´として機能する。
【0061】
本変形例においても、停電等により冷蔵庫1の電源がオフ状態になり潜熱蓄熱材7による保冷効果が得られる一方、潜熱蓄熱材7は徐々に液相へ相転移して硬度が低下する。しかしながら、棚受部11の支持部材13には周囲温度に支持強度が影響を受けない光硬化性樹脂が用いられている。このため、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず確実に棚21の支持を維持できる。棚受部11の内方に充填した光硬化性樹脂の光硬化は、潜熱蓄熱材7を配置する前にスポットUV機を用いて予め行えばよい。
【0062】
このように、本実施形態の蓄熱容器は、箱型の外壁3と、外壁3の内方に嵌め込まれて固定された箱型の庫内壁9と、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置され、所定の相転移温度で固相から液相へ可逆的に相転移する潜熱蓄熱材7と、庫内壁9内方であって貯蔵物を貯蔵する貯蔵室10と、貯蔵室10内で貯蔵物を載置する棚21を支持するために庫内壁9の一部を貯蔵室10内に突出させた棚受部11と、外壁3と庫内壁9との間の領域の棚受部11の庫内壁9側に配置され、液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持する支持部材13とを有する。そして、支持部材13は、潜熱蓄熱材7ではなく熱または光で硬化する硬化性樹脂である。このため、潜熱蓄熱材7が液相になっても支持部材12の支持強度は変化しない。よって、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず常時確実に棚21を支持できる。本実施の形態によれば、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱容器において、棚受部11の棚21を支持する強度を高くすることができる。
[第3の実施の形態]
【0063】
次に、本発明の第3の実施の形態による蓄熱容器について図5を用いて説明する。第1の実施の形態による蓄熱容器と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態の蓄熱容器は図1に示したのと同様の直冷式の冷蔵庫1である。但し、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置された潜熱蓄熱材7は、棚受部11a、11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部の領域αと断熱材5との間にも配置されている。従って、潜熱蓄熱材7は庫内壁9全域を囲むように配置されている。断熱材5は外壁3と庫内壁9との間の潜熱蓄熱材7以外の残余の領域に配置されている。本実施の形態では断熱材5として発泡ウレタンが用いられている。
【0064】
図5は、冷蔵室10上段の左側面部の棚受部11aの近傍の断面を拡大して示している。棚受部11aは図2に示す棚受部11aと同様の根元部の幅が広い片持ち梁状の断面形状を有して冷蔵室10内に突出している。冷蔵室10中段の左側面部の棚受部11b、右側面部の棚受部11b´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。また、冷蔵室10下段の左側面部の棚受部11c、右側面部の棚受部11c´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。
【0065】
棚受部11aの根元部の領域αと断熱材5との間には、潜熱蓄熱材7が配置されている。同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部と断熱材5との間にも潜熱蓄熱材7が配置されている。本実施形態の潜熱蓄熱材7は、ゲル化させたパラフィンを含んでいる。潜熱蓄熱材7の相転移温度は、4℃から6℃程度が望ましい。
【0066】
棚受部11aの内方の支持部材15aとしてフィラーFを混合した潜熱蓄熱材7が充填されている。フィラーFは、例えば三次元形状(テトラポッド形状)を有し、含有させると機械的強度を高める作用を奏する。棚受部11aの根元部の領域αと断熱材5との間に潜熱蓄熱材7が配置されているが、棚受部11a内方の支持部材15aのフィラーFを混合した潜熱蓄熱材7は、棚受部11aの片持ち梁形状において棚21を支持するのに十分な撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を有している。このため、本実施形態の支持部材15aは液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持することができる。
【0067】
同様に他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の内方に充填されたフィラーFを混合した潜熱蓄熱材7もそれぞれ支持部材15b、15c、15a´、15b´、15c´として機能する。
【0068】
本実施の形態においても、停電等により冷蔵庫1の不図示の電源がオフ状態になると、不図示の温度制御装置や冷却装置への電力供給が停止して、冷却装置による冷却能力は失われる。本実施の形態による冷蔵庫1は、停電等により冷却装置による冷却能力が失われると、潜熱蓄熱材(フィラーFを混合した潜熱蓄熱材を含む)7による保冷が開始される。冷蔵室10内の空気は、庫内壁9の外側に貼り巡らされている潜熱蓄熱材7により一定期間、所定温度範囲に維持される。
【0069】
