説明

蓄熱式床暖房の構造

【課題】追い掛け運転時の加熱のレスポンスを向上させるとともに、省スペース化および低コスト化を図り、施工性にも優れた蓄熱式床暖房の構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる蓄熱式床暖房の構造100は、発熱体122aを含む発熱層122と、発熱層122の上に配置された上側蓄熱材124と、上側蓄熱材124の上に配置された金属製下地材112および金属製下地材112の上に積層された仕上材114を含む床部110と、発熱層122と金属製下地材112とを接続し、かつ、床部110を下方から支える金属製の上側根太140とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱層で発生する熱を蓄熱する蓄熱材を備えた蓄熱式床暖房の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄熱式床暖房の構造としては、温水パイプや電気ヒータ等の発熱体を含む発熱層と、発熱層で発生する熱を蓄熱する蓄熱材とを備え、蓄熱運転および追い掛け(追い炊き)運転を行うものが知られている。
【0003】
蓄熱運転では、例えば、安価な夜間電力を利用して発熱体を加熱し、発熱層で発生する熱を蓄熱材に蓄熱する。この蓄熱材に蓄熱された熱は、翌日の日中に放熱されて床暖房に利用される。追い掛け運転では、例えば、蓄熱材からの放熱が不足している場合に、発熱体を加熱して床暖房を行う。
【0004】
特許文献1には、蓄熱材を上下に挟む2つの発熱体を備え、床部に接する上方の発熱体を追い掛け運転時に加熱し、また、断熱材に接する下方の発熱体を蓄熱運転時に加熱する蓄熱式床暖房装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、床部と蓄熱材との間に配置されていて、上面に発熱体が貼付された袋体を備えた蓄熱式床暖房装置が記載されている。この蓄熱式床暖房装置では、蓄熱運転時に袋体を収縮させて発熱体を蓄熱用発熱体として利用し、また、追い掛け運転時に袋体を膨張させて発熱体を追い掛け用発熱体として利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−245533号公報
【特許文献2】特開2004−60917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の蓄熱式床暖房装置では、2つの発熱体を設置しなければならず、床下での設置スペースが大きくなるという問題があった。また、発熱体が温水を利用したものであれば、2つの発熱体にそれぞれ接続する配管が必要となり、配管の設置スペースを確保しなければならない。さらに、配管が増えることで、施工に手間がかかるという問題もある。
【0008】
特許文献2に記載の蓄熱式床暖房装置では、蓄熱運転時および追い掛け運転時で発熱体を上下に移動させる機構が必要となり、機構の設置スペースを床下に確保しなければならない。また、床下に設置された機構のメンテナンスは困難となり、耐久性の面で問題がある。さらに、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、2つの発熱体、あるいは発熱体を上下移動させる機構が必要であるから、製造コストも増加してしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、追い掛け運転時の加熱のレスポンスを向上させるとともに、省スペース化および低コスト化を図り、施工性にも優れた蓄熱式床暖房の構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる蓄熱式床暖房の構造の代表的な構成は、発熱体を含む発熱層と、発熱層の上に配置された蓄熱材と、蓄熱材の上に配置された金属製下地材および金属製下地材の上に積層された仕上材を含む床部と、発熱層と金属製下地材とを接続し、かつ、床部を下方から支える金属製の第1の根太とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、発熱層から蓄熱材を経由して床部の金属製下地材に熱を伝達する経路と、蓄熱材を経由せず、発熱層から第1の根太を経由して金属製下地材に熱を伝達する短絡経路とが形成される。短絡経路は、金属製の第1の根太を経由するので、蓄熱材を経由する経路よりも熱伝導性が高い(伝熱速度が速い)。なお、蓄熱材を経由する経路は主に蓄熱運転時に用いられ、短絡経路は追い掛け運転時に用いられる。
【0012】
蓄熱運転では、例えば夜間電力を利用して発熱体を加熱し、発熱層で発生する熱を蓄熱材に蓄熱する。蓄熱材に蓄熱された熱は、蓄熱材から床部の金属製下地材に伝達されて、床部の表面温度を上昇させる。一方、追い掛け運転では、蓄熱材を経由する経路に加えて、短絡経路により、発熱層の熱が床部の金属製下地材に伝達される。このため、床部の表面温度の上昇時間を短縮でき、追い掛け運転時のレスポンスを高めることができる。
【0013】
また、短絡経路は、床部を下方から支える第1の根太により形成されている。根太とは、床部を支えるために所定間隔で複数配置されているフレームである。このため、隣接する第1の根太の間に、蓄熱材を収容するためのスペースを確保できる。よって、施工の際には、隣接する第1の根太の間に蓄熱材を収容し、第1の根太および蓄熱材の上に床部を設置すればよく、施工性に優れている。このように、第1の根太を用いて短絡経路を形成することで、構造を簡素化でき、省スペース化および低コスト化を実現できる。したがって、上記蓄熱式床暖房の構造は、蓄熱運転および追い掛け運転が可能であり、また、省スペース化および低コスト化を図り、施工性にも優れたものとなる。
【0014】
