説明

蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム

【課題】蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、複数系統の各蓄熱槽の蓄熱量の平準化を推進し電力コストの低減を図ることができる。
【解決手段】空調システム10は、2つの系統の室外機16に対応し、これらの系統に属する複数系統用室内機18と、複数系統用室内機18の所属をいずれか1つの系統に切り替える切替手段28と、各蓄熱槽20の蓄熱量Tをそれぞれ検出する蓄熱量検出センサ24と、蓄熱量検出センサ24により検出された蓄熱量Tに基づいて、切替手段28を制御する制御部30とを有する。制御部30の動作により、蓄熱量Tの平準化を推進し電力コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱槽と室外機と室内機とを有する蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、1組の室外機と、この室外機に対応する複数の室内機とを有する空気調和機に、熱を蓄える蓄熱槽を組み合わせた蓄熱式空気調和機が知られている。
【0003】
この蓄熱式空気調和機は、夜間に、室外機の運転により熱を生成し、この生成された熱を蓄熱槽に蓄える冷房または暖房蓄熱運転と、昼間に、蓄熱槽に蓄えられた熱を室内機に供給して居室の冷房または暖房を行なう蓄熱利用冷房または暖房運転とを有する。
【0004】
このような運転を有する蓄熱式空気調和機によれば、例えばオフィスビルの場合、電力消費の少ない夜間に蓄熱し、その熱を、電力を多く使用する昼間に放出することができるので、ピークカットやピークシフトが可能になる。さらに、冷房または暖房蓄熱運転には、昼間の電力料金より安価な夜間電力が利用されるので、電力コストを低減することができる。
【0005】
1系統の蓄熱式空気調和機においては、室外機と室内機とを接続する冷媒配管の長さ、室外機と室内機の高低差、室内機の数および処理可能な空調負荷に限界がある。そこで、比較的大規模な建物においては、蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムが配置される。この空調システムにおいては、通常、運用管理を容易にするため、建物の階、区画、用途など応じて複数の系統が設定され、その設定された系統に属する居室にその系統の室内機が設けられる。
【0006】
下記特許文献1には、屋外に設置される熱源ユニットと、熱源ユニットに対応し、屋内に設置される利用ユニットと、熱源ユニットと利用ユニットにそれぞれ接続され、水または氷を溜める蓄熱槽とを有する氷蓄熱式空気調和装置が記載されている。この特許文献1においては、蓄熱槽内にフロートスイッチを設置して、このスイッチにより検出される水位により蓄熱槽の蓄熱量が検出されることが記載されている。また、この特許文献1においては、蓄熱槽に対する冷媒の入口及び出口温度を検出し、これらの温度と冷媒流量とに基づいて、蓄熱槽の蓄熱量が演算されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−194478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の空調システムにおいては、上述のように、建物の階、区画、用途など応じて複数の系統が設定される。そうすると、通常、系統ごとに対象となる空調負荷が異なるので、蓄熱利用冷房または暖房運転時における各蓄熱槽の蓄熱量にバラつきが生じてしまう。この蓄熱量のバラつきが継続すると以下のような問題が生じる。
【0009】
すなわち、ある系統においては、蓄熱槽の蓄熱量が無くなったために圧縮機による冷房または暖房運転への切り替えが行なわれるのに対し、他の系統においては、蓄熱槽の蓄熱量がまだあるので、蓄熱利用冷房または暖房運転が継続して行なわれる。そうすると、ピークカットやピークシフトの効果が小さくなるとともに、昼間の電力料金を利用した圧縮機による冷房または暖房運転より電力コストが上昇してしまうという問題が発生する。
【0010】
本発明の目的は、蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、複数系統の各蓄熱槽の蓄熱量の平準化を推進し電力コストの低減を図ることができる空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、1組の室外機と、室外機に対応する少なくとも1台の室内機と、室外機により生成された熱を蓄え、その熱を室内機に供給可能な蓄熱槽と、を有する蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、少なくとも2つの系統の室外機に対応し、これらの系統に属する複数系統用室内機と、複数系統用室内機の所属をいずれか1つの系統に切り替える切替手段と、各蓄熱槽の蓄熱量をそれぞれ検出する蓄熱量検出手段と、蓄熱量検出手段により検出された蓄熱量に基づいて、切替手段を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、制御部は、蓄熱量の平準化を図るように切替手段を制御することができる。
