説明

蓄電池モジュールの製造方法及び蓄電池モジュール

【課題】組み付け時の取り扱いが容易な蓄電池モジュールの製造方法及び蓄電池モジュールを提供する。
【解決手段】複数の蓄電セル12を蓄電池ケース体11に収めた蓄電池10と、当該蓄電池10と電気的に接続される電子回路25、26を含む電子装置20とを備えた蓄電池モジュール1の製造方法であって、前記蓄電池10の蓄電池ケース体11と前記電子装置20の電子装置ケース体21とを連通し、これら蓄電池ケース体11及び電子装置ケース体21に熱硬化性樹脂31を充填し熱硬化させ、前記蓄電池10と前記電子装置20とを前記熱硬化性樹脂31で封止し一体にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セルを複数積層して形成された蓄電池および当該蓄電池の電力を変換して出力する電力変換装置を含む電子装置を備えた蓄電池モジュールの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電動二輪車等の車両に用いられる蓄電池として、蓄電セルを複数積層して外装ケースに収容した蓄電池が知られている。そして、この種の蓄電池において、温度上昇による蓄電セルの劣化防止のため、外装ケース内に樹脂材を充填し、樹脂材によって個々の蓄電セルを覆うことにより、蓄電セルの熱を樹脂材に吸収させて放熱する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、蓄電池の電力で車両駆動用モータを駆動する駆動回路等に用いるパワー半導体装置を備えた電子装置では、振動からパワー半導体装置のボンディングワイヤを保護し、また耐湿性を確保するため、ケース体に樹脂を充填してパワー半導体装置をボンディングワイヤごと封止する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−300692号公報
【特許文献2】特開2006−140310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術では、蓄電池及び電池装置のそれぞれが別部品であるため、これらの部品を配置するためのスペースが狭い電動二輪車等の車両においては、レイアウトが難しいという問題がある。また、これらの部品の組み付け時には、蓄電池と電子装置とを電気的に耐震性を確保して接続する必要があるため、組み付け作業が煩雑となるという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、組み付け時の取り扱いが容易な蓄電池モジュールの製造方法及び蓄電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の蓄電セルを蓄電池ケース体に収めた蓄電池と、当該蓄電池と電気的に接続される電子回路を含む電子装置とを備えた蓄電池モジュールの製造方法であって、前記蓄電池の蓄電池ケース体と前記電子装置の電子装置ケース体とを連通し、これら蓄電池ケース体及び電子装置ケース体に熱硬化性樹脂を充填し熱硬化させ、前記蓄電池と前記電子装置とを前記熱硬化性樹脂で封止し一体にしたことを特徴とする。
本発明では、蓄電池と電子装置とを一体にしたので、コンパクトでレイアウト自由度が高く、組み付け時に取り扱いが容易になる。特に、熱硬化性樹脂で一体にしたので、蓄電池と電子装置との間の電気的接続部分が振動から強固に保護され、振動に強い蓄電池モジュールを実現できる。
【0006】
前記熱硬化性樹脂の熱硬化処理の際に前記電子装置ケース体に与えられた熱を前記電子回路の基板に導き当該基板の表裏面で熱硬化を生じさせるようにしても良い。
電子装置ケース体に与えられた熱を基板に導き基板の表裏面で熱硬化を生じさせるので、電子装置ケース体を局所的に急速加熱しても、基板の表裏面付近が速やかに硬化して基板上の電子部品の半田付け部やボンディングワイヤ接合部が保護されるとともに、基板と略垂直な方向に向かって硬化が進行し電子部品を倒す方向の力が発生しない。したがって、電子装置ケース体を局所的に急速加熱しても、電子回路の破壊を防止できる。
【0007】
前記基板上に、前記電子回路の電子部品を前記電子装置ケース体の内側面から離れた位置に配置しても良い。
