説明

蓋材

【課題】蓋材の構成材料からアルミニウム箔などの金属を除き、紙と樹脂を主とする材料で構成して、金属探知機による検査、電子レンジ調理を可能とし、使用後の廃棄性を改善すると共に、カールも少なく、開封時、蓋材の開口保持性、およびその戻しによる再封性にも優れる蓋材を得る。
【解決手段】アルミニウム箔などの金属層を備えない積層体を所定の形状に打ち抜いた枚葉形状とされて、容器本体の上端開口部を密封する蓋材であり、外周縁に開封用タブを有する即席食品用容器の蓋材であり、紙層1と樹脂層2とが積層一体化された層構成を有していて、紙層1が、プルランもしくはトレハロースからなるフラット性・デッドホール性改善剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用カップ型容器の熱封緘性蓋材に関し、更に詳しくは、構成材料からアルミニウム箔などの金属を除き、紙と樹脂を主とする材料で構成した蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品用カップ型容器の蓋材としては、例えば、紙/ポリエチレン樹脂層/アルミニウム箔/ポリエチレン樹脂層/ホットメルト層の積層構成からなる熱封緘性蓋材が一般的に使用されている。この構成の蓋材には、アルミニウム箔が、その剛性、塑性変形性、或いはカール防止などの点が優れていることから用いられている。
また、アルミニウム箔を使用しない構成の蓋材では、例えば、紙/接着剤またはポリエチレン樹脂層/二軸延伸プラスチックフィルム層/ポリエチレン樹脂層/ホットメルト層のようなものが知られている。
【0003】
上述したように、前者のアルミニウム箔を用いた構成の蓋材は、アルミニウム箔の特徴である剛性、塑性変形性によりカールの発生を抑制できる。また、この蓋材が熱封緘性蓋材としてカップ型容器に取り付けられ、収容された食品を食するに際し、蓋材の一部分を捲り上げるように開いてからお湯を差し、そして蓋材を閉じて容器内の食品を蒸らしてから食する商品もある。このタイプの商品では、蓋材にアルミニウム箔が層構成の一部として用いられることで、注湯時の蓋材の部分的な開口性およびそれを戻した時の再封性に優れるなどの長所を有する。
【0004】
しかしその反面、商品製造ラインでの内容物充填後の金属探知機による金属異物の混入検査が出来ず、商品購入者側でも、注湯による調理以外に最近注目されている電子レンジ調理加熱が出来ない。そして、蓋材の製造コストも割高となり、使用後の廃棄性についても、焼却では燃えカスが残るなどの問題があった。
【0005】
また、後者のアルミニウム箔を使用しない構成の蓋材は、アルミニウム箔の使用による欠点は解消されるものの、逆に、アルミニウム箔の使用による長所が失われ、カールが発生しやすくなると共に、お湯を差して食品を蒸らす商品に用いられる蓋材としては、開封時、その蓋材の折り曲げによる開口性およびその戻しによる再封性が低下するという問題があった。(このような折り曲げた形状を保持する性質をデッドホールド性という。)
【0006】
このような現状から、使用材料や後加工によるアルミレス構成蓋材の性能改善が試みられており、例えば、特許文献1に示されているように、使用紙材料における坪量やクレイ層割合を調整して上記問題を改善する試みがある。また、特許文献2に示されているように、使用紙材料にあらかじめ水、アルコール類、イミン類を主成分とする保水剤を供給した紙材を用いることで上記問題を改善する試みもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−310273号公報
【特許文献2】特許3215932公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、塗工されるクレイ層の成分構成の特徴についての具体的な記述はなく、汎用的に蓋材用途で用いられている片面塗工紙の範疇であり、アルミレス構成蓋材の性能を改善するには至ってないものであった。また、上記特許文献2の技術では、特にアルミレス構成におけるカール抑制効果のみを狙ったもので、デッドホールド性を改善するには至っていないものであった。
【0009】
そこで本発明は、上記先行技術において不足している紙基材中の成分の工夫や他の組合せ加工による改善策を盛込み、上記問題点を広く解決しようとするもので、その目的とするところは、蓋材の構成材料からアルミニウム箔などの金属を除き、紙と樹脂を主とする材料で構成することにより、金属探知機による検査、および電子レンジ調理を可能とし、使用後の廃棄性を改善すると共に、カールも少なく、開封時、蓋材の開口保持性、およびその戻しによる再封性にも優れるという、総合的に優れた性能の熱封緘性蓋材を生産性良く提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の本発明により解決することができるものである。