【0013】
また、制御部は、蓄熱量が閾値より小さい場合、その蓄熱量の蓄熱槽と同じ系統に属する複数系統用室内機を、その他の系統に属するように切替手段を制御することができる。
【0014】
また、制御部は、蓄熱量が他の蓄熱量より小さい場合、その蓄熱量の蓄熱槽と同じ系統に属する複数系統用室内機を、その他の系統に属するように切替手段を制御することができる。
【0015】
また、制御部は、蓄熱量が閾値より大きい場合、その蓄熱量の蓄熱槽とは異なる系統に属する複数系統用室内機を、その蓄熱槽の系統に属するように切替手段を制御することができる。
【0016】
また、制御部は、蓄熱量が他の蓄熱量より大きい場合、その大きい蓄熱量の蓄熱槽と異なる系統に属する複数系統用室内機を、その大きい蓄熱量の蓄熱槽の系統に属するように切替手段を制御することができる。
【0017】
また、切替手段は、冷媒回路を切り替える切替バルブと、制御信号を切り替える切替スイッチとを有することが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムによれば、蓄熱利用冷房または暖房運転時における各蓄熱槽の蓄熱量のバラつきを抑制して、蓄熱量の平準化を推進し電力コストの低減を図ることができる。また、このように蓄熱量が平準化されると、蓄熱量がなくなってしまう確率を所定値以下に抑えるのに必要な蓄熱槽の容量を小さくすることができる。したがって、蓄熱式空気調和機を導入するコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る空調システムの構成を示す図である。
【図2】各系統の蓄熱量を示す図である。
【図3】空調システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】ある系統の蓄熱量と切替手段により系統を切り替えるための蓄熱量の閾値の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る、蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムの実施形態について、図を用いて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る空調システム10の構成を示す図である。空調システム10は建物に配置され、建物内の空間、例えば居室(図示せず)に対して冷房及び暖房を行なうシステムである。
【0022】
居室は、利用者が利用する部屋である。居室は、建物がオフィスビルである場合、執務スペース、会議室および食堂などである。また、居室は、建物が学校である場合、教室、図書室、体育館および多目的室などである。本実施形態の建物には、複数の居室が設けられる。
【0023】
本実施形態の空調システム10は、蓄熱式空気調和機12と、蓄熱式空気調和機12をコントロールする集中コントローラ14とを有する。蓄熱式空気調和機12は、1組の室外機16と、室内機18と、蓄熱槽20とを有する。すなわち、蓄熱式空気調和機12は、いわゆるビル用マルチエアコンに蓄熱槽20を組み込んだ空気調和機である。室外機16と室内機18と蓄熱槽20とには、冷媒が流れる冷媒配管22と、制御信号などのやりとりを行なう制御配線(図示せず)とが接続される。蓄熱式空気調和機12は、通常の冷房または暖房運転に加え、夜間に、室外機16の運転により熱を生成し、この生成された熱を蓄熱槽20に蓄える冷房または暖房蓄熱運転と、昼間に、蓄熱槽20に蓄えられた熱を室内機18に供給して居室の冷房または暖房を行なう蓄熱利用冷房または暖房運転とを有する。
【0024】
室外機16は、屋外に設置される。1組の室外機16は、室内機18の数および処理可能な空調負荷に応じて1台または複数台の室外機16から構成される。
【0025】
室外機16は、冷媒回路の一部を構成しており、圧縮機と熱交換器と送風機(全て図示せず)とを有する。冷房運転時には、室内機18から送られてきた低圧の気体冷媒が圧縮機により高圧状態にされる。そして、高圧状態にされた気体冷媒が熱交換器を通過することにより液化し、室内機18に送られる。熱交換器においては、気体冷媒が液化する際の放熱作用により、送風機により送られる外気が暖められる。一方、暖房運転時には、室内機18から送られてきた低圧の液体冷媒が熱交換器を通過することにより気化する。熱交換器においては、液体冷媒が気化する際の吸熱作用により、送風機により送られる外気が冷やされる。そして、気化し気体となった冷媒は、圧縮機により高圧状態にされ、室内機18に送られる。
