説明

蓄電デバイス

【課題】正極、負極及びセパレータからなる電極群を短時間で効率よく製造でき、しかも高出力化の達成に好適な構造を有する蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】リチウムイオンキャパシタの電極群11は、帯状の負極31、帯状のセパレータ41及び曲がりのない平板状かつ複数枚の正極21を使用して形成される。電極群11は、帯状の負極31及び帯状のセパレータ41を重ね合わせて蛇腹状に折り畳むとともに、折り畳んだ状態の負極31の平旦部間にセパレータ41を介して平板状の正極21を挟み込んだ構造を有している。電極群11において、正極21の電極面積を負極31の電極面積より小さくし、平面視で正極21の外周が負極31の外周の内側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極、負極及びセパレータからなる電極群を備えた蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電等の負荷平準化装置、コンピュータ等に代表される電子機器の瞬時電圧低下対策装置、電気自動車やハイブリッドカーのエネルギー回生装置などのような蓄電システムにおいては、エネルギー容量が大きくてかつ急速充放電が可能な蓄電デバイスが必要とされている。従来の鉛蓄電池やその他の二次電池では、大電流の充放電に弱くサイクル寿命が短いため、その蓄電システムに対応することは困難であった。そこで、それらの問題を解決しうる新たな蓄電デバイスとして、近年、非水系の蓄電デバイスが注目されている。
【0003】
現在、急速充放電や長寿命化が可能な蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが提案されている(特許文献1等参照)。このリチウムイオンキャパシタとしては、電極をロール状に巻いて構成する捲回タイプと板状の電極を積層して構成する積層タイプとが知られているが、急速充放電に優れた蓄電モジュールを構成するためには、積層タイプのキャパシタが用いられる。
【0004】
積層タイプのリチウムイオンキャパシタでは、図14及び図15に示されるように、平板状の正極61、負極62及びセパレータ63を使用し、それら正極61と負極62とをセパレータ63を介して交互に積層することで電極群65を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−12702号公報
【特許文献2】特開2010−161249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記積層タイプのリチウムイオンキャパシタでは、各極61,62及びセパレータ63を1枚ずつ積み重ねて電極群65を形成する必要があるため、その形成工程が複雑となり時間がかかる。具体的には、積層タイプの電極群65を形成する場合、捲回タイプと比較して3倍以上の時間がかかってしまう。
【0007】
一方、捲回タイプのリチウムイオンキャパシタは、生産性が高いが、円筒状の電極群の端部に外部端子を接続して集電を図る構造であるため、電気抵抗が高くなり高出力には不向きである。さらに、電極群が円筒形状となると、外部端子を接続し難いといった問題も生じていた。
【0008】
そこで、本発明者らは、帯状の正極、帯状のセパレータ及び平板状の複数枚の負極を使用して電極群を構成したリチウムイオンキャパシタを提案している(特許文献2参照)。特許文献2のリチウムイオンキャパシタでは、帯状の正極及び帯状のセパレータを重ね合わせて扁平ロール状に捲回しまたは蛇腹状に折り畳むとともに、捲回しまたは折り畳んだ状態の正極の平旦部間にセパレータを介して負極を挟み込んで電極群を作製している。このようにすると、電極群の形成工程が簡素化される。
【0009】
ところが、リチウムイオンキャパシタの容量は、正極の容量に依存する。このため、正極を扁平ロール状に捲回したり蛇腹状に折り畳んだりして電極群を構成すると、正極の容量がバラツキ、製品規格内の容量を有するキャパシタを形成することが困難となる。また、正極の電極面積よりも負極の電極面積が小さくなるため、負極の端部に電流集中が起きやすく、リチウム金属が析出しやすくなってしまう。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正極、負極及びセパレータからなる電極群を短時間で効率よく製造でき、しかも高出力化の達成に好適な構造を有する蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段[1]〜[4]を以下に列挙する。
【0012】