(請求項1の発明)
請求項1に記載した発明は、アルミニウム箔などの金属層を備えない積層体を所定の形状に打ち抜いた枚葉形状とされて、容器本体の上端開口部を密封する蓋材であり、外周縁に開封用タブを有する即席食品用容器の蓋材において、紙層と樹脂層とが積層一体化された層構成を有していて、前記紙層が、プルランもしくはトレハロースからなる機能性糖質を含有するものであることを特徴とする蓋材であり、この蓋材を提供して上記課題を解決する。
【0011】
本発明の蓋材は、紙層と樹脂層とが、例えば接着剤や溶融樹脂によって貼り合わされ積層一体化されたもので、アルミニウム箔を用いないものとした。これによって、電子レンジ調理および金属探知機の使用を差し支えないものとした。しかし、アルミニウム箔の不採用はフラット性およびデッドホールド性を低下させる。このアルミニウム箔の不採用に起因するフラット性およびデッドホールド性の低下を、プルラン、トレハロースからなる機能性糖質を含有する紙層を用いることにより改善することが出来る。
【0012】
第一に、プルランおよびトレハロースは、紙層への添加剤として一般的に用いられる多糖類であるでんぷんと比べて分子中の水酸基を多く有することから、含水結晶構造を取り易いため、環境変化においても安定した保水性を発揮することが出来る。この特徴により、放水および含水によるカールの発生を抑制し、フラット性を保持することが出来るものである。
【0013】
また第二に、機能性糖質であるプルラン、トレハロースによる保水性により、これらを含む紙基材の腰強度を柔軟に保つことが可能となる。この特徴により、紙基材中パルプ繊維に由来する反発力を抑制し、開口および再封の際の折り曲げに柔軟に追随可能なデッドホールド性を付与することが可能となる。
【0014】
(請求項2の発明)
請求項2に記載の発明は、上記紙層は、紙基材にコート剤を塗工して塗工層を有する塗工紙からなり、上記機能性糖質が前記塗工層に含まれていて、機能性糖質が、塗工層の固形分質量の5%以上含有されている請求項1に記載の蓋材である。
【0015】
プルラン、トレハロースの含有を塗工層に限定している理由は、コート剤中に添加する他に、紙の抄造時にパルプ液中に紙力増強剤として添加する手法があるが、一般的な紙力増強剤としてはでんぷんもしくはポリアクリルアミドを用いることが主流である為、塗工層に後添加する方が、コスト面および生産数量対応面においても有効であるという理由による。
【0016】
コート剤中に、プルラン、トレハロースからなる機能性糖質を添加することによる効果について、特にプルランは、一般的な塗工紙のコート剤増粘剤として使用されるPVAやでんぷんと比べ、ゲル化せず低粘度で安定した粘性溶液を発現することが可能であり、また接着性もデンプンと比べ2倍の強度を発揮することが出来、乾燥後の塗工膜の収縮も小さいことからカールも発生しにくい。よって、プルランを塗工液の増粘剤として添加することにより、安定した塗工適性と、強固な塗工表面を確保することが出来る。一方トレハロースは、プルランやでんぷんと異なり二糖類であるため、コート液を増粘させることがないことから、その含有量は上限なく添加することが可能である。
【0017】
プルラン、トレハロースからなる機能性糖質のコート剤中の含有量を5%以上としている理由は、一般的な塗工紙のコート層構成成分であるでんぷんと比べ、その高い保水性によってより低添加率で保水効果があるが、5%以下ではその保水効果が低く、紙基材の物性に影響するに至らない。よって含有量は5%以上という制約条件を設けている。
【0018】
(請求項3の発明)
請求項3に記載の発明は、上記塗工紙は、蓋材上面にコート剤を塗工してなる片面塗工紙であり、前記片面塗工紙は総紙秤量が80〜130g/m であり、総紙坪量に対するコート剤塗布量の質量割合が20〜30%の片面塗工紙であることを特徴とする請求項2に記載の蓋材である。
【0019】
これは第一に、紙層の表面にのみ塗工層を積層することで、同じ塗工量であっても片面にのみ偏在させることにより、塗工紙の原紙表面の凹凸をより効果的に低減することが可能となることから、表面の印刷適性をより効果的に改善できることによる。
【0020】
また第二に、この塗工層を含めた全紙秤量を80〜130g/m とすることの意味は、全紙秤量が80g/m 未満では腰強度が不足しフラット性が悪く、逆に全紙秤量が130g/m を越えて多すぎる場合には、フラット性に大きな問題は無いものの、蓋が厚くなり取り扱い難いことによる制約条件である。
