薄切片作製装置
【課題】カッターによって包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、搬送ベルトを湿潤状態として確実に受け取って搬送することが可能な薄切片作製装置を提供する。
【解決手段】薄切片作製装置1は、包埋ブロックBを薄切するカッター3と、カッター3を支持する固定台16及びカッター3を上側から挟み込む刃押さえ17を有するカッター固定部15と、包埋ブロックBを固定する試料台2と、試料台2をカッター3に対して所定の送り方向Xに相対移動させる送り手段4と、カッター3の切れ刃3a後方に配置され液体Wが貯留された液槽6と、カッター3の上方に設けられた第一折返し部20a及び液槽6の内部に設けられた第二折返し部20bを有し薄切片B1を液槽6まで搬送する無端状の搬送ベルト20とを備え、刃押さえ17の上面には液体Wを貯留する液体貯留部18が形成され搬送ベルト20の第一折返し部20aは、液体貯留部18の内部に配置されている。
【解決手段】薄切片作製装置1は、包埋ブロックBを薄切するカッター3と、カッター3を支持する固定台16及びカッター3を上側から挟み込む刃押さえ17を有するカッター固定部15と、包埋ブロックBを固定する試料台2と、試料台2をカッター3に対して所定の送り方向Xに相対移動させる送り手段4と、カッター3の切れ刃3a後方に配置され液体Wが貯留された液槽6と、カッター3の上方に設けられた第一折返し部20a及び液槽6の内部に設けられた第二折返し部20bを有し薄切片B1を液槽6まで搬送する無端状の搬送ベルト20とを備え、刃押さえ17の上面には液体Wを貯留する液体貯留部18が形成され搬送ベルト20の第一折返し部20aは、液体貯留部18の内部に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や実験動物等から取り出した生体試料を包埋した包埋ブロックを切削して薄切片を作製する薄切片作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製した後に、染色処理を行い、生体試料を観察する方法が知られている。このような包埋ブロックから作製される薄切片は、細胞レベルの観察を可能とするため、3〜5μm程度の厚さで均一に、かつ、包埋されている生体試料を損傷しないように切削する必要がある。このため、従来このような包埋ブロックから薄切片を作製する作業は、鋭利な状態に保たれた薄刃のカッターを使用して、熟練な作業者による手作業に委ねられてきた。一方、例えば、前臨床試験においては、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片を作製する。このため、作業者は膨大な枚数の薄切片を作製する必要があるため、近年、薄切片を作製する一連の工程の自動化が望まれている。
【0003】
このような薄切片の作製を自動化する薄切片作製装置としては、包埋ブロックを薄切するカッターと、包埋ブロックを固定する試料台をカッターに向かって移動させて、カッターによって包埋ブロックを薄切させる送り機構と、薄切片が載置されて薄切片を搬送するベルトと、カッターの切れ刃の向きと略平行に切れ刃と近接してカッターの上方に設けられた方向切替部と、カッターの後方に設けられた後部ローラと、カッターの後方で水が満たされ、搬送ベルトの一部が浸漬されている液槽とを備える構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、このような薄切片作製装置においては、カッターによって包埋ブロックを薄切しつつ搬送ベルトを走行させる。このようにすることで、包埋ブロックから作製される薄切片は、搬送ベルトに受け取られて後方の液槽まで搬送され、搬送ベルトから離脱して液槽の水に浮かべられる。ここで、搬送ベルトは、無端状のベルトで、液槽の水の内部を通過することで、常に湿潤状態に保たれており、これにより表面張力を作用させて薄切片を受け取ることができるとされている。
【特許文献1】特開2007−178287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による装置よれば、搬送ベルトは、後方の液槽において水に浸漬して湿潤状態となった後に、前方へ走行して折り返して薄切片を受け取ることとなる。このため、搬送ベルトに含まれた水分は、液槽が配置された後方から薄切片を受け取る前方へ移動する間に、滴下し、あるいは、蒸散してしまうこととなり、薄切片を受け取る際に十分に湿潤な状態とすることができない場合があった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、カッターによって包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、搬送ベルトを湿潤状態として確実に受け取って搬送することが可能な薄切片作製装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の薄切片作製装置は、包埋ブロックを薄切するカッターと、該カッターを支持する固定台、及び、該固定台に対して前記カッターを上側から挟み込む刃押さえを有するカッター固定部と、包埋ブロックを固定する試料台と、該試料台を前記カッターに対して所定の送り方向に相対移動させて、該カッターによって包埋ブロックを薄切させる送り手段と、前記カッターの切れ刃後方に配置され、液体が貯留された液槽と、前記カッターの上方に設けられた第一折返し部及び前記液槽の内部に設けられた第二折返し部を有し、包埋ブロックから薄切された薄切片を前記液槽まで搬送する無端状の搬送ベルトとを備え、前記カッター固定台の前記刃押さえの上面には、液体を貯留する液体貯留部が形成され、前記搬送ベルトの前記第一折返し部は、前記液体貯留部の内部に配置されていることを特徴としている。
【0008】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、包埋ブロックを試料台に固定し、送り手段によってカッターに対して所定の送り方向に試料台とともに包埋ブロックを相対移動させることで、カッターによって包埋ブロックを薄切し、薄切片を作製していくことができる。この際、無端状の搬送ベルトを第一折返し部及び第二の折返し部で折り返すようにして走行させ、カッターの上方の第一折返し部で折り返された搬送ベルトによって作製されていく薄切片を受け取ることができる。ここで、搬送ベルトは、後方の第二折返し部で液槽の液体に浸漬するとともに、折返して前方へ走行し、第一折返し部で刃押さえの上面に形成された液体貯留部の液体に浸漬した後に、薄切片を受け取ることとなる。すなわち、搬送ベルトは、薄切片を受け取る直前に液体貯留部を通過することで、好適な湿潤状態として確実に薄切片を受け取り、搬送することができる。
【0009】
また、上記の薄切片作製装置において、前記搬送ベルトの前記第一折返し部と、前記液体貯留部の前記切れ刃側の壁面との間には、該壁面の上端から前記搬送ベルトの薄切片が載置される表面に向かって、表面張力によって貯留される液体の液面が傾斜して形成されるように間隙が形成されていることがより好ましい。
【0010】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、液体貯留部の切れ刃側の壁面の上端から搬送ベルトの薄切片が載置される表面に向かって貯留される液体の液面が傾斜して形成されているので、作製される薄切片は、この液面に吸着されて搬送ベルトの表面に誘導されることとなる。このため、より確実に搬送ベルトによって薄切片を受け取って搬送することができる。
【0011】
また、上記の薄切片作製装置において、前記液体貯留部に液体を給排する給排手段を備えることがより好ましい。
【0012】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、給排手段により液体貯留部に液体を給排することができるので、液体貯留部に貯留される液体の量を最適な状態として、搬送ベルトを好適に湿潤状態とすることができる。
【0013】
また、上記の薄切片作製装置において、前記給排手段は、液体を供給する供給管と、液体を排出する排出管とを有し、前記供給管と前記排出管との一方が、前記搬送ベルトの幅方向略中央に配置されているとともに、他方が、前記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置されていることがより好ましい。
【0014】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、給排手段において、供給管と排出管の一方が搬送ベルトの幅方向略中央に配置され、他方が幅方向両側に配置されていることで、液体貯留部において供給から排出までの搬送ベルト幅方向の距離を短くすることができる。このため、給排手段によって、搬送ベルトの幅方向に速やかに液体の供給、排出を行うことができるとともに、搬送ベルトを幅方向により均等に湿潤状態とすることができる。
【0015】
また、上記の薄切片作製装置において、前記送り手段によって前記カッターに対して前記試料台を相対移動させて包埋ブロックを薄切させるのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部に予め設定された必要量だけ液体を供給するとともに、前記カッターと前記送り手段とによる包埋ブロックの薄切が完了するのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部の液体を排出させる制御部を備えることがより好ましい。
【0016】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、制御部によって給排手段を制御し、包埋ブロックを薄切して薄切片を作製するのに応じて液体貯留部に必要量だけ液体を供給し、また、包埋ブロックの薄切が完了するのに応じて液体貯留部の液体を排出させることで、薄切片を受け取る際には、常に最適な量の液体を液体貯留部に貯留して、より好適に搬送ベルトを湿潤状態とすることができる。
【0017】
また、上記の薄切片作製装置において、前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部の底面は親水性を有していることがより好ましい。
【0018】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、底面が親水性を有しているので、液体貯留部に供給された液体を円滑に全体に亙って行き渡らせることができ、搬送ベルトをより均等に湿潤状態とすることができる。
【0019】
また、上記の薄切片作製装置において、前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部を囲む壁面は疎水性を有していることがより好ましい。
【0020】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、壁面が疎水性を有しているので、液体貯留部に貯留された液体が外側へ溢れるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の薄切片作製装置によれば、刃押さえに液体貯留部が形成され、搬送ベルトの第一折返し部が液体貯留部の内部に配置されているので、カッターによって包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、搬送ベルトを湿潤状態として確実に受け取って搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1から図7は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1及び図2に示す薄切片作製装置1は、生体試料が包埋された包埋ブロックBから厚さ3〜5μm程度の極薄の薄切片を作製し、薄切片に含まれる生体試料を検査、観察する過程において、自動的に、包埋ブロックBから薄切片を薄切し、次工程に搬送する装置である。生体試料は、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器などの組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野などで適時選択されるものである。また、包埋ブロックBは、上記のような生体試料を包埋剤によって包埋、すなわち周囲を覆い固めたものである。ここで、包埋剤は、上記のように液状化と冷却固化が容易に可能とされるとともに、エタノールに浸漬することで溶解する材質であり、樹脂やパラフィンなどである。また、包埋ブロックBは、基本的に略長方形の切削面B2を有した直方体状に成形されており、本実施形態においても、直方体状に形成されているものとして説明するが、必ずしもこのような形状に限られるものではない。以下、薄切片作製装置1の構成について説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBが載置されたカセットCを固定する試料台2と、包埋ブロックBを薄切するカッター3と、試料台2を移動させる送り手段である送り機構4と、カッター3によって包埋ブロックBから薄切された薄切片B1を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段5と、搬送手段5で搬送された薄切片B1を受け取る薄切片受取手段である液槽6と、各構成を制御する制御部であるコントローラ7とを備える。試料台2には、包埋ブロックBが載置されたカセットCを挟持部材9a、9bにより二方向から挟み込んで固定するとともに、位置決めするブロック固定機構9が設けられている。