[1]収容体と、正極電極を正極集電体上に形成した構造の正極と、負極電極を負極集電体上に形成した構造の負極と、前記正極及び前記負極の間に介在されたセパレータとを備え、前記正極、前記負極及び前記セパレータからなる電極群が金属イオンを含んだ電解液とともに前記収容体内に収容され、前記正極集電体に接続された正極用外部端子及び前記負極集電体に接続された負極用外部端子がともに前記収容体から引き出されている蓄電デバイスにおいて、前記電極群が、帯状の負極、帯状のセパレータ及び曲がりのない平板状かつ複数枚の正極を使用し、前記帯状の負極及び前記帯状のセパレータを重ね合わせて蛇腹状に折り畳むとともに、折り畳んだ状態の前記負極の平旦部間に前記セパレータを介して前記正極を挟み込み、かつ前記正極の電極面積を前記負極の電極面積より小さくし、平面視で前記正極の外周が前記負極の外周の内側にある構造を有することを特徴とする蓄電デバイス。
【0013】
手段1に記載の発明によると、帯状の負極及び帯状のセパレータを重ね合わせて蛇腹状に折り畳むことで電極群が形成されているので、負極及びセパレータを一枚一枚重ね合わせて電極群を形成する場合と比較してその形成工程を簡素化することができる。本発明の電極群では、曲がりのない平板状に形成された複数枚の正極が挟み込まれているので、帯状の正極を折り曲げて電極群を構成する場合と比較して、正極の容量バラツキを抑えることができ、製品規格内の容量を有する蓄電デバイスを確実に形成することができる。また、負極の電極面積が正極の電極面積よりも大きく負極の外周が正極の外周より外側にあるために、負極での電流集中が起こりにくくなり、高出力化を阻害する一原因であるリチウム金属の析出を避けることができる。さらに、電極群を構成する負極の平旦部及び平板状の正極に対して外部端子を容易に接続することができる。また、電極群は正極と負極とがセパレータを介して交互に積層された構造となるため、急速充放電に優れた蓄電デバイスを実現することができる。さらに、従来の円筒ロール形状とは異なり電極群を蛇腹状にしたことで、電極群の厚さ方向への加圧が可能な構造となり、このことも高出力化に寄与している。
【0014】
[2]収容体と、正極電極を正極集電体上に形成した構造の正極と、負極電極を負極集電体上に形成した構造の負極と、前記正極及び前記負極の間に介在されたセパレータとを備え、前記正極、前記負極及び前記セパレータからなる電極群が金属イオンを含んだ電解液とともに前記収容体内に収容され、前記正極集電体に接続された正極用外部端子及び前記負極集電体に接続された負極用外部端子がともに前記収容体から引き出されている蓄電デバイスにおいて、前記電極群が、帯状の負極、帯状のセパレータ及び曲がりのない平板状かつ複数枚の正極を使用し、前記帯状の負極及び前記帯状のセパレータを重ね合わせて扁平ロール状に捲回するとともに、捲回した状態の前記負極の平旦部間に前記セパレータを介して前記正極を挟み込み、かつ前記正極の電極面積を前記負極の電極面積より小さくし、平面視で前記正極の外周が前記負極の外周の内側にある構造を有することを特徴とする蓄電デバイス。
【0015】
手段2に記載の発明によると、帯状の負極及び帯状のセパレータを重ね合わせて扁平ロール状に捲回して電極群が形成されているので、負極及びセパレータを一枚一枚重ね合わせて電極群を形成する場合と比較してその形成工程を簡素化することができる。本発明の電極群では、曲がりのない平板状に形成された複数枚の正極が挟み込まれているので、帯状の正極を折り曲げて電極群を構成する場合と比較して、正極の容量のバラツキを抑えることができ、製品規格内の容量を有する蓄電デバイスを確実に形成することができる。また、負極の電極面積が正極の電極面積よりも大きく負極の外周が正極の外周より外側にあるために、負極での電流集中が起こりにくくなり、高出力化を阻害する一原因であるリチウム金属の析出を避けることができる。さらに、電極群を構成する負極の平旦部及び平板状の正極に対して外部電極を容易に接続することができる。また、電極群は正極と負極とがセパレータを介して交互に積層された構造となるため、急速充放電に優れた蓄電デバイスを実現することができる。さらに、従来の円筒ロール形状とは異なり電極群を扁平ロール状にしたことで、電極群の厚さ方向への加圧が可能な構造となり、このことも高出力化に寄与している。
【0016】
[3]手段1または2において、前記正極の厚みは、前記負極の厚みの2倍以上であることを特徴とする蓄電デバイス。
【0017】
手段3に記載の発明によると、正極よりも薄く形成された負極を扁平ロール状に捲回しまたは蛇腹状に折り畳むようにしているので、電極群を容易に形成することができる。
【0018】
[4]前記電解液はリチウム塩を含み、前記正極電極は炭素材料からなり、前記負極電極はリチウムの吸蔵及び放出が可能な材料からなり、前記負極にあらかじめリチウムイオンがドープされることを特徴とする蓄電デバイス。
【0019】
手段4に記載の発明によると、正極と負極とに炭素材料を使用したリチウムイオンキャパシタを実現することができる。このリチウムイオンキャパシタでは、負極にリチウムイオンを担持させるが、負極が帯状に繋がっているので、負極の電位が均一になりやすく、さらにリチウムイオンのドープも短時間で行うことができる。特に、手段1のように電極群を蛇腹状に形成する場合、側面の電極が少なくなるため、リチウムイオンのドープ量を低減させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、手段1乃至4に記載の発明によると、正極、負極及びセパレータからなる電極群を短時間で効率よく製造でき、しかも高出力化の達成に好適な構造を有する蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態のリチウムイオンキャパシタを示す側面図。
