説明

蓋材およびそれを用いた包装体

【課題】印刷層の視認性を向上させると同時に、基材層が破れにくい蓋材等を生産効率よく提供することである。また、作業環境や環境保護の観点からも好ましく、印刷を施した材料をストックする必要がなく、印刷デザインの変更が容易な蓋材等を提供することである。
【解決手段】蓋材10を、外面から内面にむけて、フレキソ印刷層11、基材層12、樹脂フィルム層13、熱接着層14を順次積層して形成したのである。また食品等の容器の蓋に、蓋材10を用いた包装体を形成したのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品等の容器の蓋材およびそれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来食品等の容器の蓋材の代表的な例として、特許文献1に示すように、蓋材の外面から内面に向けて順に、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の外装樹脂フィルム、グラビア印刷層、アルミニウム箔または紙、熱接着層を積層したものが知られている。このような従来の蓋材では、次のような諸問題があった。
【0003】
第一に、グラビア印刷には多量の溶剤が必要な為、完全に乾燥させるのに長時間かかる上、作業環境や環境保護の観点からも好ましくない。第二に、製造工程の初期段階でグラビア印刷を施す必要がある為、印刷デザインの変更が困難であり、また、印刷を施した材料をストックする必要がある。第三に、外装樹脂フィルムが最外層となる為、外装樹脂フィルムによる光の反射や屈折が生じ、印刷層が見えにくくなる。第四に線シールを施した場合に、アルミニウム箔または紙層が破れ易い。
【特許文献1】特開平9−323377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明の課題は、印刷層の視認性を向上させると同時に、基材層が破れにくい蓋材等を生産効率よく提供することである。また、作業環境や環境保護の観点からも好ましく、印刷を施した材料をストックする必要がなく、印刷デザインの変更が容易な蓋材等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為、この発明の蓋材は、外面から内面に向けて、フレキソ印刷層、基材層、樹脂フィルム層、熱接着層を順次積層して形成したのである。フレキソ印刷層には、紫外線硬化型インキを用いるのがよい。また、紫外線硬化型インキは無溶剤であって、耐熱性を有するのがよい。
【0006】
ここで基材層は、紙またはアルミニウム箔を含むのがよい。また、基材層としてアルミニウム箔を使用する場合は、アルミニウム箔の少なくとも一面がプライマーコート処理されているのが好ましい。アルミニウム箔の厚みは、5〜100μmとするのがよい。
【0007】
樹脂フィルム層は、厚み3〜25μmのポリエステル系フィルムからなるのが好ましい。また、フレキソ印刷層の外面に、オーバーコート処理がなされているのが好ましい。
【0008】
この発明の蓋材は、フランジを有する容器の当該フランジに熱接着して包装体として使用でき、特に線シールして包装体とするのがよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、蓋材の印刷がフレキソ印刷により行われているため、溶剤を必要とせず、乾燥工程を要しない。そのため、短時間低コストで生産効率よく製作することができ、作業環境や環境保護の観点からも好ましい。また、最終工程で印刷を施すことができるので、印刷前の原反をストックすることができる。さらに、フレキソ印刷版は、グラビア版に比べ、印刷デザイン等の変更を簡単に行なうことができる。
【0010】
また、フレキソ印刷の場合、最外面に外装樹脂フィルムを積層する必要がないため、印刷層の視認性に優れる。基材層の下に樹脂フィルム層をもうけたことにより、クッション性が増すため、基材層が破れにくい蓋材を提供することができる。
【0011】
無溶剤の紫外線硬化型インキを用いることにより、硬化時間が短縮され、蓋材の生産性が向上する。また、耐熱性のある紫外線硬化型インキを用いることにより、外装保護フィルムが不要となった上、従来と同等以上の耐熱性を有する蓋材を提供できる。
【0012】
基材層に、紙を含ませることにより、蓋材の焼却性を向上できる。また、基材層に、アルミニウム箔を含ませることにより、蓋材のバリアー性を向上できる。また、基材層がアルミニウム箔を含む場合に、印刷層と基材との間にプライマーコート層を介在させた場合は、さらに印刷層の視認性に優れ、印刷層の密着性も向上する。アルミニウム箔の厚みを、5〜100μmとすることにより、より優れた耐水耐湿性、強度、包装体の取扱性、形状保持性等を得ることができる。