【0024】
送り機構4は、試料台2の下方に設けられ、試料台2に固定された包埋ブロックBを薄切する送り方向Xに移動させるXステージ4aと、包埋ブロックBを厚さ方向Zに位置調整するZステージ4bとを有する。そして、コントローラ7は、Xステージ4aによって一定の送り速度で、カッター3に向かって送り方向Xに試料台2を移動させることが可能であり、これによりカッター3によって送り速度で試料台2に固定された包埋ブロックBを薄切していくことが可能となっている。また、コントローラ7は、Zステージ4bによって一定量だけ厚さ方向Zに包埋ブロックBを移動させることが可能であり、これにより対応する厚さだけカッター3によって包埋ブロックBを薄切することが可能となっている。
【0025】
ここで、試料台2と隣接する位置には、包埋ブロックBのサイズを検出するブロックサイズ検出器10と、包埋ブロックBの位置を検出するブロック位置検出器11と、包埋ブロックBの種類を検出するブロック種類検出器12とが設けられている。ブロックサイズ検出器10は、例えば、試料台2の上方に配置される撮像手段と、該撮像手段からの画像を解析する解析手段とで構成されており、包埋ブロックBの切削面B2を撮像した画像データを解析することにより、包埋ブロックBの切削面B2の送り方向Xに沿う辺の長さと、これと直交する方向の辺の長さとを検出することが可能となっている。ブロック位置検出器11は、例えば、レーザ光により包埋ブロックBの位置を検出するもので、レーザ光を送り方向Xと直交する方向で、包埋ブロックBに向かって照射し、その反射光を検出することで、包埋ブロックBの送り方向Xの位置を検出することが可能となっている。なお、上記のブロックサイズ検出器10の撮像手段によって包埋ブロックBの位置を検出することも可能である。また、ブロック種類検出器12は、例えば、バーコード及び2次元バーコードリーダであり、カセットCに予め印刷されているバーコード及び2次元バーコードを読み取ることでカセットCに載置された包埋ブロックBの種類を検出することが可能となっている。
【0026】
また、カッター3は、カッター固定部15に固定されている。カッター固定部15は、カッター3の切れ刃3aを下向きとして所定の角度で傾斜するようにして支持する固定台16と、固定台16に対してカッター3を上側から挟み込む刃押さえ17とを有している。なお、図示しないがカッター固定部15の固定台16の両端は、装置の外郭をなすフレームに固定されている。また、刃押さえ17の上面17aは、液体貯留部18として、凹状に形成されていて、後述するように給排手段25によって液体として水Wを貯留することが可能となっている。ここで、図4に示すように、刃押さえ17は、上面17a及びカッター3の切れ刃3a側に面してカッター3の傾斜と対応するように傾斜した前面17bで、疎水性となる表面処理が行われている。また、刃押さえ17の液体貯留部18においては、底面18bで親水性となる表面処理が行われているとともに、底面18bを囲む壁面18a、18c、18d、18eで疎水性となる表面処理が行われている。親水性の表面処理は、例えば、酸化チタン膜を形成するなどして行われている。また、疎水性の表面処理は、例えば、フッ素樹脂のコーティングなどによって行われている。なお、刃押さえ17自体を形成する材質を親水性または疎水性の材質とし、対応する箇所のみで疎水性または親水性の表面処理を行うものとしても良い。また、本実施形態では、カッター3は、切れ刃3aが送り機構4による包埋ブロックBの送り方向Xと直交するようにカッター固定部15に固定されており、すなわち、引き角を90度として説明する。
【0027】
また、薄切片受取手段である液槽6は、液体として例えば水Wが貯留されており、包埋ブロックBから作製され、搬送された薄切片B1を浮遊させて、次工程のスライドガラスへの薄切片の引渡しを可能とさせるものである。また、搬送手段5は、搬送方向Yに沿ってカッター3の上方から液槽6の内部まで配設された無端状の搬送ベルト20と、搬送ベルト20を走行させるローラ群21と、ローラ群21の一つである中間ローラ21cを回転駆動させる搬送駆動部22とを有する。ここで、搬送ベルト20による搬送方向Yは、平面視してカッター3の切れ刃3aと直交するように設定されていて、引き角を90度とする本実施形態においては、平面視して送り方向Xと略一致している。搬送ベルト20は、本実施形態では、網目状に形成されていて、特に水Wをしみ込みやすくするため親水性の線材で形成されていることが好ましい。
【0028】
ローラ群21は、カッター3に近接する側で搬送ベルト20を第一折返し部20aとして折り返す方向切替ローラ21aと、カッター3の切れ刃3a後方となる液槽6内部に設けられて搬送ベルト20を第二折返し部20bとして折り返す後部ローラ21bと、方向切替ローラ21aと後部ローラ21bとの間で搬送ベルト20の角度を変更する中間ローラ21c、21dとを有する。方向切替ローラ21aは、少なくとも一部が液体貯留部18の内部に収容されて、カッター3の切れ刃3aの向きと略平行となるようにして、刃押さえ17に回転可能に支持されている。そして、図3に示すように、搬送ベルト20は、下方から方向切替ローラ21aに巻き回されて第一折返し部20aで上方へ折り返され、当該第一折返し部20aで上方に折り返した位置を受取位置Pとして、カッター3によって薄切された薄切片B1を受け取ることが可能となっている。また、上記のように方向切替ローラ21aが液体貯留部18の内部に収容されているから、液体貯留部18に水Wが貯留された状態では、第一折返し部20aを折り返された搬送ベルト20は、液体貯留部18の水Wで湿潤な状態とすることが可能となっている。
【0029】
ここで、図3に示すように、方向切替ローラ21aと、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aとの離間距離は、大きくなると、搬送ベルト20が包埋ブロックBから薄切されて受取位置Pまで延びてくる薄切片B1と離れてしまうので、できる限り小さくする方が好ましい。一方で、搬送ベルト20が液体貯留部18の壁面18aと接触してしまうと、搬送ベルト20の走行が阻害され、また、液体貯留部18の水Wが壁面18a側に行き渡らないことから、方向切替ローラ21aは壁面18aと僅かに離間していることが好ましい。特に、液体貯留部18に貯留される液体の種類と、搬送ベルト20の材質にもよるが、搬送ベルト20と壁面18aとを所定の間隙に設定することで、貯留される液体の液面W2が、壁面18aの上端18fから搬送ベルト20の薄切片B1が載置される表面20cに向かって、表面張力によって傾斜して形成されるようになり、該液面W2により薄切片B1を吸着して誘導することができるので、より好ましい。
【0030】
また、図1に示すように、後部ローラ21bは、液槽6の内部で、液槽6に回転可能に支持されていて、液槽6に貯留された液体である水Wに浸漬されている。このため、薄切片B1を載置しつつ液槽6に向かって走行する搬送ベルト20の上側は、後部ローラ21bで第二折返し部20bとして下方へ折り返されて、第一折返し部20aに向かって走行することが可能となっている。また、搬送ベルト20は、第二折返し部20b近傍で、液槽6内部の水Wに浸漬されることとなり、液面W3と接する位置を引渡位置Qとして薄切片B1を水Wに引き渡すことが可能となっている。
【0031】
また、コントローラ7は、搬送駆動部22を制御することにより、後述するように、搬送ベルト20を受取速度、搬送速度、及び、引渡速度の3種類の速度で走行させることが可能となっている。ここで、受取速度は、作製された薄切片B1を受取位置Pにおいて搬送ベルト20で受け取る際の搬送ベルト20の速度である。受取速度は、送り機構4のXステージ4aによる送り速度に応じて設定され、切れ刃3aの引き角が90度である本実施形態では、送り速度と略等しいか、若しくは、送り速度の50%程度までの範囲で送り速度よりも遅く設定されている。また、搬送速度は、搬送ベルト20で作製された薄切片B1を搬送する際の速度で、受取速度よりも高速に設定されている。また、引渡速度は、搬送ベルト20から液槽6内部の水Wに薄切片B1を引き渡す際の速度で、搬送速度よりも低速に設定されている。なお、搬送速度については、受取速度によって異なる速度としても良いが、送り速度に応じて変動する受取速度よりも十分に大きな速度として、一定の値に設定しても良く、引渡速度もこれに応じて一定の値として良い。
【0032】
また、本実施形態の薄切片作製装置1は、さらに、液体貯留部18に液体である水Wを給排する給排手段25と、包埋ブロックBから作製されていく薄切片B1に圧縮気体Gを吹き付ける送気手段26と、包埋ブロックBに加湿を行う加湿器27と、各機構の駆動時間等を計測するタイマー28とを備える。給排手段25は、水Wを供給する供給槽25aと、供給槽25aから水Wを汲み上げる供給ポンプ25bと、液体貯留部18に開口し供給ポンプ25bからの水Wを供給する供給管25cと、液体貯留部18に開口する排出管25dと、排出管25dを介して液体貯留部18の内部の水Wを吸い出して供給槽25aに排出する排出ポンプ25eとを有する。供給管25cは、搬送ベルト20の幅方向一方側に隣接して設けられていて、開口が液体貯留部18の内部において、切れ刃3a側となるように設けられている。また、排出管25dは、搬送ベルト20の幅方向他方側に隣接して設けられていて、同様に開口が液体貯留部18の内部において、切れ刃3a側となるように設けられている。また、供給ポンプ25b及び排出ポンプ25eによる流量や駆動時間は、コントローラ7により制御されている。
【0033】
また、送気手段26は、カッター3の切れ刃3a前方に対向配置された吹出しノズル26aと、吹出しノズル26aと送気管26bを介して接続されて圧縮気体Gとして圧縮空気を生成するコンプレッサー26cと、送気管26bに設けられて圧縮気体Gの流量を調整するバルブ26dとを有する。吹出しノズル26aは、切れ刃3aと略平行に配設された細長の開口を有し、薄切される包埋ブロックBの切削面B2上に、切れ刃3aに向かう方向で、かつ、切れ刃3aから離間した位置に圧縮気体Gを吹き付け可能に配置されている。また、バルブ26dの開閉量は、コントローラ7により制御されている。また、図3に示すように、吹出しノズル26aには、吹出しノズル26aの位置を調整する吹付位置調整手段29が設けられている。吹付位置調整手段29は、切れ刃3aの前後方向に向かって位置調整を行う距離調整部29aと、包埋ブロックBの切削面B2からの高さの調整を行う高さ調整部29bと、吹出しノズル26aから吹き出される圧縮気体Gの吹き出し角度φを調整する角度調整部29cとを有する。そして、吹付位置調整手段29による吹出しノズル26aの位置調整は、コントローラ7により制御されている。また、加湿器27は、ミスト状の気体を切削面B2に向かって吹き付け可能であり、図示しない移動機構によりコントローラ7の制御のもと、必要に応じて切削面B2の上方に配置させることが可能となっている。
【0034】
また、コントローラ7は、図示しないがメモリを有しており、当該メモリに各種包埋ブロックを薄切するための薄切条件がテーブルデータとして記憶されている。具体的には、薄切条件としては、包埋ブロックBに包埋されている生体試料の種類、及び、包埋ブロックBのサイズと対応させて、面合わせの回数、薄切する厚さ、薄切時における必要加湿量、薄切速度すなわち送り機構による送り方向Xへの送り速度、並びに、送気手段26において吹出しノズル26aの位置条件(切れ刃3aの前後方向に向かう距離、切削面B2からの高さ、圧縮気体Gを吹き出す角度など)、及び圧縮気体Gを吹き出す圧力、時間、開始及び終了のタイミングなどが挙げられる。そして、コントローラ7は、包埋ブロックの種類及びサイズに応じてテーブルデータから決定される薄切条件に従って、各構成を制御し、包埋ブロックBから薄切片B1の作製を行う。以下に、薄切片作製装置1による作用を説明する。