【図2】第1の実施の形態のリチウムイオンキャパシタを示す平面図。
【図3】第1の実施の形態の電極群を示す断面図。
【図4】図3の電極群におけるA−A線での断面図。
【図5】正極、負極及びセパレータを示す平面図。
【図6】正極、負極及びセパレータを示す斜視図。
【図7】(a)〜(c)は第1の実施の形態の電極群の製造方法を示す説明図。
【図8】第2の実施の形態の電極群を示す断面図。
【図9】(a)〜(c)は第2の実施の形態の電極群の製造方法を示す説明図。
【図10】別の実施の形態のリチウムイオンキャパシタを示す平面図。
【図11】別の実施の形態の負極を示す平面図。
【図12】別の実施の形態の電極群を示す平面図。
【図13】別の実施の形態の電極群を示す断面図。
【図14】従来の正極、負極及びセパレータを示す平面図。
【図15】従来の電極群を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明を蓄電デバイスとしてのリチウムプレドープ型リチウムイオンキャパシタに具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態におけるリチウムイオンキャパシタ10を示す側面図であり、図2はそのリチウムイオンキャパシタ10の平面図である。また、図3は、上記リチウムイオンキャパシタ10を構成する電極群11を示す断面図であり、図4は、図3の電極群11におけるA−A線での断面図である。さらに、図5は、電極群11を構成する正極21、負極31及びセパレータ41を示す平面図である。
【0023】
図1〜図5に示されるように、本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10は、正極21と負極31とそれら正極21及び負極31の間に介在されるセパレータ41とからなる電極群11を備える。本実施の形態の電極群11は、帯状の負極31及び帯状のセパレータ41を重ね合わせて蛇腹状に折り畳むとともに、折り畳んだ状態の負極31の平旦部間にセパレータ41を介して平板状の正極21を挟み込んだ構造を有している。そして、その電極群11が電解質とともに容器51(収容体)内に密閉収容されている。
【0024】
正極21は、80μm程度の厚さであり、炭素材料からなる正極電極22を正極集電体23上に形成した構造を有している(図5参照)。本実施の形態では、正極集電体23は、タブ24を有する矩形平板状に形成されており、その正極集電体23上において、タブ24の部分を残した状態で平面状に正極電極22が塗工されている。
【0025】
正極電極22を形成する炭素材料の例としては、適度な粉砕処理が施された活性炭等が挙げられる。このような炭素材料は、必要に応じて導電剤及びバインダとともに混練され、成形される。
【0026】
上記導電剤としては各種黒鉛材料やカーボンブラックが挙げられるが、なかでも導電性カーボンブラック類を使用することが好ましい。その具体例としては、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等があるが、液体保持力に優れかつ電気抵抗が低いという点でアセチレンブラックを選択することが特に好ましい。
【0027】
上記バインダとしては、有機電解質に対して不溶のものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸ソーダ等の有機高分子化合物が好適である。
【0028】
上記正極集電体23は、正極電極22を支持しつつ集電を行うための部材であって、例えばアルミニウム、ステンレス等のような導電性金属箔あるいは導電性金属板の使用が好適である。ステンレスは、リチウムと合金化せず、かつ、電気化学的酸化が起こりにくいという点で、好適な材料であるといえる。
【0029】
蛇腹状に折り畳んだ電極群11において、正極集電体23におけるタブ24の部分(正極電極22が塗工されていない端部)がセパレータ41の折り畳み部分から突出している。この正極集電体23のタブ24に、導電性金属材料からなる正極用外部端子25が溶接により接合される。
【0030】
負極31は、30μm程度の厚さであり、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な材料からなる負極電極32を負極集電体33上に形成した構造を有している。本実施の形態では、帯状の負極集電体33上において、一方の端部を長手方向に沿ってライン状に残した状態で平面状に負極電極32が塗工されている。なお、リチウムイオンを供給する金属としては、リチウム金属単体のみを指すばかりでなく、リチウム−アルミニウム合金のように、少なくともリチウムを含有し、リチウムイオンを供給することができる物質全てを広く指している。
【0031】
