説明

蓄積法による漏れ検出装置および方法

【課題】改良された漏れ検出装置および方法を提供する。
【解決手段】蓄積法による漏れ検出のための方法および装置が提供される。本装置は、テストピース12を受け入れるよう構成された密封可能室10であって、テストピース12が室10内にある間、トレースガスを収容するものである室10と、室10と気体流通可能なトレースガス透過性部材30と、透過性部材30と気体流通可能でありかつ、室10から透過性部材30を通過してきたトレースガスを検出するよう構成されたトレースガスセンサ20とを含む。透過性部材30は石英であってもよい。トレースガスセンサ20はイオンポンプを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封品における漏れ検出に関し、更に詳しくは蓄積法による漏れ検出装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリウム質量分光計による漏れ検出は周知の漏れ検出技術である。ヘリウムは、密封されたテストピースにおける漏れ穴のうち最小規模の漏れ穴を通過するトレースガスとして使用される。漏れ穴を通過した後、ヘリウムを含有するテストサンプルは漏れ検出器に吸引されて計測される。漏れ検出器の重要な構成要素は、ヘリウムを検出測定する質量分光管である。投入されたテストサンプルは、ヘリウム成分を分離するために、分光管によりイオン化され、質量分析される。一つの方法として、テストピースをヘリウムで加圧する方法がある。漏れ検出器のテスト口に接続された探知プローブを、テストピースの外部周囲で移動させる。ヘリウムはテストピースにおける漏れ穴を通過し、プローブに吸引され、そして漏れ検出器により測定される。別の方法として、テストピース内部を漏れ検出器のテスト口に連結して排気する方法がある。ヘリウムをテストピースの外部で噴出させ、漏れ穴を介して内部へ吸引し、そして漏れ検出器により計測する。
【0003】
ヘリウム質量分光計による漏れ検出に関連する問題の1つとして、質量分光管の入口を、通常2×10-4Torrの比較的低い圧力に維持しなければならないということがある。いわゆる従来の漏れ検出器において、テストピースまたは探知プローブに接続されたテスト口は比較的低い圧力に維持しなければならない。かくして、真空ポンプサイクルは比較的長くなる。更に、漏れやすい部分または大容量部分のテストでは、所望の圧力レベルに到達することが困難であるか不可能である可能性がある。所望の圧力レベルに到達することができても、ポンプサイクルはきわめて長くなる。
【0004】
この問題を解決するために従来技術において種々の技術が提案されている。ブリッグスに対して1972年9月12日に発行された特許に係る下記特許文献1に開示された向流漏れ検出器は、拡散ポンプを介する質量分光計へのヘリウムの逆流技術を利用している。漏れ検出器テスト口は、拡散ポンプのフォアラインの圧力で動作させることができる。類似した方法として、ターボ分子ポンプを介するヘリウムの逆流を利用する方法がある。著しい漏れ検出技術は、フルゼッティに対して1988年4月5日に発行された特許に係る下記特許文献2に開示されている。トレースガスは、機械真空ポンプの1つまたは2つの段階(ステージ)を介して反対方向に通過する。これらの技術により、テスト口圧力を従来の漏れ検出器の場合よりも高くすることができた。それにもかかわらず、大容量、汚れた部分、または大規模漏れを伴う部分のテストの場合、相対的に高いテスト口圧力に到達させることが困難になることがある。
【0005】
従来のヘリウム漏れ検出において、密封された小さな部分に大規模漏れが存在する場合、粗引きポンプサイクルの間ヘリウムはあまりにもすばやく排気されるので漏れの読み取りができず、漏れ部分が検出されない。この問題は産業界で長い間存在していた。下記方法はいくつかの用途で利用されてきたが、いずれも効果は限定的なものであった。(1)漏れやすい部分と漏れの無い部分との間の排気時間差の測定、および、(2)容器膨張法。いずれの技術も充分な解決策とはなっていない。マホネイその他に対して1997年4月29日に発行された特許に係る下記特許文献3は、著しい漏れ検出に対して容積膨張技術を組み合わせたヘリウム質量分光計漏れ検出器を開示している。
【0006】
1990年1月31日公開の下記特許文献4は、シリカガラス毛細管の形状のプローブに接続されたイオンポンプを含むヘリウム漏れ検出器を開示している。シリカガラス管は300℃〜900℃の温度に加熱され、これにより、ヘリウムに対して透過性を有するようになる。ドゥシモンに対して1994年7月5日に発行された特許に係る下記特許文献5は、石英毛細膜と、膜加熱フィラメントと、イオンポンプとを使用するヘリウム検出装置を開示している。ベームその他に対して1997年8月26日に発行された特許に係る下記特許文献6は、選択的にヘリウムをガス消費真空計へ通過させるポリマー窓または加熱石英窓を備えた漏れ検出器を開示している。
【特許文献1】米国特許第3,690,151号明細書
【特許文献2】米国特許第4,735,084号明細書
【特許文献3】米国特許第5,625,141号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0352371号明細書
【特許文献5】米国特許第5,325,708号明細書
【特許文献6】米国特許第5,661,229号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のヘリウム漏れ検出器はいずれも、圧力範囲が限定的であるとか、汚れやすいとか、コストがかかるといった何らかの欠点を有している。したがって、漏れ検出に対して改良された方法や装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1局面として、本発明は漏れ検出装置を提供する。本装置は、テストピースを受け入れるよう構成された密封可能室であって、前記テストピースが前記室内にある間トレースガスを収容するものである密封可能室と、前記室に気体流通可能に装着されたトレースガス透過性部材と、前記透過性部材と気体流通可能でありかつ、前記室から前記透過性部材を通過してきた前記トレースガスを検出するよう構成されたトレースガスセンサとを含む。
