説明

蓄電セル

【課題】フィルム状ケースの液漏れを防止すること。
【解決手段】積層された集電極2,3を電解液と共に収容するフィルム状ケース10と、集電極2,3に接続されフィルム状ケース10の外部に露出する電極端子20A,20Bと、を備え、電極端子20A,20Bを介して充放電可能な蓄電セルであって、フィルム状ケース10の曲がり部14a〜14dは平行に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な蓄電セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラミネートフィルムなどの薄膜材料をケースとして用いた蓄電セルは、スペース効率や放熱性が高いことから、電気二重層キャパシタのみならず、リチウムイオン電池などの2次電池においても用いられている。
【0003】
この種の蓄電セルのケースは、一般的にプレス加工によって成形されるため、局所的に見ると引っ張り変形や曲げ変形の度合いが大きい箇所が偏在している。このような箇所には、液漏れの原因とするシワや亀裂が発生し易い。
【0004】
特許文献1には、フィルム外装体の凹部の内表面の角部に補強部材を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−55171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載のフィルム外装体は、応力緩和を目的として補強部材を用い、亀裂の発生を防止するものである。しかし、補強部材を用いる方法では、亀裂の発生を完全に無くすことはできず、また、補強部材とフィルムが密着していなければ、液漏れを防ぐことができない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、フィルム状ケースの液漏れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、積層された集電極を電解液と共に収容するフィルム状ケースと、前記集電極に接続され、前記フィルム状ケースの外部に露出する電極端子と、を備え、前記電極端子を介して充放電可能な蓄電セルであって、前記フィルム状ケースの曲がり部は平行に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルム状ケースの曲がり部は平行に形成されるため、フィルム状ケースには角部が存在しない。曲がり部は塑性変形量が少ないため、亀裂発生の原因となる欠陥を生じ難い。したがって、フィルム状ケースからの液漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る電気二重層キャパシタの正面の断面図であり、(b)は図1(a)における左側面図であり、(c)は図1(a)における右側面図である。
【図2】フィルム状ケースの分解斜視図である。
【図3】従来のフィルム状ケースの分解斜視図である。
【図4】フィルム状ケースの分解斜視図である。
【図5】電極端子の斜視図である。
【図6】(a)は本発明の他の実施の形態に係る電気二重層キャパシタの正面の断面図であり、(b)は図5(a)における左側面図であり、(c)は図5(a)における右側面図である。
【図7】フィルム状ケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る蓄電セルについて説明する。
【0012】
蓄電セルは、充放電可能なものであり、電気二重層キャパシタの他、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの2次電池である。以下の実施の形態では、蓄電セルが電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」と称する。)である場合について説明する。
【0013】
以下、図1〜図5を参照して、キャパシタ100について説明する。
【0014】
図1に示すように、キャパシタ100は、両端に開口部10a,10bを有するフィルム状ケース10と、フィルム状ケース10の開口部10a,10bを閉塞してフィルム状ケース10の外部に露出する一対の電極端子20と、を備える。
【0015】
フィルム状ケース10の内部には、正極集電極2と、負極集電極3と、正極集電極2と負極集電極3の間に介在され両者を隔離するセパレータ(図示省略)とを所定数積層した積層体5が収容される。また、フィルム状ケース10の内部には、電解液が密封される。つまり、フィルム状ケース10内には積層体5と電解液が収容される。
【0016】
セパレータは、正極集電極2と負極集電極3の接触を防ぐが、イオンの流通は妨げないものであり、紙または樹脂製のシートで構成される。正極集電極2及び負極集電極3の表面には電気二重層を構成する活性炭が塗布される。
【0017】
キャパシタ100は、正極集電極2と負極集電極3の両極それぞれで電気二重層による静電容量によって電荷を蓄えるとともに、蓄えた電荷を放出するものである。充放電は電極端子20を介して行われる。
【0018】
次に、図2を参照して、フィルム状ケース10について説明する。
【0019】
フィルム状ケース10は、積層体5を収容する断面形状が略コの字状の本体部11と、本体部11の両端部から略垂直に外側に向かって延在する鍔部12とからなる枠体13を2つ向かい合わせて、互いの鍔部12の表面12aを接合することによって構成される。これにより、フィルム状ケース10の両端に開口部10a,10bが形成される。なお、図2は2つの枠体13を接合する前の図であり、フィルム状ケース10の分解斜視図である。
【0020】