負極電極32の形成材料の具体例としては、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金、黒鉛材料、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料、五酸化ニオブ(Nb)、チタン酸リチウム(LiTi12)、一酸化珪素(SiO)、一酸化錫(SnO)、錫とリチウムとの複合酸化物(LiSnO)、リチウム・リン・ホウ素の複合酸化物(例えばLiP0.40.62.9)、等がある。これらのなかでも、黒鉛材料、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料等の炭素材料は、可逆性が高い等の性質を有するため、負極材料として好適である。
【0032】
負極電極32を形成する炭素材料の例としては、適度な粉砕処理が施された各種の天然黒鉛、合成黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛材料、炭素化処理されたメソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、熱分解炭素、石油コークス、ピッチコークス及びニードルコークス等の炭素材料、またはこれらの混合物等がある。ここに列挙した負極電極32用の炭素材料は、必要に応じて導電剤及びバインダとともに混練され、成形される。なお、導電剤及びバインダとしては、正極電極22の説明の際に例示した材料をそのまま使用することができる。
【0033】
負極集電体33は負極電極32を支持しつつ集電を行うための部材であって、例えば銅、ニッケル、ステンレス等のような導電性金属箔あるいは導電性金属板の使用が好適である。また、負極集電体33として多孔質体を用いると、リチウムイオンのプレドープの効率を高めることが可能となる。
【0034】
この電極群11において、負極集電体33における一方の端部34(負極電極32が塗工されていない端部)がセパレータ41の折り畳み部分から突出している。この負極集電体33の一方の端部34に、導電性金属材料からなる負極用外部端子35が溶接により接合される。
【0035】
また、電極群11の所定部位(例えば、外部端子側の上下の各部位)には、リチウム貼付部(図示略)が設けられており、そのリチウム貼付部にはプレドープ用のリチウム金属箔(図示略)が貼付される。なお、このリチウム金属箔は、プレドープが完了すると溶解して消失する。
【0036】
本実施の形態の電極群11において、負極31の平旦部の電極面積よりも正極21の電極面積を小さくし、平面視で正極21の外周が負極31の外周の内側に配置されている。また、本実施の形態の電極群11では、正極21の端部から離間した位置で帯状のセパレータ41及び負極31を折り畳むようにしている。さらに、その蛇腹状に折り畳んだ負極31において、平坦部の端部に位置する屈曲部は、折り目のない湾曲状に屈曲した形状を有している。
【0037】
負極31及び正極21の間に介在されるセパレータ41は、有機電解質や電極活物質等に対して耐久性があり、連通気孔を有する非導電性の多孔体等からなる。通常、ガラス繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる布、不織布あるいは多孔体が用いられる。セパレータ41の厚さは、キャパシタの内部抵抗を小さくするために薄いほうが好ましいが、有機電解質の保持量、流通性、強度等を勘案して適宜設定することができる。
【0038】
かかるセパレータ41には通常液状の有機電解質が含浸されているが、漏液を防止するためにゲル状または固体状にした有機電解質を用いることもできる。ここで前記有機電解質は、ドーピングされうるリチウムイオンを生成しうる化合物を、非プロトン性有機溶媒に溶解させてなるものである。上記化合物としては有機リチウム塩を挙げることができ、その好適例としては、LiPFと表記されるリチウムヘキサフルオロフォスフェート、LiN(CFSOと表記されるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド、LiN(CSOと表記されるリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド等がある。また、上記非プロトン性有機溶媒の好適例としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ビニレンカーボネート(VC)、アセトニトリル(AN)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びこれらの誘導体、あるいはそれらの混合溶媒等がある。
【0039】
リチウムイオンキャパシタ10の容器51は、アルミ箔を樹脂フィルムにラミネートしてなるアルミニウム・ラミネートフィルムを用いて矩形袋状に加工したソフト容器である。その開口部は、熱融着によって封止されている。熱融着による封止は、融着部に正極用外部端子25及び負極用外部端子35を挟み込んだ状態で行われる。
【0040】