【0013】
樹脂フィルム層を、厚み3〜25μmのポリエステル系フィルムとすることにより、基材層に破れが生じにくい最適なクッション性が得られる。さらに、フレキソ印刷層の外面にオーバーコート処理を施すことにより、印刷層の損傷を防ぐことができる。
【0014】
この発明の蓋材を、フランジを有する容器のフランジに、熱接着、線シールしても樹脂フィルムの存在により、亀裂が生じることがないので、バリアー性を低下させることなく密封シールができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について説明する。図1に示すように、この発明の蓋材10は、外面から内面に向けて、フレキソ印刷層11、基材層12、樹脂フィルム層13、熱接着層14を順次積層したものである。
【0016】
基材層12は、少なくともアルミニウム箔または紙層を含むのがよい。特に食品包装用としては、バリアー性を有するアルミニウム箔を使用するのが好ましい。
【0017】
アルミニウム箔は、純アルミニウム箔又はアルミニウム系合金箔のいずれであっても良い。具体的には、純アルミニウム(JIS(AA)1000系、例えば1N30、1N70等)、Al−Mn系(JIS(AA)3000系、例えば3003、3004等)、Al−Mg系(JIS(AA)5000系)、Al−Fe系(JIS(AA)8000系、例えば8021、8079等)等が例示できる。アルミニウム箔に含まれるFe、Si、Cu、Ni、Cr、Ti、Zr、Zn、Mn、Mg、Ga等の成分については、JIS等で規定されている公知の含有量の範囲内であれば差し支えない。
【0018】
アルミニウム箔の厚みは5〜100μm、特に10〜60μmとすることが好ましい。このような範囲内に設定することによって、より優れた耐水耐湿性、強度、包装体の取扱性、形状保持性等を得ることができる。アルミニウム箔を用いる場合、硬質材、半硬材、軟質材等のいずれであっても良く、容器の形状、内容物の種類等に応じて適宜選択すれば良い。また、アルミニウム箔は、必要に応じ、公知の方法で型付け、脱脂・洗浄、アンカーコート、プライマーコート、表面処理等を施すことができる。
【0019】
基材層12に紙を用いる場合には、例えば純白ロール紙、クラフト紙、上質紙、模造紙、洋紙、和紙、各種のコート紙等を使用することができる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。紙の厚みは10〜200μm程度とすることが好ましい。基材層12に紙を用いた場合は、蓋材10の焼却性を向上させることができる。
【0020】
基材層12には、必要に応じて合成樹脂フィルム等を含ませてもよく、例えば厚み6〜50μmの樹脂フィルム、具体的にはポリアミド(ナイロン)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、PEN(ポリエチレンナフタレート)、塩化ビニリデン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等の1種または2種以上を使用でき、その他公知の包装材用樹脂フィルムを採用することもできる。これらの中でも特にポリアミド系樹脂たとえばナイロンや、ポリエステル系樹脂特にPETの使用が好ましい。基材層12に合成樹脂フィルムを用いた場合は、蓋材10の強度、耐水性、耐突き刺し性等を向上させることができる。
【0021】
また、基材層12には蒸着フィルムを含ませてもよく、前記合成樹脂フィルムの少なくとも片面に酸化アルミニウム、酸化ケイ素、金属アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等から選ばれる少なくとも1種を蒸着した蒸着フィルムを用いるのがよい。蒸着層の厚みは通常300〜1200オングストローム程度である。基材層12に蒸着フィルムを用いることにより、合成樹脂フィルムを用いた場合の効果に加えて、さらにバリアー性、すなわち耐湿性、耐酸素透過性を向上させることができる。
【0022】
この発明に用いる基材層12としては、用途、要求性能、コスト等に応じて、上述の少なくともアルミニウム箔または紙を用いればよく、さらに合成樹脂フィルム、蒸着フィルムを併用してもよい。2種以上または2層以上積層して用いる場合は、公知の方法により積層させればよく、例えば2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリオール系接着剤、ポリエステルポリウレタンポリオール系接着剤等を用いたドライラミネーション、共押出し、押出しコート、アンカーコート剤を用いた熱ラミネーション等による方法が採用できる。
