説明

蓄電池充電制御システム

【課題】本発明は、他の電力機器の使用を妨げないで、適正に蓄電池を充電することができる蓄電池充電制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】送配電線路14からの受電電力を監視して宅内機器22に供給される負荷電流を測定する負荷電流測定手段44と、測定された負荷電流と蓄電池26の充電電流とを加算したとき、受電電力に関する契約電力容量から求められる最大許容負荷電流を越えない範囲で、蓄電池26の適正充電電流を計算する充電電流計算手段46と、蓄電池26を適正充電電流で充電するとともに、測定された負荷電流が一定量だけ変化するたびに、蓄電池の適正充電電流を再計算して、蓄電池の充電電流を変更する蓄電池充電制御手段48とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅内機器の運転を妨げずに蓄電池を充電できる蓄電池充電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置や風力発電装置は、再生可能エネルギによる電源装置として広く実用化されている。また、クリーンなエネルギを利用した燃料電池も、次世代の自家発電電源装置として実用化が図られている。これらの自家発電電源装置により供給される電力は、宅内機器により消費されるとともに、余剰分が蓄電池に蓄積される。さらに、売電のために一部が送配電線側に送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
自家発電電源装置により発電した電力は、宅内配線に供給されて使用される。また、その一部は売電のため送配電線側へ送り出される。さらに、余剰分の電力で蓄電池を充電して夜間に使用する。一方、自家発電電源装置の発電能力が低い場合には、送配電線から夜間電力を受け入れて蓄電池を充電する。この電力を昼間に使用する。ここで、蓄電池に夜間電力を充電するときには、蓄電池は他の電力機器と同様に、電源に対する負荷として動作する。即ち、電源から蓄電池に向かって負荷電流が流れる。
【0005】
このように蓄電池を充電しながら暖房機や給湯器を動作させると、契約電力容量を越えてしまう場合がある。特に、蓄電池の特性上、充電開始時には大きな充電電流が流れ、充電終了時には充電電流が減少する。これにより、他の電力機器の使用を妨げ、ブレーカを動作させてしまうおそれもある。充電電流を十分に低く設定しておけば、この問題は無いが、充電時間が長時間になってしまう。
【0006】
本発明は、他の電力機器の使用を妨げないで、適正に蓄電池を充電することができる蓄電池充電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
送配電線路からの受電電力を監視して宅内機器に供給される負荷電流を測定する負荷電流測定手段と、測定された前記負荷電流と蓄電池の充電電流とを加算したとき、前記受電電力に関する契約電力容量から求められる最大許容負荷電流を越えない範囲で、前記蓄電池の適正充電電流を計算する充電電流計算手段と、前記蓄電池を適正充電電流で充電するとともに、測定された前記負荷電流が一定量以上変化するたびに、前記蓄電池の適正充電電流を再計算して、前記蓄電池の充電電流を変更する蓄電池充電制御手段とを備えたことを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0008】
〈構成2〉
自家発電電源装置の発電電力を監視して宅内電力機器に供給される負荷電流を測定する負荷電流測定手段と、前記測定した負荷電流と蓄電池の充電電流とを加算したとき、自家発電電源装置の発電電力に対応する最大動作電流を越えない範囲で、前記蓄電池の適正充電電流を計算する充電電流計算手段と、前記蓄電池を前記適正充電電流で充電するとともに、測定された前記負荷電流と前記自家発電電源装置の発電電力が一定量以上変化するたびに、前記蓄電池の充電電流を再計算して、前記蓄電池の充電電流を変更する蓄電池充電制御手段とを備えたことを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0009】
〈構成3〉
構成1に記載の蓄電池充電制御システムにおいて、前記充電電流計算手段は、前記負荷電流をILとし、前記蓄電池の充電電流をIBとし、最大許容負荷電流をIAとし、IA−(IL+IB)を負荷電流の予備分IRとしたとき、負荷電流の予備分IRを、単体で起動したときに最大の負荷電流が流れる電力機器の負荷電流以上になるように、前記蓄電池の充電電流を設定することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0010】
〈構成4〉
