説明

蓄電デバイスおよびシート状リード部材

【課題】高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られると共に、長時間にわたって振動が加えられた場合において、集電体と電極端子とを電気的に接続するためのシート状リード部材における断裂の発生を抑制することができ、また内部抵抗の上昇を抑制することのできる蓄電デバイスおよびシート状リード部材の提供。
【解決手段】蓄電デバイスは、それぞれ平均孔径が300μm以下の貫通孔が複数形成された集電体上に電極層が形成されてなる構成の電極シートがセパレータを介して積重されてなる電極ユニットと、電解液とが外装容器内に収容されており、当該電極シートの集電体が、一端が外装容器内に位置し、他端が外装容器の外部に突出するよう設けられている電極端子と金属製のシート状リード部材を介して電気的に接続されており、前記シート状リード部材が当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスおよびシート状リード部材に関し、更に詳しくは、それぞれ集電体上に電極層が形成されてなる正極電極シートおよび負極電極シートがセパレータを介して積重された構成の電極ユニットが外装容器内に収容されてなる蓄電デバイスおよび当該蓄電デバイスにおけるリード部の形成に用いられるシート状リード部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池およびリチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスとしては、外装容器内に、複数の正極電極シートと複数の負極電極シートとがセパレータを介して交互に積層されてなる積層型の電極ユニット、あるいは、正極電極シートと負極電極シートとがセパレータを介して積重された状態で捲回されてなる捲回型の電極ユニットが、電解液と共に収納されてなる構成のものが知られている。
【0003】
このような蓄電デバイスの或る種のものにおいては、正極電極シートとしては、例えばアルミニウムよりなる集電体に正極活物質を含有する電極層が形成されてなるものが用いられ、負極電極シートとしては、例えば銅よりなる集電体に負極活物質を含有する電極層が形成されてなるものが用いられており、また、外装容器としては、互いに重ね合わせた外装フィルムが、それぞれの外周縁部に沿って形成された接合部によって相互に気密に接合されてなるものが用いられている。
このような構成の蓄電デバイスにおいては、外装容器の接合部に、その一端が外装容器内に位置し、他端が当該外装容器の外部に突出するよう設けられている板状の正極電極端子および負極電極端子が、重ね合わせられた外装フィルムに挟持された状態で設けられており、この正極電極端子および負極電極端子には、それぞれ金属箔よりなるシート状リード部材を介して正極電極シートを構成する集電体および負極電極シートを構成する集電体が電気的に接続されている。
【0004】
正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体にシート状リード部材を電気的に接続するための手法としては、スポット溶接、レーザー溶接および超音波溶接などの溶接処理を行う手法または接着剤を用いる手法などが用いられているが、特に正極電極シートを構成するアルミニウム製の集電体にアルミニウム箔よりなるシート状リード部材を超音波溶接する場合においては、超音波溶接時に発生する振動による金属疲労が集電体に生じることに起因して集電体の接合部分付近に破断が生じてしまう、という問題がある。このような問題を解決するための手法として、集電体の幅、リード部材の幅および超音波溶接装置を構成するホーン(共鳴体)の振動方向の幅を、これらの関係から特定の範囲とし、かつ集電体の一端にリード部材を接続するための接続用タブ部材を設け、この接続用タブ部材とシート状リード部材の端部とを重ね合わせた状態に接合する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、金属箔よりなるリード部材を用いた蓄電デバイスにおいては、特に自動車やブイ(浮標)などの移動体に搭載して用いる場合には、移動体の振動によってリード部材に金属疲労が生じることに起因してリード部材に断裂が生じてしまう、という問題がある。
【0006】
また、集電体としては、正極電極シートおよび負極電極シートがセパレータを介して巻回または交互に積層されてなる構成の電極ユニットにおいて、正極電極シートおよび負極電極シートの表裏間をイオンが移動することができるように、表裏面を貫通する貫通孔を複数有する構成のものが用いられており、更には、製造工程および製造コストの観点から、集電体とリード部材とが同一部材によって構成されたもの、すなわち一端側に電極層が形成されて集電体として機能する集電体機能領域を有すると共に他端側に集電体と電極端子とを電気的に接続するためのリード部材として機能するリード部材機能領域を有し、いずれの領域においても複数の貫通孔を有する構成のものが広く用いられている。
【0007】
このような構成の集電体としては、従来においてはエキスパンドメタルが広く用いられてきたが、近年の蓄電デバイスの高機能化の要請に応じるべく、集電体の薄厚化あるいは正極電極シートおよび負極電極シートを構成する電極層の厚みの均一性を図り、また電極層におけるイオン濃度に偏りが生じることを抑制するためには集電体の貫通孔を微細に高密度で設けることが必要とされているにもかかわらず、エキスパンドメタルにおいては、その製造上の制約により微細な加工をすることが困難である。そこで、近年においては、金属箔に対してパンチング、レーザー照射およびエッチングなどによって微細かつ均質な貫通孔を形成したものが用いられるようになってきている。
【0008】
しかしながら、集電体として、リード部材と同一部材によって構成された、パンチングなどによって貫通孔を形成した構成のものを用いた蓄電デバイスにおいては、電極層に対して均一にイオンを担持させることができて高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られるが、その一方で、シート状リード部材として金属箔を用いた場合と同様に、特に自動車やブイ(浮標)などの長時間にわたって振動する移動体に搭載して用いる場合には、移動体の振動によってシート状リード部材に金属疲労が生じることに起因してシート状リード部材に亀裂あるいは断裂が生じてしまう、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−134971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られると共に、長時間にわたって振動が加えられた場合において、正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体と正極電極端子および負極電極端子とを電気的に接続するためのシート状リード部材における断裂の発生を抑制することのでき、また内部抵抗の上昇を抑制することのできる蓄電デバイスおよびシート状リード部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の蓄電デバイスは、それぞれ平均孔径が300μm以下の貫通孔よりなる複数の貫通開口部が形成された集電体上に電極層が形成されてなる構成の正極電極シートおよび負極電極シートがセパレータを介して積重されてなる電極ユニットと、電解液とが外装容器内に収容されており、当該正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体が、一端が外装容器内に位置し、他端が当該外装容器の外部に突出するよう設けられている正極電極端子および負極電極端子と金属製のシート状リード部材を介して電気的に接続されてなる蓄電デバイスであって、
前記シート状リード部材が当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の蓄電デバイスにおいては、前記シート状リード部材は、切り込み開口、矩形状開口または菱形状開口よりなる貫通開口部が形成されることによって当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能とされており、当該貫通開口部が、前記集電体に形成されている貫通開口部と異なる形状を有することが好ましい。
このような構成の本発明の蓄電デバイスにおいては、前記シート状リード部材が複数の貫通開口部を有しており、当該複数の貫通開口部の少なくとも一部が、その長軸が当該シート状リード部材の長さ方向に垂直となるように配置されていることが好ましく、更に、前記シート状リード部材における複数の貫通開口部が千鳥状に配列されていることが好ましい。
【0013】
