説明

蓚酸の製造方法

【課題】簡単容易化された工程や製造設備により、処理の安定性,確実性,イニシャルコスト,ランニングコスト等に優れつつ、蓚酸を、高い収率で大量生産可能であり、もって、蓚酸の大幅な低価格化が実現される、蓚酸の製造方法を提案する。
【解決手段】この蓚酸の製造方法は、水溶液中に溶存する二酸化炭素(CO)を、発生期の水素(H+e)にて還元することにより、蓚酸(HOOC−COOH)を製造する。すなわち二酸化炭素について、一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)とアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素の電子(e)とプロトン(H)が、それぞれ還元付加反応し、もって、2モルの二酸化炭素の炭素間が単結合することにより、1モルの蓚酸を合成する。なお二酸化炭素は、飽和状態で溶存すべく、水溶液中に連続的に注入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓚酸の製造方法に関する。すなわち、二酸化炭素を還元することにより、蓚酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
蓚酸(HOOC−COOH)は、もっとも簡単な構造の2価のカルボン酸であり、植物の葉や茎等に多く含まれている。そして工業的には、染色原料,染色助剤,漂白剤,艶出剤,分析試薬,還元剤等々として、広く使用されている。
【0003】
《従来技術》
さて、工業的な蓚酸の製造方法としては、化学合成法が主流である。そして、エチレングリコール酸化法,一酸化炭素カップリング法,一酸化炭素蟻酸ナトリウム法、等が代表的である。
エチレングリコール酸化法では、エチレングリコールを酸化することにより、蓚酸の2水和物が合成される。一酸化炭素カップリング法では、一酸化炭素とアルコールを使用し、相互作用による結合に基づき、蓚酸が合成される。一酸化炭素蟻酸ナトリウム法では、一酸化炭素と水酸化ナトリウムを反応させて蟻酸ナトリウムを生成し、カルシウム塩としたのち硫酸で分解することにより、蓚酸が合成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
このようなエチレングリコール酸化法や一酸化炭素蟻酸ナトリウム法は、例えば、次の非特許文献1中に示されている。
【非特許文献1】社団法人 有機合成化学協会編「有機化合物辞典」の465頁(講談社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来技術については、次の課題が指摘されていた。
従来技術のエチレングリコール酸化法については、原料であるエチレングリコールを予め化学合成し、準備しておかなければならないという問題と共に、蓚酸の製造装置自体の事後処理が面倒であるという指摘があった。
すなわちエチレングリコールは、化学的に安定した物質である反面、製造装置内を事後に洗浄,廃水処理する際、その付着残留分が、通常の微生物処理では酸化分解困難である。もって、製造装置を事後に洗浄,廃水処理する際、化学的酸化分解処理を要していた。
又、従来技術の一酸化炭素カップリング法や一酸化炭素蟻酸ナトリウム法では、原料として人体に有害な一酸化炭素を使用するので、製造装置の運用に際し、厳重な安全性への配慮が要請されていた。もって、蓚酸製造装置に多くの監視装置や事故防止装置が付設されていた。
このように、従来技術の蓚酸の製造方法については、事前の化学合成準備や事後の化学的酸化分解処理、更には監視装置や事故防止装置の付設、等を要しており、製造コスト面に問題が指摘されていた。工程が複雑であり、製造効率が悪く、製造設備が大掛りとなり、イニシアルコストやランニングコストが嵩み、製造された蓚酸の単価が、例えば他の汎用基礎化成品に比し高額となっていた。又、製造処理の安定性や確実性にも、問題が指摘されていた。
【0006】
《本発明について》
本発明の蓚酸の製造方法は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、蓚酸が簡単容易に、製造コスト面等に優れて製造可能となる、蓚酸の製造方法を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
まず、請求項1については、次のとおり。
請求項1の蓚酸の製造方法は、水溶液中に溶存する二酸化炭素(CO)を、発生期の水素(H+e)にて還元することにより、蓚酸(HOOC−COOH)を製造する。
すなわち二酸化炭素について、一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)とアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素の電子(e)とプロトン(H)が、それぞれ還元付加反応し、もって、2モルの二酸化炭素の炭素間が単結合することにより、1モルの蓚酸が合成されること、を特徴とする。