このようにして容器51内に電極群11を収容した場合、容器51における一方の端部(図1では左側の端部)から正極用外部端子25が引き出され、他方の端部(図1では右側の端部)から負極用外部端子35が引き出される。なお、アルミ箔以外の他の金属箔からなる金属ラミネートフィルムを用いて、容器51を形成してもよい。
【0041】
次に、上述したリチウムイオンキャパシタ10の製造方法について説明する。
【0042】
先ず、帯状の負極31、帯状のセパレータ41及び曲がりのない平板状かつ複数枚の正極21を準備する(図5参照)。
【0043】
正極21の作製は下記の手順で行う。まず、炭素材料、導電剤及びバインダを含む混合スラリーを用意し、これを正極集電体23である厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布して、正極電極22を形成する。正極電極22の乾燥及びプレスを行った後、金型で所定サイズに裁断して、平板状の正極21とする。負極31の作製は下記の手順で行う。まず、炭素材料及びバインダを含む混合スラリーを用意し、これを負極集電体33である厚さ12μmの銅箔に塗布して、負極電極32を形成する。負極電極32の乾燥及びプレスを行った後、金型で所定サイズに裁断して、帯状の負極31とする。さらに、セパレータ原紙を切断することで帯状のセパレータ41とする。
【0044】
そして、図6に示されるように、負極31の表裏にセパレータ41を配置してそれら負極31とセパレータ41とを重ね合わせた後、所定の面積を平らにして蛇腹状に折り畳む。このとき、図7に示されるように、負極31の平旦部間にセパレータ41を介して正極21を挟み込みながら負極31及びセパレータ41を折り畳む。ここでは、正極21の端部から離間した位置でセパレータ41及び負極31を折り曲げる。この際、平坦部の端部に折り目がつかないようにセパレータ41及び負極31を湾曲状に屈曲させる。これを繰り返すことにより、図3及び図4に示されるような蛇腹状に折り畳んだ電極群11(言い換えるとつづら折り状の電極群11)が作製される。なお、本実施形態のような蛇腹状の電極群11であると、正極21及び負極31の平坦面に対して垂直な方向(即ち電極群厚さ方向)に押圧力を加えることが可能な構造となるため、従来の円筒ロール状の電極群とは異なり高出力化を達成しやすくなる。
【0045】
この後、正極集電体23のタブ24に正極用外部端子25を超音波溶接し、かつ、負極集電体33の端部34に負極用外部端子35を超音波溶接する。次に、容器51の中に端子付きの電極群11を収容して開口部を閉じる。またこのとき、電極群11の上下にリチウム金属を配置して容器51内に収納する。この後、真空引きを行いつつ有機電解質を注入し、容器51内の収容空間を有機電解質で確実に満たすようにする。さらに、容器51を密閉して所定時間保持し、リチウムイオンのプレドープを進行させる。以上の結果、図1に示すリチウムイオンキャパシタ10が完成する。
【0046】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0047】
(1)本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10では、帯状の負極31及び帯状のセパレータ41を重ね合わせて蛇腹状に折り畳むことで電極群11が形成されている。このようにすると、負極62やセパレータ63を一枚一枚重ね合わせて電極群65(図15参照)を形成する従来のキャパシタと比較して、形成工程を簡素化することができる。具体的には、図15の電極群65を製造する場合、各極61,62を積載するための積載ロボットが2台必要となる。これに対して、本実施の形態では、正極21のみを1枚ずつ積載すればよいため、積載ロボットが1台ですみ、製造装置の構成を簡素化することができる。また、電極群11では、平板状に形成された複数枚の正極21が挟み込まれているので、帯状の正極を折り曲げて電極群を構成する場合と比較して、正極21の容量のバラツキを抑えることができ、製品規格内の容量を有するキャパシタを確実に形成することができる。さらに、負極31の電極面積が正極21の電極面積よりも大きく負極31の外周が正極21の外周より外側にあるために、負極31での電流集中が起こりにくくなり、高出力化を阻害する一原因であるリチウム金属の析出を避けることができる。
【0048】
(2)本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10では、電極群11を構成する負極31の平旦部及び平板状の正極21に対して外部端子35,25を容易に接続することができる。また、電極群11は正極21と負極31とがセパレータ41を介して交互に積層された構造となるため、急速充放電に優れたキャパシタを実現することができる。さらに、従来の円筒ロール形状とは異なり電極群11を蛇腹状にしたことで、電極群11の厚さ方向への加圧が可能な構造となり、このことも高出力化に寄与している。
【0049】