【0023】
基材層12の一方の面には、樹脂フィルム層13を介して、熱接着層14が積層される。樹脂フィルム層13としては上記同様、例えば厚み6〜50μmの樹脂フィルム、具体的にはポリアミド(ナイロン)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、PEN(ポリエチレンナフタレート)、塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等の1種または2種以上を使用でき、その他公知の包装材用樹脂フィルムを採用することもできる。これらの中でも特に厚み3〜25μmのポリエステル系樹脂、特にPETの使用が好ましい。基材層12と熱接着層14との間に樹脂フィルム層13を介在させることにより、基材層12が破れることなく、エンボス加工や線シールを施すことができる。
【0024】
熱接着層14には、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖線状ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン変性樹脂、アクリル酸−スチレン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メチルメタアクリレート(MMA)、ブチルメタアクリレート(BMA)、エチレン−アクリル酸共重合体、EAA(エチレン−アクリル酸共重合体)、EMAA(エチレン−メタアクリル酸共重合体)、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)、EMAC(エチレン−メチルアクリレート共重合体)、アイオノマー、住友化学工業株式会社製ボンダイン(エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸三元共重合体)、東ソー株式会社製メルセンM(ポリオレフィン系接着性樹脂)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、カルボン酸変性EVA等の熱接着性樹脂から選ばれる少なくとも1種が採用でき、中でも塩化ビニル系共重合樹脂やカルボン酸変性ポリプロピレンの採用が好ましい。勿論その他公知のホットメルト樹脂やヒートシールラッカー等を用いることもできる。
【0025】
熱接着層14の厚みは2〜100μmが好ましく、2μm未満の場合には十分な接着力が得られにくく、100μmを超えてもコストアップや熱接着層14自体のバリアー性が低下する恐れがあるので、不必要に厚くする必要はない。なお、熱接着(ヒートシール)条件は使用する樹脂・フィルムによって適宜選択するものであるが、通常140〜260℃で1〜3秒程度である。
【0026】
樹脂フィルム層13および熱接着層14の積層は公知の方法により実施でき、例えばドライラミネーション、共押出し、押出しコート、アンカーコート剤を用いた熱ラミネーション等による方法が採用できる。
【0027】
基材層12の他方面には、直接フレキソ印刷を施しフレキソ印刷層11を形成するか、またはプライマーコート処理した後、フレキソ印刷を施しフレキソ印刷層11を形成すればよい。プライマーコート処理には、公知のプライマーコート剤を使用することが可能であり、マット剤を含むものを使用してもよい。プライマーコート剤には、ニトロセルロース系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体系(塩酢ビマレイン酸共重合体)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、ポリアミド系、アルキド系、ウレタン系、エポキシ系等を主成分とするプライマーコート剤を乾燥後重量で0.5〜5g/m2 程度となるよう塗布すればよい。マット剤としては炭酸カルシウム、クレー、シリカ、タルク、硫酸バリウム等のマット剤を使用すればよく、プライマーコート剤に適宜配合すればよい。通常、マット剤の配合量は、プライマーコート剤中1〜10重量%程度が好ましい。基材層12のフレキソ印刷を施す側の面、すなわち基材層12とフレキソ印刷層11との間にプライマーコート処理を施すことにより、基材層12とフレキソ印刷インキとの密着性を向上させることができ、特にマット剤を含有するプライマーコートを施すことにより、印刷層11の視認性が改善される。
【0028】