【0008】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の蓚酸の製造方法では、請求項1において、二酸化炭素は、水溶液中に飽和状態で溶存せしめられていること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の蓚酸の製造方法では、請求項2において、合成される蓚酸は、濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出すること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。
請求項4の蓚酸の製造方法では、請求項1において、合成された蓚酸は、事後、OHラジカルにて二酸化炭素(CO)へと酸化分解される可能性があるが、酸化分解された二酸化炭素については、その分極化した一方のカルボニル基に対し発生期の水素が還元付加反応することにより、蓚酸が再合成されること、を特徴とする。
【0009】
請求項5については、次のとおり。
請求項5の蓚酸の製造方法では、請求項1において、OHラジカル(・OH)が、フェントン法に基づき、水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を、添加して生成される。そして発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする
請求項6については、次のとおり。
請求項6の蓚酸の製造方法では、請求項1において、OHラジカル(・OH)が、フェントン法に基づき、水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を、添加して生成される。
そして発生期の水素は、OHラジカルの生成に際し得られた3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素との反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)や、過酸化水素とOHラジカルとの反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル、に基づき生成されること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。
請求項7の蓚酸の製造方法では、請求項1において、OHラジカルが、マイクロリアクタを利用した光酸化法により、光照射にて光触媒に形成された正孔(hole)が、水分子を酸化しラジカル分裂させること、に基づき生成される。そして発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)フェントン処理装置のフェントン処理槽や、マイクロリアクタのマイクロ流路に、二酸化炭素の溶存水が供給される。
(2)そしてフェントン処理槽では、まずOHラジカルが生成され、もって発生期の水素が、水分子の酸化分解やヒドロペルオキシラジカルを経由して生成される。
(3)他方、マイクロ流路では、まずOHラジカルが、光触媒への光照射そして水分子の酸化,ラジカル分裂に基づき生成され、もって発生期の水素が、水分子の酸化分解により生成される。
(4)そして、このように生成された発生期の水素が、水溶液中に溶存する二酸化炭素を、還元することによって、蓚酸が合成される。
(5)合成された蓚酸は、更に、次の各ルートを辿ることが考えられる。まず、OHラジカルにて二酸化炭素へと酸化分解,再生される可能性があるが、再生された二酸化炭素は、発生期の水素にて分極,還元されて、元の蓚酸へと再生,回帰される。
(6)これに対し、このような二酸化炭素等への無駄な再生,回帰は、予め二酸化炭素を飽和状態としておくことにより、回避される。
(7)そして、合成され濃度が上昇した蓚酸は2水和物となり、飽和すると晶出する。
(8)他方、合成される蓚酸については、グリオキサールそしてエチレングリコールを生成する還元反応が、進行する可能性もある。
(9)さて上述したように、本発明は、フェントン処理装置や光触媒担持マイクロリアクタを利用し、OHラジカルそして発生期の水素を生成して二酸化炭素を還元し、もって蓚酸を合成する。このように、簡単容易な構成と工程により、スムーズ,安定的,かつ確実に、蓚酸を製造可能である。
(10)そこで、本発明の蓚酸の製造方法は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
蓚酸が、簡単容易に製造コスト等に優れて、製造可能となる。すなわち、本発明の製造方法では、フェントン法や光触媒担持マイクロリアクタを利用し、強力な還元力と共に簡単容易化された工程や製造設備により、処理の安定性,確実性,イニシアルコスト,ランニングコスト等々に優れつつ、蓚酸を高い収率で大量生産可能となる。更に、工業的価値の高いグリオキサールそしてエチレングリコールへの変換も、容易である。