1つの枠体13は、ラミネートフィルムのシートを折り曲げることによって成形される。ラミネートフィルムのシートを折り曲げて本体部11と鍔部12を成形することによって、枠体13には4つの直線状の曲がり部14a〜14dが形成されることになる。4つの曲がり部14a〜14dは平行に形成される。このように、枠体13に形成される全ての曲がり部14a〜14dは平行に形成される。したがって、フィルム状ケース10の内部空間の断面積は長手方向に一様であり、両端の開口部10a,10bの開口面積は、積層体5が収容される空間の断面積と同じである。
【0021】
ラミネートフィルムは、金属箔の金属層を樹脂層にて被服した多層構造のフィルム材である。ラミネートフィルムの少なくとも一方の表層は、熱可塑性樹脂にて形成される。2つの枠体13の接合は、鍔部12の表面層である熱可塑性樹脂を互いに突き合わせ、熱可塑性樹脂を熱溶着させることによって行われる。なお、シートは、ラミネートフィルムに限られるものではなく、フィルム状のシートであれば樹脂製や金属製のシートを用いてもよい。
【0022】
図3に、比較例として従来のフィルム状ケース30を示す。フィルム状ケース30は、箱状の本体部31と、本体部31の開口縁から略垂直に外側に向かって延在する鍔部32とからなる枠体33を2つ向かい合わせて、互いの鍔部32の表面32aを接合することによって構成される。なお、図3は2つの枠体33を接合する前の図であり、フィルム状ケース30の分解斜視図である。
【0023】
1つの枠体33は、ラミネートフィルムのシートをプレスすることによって成形される。このようにして成形されたフィルム状ケース30では、曲がり部は平行に形成されない。したがって、例えば角部35は、それぞれ方向の異なる3つの曲がり部34a,34b,34cによって造形される。つまり、角部35は、3軸方向の曲げによって造形され、3次元的な応力による塑性変形を受けている。そのため、角部35におけるラミネートフィルムの各層は薄くなり、角部35に亀裂が発生するおそれがある。特に、ラミネートフィルムの金属層は塑性変形による加工硬化によって靭性が失われ易く、亀裂発生の原因となる欠陥を生じ易い。
【0024】
これに対して、本実施の形態のフィルム状ケース10では、全ての曲がり部14a〜14dが1軸方向の曲げによって造形されるものであるため、角部は存在せず単純な曲げ形状が存在するだけである。曲がり部14a〜14dは塑性変形量が少ないため、亀裂発生の原因となる欠陥を生じ難い。さらに、図4に示すように、曲がり部14a〜14dを丸みのある曲面状とすることによって、塑性変形量がさらに少なくなり、曲がり部14a〜14dの肉厚を他の部位と同等の厚さに維持することができ、亀裂発生の原因となる欠陥がより生じ難くなる。
【0025】
次に、図5を参照して、フィルム状ケース10の開口部10a,10bに設けられる電極端子20について説明する。
【0026】
電極端子20は、正極集電極2に電気的に接続される正電極端子20Aと、負極集電極3に電気的に接続される負電極端子20Bとからなる。正電極端子20Aはフィルム状ケース10の一方の開口部10aを閉塞して設けられ、負電極端子20Bは他方の開口部10bを閉塞して設けられる。正電極端子20Aと負電極端子20Bは同一形状であるため、以下では正電極端子20Aについて説明する。
【0027】
正電極端子20Aは、アルミニウムなど導電性を有する金属にて構成される。正電極端子20Aは、カップ状に形成され開口部10aの内周に接合される本体部21と、本体部21に延設されフィルム状ケース10の外部に引き出される外部端子部22と、本体部21の底面に突設され正極集電極2に接続される集電極接続部23とを有する。負電極端子20Bの集電極接続部23は、負極集電極3に接続される。
【0028】
本体部21は、略長円形の開口を有し、深さのある有底のカップ状に形成される。本体部21は、その全外周に亘って形成されるシール面25を有する。シール面25には、均一な厚さの熱可塑性樹脂が設けられる。本体部21は、熱可塑性樹脂を介してフィルム状ケース10の開口部10aの内周に接合される。このように、本体部21は、その全外周がフィルム状ケース10の開口部10aの全内周に接合される。シール面25の熱可塑性樹脂は、ラミネートフィルムの表面層の熱可塑性樹脂と同一であることが望ましい。このように構成すれば、熱溶着が容易となり、本体部21外周と開口部10a内周とのシール性能が高くなる。なお、シール面25に熱可塑性樹脂を設けずに、ラミネートフィルムの表面層の熱可塑性樹脂によって本体部21外周と開口部10a内周とを直接接合するようにしてもよい。
【0029】
ここで、一般的に、キャパシタは、ケース内部の熱を電極端子を通じて放熱する。キャパシタの発熱量は化学反応を利用する化学電池と比べると小さいものであるが、ケース内部で発生した熱については外部へ排出する必要がある。電極端子20は、それぞれフィルム状ケース10の開口部10a,10bを閉塞する形状であるため、開口部10a,10bの開口面積と同じ大きさに形成される。したがって、キャパシタ100では、電極端子20が外部と熱交換し易く、フィルム状ケース10内部の熱を効率的に外部へ排出することができる。
【0030】
外部端子部22は、矩形の平板状に形成される。外部端子部22は、フィルム状ケース10の外部に引き出され、隣接して設けられる他のキャパシタ100の外部端子部22と接続される。
【0031】
集電極接続部23は、本体部21を挟んで外部端子部22の反対側に形成される。集電極接続部23は、フィルム状ケース10の内部に突出し、平面状の接続面23aに正極集電極2が接続される。負電極端子20Bの集電極接続部23の接続面23aには、負極集電極3が接続される。
【0032】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0033】
