説明

蓄電素子

【課題】蓄電素子の筐体からの排出ガスを案内する部材との接続を容易に行えるようにする。
【解決手段】筐体BC表面に、安全弁21aが備えられている蓄電素子において、前記筐体BCに、筐体BC外方側へ柱状に突出する突出部21が形成され、前記安全弁21aが前記突出部21に備えられている。
これによって、蓄電素子の筐体の表面から柱状に突出する突出部に安全弁を備えているので、安全弁が筐体表面に沿って平面的に配置されているような構成と比べて、安全弁からの放出ガスを排出案内する部材との接続が行い易いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体表面に、安全弁が備えられている蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる蓄電素子は、例えば下記特許文献1にも記載のように、筐体の内圧が過度に上昇したときに、上昇した内圧によって薄肉部を破断させて、筐体内のガスを排出させる、いわゆる安全弁が備えられる場合が多い。
下記特許文献1では、更に、安全弁から排出ガスを案内するガイドを筐体に備えて、排出ガスを筐体から離れた場所に移動させるようにしている。
これによって、排出ガスの滞留による種々の弊害を排除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−178736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成では、例えば筐体への配管の取り付け等の、安全弁からの放出ガスを排出案内するための部材との接続作業が煩雑なものとなっていた。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、蓄電素子の筐体からの排出ガスを案内する部材との接続を容易に行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の第1の発明は、筐体表面に、安全弁が備えられている蓄電素子において、前記筐体に、筐体外方側へ柱状に突出する突出部が形成され、前記安全弁が前記突出部に備えられている。
すなわち、蓄電素子の筐体の表面から柱状に突出する突出部に安全弁を備えているので、安全弁が筐体表面に沿って平面的に配置されているような構成と比べて、安全弁からの放出ガスを排出案内する部材との接続が行い易いものとなる。
【0006】
又、本出願の第2の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記安全弁は、前記筐体と一体成形された前記突出部の一部を薄肉化した薄肉部として形成されている。
すなわち、突出部に安全弁を備えるについては、安全弁を有する部材を別途作製して、その部材を突出部に固定するという構成も可能であるが、筐体と一体成形されている突出部自体に対して薄肉化の加工処理を施して薄肉部を形成することで、構成の簡素化を図れる。
【0007】
又、本出願の第3の発明は、上記第2の発明の構成に加えて、前記薄肉部は、前記突出部の周方向に沿って環状に形成されている。
従って、筐体の内圧が上昇して薄肉部が破断するとき、突出部が大きく破断することになり、排出ガスが効率良く排出される。
【0008】
又、本出願の第4の発明は、上記第3の発明の構成に加えて、前記薄肉部は、前記突出部の頂部寄りの位置に形成されている。
すなわち、安全弁を構成する薄肉部が突出部の頂部寄りの位置に存在するので、突出部の基端部に形成される場合に比べて、安全弁からの放出ガスを排出案内する部材との接続のためのスペースを確保し易いものとなる。
【0009】
又、本出願の第5の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記安全弁は、前記筐体とは別部材として形成されて、前記突出部に取り付けられている。
すなわち、安全弁を蓄電素子の筐体とは別部材として構成することで、安全弁を突出部に組み付けるだけで、安全弁を突出部に配置することができ、突出部自体を加工して安全弁を形成する構成に比べて、突出部の加工作業等の手間が軽減される。
【0010】
又、本出願の第6の発明は、上記第1〜第5のいずれかの発明の構成に加えて、前記突出部に、前記安全弁が破断したときにガスを排出案内する配管が外嵌状態で接続される。
すなわち、筐体に備えられる突出部と安全弁の放出ガスを排出案内する配管との接続を、突出部に上記配管を外嵌状態で嵌め込むという簡単な作業で行うことができる。
【0011】
又、本出願の第7の発明は、上記第6の発明の構成に加えて、前記突出部における前記安全弁の存在位置よりも基端側位置に、前記配管の先端側に形成された係合部と係合する被係合部が形成されている。