本発明の蓄電デバイスは、移動体に搭載されることが好ましい。
【0014】
本発明の蓄電デバイスは、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0015】
本発明のシート状リード部材は、それぞれ集電体上に電極層が形成されてなる構成の正極電極シートおよび負極電極シートがセパレータを介して積重されてなる電極ユニットと、電解液とが外装容器内に収容されており、それぞれ一端が外装容器内に位置し、他端が当該外装容器の外部に突出するよう設けられている正極電極端子および負極電極端子を備えてなる蓄電デバイスにおいて、正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体と正極電極端子および負極電極端子とを電気的に接続するための金属製のシート状リード部材であって、
少なくとも一方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有することを特徴とする。
【0016】
本発明のシート状リード部材は、切り込み開口、矩形状開口または菱形状開口よりなる貫通開口部を複数有することによって当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能とされており、当該複数の貫通開口部の少なくとも一部が、その長軸が当該リード部の長さ方向に垂直となるように配置されていることが好ましい。
このような構成の本発明のシート状リード部材においては、前記複数の貫通開口部が千鳥状に配列されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓄電デバイスによれば、正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体と正極電極端子および負極電極端子とを電気的に接続するための金属製のシート状リード部材が、当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有することから、長時間にわたって振動が加えられた場合においても、振動によってシート状リード部材に加えられる応力が当該シート状リード部材の振動吸収能の作用によって吸収されるため、シート状リード部材に金属疲労が生じることに起因して亀裂が生じて内部抵抗が上昇することを抑制することができ、またシート状リード部材における断裂の発生を抑制することができる。
また、本発明の蓄電デバイスにおいては、正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体には特定の平均孔径を有する微細な貫通孔よりなる複数の貫通開口部が形成されていることから、集電体の薄厚化あるいは正極電極シートおよび負極電極シートを構成する電極層の厚み均一性を図り、また電極層におけるイオン濃度に偏りが生じることを抑制することができるため、高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られる。
このように、本発明の蓄電デバイスは、高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られると共に、長時間にわたって振動が加えられた場合において、内部抵抗の上昇およびリード部の破断の発生を抑制することができるものであるため、自動車やブイ(浮標)などの長時間にわたって振動する移動体にも好適に用いることができる。
【0018】
本発明のシート状リード部材によれば、当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有することから、蓄電デバイスにおいて、正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体と正極電極端子および負極電極端子とを電気的に接続した状態で長時間にわたって振動が加えられた場合においても、振動によってシート状リード部材に加えられる応力が当該シート状リード部材の振動吸収能の作用によって吸収されるため、金属疲労が生じること、および金属疲労が生じることに起因して断裂の発生が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るリチウムイオンキャパシタの構成の一例を示す説明用平面図である。
【図2】図1の本発明に係るリチウムイオンキャパシタにおけるX−X断面を示す説明用断面図である。
【図3】本発明の蓄電デバイスに係るシート状リード部材の構成の一例を、集電体と共に示す説明図である。
【図4】本発明の蓄電デバイスに係るシート状リード部材の構成の他の例を、集電体と共に示す説明図である。
【図5】本発明の蓄電デバイスに係るシート状リード部材の構成の更に他の例を、集電体と共に示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、複数の正極電極シートと複数の負極電極シートとがセパレータを介して交互に積層された、いわゆる積層型の電極ユニットを備え、この電極ユニットが、互いに重ね合わせられた外装ラミネートフィルムよりなる外装容器に収容されてなる構成のリチウムイオンキャパシタとして適用した場合を例に挙げて詳細に説明する。
本発明において、「正極」とは、放電の際に電流が流出し、充電の際に電流が流入する側の極を意味し、「負極」とは、放電の際に電流が流入し、充電の際に電流が流出する側の極を意味する。
【0021】
図1は、本発明に係るリチウムイオンキャパシタの構成の一例を示す説明用平面図であり、図2は、図1の本発明に係るリチウムイオンキャパシタにおけるX−X断面を示す説明用断面図である。
このリチウムイオンキャパシタ10においては、互いに重ね合わせられた外装フィルム12,13がそれぞれの外周縁部に形成された接合部14において相互に気密に接合されることによって形成された外装容器11内に、シート状のセパレータ27を介して複数の正極電極シート21と複数の負極電極シート24とが積層されてなる電極ユニットと、電解液とが収容されている。この外装容器11における一端および他端には、正極電極端子18および負極電極端子19が、外装フィルム12,13の接合部14において挟持された状態で一端部が外装容器11内に位置し、他端部が当該外装容器11の外部に突出するように設けられている。そして、電極ユニットを構成する複数の正極電極シート21における正極集電体22および負極電極シート24における負極集電体25が、各々、金属製のシート状リード部材31,32を介して正極電極端子18および負極電極端子19に電気的に接続されている。
図の例において、正極電極端子18の外装容器11内に位置する一端部には、当該正極電極端子18と正極電極シート21の正極集電体22の各々とを電気的に接続するためのシート状リード部材(以下、「正極用リード部材」ともいう。)31における端子接合用端部31aが束ねられた状態で溶接などによって固定されている。また、負極電極端子19の外装容器11内に位置する一端部には、当該負極電極端子19と負極電極シート24の負極集電体25の各々とを電気的に接続するためのシート状リード部材(以下、「負極用リード部材」ともいう。)32における端子接合用端部32aが束ねられた状態で溶接などによって固定されている。
【0022】
(電極ユニット)
リチウムイオンキャパシタ10を構成する電極ユニットにおいては、図2に示すように、それぞれ正極集電体22の両面に正極電極層23が形成されてなる複数の正極電極シート21と、それぞれ負極集電体25の一面または両面に負極電極層26が形成されてなる複数の負極電極シート24とが、それぞれの正極電極層23および負極電極層26がセパレータ27を介して互いに対向するよう交互に積層されている。
この図の例において、電極ユニットの最外層(図2における最上層および最下層)は負極電極シート24によって構成されており、この最外層を構成する負極電極シート24においては負極集電体25の一面に負極電極層26が形成されており、その他の負極電極シート24(最外層を構成する負極電極シート24以外のもの)においては負極集電体25の両面に負極電極層26が形成されている。
【0023】
また、電極ユニットの一方の最外層上(図2における最上層上)には、セパレータ27を介して膜状のリチウムイオン供給源28が配置されている。
このリチウムイオン供給源28は、図2に示すように金属製の集電体(以下、「リチウム極集電体」ともいう。)29に圧着、蒸着または積重されていることが好ましい。
この図の例において、リチウムイオン供給源28は、リチウムイオン極集電体29におけるリチウムイオン供給源28の設けられていない部分が複数の負極電極シート24の各々に係る負極用リード部材32の端子接合用端部32aと共に束ねられた状態で負極電極端子19に固定されることにより、当該負極電極端子19に電気的に接続されている。
