蓄電セル及び蓄電モジュール
【課題】電極端子から離れても蓄電セル内部において電流が流れやすくする。
【解決手段】積層された集電極(1)、活物質層(2)、セパレータ(3)からなる蓄電セルにおいて、前記集電極(1)の電極端子(1a、1b)が設けられる端部(1c)から離れるにしたがって、前記集電極(1)の厚みが増加し前記活物質層(2)の厚みが減少する。
【解決手段】積層された集電極(1)、活物質層(2)、セパレータ(3)からなる蓄電セルにおいて、前記集電極(1)の電極端子(1a、1b)が設けられる端部(1c)から離れるにしたがって、前記集電極(1)の厚みが増加し前記活物質層(2)の厚みが減少する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セル、及び、蓄電セルを備える蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の従来技術の自動車用鉛蓄電池において、電極端子(集電タブ)近傍の上部の活物質の厚みを薄く、電極端子(集電タブ)から離れた下部の活物質の厚みを厚くして、電池の上下方向の極板厚みを変化させている。これにより、電池の上下で充放電反応の不均一を解消している。特許文献2記載の従来技術の電池において、電流の集中する電極端子(リード)部分において集電極(集電体)の厚さを最も大きくし、リードから遠ざかるほど集電極の厚さを薄くしている。これにより、集電極で生じる抵抗や発熱が小さくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−187790号公報
【特許文献2】特開平9−199177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の従来技術において、電極端子から離れるにしたがって、集電極内部ひいては蓄電セル内部を電流が流れ難くなり、電極端子から遠い位置にある活物質が有効利用されないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、電極端子から離れても蓄電セル内部を電流が流れやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る蓄電セルは、積層された集電極、活物質層、セパレータからなる。前記集電極の電極端子が設けられる端部から離れるにしたがって、前記集電極の厚みが増加し前記活物質層の厚みが減少する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極端子から離れても蓄電セル内部を電流が流れやすくなり、電極端子から遠い位置にある活物質が有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第一実施形態に係る蓄電セルの積層構造を示す斜視図である。
【図2】(a)第一実施形態に係る積層体を示す斜視図である。(b)第一実施形態に係る積層体を収容するケースを示す斜視図である。
【図3】第一実施形態に係る単セル(単位セル)を横方向に見た側面図である。
【図4】第一実施形態に係る単セルの等価回路を示す回路図である。
【図5】(a)集電極が均一の厚みを有する場合の電極体を示す側面図である。(b)第一実施形態に係る電極体を示す側面図である。
【図6】第一実施形態に係る積層された単セルを示す側面図である。
【図7】第二実施形態に係る蓄電セルの積層構造を示す斜視図である。
【図8】(a)第二実施形態に係る積層体を示す斜視図である。(b)第二実施形態に係る積層体を収容するケースを示す斜視図である。
【図9】第二実施形態に係る単セル(単位セル)を横方向に見た側面図である。
【図10】第二実施形態に係る単セルの等価回路を示す回路図である。
【図11】第二実施形態に係る積層された単セルを示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下では図面を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本実施形態による蓄電セルの積層構造を示す図である。図1において、X軸は横方向、Y軸は積層方向(厚み方向)、Z軸は縦方向を示す。X軸、Y軸、Z軸は互いに垂直である。なお、本実施形態において、蓄電セルは、電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」とも称する。)である。複数の蓄電セルを直列又は並列に接続して、蓄電モジュールが構成できる。
【0011】
図1を参照すると、蓄電セル10において、集電極(集電箔)1、活物質層2、セパレータ3が積層されている。集電極1の縦方向の端部1cには、縦方向の上側の電極端子(正極端子)1a、又は、縦方向の下側の電極端子(負極端子)1bが交互に配置されている。集電極1は、正極端子1aを有する正極又は負極端子1bを有する負極になり、対向し合う集電極1のうち、一方が正極、他方が負極になる。複数の正極端子1aと複数の負極端子1bはそれぞれ束ねられ、電気的に接続される。
【0012】