(3)本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10では、電極群11を構成する正極21の厚みが負極31の厚みの2倍以上である。このリチウムイオンキャパシタ10において、正極21よりも薄く形成された負極31を蛇腹状に折り畳むようにしているので、電極群11を容易に形成することができる。また、リチウムイオンキャパシタ10では、負極31が帯状に繋がっているので、負極31の電位が均一になりやすく、さらにリチウムイオンのドープも短時間で行うことができる。
【0050】
(4)本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10では、電極群11の側面部において、折り目がつかないように湾曲状に屈曲させて負極31を折り畳むようにしているため、負極31の厚さバラツキが抑制されて電流集中が起きにくくなる。また、負極31を折り畳む工程において、正確な位置で折り目をつける必要がないため、作業効率を高めることができる。
【0051】
(5)本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10において、電極群11の側面部では、負極31が折り曲げられているため、負極31の厚さが不均一となる場合がある。この電極群11の側面部は、正極21及び負極31が対向しない部分であり、容量に寄与しない不要部分である。特に、本実施の形態では、正極21の端部から離間した位置で負極31を折り曲げるようにしている。この場合、負極31の折り曲げ部分で電流集中が起きてリチウム金属が析出したとしても、その析出部分には正極21が対向しないため、キャパシタ性能が悪化するといった問題が回避される。
[第2の実施の形態]
【0052】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図8及び図9に基づき説明する。本実施の形態では、電極群11Aの形成方法が上記第1の実施の形態と異なり、それ以外は、第1の実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10と同じである。
【0053】
具体的には、図8に示されるように、本実施の形態の電極群11Aは、帯状の負極31及び帯状のセパレータ41を重ね合わせて扁平ロール状に捲回するとともに、捲回した状態の負極31の平旦部間にセパレータ41を介して平板状の正極21を挟み込んだ構造を有する。
【0054】
本実施の形態の電極群11Aを形成する場合も、上記第1の実施の形態と同様に、帯状の負極31、帯状のセパレータ41及び曲がりのない平板状かつ複数枚の正極21を使用する(図5参照)。そして、図9に示されるように、負極31の表裏にセパレータ41を配置してそれら負極31とセパレータ41とを重ね合わせた後、所定の面積を平らにして扁平ロール状に捲回する。このとき、負極31の平旦部間にセパレータ41を介して正極21を挟み込みながら負極31及びセパレータ41を順次巻いていく。これを繰り返すことにより、図8に示されるような扁平ロール状の電極群11Aが作製される。
【0055】
本実施の形態のように電極群11Aを形成した場合でも、従来技術のように正極61やセパレータ63を一枚一枚重ね合わせる必要がないため、形成工程を簡素化することができる。また、電極群11Aにおいて、負極31の平旦部の電極面積よりも正極21の電極面積を小さくし、平面視で正極21の外周が負極31の外周の内側に配置されている。このようにすると、高出力化を阻害する一原因である電流集中が起こりにくく、リチウム金属の析出を避けることができる。
【0056】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0057】
・上記各実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10では、正極用外部端子25及び負極用外部端子35が互いに反対方向に引き出されていたが、これに限定するものではない。具体的には、例えば、図10に示されるリチウムイオンキャパシタ10Aのように、容器51の同一方向から正極用外部端子25及び負極用外部端子35を引き出す構成としてもよい。なお、図10のリチウムイオンキャパシタ10Aにおいて、電極群11の構成は、第1の実施の形態と同じであり、外部端子25,35を引き出す方向が容器51の左右方向ではなく、容器51の上方に変更されている。
【0058】
また、図11に示されるように、帯状の負極集電体33上において、負極電極32が塗工されていないライン状の端部に切り込みを入れ、タブ状の電極未塗工部34を有する負極31Aを用いてもよい。具体的には、図11の負極31Aとセパレータ41とを重ね合わせて蛇腹状に折り畳むとともに、負極31Aの平旦部間にセパレータ41を介して正極21を挟み込んで図12に示すような電極群11Bを形成する。この電極群11Bを用いてリチウムイオンキャパシタを構成すると、容器51の同一方向から正極用外部端子25及び負極用外部端子35を引き出すことができる。
【0059】