電子装置ケース体を急速加熱した場合、熱硬化性樹脂が電子装置ケース体の内側面から熱硬化することで、基板上の電子部品を倒す力が生じるが、電子部品が電子装置ケース体の内側面から離れているので、電子部品周辺の樹脂は、主に基板の表面から伝わる熱で硬化し、電子装置ケース体の内面から伝わる熱の影響は小さくなる。このため、急速加熱時においても、電子装置ケース体の内面から伝わる熱による電子部品を倒す方向の力の影響を抑えて、電子回路の破壊を確実に防止できる。
【0008】
前記蓄電池の蓄電池ケース体と前記電子装置の電子装置ケース体とのうち、これら蓄電池ケース体及び電子装置ケース体に充填された熱硬化性樹脂の体積を略等分する箇所を加熱して熱硬化処理しても良い。
充填された熱硬化性樹脂の体積を略等分する箇所を加熱するので、熱硬化性樹脂を効率よく加熱することができ、熱硬化処理時間を短縮できる。
【0009】
また、本発明は、複数の蓄電セルを蓄電池ケース体に収めた蓄電池と、当該蓄電池と電気的に接続される電子回路を含む電子装置とを備え、前記蓄電池の蓄電池ケース体と前記電子装置の電子装置ケース体とを連通し、これら蓄電池ケース体及び電子装置ケース体に熱硬化性樹脂を充填し熱硬化させ、前記蓄電池と前記電子装置とを前記熱硬化性樹脂で封止し一体にしたことを特徴とする。
蓄電池と電子装置とを一体にしたので、コンパクトでレイアウト自由度が高く、組み付け時に取り扱いが容易になる。特に、熱硬化性樹脂で一体にしたので、蓄電池と電子装置との間の電気的接続部分が振動から強固に保護され、振動に強い蓄電池モジュールを実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電池と電子装置とを一体にしたので、コンパクトでレイアウト自由度が高く、組み付け時に取り扱いが容易になる。特に、熱硬化性樹脂で一体にしたので、蓄電池と電子装置との間の電気的接続部分が振動から強固に保護され、振動に強い蓄電池モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動電源ユニットの斜視図である。
【図2】駆動電源ユニットの上面を一部省略して模式的に示す図である。
【図3】図2におけるI−I線断面を一部省略して模式的に示す図である。
【図4】駆動電源ユニットの熱硬化処理における、時間経過による樹脂の硬度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る蓄電池モジュールの一態様として、電動二輪車に搭載され、電動二輪車の駆動用モータを駆動するための駆動電源ユニット1を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る駆動電源ユニット1の斜視図である。図2は駆動電源ユニット1の上面を一部省略して模式的に示す図、図3は図2におけるI−I線断面を一部省略して模式的に示す図である。
図1に示すように、駆動電源ユニット1は、電動二輪車の駆動用モータMを駆動するものであり、蓄電池10と、駆動用モータMを駆動するための電子装置20とを一体に備えている。
蓄電池10は、電動二輪車に搭載されて駆動用モータMの駆動電力源となるバッテリーであって、図1および図3に示すように、互いに直列に接続された複数の蓄電セル12と、これら複数の蓄電セル12を収容する蓄電池ケース体11とを備える。蓄電セル12のそれぞれには、電極タブ13が設けられ、これら電極タブ13を通じて蓄電池10と電子装置20とが電気的に接続されている。蓄電池ケース体11は、上面が開口した有底の箱状ケース体であり、上面の開口11Aから各電極タブ13を延出させるように各蓄電セル12が蓄電池ケース体11に納められている。
【0014】
電子装置20は、図1〜図3に示すように、スイッチング電源回路25と、インバータ回路26とを備え、これらを電子装置ケース体21に納めて構成されている。
スイッチング電源回路25は、蓄電池10の直流電圧を所定電圧に変換してインバータ回路26に出力するDC−DCコンバータ(電力変換装置)として機能するものであり、その入力側が蓄電池10の電極タブ13と電気的に接続されている。
インバータ回路26は、スイッチング電源回路25の出力電圧で駆動されて駆動用モータMを駆動するものであり、IGBTといった複数のパワー半導体装置(スイッチング素子)を含む電子部品24を備える。
【0015】