構成2に記載の蓄電池充電制御システムにおいて、前記負荷電流をILとし、前記蓄電池の充電電流をIBとし、前記最大動作電流をIGAとし、IGA−(IL+IB)を負荷電流の予備分IRとしたとき、負荷電流の予備分IRを、単体で起動したときに最大の負荷電流が流れる電力機器の負荷電流以上になるように、前記蓄電池の充電電流を設定することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0011】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、前記蓄電池充電制御手段は、前記宅内機器に供給される負荷電流と、前記適正充電電流で充電した場合の蓄電池の充電終了時刻とをディスプレイに表示することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0012】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、自家発電電源装置から第1充電回路を使用して蓄電池の充電を開始して、充電が中断したときには、指定された時刻まで待って充電を再開するように制御することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0013】
〈構成7〉
構成1乃至6のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、送配電線路から第2充電回路を使用して蓄電池の充電を開始して、充電が中断したときには、指定された時刻まで待って充電を再開するように制御することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0014】
〈構成8〉
構成1乃至7のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、前記宅内機器の使用状態を監視して、予め設定したエネルギ使用基準に従って前記宅内機器を自動的にオンオフしてそのエネルギ使用量を制御するHEMS管理サーバが設けられており、HEMS管理サーバがいずれかの宅内機器を自動的にオンするときに、前記蓄電池充電制御手段は、前記蓄電池の充電を一時停止することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【0015】
〈構成9〉
構成1乃至8のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、前記蓄電池充電制御手段は、充電をするべき蓄電池が複数あるとき、各蓄電池の充電の開始時刻と充電の終了時刻とをそれぞれ時間的にシフトさせて、宅内機器の負荷電流と蓄電池の充電電流の合計値を適正範囲に制御することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【発明の効果】
【0016】
〈構成1の効果〉
契約電力容量から求められる最大許容負荷電流を越えない範囲で、蓄電池の適正充電電流を計算して、許容値の範囲内で効率良く蓄電池を充電できる。
〈構成2の効果〉
自家発電電源装置の発電電力が変化すると、適正な最大動作電流も変化する。負荷電流の測定値と自家発電電源装置の発電電力を時間的に連続的に測定して、蓄電池の適正充電電流を計算して追従させることができる。
〈構成3の効果〉
蓄電池を充電中に最大の負荷電流が流れる電力機器が起動しても、ブレーカが作動する心配がない。
〈構成4の効果〉
蓄電池を充電中に最大の負荷電流が流れる電力機器が起動しても、ブレーカが作動する心配がない。
〈構成5の効果〉
蓄電池の充電終了を早めたいときは、ディスプレイを見て、宅内機器の一部をオフして、節電をすることができる。
〈構成6の効果〉
宅内機器の影響で、自家発電電源装置による十分な充電ができず、充電を中断することがある。このとき、廉価な夜間電力送電開始時を指定しておくと、その時刻から充電を再開できる。
〈構成7の効果〉
宅内機器の影響で、自家発電電源装置による十分な充電ができず、充電を中断することがある。このとき、廉価な夜間電力送電開始時を指定しておくと、その時刻から充電を再開できる。
〈構成8の効果〉
ホームエネルギマネジメントシステム(HEMS)管理サーバが、例えば、エアコンを自動的にオンオフ制御することがある。エアコンは起動時に大電流を必要とするから、一時的に許容値を越える負荷電流が流れるおそれがある。蓄電池の充電は自由に遮断しても弊害は無い。そこで、こうした宅内機器の起動時に蓄電池の充電を一時停止する。
〈構成9の効果〉
充電すべき蓄電池が複数ある場合には、同時に充電をせずに、充電のタイミングをシフトさせて、充電電流を平準化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の蓄電池充電制御システムを示すブロック図である。