【0026】
室内機18は、居室に設置される。具体的には、室内機18は、居室の天井面に設置、天井内部に設置、天井から吊り下げて設置、または壁面に壁掛けて設置される。なお、1つの居室に対応する空調機18の台数が1台に限らず複数台とすることができる。
【0027】
室内機18は、冷媒回路の一部を構成しており、熱交換器と膨張弁と送風機(全て図示せず)とを有する。冷房運転時には、室外機16から送られてきた高圧の液体冷媒が膨張弁により低圧状態にされる。そして、低圧状態にされた液体冷媒が熱交換器を通過することにより気化し、室外機16に送られる。熱交換器においては、液体冷媒が気化する際の吸熱作用により、周囲の空気が冷やされる。この冷却された空気が送風機により居室内に送り出されることにより、居室内の冷房が行なわれる。一方、暖房運転時には、室外機16から送られてきた高圧の気体冷媒が熱交換器を通過することにより液化する。液化し液体となった冷媒は、膨張弁により低圧状態にされ、室外機16に送られる。熱交換器においては、気体冷媒が液化する際の放熱作用により、周囲の空気が暖められる。この加熱された空気が送風機により居室内に送り出されることにより、居室内の暖房が行なわれる。
【0028】
室内機18には、リモコン(図示せず)が接続されている。リモコンは、このリモコンに対応する1台または複数台の室内機18を操作することができる。リモコンは、室内機18の運転及び停止、運転モードの切り替え、居室内の設定温度の調整、風向き及び風速の調整などを行うことができる。
【0029】
蓄熱槽20は、冷媒回路の一部を構成しており、熱交換器と膨張弁(ともに図示せず)とを有する。蓄熱槽20は、熱を蓄える蓄熱材として、例えば水を収容する容器である。
【0030】
冷房蓄熱運転時には、室外機16から送られてきた高圧の液体冷媒が膨張弁により低圧状態にされる。そして、低圧状態にされた液体冷媒が熱交換器を通過することにより気化し、室外機16に送られる。熱交換器においては、液体冷媒が気化する際の吸熱作用により、蓄熱槽20内の水が冷やされて氷になり蓄熱される。そして、蓄熱利用冷房運転時には、室内機18へ送る冷媒を液化させるために蓄熱が利用される。
【0031】
一方、暖房蓄熱運転時には、室外機16から送られてきた高圧の気体冷媒が熱交換器を通過することにより液化する。液化して液体となった冷媒は、膨張弁により低圧状態にされ、室外機16に送られる。熱交換器においては、気体冷媒が液化する際の放熱作用により、蓄熱槽20内の水が暖められて温水になり蓄熱される。そして、蓄熱利用暖房運転時には、室内機18へ送る冷媒を気化させるために蓄熱が利用される。
【0032】
また、空調システム10は、蓄熱槽20の内部に蓄熱された熱量である蓄熱量Tを検出する蓄熱量検出手段を有する。本実施形態における蓄熱量検出手段は、蓄熱槽20内部に設けられた蓄熱量検出センサ24である。蓄熱量検出センサ24は、蓄熱槽20の水位を検出する水位センサと、蓄熱槽20の水温を検出する温度センサとを含む。冷房運転時においては、水位センサにより検出された水位に基づいて、氷の量を把握することができるので、蓄熱量Tを検出することができる。また、暖房運転時においては、温度センサにより検出された水温に基づいて、蓄熱量Tを検出することができる。本実施形態においては、蓄熱量検出手段が、蓄熱槽20内部に設けられた蓄熱量検出センサ24である場合について説明したが、この構成に限定されない。蓄熱槽20の蓄熱量Tを検出することができるのであれば、従来技術で述べたように、蓄熱槽に対する冷媒の入口及び出口温度と冷媒流量とを検出し、これらの値に基づいて蓄熱量Tを検出することもできる。
【0033】
集中コントローラ14は、例えば建物を管理する管理室に配置される。集中コントローラ14は、配線26を介して蓄熱式空気調和機12に接続され、蓄熱式空気調和機12の制御、管理を行なう。具体的には、集中コントローラ14は、一括またはグループごとの室内機18に対して、運転及び停止、運転モードの切り替え、設定温度の調整、風向き及び風速の調整、リモコン操作禁止の設定、タイマー(スケジュール)運転などを行なうことができる。また、集中コントローラ14は、蓄熱式空気調和機12の異常の表示、その異常の外部通報などを行うことができる。
【0034】