また、フレキソ印刷層11の外面、すなわち包装体にした場合の最外面は、そのままでもよいが、オーバープリントコートを施すかあるいは外装保護フィルムを積層することもできる。オーバープリントコート剤としては、ニトロセルロース系、アクリル系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリアミド系、アルキド系、塩化ゴム系等の樹脂を含むワニス等が使用でき、外装保護フィルムとしては、前記樹脂フィルム層と同様のものが使用できる。オーバープリントコートを施す場合は、できるだけ耐熱性のある樹脂を含むものが好ましく、後述の紫外線硬化型インキに用いる樹脂(ただし顔料を含まず)等を用いることもできる。
【0029】
フレキソ印刷は、ゴム版や樹脂版を利用した凸版印刷で、円筒形のシリンダーにゴム版や樹脂版(凸版)を巻付け、アニロックスロールによりインキを供給する。余分なインキはドクターブレードまたはドクターロールによりかき落とされる。凸版に付着したインキが被印刷面に押圧転写されるという印刷方法である。
【0030】
フレキソ印刷に使用するインキは、紫外線硬化型のものが好ましく、硬化後の耐熱温度が250℃以上であるのがさらに好ましい。紫外線硬化型インキとしては公知の紫外線硬化型インキが採用でき、例えば、特開2000−192260号公報や特許2712254号公報等に開示されている紫外線硬化型インキ並びに市販の紫外線硬化型インキを用いることができる。具体的には、平均分子量が800以上で分子内に平均1個以上のエポキシ基を含有する化合物や、分子内にアクリロイル基、メタクリロイル基またはその他の感光性の基とカルボキシル基とを含有する化合物や、これらの反応生成物および光重合開始剤を含有する紫外線硬化型インキ、主分子鎖内にウレタン結合を有するアクリレート樹脂にアジリジンを固形分比で、0.1〜10重量%添加した紫外線硬化型インキ、その他公知の紫外線硬化型インキを用いることが出来る。
【0031】
市販の紫外線硬化型インキとしては、大日本インキ化学工業製ルミキュアーDPA−600T、DPA−620、TMN−300、PEA−300、ETA−300、DTA−400、DCA−200、ダイキュアFL−01等、Sun Chemical社製ROYOFLEX−AL−F等が挙げられる。
【0032】
これらの紫外線硬化型インキには適宜必要に応じて光重合開始剤、顔料、添加剤、溶剤等が添加される。
【0033】
光重合開始剤としてはベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル、ベンゾイン及びそのアルキルエーテル、チオキサントン及びその誘導体、ルシリンTPO、チバスペシャルティケミカルズ製イルガキュア、フラッテリ・ランベルティ製エサキュア等がある。
【0034】
顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、チタンホワイト、その他公知の着色顔料を添加する他、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料が挙げられ、特にシリカは紫外線硬化型インキの硬化後、フィルムを巻きとる場合にブロッキング防止効果がある。
【0035】
添加剤としては、2−ターシャリブチルハイドロキノンなどの重合禁止剤、シリコン、フッ素化合物、アクリル重合物等の消泡剤、レベリング剤があり必要に応じて適宜添加する。溶剤は原則として不要であるが、必要に応じて添加することも可能である。
【0036】
溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ブタノール等の有機溶剤、それら2種以上の混合溶剤を使用することもできる。これらの溶剤を使用した場合は、紫外線硬化型インキを塗布印刷後乾燥することにより実質的に除去される。その後、紫外線を照射することにより塗膜、すなわち印刷層を硬化させ、印刷層の密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性等を向上させる。
【0037】
次に図2のように、この発明の包装体20は、容器21と、容器21に収納される内容物22と、容器21の開口部に熱接着される蓋材10とからなる。
【0038】
この発明の包装体20で用いられる容器21は、樹脂フィルムの成形容器、紙製容器、金属製容器、ガラス製容器、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン等の射出成形樹脂容器等のいずれであっても良く、内容物の種類に応じて材質、形状、成形方法等を適宜採用すれば良い。
【0039】