【図2】演算処理に使用するデータの例を示す説明図である。
【図3】充電制御の説明図である。
【図4】図3とは別の充電制御の説明図である。
【図5】ディスプレイに表示された蓄電池モニター画面説明図である。
【図6】複数の蓄電池がある場合の蓄電池モニター画面説明図である。
【図7】複数の蓄電池に対する充電制御回路である。
【図8】蓄電池が複数のブレーカに隔てられた回路に接続されている状態での充電制御回路である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一般には、商用電力を利用する場合に、受電電力について契約電力容量が定められている。宅内機器による使用電力はこの契約電力容量を越えないように使用される。通常は、ブレーカの遮断電流を指して、40アンペア契約とか50アンペア契約と呼んでいる。ここで、例えば、宅内機器を各種使用中に、電気自動車に使用されているような大容量の蓄電池を急速充電すると、大電流が流れて契約電力容量を越えてしまうおそれがあった。
【0019】
一方、蓄電池は一般の宅内機器と異なり、充電電流が一時的に変動しても断続をしても、なんの問題もなく充電が可能という特徴がある。本発明ではこの特徴を利用して、蓄電池の充電電流を他の宅内機器の状態に応じて動的に制御する。さらに、このような制御をしながら、安価に充電ができる時間を求めて充電の中断や再開をすることも可能にする。以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は実施例1の蓄電池充電制御システム10を示すブロック図である。
図のシステム10は、一般家庭のような建物に設置される。この建物には、送配電線路14から分電盤16を介して宅内配線15に商用電力が供給されている。また、この建物には、自家発電電源装置24が設けられている。さらに、建物内部で使用する電力を蓄積するための蓄電池26が設けられている。この図の蓄電池の場所に、電気自動車27の蓄電池も接続できる。
【0021】
この蓄電池26に電力を充電するために、第1充電回路28と第2充電回路30とが設けられている。また、この蓄電池26から宅内配線15側に電力を供給するために放電回路32が設けられている。第1充電回路28と第2充電回路30と放電回路32のいずれかに蓄電池26を選択的に接続をするために、スイッチ回路33が設けられている。
【0022】
また、自家発電電源装置24の余剰電力の売電制御をするために、よく知られたパワーコンディショナ18が設けられている。さらに、宅内配線15に流れる負荷電流を測定し、積算電力を電力会社にリモートで読み取らせるために、よく知られたスマートメータ20が設けられている。まず、以上の部分について、各部の具体的な構成の説明をする。
【0023】
[自家発電電源装置]
蓄電池26の充電には、自家発電電源装置24と、送配電線路14から供給される電力を使用する。自家発電電源装置24は、太陽エネルギを電気エネルギに変換して出力する太陽光発電装置の他に、風力エネルギを電気エネルギに変換して出力する風力発電装置や、水素等を燃料として発電する燃料電池が良く知られている。この他に、熱エネルギや水力波力を電気エネルギに変換して出力する電源装置も知られている。これらは全て、本発明のシステムで自家発電電源装置として使用することができる。
【0024】
[送配電線路と宅内配線]
送配電線路14は、電力会社から商用電源を供給するための線路である。宅内配線15は、送配電線路14と分電盤16を介して接続される。宅内配線15は、送配電線路14と分電盤16等の受電設備により隔てられた配電設備で、住宅やマンション等に設置された宅内機器22を駆動するための電力を供給する。分電盤16は、宅内配電用の分岐回路やブレーカ等を内蔵した機器である。
【0025】
[蓄電池]
蓄電池26は充放電により電力を蓄積したり放出したりする機能を持つ2次電池である。蓄電池26は、自家発電電源装置24から供給される電力の蓄積に使用される。また、電気自動車等の任意の電池使用機器の蓄電池も、このシステムによる充電の対象である。図のスイッチ回路33を使用して、複数の蓄電池を同時に第1充電回路28や第2充電回路30に接続したり、選択的に接続をしたりして、充電が制御される。
【0026】
なお、自家発電電源装置24の出力は、パワーコンディショナ18を通じて直接宅内配線15に供給されてもよいし、蓄電池26にいったん蓄積してから放電回路32を通じて使用されてもよい。また、蓄電池26は、送配電線路12から供給される電力の蓄積にも使用され、割安な夜間電力を蓄積することができる。
【0027】
[充放電回路]
蓄電池26の充放電のために以下の回路を備えている。
