説明

蓄熱材の製造方法

【課題】簡便且つ安価に無機物付着型蓄熱材を製造でき、しかも、水硬性組成物の硬化時の温度上昇を抑制でき、且つ水硬性組成物に均一に配合でき、有害物質の放出もない無機物付着型蓄熱材が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有する潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子とを、前記潜熱蓄熱物質の融点以上の温度で、水の共存下で混合して、前記潜熱蓄熱物質の表面が前記水難溶性無機微粒子で融着固定化された、平均粒径5〜100μmの無機物付着型蓄熱材を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の蓄熱構造に使用される蓄熱材の製造方法、および該製造方法により得られた蓄熱材を含有する水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
物質や空間を冷却したり加温したりする時に使用される蓄熱材として、物質の相変化に伴う潜熱を利用して蓄熱を行う蓄熱材が広く利用されている。なかでも、相変化を起こし蓄熱を行う潜熱物質が粒子化されてなるものは、取り扱いが容易で、成形体等に配合してもより均一に分散できるという利点を有している。
【0003】
従来、この種の粒子化された潜熱蓄熱材の製法としては、例えば、特許文献1では、潜熱蓄熱物質であるパラフィンを適当な乳化剤と共に水中で分散させ、O/Wエマルジョンを調製する方法、パラフィンを融解点以上に加熱して液状となし、これを加熱した多孔質無機物質小球に含浸させて調製する方法、パラフィンビーズ表面に無機超微粉末を吸着固定させて調製する方法が挙げられている。更に特許文献2では、複合エマルジョン法やインサイチュ重合法といったマイクロカプセル化の製法などが挙げられている。
【特許文献1】特許2740873号
【特許文献2】特開2002−114553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記O/Wエマルジョンや前記マイクロカプセル型蓄熱材は、蓄熱物質として主にパラフィン等の有機物質を用い、乳化剤やカプセル化物質(シェル物質)も有機系化合物が使用されていることが多い。これらの構成物からなる蓄熱材の粒子密度は水よりも軽く成形時に粒子が浮遊し、不均一分散となり粒子が局在化する傾向がある。それにより硬化成形体の強度低下や物性のばらつきが起こる傾向がある。また、これらの製造方法では、例えば、乳化剤の種類と濃度、乳化時の乳化液の温度、乳化比率(水相と油相との体積比率)、乳化機、分散機と称される微粒化装置の運転条件(回転数、処理時間)等の条件設定が必要となりうることから、これらの方法では、安定して製造することが技術的に難しく、製造コストが高くなり好ましくない。さらに、マイクロカプセル化にはコアとシェル部分から構成されているため、カプセル化の製法は一般に煩雑であり、製法によっては有害物質(ホルマリンなど)が残存し、これが成形体から放出されるという環境上の問題も懸念される。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、簡便且つ安価に粒径がほぼ均一な蓄熱材が製造でき、しかも、水硬性組成物の硬化時の温度上昇を抑制でき、且つ水硬性組成物に均一に配合でき、有害物質の放出もない蓄熱材が得られる製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有する潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子とを、前記潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度以上の温度で、水の共存下で混合して、前記潜熱蓄熱物質の表面に前記水難溶性無機微粒子を付着させる工程を有する、平均粒径5〜100μmの粒子からなる蓄熱材の製造方法に関する。
【0007】
また、本発明は、上記本発明の製造方法により製造された蓄熱材と水硬性粉体とを含有する水硬性組成物に関する。
【0008】
本発明に於ける蓄熱材は、例えば、潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度が30〜90℃であるとともに、その潜熱蓄熱物質には融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有することを必須としてなるコア物質を溶解させたものに、水難溶性の無機微粒子と水とをその潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度以上の温度でよく分散させた溶液を加え、素早く剪断力を伴った分散処理を施して微粒化させると同時に、蓄熱物質の粒子表面に水難溶性の無機微粒子を融着固定させることで被覆化させて得られるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、簡便且つ安価に粒径がほぼ均一な蓄熱材が製造でき、しかも、水硬性組成物の硬化時の温度上昇を抑制でき、且つ水硬性組成物に均一に配合でき、有害物質の放出もない蓄熱材が得られる製造方法が提供される。