【0035】
図5から図7は、コントローラ7による制御に基づく、薄切片の作製、搬送のフローを示している。まず、準備工程S1として、図5に示すフローに基づいて、以下の動作を行う。試料台2に、包埋ブロックBが載置されたカセットCを載置し、ブロック固定機構9によって固定すると、ブロック種類検出器12は、カセットCに印刷されている情報からカセットCに載置されている包埋ブロックBの種類を検出し、種類データとしてコントローラ7に入力する(ステップS1−1)。次に、ブロックサイズ検出器10が、包埋ブロックBのサイズを検出し、サイズデータとしてコントローラ7に入力する(ステップS1−2)。次に、コントローラ7は、図示しないメモリに記憶されているテーブルを参照し(ステップS1−3)、入力された種類データ及びサイズデータと対応する薄切条件を決定する(ステップS1−4)。
【0036】
そして、次に面合わせを行う。すなわち、まず、コントローラ7は、加湿器27を駆動させて、予め決定した薄切条件の一つである必要加湿量に基づいて、包埋ブロックBの切削面B2の加湿を行う(ステップS1−5)。次に、コントローラ7は、面合わせとして包埋ブロックBを切削する(ステップS1−6)。すなわち、コントローラ7は、まず、予め決定した薄切条件である薄切する厚さに基づいて、送り機構4のZステージ4bを駆動して、包埋ブロックBを対応する分だけ厚さ方向Zに移動させる。次に、コントローラ7は、薄切条件の一つとして決定した薄切速度に基づいて、送り機構のXステージ4aを駆動して、包埋ブロックBをカッター3に向けて送り方向Xに移動させていく。これにより包埋ブロックBは、予め薄切条件として決定された厚さ、速度で、薄切されることとなる。なお、面合わせ時における包埋ブロックBの切削屑は、図示しないが下方の回収する手段に回収され廃棄される。次に、コントローラ7は、面合わせの回数が、薄切条件として予め決定された回数Nだけ実施されたかを判定する(ステップS1−7)。この場合は、まだ一回目であるので、回数Nに達していないと判定し、現在の回数1に1を加算し(ステップS1−8)、再度ステップS1−5からの面合わせを繰り返し実施する。そして、ステップS1−7において、所定回数Nだけ面合わせを実施したと判定された場合には、次の薄切片作製工程S2に移行して、図6に示すフローを実施する。
【0037】
すなわち、図6に示すように、まず、コントローラ7は、搬送手段5の搬送駆動部22を駆動して、搬送ベルト20を、受取速度で走行させる(ステップS2−1)。ここで、受取速度は、上記のように、送り機構4のXステージ4aによる送り方向Xへの送り速度と対応して決定されているものであり、例えば本実施形態では、コントローラ7は、決定された薄切条件の一つである薄切速度となる送り速度に基づいて、送り速度の60%となるように受取速度を決定し、搬送駆動部22を駆動させている。次に、コントローラ7は、加湿器27を駆動し、再び決定された必要加湿量で面合わせ完了後の包埋ブロックBの切削面B2の加湿を行う(ステップS2−2)。
【0038】
次に、包埋ブロックBの薄切を行う(ステップS2−3)。すなわち、コントローラ7は、まず、薄切条件の一つとして決定した薄切する厚さに基づいて、送り機構4のZステージ4bを駆動して、包埋ブロックBを対応する分だけ厚さ方向Zに移動させる。次に、薄切条件の一つとして決定した薄切速度に基づいて、送り機構のXステージ4aを駆動して、包埋ブロックBをカッター3に向けて送り方向Xに移動させていく。これにより包埋ブロックBは、予め薄切条件として決定された厚さ、薄切速度で、順次薄切されて薄切片B1が作製されていくこととなる。なお、本実施形態では、面合わせ及び、薄切片作製時における薄切する厚さ及び速度を区別することなく説明しているが、両工程における厚さ及び速度を異なるものとしても良い。
【0039】
また、ステップS2−3における包埋ブロックBの薄切に伴って、コントローラ7は、給排手段25の供給ポンプ25bを駆動して、刃押さえ17の液体貯留部18に、供給管25cから水Wを供給する(ステップS2−4)。なお、液体貯留部18への水Wの供給量は、液体貯留部18の容量に応じて予め設定されており、コントローラ7は、タイマー28による計測結果に基づいて対応する時間、予め設定されている流量で水Wを供給させることにより、図3に示すように、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aの上端18fに液面W2が設定されるようにする。ここで、本実施形態では、液体貯留部18の底面18bに親水性の表面処理が施されていることから、搬送ベルト20の一端側の供給管25cから供給された水Wを円滑に全体に亙って行き渡らせることができる。その一方で、底面18bを囲む壁面18a、18c、18d、18eに疎水性の表面処理が施されていることから、貯留された液体が外側へ溢れるのを防止することができる。また、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aと、方向切替ローラ21aとの位置関係から、壁面18aの上端18fから搬送ベルト20の表面20cへは、表面張力によって貯留される水Wの液面W2が傾斜して形成されることとなる。そして、受取速度で走行している搬送ベルト20は、液槽6の水Wを通過して湿潤状態になるとともに、さらに、液体貯留部18の水Wを通過することで、最適な湿潤状態として、第一折返し部20aで折り返されて上側を受取位置Pから引渡位置Qへ走行することとなる。一方で、コントローラ7は、供給ポンプ25bを駆動して、所定時間、所定流量で水Wを供給し、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aの上端18fに液面W2が位置するように設定した後は、予め設定された上記流量より小さい流量で水Wを連続して供給していく。このため、搬送ベルト20の走行に伴って、液体貯留部18の水Wが搬送ベルト20に順次付着しても、常に液体貯留部18の水Wの量を一定に保つことができる。
【0040】
また、ステップS2−5として、コントローラ7は、包埋ブロックBを薄切していくに際して、包埋ブロックBの送り方向Xの位置を、ブロック位置検出器11によって検出して入力されるブロック位置データに基づいて監視する。そして、コントローラ7は、包埋ブロックBが、予め設定された吹付け位置に達したと判断した場合には、送気手段26により、薄切条件として予め決定されている圧力、時間で、吹出しノズル26aから圧縮気体Gを包埋ブロックBの切削面B2に吹き付けさせる(ステップS2−6)。なお、吹出しノズル26aの位置は、吹付位置調整手段29により予め決定されている薄切条件に基づいて調整されている。ここで、包埋ブロックBの吹付け位置とは、包埋ブロックBの前端B3が、カッター3の切れ刃3aに接触し、薄切が開始されてからの薄切して薄切片B1として作製された長さ、すなわち包埋ブロックBの前端B3からカッター3の切れ刃3aまでの距離Lbが、カッター3の切れ刃3aから受取位置Pまでの距離Lp以上となる位置であり、本実施では両者が略等しくなる位置として設定されている。
【0041】
そして、包埋ブロックBが薄切され、薄切片B1が次第に作製されていくに従い、薄切片B1は、作製される厚さ、包埋されている生体試料の性質によりカールしてしまうが、ステップS2−6で送気手段26により包埋ブロックBの切削面B2に圧縮気体Gを吹き付けることにより、圧縮気体Gは、包埋ブロックの切削面上に、切れ刃に向かう方向で、かつ、切れ刃から離間した位置で、一度吹き付けられた後に、切削面B2に沿って薄切片B1が作製されていく切れ刃3aに向かって吹き付けられることとなる。このため、作製されて切れ刃3aから延びる薄切片B1には、切れ刃3aが位置する根元部分から吹き込むこととなり、カールしてしまったとしても、カール状の薄切片B1の内部に吹き込むこととなる。このため、薄切片B1は、カールしてしまったとしても、圧縮気体Gにより、押し潰されてしまうことなく、カール状を呈する内部から押し広げられることとなり、確実に伸張させることができる。そして、送気手段26による送気を、包埋ブロックBが吹付け位置となった時に行うことで、伸張した薄切片B1の先端は、受取位置Pに達し、搬送ベルト20に接触することとなる。このため、薄切片B1は、包埋ブロックBから作製されつつ、作製された先端側が搬送ベルト20によって受け取られ、受取位置Pから引渡位置Qへ搬送方向Yに沿って搬送されることとなる。ここで、搬送ベルト20は、湿潤状態にあり、特に液体貯留部18の水Wに受取位置Pの直前に浸漬されることにより、最適な湿潤状態とすることができ、浸潤した水Wの吸着力により確実に薄切片B1を受け取ることができる。さらに、本実施形態では、液体貯留部18の水Wの液面W2が壁面18aの上端18fから搬送ベルト20の表面20cへ、表面張力によって傾斜して形成されているので、薄切片B1は、液面W2に吸着されて搬送ベルト20の表面20cに誘導されることとなり、より確実に搬送ベルト20によって薄切片B1を受け取ることができる。また、薄切片B1が搬送ベルト20に接触するのに伴って、刃押さえ17の前面17bや上面17aにも薄切片B1が接触してしまう場合があるが、疎水性の表面処理が施されていることで、前面17bや上面17aに薄切片B1が張り付いてしまって搬送ベルト20による搬送が阻害されてしまうことを防止することができる。
【0042】
また、受け取られた薄切片B1の先端側は、搬送ベルト20によって順次搬送されるとともに、基端側では包埋ブロックBからさらに作製されることとなる。この際、搬送ベルト20の速度が、上記受取速度に設定されていることから、搬送される先端側が、基端側で作製される速度よりも速くなって引っ張られ、切れることを防ぐことができる。また、搬送される先端側が、基端側で作製されていく速度よりも遅すぎて、受取位置Pとカッター3の切れ刃3aとの間で作製された薄切片B1が圧縮されてしわになることを防ぐことができる。
【0043】
そして、ステップS2−7として、コントローラ7は、ブロック位置検出器11から入力されるブロック位置データを監視し、包埋ブロックBがカッター3の切れ刃3aを通過と判断した場合、すなわち包埋ブロックBの薄切が完了した場合には、送り機構4のXステージ4aの駆動を停止させ、ステップS2−8に移行する。ステップS2−8では、コントローラ7は、給排手段25の供給ポンプ25bの駆動を停止させて液体貯留部18への水Wの供給を停止させ、搬送工程S3に移行して、図7に示すフローを実施する。
【0044】
すなわち、図7に示すように、まず、コントローラ7は、給排手段25の排出ポンプ25eを駆動して、液体貯留部18の水Wを排出管25dから排出させる(ステップS3−1)。次に、コントローラ7は、搬送駆動部22を制御して、搬送ベルト20の走行する速度を、受取速度から搬送速度に切り替える(ステップS3−2)。このため、搬送ベルト20に受け取られた薄切片B1は、受取速度より高速の搬送速度で引渡位置Qまで速やかに搬送されることとなる。そして、コントローラ7は、ステップS2−1で搬送ベルト20の走行を開始してからの走行距離を監視し、薄切片B1が引渡位置Q近傍に到達するように予め設定された走行距離分だけ走行させた否かの判定を行い(ステップS3−3)、当該走行距離分だけ走行させた場合には、給排手段25による液体貯留部18からの水Wの排出を停止し(ステップS3−4)、さらに、搬送駆動部22を制御して搬送ベルト20の走行する速度を搬送速度から引渡速度に切り替える(ステップS3−5)。このため、搬送ベルト20上の薄切片B1は、引渡速度で引渡位置Qまで達し、引渡位置Qに位置する液槽6の水Wの液面W3に触れて、搬送ベルト20から離脱して水Wに引き渡されることとなる(ステップS3−6)。そして、コントローラ7は、搬送ベルト20の走行距離が、受取位置Pから引渡位置Qまでの搬送距離以上となったら、搬送駆動部22の駆動を停止し、搬送ベルト20の走行を停止させる。
【0045】