第1充電回路28は、自家発電電源装置24の電力を受け入れて要求されている直流電力を出力し蓄電池26を充電する回路である。第2充電回路30は、宅内配線15の電力を受け入れて要求されている直流電力を出力し、蓄電池26を充電する回路である。放電回路32は、蓄電池26の電力を受け入れて要求されている交流電力を出力し、宅内配線15に供給する回路である。
【0028】
第1充電回路28は、例えば、太陽光発電装置の出力する直流電圧を、蓄電池26の充電に適当な電圧に変換するDC−DCコンバータと、充電電流を制御する電流制御回路と、充電時間を制御するタイマー等を備える。第2充電回路30は、例えば、AC100ボルトの宅内配線15に接続して、蓄電池26の充電に適当な直流電圧に変換するAC−DCコンバータと、充電電流を制御する電流制御回路と、充電時間を制御するタイマー等を備える。放電回路32は、蓄電池26に接続して宅内配線15用の交流電圧を出力するDC−ACコンバータと過電流保護回路等を備える。
【0029】
[蓄電池の放電制御]
図1に示したシステムは、例えば、HEMS(ホームエネルギマネージメントサービス)管理サーバ34により制御されるとよい。HEMS管理サーバ34は、一般住宅等の建物内部のエネルギ供給量とエネルギ消費量とを詳細にモニターして、その結果をディスプレイ40に表示したり、例えば、エアコンの運転を制御して、適正温度に制御するといった機能を持つ。この実施例では、このHEMS管理サーバ34に、蓄電池26の充電制御機能を付与する。なお、蓄電池26の充電制御専用のコンピュータを使用しても、同様の制御が可能である。
【0030】
図1に示したHEMS管理サーバ34は、既知のコンピュータであって、演算処理装置36と記憶装置38とを備える。演算処理結果を表示するためのディスプレイ40は、例えば、タッチパネルによりデータ入力のためのインタフェースを兼ねることができる。
【0031】
演算処理装置36の部分に示した各手段は、コンピュータプログラムによって機能する機能ブロックである。HEMS制御手段42と負荷電流測定手段44と充電電流計算手段46と蓄電池充電制御手段48とが設けられている。記憶装置38には、演算処理のために、図2に例示したような、各種のデータが記憶される。これらを総合して、図1では、HEMS管理データ50と表示した。
【0032】
負荷電流測定手段44は、スマートメータ20を通じて送配電線路14からの受電電力を監視して、宅内機器22に供給される負荷電流ILを測定する機能を持つ。充電電流計算手段46は、測定された負荷電流ILと蓄電池26の充電電流IBとを加算したとき、受電電力PTに関する契約電力容量PKから求められる最大許容負荷電流IAを越えない範囲で、蓄電池26の適正充電電流IBBを計算する機能を持つ。
【0033】
蓄電池充電制御手段48は、蓄電池26を適正充電電流IBBで充電するとともに、測定された負荷電流ILが一定量ICだけ変化するたびに、蓄電池26の適正充電電流IBBを再計算して、蓄電池26の充電電流を変更する機能を持つ。実際の充電電流は、計算をして得た適正充電電流IBB以下であればよい。また、実際には、負荷電流ILが一定量IC以上変化したことを検出したときに、蓄電池26の適正充電電流IBBを再計算すればよく、負荷電流ILの検出タイミングは任意である。
【0034】
図2は、上記の演算処理に使用するデータの例を示す説明図である。
図のデータ50〜78は、図1に示した記憶装置38に記憶されている。HEMS管理データ50は、既知のHEMS管理のために使用するデータで、この発明には関係しないので説明を省略する。データ52〜70はそれぞれアルファベットで示したので、説明中での数字の符号は省略する。
【0035】
本発明では宅内機器22の使用を妨げないように、許容量の範囲で蓄電池26に充電電流IBを供給する。最大許容負荷電流IAは、例えば、50A契約では50Aと設定すればよい。また、後で説明するように、一台のブレーカを通じて電力を供給する部屋毎に、最大許容負荷電流IAを設定して、その部屋で充電される蓄電池の充電電流IBを制御してもよい。従って、最大許容負荷電流IAは契約電力容量PKの制限下で任意に設定される。
【0036】
また、自家発電電源装置24を利用して蓄電池26の充電を行う場合には、自家発電電源装置24の発電電力PGが問題になる。太陽光発電装置の場合には、最適動作点での動作電流の範囲内で運転をすることが好ましい。この最適動作点での動作電流を最大動作電流IGAと表現した。最大動作電流IGAについても、自家発電電源装置24の特性等を考慮して、任意に設定をしてよい。各データは、それぞれ図2の右側に示した演算式に代入して使用される。
【0037】