また、本実施形態によれば、停電等により冷蔵庫1の電源がオフ状態になり潜熱蓄熱材7による保冷効果が得られる一方、潜熱蓄熱材7は徐々に液相へ相転移して硬度が低下する。同様に、棚受部11の支持部材15の潜熱蓄熱材7も液相へ相転移して硬度が低下するが、含有したフィラーFにより撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を低下させずに、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず確実に棚21の支持を維持できる。
【0070】
次に、発泡ウレタンの注入工程について簡単に説明する。まず、外壁3の内方に庫内壁9が嵌め込まれた冷蔵庫前組箱体をウレタン発泡治具内に格納する。次いで、発泡治具を45℃程度に保持しながら外壁3と庫内壁9の間の空間にポリオール液とイソシアネート液等、発泡ウレタンの原液をそれぞれ同時に注入する。これにより外壁3と庫内壁9の間の空間に発泡ウレタンが充填される。この後、発泡ウレタンが充填された冷蔵庫箱体を発泡治具から取り外す。本実施形態による潜熱蓄熱材7の流動性が増加する温度は70〜80℃以上なので、発泡ウレタンの注入工程中に潜熱蓄熱材7が周囲に流動することはない。
【0071】
本実施形態で用いたフィラーFは潜熱蓄熱材に含有させるだけでなく、第1〜第2の実施の形態で説明した支持部材12、13に含有させて支持部材12、13の機械的強度を高くすることもできる。
【0072】
また、支持部材12、13、15にフィラーFに代えて機械的強度を高める材料としてゴムや紙粘土等を含有させてもよい。
【0073】
このように、本実施形態の蓄熱容器は、箱型の外壁3と、外壁3の内方に嵌め込まれて固定された箱型の庫内壁9と、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置され、所定の相転移温度で固相から液相へ可逆的に相転移する潜熱蓄熱材7と、庫内壁9内方であって貯蔵物を貯蔵する貯蔵室10と、貯蔵室10内で貯蔵物を載置する棚21を支持するために庫内壁9の一部を貯蔵室10内に突出させた棚受部11と、外壁3と庫内壁9との間の領域の棚受部11の庫内壁9側に配置され、液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持する支持部材15とを有する。そして、支持部材15は、フィラーを含有させた潜熱蓄熱材7である。このため、潜熱蓄熱材7が液相になってもフィラーを含有させた潜熱蓄熱材7の支持部材12の支持強度はあまり低下しない。よって、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず常時確実に棚21を支持できる。本実施の形態によれば、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱容器において、棚受部11の棚21を支持する強度を高くすることができる。
[第4の実施の形態]
【0074】
次に、本発明の第4の実施の形態による蓄熱容器について図6を用いて説明する。第1の実施の形態による蓄熱容器と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態の蓄熱容器は図1に示したのと同様の直冷式の冷蔵庫1である。但し、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置された潜熱蓄熱材7は、棚受部11a、11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部の領域αと断熱材5との間にも配置されている。さらに、潜熱蓄熱材7は領域αを超えて棚受部11a、11b、11c、11a´、11b´、11c´の先端側にも一部充填されている。潜熱蓄熱材7は庫内壁9全域を囲むように配置されている。断熱材5は外壁3と庫内壁9との間の潜熱蓄熱材7以外の残余の領域に配置されている。本実施の形態では断熱材5として発泡ウレタンが用いられている。
【0075】
図6は、冷蔵室10上段の左側面部の棚受部11aの近傍の断面を拡大して示している。棚受部11aは図2に示す棚受部11aと同様の根元部の幅が広い片持ち梁状の断面形状を有して冷蔵室10内に突出している。冷蔵室10中段の左側面部の棚受部11b、右側面部の棚受部11b´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。また、冷蔵室10下段の左側面部の棚受部11c、右側面部の棚受部11c´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。
【0076】
棚受部11aの根元部の領域αと断熱材5との間には、潜熱蓄熱材7が配置されている。さらに、潜熱蓄熱材7は領域αを超えて棚受部11aの先端側にも一部充填されている。棚受部11aの庫壁面9とそれに続く棚受部11a上下の庫壁面9の一部領域には、第1〜第3の実施の形態で説明した支持部材12a、13a、15aの材料のいずれかと同じ材料を塗布した支持部材17aが形成されている。従って、本実施形態の棚受部11aは先端部から庫壁面9、支持部材17a、潜熱蓄熱材7の3層構造になっている。他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´も同様の3層構造を有している。
【0077】
棚受部11a内方の支持部材17aは、棚受部11aの片持ち梁形状において棚21を支持するのに十分な撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を有している。このため、本実施形態の支持部材17aは液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持することができる。