従って、突出部に対して外嵌状態で上記配管を接続したときに、上記配管の先端側部分に形成されている係合部が、突出部に形成された被係合部と係合作用して、上記配管を安定的に抜け止めする。
【0012】
又、本出願の第8の発明は、上記第1〜第7のいずれかの発明の構成に加えて、前記突出部の外形形状が、円柱形状に形成されている。
従って、突出部の断面形状が方向性のない形状となり、安全弁からの放出ガスを排出案内する部材との接続作業も一層簡単に行える。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、蓄電素子の筐体側と、蓄電素子の筐体からの排出ガスを案内する部材との接続を容易に行えるものとなり、蓄電素子の利便性を向上させることができる。
又、上記第2の発明によれば、突出部自体に対して薄肉化の加工処理を施して薄肉部を形成することで、突出部と薄肉部とを一体化して構成することができ、構成の簡素化を図れる。
又、上記第3の発明によれば、突出部が大きく破断して、排出ガスが効率良く排出されるので、電池筐体の内圧を迅速に低圧化することができる。
又、上記第4の発明によれば、安全弁からの放出ガスを排出案内する部材との接続のためのスペースを確保し易いものとなり、接続作業を一層行い易いものとできる。
【0014】
又、上記第5の発明によれば、突出部の加工作業等の手間が軽減される。
又、上記第6の発明によれば、筐体に備えられる突出部と安全弁の放出ガスを排出案内する配管との接続を、突出部に上記配管を外嵌状態で嵌め込むという簡単な作業で行うことができる。
又、上記第7の発明によれば、上記配管側の係合部と突出部側の被係合部との係合作用により、上記配管が安定的に抜け止めされるので、蓄電素子の取り扱いが容易となる。
又、上記第8の発明によれば、突出部の断面形状を方向性のない形状として、安全弁からの放出ガスを排出案内する部材との接続作業も一層簡単に行える。
しかも、安全弁からの放出ガスを排出案内する配管を突出部に接続する場合には、その配管として、一般的な円筒形状の配管を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電池の外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態にかかる電池の内部構成を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態にかかる電池の内部構成を示す正面図
【図4】本発明の実施の形態にかかる要部斜視図
【図5】本発明の実施の形態にかかる要部断面図
【図6】本発明の別実施形態にかかる電池の内部構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の蓄電素子の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態では、蓄電素子として電池、より具体的には、二次電池の1例である非水電解液二次電池(例えばリチウムイオン電池)を例示して説明する。
本実施の形態の非水電解液二次電池RBは、図1及び図2の斜視図並びに図3の正面図に示すように、金属製の缶体1と金属製の蓋部2とを備える電池筐体BC(以下において、単に「筐体BC」と称する)を有している。
缶体1は、扁平な有底筒状(より具体的には有底矩形筒状)に形成され、それの扁平面と直交する1側面を開放面としている。蓋部2は、略平板状で短冊状の長方形に形成されており、缶体1の開放面を覆う姿勢で配置されて、缶体1と溶接されている。
扁平な有底矩形筒状の缶体1と缶体1の開放面を覆う短冊形状の蓋部2とによって、筐体BCは全体として扁平な直方体形状を有している。尚、図1は、蓋部2に形成されている安全弁(後述)にガス排出用の配管PPを接続した状態を示しており、図2は、完成した二次電池RB(図1に示すもの)から缶体1を除いた状態を示しており、更に、図3においても、缶体1及び後述の蓄電要素3を2点鎖線で示して、筐体BCの内部を透視した形態で示している。
【0017】
筐体BCの内方側には、図2及び図3に示す蓄電要素3と集電体4,6とが電解液に浸される状態で収納配置されている。
尚、本実施の形態では蓄電素子として二次電池RBを例示して説明しているので、以下において、「蓄電素子3」を、電池についての呼称として一般的な「発電要素3」と称する。
発電要素3は、長尺帯状の箔状正極板と長尺帯状の箔状負極板とを長尺帯状のセパレータを挟んで巻芯周りに扁平形状に巻回することで、箔状正極板と箔状負極板とを積層したもので、箔状正極板と箔状負極板とからなる一対の電極板の夫々に活物質を表裏両面に塗布して構成されている。