フィルム状ケース10の曲がり部14a〜14dは平行に形成されるため、フィルム状ケース10には角部が存在せず単純な曲げ形状のみが存在する。曲がり部14a〜14dは塑性変形量が少ないため、亀裂発生の原因となる欠陥を生じ難い。したがって、フィルム状ケース10からの液漏れを防止することができ、キャパシタ100の信頼性が向上し、寿命を長くすることができる。
【0034】
次に、図6を参照して、本発明の他の実施の形態について説明する。上記実施の形態では、電極端子20は、フィルム状ケース10の開口部10a,10bを閉塞する形状である。これに対して、図6に示す実施の形態では、電極端子20はアルミニウム板などの導電性の板材にて構成される。開口部10a,10bは熱可塑性樹脂40にて閉塞され、電極端子20は熱可塑性樹脂40にて固定される。
【0035】
次に、図7を参照して、本発明の他の実施の形態について説明する。上記実施の形態では、フィルム状ケース10は、ラミネートフィルムのシートを折り曲げることによって成形された2つの枠体13を接合することによって構成されるものである。これに対して、図7に示す実施の形態では、フィルム状ケース10は、1枚のラミネートフィルムのシートを折り曲げて成形され、シートの両端が接合されて構成される。
【0036】
フィルム状ケース10は、積層体5を収容する断面形状が略矩形の本体部51と、ラミネートフィルムのシートの両端を折り曲げて成形された対向する一対の鍔部52とからなり、鍔部52の対向する表面52aを接合することによって構成される。具体的には、鍔部52の表面層である熱可塑性樹脂を互いに突き合わせ、熱可塑性樹脂を熱溶着させることによって接合が行われる。これにより、フィルム状ケース10の両端に開口部10a,10bが形成される。なお、図7は鍔部52を接合する前の図である。
【0037】
フィルム状ケース10には、6つの直線状の曲がり部54a〜54fが形成される。6つの曲がり部54a〜54fは平行に形成される。このように、フィルム状ケース10に形成される全ての曲がり部54a〜54fは平行に形成される。したがって、フィルム状ケース10の内部空間の断面積は長手方向に一様であり、両端の開口部10a,10bの開口面積は、積層体5が収容される空間の断面積と同じである。
【0038】
フィルム状ケース10は、1枚のラミネートフィルムのシートを折り曲げて成形されるものであり、熱溶着されるのは1箇所のみであるため、フィルム状ケース10からの液漏れをより効果的に防止することができる。
【0039】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0040】
100 電気二重層キャパシタ(キャパシタ)
2 正極集電極(集電極)
3 負極集電極(集電極)
5 積層体
10 フィルム状ケース
10a,10b 開口部
11 本体部
12 鍔部
13 枠体
14a〜14d 曲がり部
20 電極端子
20A 正電極端子
20B 負電極端子
21 本体部
22 外部端子部
23 集電極接続部
35 角部
51 本体部
52 鍔部
54a〜54f 曲がり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された集電極を電解液と共に収容するフィルム状ケースと、
前記集電極に接続され、前記フィルム状ケースの外部に露出する電極端子と、
を備え、前記電極端子を介して充放電可能な蓄電セルであって、
前記フィルム状ケースの曲がり部は平行に形成されることを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記フィルム状ケースは、内部空間の断面積が長手方向に一様に形成されることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記フィルム状ケースは、フィルム状のシートを折り曲げることによって成形された2つの枠体が接合されて構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記枠体は、
断面形状が略コの字状の本体部と、
前記本体部の両端部から外側に向かって延在する鍔部と、を備え、
前記フィルム状ケースは、前記枠体を2つ向かい合わせて互いの前記鍔部の表面を接合することによって構成されることを特徴する請求項3に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記フィルム状ケースは、1枚のフィルム状のシートを折り曲げて成形され、シートの両端が接合されて構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記フィルム状ケースは、
断面形状が略矩形の本体部と、
前記シートの両端を折り曲げて成形された対向する一対の鍔部と、を備え、
前記鍔部の対向する表面を接合することによって構成されることを特徴する請求項5に記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記曲がり部は曲面状に形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の蓄電セル。
【請求項8】
前記電極端子は、その全外周が前記フィルム状ケースの端部の開口部の全内周に接合されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の蓄電セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119620(P2012−119620A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270412(P2010−270412)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】