又、前述したこの種従来技術の製造方法のように、事前の化学合成準備や、事後の化学的酸化分解処理、更には監視装置や事故防止装置の付設等も、要することがなく、蓚酸の大幅コストダウン,低価格化が実現される。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る蓚酸の製造方法について、発明を実施するための形態の説明に供し、フェントン処理装置の構成ブロック図である。
【図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、マイクロリアクタを示し、(1)図は、要部を拡大した断面説明図、(2)図は、分解斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《説明順序》
本発明の蓚酸の製造方法について、まず、前提となるフェントン法,OHラジカルの生成反応,発生期の水素の生成,マイクロリアクタ等について説明する。
それから、蓚酸合成の概要,その詳細,二酸化炭素の再生(その後のルート1),二酸化炭素の飽和(ルート1対策)等,蓚酸水和物(その後のルート2),グリオキサールやエチレングリコールの生成(その後のルート3)、等の順に説明する。
そして最後に、作用等について説明する。
【0014】
《フェントン法》
まず図1を参照して、本発明の前提となるフェントン法に基づくOHラジカルの生成について、説明する。
すなわち、本発明の蓚酸の製造方法では、まずOHラジカル(・OH)を生成し、これに基づき発生期の水素(H+e)を生成して、二酸化炭素(CO)を還元することにより、蓚酸(HOOC−COOH)を生成する。
OHラジカルの生成法としては、フェントン法が代表的であるので、まずフェントン法について説明する。図示したフェントン処理装置1は、原水槽2,フェントン処理槽3,回収槽4を順に備えており、フェントン処理槽3には、過酸化水素添加手段5,鉄イオン添加手段6,pH調整手段7,8、等が付設されている。
【0015】
このようなフェントン法について、更に詳述する。まず原水槽2には、常時連続的に純水(HO)が溶媒として導入されると共に、二酸化炭素(CO)が、溶質として溶解すべくバブリング注入され、もって二酸化炭素溶存水が、原水として形成される。炭酸イオン水ではなく炭酸ガス入り水溶液つまり炭酸水が、原水となる。
そして代表的には、二酸化炭素が飽和状態で溶存すると共に、常温常圧下に置かれる。すなわち二酸化炭素の注入は、気体である二酸化炭素の溶解度を上げるべく、常温又は常温以下で1気圧又は1気圧以上(ヘンリーの法則)の分圧下で行われる。
フェントン処理槽3は、pH調整手段7にて硫酸(HSO)や、pH調整手段8にてカセイソーダ(NaOH)が必要に応じ添加され、もって常時pH3〜5程度の弱酸性に調整されている。そして、原水槽2からフェントン処理槽3に供給された二酸化炭素溶存水に対し、反応当初において、過酸化水素添加手段5から過酸化水素(H)の水溶液が、全量添加される。
それから、過酸化水素が添加されたフェントン処理槽3に対し、間欠的に複数サイクル繰り返して、鉄イオン添加手段6から2価の鉄イオン(Fe2+)溶液が、分割添加される。
すなわち、液中で2価の鉄イオンを生じる物質、例えば硫酸第一鉄7水和物(FeSO・7HO)が、このような鉄塩として代表的に使用されるが、その他の無水塩や含水塩、例えば塩化鉄(FeCl)やその水和物も使用可能である。なお、鉄イオン添加手段6から添加される鉄イオンとしては、2価の鉄イオン(Fe2+)が代表的であるが、これに代え3価の鉄イオン(Fe3+)も使用可能である。
フェントン処理槽3内では、供給された二酸化炭素溶存水について、添加された過酸化水素と鉄イオンにて、まずOHラジカル(・OH)が、酸化剤として生成される。OHラジカルつまりヒドロキシラジカルは、周知のように強力な電子奪取力,酸化力,分解力を有すると共に、ラジカルで反応性に富んでおり、反応が激しいだけに存在時間が瞬間的であり、寿命の短い化学種でもある。
フェントン法については、以上のとおり。
【0016】
《OHラジカルの生成反応》
次に、このようなフェントン法に基づくOHラジカル生成工程における、OHラジカルの生成反応について説明しておく。フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内では、以下の反応式に基づきOHラジカルが生成される。
第1に、まず、添加された過酸化水素が、添加された鉄イオンにて還元されて、OHラジカルが生成される。次の化1,化2の反応式を参照。化1と化2の反応式を合成すると、化3の反応式となる。これがフェントン主反応である。
【0017】
【化1】