【0024】
(集電体)
正極電極シート21および負極電極シート24における正極集電体22および負極集電体25(以下、両者を併せて「電極集電体」ともいう。)は、図3〜図5に示すように、表裏面を貫通する複数の貫通孔22a,25aよりなる貫通開口部を有する多孔材よりなるものであり、かかる多孔材の形態としては、パンチングメタル、発泡体、あるいはエッチング、電解エッチングにより貫通孔22a,25aが形成された多孔質箔などが挙げられる。
電極集電体の貫通孔22a,25aの形状は、円形、矩形等の多角形、その他適宜の形状に設定することができる。
また、電極集電体の厚みは、強度および軽量化の観点から、1〜100μmであることが好ましい。
【0025】
電極集電体においては、複数の貫通孔22a,25aの平均孔径が300μm以下であることが必要とされ、好ましくは10〜100μmである。
【0026】
電極集電体における貫通孔22a,25aの平均孔径が過大である場合には、正極電極シート21および負極電極シート24を構成する正極電極層23および負極電極層26において十分な均一性が得られず、また正極電極層23および負極電極層26におけるイオン濃度に偏りが生じることに起因して、高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られなくなる。
【0027】
また、電極集電体においては、その気孔率(開口率)は30〜70%であることが好ましく、更に好ましくは40〜60%である。
ここで、気孔率は、下記数式(1)によって算出されるものである。
【0028】
数式(1):
気孔率=[1−(集電体の質量/集電体の真比重)/(集電体の見かけ体積)]×100
【0029】
負極集電体25の材質の具体例としては、ステンレス、銅、ニッケルなどが挙げられる。
また、正極集電体22の材質の具体例としては、アルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。
【0030】
このような特定の多孔材を電極集電体として用いることにより、リチウム極集電体29に積層されたリチウムイオン供給源28から放出されるリチウムイオンが電極集電体の貫通孔22a,25aを通って自由に各電極間を移動することができるため、リチウムイオン供給源28によって負極電極シート24および/または正極電極シート21における負極電極層26および正極電極層23において均一にリチウムイオンをドーピングすることができる。
【0031】
(電極層)
負極電極シート24における負極電極層26は、リチウムイオンを可逆的に担持、すなわちドープおよび脱ドープすることのできる負極活物質を含有してなるものであり、また、 正極電極シート21における正極電極層23は、リチウムイオンおよび/または例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンを可逆的に担持することのできる正極活物質を含有してなるものである。
【0032】
負極電極シート24における負極電極層26の厚みは、得られるリチウムイオンキャパシタ10に十分なエネルギー密度を確保されるよう正極電極シート21における正極電極層23の厚みとのバランスで設計されるが、得られるリチウムイオンキャパシタの出力密度、エネルギー密度および工業的生産性等の観点から、負極集電体25の一面に形成される場合では、通常、15〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
また、正極電極シート21における正極電極層23の厚みは、得られるリチウムイオンキャパシタ10に十分なエネルギー密度を確保されるよう負極電極シート24における負極電極層26の厚みとのバランスで設計されるが、得られるリチウムイオンキャパシタ10の出力密度、エネルギー密度および工業的生産性等の観点から、正極集電体23の一面に形成される場合では、通常、15〜300μm、好ましくは20〜200μmである。
【0033】
(負極活物質)
本発明に係るリチウムイオンキャパシタ10に係る負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に担持、すなわちドープおよび脱ドープすることのできる物質である。
このような負極活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子数比(以下、「H/C」と記す。)が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(以下、「PAS」という。)等を好適に用いることができる。
【0034】
(正極活物質)
本発明に係るリチウムイオンキャパシタ10に係る正極活物質は、リチウムイオンおよび/または例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンを可逆的に担持することのできる物質である。
このような正極活物質としては、例えば活性炭、導電性高分子および芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子比が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)などを用いることができる。
【0035】
(電極層の形成方法)
本発明に係るリチウムイオンキャパシタ10において、負極電極シート24における負極電極層26は、上記の負極活物質を含有してなる材料を用いて負極集電体25上に形成されるが、その方法は特定されず公知の方法を利用することができる。
具体的には、負極活物質粉末、バインダおよび必要に応じて用いられる導電性粉末が水系媒体または有機溶媒中に分散されてなるスラリーを調製し、このスラリーを負極集電体25の表面(一面または両面)に塗布して乾燥することによって、あるいは上記スラリーを予めシート状に成形し、得られる成形体を負極集電体25の表面(一面または両面)に貼り付けることによって、負極電極層26を形成することができる。
ここで、スラリーの調製に用いられるバインダとしては、例えばSBR等のゴム系バンダー、ポリ四フッ化エチレンおよびポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリプロピレンおよびポリエチレン等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
また、必要に応じて用いられる導電性粉末としては、例えばアセチレンブラック、グラファイト、金属粉末などが挙げられる。
【0036】
負極集電体25上にスラリーを塗布することによって負極電極層26形成する場合においては、負極集電体25にスラリーを塗布する前に、負極集電体25における少なくとも一部の貫通孔25aを脱落しにくい導電性材料を用いて閉塞することが好ましい。
このように、少なくとも一部を閉塞した状態の負極集電体25に負極電極層26を形成することにより、電極シートの生産性を向上させることができると共に、負極集電体25から負極電極層26が脱落することによって生じるリチウムイオンキャパシタ10の信頼性の低下を防止または抑制することができる。
【0037】
また、正極電極シート21における正極電極層22は、負極電極シート24における負極電極層26と同様の方法によって形成することができる。
【0038】
(セパレータ)
セパレータ27としては、電解液、正極活物質あるいは負極活物質に対して耐久性があり、電解液を含浸することが可能な連通気孔を有する電気伝導性の小さい多孔体等を用いることができる。
セパレータ27の材質としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース/レーヨン、エンジニアプラスチック・スーパーエンジニアプラスチック等の熱可塑性樹脂、ガラス繊維、その他公知のものを用いることができる。これらの中では、セルロース/レーヨンが耐久性および経済性の点で好ましい。
また、セパレータ27の厚みは特に限定されないが、通常、10〜50μm程度が好ましい。
【0039】
(リチウムイオン供給源)
リチウムイオン供給源28は、例えばリチウム金属箔よりなるものであり、このリチウムイオン供給源28を構成するリチウム金属の量は、正極電極と負極電極とが短絡した場合における正極電極の電位が2.0V以下となるように、リチウムイオンがドーピングされる量に設定することが好ましい。
また、リチウムイオン供給源28がリチウム金属箔よりなる場合において、その厚みは、例えば100〜300μmである。
【0040】
(リチウム極集電体)
リチウム極集電体29としては、リチウムイオン供給源28を構成するリチウム金属が蒸着または圧着しやすく、必要に応じてリチウムイオンが通過するよう、電極集電体と同様な多孔構造のものを用いることが好ましい。
