説明

蓋部材及び容器キット

【課題】凹部を有する容器部材に対して組み合わせる際の操作性を向上させる。
【解決手段】凹部を有する容器部材に対して着脱可能な蓋部材あって、前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部のエッジに側面が接触するとともに、前記凹部の内部に端面が位置する凸部と、前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部の外周部上面に対向する位置に、前記凸部の少なくとも一部を囲うように形成された凹溝とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液体を注入することができる凹部を有する容器部材に着脱可能な蓋部材及び、当該蓋部材と容器部材とを備える容器キットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、遺伝子解析実験や抗体抗原反応実験といった遺伝子工学や生化学の分野において、核酸溶液やタンパク質溶液を注入する凹部を有する容器部材と、当該容器部材に取り付けられ当該凹部を密閉できる蓋部材とを用いて各種反応を行うといった実験系が汎用的である。より具体的には、容器部材としては、樹脂を成形加工することによって複数の凹部が配列するように形成される。蓋部材としては、当該複数の凹部に組み合わされるように加工される。
【0003】
容器部材の凹部に所望の反応液を注入した状態で蓋部材を組み合わせ、凹部と凸部とで構成される密閉空間内で所望の反応を行うことができる。また、容器部材として、複数の凹部をチップ状に集積したタイプを使用することによって、複数の反応を同時に行うことも可能となる。
【0004】
ところが、容器部材の凹部に所定量の反応液を注入し、その後蓋部材を組み合わせた場合、注入した反応液が外部へ流出してしまうことがあった。このように、従来においては、容器部材と蓋部材との組み合わせの際の操作性が悪いといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述したような実状に鑑み、凹部を有する容器部材に対して優れた操作性で組み合わせることができる蓋部材、及び当該蓋部材と容器部材とを備える容器キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成した本発明は以下を包含する。
(1)凹部を有する容器部材に対して着脱可能な蓋部材あって、前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部のエッジに側面が接触するとともに、前記凹部の内部に端面が位置する凸部と、前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部の外周部上面に対向する位置に、前記凸部の少なくとも一部を囲うように形成された凹溝とを備える蓋部材。
(2)前記凸部の側面がテーパ状であり、前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部のエッジと前記凸部の側面とが線接触することを特徴とする(1)記載の蓋部材。
(3)前記容器部材における凹部は、略平面の基体部の一主面に位置する閉塞した堰堤により構成されており、前記凸部の端面側における凹溝の幅は、前記堰堤の上面の幅に対して小であること特徴とする(1)記載の蓋部材。
(4)前記凹溝の底面から外方に連通する第1の連通孔を有することを特徴とする(1)記載の蓋部材。
(5)前記凸部の端面から外方に連通する第2の連通孔を有することを特徴とする(1)記載の蓋部材。
(6)前記容器部材は複数の凹部を有しており、前記凹部の数に応じて複数の前記凸部を有していることを特徴とする(1)記載の蓋部材。
(7)(1)〜(6)いずれかに記載の蓋部材と、凹部を有する容器部材とを備え、前記蓋部材と前記容器部材を組み合わせることにより、密閉空間を形成することができる容器キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器部材における凹部内に溶液を注入した状態であっても、当該溶液が外部へ流出することが防止できるといった操作性に優れた蓋部材を提供することができる。すなわち、本発明にかかる蓋部材は、優れた操作性で容器部材に組み合わせることができる。また、本発明によれば、操作性に優れた蓋部材と容器部材とを備える容器キットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