図2(a)(b)のように、積層体4は容器5で密封され、蓄電セル(キャパシタ)が完成する。積層体4は、水分を除去するため乾燥処理された後、グローブボックス等を用いることにより窒素ガス等の乾燥雰囲気中で、容器5内に収容される。容器5として、例えばアルミラミネートフィルム製の容器が用いられる。さらに、この乾燥雰囲気中にて、電解液の含浸とそれに続く電解精製が行われる。その後、容器5の内部は、真空引きにより、乾燥雰囲気として用いたガスや余分な電解液を取り除いた後、密封される。容器5として、アルミラミネートフィルムが用いられる場合には、密封方法として熱シールが用いられる。電解液としては、非水系電解液が用いられる。
【0013】
集電極1として、アルミ箔を用いることができる。活物質層2を構成する活物質として、活性炭などの大きな表面積をもつ炭素材料を用いることができる。セパレータ3として、セルロース系多孔質材料を用いることができる。
【0014】
活物質層2の活物質は、集電極1の表面に付着される。例えば、活物質層2は、接着剤と導電剤を粉末状の炭素材料に添加してペースト状に混練した混合物を、集電極1の表面に塗付、乾燥したものである。以下、このように集電体1の表面上に活物質層2が付着されて集電極1と活物質層2が一体化したものを電極体(1、2)と呼ぶ。
【0015】
図3は、蓄電セルの単セルを横方向に見た側面図である。一つの電極体において、集電極1の厚みは、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって縦方向に沿って大きくなる。例えば、端部1cからの距離に比例して、集電極1の厚みは大きくなる。ただし、集電極1の厚みは、発熱を抑えるため、端部1c付近でもある程度厚い。
【0016】
一方、活物質層2の厚みは、縦方向に沿って、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって小さくなる。例えば、端部1cからの距離に比例して、活物質層2の厚みは小さくなる。
【0017】
電極体(1、2)全体の厚みは、縦方向と横方向に沿って略均一であるため、電極体(1、2)と平板状のセパレータ3を積層しやすい。なお、厚みが変化する集電極1は、例えば、集電極1に圧延を施し圧延時に加えられる圧力を調整することにより、作製される。
【0018】
図4は、単セルの等価回路を示す回路図である。集電極1の積層方向の断面は、集電極1の厚みの増加により、電極端子1a、1bが配置される端部1cから離れるにしたがって大きくなる。このため、集電極1の電気抵抗は端部1cから離れるにしたがって減少する(r1(=R)>r2>r3>・・・>rn)。従って、集電極1また蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから縦方向に離れた位置でも電流が流れやすくなる。加えて、集電極1が均一の厚みdを有する場合(r1=r2=r3=・・・=rn(=一定値R)の場合)(図5(a))より、蓄電セル全体の内部抵抗が減少する。
【0019】
また、活物質層2の厚みの減少により、端部1cから離れるにしたがって、活物質層2の積層方向(厚み方向)の電気抵抗は減少する。このため、さらに、蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなる。また、活物質層2の厚みの減少により、蓄電セルの電気抵抗は、全体として減少する。
【0020】
なお、後述の第二実施形態と異なり、一方の電極端子(正極端子)1aが縦方向の上側に配置され、他方の電極端子(負極端子)1bが縦方向の下側に配置されるため、単一セル内で左右二つの活物質層2の厚みの合計が、縦方向内で変化しない。このため、キャパシタンスC0、C1、C2、C3、・・・、Cnはほぼ等しく、縦方向内で充放電の分担が均等化されやすくなる。
【0021】
さらに、本実施形態では、図5(b)のように、集電極1と活物質層2との接触面積が、集電極1が均一の厚みを有する場合(図5(a))より増加する。これは、塗布された活物質層2の長さがLからL’(L’=(L2+a2)1/2)に増加するためである。図5(a)において、塗布された活物質層2の横方向の幅Wとすると、集電極1と活物質層2との接触面積Sは、W×Lとなる(S=W×L)が、図5(b)において、集電極1と活物質層2との接触面積S’は、W×L’となる(S=W×L’)。
【0022】
図6のように得られた電極体(1、2)とセパレータ3からなる単セルを複数積層して、蓄電セル10が作製される。接触する集電極1同士の間に導電性接着剤などが塗布されても良い。なお、帯状の電極体(1、2)とセパレータ3とをロール状に巻回して構成する巻回型(円筒型)の蓄電セルを作製することも可能である。
【0023】
−作用効果−
第一実施形態によると、集電極1の電極端子1a又は1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって、集電極1の厚みが増加し、活物質層2の厚みが減少する。このため、単セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置において、電気抵抗が減少して電流が流れやすくなる。これにより、蓄電セルの充放電速度が速くなる。さらに、電極端子1a、1bから離れた位置においても、活物質が有効利用できるため、活物質の使用量を低減でき、蓄電セルのコストが下がる。