本実施形態の空調システム10は、図1に示されるように、蓄熱式空気調和機12を3系統有する。この3系統を区別するため、以降、各系統をa,b,c系統とそれぞれ記す。そして、各系統に対応する機器などの符号として、数字の後にa,b,cをそれぞれ付す。a系統には、室外機16aに対応する室内機18aが3台あり、b系統には、室外機16bに対応する室内機18bが2台あり、c系統には、室外機16cに対応する室内機18cが2台ある。なお、本発明はこの構成に限定されず、室外機に対応する室内機の数は少なくとも1台あればよい。また、本実施形態においては、空調システム10が蓄熱式空気調和機12を3系統有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。空調システム10は、蓄熱式空気調和機12が複数系統、例えば2系統または4系統有することもできる。
【0035】
本実施形態の空調システム10は、上述した室内機18a,18b,18cとは別に、少なくとも2つの系統の室外機16に対応し、これらの系統に属する室内機18を有する。そして、本実施形態の空調システム10は、その室内機18の所属をいずれか1つの系統に切り替える切替手段28と、蓄熱量検出手段により検出された蓄熱量Tに基づいて、切替手段28を制御する制御部30とを有する。
【0036】
このような室内機18の特殊な系統パターンと制御部30の動作により、複数系統の各蓄熱槽の蓄熱量の平準化を推進し電力コストの低減を図ることができる。以下、切替手段28と制御部30について具体的に説明する。なお、上述のような、少なくとも2つの系統の室外機16に対応し、これらの系統に属する室内機18を、以降、複数系統用室内機と記す。そして、この複数系統用室内機の符号として、a及びb系統に属するものについては18abを付し、b及びc系統に属するものについては18bcを付す。本実施形態においては、1台の複数系統用室内機が2系統に属する場合ついて説明したが、この構成に限定されず、3系統以上に属することもできる。
【0037】
切替手段28について、複数系統用室内機18abを例に挙げて説明する。切替手段28は、複数系統用室内機18abと、室外機16a及び室外機16bとの間の冷媒回路に配置され、三方弁として機能する。すなわち、切替手段28は、冷媒配管22を介して複数系統用室内機18abに接続される。そして、切替手段28は、冷媒配管22を介して室外機16aに接続されるとともに、別の冷媒配管22を介して室外機16bに接続される。切替手段28は、冷媒回路を切り替える切替バルブ(図示せず)を有する。そして、この切替バルブの動作により、複数系統用室内機18abに通ずる冷媒配管22が、室外機16aに通ずる冷媒配管22、あるいは室外機16bに通ずる冷媒配管22のいずれか一方に接続される。言い換えれば、切替バルブの動作により、複数系統用室内機18abが、蓄熱式空気調和機12aの冷媒回路、あるいは蓄熱式空気調和機12bの冷媒回路のいずれか一方に含まれるようになる。
【0038】
また、切替手段28は、制御配線を介して複数系統用室内機18abに接続される。そして、切替手段28は、制御配線を介して室外機16aに接続されるとともに、別の制御配線を介して室外機16bに接続される。切替手段28は、制御信号を切り替える切替スイッチ(図示せず)を有する。切替スイッチは、リレーシーケンスによるアナログ回路であっても、ソフトウェアにより実現されてもよい。そして、この切替スイッチの動作により、複数系統用室内機18abに通ずる制御配線が、室外機16aに通ずる制御配線、あるいは室外機16bに通ずる制御配線のいずれか一方に接続される。言い換えれば、切替スイッチの動作により、複数系統用室内機18abが、蓄熱式空気調和機12aの系統、あるいは蓄熱式空気調和機12bの系統のいずれか一方に属するようになる。
【0039】
制御部30は、集中コントローラ14に内蔵される。なお、本発明はこの構成に限定されず、集中コントローラ14とは別体に制御部30が設けられてもよい。この場合、制御部30は、配線を介して集中コントローラ14に接続、または配線を介して直に各系統の蓄熱式空気調和機12に接続される。
【0040】
制御部30は、各系統の蓄熱槽20の蓄熱量Tの平準化を図るように各切替手段28をそれぞれ制御する。これにより、蓄熱利用運転時における各蓄熱槽20の蓄熱量Tのバラつきを抑制することができる。
【0041】
蓄熱量Tの平準化を図る具体的な制御部30の制御方法について図2を用いて説明する。図2は、各系統の蓄熱量Tを示す図である。図2には、蓄熱利用運転時のある時点における各蓄熱槽20の蓄熱量Tが示される。この図においては、蓄熱量Tにバラつきが生じている。すなわち、蓄熱量Tは、大きいほうからb系統の蓄熱量Tb、c系統の蓄熱量Tc、そしてa系統の蓄熱量Taの順である。なお、初期設定において、複数系統用室内機18abがa系統に属し、そして複数系統用室内機18bcがc系統に属しているものとする。