本発明を適用した容器キットは、図1に示すように、基体部1の一主面に複数の凹部2を有する容器部材3と、容器部材3に組み合わされることで凹部2を閉塞し、凹部2と共に密閉空間を形成する複数の凸部4を有する蓋部材5とを備える。蓋部材5は、更に、凸部4全体を囲うように形成された凹溝6を有している。本発明を適用した容器キットは、容器部材3と蓋部材5とを、凹部2と凸部4とが正対向するように位置決めして組み合わせることができる。
【0009】
図1及び2に示すように、容器部材3は、略平面の基体部1の一主面に閉塞した堰堤7を有している。容器部材3の凹部2は堰堤7により形成されている。なお、図2(a)は容器部材3の上面図であり、図2(b)は容器部材3の側面図である。堰堤7は断面視で略矩形状を呈している。堰堤7の上面は平坦面とされる。なお、基体部1と堰堤7とは一体に形成されていても良いし、平板状の基体部1の一主面に堰堤7を固定するように形成されていても良い。凹部2に溶液を注入することを考慮すると、基体部1と堰堤7とは一体に形成されていることが好ましい。樹脂材料を成型加工によって基体部1と堰堤7とを一体に形成することができる。
【0010】
ここで、容器部材3は、特に限定されないが、ガラス、樹脂、シリコン、セラミック、カーボン或いは金属から作製することができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等を使用することができる。カーボンとしては、グラファイト、ダイヤモンド、アモルファスカーボン及びカーボンナノチューブ等を使用することができる。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、チタン、金、銀、銅、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン等を使用することができる。なお、容器部材3は、無色透明であっても良いが、使用目的に応じて有色としてもよい。
【0011】
基体部1の厚さは、特に限定されないが、通常0.1mm〜20mm程度であるが、好ましくは0.5mm〜10mm程度である。また、基体部1の両主面或いは一主面には如何なる表面処理を施したものであっても良い。表面処理としては、特に限定されず、以下を例示することができる。例えば、基体部1の表面処理としては、例えば、アルカリ、酸などで対象の表面を処理する方法、ポリマーをコーティングする方法、温中で超音波処理する方法、酸素プラズマを照射する方法、アルゴンプラズマを照射する方法、放射線を照射する方法が挙げられ、これらの方法を単独或いは適宜組み合わせて使用することができる。
【0012】
容器部材3において、凹部2の底面には生体関連物質が固定化されていても良い。生体関連物質を凹部2の底面に固定化した場合、所定の物質を検出するためのチップとして使用することができる。また、容器部材3は、凹部2の底面に生体関連物質を固定化せず、生体関連物質を基盤に固定化した生体関連物質固定化基盤を凹部2の底面に載置して使用することもできる。
【0013】
ここで生体関連物質としては、核酸、タンパク質、糖類及び他の抗原性化合物を挙げることができる。ここで核酸とは、DNA、RNA及びPNAを含む意味である。また、核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。ここでタンパク質としては、抗体、Fabフラグメント及びF(ab')2フラグメントのような抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。ここで糖類としては、多糖類が好ましく、種々の抗原を挙げることができる。また、生体関連物質には、タンパク質や糖類以外の抗原性を有する物質も含まれる。生体関連物質は、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。
【0014】
生体関連物質として、核酸を使用する場合には長さが10塩基から100塩基までのオリゴ核酸を使用することが好ましい。オリゴ核酸は、DNA合成装置により容易に人工的に合成することができる。また、オリゴ核酸の末端にはアミノ基修飾等を施しても良い。オリゴ核酸の末端にアミノ基修飾を行うことによって、凹部2の底面(基体部1表面)への固定化が容易となる。また、オリゴ核酸の長さを20〜100塩基とすることによって、検出対象の核酸分子とオリゴ核酸とのハイブリダイゼーションの安定性を保持することができる。
【0015】
一方、図1及び3に示すように、蓋部材5は、略平板状を呈してなり、容器部材3の凹部2に対応して複数の凸部4を有している。また、蓋部材5は、凸部4の外周に凹溝6を有している。さらに、蓋部材5は、凸部4及び凹溝6を囲うように形成された収容部8を有している。すなわち、蓋部材5において、一つの凹部2に対する一つの凸部4は、図4及び5に示すように、その外周に凹溝6を有し、さらに凹溝6の外周に収容部8を有している。なお、図3(a)は蓋部材5の上面図であり、図3(b)は図3(a)におけるb-b断面図である。