また、リチウム極集電体29の材質は、アルミニウム、銅、ステンレスなどのリチウムイオン供給源28と反応しないものを用いることが好ましい。
また、リチウム極集電体29の厚みは、10〜200μmであることが好ましい。
【0041】
(シート状リード部材)
シート状リード部材31,32は、図3〜図5に示すように、複数の貫通開口部が形成されてなるものであり、正極電極シート21および負極電極シート24と、正極電極端子18および負極電極端子19との間に位置され、正極電極シート21および負極電極シート24と、正極電極端子18および負極電極端子19とに電気的に接続されている。
そして、このシート状リード部材31,32は、当該シート状リード部材31,32の長さ方向の引っ張り(外力)に対して変形して緩衝する緩衝機能を有しており、具体的には、JIS Z2241に準拠し、シート状リード部材31,32が伸びる方向(図3〜図5における右方向)に5mm毎秒の条件によって外力(引っ張り力)が加えられた場合において、その長さが5%以上延伸するよう、変形するものであることが必要とされる。
【0042】
ここに、正極用リード部材31は、図3〜5に示されているように、正極集電体22の一端に継ぎ目がなく連続して一体に形成されることによって当該正極集電体22に電気的に接続されていてもよく、また、正極集電体22の一端にシート状リード部材を接合するための接続用タブ部材を設け、この接続用タブ部材にシート状リード部材の一端部分を重ね合わせて溶接などにより接合することによって当該正極集電体22に電気的に接続されていてもよい。製造工程および製造コストの観点からは、正極用リード部材31と正極集電体22とを共通の金属箔または金属シートなどよりなる基材から形成することができるため、正極用リード部材31は正極集電体22の一端に継ぎ目がなく連続して一体に形成されてなるものであることが好ましい。
また、負極用リード部材32は、図3〜5に示されているように、負極集電体25の一端に継ぎ目がなく連続して一体に形成されることによって当該負極集電体25に電気的に接続されていてもよく、また、負極集電体25の一端にシート状リード部材を接合するための接続用タブ部材を設け、この接続用タブ部材にシート状リード部材の一端部分を重ね合わせて溶接などにより接合することによって当該負極集電体25に電気的に接続されていてもよい。製造工程および製造コストの観点からは、負極用リード部材32と負極集電体25とを共通の金属箔または金属シートなどよりなる基材から形成することができるため、負極用リード部材32は負極集電体25の一端に継ぎ目がなく連続して一体に形成されてなるものであることが好ましい。
【0043】
シート状リード部材31,32における複数の貫通開口部は、電極集電体における貫通開口部、具体的には貫通孔22a,25aとは異なる形状を有するものであり、具体的には、図3に示すような切込み開口37、図4に示すような矩形状開口38または図5に示すような菱形状開口39よりなることが好ましい。
ここに、シート状リード部材31,32における複数の貫通開口部を構成する開口は、そのすべてが同一の形状および寸法を有するものであってもよく、また一部または全部が異なる形状および/または異なる寸法を有するものであってもよい。
【0044】
また、シート状リード部材31,32における切込み開口37、矩形状開口38および菱形状開口39よりなる貫通開口部(以下、これらをまとめて「特定貫通開口部」ともいう。)の複数は、その少なくとも一部が、長軸がシート状リード部材31,32の長さ方向に垂直となるように配置されていることが好ましく、具体的には、千鳥状に配置されていることが好ましい。
ここに、図3においては、複数の切込み開口37の一部が千鳥状に配置されており、図4および図5においては、各々、複数の矩形状開口38および複数の菱形状開口39のすべてが千鳥状に配置されている。
【0045】
複数の特定貫通開口部の一部または全部を千鳥状に配置する場合において、千鳥状に配置される特定貫通開口部における互いに隣接する特定貫通開口部の離間距離は、シート状リード部材31,32の材質および厚み、特定貫通開口部の形状および寸法および千鳥状に配置される特定貫通開口部の割合などによって異なるが、シート状リード部材31,32の長さ方向の離間距離が75〜2000μm、シート状リード部材31,32の長さ方向に垂直な方向の離間距離が50〜1000μmであることが好ましい。
【0046】
シート状リード部材31,32の貫通開口部を切込み開口37によって形成する場合には、その切込み幅(長さ)が、50〜5000μmであることが好ましく、更に好ましくは50〜2000μmである。
切込み幅が過小である場合には、シート状リード部材31,32が十分な緩衝機能を有するものとならないことから、高い振動吸収能が得られなくなり、それに起因して長時間にわたって振動が加えられた場合において、内部抵抗の上昇およびシート状リード部材31,32における破断の発生を抑制することができなくなるおそれがある。一方、切込み幅が過大である場合には、内部抵抗値が大きくなり、また、シート状リー部材31,33の機械的強度が小さくなることに起因して破断が発生するおそれがある。
【0047】
このような構成の切込み開口37を貫通開口部として有するシート状リード部材31,32は、例えば金属箔に、微細な刃を用いたカッティング、エッチングまたはパンチングによって所望の寸法の切込みを形成することによって得ることができる。
また、特にシート状リード部材31,32が電極集電体と共通の基材よりなるものである場合には、例えば共通の基材とされる金属箔に、カッティング、エッチングまたはパンチングによって、電極層が形成されて電極集電体として機能する集電体機能領域には貫通孔22a,25aを形成すると共にシート状リード部材として機能するリード部材機能成領域には切込みを形成し、このように、金属箔に対して貫通孔22a,25aと切込み開口37とを同一工程において形成することによって電極集電体とシート状リード部材との複合体を得ることができる。
【0048】
シート状リード部材31,32の貫通開口部を矩形状開口38によって形成する場合には、シート状リード部材31,32における振動吸収能および機械的強度の観点から、矩形における長辺の長さが100μm以上であることが好ましく、更に好ましくは100〜1000μmであり、また、矩形における長辺の長さをa、短辺の長さをbとするとき、アスペクト比(a:b)が50:1〜5000:1の範囲内にあることが好ましい。
【0049】
このような構成の矩形状開口38を貫通開口部として有するシート状リード部31,32は、例えば金属箔に、微細な刃を用いたカッティング、エッチングまたはパンチングによって所望の寸法の矩形状の開口を形成することによって得ることができる。
また、特にシート状リード部材31,33が電極集電体と共通の基材よりなるものである場合には、例えば共通の基材とされる金属箔に、カッティング、エッチングまたはパンチングによって、電極層が形成されて電極集電体として機能する集電体機能領域には貫通孔22a,25aを形成すると共にシート状リード部材として機能するリード部材機能領域には矩形状の開口を形成し、このように、金属箔に対して貫通孔22a,25aと矩形状開口38とを同一工程において形成することによって電極集電体とシート状リード部材との複合体を得ることができる。
【0050】
シート状リード部材31,32の貫通開口部を菱形状開口39によって形成する場合には、シート状リード部材31,32における振動吸収能および機械的強度の観点から、菱形における長い方の対角線の長さが50μmより大きいことが好ましく、更に好ましくは50〜1000μmであり、また、菱形における長い方の対角線の長さをLW、短い方の対角線の長さをSWとするとき、下記の条件(1)〜条件(3)を満たすことが好ましい。
【0051】
条件(1):50<LW<1000
条件(2):1<SW<500
条件(3):LW>SW
【0052】
このような構成の菱形状開口39を貫通開口部として有するシート状リード部材31,32は、例えば金属箔に、微細な刃を用いたカッティング、エッチングまたはパンチングによって適宜の寸法の切込みまたは矩形状の開口を形成し、この切込みまたは矩形状の開口が形成された金属箔を延伸することによって当該切込みまたは矩形状の開口を菱形状に変形させ、これにより、所望の寸法の菱形状の開口を形成することによって得ることができる。
また、特にシート状リード部材31,32が電極集電体と共通の基材よりなるものである場合には、例えば共通の基材とされる金属箔に、カッティング、エッチングまたはパンチングによって、電極層が形成されて電極集電体として機能する集電体機能領域には貫通孔22a,25aを形成すると共にシート状リード部材として機能するリード部材機能領域には切込みまたは矩形状の開口を形成して延伸することによって当該切込みまたは矩形状の開口を変形させることによって菱形状の開口を形成し、このように、金属箔に対して貫通孔22a,25aと菱形状開口39を同一工程において形成することによって電極集電体とシート状リード部材との複合体を得ることができる。