【0042】
この場合、制御部30は、蓄熱量Tb,Tcより小さい蓄熱量Taの蓄熱槽20aと同じa系統に属する複数系統用室内機18abを、b系統に属するように切替手段28を制御する。複数系統用室内機18abが、a系統から外れることにより、蓄熱量Taの消費速度が低下する。一方、複数系統用室内機18abが、b系統に属することにより、蓄熱量Tbの消費速度が上昇する。
【0043】
このような制御部30の動作により、各蓄熱量Ta,Tb,Tcの差が縮まり、蓄熱量Tの平準化を図ることができる。蓄熱量Tが平準化されると、系統毎に異なる運転、すなわち、ある系統が圧縮機による通常運転であるのに対し、他の系統が蓄熱利用運転であるという状態を防止することができる。つまり、空調システム10全体で蓄えられた蓄熱を余すことなく効率的に消費することができる。よって、ピークカットやピークシフトの効果が大きくなって夜間電力をより有効利用することができるので、電力コストの低減を図ることができる。
【0044】
また、図2に示される状態において、さらに、制御部30は、複数系統用室内機18bcがc系統に属している場合、その複数系統用室内機18bcを、b系統に属するように切替手段28を制御することもできる。複数系統用室内機18bcが、c系統から外れることにより、蓄熱量Tcの消費速度が低下する。一方、複数系統用室内機18bcが、b系統に属することにより、蓄熱量Tbの消費速度が上昇する。このような制御部30の動作によっても、各蓄熱量Ta,Tb,Tcの差が縮まり、蓄熱量Tの平準化を図ることができる。
【0045】
次に、空調システム10の制御動作について図3を用いて説明する。図3は、空調システム10の制御動作の一例を示すフローチャートである。なお、この制御動作は、蓄熱利用運転時のある時点をスタートとする。
【0046】
まず、ステップS101において、各蓄熱量検出センサ24が蓄熱量Tをそれぞれ検出する。そして、ステップS102において、蓄熱量Tにバラつきがあるか判断される。蓄熱量Tにバラつきが無い場合、制御動作は終了する。
【0047】
一方、蓄熱量Tにバラつきがある場合、ステップS103に進み、制御部30は、小さい蓄熱量Tと同一系統に属する複数系統用室内機18を、その他の系統に属するように切替手段28を制御する。このとき、切替の選択肢に複数の系統がある場合、複数系統用室内機18を、より大きい蓄熱量Tの蓄熱槽20と同じ系統に属するように切り替えることが好適である。
【0048】
そして、ステップS104で、制御部30は、大きい蓄熱量Tとは異なる系統に属する複数系統用室内機18を、その大きい蓄熱量Tの系統に属するように切替手段28を制御して、制御動作が終了する。このとき、切替の選択肢に複数の系統がある場合、より小さい蓄熱量Tの系統に属する複数系統用室内機18を、その大きい蓄熱量Tの系統に属するように切り替えることが好適である。この制御動作において、小さい蓄熱量Tと大きい蓄熱量Tは、全系統の蓄熱量Tの平均値に基づいて判断される。
【0049】
次に、別の態様の制御部30の制御方法について図4を用いて説明する。図4は、a系統の蓄熱量Taと切替手段28により系統を切り替えるための蓄熱量の閾値tの関係の一例を示す図である。なお、初期設定において、複数系統用室内機18abが、a系統に属しているものとする。また、上記実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
図4には、蓄熱利用運転の開始から終了まで時間帯、例えば9時から18時までの時間帯における所定の閾値tが破線で示されている。また、図4には、蓄熱利用運転の開始からある時点h1までの実際の蓄熱量Taが実線で示されている。閾値tは、制御部30に予め記憶される。実際の蓄熱量Taは、蓄熱量検出センサ26により所定時間毎に検出される。この図においては、ある時点h1になると、このときに検出された蓄熱量Th1が、その時点の閾値th1より小さくなる。
【0051】
この場合、制御部30は、その蓄熱量Th1の蓄熱槽22aと同じ系統の複数系統用室内機18abを、b系統に属するように切替手段28を制御する。複数系統用室内機18abが、a系統から外れることにより、蓄熱量Taの消費速度が低下する。
【0052】
この制御部30の動作により、蓄熱量Taが閾値tより小さくなることを抑制することができる。そして、他の系統においても同様の制御を行なうことにより、蓄熱利用運転の開始から終了まで時間帯において全ての蓄熱量Tが閾値tより小さくなることを抑制することができ、結果として各蓄熱量Tの差が縮まり、蓄熱量Tの平準化を図ることができる。閾値tは、各系統が対象とする空調負荷、外気温度、季節などにより設定することができる。