【0024】
積層方向に垂直な方向(縦方向と横方向)において、集電極1の厚みと活物質層2の厚みとの合計が一定であり、電極体(1、2)全体の厚みが略均一となり、電極体(1、2)と平板状のセパレータ3を積層しやすくなる。
【0025】
積層方向に垂直な方向(縦方向)において、正極側の電極端子1aが一方の側に設けられ、負極側の電極端子1bが他方の側に設けられるため、上記のように活物質層2の厚みを変化させても、単セル内でのキャパシタンスの縦方向内の変化が抑制される。
【0026】
[第二実施形態]
図7を参照すると、第二実施形態において、集電極1には、縦方向の上側の端部1cにおいて、右側の電極端子1a、又は、左側の電極端子1bが交互に設けられている。図8(a)(b)のように、積層体4は容器5で密封され、蓄電セル10が完成する。
【0027】
図9は、第一実施形態と同様に、蓄電セルの単セルを横方向に見た側面図である。集電極1の厚みは、縦方向に沿って、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって大きくなる。一方、活物質層2の厚みは、縦方向に沿って、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって小さくなる。電極体(1、2)全体の厚みは、縦方向に沿って略均一であるため、電極体(1、2)と平板状のセパレータ3を積層しやすい。
【0028】
図10は、単セルの等価回路を示す回路図である。第一実施形態と同様に、集電極1の電気抵抗は電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって減少する(r1(=R)>r2>r3>・・・>rn)。従って、集電極1また蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなる。加えて、集電極1が均一の厚みdを有する場合より、蓄電セル全体の内部抵抗が減少する。
【0029】
また、活物質層2の厚みの減少により、蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなる。また、活物質層2の厚みの減少により、蓄電セルの電気抵抗は、全体として減少する。
【0030】
なお、単一セル内で左右二つの活物質層2の厚みの合計が、縦方向内で電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって減少して、C1>C2>C3>・・・>Cnとなり、充放電の分担が不均一になる。しかし、電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなるため、キャパシタンスC1、C2、C3、・・・、Cnの分担の不均一が改善される。
【0031】
図11のように得られた電極体(1、2)とセパレータ3からなる単セルを複数積層して、蓄電セルが作製される。なお、帯状の電極体(1、2)とセパレータ3とをロール状に巻回して構成する巻回型(円筒型)の蓄電セルを作製することも可能である。
【0032】
−作用効果−
第二実施形態によると、電極端子が一方向(縦方向)の上側にのみ存在するため、蓄電セルを立てて設置することが容易になる。
【0033】
本発明は以上説明した第一実施形態と第二実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。例えば、蓄電セルが電気二重層キャパシタではなくリチウムイオン電池であれば、正極側の活物質をリチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiCoO2)とし、負極側の活物質をカーボンとし、セパレータを(例えばポリアミド製不織布)とすればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 集電極
1a、1b 電極端子
1c 端部
2 活物質層
3 セパレータ
4 積層体
10 蓄電セル
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セル、及び、蓄電セルを備える蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の従来技術の自動車用鉛蓄電池において、電極端子(集電タブ)近傍の上部の活物質の厚みを薄く、電極端子(集電タブ)から離れた下部の活物質の厚みを厚くして、電池の上下方向の極板厚みを変化させている。これにより、電池の上下で充放電反応の不均一を解消している。特許文献2記載の従来技術の電池において、電流の集中する電極端子(リード)部分において集電極(集電体)の厚さを最も大きくし、リードから遠ざかるほど集電極の厚さを薄くしている。これにより、集電極で生じる抵抗や発熱が小さくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−187790号公報