【0021】
そして第三に、全紙に対する塗工層の質量割合を20〜30%とすることの意味は、塗工層の質量割合が20%未満の場合には、紙繊維の影響が大きく、蓋材開封時の折り曲げ適性、即ち、デッドホールド性が改善されない。また、極度に少ない塗工層では、塗工層中に含まれるプルラン、トレハロースの効果を発揮することが出来ない。
【0022】
逆に、塗工層が30%を越える場合、塗工層の硬さにより折り曲げ適性が得られず、塗工層が片面に偏在することからフラット性が向上しない。また、過剰な塗工層の付与はコストアップにも繋がる。よって、塗工層の質量割合を20〜30%にすることで、適度な折り曲げ適性、デッドホールド性、製品のフラット性が得られることによる制約条件である。
【0023】
(請求項4の発明)
請求項4に記載の発明は、上記樹脂層は、厚みが20μm〜60μmであって、単層または多層であり、蓋材の被着体容器側のシーラント層となる樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、あるいはエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂などの酸コポリマー樹脂を主成分とした混合樹脂層である請求項1から3の何れか一項に記載の蓋材である。
【0024】
この発明は、特に電子レンジ調理対応容器としての用途に適するようにするもので、容器がポリプロピレン系樹脂を主成分とした容器、もしくはポリエチレン層をシーラントとして積層した紙カップ容器を主成分とした容器である場合が多いことから、蓋材の被着体容器側のシーラント層となる樹脂層を被着体容器表面を構成する樹脂を主成分とした層にすることにより、電子レンジ調理用容器へのシール適性を付与している。
【0025】
また、樹脂層の厚みを20〜60μmとしている理由は、20μmより薄くてはシール時の樹脂埋まり適性が得られず、60μmを超える厚さでは樹脂の腰強度が強く、デッドホールド性が阻害されることによる制約条件である。
【0026】
本発明の蓋材は、巻き取り状の蓋材として、巻き取り状の蓋材を供給する充填シール機などでも使用することができるが、上記のような構成を採ることにより、製品形状(容器開口部を閉じる形状)に打ち抜いた枚葉形態の蓋材を供給する自動充填シール機で使用することが出来、充填機上で二枚取りなどのトラブルがなく良好に使用することができる蓋材である。
【発明の効果】
【0027】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、金属探知機による検査適性や、電子レンジ調理適性などを付与すると共に、カールの安定性により生産・充填適性にも優れ、また、開口後の注湯時には開口性を保持し、麺を蒸らす際の再封適性も良好な蓋材であり、また、アルミニウム箔を使用しないことからコスト面、使用後の廃棄適性にも優れ、更に紙基材の構成から、印刷適性にも優れるという総合的に優れた性能を具備した熱封緘性蓋材が得られる。
【0028】
(請求項2の発明の効果)
請求項2の発明により、より低コストで生産性にも優れた紙基材を提供することが出来、またコート液の性状の安定化、コート剤中の層間強度および接着強度を確保することが出来るようになる。
【0029】
(請求項3の発明の効果)
請求項3の発明により、紙層表面の平滑性を得られて高い印刷加工適性を確保することが出来、また塗工層の顔料粒子間の接着強度を確保することが出来るようになる。
【0030】
(請求項4の発明の効果)
容器にはポリプロピレン系樹脂を主成分とした容器、ポリエチレン樹脂層をシーラント層として積層した紙カップ容器である場合が多く、請求項4の発明により、ポリプロピレンもしくはポリエチレン樹脂層をシーラント層とした容器へのシール付与し、よって、電子レンジ調理容器へのシール適性が付与されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る蓋材の一例をカップ型容器に取り付けた状態を示す説明図である。
【図2】カップ型容器に取り付けた蓋材を捲り上げた状態を示す説明図である。
【図3】一例の積層構成を断面で概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に本発明を実施の形態について図面を用いて説明する。
まず、蓋材10は、図1と図2に示すように上方に向けて略テーパー状に拡径したカップ型容器(被着体容器)aの容器本体における上端開口部bを密封する円形のものであり、容器本体の開口周縁部cに蓋材10の外周辺11がヒートシールにより剥離可能にして接合されるものである。