【0053】
正極用リード部材31の材質としては、前述の正極集電体22の材質として例示したものが挙げられる。
また、負極用リード部材32の材質としては、前述の負極集電体25の材質として例示したものが挙げられる。
【0054】
また、シート状リード部材31,33の厚みは、1〜500μmであることが好ましく、また、シート状リード部材31,33の幅は、1〜180μmであることが好ましい。
【0055】
(正極電極端子および負極電極端子)
正極電極端子18の材質としては、例えばアルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。
また、負極電極端子19の材質としては、例えば銅、ニッケル、スンテレスなどが挙げられる。
【0056】
(外装容器)
外装容器11は、それぞれ矩形のラミネートフィルムよりなる一方の外装フィルム12および他方の外装フィルム13が、互いに重ね合わせた状態で、それぞれの外周縁部の全周にわたって形成された接合部14において相互に気密に接合されて構成されており、その外装容器11の内部には、電極ユニット20を収容すると共に電解液を充填するための収容空間が形成されている。
図示の例では、一方の外装フィルム12における中央部分に絞り加工が施されており、これにより、外装容器11の内部に収容空間が形成されている。
【0057】
外装フィルム12,13を構成するラミネートフィルムとしては、例えば内側からポリプロピレン(以下、「PP」ともいう。)層、アルミニウム層およびナイロン層などがこの順で積層されてなる三層構造を有するものを用いることができる。
外装フィルム12,13の縦横の寸法は、収容される電極ユニット20の寸法に応じて適宜選択されるが、例えば縦方向の寸法が40〜200mm、横方向の寸法が60〜300mmである。
また、外装フィルム12,13の接合部14の接合幅は、例えば2〜15mmである。
【0058】
(電解液)
電解液としては、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を用いることが好ましい。
電解質を構成するリチウム塩としては、リチウムイオンを移送可能で、高電圧下においても電気分解を起こさず、リチウムイオンが安定に存在し得るものであればよく、その具体例としては、LiClO4 、LiAsF6 、LiBF4 、LiPF6 、Li(C2 5 SO2 2 Nなどが挙げられる。
非プロトン性有機溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホランなどが挙げられる。これらの非プロトン性有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
このようなリチウムイオンキャパシタ10は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、他方の外装フィルム13上における中央部分に、リチウム極集電体上に積層されたリチウムイオン供給源を設けた電極ユニットを配置し、当該電極ユニットにおける正極集電体22および負極集電体25をシート状リード部31,33を介して正極電極端子18および負極電極端子19に電気的に接続する。そして、リチウムイオン供給源が設けられ、正極電極端子18および負極電極端子19が電気的に接続された電極ユニット上に一方の外装フィルム12を重ね合わせ、この状態で、一方の外装フィルム12および他方の外装フィルム13の外周縁部における3辺を熱融着した後、外装フィルム12,13の間に電解液を注入し、更に、外装フィルム12,13の外周縁部における未融着の1辺を熱融着することによって外装容器11が形成され、以って、リチウムイオンキャパシタ100が得られる。
そして、このようにして得られたリチウムイオンキャパシタ10においては、適宜の期間放置されることにより、負極電極シート24および/または正極電極シート21とリチウムイオン供給源28との電気化学的接触によって、リチウムイオン供給源28から放出されたリチウムイオンが負極電極シート24および/または正極電極シート21にドーピングされる。
【0060】
このような構成の本発明に係るリチウムイオンキャパシタ10においては、正極電極シート21および負極電極シート24を構成する電極集電体と、正極電極端子18および負極電極端子19とが、特定の構造を有することによって長さ方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有するシート状リード部材31,32によって電気的に接続されていることから、例えば8時間もの長時間にわたって振動が加えられた場合においても、振動によってシート状リード部材31,32に加えられる応力が当該シート状リード部材31,32の振動吸収能の作用によって吸収されるため、シート状リード部材31,32に金属疲労が生じることに起因して亀裂が生じて内部抵抗が上昇することを抑制することができ、またシート状リード部材31,32における断裂の発生を抑制することができる。
また、本発明に係るリチウムイオンキャパシタ10においては、正極電極シート21および負極電極シート24を構成する電極集電体には特定の平均孔径を有する微細な貫通孔22a,25aよりなる複数の貫通開口部が形成されていることから、電極集電体の薄厚化あるいは正極電極シート21および負極電極シート24を構成する正極電極層23および負極電極層26の厚みの均一性を図り、また正極電極層23および負極電極層26におけるイオン濃度に偏りが生じることを抑制することができるため、高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られる。
このように、本発明に係るリチウムイオンキャパシタ10は、高エネルギー密度、高出力および低抵抗が得られると共に、長時間にわたって振動が加えられた場合において、内部抵抗の上昇およびシート状リード部材31,32の断裂の発生を抑制することができるものであるため、自動車やブイ(浮標)などの長時間にわたって振動する移動体にも好適に用いることができる。
【0061】
以上、本発明をリチウムイオンキャパシタとして実施した場合の一例について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、発明の蓄電デバイスは、リチウムイオンキャパシタに限定されず、電気二重層キャパシタおよびリチウムイオン二次電池にも好適に適用することができる。
また、電極ユニットとしては、得られる効果の観点から積層型のものであることが有効ではあるが、積層型以外の種々の構造のものを用いることもできる。
【0062】
また、本発明のシート状リード部材は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタおよびリチウムイオン二次電池に限定されず、種々の蓄電デバイスに適用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記の実施例および比較例の各々において、作製されたリチウムイオンキャパシタのシート状リード部の緩衝機能は、当該リチウムイオンキャパシタにおいてシート状リード部を構成することとなる負極電極シート複合体および正極電極シート複合体における未塗工部について、下記の引張り試験を行うことによって測定した。
【0064】
〔引張り試験〕
JIS Z2241に準拠して、インストロン社製の5960デュアルコラム卓上型万能試験システムを用い、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体における未塗工部を、当該未塗工部の伸びる方向(負極電極シート複合体および正極電極シート複合体の長手方向であって図3〜図5を参照すれば右方向)に5mm毎秒の条件によって破断するまで引っ張り、その破断が生じるまでに引張り方向において延伸した長さを測定し、原長(引張り試験に供する前の試験片の長さ)に対する割合(延伸率)の最大値を算出した。
【0065】
〈実施例1〉
図1〜図5の構成に基づいて、以下のようにしてリチウムイオンキャパシタを製造した。
【0066】
(1)負極電極シート複合体の作製:
幅145mm、厚み20μmの帯状の銅箔に、パンチングにより、幅方向の一方の端縁からの離間距離が130mmまでの領域には、平均孔径50μmの微細な円形状の貫通孔(円形状開口)を開口率30%で形成すると共に、幅方向の他方の端縁からの離間距離が15mmまでの領域には、幅方向に垂直な方向(幅方向の端縁と平行な方向)に伸びる、長さ500μmの複数の切込みを、互いに隣接する切込みにおける幅方向の離間距離が200μmであって幅方向に垂直な方向の離間距離が300μmとなるような千鳥状に配列されるように形成することにより、幅方向の一方の端縁に係る100mm×130mmの範囲に第1貫通開口部形成部分を有し、幅方向の他方の端縁に係る100mm×15mmの範囲に第2貫通開口部形成部分を有する銅製多孔箔を作製した。