【0010】
より詳細には、本発明によれば以下の効果が得られる。
(1)水難溶性無機微粒子が付着した蓄熱材を用いることで、水硬性組成物であるセメントペースト、モルタル、コンクリート等の水和発熱が抑制できると共に、有機系のものと比べ凝結遅延への影響が少ない。例えば、蓄熱材をセメントに対して6%程度添加すると、硬化時の温度上昇を7〜9%程度低減できる。また、原材料に有害物質を用いる必要がないので、蓄熱材から有害物質の放出がない成形体が得られる。
(2)水難溶性無機微粒子を用いることで、粒径が10μm程度でほぼ均一な水より重い蓄熱材粒子が製造できる。この蓄熱材は成形体中の安定性の向上に寄与すると考えられ、このことにより、水硬性組成物中により均一に蓄熱材を分散できるため、硬化体の表面もプレーンと比べ損傷のないものができる。
(3)蓄熱材の蓄熱物質に、融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有する潜熱蓄熱物質を用いることで、極性の低い炭化水素化合物の分散安定化が容易にできる。これにより、安価に水硬性組成物への適用性の高い潜熱蓄熱材を提供できることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の蓄熱材の製造方法に用いられる潜熱蓄熱物質は、融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物(以下、エステル化合物という)を少なくとも含有する。
【0012】
本発明に用いられる潜熱蓄熱物質は、融点又は固相転移温度が30〜90℃であることが好ましい。また、潜熱蓄熱物質は、親油性物質であることが好ましい。融点又は固相転移温度は、実施例に記載の方法で測定することができる。潜熱蓄熱物質に複数のエステル化合物を用いる場合や、エステル化合物と非エステル成分を併用した混合物の場合には、固相転移温度を用いる。潜熱蓄熱物質が、融点又は固相転移温度で固相から液相に変化することにより、成形体の温度上昇を抑制することができる。ここで、本発明における固相転移温度は、実施例に記載したDSC測定による融解温度のトップピークの値をいう。
【0013】
エステル化合物を潜熱蓄熱物質とすることで、粒子の製造の際に粒子の合一を生じることなく、粒径分布がほぼ均一な粒子が得られる。また、エステル化合物により後述する炭化水素化合物を安定して含有させることができる。エステル化合物は、親油性物質であることが好ましい。また、エステル化合物の融点は40〜80℃である。また、エステル化合物の融解熱量は60J/g以上であることが好ましく、80J/g以上であることがさらに好ましい。本発明に係る潜熱蓄熱物質も融解熱量が60J/g以上であることが好ましく、80J/g以上であることがさらに好ましい。融解熱量は、実施例に記載の方法で測定することができる。エステル化合物としては、炭素数1〜18の1価アルコールと炭素数12〜28の1価カルボン酸とのエステルが挙げられ、具体的には、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸パルミチル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。エステル化合物の潜熱蓄熱物質中の含有量は、5〜100重量%、更に10〜100重量%が好ましい。
【0014】
潜熱蓄熱物質は、前記エステル化合物以外の成分(以下、非エステル成分という)を含有することもできる。非エステル成分は、親油性物質のものが好ましく、また、融点又は固相転移温度が30〜90℃のものが好ましく、40〜80℃のものがさらに好ましい。また、融解熱量が60J/g以上であるものが好ましく、80J/g以上であるものがさらに好ましい。非エステル成分としては、潜熱が大きく、セメントスラリー等の強アルカリ中でも安定性が高い点で炭化水素化合物が好ましい。炭化水素化合物としては、炭素17〜30の直鎖又は分岐状の炭化水素化合物が挙げられ、例えばヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、テトラコサン、ペンタコサン、トリアコンタン、ペンタトリアコンタン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、非エステル成分の潜熱蓄熱物質中の含有量は、0〜95重量%、更に0〜90重量%が好ましい。非エステル成分として炭化水素化合物を用いる場合、炭化水素化合物/エステル化合物の重量比は0/100〜95/5、更に0/100〜90/10が好ましい。
【0015】
なお、エステル化合物、非エステル成分、いずれについても、親油性物質とは、水への溶解度が3重量%以下のものをいう。
【0016】