上記蓋材10は、実施例の層構成を断面にて概略的に表現している図3に示すように片面塗工紙からなる紙層1と樹脂層2とが一体に積層された層構成を有する積層体を打ち抜いて、円形形状とした蓋材本体12の外周辺から外方に向けて突出する開封用タブ13を一体にして有する枚葉形状とされている。
【0033】
この時、開封用タブ13を紙層1を構成する後述の紙基材における紙の繊維方向と垂直方向に配置したり、蓋材表面に凹凸パターンを賦型するなどして紙の繊維による反発を低減し、開口時のデッドホールド性の更なる改善をすることも出来る。
またこの時、開封用タブ13に紙層1から樹脂層2までの貫通した切り込みを設けたり、開封用タブ13の境界部分に紙層1のみ貫通した破線状の切り込みを配置することにより、蓋材10の被着体容器周縁部に係止可能な係止部14を形成し、再封時のデッドホールド性の更なる改善策を付与することも出来る。
【0034】
図3の断面で示されているように蓋材10は、外面(上面であり、被着体容器側とは反対側となる面)にコート剤を塗工してなる塗工層15が積層された紙層1を基材とし、前記外面側に、文字、絵柄、光沢ニス等のインキ層3を印刷し、紙層1の内面(下面側で被着体容器側となる面)側には容器本体の開口周縁部cにヒートシールする為のシーラント層としての樹脂層2を上述のように積層して一体とした層構成を有している。
尚、樹脂層2は単層でも多層でも良いが、樹脂層の最内面(最下層)はポリオレフィン系のイージーピールシーラント樹脂層である。また、紙層1と樹脂層2の間には遮光性インキ層を印刷などにより積層することが出来る。
【0035】
上記構成において、紙層1は上述したように蓋材10の基材となるものであり、坪量が80g/m 未満の場合は、剛性や機械的強度がやや不足し、130g/m を超える場合は、剛性は既に充分であり、それ以上の必要性がなく、むしろヒートシールに時間を要し、紙の層間強度なども低下傾向となるため好ましくない。
また、紙層1の材料である片面塗工紙の塗工層15のコート剤塗布量は、総紙坪量80〜130g/m 中、20〜30%とするものであり、20%未満の場合は、塗工層積層よる効果が十分に発揮されず、30%を超える場合は、塗工層による過剰な剛性が付与されてしまう為、デッドホールド性を低減させるので好ましくない。
【0036】
紙層1を構成する片面塗工紙のコート剤は表面平滑性や隠蔽性を付与するための顔料成分と、バインダーや粘度調整剤としての樹脂成分を主として成り、顔料成分としては、カオリン、重炭、樹脂成分としてはSBR(スチレンブタジエンラバー)、でんぷんなどを主成分として使用することが出来る。
【0037】
このようなコート剤をコートする方法としては、エアナイフ法やブレード法などにより片面塗工紙の原紙材料の外面側(片面側)にコートすることができる。
また、一度に塗布すると表面の平滑性が失われ、印刷基材としての性能が低減する為、二回に分けて積層することが好ましい。
【0038】
シーラント層としての樹脂層2は、その層厚みが20〜60μmであって、上述したように単層または多層である。そして、蓋材10の被着体容器側の樹脂層であってシーラント層となる樹脂層については、ポリプロピレン系樹脂層を主成分とした混合樹脂層とすることが可能である。
また、シーラント層とする樹脂層は、低密度ポリエチレン層(LDPE)、および線状低密度ポリエチレン層(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層(EVA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂層(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂層(EAA)などの酸コポリマー樹脂層を主成分とした混合樹脂層とすることが可能である。
尚、シーラント層としての樹脂層の素材は、いずれにしても被着体容器の少なくとも開口周縁部の接合面側の素材に応じて選択されるべきものであり、イージーピール性を確保してヒートシールできるものとすることが必要である。
【0039】
以下に、実施例と比較例とを作成してデッドホールド性を検討した。
(実施例1)
図3に示した構成の熱封緘性の蓋材10を作製することとし、蓋材の基材(紙)として全紙坪量105g/m の紙基材を用い、その外面側に多色グラビア印刷機を用いて文字、絵柄、光沢ニス等のインキ層3の印刷を行って紙層1を形成した。
次いで、紙層1の内面側に多色グラビア印刷機を用いて、カーボンブラックと酸化チタンの混合系の顔料を含有する遮光性インキを版深35μmのベタ版を用いて、2ユニットで重ね刷りし、塗布量6g/m (固形分)の遮光性インキ層を設けた。