この発明の蓋材10は、図2のように、フランジ21aを有する容器21の当該フランジ21a上に熱接着することができる。特に熱接着後の断面形状が凹状または凸状になる線シール10a(リングシールともいう。)を施すのがよい。このような線シール10aは、ヒートシール時の熱板に凹条または凸条をリング状に設け、蓋材の周縁、すなわち容器フランジ21aの直上を加圧することにより得られる。通常ヒートシール時の温度は140〜260℃、圧力は2〜250kg/cm2 、時間は1〜3秒程度である。図2のように、断面を凹状にする場合は、凹部の幅0.5〜2mm程度、深さ0.2〜0.8mm程度とすればよい。凹条および凸条の断面形状は必ずしも矩形状である必要はなく、台形状、半円状、半楕円状、三角形状等の任意の形状であってもよい。
【0040】
包装体20の内容物22は、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の食品が最も適しているが、薬品、飲料品、洗剤・芳香剤等の化学品、電気・電子部品等であってもよい。
【実施例】
【0041】
以下、さらに詳細な実施例および比較例を挙げる。実施例および比較例について、印刷インキ耐熱性のテストと、線シール特性のテストおよび視認性のテストを行った。
【0042】
印刷インキ耐熱性のテストは、実施例および比較例のそれぞれについて、印刷側の面に200℃、225℃、250℃、275℃、300℃の各温度の熱板を5kg/cmで2秒間押し当てて、印刷インキが熱板に取られる度合いを観察することにより行った。
【0043】
線シール特性のテストは、PET容器のフランジに、約70φに打ち抜いた各蓋材を250℃100kg/cupで凹部の幅1mm、深さ0.5mmの線シールを施したときの基材層の状態を、倍率50の実体顕微鏡で観察することにより行った。
【0044】
視認性のテストは、5人のモニターにより、実施例および比較例のそれぞれについて、以下に述べる基準で、5段階により印刷層の鮮明性を評価し、その平均値を求めることにより行った。視認性のテストは、不鮮明でぼやけていると感じる場合には1を、やや不鮮明でややぼやけていると感じる場合には2を、鮮明とも不鮮明ともいえない場合には3を、どちらかというと鮮明で顔料本来の色に近いと感じる場合には4を、鮮やかな色彩を呈し顔料本来の色であると感じる場合には5を評価の点数とした。
【0045】
〔実施例1〕
実施例1として、外面から内面に向けて順に、紫外線硬化型インキのフレキソ印刷、プライマーコート(1g/m2 )、40μm軟質アルミニウム箔(μmは、厚みを示す。以下、同じ。)、ドライラミネート接着剤(3g/m2 )、12μm2軸延伸PETフィルム、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作製した。蓋材作製の方法は、アルミニウム箔の片面に塩酢ビマレイン酸共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体)及びアクリル酸樹脂を主成分とするプライマーコート剤を、グラビア方式で塗布後、反対面にポリエステル系ドライラミネート接着剤を用いて2軸延伸PETフィルムを積層し、そのPETフィルム面上にアクリル変性ポリウレタン系樹脂及びアクリル酸エステル系樹脂を主成分とするヒートシールコート剤をグラビア方式で塗布し、プライマーコート面に紫外線硬化型インキ(アクリル系モノマーを主成分とするSun Chemical社製ROYOFLEX−AL−F)のフレキソ印刷を施し、その後、紫外線を照射することにより印刷層を硬化させたものを適宜形状に打ち抜くことによった。
【0046】
〔実施例2〕
実施例2として、外面から内面に向けて順に、紫外線硬化型インキのフレキソ印刷、40μm軟質アルミニウム箔、ドライラミネート接着剤(3g/m2 )、12μm2軸延伸PETフィルム、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作製した。蓋材作製の方法は、アルミニウム箔の一方面にポリエステル系ドライラミネート接着剤を用いて2軸延伸PETフィルムを積層し、そのPETフィルム面上に、アクリル変性ポリウレタン系樹脂及びアクリル酸エステルを主成分とするヒートシールコート剤を、グラビア方式で塗布し、他方面に直接紫外線硬化型インキ(アクリル系モノマーを主成分とするSun Chemical社製ROYOFLEX−AL−F)のフレキソ印刷を施し、その後、紫外線を照射することにより印刷層を硬化させたものを適宜形状に打ち抜くことによった。
【0047】
〔実施例3〕