これらスイッチング電源回路25及びインバータ回路26は、ともに共通の基板23の上に設けられている。具体的には、インバータ回路26が備える電子部品24のうち、パワー半導体装置は、ボンディングワイヤで基板23に設けた電極と接続され、また他の電子部品24は基板23に形成した配線パターンに半田付けされて、これらが基板23に実装されている。
なお、この基板23には、スイッチング電源回路25と、インバータ回路26との他にも、インバータ回路26の各パワー半導体装置のゲート端子を駆動するゲートドライブ回路(図示せず)なども設けられている。
【0016】
電子装置ケース体21は、矩形枠状に形成され、内部に上記基板23を支持する。すなわち、図2に示すように、電子装置ケース体21の内側には、対面する内側面21C同士を橋渡しする2本の支持部材22が設けられており、この2本の支持部材22に基板23が支持される。基板23は、全周囲に電子装置ケース体21の内側面21Cとの間に隙間27が設けられる寸法に形成されている。
【0017】
蓄電池10と電子装置20とは、図3に示すように、電子装置ケース体21の下側の開口21Bに、蓄電池10の蓄電池ケース体11の電極タブ13が延出する側を嵌め込み固定することで、一体に構成され、上記駆動電源ユニットケース体30が構成されている。このとき、電極タブ13の先端部が電子装置20に入り込み基板23の裏側近傍に位置するように、電子装置ケース体21と蓄電池ケース体11との嵌め込み固定位置が図示せぬ係止部材で位置決めされている。これにより、電子装置20の基板23が蓄電池10の電極タブ13に近い位置に配置されるので、電子装置20と蓄電池10の間の配線距離が短くなり、電力損失が抑えられる。
【0018】
ここで、電子装置20が備える基板23には、上述の通り、ボンディングワイヤで接続されたパワー半導体装置が実装されることから、当該ボンディングワイヤの接合部を振動から保護するために、この基板23は電子装置ケース体21に樹脂封止される。
本実施形態では、この樹脂封止が蓄電池10の樹脂封止とともに行われ、当該樹脂封止により、これら電子装置20と蓄電池10が一体に結合される。
以下、かかる樹脂封止について説明する。
【0019】
電子装置20と蓄電池10との樹脂封止は、電子装置20側から樹脂31を流し込むことで行われる。すなわち、電子装置ケース体21の開口21Bに、蓄電池ケース体11の上側を嵌め込むことで、電子装置ケース体21の下側の開口21Bと、蓄電池ケース体11の上側の開口11Aとが連通し、電子装置20側から流し込まれた樹脂31が、電子装置ケース体21と基板23の隙間27から蓄電池ケース体11に流れ込み、これら電子装置ケース体21と蓄電池ケース体11に充填(ポッティング)される。
樹脂31は、熱硬化性樹脂であり、例えば、硬化前は液状であって加熱により硬化してゲル状または固体となるものである。すなわち、電子装置20及び蓄電池10には加熱前の液状状態で樹脂31が注入され、熱硬化処理により硬化することで、これら電子装置20及び蓄電池10が樹脂封止される。
【0020】
この樹脂31は、通常の樹脂に比べて高い熱伝導性を有し、かかる樹脂31で電子装置20及び蓄電池10の内部を充填することで、基板23や蓄電セル12の発熱を電子装置ケース体21及び蓄電池ケース体11に伝熱し、それぞれのケース表面から効率よく放熱することができ、放熱性が高められる。
特に、蓄電池ケース体11および電子装置ケース体21は、例えばアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属により形成され、互いに密接するように連結されることで、それぞれの間の熱抵抗を抑えた状態で連結されている。これにより、蓄電池ケース体11および電子装置ケース体21に伝えられた熱が、両方の表面全体に広がって放熱されるので、放熱性能が向上する。
【0021】
樹脂31を熱硬化する熱硬化処理について具体的には、蓄電池10の蓄電池ケース体11を急速に加熱することで行われる。このとき、樹脂31の熱伝導率は、蓄電池ケース体11および電子装置ケース体21の素材たる金属に比べて低いため、何ら対策を施さなければ、電子装置20にあっては、電子装置ケース体21の樹脂31が一様に硬化を開始するのではなく、電子装置ケース体21の内側面21Cを起点として樹脂31の硬化が進行し、電子装置ケース体21の内側へ向かって進行する。この場合、基板23の上の電子部品24に対し樹脂31硬化により不要な力が発生し、電子部品24の半田付け部やワイヤーボンディングの接続部などが破壊される虞がある。