【化2】

【化3】

【0018】
第2に、上記第1のようにOHラジカルが生成されると共に、上記化2の反応式の過酸化水素の還元反応にて生成された水酸化イオン(OH)が、上記化1の反応式の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンにて酸化されて、OHラジカルが生成される。次の化4,化5の反応式を参照。このように、付随的,副次的,連鎖的な、OHラジカル生成も考えられる。
【0019】
【化4】

【化5】

【0020】
第3に、更に前記化3(化1,化2)や上記化4,化5の反応式にて生成されたOHラジカルが、溶媒の水と反応して、新たなOHラジカルと水とを生成する反応も、付随的,副次的,連鎖的に考えられる。次の化6,化7の反応式を参照。
【0021】
【化6】

【化7】

フェントン法では、このようにフェントン処理槽3において、主反応や各付随的,副次的,連鎖的反応によって、水溶液中に酸化剤であるOHラジカルが生成される。
OHラジカルの生成反応については、以上のとおり。
【0022】
《発生期の水素の生成》
次に、前提となる発生期の水素の生成工程について、図1も参照して説明する。フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内の水溶液中での発生期の水素の生成については、次の第1又は第2の工程が考えられる。次の第1,第2のいずれかの生成工程により、発生期の水素が生成される。
まず、第1の生成工程については、次のとおり。この工程において、発生期の水素は、水分子が前述により生成されたOHラジカルにて酸化攻撃され、酸化分解されることにより、生成される。
すなわち、フェントン処理槽3内では、下記の化8の反応式のように、OHラジカルは、水分子(HO)から水素原子を奪って酸化分解し、自身は水に回帰すると共に、酸素分子(O)を発生させつつ、発生期の水素(H+e)を、生成せしめる。還元剤として機能する発生期の水素(発生期の原子状水素,水素ラジカルとも称される)が、生成されて水相に拡散遊離する。
なお、生成された発生期の水素が、水素分子(H)化することは、3価の鉄イオンが触媒的に作用することにより、抑制される(この点は、後述する第2の生成工程についても同様)。
すなわちフェントン法では、フェントン処理槽3内に、前述したように2価の鉄イオンや3価の鉄イオンが存在する(化1,化5の反応式を参照)。そして、2価の鉄イオン(Fe2+)の3価の鉄イオン(Fe3+)への酸化時に、電子が放出され、3価の鉄イオンの2価の鉄イオンへの還元時に、電子が捕捉されることに基づき、発生期の水素(H+e)の水素分子(H)化が抑制される。一旦捕捉されていた電子が放出され、もってプロトン(H)と共に発生期の水素となる。
【0023】
【化8】

【0024】
第2の生成工程については、次のとおり。この工程において、発生期の水素は、OHラジカルの生成に際し得られた3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素(H)との反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)や、過酸化水素とOHラジカルとの反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル、に基づき生成される。
すなわち、フェントン処理槽3内では、前記化3(化1)の反応式の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンと、添加されていた過酸化水素とが、下記の化9の反応式にて反応し、ヒドロペルオキシラジカルが生成される可能性がある。過酸化水素がプロトン(H)を遊離し、3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに還元,再生されると共に、ヒドロペルオキシド(HO)に電子1個が付加されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)が生成される。
他方、前述により生成されたOHラジカルが、下記の化10の反応式にて、過酸化水素と反応することによっても、ヒドロペルオキシラジカルが生成される可能性もある。OHラジカルが過酸化水素の水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰すると共に、ヒドロペルオキシラジカルを生成せしめる。
そして、このように生成されたヒドロペルオキシラジカルは、次の化11の反応式にて、発生期の水素(H+e)と酸素分子とに容易に分解される。このような生成反応に基づき、発生期の水素が生成される。
【0025】
【化9】

【化10】

【化11】

発生期の水素の生成については、以上のとおり。
【0026】
《マイクロリアクタ9について》
次に、図2を参照して、光触媒10担持マイクロリアクタ9について、説明する。本発明では、前提となるOHラジカルの生成や発生期の水素の生成について、上述したフェントン法に換え、光触媒10担持マイクロリアクタ(MR)9を、採用することも可能である。
すなわちOHラジカルが、マイクロリアクタ9を利用した光酸化法により、紫外線等の光照射にて光触媒10に形成された正孔が、水分子を酸化しラジカル分裂させることに基づき生成される。そして発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成される。
【0027】
このようなマイクロリアクタ9について、更に詳述する。二酸化炭素(CO)が溶質として溶存した水溶液、代表的には飽和状態で溶存した水溶液が、原水として原水槽2から、シリンジポンプ等のマイクロポンプ11やマイクロチューブ12を経由して、例えば肉厚2mm程度の3枚重ねのガラスプレート13製のマイクロリアクタ9に形成されたマイクロ流路14に、圧入供給される。もって二酸化炭素溶存水が、微細構造のマイクロ流路14内を層流となって流れる。
マイクロ流路14は、流路幅が数10μm〜数1,000μm程度、例えば100μm〜500μm程度で、流路深さが数μm〜数100μm程度、例えば25μm〜100μm程度よりなると共に、図示例ではチャンネル状,略ジグザグ蛇行状に中央のガラスプレート13に刻設形成されている。これと共に、マイクロ流路14に対しては、代表的には、UV−LED等の紫外線照射手段15から、例えば波長20nm〜300nm程度の紫外線(光量子hν)が照射される。なお紫外線照射に代え、例えば波長400nm〜700nm程度の可視光線を照射することも可能である。
もって、マイクロ流路14に塗布され付着コートされた例えば二酸化チタンよりなる光触媒10は、表面の原子構造の外殻軌道(定常軌道)の電子(e)が、光励起されて励起軌道に移るので、外殻軌道には、電子欠損空孔である正孔(hole)が形成される。下記化12の反応式を参照。
すると、二酸化炭素溶存水の溶媒である水分子(HO)は、接触する光触媒10の正孔にて電子(e)が引き抜かれ,収奪されて酸化され、もって、プロトン(H)とOHラジカル(・OH)とにラジカル分裂する。下記化13の反応式を参照。
そして、水相に生成された酸化剤であるOHラジカルは、溶媒の水分子を酸化分解し、もって酸素分子(O)を生成,遊離しつつ、還元剤として機能する発生期の水素(H+e)を生成せしめ、自らは水に回帰する。下記化14の反応式を参照。化12,13,14の反応式を合成すると、化15の反応式となる。
なお、生成されて水相に遊離した発生期の水素は、光触媒10に形成された正孔に一旦吸着されるか、電子が一旦引き抜かれた後に放電されるので、その水素分子化は抑制され、水相にプロトンが遊離する。
【0028】
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