所定間隔で複数配置され、発熱層を介して第1の根太を下方から支えていて、第1の根太よりも熱伝導性が低い第2の根太をさらに備えるとよい。これにより、発熱層の熱が第2の根太に伝達されにくくなり、発熱層の下方への熱損失を低減できる。
【0015】
第1の根太は、長手方向とほぼ直交する横方向に、発熱体に接続される温水パイプまたは電線を挿入するための貫通穴を有するとよい。これにより、第1の根太の貫通穴に横方向から温水パイプまたは電線を容易に通すことができ、施工性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、追い掛け運転時の加熱のレスポンスを向上させるとともに、省スペース化および低コスト化を図り、施工性にも優れた蓄熱式床暖房の構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における蓄熱式床暖房の構造を説明する図である。
【図2】蓄熱式床暖房の構造を示す斜視図である。
【図3】蓄熱式床暖房の構造の一部を説明する図である。
【図4】蓄熱式床暖房の構造の他の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本実施形態における蓄熱式床暖房の構造を説明する図である。図2は、蓄熱式床暖房の構造を示す斜視図である。図2(a)は、蓄熱式床暖房の構造を示す図である。図2(b)は、図2(a)に示す蓄熱式床暖房の構造の一部を拡大して示す図である。図3は、蓄熱式床暖房の構造の一部を説明する図である。
【0020】
蓄熱式床暖房の構造100は、図1に示すように、床部110と床下部120とを備えている。床部110は、アルミニウム等の熱伝導性に優れた材料からなる金属製下地材112と、金属製下地材112の上に積層されたフローリング等の仕上材114とを有する。
【0021】
床下部120は、発熱層122と、発熱層122を上下に挟むように配置された上側蓄熱材124および下側蓄熱材126と、下側蓄熱材126の下に配置された断熱材128と、断熱材128の下に配置された床構造130と、第1の根太(上側根太140)および第2の根太(下側根太150)とを備えている。
【0022】
発熱層122は、例えば温水パイプあるいは電気ヒータ等の発熱体122aと、良導体122bとが一体化された層である。良導体122bは、金属製下地材112と同様の材料からなり、発熱体122aを囲むように形成されている。上側蓄熱材124および下側蓄熱材126は、例えば潜熱蓄熱材であり、単位質量当たりの潜熱が大きく、相変化温度が安定な塩化カルシウムあるいは硫酸ナトリウム等の物質が好適に用いられる。
【0023】
上側蓄熱材124は、図1に示すように、下面が発熱層122に接触し、上面が床部110の金属製下地材112に接触していて、発熱層122で発生する熱を蓄熱する。下側蓄熱材126は、上面が発熱層122に接触し、下面が断熱材128に接触していて、発熱層122の熱を蓄熱する。また、上側蓄熱材124および下側蓄熱材126に蓄熱された熱は、模式的に示す経路Aを経て、床部110の金属製下地材112に伝達される。
【0024】
断熱材128は、上面が下側蓄熱材126に接触し、下面が床構造130に接触していて、下側蓄熱材126から床構造130に熱量が漏出することを防止する。床構造130は、いわゆる土間、大引、パネル床等である。
【0025】
次に、上側根太140および下側根太150について説明する。ここで、根太とは、床部110を下方から支える太いフレームであり、図2(a)に示すように、所定間隔(例えば、30〜40cm)で並列して複数配置されている。
【0026】
上側根太140は、アルミニウム等の熱伝導性に優れた材料からなる金属製である。上側根太140は、図1に示すように、下面が発熱層122に接触し、上面が床部110の金属製下地材112に接触していて、双方を接続した状態で床部110を下方から支えている。また、隣接する上側根太140の間には、上側蓄熱材124が位置している。
【0027】
上側根太140は、図1に模式的に示す短絡経路Bを形成する。短絡経路Bは、上側蓄熱材124を経由せず、発熱層122から上側根太140を経由して金属製下地材112に熱を伝達する。また、短絡経路Bは、金属製の太い上側根太140を経由するので、上記経路Aよりも熱伝導性が高い。
【0028】
また、上側根太140は、図2(a)に示す根太方向(長手方向)とほぼ直交する横方向に貫通穴142を有する(図2(b)参照)。なお、図2(b)は、図2(a)に示す領域Cでの上側根太140を拡大して示している。この貫通穴142には、図3に示すように、電線(あるいはパイプ)160が挿入される。電線160のリード線162は、例えばハーネス等を介して発熱体122aに接続される。
【0029】
下側根太150は、木材等の熱伝導性が低い材料からなる。下側根太150は、下面が床構造130に接触し、上面が発熱層122に接触していて、発熱層122を介して上側根太140を下方から支えている。また、隣接する下側根太150の間には、下側蓄熱材126および断熱材128が位置している。
【0030】
以下、蓄熱式床暖房の構造100での蓄熱運転および追い掛け運転について説明する。蓄熱運転では、例えば安価な夜間電力を利用して発熱体122aを加熱し、発熱層122で発生する熱を上側蓄熱材124および下側蓄熱材126に蓄熱する。上側蓄熱材124および下側蓄熱材126に蓄熱された熱は、例えば翌日の日中に放熱されて、上記経路Aを経て床部110の金属製下地材112に伝達され、床部110の表面温度を上昇させる。
【0031】
追い掛け運転は、例えば床部110の表面温度を急速に上昇させたい場合等に行われる。追い掛け運転では、発熱体122aを加熱すると、発熱層122で発生する熱が、経路Aに加えて、経路Aよりも熱伝導性が高い上記短絡経路Bを経て床部110の金属製下地材112に伝達される。このため、追い掛け運転では、床部110の表面温度が急速に上昇する。