例えば炉を用いて電子装置20全体をゆっくりと加熱することで、樹脂31に温度ムラが生じないようにして一様に硬化を開始するようにできるが、熱硬化処理に要する時間が長くなるうえ、大型で高価な設備が必要となる。
【0022】
そこで、本実施形態では、樹脂31を熱硬化させる際に、電子装置ケース体21に与えられた熱を基板23に導き、基板23の表裏面で熱硬化を生じさせる構成としている。
具体的には、電子装置20の支持部材22および基板23を、例えばアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属により形成し、基板23を支持部材22に十分に接触させることで、電子装置ケース体21に与えられた熱を基板23に均等かつ速やかに導くようにした。
【0023】
これにより、電子装置ケース体21が局所的に急速加熱された場合であっても、電子装置ケース体21から支持部材22を介して基板23に均等かつ速やかに熱が伝わり、基板23付近の樹脂31の硬化が促進される。このため、基板23上の電子部品24の半田付け部やボンディングワイヤの接合部などは速やかに硬化済みの樹脂31により保護され、電子装置20の破壊を防止できる。また、基板23付近の樹脂31は、基板23の表裏面を起点として基板23と略垂直な方向に向かって硬化し、電子部品24を倒す方向の力が発生しないため電子装置20の破壊を防止できる。
したがって、炉などの大型で高価な設備を用いることなく、インダクションヒーターなどの安価な局所加熱設備で、蓄電池ケース体11を局所的に急速加熱しても、電子装置20の破壊を防止しつつ電子装置20および蓄電池10を樹脂封止することができ、設備コストの低減および熱硬化処理時間の短縮を実現できる。
【0024】
また、本実施形態では、基板23上に、電子部品24を電子装置ケース体21の内側面21Cから離れた位置に配置している。ここで、電子部品24と電子装置ケース体21との距離は、基板23表面から樹脂31の液面までの距離より大きくなるように設定されている。
これにより、電子装置ケース体21が急速に加熱されても、電子部品24周辺の樹脂31は、主に基板23の表面から伝わる熱で硬化し、電子装置ケース体21の内側面21Cから伝わる熱の影響は小さくなる。このため、電子装置ケース体21の内側面21Cから伝わる熱による電子部品24を倒す方向の力の影響を抑えて電子装置20の破壊を確実に防止できる。
【0025】
以下に、本実施形態に係る駆動電源ユニット1の製造方法について説明する。
まず、上述のように、蓄電池ケース体11に蓄電セル12を収めて蓄電池10を組み立て、また電子装置ケース体21に基板23を収めて電子装置20を組み立てる。
次に、電子装置ケース体21の下側の開口21Bに、蓄電池ケース体11の上側を嵌め込んで接続し、電子装置ケース体21と蓄電池ケース体11とを連通状態で連結する。
このとき、電子装置20のスイッチング電源回路25を、蓄電池10の電極タブ13と電気的に接続しておく。
そして、電子装置ケース体21の上側の開口21Aから液状の樹脂31を注入し、蓄電池ケース体11および電子装置ケース体21に樹脂31を充填する。
【0026】
次に、樹脂31の熱硬化処理を行う。この熱硬化処理においては、蓄電池ケース体11及び電子装置ケース体21に充填された樹脂31を一工程で熱硬化させ、蓄電池10と電子装置20とを封止するとともに一体にし、次の処理工程の作業位置に払い出す。
【0027】
この熱硬化処理においては、図1、図3に示すように、蓄電池ケース体11または電子装置ケース体21の所定の加熱領域Aに、例えばインダクションヒーターなどの局所加熱装置を配置して、当該加熱領域Aを外側から局所的に、従前よりも温度上昇を速めて急速加熱する。
加熱領域Aは、蓄電池ケース体11及び電子装置ケース体21の連結方向(図1中上下方向)において、充填された樹脂31の体積を略等分する箇所に設定される。本実施形態では、この加熱領域Aが蓄電池ケース体11に位置し、この加熱領域Aで上記局所加熱装置が蓄電池ケース体11の周囲を取り囲み加熱することで、蓄電池ケース体11及び電子装置ケース体21に充填された樹脂31を効率よく加熱することができ、樹脂31の熱硬化処理時間を短縮できる。