この銅製多孔箔の第1貫通開口部形成部分に、スラリーよりなる負極塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅130mmの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を80μmに設定して両面塗工した後、減圧乾燥させることにより、銅製多孔箔の表裏面に負極電極層を形成した。
このようにして得られた、銅製多孔箔の第1貫通開口部形成部分に負極電極層が形成されてなる材料を、負極電極層が形成されてなる部分(以下、負極電極シート複合体について「塗工部」という。)が100mm×128mm、負極電極層が形成されてない部分(以下、負極電極シート複合体について「未塗工部」という。)が100mm×15mmになるように、100mm×143mmの大きさに切断することにより、塗工部よりなる負極電極シートの一端に未塗工部よりなるリード部材が連続して一体に形成されてなる構成の負極電極シート複合体を作製した。
この負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で13%延伸する構成を有していることが確認された。
【0067】
(2)正極電極シート複合体の作製:
幅145mm、厚み30μmの帯状のアルミニウム箔に、パンチングにより、幅方向の一方の端縁からの離間距離が130mmまでの領域には、平均孔径50μmの微細な円形状の貫通孔(円形状開口)を開口率30%で形成すると共に、幅方向の他方の端縁からの離間距離が15mmの領域までの領域には、幅方向に垂直な方向(幅方向の端縁と平行な方向)に伸びる、長さ500μmの複数の切込みを、互いに隣接する切込みにおける幅方向の離間距離が200μmであって幅方向に垂直な方向の離間距離が300μmとなるような千鳥状に配列されるように形成することにより、幅方向の一方の端縁に係る100mm×130mmの範囲に第1貫通開口部形成部分を有し、幅方向の他方の端縁に係る100mm×15mmの範囲に第2貫通開口部形成部分を有するアルミニウム製多孔箔を作製した。
このアルミニウム製多孔箔の第1貫通開口部形成部分に、導電塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅130mmの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を20μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、アルミニウム製多孔箔の表裏面に導電層を形成した。
次いで、アルミニウム製多孔箔の表裏面に形成された導電層上に、スラリーよりなる正極塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、両面合わせた塗布厚みの目標値を150μmに設定して両面塗工した後、減圧乾燥させることにより、導電層上に正極電極層を形成した。
このようにして得られた、アルミニウム製多孔箔の第1貫通開口部形成部分に導電層および正極電極層が形成されてなる材料を、導電層および正極電極層が形成されてなる部分(以下、正極電極シート複合体について「塗工部」という。)が98mm×126mm、導電層および正極電極層が形成されてない部分(以下、正極電極シート複合体について「未塗工部」という。)が98mm×15mmになるように、98mm×141mmの大きさに切断することにより、塗工部よりなる正極電極シートの一端に未塗工部よりなるリード部材が連続して一体に形成されてなる構成の正極電極シート複合体を作製した。
この正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で13%延伸する構成を有していることが確認された。
【0068】
(3)セパレータの作製:
縦横の寸法が102cm×130cm、厚みが35μmのセルロース/レーヨン混合不織布よりなるセパレータを、合計で66枚作製した。
【0069】
(4)電極ユニットの作製:
先ず、正極電極シート複合体10枚、負極電極シート複合体11枚、セパレータ22枚を用意し、正極電極複合シートと負極電極シート複合体とを、それぞれの塗工部は重なるが、それぞれの未塗工部は反対側になり重ならないよう、セパレータ、負極電極シート複合体、セパレータ、正極電極シート複合体の順で積重し、積重体の4辺をテープにより固定することにより、電極ユニットを作製した。
次いで、厚み100μmのリチウム箔を切断し、厚さ40μmの銅網に圧着することにより、リチウム極集電体上にリチウムイオン供給源が圧着されてなる構成のリチウムイオン供給部材を作製し、このリチウムイオン供給部材を電極ユニット上に負極電極層と対向するよう配置した。
そして、作製した電極ユニットの10枚の正極電極シート複合体の各々の未塗工部の先端部分を束ね、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した、幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製の正極電極端子を重ねて超音波溶接した。一方、電極ユニットの11枚の負極電極シート複合体の各々の未塗工部の先端部分およびリチウムイオン供給部材の先端部分を束ね、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmの銅製の負極電極端子を重ねて抵抗溶接した。
以上のようにして、リチウムイオン供給部材が配置され、正極電極端子および負極電極端子がシート状リード部材を介して正極集電体および負極集電体に電気的に接続された電極ユニットを作製した。
【0070】
(5)リチウムイオンキャパシタの作製:
先ず、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)で、中央部分に、102mm(縦幅)×130mm(横幅)の絞り加工が施された一方の外装フィルム(接合部となる外周縁部の幅が10mm)と、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)の他方の外装フィルムとを作製した。
次いで、他方の外装フィルム上における中央位置に、リチウムイオン供給部材が設けられ、正極電極端子および負極電極端子が接続された電極ユニットを、その正極電極端子および負極電極端子の各々の他端が他方の外装フィルムの端部から外方に突出すると共に、当該正極電極端子および負極電極端子の一端に接続されているシート状リード部材の各々が他方の外装フィルムの端部の内方側に位置するよう配置し、この電極ユニットに一方の外装フィルムを重ね合わせ、他方の外装フィルムおよび一方の外装フィルムの外周縁部における3辺(正極電極端子および負極電極端子が突出する2辺を含む)を熱融着し、幅10mmの接合部を形成した。
次いで、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの間に、電解液を注入した後、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における残りの一辺を熱融着し、幅10mmの接合部を形成した。
以上のようにして、リチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタ(1)」ともいう。)を合計3個作製した。
【0071】
〔交流内部抵抗測定〕
先ず、作製した3個のリチウムイオンキャパシタ(1)の各々について、日置電機社製「ACミリオームハイテスタ3560」を用い、温度25±5℃の環境条件下における1KHzの交流内部抵抗(初期値)を測定した。3個のリチウムイオンキャパシタ(1)の測定値の平均値を表1に示す。
次いで、3個のリチウムイオンキャパシタ(1)の各々をアルミニウム製の冶具に貼り付けることによって固定し、その長軸方向、短軸方向、上下方向の各軸に対して、加速度7gn、周波数10〜200Hzの対数掃引の振動を、上下方向4時間、短軸方向2時間および長軸方向2時間作用させた後、日置電機社製「ACミリオームハイテスタ3560」を用い、25℃±5℃の環境下における1KHzの交流内部抵抗値(振動後値)を測定した。3個のリチウムイオンキャパシタ(1)の測定値の平均値を表1に示す。
【0072】
〔断裂の発生有無の確認〕