【0032】
これらのことから、本実施形態における蓄熱式床暖房の構造100では、蓄熱運転時に上側蓄熱材124および下側蓄熱材126に蓄熱して、経路Aを用いて床部110の表面温度を上昇させることができる。さらに、追い掛け運転時に、経路Aに加えて短絡経路Bを用いて、発熱層122で発生する熱を床部110に伝達するので、床部110の表面温度の上昇時間を短縮し、レスポンスを高めることができる。
【0033】
また、床部110を下方から支えるために上側根太140が所定間隔で複数配置されているので、隣接する上側根太140の間に、上側蓄熱材124を収容するためのスペースを確保できる。このため、施工の際には、隣接する上側根太140の間に上側蓄熱材124を収容し、上側根太140および上側蓄熱材124の上に、床部110を設置すればよく、施工性に優れている。
【0034】
また、施工の際に、下側根太150が既存のものであれば、既存の下側根太150の上に金属製の上側根太140を配置することで、蓄熱式床暖房の構造100を容易に施工できることから、改築(リフォーム)に好適である。なお、リフォームの際には、既存の下側根太150を削る等して床の高さ調整を行うようにしてもよい。
【0035】
また、発熱層122を介して上側根太140を下方から支えている下側根太150が、上側根太140よりも熱伝導性が低いので、発熱層122の熱が下側根太150に伝達され難くなり、発熱層122の下方への熱損失を低減できる。
【0036】
また、発熱体122aに接続される電線(あるいはパイプ)160を、上側根太140の貫通穴142に挿入できるので、施工の手間がかからず、施工性が向上する。
【0037】
さらに、上側根太140を利用して短絡経路Bが形成されているので、構造を簡素化でき、省スペース化および低コスト化を図ることができる。なお、メンテナンスも容易であるから、耐久性を維持して長寿命化も図れる。また、隣接する上側根太140の間には、容量の大きな上側蓄熱材124も収容でき、より大きな熱量を蓄熱できる。
【0038】
上記実施形態では、金属製の上側根太140として、中実な部材に貫通穴142を形成した例について説明したが、これに限られない。一例として、上側根太140は、熱伝導性に優れた材質で形成した角パイプ等の空洞材であってもよい。このような空洞材を用いた場合であっても、上記短絡経路Bが形成され、追い掛け運転により床部110を急速に暖めることができる。また、空洞に各種配管や電線等を通すこともできる。
【0039】
また、本実施形態では、発熱層122を挟むように上側蓄熱材124および下側蓄熱材126を配置したが、上側蓄熱材124による蓄熱で床部110の表面温度を十分に高めることができるのであれば、下側蓄熱材126を設置しなくてもよい。これにより、構造がより簡素化されて、低コスト化を図れる。なお、下側蓄熱材126を設置しない場合には、断熱材128を厚くして上面を発熱層122に接触させてもよい。このようにすれば、発熱層122の下方への熱損失を低減できる。
【0040】
また、図4は、蓄熱式床暖房の構造の他の構成例を説明する図である。図4に示す他の蓄熱式床暖房の構造100Aのように、発熱層122と下側根太150との間に吸振ゴム170を配置してもよい。このようにすれば、床部110の振動を吸振ゴム170で吸収できる。このため、蓄熱式床暖房の構造100Aを家屋の2階以上の床に適用すれば、階下に振動が伝わらず好適である。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、発熱層で発生する熱を蓄熱する蓄熱材を備えた蓄熱式床暖房の構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100…蓄熱式床暖房の構造、110…床部、112…下地材、114…仕上材、120…床下部、122…発熱層、122a…発熱体、122b…良導体、124…上側蓄熱材、126…下側蓄熱材、128…断熱材、130…床構造、140…上側根太(第1の根太)、142…貫通穴、150…下側根太(第2の根太)、160…電線、170…吸振ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を含む発熱層と、
前記発熱層の上に配置された蓄熱材と、
前記蓄熱材の上に配置された金属製下地材および該金属製下地材の上に積層された仕上材を含む床部と、
前記発熱層と前記金属製下地材とを接続し、かつ、前記床部を下方から支える金属製の第1の根太とを備えることを特徴とする蓄熱式床暖房の構造。
【請求項2】
所定間隔で複数配置され、前記発熱層を介して前記第1の根太を下方から支えていて、該第1の根太よりも熱伝導性が低い第2の根太をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱式床暖房の構造。
【請求項3】
前記第1の根太は、長手方向とほぼ直交する横方向に、前記発熱体に接続される温水パイプまたは電線を挿入するための貫通穴を有することを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱式床暖房の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−172928(P2012−172928A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36255(P2011−36255)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】