本発明に用いられる水難溶性無機微粒子を構成する化合物は、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、カオリン等が挙げられ、これらの中でも潜熱蓄熱物質への付着性の観点からリン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、及び塩基性炭酸マグネシウムから選ばれる一種以上の化合物を含む粒子が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上で併用してもよい。また、粒子は、前記無機化合物そのものの粒子(一次粒子)でも、それらが凝集等した二次粒子のいずれでもよい。ここで、水難溶性とは、20℃での水への溶解度が1重量%以下のものをいう。
【0017】
水難溶性無機微粒子の平均粒径は、0.1〜20μm、更に0.2〜15μmが好ましい。この平均粒径は、実施例の方法で測定することができる。本発明で製造される蓄熱材は、潜熱蓄熱物質に水難溶性無機微粒子を付着させた構造を有するものである。潜熱蓄熱物質の融点又固相転移温度以上の温度で、水の共存下で混合することで、潜熱蓄熱物質が液状化し、その界面に水難溶性無機微粒子が接触、付着する。そして、常温に戻すと潜熱蓄熱物質が固化することで潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子が強固に付着する。そして、水難溶性無機微粒子が外側に配置された構造であることが、当該蓄熱材を水硬性組成物に添加した際の成形体中での安定性の向上に寄与しているものと考えられる。
【0018】
本発明の製造方法において、水難溶性無機微粒子は、成形体中の安定性の観点から潜熱蓄熱物質100重量部に対して、6〜100重量部、更に、10〜50重量部の割合で用いられることが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法では、潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子の混合に際して、温度条件以外の制約が少なく、従来法にあった微粒化装置の運転条件等の問題は解消される。
【0020】
本発明の製造方法では、潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子とを、前記潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度以上の温度で、水の共存下で混合する。具体的には、芯となる潜熱蓄熱物質をその融点又は固相転移温度以上の温度に加熱して液状化(溶融)させ、これに水難溶性無機微粒子を含んだ温水を加えて懸濁分散液を調製する。潜熱蓄熱物質を液状化させることにより、粒径の制御や無機微粒子の潜熱蓄熱物質への付着を強固にすることができる。この懸濁分散液を素早く強力剪断分散機を用いて分散処理を施し、好ましくは粒径8〜50μm、より好ましくは粒径9〜40μmのO/W型の懸濁分散液を調製する。その際、溶融状態にある潜熱蓄熱物質の粒子表面には無機微粒子が付着しており、分散処理を施した分散液の温度を潜熱蓄熱物質の融点(又は固相転移温度)未満に下げることで、無機微粒子が粒子表面に融着固定でき、無機微粒子の壁膜が形成される。このことにより、個々の粒子が合一することなく無機物付着型蓄熱材が製造され、且つ水より重い懸濁粒子(蓄熱材)の分散液としての入手が可能となる。すなわち、この製法からは、無機物付着型蓄熱材が水中に分散したスラリーとして入手されるが、もちろん、水分散スラリーから水分を取り除き、粉末化した無機物付着型蓄熱材を得ることもできる。
【0021】
水の存在下での潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子との混合は、剪断力を伴った分散処理、特に、強力剪断分散機を用いて行うことが好ましい。ここでの強力剪断分散機は、分散液に対して強力な剪断力を作用し得る機構のものが用いられ、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル等が挙げられる。また、混合条件は、分散粒径が10μm程度のものを得ることができる条件が好ましいが、分散液量、配合組成、処理温度、処理時間等の条件により異なるため適宜調整する。例えば、平均粒径を小さくするためには、攪拌の剪断力を大きくする、温度を上げる等の方法が挙げられる。特に、本発明により得られた無機物付着型蓄熱材は、平均粒径5〜100μm、好ましくは5〜70μm、より好ましくは7〜50μmであるため、この範囲となるように、前記の条件を調整することが好ましい。この平均粒径は、実施例の方法で測定することができる。
【0022】
本発明によれば、融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有する、潜熱蓄熱物質の表面に水難溶性無機微粒子が付着した、粒径分布が均一な平均粒径5〜100μmの蓄熱材が得られる。
【0023】
本発明で製造される蓄熱材では、潜熱蓄熱物質の表面に付着させる粒子として無機微粒子を用いることで、該無機物付着型蓄熱材の比重が水より重くなり、水硬性組成物に加えた場合、母材(水硬性組成物)との比重差による材料分離が改善される。更には、水硬性組成物の硬化成形体中にも均一に分散することで、硬化成形体の物性低下を抑制できる。また、本来蓄熱材としての働きでもある水硬性組成物の水和熱の抑制にも、微粒化することで成形体中により均一に分散でき効果が高められる。このため、水硬性組成物用の無機物付着型蓄熱材として好適である。