以上のように、本実施形態の薄切片作製装置1では、搬送ベルト20は、後方の第二折返し部20bで液槽6の水Wに浸漬するとともに、折返して前方へ走行し、第一折返し部20aで刃押さえ17の上面17aに形成された液体貯留部18の水Wに浸漬した後に、薄切片B1を受け取ることとなる。すなわち、搬送ベルト20は、液槽6によって全体を湿潤な状態とされるとともに、薄切片B1を受け取る直前に液体貯留部18を通過することで、好適な湿潤状態として受取位置Pに位置することができ、当該受取位置Pで確実に薄切片B1を受け取り、搬送することができる。また、本実施形態では、液体貯留部18に貯留する水Wを、コントローラ7による制御のもと、給排手段25で供給、排出することで調整を行っている。このため、搬送ベルト20で薄切片B1を受け取る際には、常に最適な量の水Wを液体貯留部18に貯留して、より好適に搬送ベルト20を湿潤状態として、薄切片B1を受け取ることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、準備工程S1において、各種薄切条件はテーブルデータを参照して決定するものとしたが、全て手動入力によって決定しても良い。また、薄切片作製工程S2において、最初にステップS2−1として搬送ベルト20を受取速度で走行させるものとしたが、これに限るものではない。少なくとも薄切を開始して包埋ブロックBの前端B3から切れ刃3aまでの距離Lbが、すなわち薄切した長さが、切れ刃3aから受取位置Pまでの距離Lpと等しくなるまでに、搬送ベルト20を受取速度で走行させるようにすれば良い。また、ステップS2−4として給排手段25による液体貯留部18への水Wを貯留させるタイミングとしては、本実施形態に限られず、準備工程S1において実施しておいても良く、少なくとも作製されていく薄切片B1の先端が受取位置Pに達するまでに供給が完了していれば良い。また、給排手段25による水Wの供給量の管理としては、時間によるものに限られず、例えば液体貯留部18に液面センサを設けてこれにより管理するものとしても良い。また、給排手段25による液体貯留部18からの水Wの排出について、ステップS3−3で薄切片B1を引渡位置Q近傍に搬送するまで継続的に排出を行うものとしているが、排出が完了していれば、その時点で排出ポンプ25eの駆動を停止させても良い。さらには、薄切片B1を受け取る際に液体貯留部18の水Wの量が最適な量となっていれば、必ずしも毎回排出する必要はない。
【0047】
また、本実施形態では、給排手段25において、水Wを供給、排出する供給管25c及び排出管25dが、搬送ベルト25の幅方向の両側に分かれて配置されているものとしたが、これに限るものではない。図8から図10は、この実施形態の変形例を示している。図8に示す第1の変形例では、供給管25cが搬送ベルト20の下側において、幅方向略中央に配置されているとともに、排出管25dが搬送ベルト20の幅方向両側のそれぞれに配置されている。この変形例では、上記のように配置されていることで、液体貯留部18において供給から排出までの搬送ベルト20の幅方向の距離を短くすることができる。このため、給排手段25によって、搬送ベルト20の幅方向に速やかに液体の供給、排出を行うことができるとともに、搬送ベルト20を幅方向により均等に湿潤状態とすることができる。また、搬送ベルト20に近接する位置に供給管25cが配置されていることで、搬送ベルト20が配設された範囲により確実に水Wを行き渡らせることができる。
【0048】
また、図9に示す第2の変形例では、供給管25cが搬送ベルト20の幅方向両側のそれぞれに配置されているとともに、排出管25dが搬送ベルト20の下側において、幅方向略中央に配置されている。そして、この変形例でも第1の変形例同様に、液体貯留部18において供給から排出までの搬送ベルト20の幅方向の距離を短くすることができる。このため、給排手段25によって、搬送ベルト20の幅方向に速やかに液体の供給、排出を行うことができるとともに、搬送ベルト20を幅方向により均等に湿潤状態とすることができる。
【0049】
また、図10に示す第3の変形例では、供給管25c及び排出管25dがともに、搬送ベルト20の下側において幅方向略中央に配置されている。そして、この変形例では、上記のように配置されていることで、搬送ベルト20が配設された範囲でより確実に水Wを行き渡らせ、また、排出することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図11から図13は、本発明の第2の実施形態を示したものである。なお、本実施形態では、給排手段25を備えていない点、及び、コントローラ7による制御フローが一部異なる点を除いて、第1の実施形態の薄切片作製装置1と同様の構成を有しているので、装置の全体図については省略し、図1を参照して説明するものとする。以下、第1の実施形態と薄切片の作製、搬送のフローで異なる点を中心として説明する。
【0051】
すなわち、図11に示すように、本実施形態の薄切片作製装置では、準備工程S10において、コントローラ7は、ステップS1−4で薄切条件を決定した後に、ステップS1−10として、搬送駆動部22を駆動させて搬送ベルト20を受取速度で走行させ、この後にステップS1−5〜S1−7の面合わせを実施する。ここで、予め搬送ベルト20を走行させ、さらにその速度を低速の受取速度としておくことによって、液槽6の水Wを通過した搬送ベルト20は、水Wを含ませて第一折返し部20aまで搬送されることとなる。そして、搬送ベルト20が第一折返し部20aで下方から上方へ折り返されることで、搬送ベルト20によって液槽6から搬送された水Wは、落下し、液体貯留部18に貯留されることとなる。このため、面合わせを実施しながら搬送ベルト20の走行を繰り返し行うことで、液体貯留部18を水Wで満たすことができ、搬送ベルト20は、自ら液体貯留部18に貯めた水Wによって好適に湿潤な状態を保つことができる。このため、薄切片作製工程S20においては、図12に示すように、液体貯留部18への水Wの供給を能動的に行わずとも、受取位置Pで作製された薄切片B1を搬送ベルト20で確実に受け取ることができる。
【0052】
また、図13に示すように、本実施形態では、ステップS3−6で薄切片B1が液槽6の水Wに引き渡された後に、ステップS3−10として、再び搬送ベルト20を搬送速度で所定時間走行させる。ここで、搬送ベルト20を受取速度よりも高速の搬送速度で走行させることで、搬送ベルト20が第二折返し部20bから下側で液槽6から液体貯留部18に搬送する水Wの量よりも、第一折返し部20aから上側で液体貯留部18から掻き出す水Wの量の方が多くなる。このため、搬送ベルト20の走行を所定時間継続することで、液体貯留部18の水Wを排出させることができる。そして、ステップS3−10の実施が完了したら、ステップS3−7に移行して、搬送ベルト20の走行を停止して動作を終了させる。なお、ステップS3−10での実施完了は、予め液体貯留部18の水Wを排出するのに十分な時間を設定しておき、コントローラ7がタイマー28による計測結果に基づいて、搬送ベルト20の走行を所定時間を行ったかどうか判定することによって判断される。
【0053】
以上のように、本実施形態では、搬送ベルト20の走行と速度調整により、液体貯留部18の水Wの量を調整することができ、給排手段25を省略することができるので、構成を簡略化し、低コスト化を図ることができる。なお、上記においては、液体貯留部18に水Wを供給する際には、搬送ベルト20を受取速度に、排出する際には搬送速度に設定するものとしたが、これに限るものではない。図11に示すステップS1−10においては、液槽6から搬送される水Wの量と液体貯留部18から掻き出される水Wの量との収支が均衡する速度よりも遅い速度であれば、液槽6から搬送される水Wの量の方が多くなり、液体貯留部18に水Wを供給することができる。また、図13に示すステップS3−10においては、上記均衡する速度よりも速い速度であれば、液体貯留部18から掻き出される水Wの量の方が多くなり、液体貯留部18から水Wを排出させることができる。また、受取速度及び搬送速度が上記条件に当てはまらない場合にも当然に、液体貯留部18に水Wを供給し、排出させる際の速度は、受取速度及び搬送速度と異なる速度に設定されることとなる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を示す全体図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を示すブロック図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置のカッター近傍の詳細を示す断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置において、カッター固定部及びカッターの詳細を示す斜視図である。
【図5】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の準備工程の詳細を示すフロー図である。
【図6】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の薄切片作製工程の詳細を示すフロー図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の搬送工程の詳細を示すフロー図である。
【図8】この発明の第1の実施形態の第1の変形例の薄切片作製装置の給排手段の詳細を示す斜視図である。
【図9】この発明の第1の実施形態の第2の変形例の薄切片作製装置の給排手段の詳細を示す斜視図である。
【図10】この発明の第1の実施形態の第3の変形例の薄切片作製装置の給排手段の詳細を示す斜視図である。
【図11】この発明の第2の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の準備工程の詳細を示すフロー図である。
【図12】この発明の第2の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の薄切片作製工程の詳細を示すフロー図である。
【図13】この発明の第2の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の搬送工程の詳細を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0056】
1 薄切片作製装置
2 試料台
3 カッター
3a 切れ刃
4 送り機構(送り手段)
6 液槽(薄切片受取手段)
7 コントローラ(制御部)
15 カッター固定部
16 固定台
17 刃押さえ
18 液体貯留部
18a (切れ刃3a側の)壁面
18b 底面
18c、18d、18e 壁面
20 搬送ベルト
20a 第一折返し部
20b 第二折返し部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や実験動物等から取り出した生体試料を包埋した包埋ブロックを切削して薄切片を作製する薄切片作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製した後に、染色処理を行い、生体試料を観察する方法が知られている。このような包埋ブロックから作製される薄切片は、細胞レベルの観察を可能とするため、3〜5μm程度の厚さで均一に、かつ、包埋されている生体試料を損傷しないように切削する必要がある。このため、従来このような包埋ブロックから薄切片を作製する作業は、鋭利な状態に保たれた薄刃のカッターを使用して、熟練な作業者による手作業に委ねられてきた。一方、例えば、前臨床試験においては、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片を作製する。このため、作業者は膨大な枚数の薄切片を作製する必要があるため、近年、薄切片を作製する一連の工程の自動化が望まれている。
【0003】
このような薄切片の作製を自動化する薄切片作製装置としては、包埋ブロックを薄切するカッターと、包埋ブロックを固定する試料台をカッターに向かって移動させて、カッターによって包埋ブロックを薄切させる送り機構と、薄切片が載置されて薄切片を搬送するベルトと、カッターの切れ刃の向きと略平行に切れ刃と近接してカッターの上方に設けられた方向切替部と、カッターの後方に設けられた後部ローラと、カッターの後方で水が満たされ、搬送ベルトの一部が浸漬されている液槽とを備える構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、このような薄切片作製装置においては、カッターによって包埋ブロックを薄切しつつ搬送ベルトを走行させる。このようにすることで、包埋ブロックから作製される薄切片は、搬送ベルトに受け取られて後方の液槽まで搬送され、搬送ベルトから離脱して液槽の水に浮かべられる。ここで、搬送ベルトは、無端状のベルトで、液槽の水の内部を通過することで、常に湿潤状態に保たれており、これにより表面張力を作用させて薄切片を受け取ることができるとされている。