実施例3として、外面から内面に向けて順に、オーバープリントコート(1.5g/m2 )、紫外線硬化型インキのフレキソ印刷、プライマーコート(1g/m2 )、40μm軟質アルミニウム箔、ドライラミネート接着剤(3g/m2 )、12μm2軸延伸PETフィルム、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作製した。蓋材作製の方法は、アルミニウム箔の片面に塩酢ビマレイン酸共重合体及びアクリル酸樹脂を主成分とするプライマーコート剤を、グラビア方式で塗布後、反対面にポリエステル系ドライラミネート接着剤を用いて2軸延伸PETフィルムを積層し、そのPETフィルム面上に、アクリル変性ポリウレタン系樹脂及びアクリル酸エステル系樹脂を主成分とするヒートシールコート剤をグラビア方式で塗布し、プライマーコート面に紫外線硬化型インキ(アクリル系モノマーを主成分とするSun Chemical社製ROYOFLEX−AL−F)のフレキソ印刷を施し、その後、紫外線を照射することにより印刷層を硬化させ、さらに印刷層上に透明ニスを用いてオーバープリントコートを施したものを適宜形状に打ち抜くことによった。
【0048】
〔実施例4〕
実施例4として、外面から内面に向けて順に、紫外線硬化型インキのフレキソ印刷、60g/m2 コート紙、ドライラミネート接着剤(3g/m2 )、12μm2軸延伸PETフィルム、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作成した。蓋材作製の方法は、実施例2のアルミニウム箔をコート紙に置き換えた以外は、上記実施例2と同様の工程によった。
【0049】
〔実施例5〕
実施例5として、外面から内面に向けて順に、紫外線硬化型インキのフレキソ印刷、プライマーコート(1g/m2 )、40μm軟質アルミニウム箔、ドライラミネート接着剤(3g/m2 )、12μm2軸延伸PETフィルム、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作製した。蓋材作製の方法は、アルミニウム箔の片面に溶液型熱硬化タイプのニトロセルロースとアクリルのブレンド樹脂を主成分とするプライマーコート剤を、グラビア方式で塗布後、反対面にポリエステル系ドライラミネート接着剤を用いて2軸延伸PETフィルムを積層し、そのPETフィルム面上にアクリル変性ポリウレタン系樹脂及びアクリル酸エステル系樹脂を主成分とするヒートシールコート剤を、グラビア方式で塗布し、プライマーコート面に紫外線硬化型インキ(アクリル系モノマーを主成分とするSun Chemical社製ROYOFLEX−AL−F)のフレキソ印刷を施し、その後、紫外線を照射することにより印刷層を硬化させたものを適宜形状に打ち抜くことによった。
【0050】
なお、上記の各実施例では、紫外線硬化型インキとしてアクリル系モノマーを主成分とするSun chemical社製ROYOFLEX−AL−Fを無溶剤で用い、塗布量約2g/m2 のベタ印刷とした。また、各実施例および各比較例の印刷インキには、着色顔料(フタロシアニンブルー)を固形分で15重量%含有させた。
【0051】
〔比較例1〕
比較例1として、外面から内面に向けて順に、オーバープリントコート、グラビア印刷、40μm軟質アルミニウム箔、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作製した。蓋材作製の方法は、アルミニウム箔の片面にニトロセルロースを主成分とするグラビア印刷(塗布量2.0g/m2 )を施し、150℃のオーブン中で印刷層を加熱硬化させた後、その上に溶液型熱硬化タイプのニトロセルロースとアクリルのブレンド樹脂を主成分とするオーバープリントコート(塗布量1.5g/m2 )をグラビア方式でさらに施し、反対面にアクリル変性ポリウレタン系樹脂及びアクリル酸エステル系樹脂を主成分とするヒートシールコート剤をグラビア方式で施したものを適宜形状に打ち抜くことによった。
【0052】
〔比較例2〕
比較例2として、外面から内面に向けて順に、オーバープリントコート、グラビア印刷、プライマーコート、40μm軟質アルミニウム箔、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作製した。蓋材作製の方法は、アルミニウム箔の片面に塩酢ビマレイン酸共重合体及びアクリル酸樹脂を主成分とするプライマーコート剤(塗布量1g/m2 )を塗布し、その上にニトロセルロースを主成分とするグラビア印刷(塗布量2.0g/m2 )を施し、150℃のオーブン中で印刷層を加熱硬化させた後、その上に溶液型熱硬化タイプのニトロセルロースとアクリルのブレンド樹脂を主成分とするオーバープリントコート(塗布量1.5g/m2 )をグラビア方式でさらに施し、反対面にアクリル変性ポリウレタン系樹脂及びアクリル酸エステル系樹脂を主成分とするヒートシールコート剤をグラビア方式で施したものを適宜形状に打ち抜くことによった。
【0053】
〔比較例3〕