前記交流内部抵抗測定で使用した振動を施したリチウムイオンキャパシタの外装容器(外装フィルム)をナイフを用いて開封し、正極電極端子および負極電極端子を溶接した付近のシート状リード部材(正極電極シート複合体および負極電極シート複合体における塗工部)を目視で確認し、当該リチウムイオンキャパシタを構成するいずれかのシート状リード部材に金属疲労による亀裂、破断が起きていた場合を「あり」、いずれのシート状リード部材にも亀裂、破断が全く見られなかった場合を「なし」とした。
【0073】
〈実施例2〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、銅製多孔箔およびアルミニウム製多孔箔の第1貫通孔形成部分における微細な円形状の貫通孔(円形状開口)の平均孔径を100μmとしたこと以外は当該実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタ(2)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られたリチウムイオンキャパシタ(2)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、リチウムイオンキャパシタ(2)の作製に用いた負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で13%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で13%延伸する構成を有していることが確認された。
【0074】
〈実施例3〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、銅製多孔箔およびアルミニウム製多孔箔の第1貫通孔形成部分における微細な円形状の貫通孔(円形状開口)の平均孔径を30μmとしたこと以外は当該実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタ(3)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られたリチウムイオンキャパシタ(3)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、リチウムイオンキャパシタ(3)の作製に用いた負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で13%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で13%延伸する構成を有していることが確認された。
【0075】
〈実施例4〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、銅製多孔箔およびアルミニウム製多孔箔の第2貫通孔形成部分における切込みの長さを300μmとしたこと以外は当該実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタ(4)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られたリチウムイオンキャパシタ(4)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、リチウムイオンキャパシタ(4)の作製に用いた負極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で10%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で10%延伸する構成を有していることが確認された。
【0076】
〈実施例5〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、銅製多孔箔およびアルミニウム製多孔箔の第2貫通孔形成部分における複数の切込みの幅方向に垂直な方向の離間距離が300μmとしたこと以外は当該実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタ(5)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られたリチウムイオンキャパシタ(5)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、リチウムイオンキャパシタ(5)の作製に用いた負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で12%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で12%延伸する構成を有していることが確認された。
【0077】
〈実施例6〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、未塗工部とされる、銅製多孔箔およびアルミニウム製多孔箔における幅方向の他方の端縁からの離間距離が15mmまでの領域に、幅方向に垂直な方向に伸びる複数の切込みを千鳥状に配列するように形成して延伸することによって、当該複数の切込みの各々を長軸の長さ(長い方の対角線の長さ)が500μm、短軸の長さ(短い方の対角線の長さ)が200μmである菱形状開口とし、互いに隣接する菱形状開口における長軸方向の離間距離が300μmであって短軸方向の離間距離が200μmとなるような千鳥状に配置されてなる構成とすることにより第2の貫通開口部形成部分を形成したこと以外は当該実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタ(6)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られたリチウムイオンキャパシタ(6)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、リチウムイオンキャパシタ(6)の作製に用いた負極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で15%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で15%延伸する構成を有していることが確認された。
【0078】
〈実施例7〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、未塗工部とされる、銅製多孔箔およびアルミニウム製多孔箔における幅方向の他方の端縁からの離間距離が15mmまでの領域に、幅方向に垂直な方向に伸びる複数の切込みを千鳥状に配列するように形成して延伸することによって、当該複数の切込みの各々を長軸(長い方の対角線の長さ)の長さが300μm、短軸の長さ(短い方の対角線の長さ)が100μmである菱形状開口とし、互いに隣接する菱形状開口における長軸方向の離間距離が200μmであって短軸方向の離間距離が100μmとなるような千鳥状に配置されてなる構成とすることにより第2の貫通開口部形成部分を形成したこと以外は当該実施例1と同様にしてリチウムイオンキャパシタ(以下、「リチウムイオンキャパシタ(7)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られたリチウムイオンキャパシタ(7)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、リチウムイオンキャパシタ(7)の作製に用いた負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で12%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で12%延伸する構成を有していることが確認された。
【0079】
〈比較例1〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、未塗工部とされる、銅製多孔箔およびアルミニウム製多孔箔における幅方向の他方の端縁からの離間距離が15mmまでの領域に切込みを形成しなかったこと以外は当該実施例1と同様にして比較用のリチウムイオンキャパシタ(以下、「比較用リチウムイオンキャパシタ(1)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られた比較用リチウムイオンキャパシタ(1)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、比較用リチウムイオンキャパシタ(1)の作製に用いた負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で1.7%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で2.3%延伸する構成を有していることが確認された。