【0028】
加熱開始に伴い、蓄電池ケース体11から電子装置ケース体21に熱が伝導し、当該電子装置ケース体21の内側面21Cで熱硬化が開始するが、電子装置ケース体21の熱が支持部材22を介して基板23にも伝えられるため、当該基板23の表裏面でも熱硬化が開始され電子部品24が封止される。これにより、内側面21Cの硬化に伴って基板23上の電子部品24に作用する余分な力から当該電子部品24が保護され、また基板23と略垂直な方向に向かって硬化が進行することから、基板23に立設された電子部品24を倒す方向に力が加わることもなく、電子装置20の破壊を防止できる。
【0029】
また、蓄電池ケース体11の局所加熱時に急速に加熱を開始しても、支持部材22を介して基板23に熱が速やかに伝えられ、当該基板23の電子部品24が樹脂31で速やかに封止されることから、電子部品24の損傷を防止しつつも熱硬化処理時間を短縮できる。また、従来、別々に行われていた蓄電池10及び電子装置20のそれぞれの樹脂封止工程を1つの工程に集約できる。
【0030】
図4は、駆動電源ユニット1の熱硬化処理において、加熱領域Aを60℃に加熱した場合および加熱領域Aを46℃に加熱した場合の、時間経過による樹脂31の硬度変化を示す図である。
熱硬化処理においては、蓄電池ケース体11及び電子装置ケース体21の樹脂31を、次の処理工程の作業位置に払い出し可能な硬度(次工程可搬硬度)まで熱硬化する。このとき、図4に示すように、樹脂31が次工程可搬硬度に到達するまでの時間は加熱温度が高いほど短くなり、例えば加熱温度を60℃に設定することで、到達時間T1は、加熱温度を46℃に設定したときの到達時間T2に比べ大幅に短縮される。
したがって、加熱温度を蓄電池10や電子装置20の耐熱温度(例えば60℃以下)を限度に高温に設定することで、熱硬化処理時間を大幅に短縮できる。
本実施形態では、蓄電池ケース体11及び電子装置ケース体21の両方に樹脂31を充填することから熱硬化対象の樹脂31の量が増え熱硬化時間が長くなるが、上述のように、加熱温度を高温に設定することで熱硬化時間の延長が抑えられる。また、加熱温度を高温に設定した場合であっても、上述の通り、電子装置ケース体21に与えられた熱が基板23に導かれ当該基板23の表裏面で熱硬化を生じさせるため、電子装置20の破壊を生じることがない。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、蓄電池10と電子装置20とを一体にしたので、コンパクトでレイアウト自由度が高く、組み付け時に取り扱いが容易になる。特に、樹脂31を充填し熱硬化させて一体にしたので、電子装置20のスイッチング電源回路25と蓄電池10の電極タブ13との間の電気的接続部分が樹脂31で封止され、電子装置20のスイッチング電源回路25と蓄電池10の電極タブ13との間の電気的接続部分が振動から強固に保護され、振動に強い駆動電源ユニット1を実現できる。
【0032】
また、本実施形態では、蓄電池10の蓄電セル12が樹脂31を介して蓄電池ケース体11と熱的に連結されている。これにより、蓄電セル12で発生した熱を、樹脂31を介して蓄電池ケース体11に伝達することができ、蓄電セル12を効果的に冷却することができる。
また、本実施形態では、電子装置20においては、基板23の上下表面、電子部品24およびボンディングワイヤ(不図示)が樹脂31で覆われている。これにより、電子装置20の耐湿性を確保でき、電子部品24を硬化済みの樹脂31で保護して耐震性を確保できる。
【0033】
また、本実施形態では、電子装置20の支持部材22および基板23を、熱伝導率の高い金属により形成し、基板23を支持部材22に十分に接触させ、樹脂31の熱硬化処理の際に電子装置ケース体21に与えられた熱を基板23に導き基板23の表裏面で熱硬化を生じさせるので、電子装置ケース体21を局所的に急速加熱しても、基板23の表裏面付近が速やかに硬化して基板23上の電子部品24が保護されるとともに、基板23と略垂直な方向に向かって硬化が進行し電子部品24を倒す方向の力が発生しない。したがって、電子装置ケース体21を局所的に急速加熱しても、電子装置20の破壊を防止できる。