【特許文献2】特開平9−199177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の従来技術において、電極端子から離れるにしたがって、集電極内部ひいては蓄電セル内部を電流が流れ難くなり、電極端子から遠い位置にある活物質が有効利用されないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、電極端子から離れても蓄電セル内部を電流が流れやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る蓄電セルは、積層された集電極、活物質層、セパレータからなる。前記集電極の電極端子が設けられる端部から離れるにしたがって、前記集電極の厚みが増加し前記活物質層の厚みが減少する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極端子から離れても蓄電セル内部を電流が流れやすくなり、電極端子から遠い位置にある活物質が有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第一実施形態に係る蓄電セルの積層構造を示す斜視図である。
【図2】(a)第一実施形態に係る積層体を示す斜視図である。(b)第一実施形態に係る積層体を収容するケースを示す斜視図である。
【図3】第一実施形態に係る単セル(単位セル)を横方向に見た側面図である。
【図4】第一実施形態に係る単セルの等価回路を示す回路図である。
【図5】(a)集電極が均一の厚みを有する場合の電極体を示す側面図である。(b)第一実施形態に係る電極体を示す側面図である。
【図6】第一実施形態に係る積層された単セルを示す側面図である。
【図7】第二実施形態に係る蓄電セルの積層構造を示す斜視図である。
【図8】(a)第二実施形態に係る積層体を示す斜視図である。(b)第二実施形態に係る積層体を収容するケースを示す斜視図である。
【図9】第二実施形態に係る単セル(単位セル)を横方向に見た側面図である。
【図10】第二実施形態に係る単セルの等価回路を示す回路図である。
【図11】第二実施形態に係る積層された単セルを示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下では図面を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本実施形態による蓄電セルの積層構造を示す図である。図1において、X軸は横方向、Y軸は積層方向(厚み方向)、Z軸は縦方向を示す。X軸、Y軸、Z軸は互いに垂直である。なお、本実施形態において、蓄電セルは、電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」とも称する。)である。複数の蓄電セルを直列又は並列に接続して、蓄電モジュールが構成できる。
【0011】
図1を参照すると、蓄電セル10において、集電極(集電箔)1、活物質層2、セパレータ3が積層されている。集電極1の縦方向の端部1cには、縦方向の上側の電極端子(正極端子)1a、又は、縦方向の下側の電極端子(負極端子)1bが交互に配置されている。集電極1は、正極端子1aを有する正極又は負極端子1bを有する負極になり、対向し合う集電極1のうち、一方が正極、他方が負極になる。複数の正極端子1aと複数の負極端子1bはそれぞれ束ねられ、電気的に接続される。
【0012】
図2(a)(b)のように、積層体4は容器5で密封され、蓄電セル(キャパシタ)が完成する。積層体4は、水分を除去するため乾燥処理された後、グローブボックス等を用いることにより窒素ガス等の乾燥雰囲気中で、容器5内に収容される。容器5として、例えばアルミラミネートフィルム製の容器が用いられる。さらに、この乾燥雰囲気中にて、電解液の含浸とそれに続く電解精製が行われる。その後、容器5の内部は、真空引きにより、乾燥雰囲気として用いたガスや余分な電解液を取り除いた後、密封される。容器5として、アルミラミネートフィルムが用いられる場合には、密封方法として熱シールが用いられる。電解液としては、非水系電解液が用いられる。
【0013】
集電極1として、アルミ箔を用いることができる。活物質層2を構成する活物質として、活性炭などの大きな表面積をもつ炭素材料を用いることができる。セパレータ3として、セルロース系多孔質材料を用いることができる。
【0014】
活物質層2の活物質は、集電極1の表面に付着される。例えば、活物質層2は、接着剤と導電剤を粉末状の炭素材料に添加してペースト状に混練した混合物を、集電極1の表面に塗付、乾燥したものである。以下、このように集電体1の表面上に活物質層2が付着されて集電極1と活物質層2が一体化したものを電極体(1、2)と呼ぶ。
【0015】
図3は、蓄電セルの単セルを横方向に見た側面図である。一つの電極体において、集電極1の厚みは、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって縦方向に沿って大きくなる。例えば、端部1cからの距離に比例して、集電極1の厚みは大きくなる。ただし、集電極1の厚みは、発熱を抑えるため、端部1c付近でもある程度厚い。
【0016】