【0009】
透過性部材はヘリウムを透過可能であってもよく、また、透過性部材のヘリウム透過度は制御可能であってもよい。透過性部材が石英部材を含む実施形態もある。本装置は更に、石英部材と熱接触する加熱部材と、加熱部材を制御するよう構成された制御部とを含んでいてもよい。トレースガスセンサはイオンポンプを含んでいてもよい。
第2局面として、本発明は漏れ検出方法を提供する。本方法は、密封可能室、前記室と気体流通可能なトレースガス透過性部材、および前記透過性部材と気体連通可能なトレースガスセンサを設けることと、前記室にある間トレースガスを収容しているテストピースを前記室に配置することと、前記トレースガスを、前記室から前記透過性部材を介して通過させることと、前記トレースガスを前記トレースガスセンサで検出することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明をよりよく理解するために、添付図面を参照して説明を行う。なお、添付図面は引用により本発明に組み込まれる。
本発明の実施形態に係る漏れ検出装置の概略ブロック図を図1に示している。密封可能室10はテストピース12を保持している。テストピース12の内容積は、ヘリウムのようなトレースガスで加圧されてもよいし、漏れ検出装置の室10内部へ挿入される前に高いヘリウム濃度に曝されてもよいし、またはテストピース12が室10内部にある間、ヘリウム源に接続されてもよい。いずれの場合も、テストピース12は室10内部にある間、ヘリウムのようなトレースガスを収容している。
【0011】
ヘリウム検出アセンブリ20は真空フランジ22を介して室10に接続されている。ヘリウム検出アセンブリ20は、イオンポンプ24、イオンポンプ制御部26、および、トレースガス透過性部材30を含んでいる。イオンポンプ24と透過性部材30とは密封されたハウジング32内部に装着され、透過性部材30は室10とイオンポンプ24との間に介在されている。制御部26は真空フィールドスルー34を介してイオンポンプ24に接続されている。制御部26はイオンポンプ24に対して動力を供給するとともにイオンポンプ電流を検出する。
【0012】
イオンポンプ24は通常、制御部26により供給される2,000ボルト〜9,000ボルトの高電圧により通電される。イオンポンプ電流はイオンポンプ内部の真空圧力に比例する。透過性部材30を透過するヘリウムは、漏れ流量(レート)に比例する割合で真空圧力に影響を与える。したがって、イオンポンプ電流は漏れ流量に比例する。
トレースガス透過性部材30は室10とイオンポンプ24との間に位置している。透過性部材30は、特定の条件下で、漏れ検出装置において使用されるトレースガス、通常ヘリウム、を透過する材料である。透過性部材30はトレースガスを実質的に通過または透過させるが、他のガス、液体および粒子を実質的にブロックする。かくして、透過性部材30は、トレースガスの通過は許容し、他のガス、液体および粒子をブロックするという意味で、トレースガス窓として作用する。透過性部材30は例えばディスク形状であってもよい。
【0013】
石英すなわちシリカガラスは、ヘリウムを透過する材質の一例である。特に、石英のヘリウム透過度は温度によって変動する。300℃〜900℃の範囲の高温で、石英は比較的高いヘリウム透過度を有する。室温では、石英は比較的低いヘリウム透過度を有する。図2に示すように、漏れ検出装置に、石英から成る透過性部材30と熱接触する加熱部材40を設けてもよい。加熱部材は石英部材を加熱してヘリウム透過度を増大させるが、他方、石英はほとんどの他のガス、水蒸気および粒子を選択的にブロックする。石英は任意の温度に対して一定の透過度を有する。温度を調整して透過度、したがって感度を制御することができる。加熱部材40は制御部42により通電してもよい。透過性部材30の温度を制御することにより、ヘリウム窓を設ける。比較的高い温度(例えば、300℃〜900℃)で、ヘリウム透過度は高くなり、ヘリウム窓は開く。比較的低い温度(例えば、室温)の場合、ヘリウム透過度は低く、かつ、ヘリウム窓は閉鎖される。透過性部材30は抵抗加熱、輻射加熱または他の適当な加熱技術により加熱してよい。
【0014】
透過性部材30は、通常ヘリウムのトレースガスを透過するいかなる適切な材料でも形成することができ、いかなる形状または寸法であってもよい。適切な材料として、石英と、テフロン(登録商標)として知られているテトラフルオロエチレンのような透過性ポリマーとが挙げられる。透過性ポリマーの場合、加熱部材は必要ではない。透過性部材は、真空、大気圧、または大気圧より僅かに高い圧力で動作することができる。透過性部材は、ガスおよび粒子を含む雰囲気、ならびに湿潤環境においても動作することができる。
【0015】
動作時において、テストピース12はヘリウムまたは他のトレースガスで加圧され、室10内に配置される。次いで、室10は密封される。室10内の初期ヘリウム濃度は大気圧におけるヘリウム濃度(5ppm)に対応させてもよいし、または、窒素のようなガスで室10をフラッシングして5ppmより低くしてもよい。ヘリウムは、存在する可能性のある漏れ穴を介してテストピース12から漏れる。室10内のヘリウム濃度は、漏れ穴の大きさ、室10の自由体積、およびテストピース12が室10内に存在していた時間の関数である。したがって、ヘリウム濃度は、テストピース12が室10内に密封された時点以降、1回または指定された複数回測定される。上記自由体積および上記時間は既知であるので、漏れ流量を定めることができる。室10およびテストピース12は、蓄積法を適切に動作させる場合、変形可能であってはならない。
【0016】
室10内のヘリウムは、透過性部材30を透過してイオンポンプ24へ送られる。イオンポンプ電流はイオンポンプ24内部の圧力に比例するので、イオンポンプ電流はテストピース12からの漏れ流量に比例する。