【0078】
他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´の支持部材17b、17c、17a´、17b´、17c´も液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持することができる。
【0079】
本実施の形態において、停電等により冷蔵庫1の電源がオフ状態になり潜熱蓄熱材7による保冷効果が得られる一方、潜熱蓄熱材7は徐々に液相へ相転移して硬度が低下する。棚受部11の潜熱蓄熱材7も硬度が低下するが、支持部材17により撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を低下させずに、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず確実に棚21の支持を維持できる。
[第5の実施の形態]
【0080】
次に、本発明の第5の実施の形態による蓄熱容器について図7を用いて説明する。第1の実施の形態による蓄熱容器と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態の蓄熱容器は図1に示したのと同様の直冷式の冷蔵庫1である。
【0081】
図7は、冷蔵室10上段の左側面部の棚受部11aの近傍の断面を拡大して示している。棚受部11aは図2に示す棚受部11aと同様の根元部の幅が広い片持ち梁状の断面形状を有して冷蔵室10内に突出している。冷蔵室10中段の左側面部の棚受部11b、右側面部の棚受部11b´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。また、冷蔵室10下段の左側面部の棚受部11c、右側面部の棚受部11c´の形状、構成も棚受部11a、11a´と同様なので説明は省略する。
【0082】
棚受部11aの根元部の領域αから先端部までの棚受部11a内方全領域、及び棚受部11aの根元部の領域αを含んで上下に延びる庫壁面9の外側の一部領域には、それら領域を覆う形状に一体成型された樹脂材18が支持部材18aとして嵌め込まれている。樹脂材18としては、第1〜第3の実施の形態で説明した支持部材12a、13a、15aの材料のいずれかと同じ材料を用いてもよい。断熱材5と支持部材18aとの間の領域には潜熱蓄熱材7が配置されている。潜熱蓄熱材7は庫内壁9全域を囲むように配置されている。断熱材5は外壁3と庫内壁9との間の潜熱蓄熱材7以外の残余の領域に配置されている。本実施の形態では断熱材5として発泡ウレタンが用いられている。
【0083】
棚受部11a内方及び棚受部11a周囲に一体的に配置された支持部材18aは、棚受部11aの片持ち梁形状において棚21を支持するのに十分な撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を有している。このため、本実施形態の支持部材18aは液相に相転移した潜熱蓄熱材7より高い支持強度で棚21を支持することができる。
【0084】
他の棚受部11b、11c、11a´、11b´、11c´においても、棚受部11a内方及び棚受部11a周囲に一体的に配置された支持部材18aと同様の支持部材18b、18c、18a´、18b´、18c´が配置されている。
【0085】
本実施の形態において、停電等により冷蔵庫1の電源がオフ状態になり潜熱蓄熱材7による保冷効果が得られる一方、潜熱蓄熱材7は徐々に液相へ相転移して硬度が低下する。棚受部11の潜熱蓄熱材7も硬度が低下するが、支持部材18a等により撓み強度や曲げ強度等の機械的強度を低下させずに、冷蔵庫1の電源のオン状態オフ状態に係わらず確実に棚21の支持を維持できる。
[第6の実施の形態]
【0086】
次に、本発明の第6の実施の形態による蓄熱容器について図8を用いて説明する。第1の実施の形態による蓄熱容器と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態の蓄熱容器は図1に示したのと同様の直冷式の冷蔵庫1である。但し、外壁3と庫内壁9との間の領域の庫内壁9側に配置された潜熱蓄熱材7は、棚受部11a、11b、11c、11a´、11b´、11c´の根元部の領域にも配置されている。従って、潜熱蓄熱材7は庫内壁9全域を囲むように配置されている。断熱材5は外壁3と庫内壁9との間の潜熱蓄熱材7以外の残余の領域に配置されている。本実施の形態では断熱材5として発泡ウレタンが用いられている。
【0087】
冷蔵室10上段の左側面部の棚受部11aの近傍の断面は第3の実施の形態の図5に示すものと同一である。冷蔵室10の上段の棚受部11a、11a´の内方の支持部材15a、15a´にはフィラーFを相対的に高密度に混合した潜熱蓄熱材7が充填されている。冷蔵室10の上段の棚受部11b、11b´の内方の支持部材15b、15b´にはフィラーFを相対的に中密度に混合した潜熱蓄熱材7が充填されている。冷蔵室10の下段の棚受部11c、11c´の内方の支持部材15c、15c´にはフィラーFを相対的に低密度に混合した潜熱蓄熱材7が充填されている。
【0088】
冷蔵庫1の電源がオフ状態になって、冷蔵室10内の温度が上昇した際、一般に庫内の上部の方が下部よりも温度が高くなる。このため、冷蔵室10内の上方の棚受部11の支持部材15内の潜熱蓄熱材7の方が軟らかくなり易く棚21への耐荷重がより低下すると考えられる。そこで、庫内の上部にある棚受部11の支持部材15内のフィラーの含有量を増やして耐荷重が大きくなるような構成にしている。つまり、貯蔵室10の上側に設けられた支持部材15の支持強度は、貯蔵室10の下側に設けられた支持部材15の支持強度より高いことを特徴とする。上方の棚21が落下する方が相対的に下方の棚21が落下するより被害が甚大となるので、上段の棚受部11の強度を強くすることに意義がある。