【0024】
本発明の対象となる水硬性組成物は、水硬性粉体と水とを含有する。水硬性粉体としてはセメントまたは石膏等が使用できる。セメントとしては、普通、早強、中庸熱、低熱セメント等のポルトランドセメント、および高炉、シリカ、フライアッシュセメント等の混合セメント等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、混合して用いても良い。石膏としては、石膏ボード原料として使用できるレベルの純度があれば十分である。使用される石膏は、α型半水石膏、β型半水石膏の何れか、或いはこれらの混合物であっても良く、任意の配合比率で使用できる。
【0025】
また、水硬性組成物は、分散剤、遅延剤、AE剤、消泡剤、補強繊維材料等、通常のコンクリート構造物やボード状建材を製造する際に使用される各種材料を含有することが可能である。水硬性組成物は、用途にもよるが、水/水硬性粉体の比〔水硬性組成物中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が23〜100重量%、更に30〜70重量%であることが好ましい。なお、このW/PのPには本発明に係る蓄熱材の量も含む。また、Wの量として、混合物等を含む水硬性組成物調製用の練り水の量を用いることができる(後述の試験例1等)。
【0026】
水硬性組成物の配合物の混練機は特に限定しないが、コンクリート配合物の場合には傾胴形ミキサー、一軸または二軸強制練りミキサー、パン形ミキサー等、ボード状建材には強制攪拌ミキサー、アイリッヒミキサー等を用いることができる。本発明の無機物付着型蓄熱材の添加時期も特に制限されない。また、本発明の無機物付着型蓄熱材は、水硬性組成物の用途にもよるが、成形体の強度と蓄熱性能の観点から水硬性粉体100重量部に対して1〜30重量部、更に5〜20重量部の割合で用いられることが好ましい。
【0027】
本発明の無機物付着型蓄熱材を含有する水硬性組成物は、例えば通常のコンクリート構造物やボード状建材等の成形体の製造に用いられる成形方法、および養生方法に適用できる。
【実施例】
【0028】
〔実施例1〕
ビーカーにミリスチン酸ミリスチル(花王(株)製、エキセパールMY−M、融点45.0℃)104.3gを計りとり加熱融解し、その中にリン酸三カルシウム(太平化学産業製)31.3gを水664.3gに分散させた65℃の分散液を加え、得られた混合液を素早く強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いた10000rpm、3分間の分散処理を施し、懸濁分散液を得た。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した後、目開き300μmの金網でろ過し暫く静置した。その後、底に沈降した懸濁分散粒子から上澄み液434gを取り除き、固形分39%(重量基準、以下、特記しない限り同様である)に濃縮された懸濁分散液334gを得た。
【0029】
なお、実施例1で得られた無機物付着型蓄熱材の電子顕微鏡写真を図1、粒径分布を図3に示す。図1の電子顕微鏡写真は、(株)日立ハイテクノロジーズ製日立超高性能電界放出形走査電子顕微鏡“S−4800”を用いて撮影(倍率は×3K)したものであり、これにより、当該粒子は無機物質で被覆化されていること確認した。更に、図3の粒径分布により、1つのピークでほぼ正規分布を示していることから、粒子間の凝集がないことを確認した。
【0030】
〔実施例2〕
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチルの代わりにステアリン酸ステアリル(花王(株)製、エキセパールSS、融点62.6℃)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液337gを得た。
【0031】
〔実施例3〕
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチル104.3gの代わりにミリスチン酸ミリスチル52.2g、パラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)52.2gに変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液330gを得た。なお、実施例3で得られた無機物付着型蓄熱材の電子顕微鏡写真(条件は実施例1と同じ)を図2、粒径分布パターンを図3に示す。これにより、当該粒子は無機物質に被覆化されていること確認した。
【0032】
〔実施例4〕
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチル104.3gの代わりにミリスチン酸ミリスチル10.4g、パラフィンワックス115 93.9gに変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液313gを得た。
【0033】
〔実施例5〕