【0016】
蓋部材5の寸法としては、容器部材3の形状寸法に依存して適宜設計することが可能である。例えば、蓋部材5の凸部4は、容器部材3における凹部2よりやや大となる寸法を有するように設計される。また、収容部8は、容器部材3と蓋部材5とが組み合わされた状態で、容器部材3側の堰堤7全体を覆うに足る形状とされる。また、凹溝6の幅は、容器部材3における堰堤7の上面の幅よりも小とされる。
【0017】
より具体的には、凹部2が4mm×4mmである場合、凸部4の先端側は4mm×4mm、底部側は4.7mm×4.7mm程度の寸法とする。また、凹溝6は、0.5mm程度の深さとされ、0.5mm程度の開口幅とされる。このとき、容器部材3における堰堤7の上面は、1mm程度となるように設計される。なお、容器部材3及び蓋部材5におけるこれらの寸法は単なる一例であって、本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
特に、蓋部材5における凸部4の側面はテーパ状であることが好ましい。凸部4の側面をテーパ状とすることによって、容器部材3と蓋部材5とを組み合わせた状態で、凹部2のエッジと凸部4との側面とを線接触させることができる。凹部2のエッジと凸部4との側面とを線接触させことで、凹部2と凸部4とを容易に組み合わせることができる。
【0019】
蓋部材5は、可撓性及び弾性を有する樹脂材料等から形成することができる。樹脂材料としては、シリコーンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム、ポリウレタン樹脂等のエラストマー、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、メチルペンテン樹脂等を使用することができる。
【0020】
以上のように構成された容器部材3と蓋部材5とは、図6中矢印で示す方向に組み合わされることによって、図7に示すように、凸部4の端面と凹部2とから構成される密閉空間9を形成することができる。このように、容器部材3と蓋部材5とが組み合わされた状態では、蓋部材5における凹溝6が、容器部材3の堰堤7の上面に当接することとなる。これにより、堰堤7の上面と凹溝6とにより空間部が形成されることとなる。
【0021】
容器部材3における凹部2内に溶液を注入した状態で、容器部材3と蓋部材5とを組み合わせた場合、凹部2内の溶液は、凸部4の端面によって外方へ押し出されることとなる。しかしながら、外方へ押し出された溶液は、蓋部材5の凹溝6と堰堤7の上面とから構成される空間部に収まることとなる。これにより、凹部2内の溶液が容器部材3の基体部1等へ漏れ出ることを防止できる。
【0022】
特に、凸部4の側面をテーパ状として凸部4の側面と凹部2のエッジとを線接触させることによって、凹部2と凸部4とを容易に組み合わせることができるだけでなく、凹部2内に注入された溶液が凹溝6へと容易に流れ出ることとなる。また、凸部4の側面をテーパ状として凸部4の側面と凹部2のエッジとを線接触させることによって、容器部材3から蓋部材5を容易に取り外すことができる。
【0023】
以上の説明では、閉塞した堰堤7により形成された凹部2を有する容器部材3を例示した。しかしながら、本発明にかかる容器キットは、図1などに示した容器部材3に限定されるものではない。例えば、図示しないが容器部材としては、略平板状の基体部の厚み方向に所定の深さで形成された凹部を有するものであっても良い。この場合、蓋部材は、凹部に対応する凸部と、凸部の外周の少なくとも一部を囲うように形成された凹溝とを有するような構成となる。
【0024】
この場合であっても、容器部材と蓋部材とを組み合わせることによって、容器部材の凹部に注入された溶液は凹溝内に収まることとなる。したがって、この場合であっても、凹部に注入された溶液が基体部ないし隣接する凹部内に流れ出ることを防止することができる。
【0025】
本発明を適用した容器キットの他の実施の形態を図8及び9に示す。他の実施の形態として示す容器キットは、基体部1の一主面に複数の凹部2を有する容器部材3と、容器部材3に組み合わされることで凹部2を閉塞し、凹部2と共に密閉空間を形成する複数の凸部4を有する蓋部材5とを備える。蓋部材5は、更に、凸部4全体を囲うように形成された凹溝6を有している。さらにまた、蓋部材5は、凹溝6の底面から外方に連通する第1の連通孔10と、凸部4の端面から外方に連通する第2の連通孔11とを有している。なお、図8(a)は蓋部材5の上面図であり、図8(b)は図8(a)におけるb-b断面図である。