この時用いる紙基材は、80g/m の原紙に対し、顔料成分であるカオリン75/重炭25/樹脂成分であるSBR15/プルラン20の質量比の各成分を固形分として含む水系のコート層を、二回に分けてブレード法で合計25g/m で塗工して得たものである。(SBR:Styrene Butadien Rubber)
【0040】
次に、前記遮光性インキ層の上に、コロナ放電処理を施し、低密度ポリエチレン樹脂層(厚み20μm)/エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂層(厚み15μm)/低密度ポリエチレンとポリブチレンのポリマーアロイ(混合樹脂)層(厚み15μm)の3層を共押し出し樹脂加工により積層して、実施例1の蓋材原反を作製した。
【0041】
(実施例2)
実施例1の蓋材原反を得る上で用いた機能性糖質のプルランを、同じく機能性糖質のトレハロースに代えて、実施例2の蓋材原反を作製した。トレハロースの分量は実施例1でのプルランと同じであり、他の作製条件も実施例1と同じとした。
【0042】
(比較例1)
基材の紙には実施例1と同じ全紙坪量105g/m の紙基材を用い、その外面側(上面側)に多色グラビア印刷機を用いて文字、絵柄等のインキ層を付与し、その裏面側(被着体容器側となる面)に遮光性インキ層の印刷加工を行った。
この時用いる紙基材は、80g/m の原紙の外面側に当たる面に、顔料成分であるカオリン75/重炭25/樹脂成分であるSBR15/でんぷん3の質量比の各成分を固形分として含む水系のコート層をブレード法で25g/m で塗工して得たものである。
【0043】
次に、前記遮光性インキ層の上にノンソルベントラミネート法によりウレタン系接着剤を2g/m で塗布した後に、両面コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)を積層した。更にこのPETフィルムの内面側(被着体容器側となる面)に、同じくノンソルベントラミネーション法によりウレタン系接着剤を2g/m 塗工した後に、ポリプロピレン樹脂層(厚み20μm)/ポリプロピレン樹脂とポリブチレン樹脂のポリマーアロイ(混合樹脂)層(厚み10μm)の2層構成のイージーピールシーラントフィルムを積層した。
【0044】
(比較例2)
基材の紙には実施例1と同じ全紙坪量105g/m の紙基材を用い、その外面側(上面側)に多色グラビア印刷機を用いて文字、絵柄等のインキ層を付与し、その裏面側(被着体容器側となる面)に遮光性インキ層の印刷加工を行った。
この時用いる紙基材は、先ず、95g/m の原紙を抄紙する際に、紙力増強剤としてプルランを5g/m 、トレハロースを15g/m 添加している原紙を用い、その外面側に当たる面には、顔料成分であるカオリン75/重炭25/樹脂成分であるSBR15/でんぷん3の質量比の各成分を固形分として含む水系のコート層をブレード法で10g/m で塗工して得たものである。
【0045】
次に、前記遮光性インキ層の上にノンソルベントラミネート法によりウレタン系接着剤を2g/m で塗布した後に、両面コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)を積層した。更にこのPETフィルムの内面側(被着体容器側となる面)に、同じくノンソルベントラミネーション法によりウレタン系接着剤を2g/m 塗工した後に、ポリプロピレン樹脂層(厚み20μm)/ポリプロピレン樹脂とポリブチレン樹脂のポリマーアロイ(混合樹脂)層(厚み10μm)の2層構成のイージーピールシーラントフィルムを積層した。
【0046】
(比較例3)
実施例1と同じく、蓋材の基材として全紙坪量105g/m の片面コート紙を用いるが、この時用いる片面コート紙は、80g/m の原紙に対し、顔料成分であるカオリン75/重炭25/樹脂成分であるSBR15/プルラン5の質量比の各成分を固形分として含む水系のコート層を二回に分けてブレード法で合計25g/m で塗工して得たものである。その他、加工条件は実施例1と同じである。
【0047】
(比較例4)
比較例2と同じく、蓋材の基材として全紙坪量105g/m の片面コート紙を用いるが、この時用いる片面コート紙の原紙は、95g/m の原紙坪量に対し、紙力増強剤としてでんぷんを5g/m 添加している原紙を用い、その外面側に当たる面には、顔料成分であるカオリン75/重炭25/樹脂成分であるSBR15/プルラン5の質量比の各成分を固形分として含む水系のコート層をブレード法で10g/m で塗工して得たものである。その他、加工条件は実施例1と同じである。