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチル104.3gの代わりにステアリン酸ステアリル10.4g、パラフィンワックス115 93.9gに変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液320gを得た。
【0034】
〔比較例1〕
実施例1と同操作で、ミリスチン酸ミリスチルの代わりにパラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)に変更した。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却中に1〜15mm程度のパラフィンワックスの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
【0035】
〔比較例2〕
実施例1と同操作で、セチルアルコール(花王(株)製、カルコール6098、融点51.2℃)に変更した。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却中に1〜5mm程度のセシルアルコールの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
【0036】
〔比較例3〕
実施例1と同操作で、ミルスチン酸(花王(株)製、ルナックMY−98、融点56.6℃)に変更した。分散液を強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いて10000rpm、3分間の分散処理を行うとしたが、剪断分散中に脂肪酸のカルシウム塩ができ、全体が白色のゲル状になり分散状態を呈しなくなった。
【0037】
〔比較例4〕
実施例1と同操作で、ステアリン酸ブチル(花王(株)製、エキセパールBS、融点38℃)に変更した。懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却中に1〜5mm程度のステアリン酸ブチルの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
【0038】
〔比較例5〕
ビーカーにステアリン酸メチル(花王(株)製、エキセパールMS、融点28℃)104.3gを計りとり加熱融解し、その中にリン酸三カルシウム(太平化学産業製)31.3g、水664.3gが混ざった65℃の分散液を加え、素早く得られた分散液を強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いて10000rpm、3分間の分散処理を施した。その後、懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した。冷却中に1〜5mm程度のステアリン酸メチルの塊(凝集物)が界面に浮遊してきた。その後、懸濁分散液を目開き300μmの金網でろ過したが、大量の凝集物が金網の上に残存した。
【0039】
<粒子性状と分散特性の評価>
実施例1〜5と比較例1〜5で得られた、無機物付着型蓄熱材を含む懸濁分散液について、分散特性(分散安定性、粒子性状)を以下の方法で評価した。また、各物質の特性値、並びに懸濁分散液の特性に関しても下記の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(1−1)融点、固相転移温度及び融解熱量
潜熱蓄熱物質の融点、固相転移温度及び融解熱量は、Perkin Elmer製“Pyris6 DSC”型の示差走査熱量測定にて求めた。固相転移温度は、融解温度のトップピークの値とする。尚、測定条件は、Heat 1stは3℃/分で−10℃から100℃に昇温、Coolは3℃/分で100℃から−30℃に冷却、Heat 2ndは3℃/分で−30℃から100までの昇温の繰り返し操作を行い、Heat 2ndの値を採用した。
【0041】
(1−2)平均粒径
平均粒径は、(株)堀場製作所製“レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置 LA−300”を用いて、懸濁分散液中に含まれる粒子の粒径(体積基準、メジアン径)を測定した。その際、水難溶性無機微粒子の粒径は超音波2分間処理により水に分散させて測定し、懸濁分散液中の懸濁粒子(無機物付着型蓄熱材)の粒径は、目開き300μmの金網通過品を対象として測定した。
【0042】
(1−3)凝集物量
凝集物量は、冷却後の懸濁分散液を目開き300μmの金網にてろ過し、その金網残留物の乾燥重量を計り下式にて求めた。
凝集物量(重量%)=目開き300μmの金網残留物の乾燥重量(g)÷{潜熱蓄熱物質(g)+水難溶性無機微粒子(g)}×100
【0043】
懸濁分散液の懸濁粒子の平均粒径と凝集物量から、懸濁分散液の分散安定性を評価できる。平均粒径が100μm以下であり凝集物量が10%以下であれば実用上問題のない分散安定性を有する。
【0044】
【表1】

【0045】
表中、水難溶性無機微粒子の添加量は、潜熱蓄熱物質100重量部に対する重量部である(以下同様)。
【0046】