・上記第2の実施の形態のように、帯状の負極31及び帯状のセパレータ41を扁平ロール状に捲回して電極群11Aを構成する場合、負極31の捲回数が多くなると、電極群11Aの厚みが増してキャパシタ容量に寄与しない側面の面積が大きくなってしまう。このように電極群11Aが厚くなる場合には、図13に示されるように、捲回数の少ない電極群11Cを複数形成し、それらを積み重ねることで電極群11Dを構成してもよい。このように電極群11Dを構成すると、キャパシタ容量に寄与しない側面の面積を最小限に抑えることができる。
【0060】
・上記各実施の形態のリチウムイオンキャパシタ10,10Aにおいて、電極群11,11Aを収納する容器51として、アルミニウム・ラミネートフィルムからなるソフト容器を用いたが、これに限定されるものではなく、アルミニウム等の金属材料からなるハード容器を用いてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、本発明をリチウムイオンキャパシタ10に具体化したが、金属イオンを含んだ電解液を使用した蓄電デバイスであれば他の蓄電デバイス(例えば、リチウムイオン二次電池など)に本発明を具体化することができる。
【0062】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0063】
(1)手段1において、前記電極群における蛇腹状に折り畳んだ前記負極において、端部に位置する屈曲部は、折り目のない湾曲状に屈曲した形状を有していることを特徴とする蓄電デバイス。
【0064】
(2)手段1において、前記電極群における蛇腹状に折り畳んだ前記負極において、前記正極の端部から離間した位置で前記負極を折り畳むようにしたことを特徴とする蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0065】
10,10A…リチウムイオンキャパシタ
11,11A,11B,11D…電極群
21…正極
22…正極電極
23…正極集電体
25…正極用外部端子
31,31A…負極
32…負極電極
33…負極集電体
35…負極用外部端子
41…セパレータ
51…収容体としての容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容体と、正極電極を正極集電体上に形成した構造の正極と、負極電極を負極集電体上に形成した構造の負極と、前記正極及び前記負極の間に介在されたセパレータとを備え、前記正極、前記負極及び前記セパレータからなる電極群が金属イオンを含んだ電解液とともに前記収容体内に収容され、前記正極集電体に接続された正極用外部端子及び前記負極集電体に接続された負極用外部端子がともに前記収容体から引き出されている蓄電デバイスにおいて、
前記電極群が、帯状の負極、帯状のセパレータ及び曲がりのない平板状かつ複数枚の正極を使用し、前記帯状の負極及び前記帯状のセパレータを重ね合わせて蛇腹状に折り畳むとともに、折り畳んだ状態の前記負極の平旦部間に前記セパレータを介して前記正極を挟み込み、かつ前記正極の電極面積を前記負極の電極面積より小さくし、平面視で前記正極の外周が前記負極の外周の内側にある構造を有する
ことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
収容体と、正極電極を正極集電体上に形成した構造の正極と、負極電極を負極集電体上に形成した構造の負極と、前記正極及び前記負極の間に介在されたセパレータとを備え、前記正極、前記負極及び前記セパレータからなる電極群が金属イオンを含んだ電解液とともに前記収容体内に収容され、前記正極集電体に接続された正極用外部端子及び前記負極集電体に接続された負極用外部端子がともに前記収容体から引き出されている蓄電デバイスにおいて、
前記電極群が、帯状の負極、帯状のセパレータ及び曲がりのない平板状かつ複数枚の正極を使用し、前記帯状の負極及び前記帯状のセパレータを重ね合わせて扁平ロール状に捲回するとともに、捲回した状態の前記負極の平旦部間に前記セパレータを介して前記正極を挟み込み、かつ前記正極の電極面積を前記負極の電極面積より小さくし、平面視で前記正極の外周が前記負極の外周の内側にある構造を有する
ことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項3】
前記正極の厚みは、前記負極の厚みの2倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記電解液はリチウム塩を含み、前記正極電極は炭素材料からなり、前記負極電極はリチウムの吸蔵及び放出が可能な材料からなり、前記負極にあらかじめリチウムイオンがドープされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−156405(P2012−156405A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15834(P2011−15834)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】