【特許文献1】特開2007−178287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による装置よれば、搬送ベルトは、後方の液槽において水に浸漬して湿潤状態となった後に、前方へ走行して折り返して薄切片を受け取ることとなる。このため、搬送ベルトに含まれた水分は、液槽が配置された後方から薄切片を受け取る前方へ移動する間に、滴下し、あるいは、蒸散してしまうこととなり、薄切片を受け取る際に十分に湿潤な状態とすることができない場合があった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、カッターによって包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、搬送ベルトを湿潤状態として確実に受け取って搬送することが可能な薄切片作製装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の薄切片作製装置は、包埋ブロックを薄切するカッターと、該カッターを支持する固定台、及び、該固定台に対して前記カッターを上側から挟み込む刃押さえを有するカッター固定部と、包埋ブロックを固定する試料台と、該試料台を前記カッターに対して所定の送り方向に相対移動させて、該カッターによって包埋ブロックを薄切させる送り手段と、前記カッターの切れ刃後方に配置され、液体が貯留された液槽と、前記カッターの上方に設けられた第一折返し部及び前記液槽の内部に設けられた第二折返し部を有し、包埋ブロックから薄切された薄切片を前記液槽まで搬送する無端状の搬送ベルトとを備え、前記カッター固定台の前記刃押さえの上面には、液体を貯留する液体貯留部が形成され、前記搬送ベルトの前記第一折返し部は、前記液体貯留部の内部に配置されていることを特徴としている。
【0008】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、包埋ブロックを試料台に固定し、送り手段によってカッターに対して所定の送り方向に試料台とともに包埋ブロックを相対移動させることで、カッターによって包埋ブロックを薄切し、薄切片を作製していくことができる。この際、無端状の搬送ベルトを第一折返し部及び第二の折返し部で折り返すようにして走行させ、カッターの上方の第一折返し部で折り返された搬送ベルトによって作製されていく薄切片を受け取ることができる。ここで、搬送ベルトは、後方の第二折返し部で液槽の液体に浸漬するとともに、折返して前方へ走行し、第一折返し部で刃押さえの上面に形成された液体貯留部の液体に浸漬した後に、薄切片を受け取ることとなる。すなわち、搬送ベルトは、薄切片を受け取る直前に液体貯留部を通過することで、好適な湿潤状態として確実に薄切片を受け取り、搬送することができる。
【0009】
また、上記の薄切片作製装置において、前記搬送ベルトの前記第一折返し部と、前記液体貯留部の前記切れ刃側の壁面との間には、該壁面の上端から前記搬送ベルトの薄切片が載置される表面に向かって、表面張力によって貯留される液体の液面が傾斜して形成されるように間隙が形成されていることがより好ましい。
【0010】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、液体貯留部の切れ刃側の壁面の上端から搬送ベルトの薄切片が載置される表面に向かって貯留される液体の液面が傾斜して形成されているので、作製される薄切片は、この液面に吸着されて搬送ベルトの表面に誘導されることとなる。このため、より確実に搬送ベルトによって薄切片を受け取って搬送することができる。
【0011】
また、上記の薄切片作製装置において、前記液体貯留部に液体を給排する給排手段を備えることがより好ましい。
【0012】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、給排手段により液体貯留部に液体を給排することができるので、液体貯留部に貯留される液体の量を最適な状態として、搬送ベルトを好適に湿潤状態とすることができる。
【0013】
また、上記の薄切片作製装置において、前記給排手段は、液体を供給する供給管と、液体を排出する排出管とを有し、前記供給管と前記排出管との一方が、前記搬送ベルトの幅方向略中央に配置されているとともに、他方が、前記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置されていることがより好ましい。
【0014】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、給排手段において、供給管と排出管の一方が搬送ベルトの幅方向略中央に配置され、他方が幅方向両側に配置されていることで、液体貯留部において供給から排出までの搬送ベルト幅方向の距離を短くすることができる。このため、給排手段によって、搬送ベルトの幅方向に速やかに液体の供給、排出を行うことができるとともに、搬送ベルトを幅方向により均等に湿潤状態とすることができる。
【0015】
また、上記の薄切片作製装置において、前記送り手段によって前記カッターに対して前記試料台を相対移動させて包埋ブロックを薄切させるのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部に予め設定された必要量だけ液体を供給するとともに、前記カッターと前記送り手段とによる包埋ブロックの薄切が完了するのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部の液体を排出させる制御部を備えることがより好ましい。
【0016】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、制御部によって給排手段を制御し、包埋ブロックを薄切して薄切片を作製するのに応じて液体貯留部に必要量だけ液体を供給し、また、包埋ブロックの薄切が完了するのに応じて液体貯留部の液体を排出させることで、薄切片を受け取る際には、常に最適な量の液体を液体貯留部に貯留して、より好適に搬送ベルトを湿潤状態とすることができる。
【0017】
また、上記の薄切片作製装置において、前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部の底面は親水性を有していることがより好ましい。
【0018】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、底面が親水性を有しているので、液体貯留部に供給された液体を円滑に全体に亙って行き渡らせることができ、搬送ベルトをより均等に湿潤状態とすることができる。
【0019】
また、上記の薄切片作製装置において、前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部を囲む壁面は疎水性を有していることがより好ましい。
【0020】
この発明に係る薄切片作製装置によれば、壁面が疎水性を有しているので、液体貯留部に貯留された液体が外側へ溢れるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の薄切片作製装置によれば、刃押さえに液体貯留部が形成され、搬送ベルトの第一折返し部が液体貯留部の内部に配置されているので、カッターによって包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、搬送ベルトを湿潤状態として確実に受け取って搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1から図7は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1及び図2に示す薄切片作製装置1は、生体試料が包埋された包埋ブロックBから厚さ3〜5μm程度の極薄の薄切片を作製し、薄切片に含まれる生体試料を検査、観察する過程において、自動的に、包埋ブロックBから薄切片を薄切し、次工程に搬送する装置である。生体試料は、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器などの組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野などで適時選択されるものである。また、包埋ブロックBは、上記のような生体試料を包埋剤によって包埋、すなわち周囲を覆い固めたものである。ここで、包埋剤は、上記のように液状化と冷却固化が容易に可能とされるとともに、エタノールに浸漬することで溶解する材質であり、樹脂やパラフィンなどである。また、包埋ブロックBは、基本的に略長方形の切削面B2を有した直方体状に成形されており、本実施形態においても、直方体状に形成されているものとして説明するが、必ずしもこのような形状に限られるものではない。以下、薄切片作製装置1の構成について説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBが載置されたカセットCを固定する試料台2と、包埋ブロックBを薄切するカッター3と、試料台2を移動させる送り手段である送り機構4と、カッター3によって包埋ブロックBから薄切された薄切片B1を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段5と、搬送手段5で搬送された薄切片B1を受け取る薄切片受取手段である液槽6と、各構成を制御する制御部であるコントローラ7とを備える。試料台2には、包埋ブロックBが載置されたカセットCを挟持部材9a、9bにより二方向から挟み込んで固定するとともに、位置決めするブロック固定機構9が設けられている。
【0024】
送り機構4は、試料台2の下方に設けられ、試料台2に固定された包埋ブロックBを薄切する送り方向Xに移動させるXステージ4aと、包埋ブロックBを厚さ方向Zに位置調整するZステージ4bとを有する。そして、コントローラ7は、Xステージ4aによって一定の送り速度で、カッター3に向かって送り方向Xに試料台2を移動させることが可能であり、これによりカッター3によって送り速度で試料台2に固定された包埋ブロックBを薄切していくことが可能となっている。また、コントローラ7は、Zステージ4bによって一定量だけ厚さ方向Zに包埋ブロックBを移動させることが可能であり、これにより対応する厚さだけカッター3によって包埋ブロックBを薄切することが可能となっている。
【0025】
ここで、試料台2と隣接する位置には、包埋ブロックBのサイズを検出するブロックサイズ検出器10と、包埋ブロックBの位置を検出するブロック位置検出器11と、包埋ブロックBの種類を検出するブロック種類検出器12とが設けられている。ブロックサイズ検出器10は、例えば、試料台2の上方に配置される撮像手段と、該撮像手段からの画像を解析する解析手段とで構成されており、包埋ブロックBの切削面B2を撮像した画像データを解析することにより、包埋ブロックBの切削面B2の送り方向Xに沿う辺の長さと、これと直交する方向の辺の長さとを検出することが可能となっている。ブロック位置検出器11は、例えば、レーザ光により包埋ブロックBの位置を検出するもので、レーザ光を送り方向Xと直交する方向で、包埋ブロックBに向かって照射し、その反射光を検出することで、包埋ブロックBの送り方向Xの位置を検出することが可能となっている。なお、上記のブロックサイズ検出器10の撮像手段によって包埋ブロックBの位置を検出することも可能である。また、ブロック種類検出器12は、例えば、バーコード及び2次元バーコードリーダであり、カセットCに予め印刷されているバーコード及び2次元バーコードを読み取ることでカセットCに載置された包埋ブロックBの種類を検出することが可能となっている。
【0026】
また、カッター3は、カッター固定部15に固定されている。カッター固定部15は、カッター3の切れ刃3aを下向きとして所定の角度で傾斜するようにして支持する固定台16と、固定台16に対してカッター3を上側から挟み込む刃押さえ17とを有している。なお、図示しないがカッター固定部15の固定台16の両端は、装置の外郭をなすフレームに固定されている。また、刃押さえ17の上面17aは、液体貯留部18として、凹状に形成されていて、後述するように給排手段25によって液体として水Wを貯留することが可能となっている。ここで、図4に示すように、刃押さえ17は、上面17a及びカッター3の切れ刃3a側に面してカッター3の傾斜と対応するように傾斜した前面17bで、疎水性となる表面処理が行われている。また、刃押さえ17の液体貯留部18においては、底面18bで親水性となる表面処理が行われているとともに、底面18bを囲む壁面18a、18c、18d、18eで疎水性となる表面処理が行われている。親水性の表面処理は、例えば、酸化チタン膜を形成するなどして行われている。また、疎水性の表面処理は、例えば、フッ素樹脂のコーティングなどによって行われている。なお、刃押さえ17自体を形成する材質を親水性または疎水性の材質とし、対応する箇所のみで疎水性または親水性の表面処理を行うものとしても良い。また、本実施形態では、カッター3は、切れ刃3aが送り機構4による包埋ブロックBの送り方向Xと直交するようにカッター固定部15に固定されており、すなわち、引き角を90度として説明する。