マイクロリアクタ9については、以上のとおり。
【0029】
《蓚酸合成の概要》
次に、蓚酸の合成工程について説明する。本発明では、水溶液中に溶存する二酸化炭素(CO)を出発物質とし、発生期の水素(H+e)にて還元することにより、生成物質として蓚酸(HOOC−COOH)を製造する。
すなわち二酸化炭素について、一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)とアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素の電子(e)とプロトン(H)が、それぞれ還元付加反応し、もって、2モルの二酸化炭素の炭素間が単結合することにより、1モルの蓚酸が合成される。
次の化16は、その反応式であり、化17,化18は、その構造式のプロセス模式図である。
【0030】
【化16】

【0031】
【化17】

【化18】

蓚酸合成の概要については、以上のとおり。
【0032】
《蓚酸合成の詳細》
次に、このような還元反応による蓚酸の合成について、上記化16,化17,化18の反応式等、更には図1,図2も参照して、更に詳述する。前述したように、フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内や、光触媒10担持マイクロリアクタ9のマイクロ流路14内では、水溶液中に発生期の水素が生成されることが考えられる。もって、還元雰囲気が形成される。
そこで、このような還元雰囲気下においては、溶存炭酸ガスつまり二酸化炭素(O=C=O)は、次のようになる。すなわち、その(共鳴的に移動する)いずれか一方のカルボニル基(C=O)は、分子式の炭素原子と酸素原子間の電気陰性度(2原子間の電子引き付け度)の差異に基づき、炭素原子より電気陰性度が強い酸素原子の影響で、部分分極している。
すなわち、カルボニル構造の電子は、カルボニル構造が崩され酸素原子側に引き付けられることで、結合が分極化する(酸化雰囲気下のカルボニル構造C=Oから、還元雰囲気下の分極構造C−Oへ)(化17の構造式を参照)。
【0033】
そして、このように分極した二酸化炭素を、発生期の水素(H+e)が還元攻撃する。すなわち、分極してプラス電荷を帯びカチオン化した炭素原子(カルボカチオン,C)に対し、発生期の水素の電子(e)が、還元付加反応する。これと共に、マイナス電荷を帯びアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素のプロトン(H)が、還元付加反応する。
このように、発生期の水素は、電子とプロトンの供給源となり、両者に連鎖的に弁別され、分極状態の二酸化炭素(O=C−O)に取付いて反応する。その結果、2モルの二酸化炭素の炭素の不対電子(上述により炭素に還元付加反応した電子)同士が、共有電子対となって結合することにより、つまりカルボキシル基(COOH)間で炭素が単結合することにより、蓚酸(HOOC−COOH)が二量体として合成される(化18の構造式を参照)。
フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、このようにして、出発物質である2モルの二酸化炭素が、2モルの発生期の水素にて還元されて、1モルの蓚酸が生成物質として合成される(化16の反応式を参照)。もって、蓚酸の水溶液が、遂時的,連続的に回収槽4に回収される。
蓚酸生成の詳細については、以上のとおり。
【0034】
《二酸化炭素の再生(その後のルート1)》
次に、このように合成された蓚酸について、その後のルートの可能性について、図1,図2も参照して説明する。合成された蓚酸は、更にその後、遂時的,連鎖的に次のルート1,2,3により、反応等が進行して行く可能性がある。
まず、蓚酸合成後のルート1として、二酸化炭素の再生について、説明する。前述により生成物質として合成された蓚酸(HOOC−COOH)は、事後、OHラジカルにて出発物質の二酸化炭素(CO)へと、酸化分解される可能性がある。
化19は、その構造式のプロセス模式図である。
【0035】
【化19】