なお、受電設備や電気機器の容量は電力で表示されるものが多いが、商用電源の受電電圧は一定だから、電流値に着目して計算をするとよい。100ボルト系と200ボルト系の2系統の宅内配線がある場合には、いずれか一方、例えば、100ボルト系に換算をして上記の電流値の計算をするとよい。
【0038】
自家発電電源装置24が太陽光発電装置の場合は、直流電流が出力されるから、蓄電池26の充電電流IBは直流電流値で計算をしてよい。蓄電池26を充電中は、パワーコンディショナ18内部のDC/AC変換器を介して、自家発電電源装置24から宅内機器22へ電力が供給される。このときの宅内機器22の負荷電流ILは、DC/AC変換器のDC入力電流値を使用するとよい。また、電気自動車等、各種の蓄電池を充電する場合には、蓄電池特性データ79を予め記憶装置38に記憶させておくとよい。これにより、蓄電池26の充電電流特性等を考慮した充電制御ができる。各データの具体的な内容は、動作説明のところで説明する。
【0039】
図3は、充電制御の説明図である。
図の横軸は1日の時間の経過を示す。縦軸は電流値で、太い実線は宅内機器22の負荷電流ILの時間変化を示す。負荷電流ILは、例えば、宅内配線15に接続された全ての宅内機器22の負荷電流の合計値で、一時間毎の平均値を表示している。最上部の一点鎖線の直線は、契約電力容量PKから求められる最大許容負荷電流IAである。
【0040】
充電電流計算手段46(図1)は、負荷電流をILとし、蓄電池26の充電電流をIBとし、最大許容負荷電流をIAとしたとき、IA−(IL+IB)が負荷電流の予備分IRとなるように制御する。即ち、(IL+IB)が(IA−IR)を越えない範囲で蓄電池26の適正充電電流IBBを計算する。IRは、他の宅内機器22の使用を妨げないように余裕を持たせるためのもので、例えば、最大許容負荷電流をIAの10%というように設定してもよい。
【0041】
また、宅内配線15に接続された全ての宅内機器22のうち、単体で起動したときに最大の負荷電流が流れる宅内機器22の負荷電流を求めて、それをIRに設定してもよい。これにより、蓄電池の充電中に利用者がどの宅内機器22を起動しても、ブレーカが作動することはない。以上のように、例えば、毎時間負荷電流ILを測定して、そのつど適正充電電流IBBを計算し、適切な充電電流に変更する。こうして、図3中の破線のように、時間的に動的に変化する充電電流となる。最大許容負荷電流をIAを示す一点鎖線の直下の一点鎖線は、(IL+IB)を示している。これ以下の充電電流を選択すれば、許容値の範囲内で効率良く蓄電池26を充電することができる。
【実施例2】
【0042】
図4は別の充電制御の説明図である。
図4のグラフの形式は図3と同様である。この実施例では、宅内機器22の負荷電流ILが一定値IC以上(例えば、10アンペア以上)変化したとき、蓄電池の充電電流IBを変更するように制御する。そのときの電流値の計算方法は図3の例と同様でよい。また、宅内機器22の負荷電流ILが閾値(例えば、最大許容負荷電流IAの80%)を越えたときは自動的に充電電流IBを遮断する。
【0043】
図3や図4を見てわかるように、送配電線路から深夜電力を受電できる時間帯は、比較的大電流での充電が可能である。一方、昼間に自家発電電源装置24を使用して蓄電池26を充電する場合にはきめの細かい制御が必要になる。なお、充電する蓄電池の充電完了時刻に指定がなければ、小さい電流で充電をし、例えば、昼間は自家発電電源装置24から充電して、残りは深夜電力を充電するといった制御が可能である。
【0044】
この場合には、自家発電電源装置24を使用して蓄電池の充電を開始して、充電が中断したときには、指定された時刻まで待って充電を再開するように制御する。廉価な夜間電力送電開始時を、充電再開時刻に指定しておくとよい。また、逆に廉価な夜間電力を使用して充電を開始しても、充電が完了しないまま、夜間電力送電時刻を過ぎたときには、充電を中断させる。そして、自家発電電源装置24が動作する時刻に充電を再開するとよい。
【実施例3】
【0045】
図5は、ディスプレイに表示された蓄電池モニター画面説明図である。
図のような画面がディスプレイ40(図1)に表示されれば、利用者は、宅内機器22の使用状況と蓄電池26の充電状況とを同時に監視できる。図の帯グラフは、現在使用されている宅内機器22の消費電力を横幅で表し、色分けをしたものである。これにより、利用者はどの機器がどの程度電力を消費しているかを理解できる。
【0046】
この状態で、蓄電池26の現在の充電量が2色に色分けして表示される。この例では約50%充電が完了していることを示している。蓄電池のアイコンの右側に、現在の充電電流で充電を続けた場合の充電終了時刻が表示されている。他の宅内機器22による使用電力の合計が少ないほど、充電終了までの時間が短くなるとわかれば、利用者は節電を意識するという効果がある。
【0047】