【0027】
また、薄切片受取手段である液槽6は、液体として例えば水Wが貯留されており、包埋ブロックBから作製され、搬送された薄切片B1を浮遊させて、次工程のスライドガラスへの薄切片の引渡しを可能とさせるものである。また、搬送手段5は、搬送方向Yに沿ってカッター3の上方から液槽6の内部まで配設された無端状の搬送ベルト20と、搬送ベルト20を走行させるローラ群21と、ローラ群21の一つである中間ローラ21cを回転駆動させる搬送駆動部22とを有する。ここで、搬送ベルト20による搬送方向Yは、平面視してカッター3の切れ刃3aと直交するように設定されていて、引き角を90度とする本実施形態においては、平面視して送り方向Xと略一致している。搬送ベルト20は、本実施形態では、網目状に形成されていて、特に水Wをしみ込みやすくするため親水性の線材で形成されていることが好ましい。
【0028】
ローラ群21は、カッター3に近接する側で搬送ベルト20を第一折返し部20aとして折り返す方向切替ローラ21aと、カッター3の切れ刃3a後方となる液槽6内部に設けられて搬送ベルト20を第二折返し部20bとして折り返す後部ローラ21bと、方向切替ローラ21aと後部ローラ21bとの間で搬送ベルト20の角度を変更する中間ローラ21c、21dとを有する。方向切替ローラ21aは、少なくとも一部が液体貯留部18の内部に収容されて、カッター3の切れ刃3aの向きと略平行となるようにして、刃押さえ17に回転可能に支持されている。そして、図3に示すように、搬送ベルト20は、下方から方向切替ローラ21aに巻き回されて第一折返し部20aで上方へ折り返され、当該第一折返し部20aで上方に折り返した位置を受取位置Pとして、カッター3によって薄切された薄切片B1を受け取ることが可能となっている。また、上記のように方向切替ローラ21aが液体貯留部18の内部に収容されているから、液体貯留部18に水Wが貯留された状態では、第一折返し部20aを折り返された搬送ベルト20は、液体貯留部18の水Wで湿潤な状態とすることが可能となっている。
【0029】
ここで、図3に示すように、方向切替ローラ21aと、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aとの離間距離は、大きくなると、搬送ベルト20が包埋ブロックBから薄切されて受取位置Pまで延びてくる薄切片B1と離れてしまうので、できる限り小さくする方が好ましい。一方で、搬送ベルト20が液体貯留部18の壁面18aと接触してしまうと、搬送ベルト20の走行が阻害され、また、液体貯留部18の水Wが壁面18a側に行き渡らないことから、方向切替ローラ21aは壁面18aと僅かに離間していることが好ましい。特に、液体貯留部18に貯留される液体の種類と、搬送ベルト20の材質にもよるが、搬送ベルト20と壁面18aとを所定の間隙に設定することで、貯留される液体の液面W2が、壁面18aの上端18fから搬送ベルト20の薄切片B1が載置される表面20cに向かって、表面張力によって傾斜して形成されるようになり、該液面W2により薄切片B1を吸着して誘導することができるので、より好ましい。
【0030】
また、図1に示すように、後部ローラ21bは、液槽6の内部で、液槽6に回転可能に支持されていて、液槽6に貯留された液体である水Wに浸漬されている。このため、薄切片B1を載置しつつ液槽6に向かって走行する搬送ベルト20の上側は、後部ローラ21bで第二折返し部20bとして下方へ折り返されて、第一折返し部20aに向かって走行することが可能となっている。また、搬送ベルト20は、第二折返し部20b近傍で、液槽6内部の水Wに浸漬されることとなり、液面W3と接する位置を引渡位置Qとして薄切片B1を水Wに引き渡すことが可能となっている。
【0031】
また、コントローラ7は、搬送駆動部22を制御することにより、後述するように、搬送ベルト20を受取速度、搬送速度、及び、引渡速度の3種類の速度で走行させることが可能となっている。ここで、受取速度は、作製された薄切片B1を受取位置Pにおいて搬送ベルト20で受け取る際の搬送ベルト20の速度である。受取速度は、送り機構4のXステージ4aによる送り速度に応じて設定され、切れ刃3aの引き角が90度である本実施形態では、送り速度と略等しいか、若しくは、送り速度の50%程度までの範囲で送り速度よりも遅く設定されている。また、搬送速度は、搬送ベルト20で作製された薄切片B1を搬送する際の速度で、受取速度よりも高速に設定されている。また、引渡速度は、搬送ベルト20から液槽6内部の水Wに薄切片B1を引き渡す際の速度で、搬送速度よりも低速に設定されている。なお、搬送速度については、受取速度によって異なる速度としても良いが、送り速度に応じて変動する受取速度よりも十分に大きな速度として、一定の値に設定しても良く、引渡速度もこれに応じて一定の値として良い。
【0032】
また、本実施形態の薄切片作製装置1は、さらに、液体貯留部18に液体である水Wを給排する給排手段25と、包埋ブロックBから作製されていく薄切片B1に圧縮気体Gを吹き付ける送気手段26と、包埋ブロックBに加湿を行う加湿器27と、各機構の駆動時間等を計測するタイマー28とを備える。給排手段25は、水Wを供給する供給槽25aと、供給槽25aから水Wを汲み上げる供給ポンプ25bと、液体貯留部18に開口し供給ポンプ25bからの水Wを供給する供給管25cと、液体貯留部18に開口する排出管25dと、排出管25dを介して液体貯留部18の内部の水Wを吸い出して供給槽25aに排出する排出ポンプ25eとを有する。供給管25cは、搬送ベルト20の幅方向一方側に隣接して設けられていて、開口が液体貯留部18の内部において、切れ刃3a側となるように設けられている。また、排出管25dは、搬送ベルト20の幅方向他方側に隣接して設けられていて、同様に開口が液体貯留部18の内部において、切れ刃3a側となるように設けられている。また、供給ポンプ25b及び排出ポンプ25eによる流量や駆動時間は、コントローラ7により制御されている。
【0033】
また、送気手段26は、カッター3の切れ刃3a前方に対向配置された吹出しノズル26aと、吹出しノズル26aと送気管26bを介して接続されて圧縮気体Gとして圧縮空気を生成するコンプレッサー26cと、送気管26bに設けられて圧縮気体Gの流量を調整するバルブ26dとを有する。吹出しノズル26aは、切れ刃3aと略平行に配設された細長の開口を有し、薄切される包埋ブロックBの切削面B2上に、切れ刃3aに向かう方向で、かつ、切れ刃3aから離間した位置に圧縮気体Gを吹き付け可能に配置されている。また、バルブ26dの開閉量は、コントローラ7により制御されている。また、図3に示すように、吹出しノズル26aには、吹出しノズル26aの位置を調整する吹付位置調整手段29が設けられている。吹付位置調整手段29は、切れ刃3aの前後方向に向かって位置調整を行う距離調整部29aと、包埋ブロックBの切削面B2からの高さの調整を行う高さ調整部29bと、吹出しノズル26aから吹き出される圧縮気体Gの吹き出し角度φを調整する角度調整部29cとを有する。そして、吹付位置調整手段29による吹出しノズル26aの位置調整は、コントローラ7により制御されている。また、加湿器27は、ミスト状の気体を切削面B2に向かって吹き付け可能であり、図示しない移動機構によりコントローラ7の制御のもと、必要に応じて切削面B2の上方に配置させることが可能となっている。
【0034】
また、コントローラ7は、図示しないがメモリを有しており、当該メモリに各種包埋ブロックを薄切するための薄切条件がテーブルデータとして記憶されている。具体的には、薄切条件としては、包埋ブロックBに包埋されている生体試料の種類、及び、包埋ブロックBのサイズと対応させて、面合わせの回数、薄切する厚さ、薄切時における必要加湿量、薄切速度すなわち送り機構による送り方向Xへの送り速度、並びに、送気手段26において吹出しノズル26aの位置条件(切れ刃3aの前後方向に向かう距離、切削面B2からの高さ、圧縮気体Gを吹き出す角度など)、及び圧縮気体Gを吹き出す圧力、時間、開始及び終了のタイミングなどが挙げられる。そして、コントローラ7は、包埋ブロックの種類及びサイズに応じてテーブルデータから決定される薄切条件に従って、各構成を制御し、包埋ブロックBから薄切片B1の作製を行う。以下に、薄切片作製装置1による作用を説明する。
【0035】
図5から図7は、コントローラ7による制御に基づく、薄切片の作製、搬送のフローを示している。まず、準備工程S1として、図5に示すフローに基づいて、以下の動作を行う。試料台2に、包埋ブロックBが載置されたカセットCを載置し、ブロック固定機構9によって固定すると、ブロック種類検出器12は、カセットCに印刷されている情報からカセットCに載置されている包埋ブロックBの種類を検出し、種類データとしてコントローラ7に入力する(ステップS1−1)。次に、ブロックサイズ検出器10が、包埋ブロックBのサイズを検出し、サイズデータとしてコントローラ7に入力する(ステップS1−2)。次に、コントローラ7は、図示しないメモリに記憶されているテーブルを参照し(ステップS1−3)、入力された種類データ及びサイズデータと対応する薄切条件を決定する(ステップS1−4)。
【0036】
そして、次に面合わせを行う。すなわち、まず、コントローラ7は、加湿器27を駆動させて、予め決定した薄切条件の一つである必要加湿量に基づいて、包埋ブロックBの切削面B2の加湿を行う(ステップS1−5)。次に、コントローラ7は、面合わせとして包埋ブロックBを切削する(ステップS1−6)。すなわち、コントローラ7は、まず、予め決定した薄切条件である薄切する厚さに基づいて、送り機構4のZステージ4bを駆動して、包埋ブロックBを対応する分だけ厚さ方向Zに移動させる。次に、コントローラ7は、薄切条件の一つとして決定した薄切速度に基づいて、送り機構のXステージ4aを駆動して、包埋ブロックBをカッター3に向けて送り方向Xに移動させていく。これにより包埋ブロックBは、予め薄切条件として決定された厚さ、速度で、薄切されることとなる。なお、面合わせ時における包埋ブロックBの切削屑は、図示しないが下方の回収する手段に回収され廃棄される。次に、コントローラ7は、面合わせの回数が、薄切条件として予め決定された回数Nだけ実施されたかを判定する(ステップS1−7)。この場合は、まだ一回目であるので、回数Nに達していないと判定し、現在の回数1に1を加算し(ステップS1−8)、再度ステップS1−5からの面合わせを繰り返し実施する。そして、ステップS1−7において、所定回数Nだけ面合わせを実施したと判定された場合には、次の薄切片作製工程S2に移行して、図6に示すフローを実施する。
【0037】
すなわち、図6に示すように、まず、コントローラ7は、搬送手段5の搬送駆動部22を駆動して、搬送ベルト20を、受取速度で走行させる(ステップS2−1)。ここで、受取速度は、上記のように、送り機構4のXステージ4aによる送り方向Xへの送り速度と対応して決定されているものであり、例えば本実施形態では、コントローラ7は、決定された薄切条件の一つである薄切速度となる送り速度に基づいて、送り速度の60%となるように受取速度を決定し、搬送駆動部22を駆動させている。次に、コントローラ7は、加湿器27を駆動し、再び決定された必要加湿量で面合わせ完了後の包埋ブロックBの切削面B2の加湿を行う(ステップS2−2)。
【0038】
次に、包埋ブロックBの薄切を行う(ステップS2−3)。すなわち、コントローラ7は、まず、薄切条件の一つとして決定した薄切する厚さに基づいて、送り機構4のZステージ4bを駆動して、包埋ブロックBを対応する分だけ厚さ方向Zに移動させる。次に、薄切条件の一つとして決定した薄切速度に基づいて、送り機構のXステージ4aを駆動して、包埋ブロックBをカッター3に向けて送り方向Xに移動させていく。これにより包埋ブロックBは、予め薄切条件として決定された厚さ、薄切速度で、順次薄切されて薄切片B1が作製されていくこととなる。なお、本実施形態では、面合わせ及び、薄切片作製時における薄切する厚さ及び速度を区別することなく説明しているが、両工程における厚さ及び速度を異なるものとしても良い。
【0039】