【0036】
このような二酸化炭素の再生について、上記化19の構造式を参照して更に詳述する。前述したように、フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内や、光触媒10担持マイクロリアクタ9のマイクロ流路14内では、所期の通り、水溶液中に蓚酸が合成される。
しかし合成された蓚酸は、前述により生成されたOHラジカルの酸化攻撃を受けることにより、その2モルのカルボキシル基(COOH)の水酸基(OH)の水素原子2モルを、OHラジカルにより奪われて酸化され、OHラジカルは水に帰す。
そして残基は、電子移動に伴い電子状態が変化する。すなわち、それぞれ水素原子を奪われた酸素原子2モルは、それぞれ、酸素原子端の不対電子と、C−C結合の対電子の1個ずつの取り分けとにより、炭素原子と2重結合化つまりカルボニル基(C=O)化する。OHラジカルによる酸化雰囲気下では、炭素原子に対する酸素原子の酸化度合いが高められ、分極構造(C−O)はカルボニル構造化する。
このようにして水溶液中では、1モルの蓚酸が2モルの二酸化炭素へと、酸化分解されて回帰する可能性がある。
二酸化炭素の再生(その後のルート1)については、以上のとおり。
【0037】
《二酸化炭素の飽和(ルート1対策)等》
次に、二酸化炭素の飽和等について、図1,図2も参照して説明する。まず、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、上述したように元に回帰,再生された二酸化炭素は、その分極化した一方のカルボニル基に対し、発生期の水素が還元付加反応することにより、元の蓚酸へと再合成,回帰,再生されることになる(前述した化16,化17,化18の反応式等を参照)。
ところで、このような一旦合成された蓚酸の二酸化炭素への回帰,再生、そして蓚酸への回帰,再生の無駄な循環ルートは、予め二酸化炭素を飽和状態で溶存しておくことによって、回避される。
すなわち、図1,図2に示した例では、原水槽2から供給される水溶液について、二酸化炭素(炭酸ガス)の飽和水相状態とし、水面上の気相も二酸化炭素(炭酸ガス)で覆っておくことにより、化学平衡上、生成物質の蓚酸の出発物質の二酸化炭素への酸化分解,回帰,再生は、抑えられる。
図示例では、原水槽2に連続的に二酸化炭素をバブリング注入し続けることにより、化学平衡状態となり、化19の構造式にて二酸化炭素を遊離させる方向には、化学平衡は進まなくなる。
このように二酸化炭素は、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において飽和状態で溶存すべく、水溶液中に連続的に注入される。もって、二酸化炭素への回帰,再生もなく、前述した蓚酸の合成に基づき、所期の通り蓚酸の還元合成反応が進展し、水溶液中の蓚酸濃度が上昇して行く。
二酸化炭素の飽和(ルート1対策)等については、以上のとおり。
【0038】
《蓚酸水和物(その後のルート2)》
次に、蓚酸合成後のルート2として、蓚酸水和物について、図1,図2も参照して説明する。
前述した所に基づき二酸化炭素から合成される蓚酸は、濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出する。
化20,化21,化22は、これらの構造式のプロセス模式図である。
【0039】
【化20】