ヘリウムだけが透過性部材30を通過すると共に、イオンポンプ24内の圧力を増加させる。ヘリウム圧力の増加は、ヘリウム圧力の増加と漏れ流量とに比例するイオンポンプ電流の増加をもたらす。透過性部材30を通過するヘリウムを除いて、ヘリウム検出アセンブリ20は室10において、ポンプ速度が実質的にゼロであるとともに、従来技術の装置の場合のように室10からガスを除去することは無い。ヘリウム検出器20はヘリウムの漏れを検出するが、ヘリウムを排気することは無いので、漏れは、従来技術の方法と比較して、より正確に、より高い信頼度で、かつ、よりすぐれた感度で検出される。
【0017】
種々例示的で非限定的な実施形態およびその局面について説明したが、変更および変形は当業者には自明であろう。そのような変更および変形は、本開示に包含されるべきものであり、本開示は、本発明の例示および説明のためのものであって本発明の限界を定めるものではない。本発明の範囲は添付特許請求範囲の適切な構成およびその均等物により定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る漏れ検出装置の概略ブロック図である。
【図2】図1の漏れ検出装置の簡略化した部分断面図であり、透過性部材を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストピースを受け入れるよう構成された密封可能室であって、前記テストピースが前記室内にある間トレースガスを収容するものである密封可能室と、
前記室に気体流通可能に装着されたトレースガス透過性部材と、
前記透過性部材と気体流通可能でありかつ、前記室から前記透過性部材を通過した前記トレースガスを検出するよう構成されたトレースガスセンサと
を含むことを特徴とする漏れ検出装置.
【請求項2】
前記透過性部材が石英部材を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記透過性部材が石英部材を含み、
前記装置は更に、前記石英部材と熱接触する加熱部材と、前記加熱部材を制御するよう構成されたヒータ制御部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記透過性部材がポリマー部材を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記透過性部材のトレースガス透過度が制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記透過性部材がヘリウムを透過可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記トレースガスセンサがイオンポンプを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記トレースガスセンサは、前記トレースガスを収容する前記テストピースが前記室内に配置された後、指定した時に前記トレースガスを検出する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記透過性部材および前記トレースガスセンサを包囲するハウジングと、
前記ハウジングを前記室へ取り付けるための真空フランジとを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
密封可能室、前記室と気体流通可能なトレースガス透過性部材、および前記透過性部材と気体流通可能なトレースガスセンサを設けることと、
前記室にある間トレースガスを収容しているテストピースを、前記室に配置することと、
前記トレースガスを、前記室から前記透過性部材を介して通過させることと、
前記トレースガスを前記トレースガスセンサで検出することと
を含むことを特徴とする漏れ検出方法。
【請求項11】
前記透過性部材が石英部材を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記透過性部材が石英部材を含み、
前記方法は、前記石英部材を加熱することを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記透過性部材がポリマー部材を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記透過性部材がヘリウムを透過可能であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記トレースガスを前記透過性部材を介して通過させることが、前記透過性部材のトレースガス透過度を制御することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記透過性部材のトレースガス透過度を制御することは、漏れ検出感度を制御することを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記透過性部材のトレースガス透過度を制御することは、前記透過性部材の温度を制御することを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記トレースガスを検出することは、イオンポンプでヘリウムを検出することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記トレースガスを検出することは、トレースガスを収容する前記テストピースが前記室内に配置された後、指定した時に前記トレースガスを検出することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−501946(P2007−501946A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533656(P2006−533656)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/018352
【国際公開番号】WO2005/001410
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】