また、ステップS2−3における包埋ブロックBの薄切に伴って、コントローラ7は、給排手段25の供給ポンプ25bを駆動して、刃押さえ17の液体貯留部18に、供給管25cから水Wを供給する(ステップS2−4)。なお、液体貯留部18への水Wの供給量は、液体貯留部18の容量に応じて予め設定されており、コントローラ7は、タイマー28による計測結果に基づいて対応する時間、予め設定されている流量で水Wを供給させることにより、図3に示すように、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aの上端18fに液面W2が設定されるようにする。ここで、本実施形態では、液体貯留部18の底面18bに親水性の表面処理が施されていることから、搬送ベルト20の一端側の供給管25cから供給された水Wを円滑に全体に亙って行き渡らせることができる。その一方で、底面18bを囲む壁面18a、18c、18d、18eに疎水性の表面処理が施されていることから、貯留された液体が外側へ溢れるのを防止することができる。また、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aと、方向切替ローラ21aとの位置関係から、壁面18aの上端18fから搬送ベルト20の表面20cへは、表面張力によって貯留される水Wの液面W2が傾斜して形成されることとなる。そして、受取速度で走行している搬送ベルト20は、液槽6の水Wを通過して湿潤状態になるとともに、さらに、液体貯留部18の水Wを通過することで、最適な湿潤状態として、第一折返し部20aで折り返されて上側を受取位置Pから引渡位置Qへ走行することとなる。一方で、コントローラ7は、供給ポンプ25bを駆動して、所定時間、所定流量で水Wを供給し、液体貯留部18の切れ刃3a側の壁面18aの上端18fに液面W2が位置するように設定した後は、予め設定された上記流量より小さい流量で水Wを連続して供給していく。このため、搬送ベルト20の走行に伴って、液体貯留部18の水Wが搬送ベルト20に順次付着しても、常に液体貯留部18の水Wの量を一定に保つことができる。
【0040】
また、ステップS2−5として、コントローラ7は、包埋ブロックBを薄切していくに際して、包埋ブロックBの送り方向Xの位置を、ブロック位置検出器11によって検出して入力されるブロック位置データに基づいて監視する。そして、コントローラ7は、包埋ブロックBが、予め設定された吹付け位置に達したと判断した場合には、送気手段26により、薄切条件として予め決定されている圧力、時間で、吹出しノズル26aから圧縮気体Gを包埋ブロックBの切削面B2に吹き付けさせる(ステップS2−6)。なお、吹出しノズル26aの位置は、吹付位置調整手段29により予め決定されている薄切条件に基づいて調整されている。ここで、包埋ブロックBの吹付け位置とは、包埋ブロックBの前端B3が、カッター3の切れ刃3aに接触し、薄切が開始されてからの薄切して薄切片B1として作製された長さ、すなわち包埋ブロックBの前端B3からカッター3の切れ刃3aまでの距離Lbが、カッター3の切れ刃3aから受取位置Pまでの距離Lp以上となる位置であり、本実施では両者が略等しくなる位置として設定されている。
【0041】
そして、包埋ブロックBが薄切され、薄切片B1が次第に作製されていくに従い、薄切片B1は、作製される厚さ、包埋されている生体試料の性質によりカールしてしまうが、ステップS2−6で送気手段26により包埋ブロックBの切削面B2に圧縮気体Gを吹き付けることにより、圧縮気体Gは、包埋ブロックの切削面上に、切れ刃に向かう方向で、かつ、切れ刃から離間した位置で、一度吹き付けられた後に、切削面B2に沿って薄切片B1が作製されていく切れ刃3aに向かって吹き付けられることとなる。このため、作製されて切れ刃3aから延びる薄切片B1には、切れ刃3aが位置する根元部分から吹き込むこととなり、カールしてしまったとしても、カール状の薄切片B1の内部に吹き込むこととなる。このため、薄切片B1は、カールしてしまったとしても、圧縮気体Gにより、押し潰されてしまうことなく、カール状を呈する内部から押し広げられることとなり、確実に伸張させることができる。そして、送気手段26による送気を、包埋ブロックBが吹付け位置となった時に行うことで、伸張した薄切片B1の先端は、受取位置Pに達し、搬送ベルト20に接触することとなる。このため、薄切片B1は、包埋ブロックBから作製されつつ、作製された先端側が搬送ベルト20によって受け取られ、受取位置Pから引渡位置Qへ搬送方向Yに沿って搬送されることとなる。ここで、搬送ベルト20は、湿潤状態にあり、特に液体貯留部18の水Wに受取位置Pの直前に浸漬されることにより、最適な湿潤状態とすることができ、浸潤した水Wの吸着力により確実に薄切片B1を受け取ることができる。さらに、本実施形態では、液体貯留部18の水Wの液面W2が壁面18aの上端18fから搬送ベルト20の表面20cへ、表面張力によって傾斜して形成されているので、薄切片B1は、液面W2に吸着されて搬送ベルト20の表面20cに誘導されることとなり、より確実に搬送ベルト20によって薄切片B1を受け取ることができる。また、薄切片B1が搬送ベルト20に接触するのに伴って、刃押さえ17の前面17bや上面17aにも薄切片B1が接触してしまう場合があるが、疎水性の表面処理が施されていることで、前面17bや上面17aに薄切片B1が張り付いてしまって搬送ベルト20による搬送が阻害されてしまうことを防止することができる。
【0042】
また、受け取られた薄切片B1の先端側は、搬送ベルト20によって順次搬送されるとともに、基端側では包埋ブロックBからさらに作製されることとなる。この際、搬送ベルト20の速度が、上記受取速度に設定されていることから、搬送される先端側が、基端側で作製される速度よりも速くなって引っ張られ、切れることを防ぐことができる。また、搬送される先端側が、基端側で作製されていく速度よりも遅すぎて、受取位置Pとカッター3の切れ刃3aとの間で作製された薄切片B1が圧縮されてしわになることを防ぐことができる。
【0043】
そして、ステップS2−7として、コントローラ7は、ブロック位置検出器11から入力されるブロック位置データを監視し、包埋ブロックBがカッター3の切れ刃3aを通過と判断した場合、すなわち包埋ブロックBの薄切が完了した場合には、送り機構4のXステージ4aの駆動を停止させ、ステップS2−8に移行する。ステップS2−8では、コントローラ7は、給排手段25の供給ポンプ25bの駆動を停止させて液体貯留部18への水Wの供給を停止させ、搬送工程S3に移行して、図7に示すフローを実施する。
【0044】
すなわち、図7に示すように、まず、コントローラ7は、給排手段25の排出ポンプ25eを駆動して、液体貯留部18の水Wを排出管25dから排出させる(ステップS3−1)。次に、コントローラ7は、搬送駆動部22を制御して、搬送ベルト20の走行する速度を、受取速度から搬送速度に切り替える(ステップS3−2)。このため、搬送ベルト20に受け取られた薄切片B1は、受取速度より高速の搬送速度で引渡位置Qまで速やかに搬送されることとなる。そして、コントローラ7は、ステップS2−1で搬送ベルト20の走行を開始してからの走行距離を監視し、薄切片B1が引渡位置Q近傍に到達するように予め設定された走行距離分だけ走行させた否かの判定を行い(ステップS3−3)、当該走行距離分だけ走行させた場合には、給排手段25による液体貯留部18からの水Wの排出を停止し(ステップS3−4)、さらに、搬送駆動部22を制御して搬送ベルト20の走行する速度を搬送速度から引渡速度に切り替える(ステップS3−5)。このため、搬送ベルト20上の薄切片B1は、引渡速度で引渡位置Qまで達し、引渡位置Qに位置する液槽6の水Wの液面W3に触れて、搬送ベルト20から離脱して水Wに引き渡されることとなる(ステップS3−6)。そして、コントローラ7は、搬送ベルト20の走行距離が、受取位置Pから引渡位置Qまでの搬送距離以上となったら、搬送駆動部22の駆動を停止し、搬送ベルト20の走行を停止させる。
【0045】
以上のように、本実施形態の薄切片作製装置1では、搬送ベルト20は、後方の第二折返し部20bで液槽6の水Wに浸漬するとともに、折返して前方へ走行し、第一折返し部20aで刃押さえ17の上面17aに形成された液体貯留部18の水Wに浸漬した後に、薄切片B1を受け取ることとなる。すなわち、搬送ベルト20は、液槽6によって全体を湿潤な状態とされるとともに、薄切片B1を受け取る直前に液体貯留部18を通過することで、好適な湿潤状態として受取位置Pに位置することができ、当該受取位置Pで確実に薄切片B1を受け取り、搬送することができる。また、本実施形態では、液体貯留部18に貯留する水Wを、コントローラ7による制御のもと、給排手段25で供給、排出することで調整を行っている。このため、搬送ベルト20で薄切片B1を受け取る際には、常に最適な量の水Wを液体貯留部18に貯留して、より好適に搬送ベルト20を湿潤状態として、薄切片B1を受け取ることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、準備工程S1において、各種薄切条件はテーブルデータを参照して決定するものとしたが、全て手動入力によって決定しても良い。また、薄切片作製工程S2において、最初にステップS2−1として搬送ベルト20を受取速度で走行させるものとしたが、これに限るものではない。少なくとも薄切を開始して包埋ブロックBの前端B3から切れ刃3aまでの距離Lbが、すなわち薄切した長さが、切れ刃3aから受取位置Pまでの距離Lpと等しくなるまでに、搬送ベルト20を受取速度で走行させるようにすれば良い。また、ステップS2−4として給排手段25による液体貯留部18への水Wを貯留させるタイミングとしては、本実施形態に限られず、準備工程S1において実施しておいても良く、少なくとも作製されていく薄切片B1の先端が受取位置Pに達するまでに供給が完了していれば良い。また、給排手段25による水Wの供給量の管理としては、時間によるものに限られず、例えば液体貯留部18に液面センサを設けてこれにより管理するものとしても良い。また、給排手段25による液体貯留部18からの水Wの排出について、ステップS3−3で薄切片B1を引渡位置Q近傍に搬送するまで継続的に排出を行うものとしているが、排出が完了していれば、その時点で排出ポンプ25eの駆動を停止させても良い。さらには、薄切片B1を受け取る際に液体貯留部18の水Wの量が最適な量となっていれば、必ずしも毎回排出する必要はない。
【0047】
また、本実施形態では、給排手段25において、水Wを供給、排出する供給管25c及び排出管25dが、搬送ベルト25の幅方向の両側に分かれて配置されているものとしたが、これに限るものではない。図8から図10は、この実施形態の変形例を示している。図8に示す第1の変形例では、供給管25cが搬送ベルト20の下側において、幅方向略中央に配置されているとともに、排出管25dが搬送ベルト20の幅方向両側のそれぞれに配置されている。この変形例では、上記のように配置されていることで、液体貯留部18において供給から排出までの搬送ベルト20の幅方向の距離を短くすることができる。このため、給排手段25によって、搬送ベルト20の幅方向に速やかに液体の供給、排出を行うことができるとともに、搬送ベルト20を幅方向により均等に湿潤状態とすることができる。また、搬送ベルト20に近接する位置に供給管25cが配置されていることで、搬送ベルト20が配設された範囲により確実に水Wを行き渡らせることができる。
【0048】
また、図9に示す第2の変形例では、供給管25cが搬送ベルト20の幅方向両側のそれぞれに配置されているとともに、排出管25dが搬送ベルト20の下側において、幅方向略中央に配置されている。そして、この変形例でも第1の変形例同様に、液体貯留部18において供給から排出までの搬送ベルト20の幅方向の距離を短くすることができる。このため、給排手段25によって、搬送ベルト20の幅方向に速やかに液体の供給、排出を行うことができるとともに、搬送ベルト20を幅方向により均等に湿潤状態とすることができる。
【0049】
また、図10に示す第3の変形例では、供給管25c及び排出管25dがともに、搬送ベルト20の下側において幅方向略中央に配置されている。そして、この変形例では、上記のように配置されていることで、搬送ベルト20が配設された範囲でより確実に水Wを行き渡らせ、また、排出することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図11から図13は、本発明の第2の実施形態を示したものである。なお、本実施形態では、給排手段25を備えていない点、及び、コントローラ7による制御フローが一部異なる点を除いて、第1の実施形態の薄切片作製装置1と同様の構成を有しているので、装置の全体図については省略し、図1を参照して説明するものとする。以下、第1の実施形態と薄切片の作製、搬送のフローで異なる点を中心として説明する。
【0051】