【0080】
〈比較例2〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、銅箔およびアルミニウム箔の全域に、平均孔径50μmの微細な円形状の貫通孔(円形状開口)を開口率30%で形成したこと以外は当該実施例1と同様にして比較用のリチウムイオンキャパシタ(以下、「比較用リチウムイオンキャパシタ(2)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られた比較用リチウムイオンキャパシタ(2)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、比較用リチウムイオンキャパシタ(2)の作製に用いた負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で1.4%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で1.6%延伸する構成を有していることが確認された。
【0081】
〈比較例3〉
実施例1において、負極電極シート複合体および正極電極シート複合体を作製する際に、各々、銅箔およびアルミニウム箔の全域に、平均孔径100μmの微細な円形状の貫通孔(円形状開口)を開口率30%で形成したこと以外は当該実施例1と同様にして比較用のリチウムイオンキャパシタ(以下、「比較用リチウムイオンキャパシタ(3)」ともいう。)を合計で3個作製し、得られた比較用リチウムイオンキャパシタ(3)について、実施例1と同様の手法によって評価試験を行った。
ここに、比較用リチウムイオンキャパシタ(3)の作製に用いた負極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で1.6%延伸する構成を有していることが確認された。また、正極電極シート複合体における未塗工部は、引張り試験により、当該未塗工部の長さが最大で2.3%延伸する構成を有していることが確認された。
【0082】
【表1】

【0083】
表1において、「シート状リード部材」における「寸法」に記載の値は、実施例1〜実施例5においては切込み開口の切込幅(長さ)を示し、実施例6および実施例6においては菱形状開口のLW(菱形の長い方の対角線の長さ)×SW(菱形の短い方の対角線の長さ)を示し、比較例2および比較例3においては円形状の貫通孔(円形状開口)の平均孔径を示す。また、「シート状リード部材」における「延伸率」とは、引張り試験に係る最大の延伸率である。
【0084】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜実施例7に係るリチウムイオンキャパシタは、リチウムイオンキャパシタ全体に振動が生じても内部抵抗の上昇を抑制でき、また、振動による圧力を吸収することができるため断裂が生じないことが確認された。
一方、比較例1に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、電極集電体と電極端子とを電気的に接続しているシート状リード部材が、金属箔よりなり、外力が加えられた場合において、その長さが5%以上延伸しない構成のもの、すなわち外力に対する緩衝機能を有さないものであることから、リチウムイオンキャパシタ全体に振動が生じることによってシート状リード部材の一部に断裂が生じ、それに起因して内部抵抗値が大きく上昇した。
また、比較例2に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、電極集電体と電極端子とを電気的に接続しているシート状リード部材が、平均孔径50μmの円形状開口が形成された金属箔よりなり、外力が加えられた場合において、その長さが5%以上延伸しない構成のもの、すなわち外力に対する緩衝機能を有さないものであることから、リチウムイオンキャパシタ全体に振動が生じることによってシート状リード部材の一部に断裂が生じ、それに起因して内部抵抗値が大きく上昇した。
また、比較例3に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、電極集電体と電極端子とを電気的に接続しているシート状リード部材が、平均孔径100μmの円形状開口が形成された金属箔よりなり、外力が加えられた場合において、その長さが5%以上延伸しない構成のもの、すなわち外力に対する緩衝機能を有さないものであることから、リチウムイオンキャパシタ全体に振動が生じることによってシート状リード部材の一部に断裂が生じ、それに起因して内部抵抗値が大きく上昇した。
【符号の説明】
【0085】
10 リチウムイオンキャパシタ
11 外装容器
12,13 外装フィルム
14 接合部
18 正極電極端子
19 負極電極端子
21 正極電極シート
22 正極集電体
22a 貫通孔
23 正極電極層
24 負極電極シート
25 負極集電体
25a 貫通孔
26 負極電極層
27 セパレータ
28 リチウムイオン供給源
29 リチウム極集電体
31,32 シート状リード部材
31a,32a 端子接合用端部
37 切込み開口
38 矩形状開口
39 菱形状開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ平均孔径が300μm以下の貫通孔よりなる複数の貫通開口部が形成された集電体上に電極層が形成されてなる構成の正極電極シートおよび負極電極シートがセパレータを介して積重されてなる電極ユニットと、電解液とが外装容器内に収容されており、当該正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体が、一端が外装容器内に位置し、他端が当該外装容器の外部に突出するよう設けられている正極電極端子および負極電極端子と金属製のシート状リード部材を介して電気的に接続されてなる蓄電デバイスであって、
前記シート状リード部材が当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記シート状リード部材は、切り込み開口、矩形状開口または菱形状開口よりなる貫通開口部が形成されることによって当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能とされており、当該貫通開口部が、前記集電体に形成されている貫通開口部と異なる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記シート状リード部材が複数の貫通開口部を有しており、当該複数の貫通開口部の少なくとも一部が、その長軸が当該シート状リード部材の長さ方向に垂直となるように配置されていることを特徴する請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記シート状リード部材における複数の貫通開口部が千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
移動体に搭載されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
それぞれ集電体上に電極層が形成されてなる構成の正極電極シートおよび負極電極シートがセパレータを介して積重されてなる電極ユニットと、電解液とが外装容器内に収容されており、それぞれ一端が外装容器内に位置し、他端が当該外装容器の外部に突出するよう設けられている正極電極端子および負極電極端子を備えてなる蓄電デバイスにおいて、正極電極シートおよび負極電極シートを構成する集電体と正極電極端子および負極電極端子とを電気的に接続するための金属製のシート状リード部材であって、
少なくとも一方向に変形可能であって外力に対する緩衝機能を有することを特徴するシート状リード部材。
【請求項8】
切り込み開口、矩形状開口または菱形状開口よりなる貫通開口部を複数有することによって当該シート状リード部材の長さ方向に変形可能とされており、当該複数の貫通開口部の少なくとも一部が、その長軸が当該リード部の長さ方向に垂直となるように配置されていることを特徴する請求項7に記載のシート状リード部材。
【請求項9】
前記複数の貫通開口部が千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項8に記載のシート状リード部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−93498(P2013−93498A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235776(P2011−235776)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】