表1および図1、2の結果から、実施例および比較例より、潜熱蓄熱物質として一般的に用いられるパラフィン系のものは殆ど極性がないので本発明の製造法でもカプセル化は困難であった。しかしながら、本発明では融点が40℃以上のエステル構造を有する物質が、凝集物量が少ないこと、10μm程度の粒径を呈していることから、本発明の製造に適した潜熱蓄熱物質であることが分かった。更に、実施例および比較例1より、融点が40℃以上のエステル構造を有する物質を必須成分にすることで、パラフィン等の他の蓄熱物質を併用使用しても安定な分散粒子を製造できることが分かった。また、これらを電子顕微鏡写真で観察すると、実施例1の粒子形状はほぼ真球、実施例3のパラフィン併用系はやや異形ではあったが、両者の粒子表面には細かい無機微粒子が均一に付着し、上手く被覆化していることを示している。更に、図3の実施例1、3の粒径分布から、両者は1つのピークでほぼ正規分布を示していることから、粒子間の合一はないことを示している。
【0047】
〔実施例6〕
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりにヒドロキシアパタイト(太平化学産業製、医薬部外品原料規格、平均粒径4.7μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液337gを得た。
【0048】
〔実施例7〕
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりに塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製、1級試薬、平均粒径12.1μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液338gを得た。
【0049】
〔実施例8〕
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりに酸化マグネシウム(関東化学(株)、1級試薬、平均粒径3.3μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液288gを得た。
【0050】
〔実施例9〕
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりに酸化チタン(和光純薬工業(株)製、特級試薬、ルチル型、平均粒径0.2μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液263gを得た。
【0051】
〔実施例10〕〕
実施例1と同操作で、リン酸三カルシウムの代わりにカオリン(キシダ化学(株)製、試薬、300mesh、平均粒径6μm)に変更し、固形分39%に濃縮された懸濁分散液211gを得た。
【0052】
<粒子性状と分散特性の評価>
実施例6〜10で得られた、無機物付着型蓄熱材を含む懸濁分散液について、分散特性や各物質の特性値等を実施例1等と同様に評価した。結果を表2に示す。なお、参考のため、実施例1の結果も表2に併せて示した。
【0053】
【表2】

【0054】
表2の結果から実施例1、6〜10より、本発明の製造に適した水難溶性無機微粒子には、粒径が十数μ以下の水難溶性の無機微粒子が有用ではあるが、より分散安定性や高い生産性(不要である凝集物量を減らし収率を高めること)を追及すると、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、塩基性炭酸マグネシウム等が有効であることが分かった。
【0055】
<試験例>
〔1〕比較用の蓄熱材の製造
〔比較製造例1〕
ビーカーにパラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)75.0g、ソルビタンモノステアレート(花王(株)レオドールSP−S10V)12.0gを計りとり加熱融解し、その中にポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(花王(株)製、レオドールTW−S120)8.0g及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、エマルゲン120)5.0gを水400gに分散させた75℃の分散液を加え、得られた混合液を素早く強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いた6000rpm、3分間の分散処理を施し、懸濁分散液を得た。そして、懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した後、目開き300μmの金網でろ過し、固形分20.8%、平均粒径4.9μmの乳化物を得た。
【0056】
〔比較製造例2〕
ビーカーにパラフィンワックス115(日本精蝋(株)製、融点51.0℃)138.9gを計りとり加熱融解し、その中にスチレン−無水マレイン酸コポリマー(BASF製、固形分30%)18.5g及び10%ポバール水溶液(日本合成化学製、ゴーセノールGL−05)55.6gを水287gに分散させた70℃の分散液を加え、得られた混合液を素早く強力剪断分散機(特殊機化工業製“T・KホモミキサーM型”)を用いた6000rpm、3分間の分散処理を施し、懸濁分散液を得た。そして、懸濁分散液をスターラーで軽く攪拌しながら室温まで冷却した後、目開き300μmの金網でろ過し、固形分28.5%、平均粒径11.9μmの乳化物を得た。