一方、活物質層2の厚みは、縦方向に沿って、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって小さくなる。例えば、端部1cからの距離に比例して、活物質層2の厚みは小さくなる。
【0017】
電極体(1、2)全体の厚みは、縦方向と横方向に沿って略均一であるため、電極体(1、2)と平板状のセパレータ3を積層しやすい。なお、厚みが変化する集電極1は、例えば、集電極1に圧延を施し圧延時に加えられる圧力を調整することにより、作製される。
【0018】
図4は、単セルの等価回路を示す回路図である。集電極1の積層方向の断面は、集電極1の厚みの増加により、電極端子1a、1bが配置される端部1cから離れるにしたがって大きくなる。このため、集電極1の電気抵抗は端部1cから離れるにしたがって減少する(r1(=R)>r2>r3>・・・>rn)。従って、集電極1また蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから縦方向に離れた位置でも電流が流れやすくなる。加えて、集電極1が均一の厚みdを有する場合(r1=r2=r3=・・・=rn(=一定値R)の場合)(図5(a))より、蓄電セル全体の内部抵抗が減少する。
【0019】
また、活物質層2の厚みの減少により、端部1cから離れるにしたがって、活物質層2の積層方向(厚み方向)の電気抵抗は減少する。このため、さらに、蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなる。また、活物質層2の厚みの減少により、蓄電セルの電気抵抗は、全体として減少する。
【0020】
なお、後述の第二実施形態と異なり、一方の電極端子(正極端子)1aが縦方向の上側に配置され、他方の電極端子(負極端子)1bが縦方向の下側に配置されるため、単一セル内で左右二つの活物質層2の厚みの合計が、縦方向内で変化しない。このため、キャパシタンスC0、C1、C2、C3、・・・、Cnはほぼ等しく、縦方向内で充放電の分担が均等化されやすくなる。
【0021】
さらに、本実施形態では、図5(b)のように、集電極1と活物質層2との接触面積が、集電極1が均一の厚みを有する場合(図5(a))より増加する。これは、塗布された活物質層2の長さがLからL’(L’=(L2+a2)1/2)に増加するためである。図5(a)において、塗布された活物質層2の横方向の幅Wとすると、集電極1と活物質層2との接触面積Sは、W×Lとなる(S=W×L)が、図5(b)において、集電極1と活物質層2との接触面積S’は、W×L’となる(S=W×L’)。
【0022】
図6のように得られた電極体(1、2)とセパレータ3からなる単セルを複数積層して、蓄電セル10が作製される。接触する集電極1同士の間に導電性接着剤などが塗布されても良い。なお、帯状の電極体(1、2)とセパレータ3とをロール状に巻回して構成する巻回型(円筒型)の蓄電セルを作製することも可能である。
【0023】
−作用効果−
第一実施形態によると、集電極1の電極端子1a又は1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって、集電極1の厚みが増加し、活物質層2の厚みが減少する。このため、単セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置において、電気抵抗が減少して電流が流れやすくなる。これにより、蓄電セルの充放電速度が速くなる。さらに、電極端子1a、1bから離れた位置においても、活物質が有効利用できるため、活物質の使用量を低減でき、蓄電セルのコストが下がる。
【0024】
積層方向に垂直な方向(縦方向と横方向)において、集電極1の厚みと活物質層2の厚みとの合計が一定であり、電極体(1、2)全体の厚みが略均一となり、電極体(1、2)と平板状のセパレータ3を積層しやすくなる。
【0025】
積層方向に垂直な方向(縦方向)において、正極側の電極端子1aが一方の側に設けられ、負極側の電極端子1bが他方の側に設けられるため、上記のように活物質層2の厚みを変化させても、単セル内でのキャパシタンスの縦方向内の変化が抑制される。
【0026】
[第二実施形態]
図7を参照すると、第二実施形態において、集電極1には、縦方向の上側の端部1cにおいて、右側の電極端子1a、又は、左側の電極端子1bが交互に設けられている。図8(a)(b)のように、積層体4は容器5で密封され、蓄電セル10が完成する。
【0027】
図9は、第一実施形態と同様に、蓄電セルの単セルを横方向に見た側面図である。集電極1の厚みは、縦方向に沿って、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって大きくなる。一方、活物質層2の厚みは、縦方向に沿って、電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって小さくなる。電極体(1、2)全体の厚みは、縦方向に沿って略均一であるため、電極体(1、2)と平板状のセパレータ3を積層しやすい。
【0028】