箔状正極板及び箔状負極板には、幅方向の一端側に活物質を塗布しない未塗工部3a,3bを形成しており、その未塗工部3a,3bを、横幅方向で互いに逆側に突出させる配置にして巻回している。
発電要素3が筐体BCに収納された状態では、箔状正極板等の巻回軸芯が蓋部2の長手方向と平行で、且つ、発電要素3の扁平面と筐体BCの扁平面とが平行となっている。
【0018】
正極側の集電体4と負極側の集電体6とは、いずれも金属製の板材を加工して同一形状に形成されているが、正極側の集電体4はアルミニウム製であり、負極側の集電体6は銅製である。
集電体4,6の概略的な形状は、蓋部2の長手方向に沿う姿勢の部分と、缶体1の縦壁(扁平面と直交する縦壁)に沿う姿勢の部分との略L字状に形成され、蓋部2に沿う姿勢の部分で蓋部2へ固定され、縦壁に沿う姿勢の部分に形成されている接続部4a,6aで発電要素3を支持している。
正極側の集電体4の接続部4aが、側面視で渦巻き状に巻回されている箔状正極板の未塗工部3aの存在空間に入り込み、負極側の集電体6の接続部6aが、側面視で渦巻き状に巻回されている箔状負極板の未塗工部3bの存在空間に入り込んで、束ねられた未塗工部3a,3bが、夫々、接続部4a,6aと接合されている。
【0019】
集電体4,6の蓋部2への固定は、一対の電極端子である端子ボルト5,7の頭部側に一体形成されているリベット部5a,7aによって行っている。尚、正極側の端子ボルト5はアルミニウム製であり、負極側の端子ボルト7は銅製である。
図3に概略的に示すように、正極側では、蓋部2の筐体BC内方側において、集電体4の上部(蓋部2に沿う部分)と蓋部2の下面との間に下部ガスケット10を挟み込み、蓋部2の筐体BC外方側において、端子ボルト5と蓋部2とで上部ガスケット9を挟み込み、上部ガスケット9,蓋部2,下部ガスケット10及び集電体4に対してリベット部5aを貫通させ、そのリベット部5aの筐体BC内方側端部をかしめる。これによって、集電体4の蓋部2への固定と、端子ボルト5に対する電気配線とを行う。
【0020】
負極側の構成も同様であり、樹脂製の上部ガスケット11,蓋部2,樹脂製の下部ガスケット12及び集電体6を正極側と対称配置として、これらに対してリベット部7aを貫通させ、そのリベット部7aの筐体BC内方側端部をかしめることで、集電体6の蓋部2への固定と、端子ボルト7に対する電気配線とを行う。
上記の構成で各部材を連結することで、集電体4,6と端子ボルト5,7とがリベット部5a,7aを経て電気的に接続され、集電体4,6は、端子ボルト5,7と発電要素3との間の通電経路を構成している。
【0021】
蓋部2の筐体BC外方側の面には、端子ボルト5,7間の中央に、筐体BC外方側に柱状に突出する突出部21が形成されている。この突出部21は、図1に示すように、配管PPを接続するためのものであり、突出部21に対して配管PPが外嵌状態で接続される。
突出部21は、図4の拡大図に示すように、概略的な外形形状が円柱形状としてあり、図5の拡大断面図にも示すように、内部は空洞となっている。
二次電池RBの筐体BC表面には、筐体BCの内圧が設定圧より上昇したときに破断する安全弁が備えられており、この安全弁は上記突出部21に配置されている。
上記安全弁は、筐体BCと一体形成された突出部21の一部を薄肉化した薄肉部21aとして形成されており、この薄肉部21aは、突出部21の頂部寄りの位置において、突出部21の周方向に沿って環状に形成されている。筐体BCの内圧が設定圧より上昇したときに、この薄肉部21aが破断して、突出部21の頂部側が開放し、筐体BC内のガスを排出する。
【0022】
突出部21に接続する配管PPは、薄肉部21aが破断して筐体BCから放出されるガスを排出案内するものであり、配管PPの先端側には、配管PPを突出部21と連結するための連結具31が備えられている。配管PPの本体部分である管体の材質は、金属,ガラス繊維,テフロン(登録商標)あるいはポリイミド等を用いれば良い。
この連結具31は、本実施の形態では、いわゆる水栓用のカプラと同様の構成とした場合を例示しており、図5において2点鎖線で示すように、連結具31の径方向に出退可能な球体31aを、突出部21における薄肉部21aの形成位置よりも基端側位置に形成した凹溝21bと係合させることにより、連結具31の抜け止めをしている。
換言すると、配管PPの先端側に形成された係合部である球体31aと、突出部21側に形成された被係合部である凹溝21bとの係合作用によって配管PPの抜け止めをしている。
【0023】