また、図1に示したHEMS管理サーバ34が、例えば、エアコンを自動的にオンオフ制御することがある。エアコンは起動時に大電流を必要とするから、一時的に許容値を越える負荷電流が流れるおそれがある。蓄電池26の充電は自由に遮断しても弊害は無い。そこで、HEMS管理サーバ34がいずれかの宅内機器22を自動的にオンするときに、蓄電池充電制御手段48は、蓄電池26の充電を一時停止するとよい。この一時停止時間は、例えば、一分程度で構わない。
【0048】
また、図5に示すような画面を使用して、HEMS管理サーバ34に、蓄電池26の充電を完了する希望時刻を設定しておくこともできる。HEMS管理サーバは、充電開始時刻から充電終了時刻までの、他の電力機器の分を含めた負荷電流の合計値が許容値を越えない範囲で最大の充電電流を供給する。逆に十分に余裕があれば、低い充電電流で長時間をかけて充電をするとよい。
【実施例4】
【0049】
図6は複数の蓄電池がある場合の蓄電池モニター画面説明図である。
例えば、建物内部で自家発電電源装置24や廉価な夜間電力の充電用とされた蓄電池と、電気自動車用の蓄電池の両方について、同時に充電を要求する場合がある。また、例えば、建物の内部の部屋毎に、別々の蓄電池を設置しているような場合がある。この場合に同時並行して充電をすると、充電電流が大きくなり、他の宅内機器22の使用を制限してしまう。
【0050】
そこで、例えば、図2に示した蓄電池特性データ79に、各蓄電池の充電特性とともに、充電の優先度や、あるいは、充電終了時刻の指定データを入力しておく。蓄電池充電制御手段48は、図6に示すように、充電の対象となる蓄電池のアイコンを表示する。アイコンの下には、蓄電池を識別する記号(蓄電池01等)と、各蓄電池26の充電の開始時刻76と充電の終了時刻78とを表示している。アイコンの着色をした部分は充電量の割合を示す。左側二つはフル充電されており、三番目は50%充電済み、一番右は未充電である。
【0051】
このように、蓄電池充電制御手段48は、各蓄電池26の充電の開始時刻76と充電の終了時刻78とをそれぞれ時間的にシフトさせて、宅内機器22の負荷電流と蓄電池26の充電電流の合計値を適正範囲に制御する。即ち、充電すべき蓄電池が複数ある場合には、同時に充電をせずに、例えば、優先順に充電のタイミングをシフトさせて、充電電流を平準化することができる。
【0052】
図7は複数の蓄電池に対する充電制御回路である。
図のように、例えば、4個の蓄電池26への充電が要求されている場合に、各蓄電池26をスイッチ82を介して給電線80に接続する。給電線80から充電用の電流が供給されるものとする。この回路で、蓄電池充電制御手段48がスイッチ82を交互にオンオフして、各蓄電池26を充電する。充電の優先度がある場合や、どの蓄電池26も充電終了時刻の指定がないときは、例えば、左の端から順番に充電をするように制御する。一個蓄電池の充電が終了したら次の一個を充電するというように制御する。
【0053】
また、全ての蓄電池の充電を、ほぼ同じ時刻に終了させたいことがある。例えば、複数の蓄電池を並列接続して使用する用途があるような場合である。このときは、例えば、各蓄電池に約10分毎に充電をしては接続を切り替え、短い間隔で交互に充電するよう制御するとよい。そのつど充電電流が異なる場合には、充電電流と充電時間の積が一定になるようにして、交互に充電をするよう制御するとよい。
【0054】
図8は蓄電池が複数のブレーカに隔てられた回路に接続されている状態での、充電制御回路である。
この図のように、複数の蓄電池が、例えば、別々の部屋に配置されており、それぞれ別々のブレーカ84を介して宅内配線15に接続されていることがある。ガレージに駐車された電気自動車の蓄電池もこの回路に接続されている。このような場合には、各ブレーカ84の動作電流を最大許容負荷電流IAとして制御するとよい。また、この制御とあわせて、図1に示した分電盤16の場所で、建物内部の全宅内機器22に供給される負荷電流を測定して、実施例1の制御をするとよい。
【符号の説明】
【0055】
10 蓄電池充電制御システム
14 送配電線路
15 宅内配線
16 分電盤
18 パワーコンディショナ
20 スマートメータ
22 宅内機器
24 自家発電電源装置
26 蓄電池
27 電気自動車
28 第1充電回路
30 第2充電回路
32 放電回路
33 スイッチ回路
34 HEMS管理サーバ
36 演算処理装置
38 記憶装置
40 ディスプレイ
42 HEMS制御手段
44 負荷電流測定手段
46 充電電流計算手段
48 蓄電池充電制御手段
50 HEMS管理データ
52 受電電力PT
54 負荷電流IL
56 充電電流IB
58 契約電力容量PK
60 最大許容負荷電流IA
62 負荷電流の予備分IR
64 適正充電電流IBB
66 発電電力PG