【0089】
冷蔵室10の上段に行くほど棚受部11の機械的強度を高くするには、支持部材15内のフィラーの含有量を増やす他に以下の方法も用いることができる。例えば、支持部材12、13、17、18のいずれかを用いる場合は、冷蔵室10の上下段で支持部材の形成材料は変えずに、棚受部11の断面形状を上段に行くほど大きくするようにしてもよい。
【0090】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では蓄熱容器として直冷式の冷蔵庫を用いて説明したが本発明はこれに限らず、ファン式の冷蔵庫にももちろん適用可能である。
【0091】
また例えば、上記実施の形態では蓄熱容器として冷蔵庫を用いて説明したが本発明はこれに限らず、相転移温度が例えば数十℃の潜熱蓄熱材を用いた温蔵庫にももちろん適用可能である。
【0092】
なお、上記詳細な説明で説明した事項、特に実施例および変形例等で説明した事項は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 冷蔵庫
3 外壁
5 断熱材
7 潜熱蓄熱材
9 庫内壁
10 冷蔵室
11a、11b、11c、11a´、11b´、11c´ 棚受部
12a、12b、12c、12a´、12b´、12c´ 支持部材(断熱材)
13a 支持部材(熱または光硬化性樹脂)
15a、15b、15c、15a´、15b´、15c´ 支持部材(フィラー含有潜熱蓄熱材)
17a 支持部材(塗布部材)
18a 支持部材(樹脂材)
19 冷却器
21 棚
31a 支持部材(潜熱蓄熱材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の外壁と、
前記外壁の内方にある箱型の庫内壁と、
前記外壁と前記庫内壁との間の領域の前記庫内壁側に配置され、所定の温度で固相から液相へ可逆的に相転移する潜熱蓄熱材と、
前記庫内壁内方であって貯蔵物を貯蔵する貯蔵室と、
前記貯蔵室内で前記貯蔵物を載置する棚を支持するために前記庫内壁の一部を前記貯蔵室内に突出させた棚受部と、
前記外壁と前記庫内壁との間の領域の前記棚受部の前記庫内壁側に配置され、前記液相に相転移した前記潜熱蓄熱材より高い支持強度で前記棚を支持する支持部材と
を有することを特徴とする蓄熱容器。
【請求項2】
請求項1記載の蓄熱容器であって、
前記外壁と前記庫内壁との間に充填された断熱材をさらに有すること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項3】
請求項2記載の蓄熱容器であって、
前記支持部材は、前記断熱材と同一材料で形成されていること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の蓄熱容器であって、
前記支持部材は、熱または光で硬化する硬化性樹脂であること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の蓄熱容器であって、
前記支持部材に機械的強度を高める材料が含有されていること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項6】
請求項1または2に記載の蓄熱容器であって、
前記支持部材は、前記潜熱蓄熱材に機械的強度を高める材料を含有したものであること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の蓄熱容器であって、
前記潜熱蓄熱材はゲル化剤を含んでいること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の蓄熱容器であって、
前記潜熱蓄熱材はパラフィンを含んでいること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の蓄熱容器であって、
前記潜熱蓄熱材は、定常運転において前記貯蔵室内で制御可能な温度と、前記貯蔵室の周囲の雰囲気の温度との間の温度で固相から液相へ可逆的に相転移すること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の蓄熱容器であって、
前記貯蔵室に熱交換器が配置されていること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項11】
請求項10記載の蓄熱容器であって、
前記熱交換器は冷却器であること
を特徴とする蓄熱容器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の蓄熱容器を有することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項13】
請求項12記載の冷蔵庫であって、
前記貯蔵室の上側に設けられた支持部材の支持強度は、前記貯蔵室の下側に設けられた支持部材の支持強度より高いこと
を特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229867(P2012−229867A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98769(P2011−98769)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】