比較例3として、外面から内面に向けて順に、12μm2軸延伸PETフィルム、ドライラミネート接着剤、グラビア印刷、40μm軟質アルミニウム箔、ヒートシールコート(4g/m2 )からなる蓋材を作製した。蓋材作製の方法は、軟質アルミニウム箔の一方面にニトロセルロースを主成分とするグラビア印刷(塗布量2.0g/m2 )を施し、その上に2軸延伸PETフィルムを溶剤タイプのドライラミネート接着剤(塗布量3g/m2 )を用いラミネートし、反対面にアクリル変性ポリウレタン系樹脂及びアクリル酸エステル系樹脂を主成分とするヒートシールコート剤をグラビア方式で施したものを適宜形状に打ち抜くことによった。
【0054】
テストの結果を図3に示す。図中印刷インキ耐熱性テストの欄の○は熱板にまったく印刷インキが取られないことを、△は熱板に印刷インキの取られる面積が30%未満であることを、×は熱板に印刷インキの取られる面積が30%以上であることを示す。また、図中線シール特性テストの欄の○は基材層にクラック(亀裂)が見られなかったことを、×は基材にクラック(亀裂)が生じていたことを示す。
【0055】
図3から、印刷インキ耐熱性のテストでは、比較例においては温度が上がるほど熱板に印刷インキが取られる面積が増えるのに対して、実施例では温度が上がってもまったく熱板に印刷インキが取られることがなく、実施例の場合のほうが、はるかに耐熱性の点で優れていることがわかる。ここで比較例において、熱板の温度が高い場合に印刷インキが取られるのは、包装材の最外面にあたるオーバープリントコートや2軸延伸ポリエステルフィルムが、熱板との接触により一部溶融または熱変形し、印刷インキ層を保護しなくなるためである。
【0056】
また、線シール特性テストでは、実施例においては、いずれも基材層にクラックが見られないのに対して、比較例においては、いずれも基材層にクラックが見られる。この結果、実施例のように、基材層と熱接着層との間に樹脂フィルム層を介在させることにより、基材層が破れることなく、線シールを施すことができることがわかる。
【0057】
また視認性のテストでは、上記した算定法に基づいた点数は、比較例の場合は、1.4〜2.4であるのに対し、実施例の場合は、4.2〜5.0であり、実施例の場合のほうが、はるかに視認性の点で優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の蓋材の一例を示す断面図
【図2】この発明の包装体の一例を示す断面図
【図3】実施例および比較例のテスト結果を示す表
【符号の説明】
【0059】
10 蓋材
10a 線シール
11 フレキソ印刷層
12 基材層
13 樹脂フィルム層
14 熱接着層
20 包装体
21 容器
21a フランジ
22 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面から内面に向けて、フレキソ印刷層、基材層、樹脂フィルム層、熱接着層を順次積層してなる蓋材。
【請求項2】
前記フレキソ印刷層に、紫外線硬化型インキを用いた請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記紫外線硬化型インキを、無溶剤で、耐熱性を有するものとした請求項2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記基材層が、紙を含む請求項1から3のいずれかに記載の蓋材。
【請求項5】
前記基材層が、アルミニウム箔を含む請求項1から4のいずれかに記載の蓋材。
【請求項6】
前記アルミニウム箔の少なくとも一面に、プライマーコート処理が施されている請求項
5に記載の蓋材。
【請求項7】
前記アルミニウム箔の厚みを、5〜100μmとした請求項5または6に記載の蓋材。
【請求項8】
前記樹脂フィルム層が、厚み3〜25μmのポリエステル系フィルムからなる請求項1から7のいずれかに記載の蓋材。
【請求項9】
前記フレキソ印刷層の外面に、オーバーコート処理がなされている請求項1から8のいずれかに記載の蓋材。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の蓋材を、フランジを有する容器の当該フランジに熱接着した包装体。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の蓋材を、フランジを有する容器の当該フランジに線シールした包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−76594(P2006−76594A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260892(P2004−260892)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】