すなわち、図11に示すように、本実施形態の薄切片作製装置では、準備工程S10において、コントローラ7は、ステップS1−4で薄切条件を決定した後に、ステップS1−10として、搬送駆動部22を駆動させて搬送ベルト20を受取速度で走行させ、この後にステップS1−5〜S1−7の面合わせを実施する。ここで、予め搬送ベルト20を走行させ、さらにその速度を低速の受取速度としておくことによって、液槽6の水Wを通過した搬送ベルト20は、水Wを含ませて第一折返し部20aまで搬送されることとなる。そして、搬送ベルト20が第一折返し部20aで下方から上方へ折り返されることで、搬送ベルト20によって液槽6から搬送された水Wは、落下し、液体貯留部18に貯留されることとなる。このため、面合わせを実施しながら搬送ベルト20の走行を繰り返し行うことで、液体貯留部18を水Wで満たすことができ、搬送ベルト20は、自ら液体貯留部18に貯めた水Wによって好適に湿潤な状態を保つことができる。このため、薄切片作製工程S20においては、図12に示すように、液体貯留部18への水Wの供給を能動的に行わずとも、受取位置Pで作製された薄切片B1を搬送ベルト20で確実に受け取ることができる。
【0052】
また、図13に示すように、本実施形態では、ステップS3−6で薄切片B1が液槽6の水Wに引き渡された後に、ステップS3−10として、再び搬送ベルト20を搬送速度で所定時間走行させる。ここで、搬送ベルト20を受取速度よりも高速の搬送速度で走行させることで、搬送ベルト20が第二折返し部20bから下側で液槽6から液体貯留部18に搬送する水Wの量よりも、第一折返し部20aから上側で液体貯留部18から掻き出す水Wの量の方が多くなる。このため、搬送ベルト20の走行を所定時間継続することで、液体貯留部18の水Wを排出させることができる。そして、ステップS3−10の実施が完了したら、ステップS3−7に移行して、搬送ベルト20の走行を停止して動作を終了させる。なお、ステップS3−10での実施完了は、予め液体貯留部18の水Wを排出するのに十分な時間を設定しておき、コントローラ7がタイマー28による計測結果に基づいて、搬送ベルト20の走行を所定時間を行ったかどうか判定することによって判断される。
【0053】
以上のように、本実施形態では、搬送ベルト20の走行と速度調整により、液体貯留部18の水Wの量を調整することができ、給排手段25を省略することができるので、構成を簡略化し、低コスト化を図ることができる。なお、上記においては、液体貯留部18に水Wを供給する際には、搬送ベルト20を受取速度に、排出する際には搬送速度に設定するものとしたが、これに限るものではない。図11に示すステップS1−10においては、液槽6から搬送される水Wの量と液体貯留部18から掻き出される水Wの量との収支が均衡する速度よりも遅い速度であれば、液槽6から搬送される水Wの量の方が多くなり、液体貯留部18に水Wを供給することができる。また、図13に示すステップS3−10においては、上記均衡する速度よりも速い速度であれば、液体貯留部18から掻き出される水Wの量の方が多くなり、液体貯留部18から水Wを排出させることができる。また、受取速度及び搬送速度が上記条件に当てはまらない場合にも当然に、液体貯留部18に水Wを供給し、排出させる際の速度は、受取速度及び搬送速度と異なる速度に設定されることとなる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を示す全体図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を示すブロック図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置のカッター近傍の詳細を示す断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置において、カッター固定部及びカッターの詳細を示す斜視図である。
【図5】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の準備工程の詳細を示すフロー図である。
【図6】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の薄切片作製工程の詳細を示すフロー図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の搬送工程の詳細を示すフロー図である。
【図8】この発明の第1の実施形態の第1の変形例の薄切片作製装置の給排手段の詳細を示す斜視図である。
【図9】この発明の第1の実施形態の第2の変形例の薄切片作製装置の給排手段の詳細を示す斜視図である。
【図10】この発明の第1の実施形態の第3の変形例の薄切片作製装置の給排手段の詳細を示す斜視図である。
【図11】この発明の第2の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の準備工程の詳細を示すフロー図である。
【図12】この発明の第2の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の薄切片作製工程の詳細を示すフロー図である。
【図13】この発明の第2の実施形態の薄切片作製装置を使用して薄切片を作製する際の搬送工程の詳細を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0056】
1 薄切片作製装置
2 試料台
3 カッター
3a 切れ刃
4 送り機構(送り手段)
6 液槽(薄切片受取手段)
7 コントローラ(制御部)
15 カッター固定部
16 固定台
17 刃押さえ
18 液体貯留部
18a (切れ刃3a側の)壁面
18b 底面
18c、18d、18e 壁面
20 搬送ベルト
20a 第一折返し部
20b 第二折返し部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包埋ブロックを薄切するカッターと、
該カッターを支持する固定台、及び、該固定台に対して前記カッターを上側から挟み込む刃押さえを有するカッター固定部と、
包埋ブロックを固定する試料台と、
該試料台を前記カッターに対して所定の送り方向に相対移動させて、該カッターによって包埋ブロックを薄切させる送り手段と、
前記カッターの切れ刃後方に配置され、液体が貯留された液槽と、
前記カッターの上方に設けられた第一折返し部及び前記液槽の内部に設けられた第二折返し部を有し、包埋ブロックから薄切された薄切片を前記液槽まで搬送する無端状の搬送ベルトとを備え、
前記カッター固定台の前記刃押さえの上面には、液体を貯留する液体貯留部が形成され、前記搬送ベルトの前記第一折返し部は、前記液体貯留部の内部に配置されていることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄切片作製装置において、
前記搬送ベルトの前記第一折返し部と、前記液体貯留部の前記切れ刃側の壁面との間には、該壁面の上端から前記搬送ベルトの薄切片が載置される表面に向かって、表面張力によって貯留される液体の液面が傾斜して形成されるように間隙が形成されていることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薄切片作製装置において、
前記液体貯留部に液体を給排する給排手段を備えることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項4】
請求項3に記載の薄切片作製装置において、
前記給排手段は、液体を供給する供給管と、液体を排出する排出管とを有し、
前記供給管と前記排出管との一方が、前記搬送ベルトの幅方向略中央に配置されているとともに、他方が、前記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の薄切片作製装置において、
前記送り手段によって前記カッターに対して前記試料台を相対移動させて包埋ブロックを薄切させるのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部に予め設定された必要量だけ液体を供給するとともに、前記カッターと前記送り手段とによる包埋ブロックの薄切が完了するのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部の液体を排出させる制御部を備えることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の薄切片作製装置において、
前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部の底面は親水性を有していることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の薄切片作製装置において、
前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部を囲む壁面は疎水性を有していることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項1】
包埋ブロックを薄切するカッターと、
該カッターを支持する固定台、及び、該固定台に対して前記カッターを上側から挟み込む刃押さえを有するカッター固定部と、
包埋ブロックを固定する試料台と、
該試料台を前記カッターに対して所定の送り方向に相対移動させて、該カッターによって包埋ブロックを薄切させる送り手段と、
前記カッターの切れ刃後方に配置され、液体が貯留された液槽と、
前記カッターの上方に設けられた第一折返し部及び前記液槽の内部に設けられた第二折返し部を有し、包埋ブロックから薄切された薄切片を前記液槽まで搬送する無端状の搬送ベルトとを備え、
前記カッター固定台の前記刃押さえの上面には、液体を貯留する液体貯留部が形成され、前記搬送ベルトの前記第一折返し部は、前記液体貯留部の内部に配置されていることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄切片作製装置において、
前記搬送ベルトの前記第一折返し部と、前記液体貯留部の前記切れ刃側の壁面との間には、該壁面の上端から前記搬送ベルトの薄切片が載置される表面に向かって、表面張力によって貯留される液体の液面が傾斜して形成されるように間隙が形成されていることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薄切片作製装置において、
前記液体貯留部に液体を給排する給排手段を備えることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項4】
請求項3に記載の薄切片作製装置において、
前記給排手段は、液体を供給する供給管と、液体を排出する排出管とを有し、
前記供給管と前記排出管との一方が、前記搬送ベルトの幅方向略中央に配置されているとともに、他方が、前記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の薄切片作製装置において、
前記送り手段によって前記カッターに対して前記試料台を相対移動させて包埋ブロックを薄切させるのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部に予め設定された必要量だけ液体を供給するとともに、前記カッターと前記送り手段とによる包埋ブロックの薄切が完了するのに応じて、前記給排手段によって前記液体貯留部の液体を排出させる制御部を備えることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の薄切片作製装置において、
前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部の底面は親水性を有していることを特徴とする薄切片作製装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の薄切片作製装置において、
前記刃押さえの液体貯留部に貯留される液体は水を含む液体であり、該液体貯留部を囲む壁面は疎水性を有していることを特徴とする薄切片作製装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−54445(P2010−54445A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222004(P2008−222004)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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