【0057】
〔比較製造例3〕
他の潜熱蓄熱材として、市販のパラフィンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−1015、融点47℃、アニオン性、平均粒径0.32μm〕から、固形分40%の乳化物を準備した。
【0058】
〔比較製造例4〕
他の潜熱蓄熱材として、市販のポリエチレンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−5555、融点55℃、アニオン性、平均粒径0.56μm〕から、固形分42%の乳化物を準備した。
【0059】
〔試験例1〕
実施例1で得られた無機物付着型蓄熱材の39%懸濁分散液208gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水278gを加え調製練り水を準備した。その調製練り水486g〔蓄熱材(固形分)81.1g、水404.9g(混和剤7gを含む)〕をセメント(太平洋セメント(株)製、普通ポルトランドセメント)1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製した。素早くセメントペーストをコーンに詰め、調整直後及び調整から20分後のフローを測定した〔これを分散性試験(詳細は後述する)とした。〕。また、前記と同じ操作で調製練り水を381.1g〔蓄熱材(固形分)81.1g、水300g(混和剤7gを含む)〕に変更した以外は、分散性試験の場合と同様にしてセメントペーストを調整し、このものの硬化時における簡易断熱温度上昇試験(詳細は後述する)を行い、最高発熱温度を求めた。これらの結果を表3に示した。
【0060】
〔試験例2〜4〕
実施例1で得られた無機物付着型蓄熱材の代わりに実施例2、3、5の蓄熱材を使用した。他の試験操作は試験例1と同じことを行い、結果を表3に示した。
【0061】
〔比較試験例1〕
セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水375gをセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。また、前記と同じ操作で混和剤を含む水300gに変更した以外は、分散性試験の場合と同様にして、セメントペーストを調製し、試験例1と同様に簡易断熱温度上昇試験を行い、最高発熱温度を求めた。これらの結果を表3に示した。尚、この比較試験例1で示した最高発熱温度を、簡易断熱温度上昇試験におけるプレーン(基準)とする。
【0062】
〔比較試験例2〕
比較製造例1で得られたパラフィンワックスエマルジョン(固形分20.8%の乳化物)400gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水89.4gを加え調製練り水489.4g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)83.2g、水406.2g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。この結果を表3に示した。
【0063】
〔比較試験例3〕
比較製造例2で得られたパラフィンワックスエマルジョン(固形分28.5%の乳化物)236.7gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水231.1gを調製加え練り水467.8g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)67.5g、水400.3g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。この結果を表3に示した。
【0064】
〔比較試験例4〕
比較製造例3で得られたパラフィンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−1015から調製した固形分40%の乳化物〕156gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水305gを加え調製練り水461g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)62.5g、水398.5g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。また、調製練り水を362.5g〔パラフィンワックスエマルジョン(固形分)62.5g、水300g(混和剤7gを含む)〕に変更した以外は、分散性試験の場合と同様にしてセメントペーストを調整し、試験例1と同様に簡易断熱温度上昇試験を行った。これらの結果を表3に示した。
【0065】
〔比較試験例5〕