【0040】
【化21】

【化22】

【0041】
このような蓚酸水和物について、上記化20,化21,化22の構造式を参照して、更に詳述する。前述したように、予め二酸化炭素を飽和状態としておくことにより、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、蓚酸の還元合成反応が進展し、水溶液中の蓚酸濃度が向上していく。
そして蓚酸濃度の上昇は、蓚酸の電離平衡変化を促すが、それに見合う水の電離変化も促す。そして、電離した水(H+OH)が、蓚酸の2モルのカルボニル基(C=O)の部分分極(C−O)と反応する(化20の構造式を参照)。
そして、このような分極が、部分的な水の電離を吸収する形で、蓚酸の2水和物(HOOC−COOH・2HO)が形成される(化21の構造式を参照)。つまり、同一炭素原子に接続する2モルの水酸基(−OH)は、構造水(HO)と、炭素原子に接続する二重結合の酸素原子(=O)とみなせる。
そして回収槽4には、このような蓚酸の2水和物が回収される。ここで、水溶液中の蓚酸の濃度が更に上昇して、飽和点に達すると、蓚酸の2水和物は、液体からの結晶化,固体化が始まり、2水和物結晶として晶出する(化21の構造式を参照)。
この2分子の結晶水を含む蓚酸の2水和物結晶,結晶蓚酸は、水溶液の系外に出たことになり、2水塩で安定する(水の電離で生じている水酸イオンOHが求核剤となり、そのカチオン化した炭素原子Cに対し、付加和合する)。そして濾過等により取出される。なお結晶水を飛ばすと、粉状の無水和物である無水蓚酸の結晶となる(化22の構造式を参照)。
蓚酸水和物については、以上のとおり。
【0042】
《グリオキサール,エチレングリコールの生成(その後のルート3)》
次に、蓚酸合成後のルート3として、グリオキサール,エチレングリコールの生成について、説明する。
フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、前述したように、出発物質の二酸化炭素を飽和状態としておくことにより、生成物質である蓚酸の還元合成が進展する。
そして、このように合成された蓚酸(最も簡単な2価のカルボン酸)は、グリオキサール((CHO))(最も簡単な2価のアルデヒド)、そして、エチレングリコール(HOCHCHOH)(最も簡単な2価のアルコール)へと、還元反応される可能性がある。
化23,化24,化25,化26は、これらの構造式のプロセス模式図である。
【0043】
【化23】