68 最大動作電流IGA
70 一定値IC
72 エネルギ使用基準
76 充電の開始時刻
78 充電の終了時刻
79 蓄電池特性データ
80 給電線
82 スイッチ
84 ブレーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送配電線路からの受電電力を監視して宅内機器に供給される負荷電流を測定する負荷電流測定手段と、
測定された前記負荷電流と蓄電池の充電電流とを加算したとき、前記受電電力に関する契約電力容量から求められる最大許容負荷電流を越えない範囲で、前記蓄電池の適正充電電流を計算する充電電流計算手段と、
前記蓄電池を適正充電電流で充電するとともに、測定された前記負荷電流が一定量以上変化するたびに、前記蓄電池の適正充電電流を再計算して、前記蓄電池の充電電流を変更する蓄電池充電制御手段とを備えたことを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項2】
自家発電電源装置の発電電力を監視して宅内電力機器に供給される負荷電流を測定する負荷電流測定手段と、
前記測定した負荷電流と蓄電池の充電電流とを加算したとき、自家発電電源装置の発電電力に対応する最大動作電流を越えない範囲で、前記蓄電池の適正充電電流を計算する充電電流計算手段と、
前記蓄電池を前記適正充電電流で充電するとともに、測定された前記負荷電流と前記自家発電電源装置の発電電力が一定量以上変化するたびに、前記蓄電池の充電電流を再計算して、前記蓄電池の充電電流を変更する蓄電池充電制御手段とを備えたことを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
前記充電電流計算手段は、
前記負荷電流をILとし、前記蓄電池の充電電流をIBとし、最大許容負荷電流をIAとし、IA−(IL+IB)を負荷電流の予備分IRとしたとき、
負荷電流の予備分IRを、単体で起動したときに最大の負荷電流が流れる電力機器の負荷電流以上になるように、前記蓄電池の充電電流を設定することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項4】
請求項2に記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
前記負荷電流をILとし、前記蓄電池の充電電流をIBとし、前記最大動作電流をIGAとし、IGA−(IL+IB)を負荷電流の予備分IRとしたとき、
負荷電流の予備分IRを、単体で起動したときに最大の負荷電流が流れる電力機器の負荷電流以上になるように、前記蓄電池の充電電流を設定することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
前記蓄電池充電制御手段は、
前記宅内機器に供給される負荷電流と、前記適正充電電流で充電した場合の蓄電池の充電終了時刻とをディスプレイに表示することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
自家発電電源装置から第1充電回路を使用して蓄電池の充電を開始して、充電が中断したときには、指定された時刻まで待って充電を再開するように制御することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
送配電線路から第2充電回路を使用して蓄電池の充電を開始して、充電が中断したときには、指定された時刻まで待って充電を再開するように制御することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
前記宅内機器の使用状態を監視して、予め設定したエネルギ使用基準に従って前記宅内機器を自動的にオンオフしてそのエネルギ使用量を制御するHEMS管理サーバが設けられており、HEMS管理サーバがいずれかの宅内機器を自動的にオンするときに、前記蓄電池充電制御手段は、前記蓄電池の充電を一時停止することを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
前記蓄電池充電制御手段は、
充電をするべき蓄電池が複数あるとき、各蓄電池の充電の開始時刻と充電の終了時刻とををそれぞれ時間的にシフトさせて、宅内機器の負荷電流と蓄電池の充電電流の合計値を適正範囲に制御することを特徴とする蓄電池充電制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191773(P2012−191773A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53850(P2011−53850)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】