図10は、単セルの等価回路を示す回路図である。第一実施形態と同様に、集電極1の電気抵抗は電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって減少する(r1(=R)>r2>r3>・・・>rn)。従って、集電極1また蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなる。加えて、集電極1が均一の厚みdを有する場合より、蓄電セル全体の内部抵抗が減少する。
【0029】
また、活物質層2の厚みの減少により、蓄電セルにおいて電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなる。また、活物質層2の厚みの減少により、蓄電セルの電気抵抗は、全体として減少する。
【0030】
なお、単一セル内で左右二つの活物質層2の厚みの合計が、縦方向内で電極端子1a、1bが設けられる端部1cから離れるにしたがって減少して、C1>C2>C3>・・・>Cnとなり、充放電の分担が不均一になる。しかし、電極端子1a、1bから離れた位置でも電流が流れやすくなるため、キャパシタンスC1、C2、C3、・・・、Cnの分担の不均一が改善される。
【0031】
図11のように得られた電極体(1、2)とセパレータ3からなる単セルを複数積層して、蓄電セルが作製される。なお、帯状の電極体(1、2)とセパレータ3とをロール状に巻回して構成する巻回型(円筒型)の蓄電セルを作製することも可能である。
【0032】
−作用効果−
第二実施形態によると、電極端子が一方向(縦方向)の上側にのみ存在するため、蓄電セルを立てて設置することが容易になる。
【0033】
本発明は以上説明した第一実施形態と第二実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。例えば、蓄電セルが電気二重層キャパシタではなくリチウムイオン電池であれば、正極側の活物質をリチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiCoO2)とし、負極側の活物質をカーボンとし、セパレータを(例えばポリアミド製不織布)とすればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 集電極
1a、1b 電極端子
1c 端部
2 活物質層
3 セパレータ
4 積層体
10 蓄電セル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された集電極、活物質層、セパレータからなる蓄電セルであって、
前記集電極の電極端子が設けられる端部から離れるにしたがって、前記集電極の厚みが増加し前記活物質層の厚みが減少することを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記集電極の厚みと前記活物質層の厚みとの合計が、積層方向に垂直な方向において一定であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記端部から離れるにしたがって、前記集電極の電気抵抗が減少することを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項4】
積層方向に垂直な方向において、正極側の前記電極端子が一方の側に設けられ、負極側の前記電極端子が他方の側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の蓄電セルを複数接続して構成されることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項1】
積層された集電極、活物質層、セパレータからなる蓄電セルであって、
前記集電極の電極端子が設けられる端部から離れるにしたがって、前記集電極の厚みが増加し前記活物質層の厚みが減少することを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記集電極の厚みと前記活物質層の厚みとの合計が、積層方向に垂直な方向において一定であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記端部から離れるにしたがって、前記集電極の電気抵抗が減少することを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項4】
積層方向に垂直な方向において、正極側の前記電極端子が一方の側に設けられ、負極側の前記電極端子が他方の側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の蓄電セルを複数接続して構成されることを特徴とする蓄電モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−124412(P2012−124412A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275696(P2010−275696)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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