【化24】

【0044】
【化25】

【化26】

【0045】
グリオキサール,エチレングリコールの生成について、上記化23,化24,化25,化26の構造式を参照して、更に詳述する。
まず蓚酸は、前述した水和物結晶化前の水溶液中にあることを前提に、その濃度上昇に伴い、カルボニル基(C=O)が分極化し電離状態となり易い(化23の構造式を参照)。このような分極化については、前記化20の構造式や、発生期の水素による還元雰囲気等を参照。
そして、分極してプラス電荷を帯びカチオン化した炭素原子(カルボカチオン,C)に対し、ヒドリドイオン(H)が還元付加反応する。これと共に、マイナス電荷を帯びアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素等のプロトン(H)が随伴して、還元付加反応する(化23の構造式を参照)。
もって、グリオキサール(OHC−CHO)が、生成される(化24の構造式を参照)。グリオキサールは、防腐保存液,皮なめし,レーヨン防縮加工等に用いられる。
なお、上記したヒドリドイオン(H、つまりH+2e)は、水素原子に電子1個が付加して生じたイオンであり、このように陰イオン化した水素は、前述により発生期の水素(H+e)(化8,化11,化14,化15等の反応式を参照)に基づき、生成される。フェントン法の場合は、添加された2価の鉄イオン(Fe2+)と発生期の水素との反応により、3価の鉄イオン(Fe3+)と共に生成される。
【0046】
そして、このように生成されたグリオキサールは、融点の15℃以上であれば晶出することなく水溶液として存在するので、前述に準じ、そのカルボニル基が分極化する(化25の構造式を参照)。これと共に、ヒドリドイオンやプロトンが還元付加反応することにより、常温下で液体のエチレングリコールが生成される(化26の構造式を参照)。
エチレングリコールは、周知のように、PET樹脂,ポリエステル,不凍液,ダイナマイト,溶媒等々、プラスチック,合成繊維,その他の原料として広く用いられる。
グリオキサール,エチレングリコールの生成(その後のルート3)については、以上のとおり。
【0047】
《作用等》
本発明の蓚酸の製造方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)フェントン処理装置1やマイクロリアクタ9について、二酸化炭素(CO)の溶存水が、原水槽2からフェントン処理槽3やマイクロ流路14に、供給される(図1,図2を参照)。二酸化炭素は、代表例では飽和状態で溶存されている。
【0048】
(2)フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内では(図1を参照)、まず、前提となるOHラジカル(・OH)が、過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を用いるフェントン法に基づき、生成される(化1〜7を参照)。
そして、次の前提となる発生期の水素(H+e)が、OHラジカルにて、水分子を酸化分解することにより(化8を参照)、又はヒドロペルオキシラジカル(HO・)を経由することにより、生成される(化10,化11を参照)。
ヒドロペルオキシラジカルそして発生期の水素は、3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素の反応によっても、生成される(化9,化11を参照)。
【0049】
(3)他方、マイクロリアクタ9のマイクロ流路14内では(図2を参照)、まず、前提となるOHラジカルが、光触媒10への紫外線等の光照射そして水分子の酸化,ラジカル分裂に基づき、生成される(化12,化13を参照)。
そしてOHラジカルにて、次の前提となる発生期の水素が、水分子の酸化分解により生成される(化14,化15を参照)。
【0050】
(4)もって、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、発生期の水素が、水溶液中に溶存する二酸化炭素を還元することによって、蓚酸(HOOC−COOH)が合成される(化16,化17,化18を参照)。
すなわち、二酸化炭素の一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)とアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素の電子(e)とプロトン(H)が、それぞれ還元付加反応する。そして、2モルの二酸化炭素の炭素間が単結合することにより、1モルの蓚酸が合成される。
【0051】
(5)フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、このように合成された蓚酸は、更にその後、遂時的,連鎖的に次の各ルート1,2,3を辿る可能性がある。
まず、合成後のルート1として、合成された蓚酸は、OHラジカルにて二酸化炭素へと酸化分解,再生される可能性がある(化19を参照)。そして、このように再生された二酸化炭素は、再び発生期の水素にて分極,還元されて、元の蓚酸へと再生,回帰されることになる(化16,化17,化18を参照)。
【0052】
(6)これに対し、このようなルート1の二酸化炭素等への無駄な再生,回帰は、予めフェントン処理槽3内やマイクロ流路14内の二酸化炭素を、飽和状態としておくことにより、回避される。
そこで代表例では、二酸化炭素は、飽和状態で溶存すべく水溶液中に連続的に注入される。もって、代表例では所期の通り、前記項目(4)に従い蓚酸の合成が進展し、水溶液中の蓚酸濃度が上昇して行く。
【0053】
(7)そこで、合成後のルート2として、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、このように合成されて濃度が上昇する蓚酸は、次のようになる。
すなわち蓚酸は、濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出する(化20,化21,化22を参照)。
【0054】
(8)更に、合成後のルート3として、代表例では、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、合成される蓚酸については、次のように還元される可能性もある。
すなわち蓚酸について、カルボニル基の分極と、ヒドリドイオン(H)やプロトン(H)の還元付加反応とに基づき、グリオキサール((CHO))、そしてエチレングリコール(HOCHCHOH)を生成する反応が、進行することも考えられる(化23,化24,化25,化26を参照)。
【0055】
(9)以上のように、本発明の蓚酸の製造方法は、フェントン処理装置1や光触媒10担持マイクロリアクタ9を利用し、OHラジカルそして発生期の水素を生成して、二酸化炭素を還元し、もって蓚酸を合成する。
このように、フェントン法やマイクロリアクタを利用することにより、簡単容易な構成の製造設備と、強力な還元力によるスムーズな工程とにより、蓚酸が、安定的かつ確実に高い収率で製造可能となる。更に代表例では、出発物質の二酸化炭素を飽和状態としておくことにより、一段とスムーズに、蓚酸水和物が得られるようになる。
本発明の作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0056】
1 フェントン処理装置
2 原水槽
3 フェントン処理槽
4 回収槽
5 過酸化水素添加手段
6 鉄イオン添加手段
7 pH調整手段
8 pH調整手段
9 マイクロリアクタ
10 光触媒
11 マイクロポンプ
12 マイクロチューブ
13 ガラスプレート
14 マイクロ流路
15 紫外線照射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中に溶存する二酸化炭素(CO)を、発生期の水素(H+e)にて還元することにより、蓚酸(HOOC−COOH)を製造する方法であって、
二酸化炭素について、一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)とアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素の電子(e)とプロトン(H)が、それぞれ還元付加反応し、
もって、2モルの二酸化炭素の炭素間が単結合することにより、1モルの蓚酸が合成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、二酸化炭素は、水溶液中に飽和状態で溶存せしめられていること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、合成される蓚酸は、濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出すること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、合成された蓚酸は、事後、OHラジカルにて二酸化炭素(CO)へと酸化分解される可能性があるが、酸化分解された二酸化炭素については、その分極化した一方のカルボニル基に対し発生期の水素が還元付加反応することにより、蓚酸が再合成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、OHラジカル(・OH)が、フェントン法に基づき、水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を添加して生成され、
発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項6】
請求項1において、OHラジカル(・OH)が、フェントン法に基づき、水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を添加して生成され、
発生期の水素は、OHラジカルの生成に際し得られた3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素との反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)や、過酸化水素とOHラジカルとの反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル、に基づき生成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、OHラジカルが、マイクロリアクタを利用した光酸化法により、光照射にて光触媒に形成された正孔(hole)が、水分子を酸化しラジカル分裂させること、に基づき生成され、
発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−229174(P2012−229174A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97810(P2011−97810)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】