【0026】
以上のように構成された蓋部材5は、上述した実施の形態と同様に、容器部材3に組み合わされて使用される。本実施の形態に示した容器キットを使用した場合、容器部材3の凹部2内に注入された溶液が蓋部材5の凹溝6に流出する際に、第1の連通孔10を介して凹部6内の空気を排出することができる。これにより、凹部2から凹溝6に向かう溶液がスムーズに流れることとなる。
【0027】
また、本実施の形態に示した容器キットを使用した場合、容器部材3と蓋部材5とを組み合わせ状態で、第2の連通孔11を介して密閉空間9内部に溶液を注入することができる。密閉空間9内に過剰に注入された溶液は、凹溝6により形成された空間部に流入することとなる。この場合も同様に、空間部内の空気が第1の連通孔10を介して排出されることになる。このように、第1の連通孔10及び第2の連通孔11を有する蓋部材5は、予め溶液を注入した容器部材3に対しても使用することができるし、或いは、容器部材3と組み合わせた後に溶液を注入するようにして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を起用した容器キットの一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は容器部材の上面図であり、(b)は容器部材の側面図である。
【図3】(a)は蓋部材の上面図であり、(b)は蓋部材の断面図(図3(a)のb-b断面)である。
【図4】蓋部材の一部を拡大して示す要部斜視図である。
【図5】容器部材の一部を拡大して示す要部斜視図である。
【図6】容器部材と蓋部材とを組み合わせる状態を示す容器キットの要部断面図である。
【図7】容器部材と蓋部材とを組み合わせた状態を示す容器キットの要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態として示す蓋部材であって、(a)は蓋部材の上面図であり、(b)は蓋部材の断面図(図8(a)のb-b断面)である。
【図9】他の実施の形態として示す蓋部材を拡大して示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1…基体部、2…凹部、3…容器部材、4…凸部、5…蓋部材、6…凹溝、7…堰堤、8…収容部、9…密閉空間、10…第1の連通孔、11…第2の連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する容器部材に対して着脱可能な蓋部材あって、
前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部のエッジに側面が接触するとともに、前記凹部の内部に端面が位置する凸部と、
前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部の外周部上面に対向する位置に、前記凸部の少なくとも一部を囲うように形成された凹溝と
を備える、蓋部材。
【請求項2】
前記凸部の側面がテーパ状であり、前記容器部材に組み合わされた際に前記凹部のエッジと前記凸部の側面とが線接触することを特徴とする請求項1記載の蓋部材。
【請求項3】
前記容器部材における凹部は、略平面の基体部の一主面に位置する閉塞した堰堤により構成されており、前記凸部の端面側における凹溝の幅は、前記堰堤の上面の幅に対して小であること特徴とする請求項1記載の蓋部材。
【請求項4】
前記凹溝の底面から外方に連通する第1の連通孔を有することを特徴とする請求項1記載の蓋部材。
【請求項5】
前記凸部の端面から外方に連通する第2の連通孔を有することを特徴とする請求項1記載の蓋部材。
【請求項6】
前記容器部材は複数の凹部を有しており、前記凹部の数に応じて複数の前記凸部を有していることを特徴とする請求項1記載の蓋部材。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項記載の蓋部材と、凹部を有する容器部材とを備え、前記蓋部材と前記容器部材を組み合わせることにより、密閉空間を形成することができる容器キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−307483(P2007−307483A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139121(P2006−139121)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(501002172)株式会社DNAチップ研究所 (33)
【Fターム(参考)】