【0048】
(比較例5)
蓋材の基材として全紙坪量70g/m の片面コート紙を用いるが、この時用いる片面塗工紙は、60g/m の原紙に対し、実施例1と同処方の水系のコート剤を、二回に分けてブレード法で合計10g/m 塗工した。その他、加工条件は実施例1と同じである。
【0049】
(比較例6〜8)
上記比較例3、4、5における顔料成分中のプルランを、トレハロースに代えるだけにして作製条件を変更せずに比較例6、7、8として作製した。
【0050】
以上のようにして作製した実施例1、2、比較例1〜8の各蓋材原反の印刷上がり状態を目視で評価し、フラット性が得られていることを確認した。また、積層後の原反を片面塗工紙の繊維方向に垂直につまみ片(開封用タブ)の付いた直径180mmの円形形状に打ち抜いて枚葉形態の蓋材を作製し、実施例1、2、比較例3、5、6、8は低密度ポリエチレンで被服された紙カップ容器、比較例1、2、4、7はポリプロピレンシート材の成型容器にヒートシールされた後、デッドホールド性について下記により調べた。
【0051】
(評価手法)
つまみ片より角度135°で容器半分まで手剥きした後、容器側面から目視にて開封角度を確認した。この時、容器フランジ/蓋材の角度が30°以上であればデッドホールド性が良好であり、これを表1に○として示し、30°以下であればデッドホールド性が不良であり、これを表1において×として示した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示されるように、プルラン、トレハロースが、塗工層の固形分質量の5%以上含有されていて、また、塗工紙の総紙坪量に対して、プルランやトレハロースを含むコート剤のコート剤塗布量の質量割合が20〜30%の範囲に入るようにすることが良好なデッドホールド性を得る上で好ましいと判断できた。なお、比較例2についてもデッドホールド性が良好と判断されるが、上述したように、蓋材を作製する上で、プルランやトレハロースが塗工層に含まれるようにする方がコスト面および生産数量対応面においても有効である。
【符号の説明】
【0054】
1…紙層
2…樹脂層
3…インキ層
10…蓋材
11…外周辺
12…蓋材本体
13…開封用タブ
14…係止部
15…コート層
a…容器
b…上端開口部
c…開口周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔などの金属層を備えない積層体を所定の形状に打ち抜いた枚葉形状とされて、容器本体の上端開口部を密封する蓋材であり、外周縁に開封用タブを有する即席食品用容器の蓋材において、
紙層と樹脂層とが積層一体化された層構成を有していて、前記紙層が、プルランもしくはトレハロースからなる機能性糖質を含有するものであることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
上記紙層は、紙基材にコート剤を塗工して塗工層を有する塗工紙からなり、上記機能性糖質が前記塗工層に含まれていて、機能性糖質が、塗工層の固形分質量の5%以上含有されている請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
上記塗工紙は、蓋材上面にコート剤を塗工してなる片面塗工紙であり、前記片面塗工紙は総紙秤量が80〜130g/m であり、総紙坪量に対するコート剤塗布量の質量割合が20〜30%の片面塗工紙であることを特徴とする請求項2に記載の蓋材。
【請求項4】
上記樹脂層は、厚みが20μm〜60μmであって、単層または多層であり、蓋材の被着体容器側のシーラント層となる樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、あるいはエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂などの酸コポリマー樹脂を主成分とした混合樹脂層である請求項1から3の何れか一項に記載の蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−173670(P2010−173670A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16832(P2009−16832)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(507292092)富士加工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】