【0053】
この実施形態においては、蓄熱量Tが閾値tより小さい場合、その蓄熱量Tの蓄熱槽20の系統に属する複数系統用室内機18を、その他の系統に属するように切替手段28を制御する場合について説明したが、この構成に限定されない。各蓄熱量Tのバラつきを抑制するために、閾値tより大きい第二の閾値t2を設定し、蓄熱量Tが第二の閾値t2より大きい場合、その蓄熱量Tの蓄熱槽20とは異なる系統に属する複数系統用室内機18を、その大きい蓄熱量Tの系統に属するように切替手段28を制御することもできる。この制御により、蓄熱利用運転の開始から終了まで時間帯において全ての蓄熱量Tが第2の閾値t2より大きくなることを抑制することができ、結果として各蓄熱量Tの差が縮まり、蓄熱量Tの平準化を図ることができる。これらの制御を組み合わせると、全ての蓄熱量Tが閾値tと第2の閾値t2との間を推移することになり、各蓄熱量Tの差を効果的に縮めることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 空調システム、12 蓄熱式空気調和機、14 集中コントローラ、16 室外機、18 室内機、20 蓄熱槽、22 冷媒配管、24 蓄熱量検出センサ、26 配線、28 切替手段、30 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の室外機と、
室外機に対応する少なくとも1台の室内機と、
室外機により生成された熱を蓄え、その熱を室内機に供給可能な蓄熱槽と、
を有する蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、
少なくとも2つの系統の室外機に対応し、これらの系統に属する複数系統用室内機と、
複数系統用室内機の所属をいずれか1つの系統に切り替える切替手段と、
各蓄熱槽の蓄熱量をそれぞれ検出する蓄熱量検出手段と、
蓄熱量検出手段により検出された蓄熱量に基づいて、切替手段を制御する制御部と、
を有することを特徴とする蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、
制御部は、蓄熱量の平準化を図るように切替手段を制御する、
ことを特徴とする蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、
制御部は、蓄熱量が閾値より小さい場合、その蓄熱量の蓄熱槽と同じ系統に属する複数系統用室内機を、その他の系統に属するように切替手段を制御する、
ことを特徴とする蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム。
【請求項4】
請求項2に記載の蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、
制御部は、蓄熱量が他の蓄熱量より小さい場合、その蓄熱量の蓄熱槽と同じ系統に属する複数系統用室内機を、その他の系統に属するように切替手段を制御する、
ことを特徴とする蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム。
【請求項5】
請求項2に記載の蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、
制御部は、蓄熱量が閾値より大きい場合、その蓄熱量の蓄熱槽とは異なる系統に属する複数系統用室内機を、その蓄熱槽の系統に属するように切替手段を制御する、
ことを特徴とする蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム。
【請求項6】
請求項2に記載の蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、
制御部は、蓄熱量が他の蓄熱量より大きい場合、その大きい蓄熱量の蓄熱槽と異なる系統に属する複数系統用室内機を、その大きい蓄熱量の蓄熱槽の系統に属するように切替手段を制御する、
ことを特徴とする蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システムにおいて、
切替手段は、冷媒回路を切り替える切替バルブと、制御信号を切り替える切替スイッチとを有する、
ことを特徴とする蓄熱式空気調和機を複数系統備える空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132621(P2012−132621A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285292(P2010−285292)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】