比較製造例4で得られたポリエチレンワックスエマルジョン〔日本精蝋(株)製、EMUSTAR−5555から調製した固形分42%の乳化物〕149gに、セメント混和剤(花王(株)製、マイテイ3000S)7g(有姿)を含む水312gを加え、調製練り水461g〔ポリエチレンワックスエマルジョン(固形分)62.5g、水398.5g(混和剤7gを含む)〕を準備した。その調製練り水をセメント1000gに加え、素早く混練機にてかき混ぜセメントペーストを調製し、試験例1と同様に分散性試験を行った。この結果を表3に示した
【0066】
〔2〕セメントペーストの分散性試験と簡易断熱温度上昇試験
試験例1〜4と比較試験例1〜5で得られたセメントペーストについて、分散性試験と簡易断熱温度上昇試験を以下の方法により行った。結果を表3に示す。
【0067】
(2−1)分散性試験
分散性試験は、混練機に(株)ダルトン製“DALTON万能混合攪拌機 5dm−03−γ”を用い、各材料を添加後低速60秒で練まぜ一旦かきとり、更に低速60秒で攪拌した後、ペーストコーン(底内径φ85mm×上内径φ76mm×高さ40mm)にペーストを流し素早くコーンを持ち上げ、初期フローの広がりを測定した。また、20分後のフローは、前記製法のセメントペーストを20分間静置後、測定前に低速10秒で攪拌してから同操作で測定した。
【0068】
(2−2)簡易断熱温度上昇試験
簡易断熱温度上昇試験は、発泡ウレタンで断熱処理を施した断熱箱に、前記と同じ操作でこの試験用に調製したセメントペーストを500mlの容器に1150gを計りとり断熱箱に埋め込み、セメントペーストの硬化時の発熱温度を追跡記録した。尚、温度の追跡情報は、ペースト中に差し込んだ熱電対から、(株)テクノ・セブン製“パソコン用データ集録システム ソフトサーモE830”で処理し水和発熱による最高温度を求めた。試験環境は、20℃、60%RHの恒温室で行った。
【0069】
【表3】

【0070】
表中、分散性試験用のセメントペーストにおいて、W/Pは、Wとして蓄熱材懸濁分散液の水の量を含めて、また、Pとして蓄熱材懸濁分散液の蓄熱材の量(固形分)を含めて算出したものである。また、簡易断熱温度上昇試験用のセメントペーストにおいて、W/Cは、Wとして蓄熱材懸濁分散液の水の量を含めて算出したものである。
【0071】
表3の結果から、比較試験例2〜5より、一般的な潜熱蓄熱物質であるパラフィンおよびポリエチレンワックスの乳化物は、セメントペーストの初期フローが殆どフローを示さなかったり、20分後フロー保持が著しく低下したりして、セメント等への適正が著しく悪化した。一方、試験例1〜4より、本発明の水難溶性の無機微粒子による無機物付着型蓄熱材を添加すると、セメントペーストの初期フロー値はプレーンに対して25〜30%と低下したが、20分後のフロー値の保持性はほぼ横ばいであることから、本材がセメントへの適用性が優れていることが分かる。また、簡易断熱温度上昇試験においても、最高発熱温度はプレーンに対して5〜8℃抑制することができ、蓄熱材として性能を発揮している。なお、比較試験例2、3、5は硬化遅延が強く硬化時の温度上昇の抑制について適正に評価できないため、簡易断熱温度上昇試験の結果を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1で得られた本発明の無機物付着型蓄熱材の表面状態を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】実施例3で得られた本発明の無機物付着型蓄熱材の表面状態を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】実施例1、3で得られた本発明の無機物付着型蓄熱材の粒径分布パターンである

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点40〜80℃のエステル構造を有する化合物を少なくとも含有する潜熱蓄熱物質と水難溶性無機微粒子とを、前記潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度以上の温度で、水の共存下で混合して、前記潜熱蓄熱物質の表面に前記水難溶性無機微粒子を付着させる工程を有する、平均粒径5〜100μmの粒子からなる蓄熱材の製造方法。
【請求項2】
前記潜熱蓄熱物質の融点又は固相転移温度が30〜90℃である、請求項1記載の蓄熱材の製造方法。
【請求項3】
前記水難溶性無機微粒子が、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、及び塩基性炭酸マグネシウムから選ばれる一種以上の化合物を含む粒子である、請求項1又は2記載の蓄熱材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の製造方法により製造された蓄熱材と水硬性粉体とを含有する水硬性組成物。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−308607(P2008−308607A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158719(P2007−158719)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】