【0034】
また、本実施形態では、基板23上に、電子装置20の電子部品24を電子装置ケース体21の内側面21Cから離れた位置に配置した。電子装置ケース体21を急速加熱した場合、樹脂31が電子装置ケース体21の内側面21Cから熱硬化することで、基板23上の電子部品24を倒す力が生じるが、電子部品24が電子装置ケース体21の内側面21Cから離れているので、電子部品24周辺の樹脂31は、主に基板23の表面から伝わる熱で硬化し、電子装置ケース体21の内側面21Cから伝わる熱の影響は小さくなる。このため、急速加熱時においても、電子装置ケース体21の内側面21Cから伝わる熱による電子部品24を倒す方向の力の影響を抑えて、電子装置20の破壊を確実に防止できる。
【0035】
また、本実施形態では、蓄電池10の蓄電池ケース体11と電子装置20の電子装置ケース体21とのうち、これら蓄電池ケース体11及び電子装置ケース体21に充填された樹脂31の体積を略等分する加熱領域Aを加熱して熱硬化処理するので、樹脂31を効率よく加熱することができ、熱硬化処理時間を短縮できる。
【0036】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形が可能である。
例えば、また、上述した実施形態では、蓄電池モジュールとして、電動二輪車の駆動用モータを駆動するための駆動電源ユニットを例示したが、これに限らず、電動四輪車等の他の蓄電池モジュールにも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 駆動電源ユニット(蓄電池モジュール)
10 蓄電池
11 蓄電池ケース体
12 蓄電セル
20 電子装置
21 電子装置ケース体
21C 内側面
23 基板
24 電子部品
25 スイッチング電源回路(電子回路)
26 インバータ回路(電子回路)
31 樹脂(熱硬化性樹脂)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電セルを蓄電池ケース体に収めた蓄電池と、当該蓄電池と電気的に接続される電子回路を含む電子装置とを備えた蓄電池モジュールの製造方法であって、
前記蓄電池の蓄電池ケース体と前記電子装置の電子装置ケース体とを連通し、これら蓄電池ケース体及び電子装置ケース体に熱硬化性樹脂を充填し熱硬化させ、前記蓄電池と前記電子装置とを前記熱硬化性樹脂で封止し一体にしたことを特徴とする蓄電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂の熱硬化処理の際に前記電子装置ケース体に与えられた熱を前記電子回路の基板に導き当該基板の表裏面で熱硬化を生じさせるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記基板上に、前記電子回路の電子部品を前記電子装置ケース体の内側面から離れた位置に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記蓄電池の蓄電池ケース体と前記電子装置の電子装置ケース体とのうち、これら蓄電池ケース体及び電子装置ケース体に充填された熱硬化性樹脂の体積を略等分する箇所を加熱して熱硬化処理したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蓄電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
複数の蓄電セルを蓄電池ケース体に収めた蓄電池と、当該蓄電池と電気的に接続される電子回路を含む電子装置とを備え、
前記蓄電池の蓄電池ケース体と前記電子装置の電子装置ケース体とを連通し、これら蓄電池ケース体及び電子装置ケース体に熱硬化性樹脂を充填し熱硬化させ、前記蓄電池と前記電子装置とを前記熱硬化性樹脂で封止し一体にしたことを特徴とする蓄電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−142097(P2012−142097A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292094(P2010−292094)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】