球体31aは、周方向に複数個(例えば、4個)に並べて配置され、これに対応して、突出部21の凹溝21bも突出部21の周方向に沿って環状に形成している。
球体31aは、連結具31の内筒31bによって、図5に示す位置よりも径方向内側へ移動しないように保持されており、上記内筒31bに対して軸方向にスライド移動可能に保持されている外筒31cが先端側位置(図5で示す位置)に位置する状態で、外筒31cの内面に球体31aが接当して、球体31aの径方向外側への移動が阻止される。この状態で、球体31aと凹溝21bとが係合作用して、連結具31の抜け止めをしている。
連結具31を突出部21から離脱させるときは、図5において矢印Aで示す方向に外筒31cをスライド移動させることで、球体31aが径方向外側に移動できる状態となり、連結具31を突出部21から引き抜くと、球体31aと凹溝21bとの係合が解除される。
【0024】
突出部21は、蓋部2をプレス加工することにより形成しており、蓋部2の中央位置を複数回のプレス加工によって筐体BC外方側に有底円筒形状に突出させ、その後、その突出加工部分の内外からの加圧によって薄肉部21aを形成し、更に、凹溝21bを形成する。すなわち、薄肉部21aは、突出部21の一部を薄肉化することによって形成されている。
薄肉部21aの最薄部分の厚さは、薄肉部21aを破断させたい筐体BC内圧力や蓋部2の材質等に応じて実験により設定する。
【0025】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)上記実施の形態では、突出部21に、連結具31の抜け止めをするための凹溝21bを形成する場合を例示しているが、連結具31を抜け止めするための構成は種々に変更可能であり、例えば、図6に示すように、突出部21の外周面に雄ネジとなるネジ山41(被係合部)を形成し、連結具31に、そのネジ山41に適合する雌ネジ(係合部)を形成する構成としても良い。
薄肉部21aの形状及び形成位置は、上記実施の形態と同様で良い。
(2)上記実施の形態では、突出部21を蓋部2に形成する場合を例示しているが、突出部21の形成位置は、二次電池RBの形状や配置形態に応じて適宜に変更可能であり、例えば、上記実施の形態における缶体1の側面に形成するようにしても良い。
(3)上記実施の形態では、筐体BC自体に安全弁である薄肉部21aを形成する加工を施して、突出部21を構成しているが、一部を薄肉化する等した弁体を有する安全弁を、筐体BCとは別部材として形成して、その安全弁を、筐体BCから外方側に突出した突出形状部分に溶接等によって固定することによって突出部21を構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0026】
21 突出部
21a 薄肉部(安全弁)
BC 筐体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体表面に、安全弁が備えられている蓄電素子であって、
前記筐体に、筐体外方側へ柱状に突出する突出部が形成され、
前記安全弁が前記突出部に備えられている蓄電素子。
【請求項2】
前記安全弁は、前記筐体と一体成形された前記突出部の一部を薄肉化した薄肉部として形成されている請求項1記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記突出部の周方向に沿って環状に形成されている請求項2記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記薄肉部は、前記突出部の頂部寄りの位置に形成されている請求項3記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記安全弁は、前記筐体とは別部材として形成されて、前記突出部に取り付けられている請求項1記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記突出部に、前記安全弁が破断したときにガスを排出案内する配管が外嵌状態で接続される請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記突出部における前記安全弁の存在位置よりも基端側位置に、前記配管の先端側に形成された係合部と係合する被係合部が形成されている請求項6記載の蓄電素子。
【請求項8】
前記突出部の外形形状が、円柱形状に形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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