説明

薄切片標本作製装置及び薄切片標本作製方法

【課題】包埋ブロックの向きに係らず、スライドガラスに対して生体試料の向きを略一定の向きとした薄切片標本を作製することが可能な薄切片標本作製装置、及び、薄切片標本の作製方法を提供する。
【解決手段】薄切片標本作製装置1は、包埋ブロックBを切削する切削機構2と、スライドガラスPを載置する載置面20aと略平行な面内でスライドガラスPを回転させることが可能なスライドガラス回転ステージ20と、薄切片B1を受け取って搬送するとともに、スライドガラスP上に薄切片B1を受け渡すことが可能な搬送機構4と、生体試料S1の向きを表わす方向データを検出し、これに基づいて、薄切片B1に含まれた生体試料S1とスライドガラスPとの相対的な向きが予め設定された向きとなるように、スライドガラス回転ステージ20によってスライドガラスPを回転させる制御部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や実験動物等から取り出した生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を切削し、該薄切片をスライドガラス上に載置して薄切片標本を作製する薄切片標本作製装置、及び、薄切片標本の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製して生体試料の観察を行う方法が知られている。より詳しくは、包埋ブロックから作製された薄切片をスライドガラス上に載置して薄切片標本を作製し、スライドガラス上において薄切片に含まれた生体試料に染色処理を行って、生体試料の観察が行われる。
【0003】
ここで、例えば前臨床試験においては、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片標本を作製する。このため、作業者は膨大な枚数の薄切片標本を作製する必要があるため、近年、包埋ブロックから薄切片標本を作製するまでの一連の工程を行うことが可能な薄切片標本作製装置が開発されていきている。このような薄切片標本作製装置としては、包埋ブロックから薄切片を切削する切断手段と、切削された薄切片を搬送する薄切片搬送手段と、薄切片搬送手段から薄切片をスライドガラスに転写させる転写手段とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような薄切片標本作製装置によれば、切断手段によって包埋ブロックを所定の薄切片厚さで切削して薄切片を作製するとともに、作製した薄切片を薄切片搬送手段によってスライドガラスまで搬送し、転写手段によって薄切片をスライドガラスに転写して、薄切片標本を作製することができるとされている。
【0004】
ところで、包埋ブロックを切削する際に、生体試料の種類、向きに応じて、切削する方向に対して包埋ブロックの向きを調整することで、良好な切断面の薄切片を得ることができる。このため、包埋ブロックを切削するステージ上において、作業者が、生体試料の種類、向きに応じて、包埋ブロック毎に、ステージに載置する包埋ブロックの向きを調整する場合があった。一方、上記のような前臨床試験においては、標準作業書などによりスライドガラス上における薄切片に含まれた生体試料の向きを一定の向きとするように定められている場合がある。このため、作業者は、包埋ブロックを好適な向きとして薄切片を作製した後に、薄切片に含まれる生体試料の向きを確認して、スライドガラスに対する生体試料の相対的な向きを調整して、スライドガラス上に薄切片を載置する必要があった。
【特許文献1】特開2004−28910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による装置では、例えば、好適な切断面の薄切片を得るべく包埋ブロックの向きを変えれば、作製され、搬送され、スライドガラス上に載置される薄切片に含まれた生体試料の向きも変化してしまう。このため、スライドガラスに対して生体試料の相対的な向きを一定とすることができなく、一定の品質の薄切片標本を得るまでには至らなかった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、包埋ブロックの向きに係らず、スライドガラスに対する生体試料の相対的な向きを一定の向きとした薄切片標本を作製することが可能な薄切片標本作製装置、及び、薄切片標本の作製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、生体試料が包埋剤によって包埋された包埋ブロックから薄切片を切削し、該薄切片をスライドガラス上に載置して薄切片標本を作製する薄切片標本作製装置であって、前記包埋ブロックを切削して、前記薄切片を作製する切削機構と、前記スライドガラスを載置する載置面を有し、該載置面と略平行な面内で前記スライドガラスを回転させることが可能なスライドガラス回転ステージと、前記切削機構で作製された前記薄切片を受け取って搬送するとともに、前記スライドガラス回転ステージの前記載置面に載置された前記スライドガラス上に前記薄切片を受け渡すことが可能な搬送機構と、前記切削機構によって作製された前記薄切片に含まれた前記生体試料の向きを表わす方向データを検出し、該方向データに基づいて、前記搬送機構から受け渡される前記薄切片に含まれた前記生体試料と前記スライドガラスとの相対的な向きが予め設定された向きとなるように、前記スライドガラス回転ステージによって前記スライドガラスを回転させる制御部とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、生体試料が包埋剤によって包埋された包埋ブロックから薄切片を切削し、該薄切片をスライドガラス上に載置して薄切片標本を作製する薄切片標本の作製方法であって、前記包埋ブロックを切削して、前記薄切片を作製する切削工程と、該切削工程で作製された前記薄切片を受け取って搬送する搬送工程と、前記薄切片に含まれた前記生体試料の向きを表わす方向データを検出する検出工程と、該検出工程で検出された前記方向データに基づいて、前記薄切片に含まれた前記生体試料と前記スライドガラスとの相対的な向きが予め設定された向きとなるように前記スライドガラスを回転させるスライドガラス回転工程と、該スライドガラス回転工程によって向きを調整した前記スライドガラス上に、前記搬送工程で受け取った前記薄切片を受け渡す受渡工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
この発明に係る薄切片作製装置及び薄切片の作製方法によれば、切削工程として、包埋された生体試料の向きを任意の向きとして包埋ブロックを切削機構に配置して切削すれば、包埋ブロックに包埋された状態の時と生体試料の向きを同じくして薄切片が作製される。次に、作製された薄切片は、搬送工程として、搬送機構によって受け取られ、搬送されるとともに、検出工程として、制御部によって薄切片に含まれた生体試料の向きを表わす方向データの検出が行われる。そして、スライドガラス回転工程として、制御部は、検出された方向データに基づいて、薄切片に含まれた生体試料とスライドガラスとの相対的な向きが予め設定された向きとなるように、スライドガラス回転ステージによってスライドガラスを回転させて調整する。このため、受渡工程として、搬送機構によって、スライドガラス回転ステージの載置面に載置されたスライドガラス上に、生体試料の相対的な向きを一定として薄切片を載置して薄切片標本を作製することができる。
【0010】
また、上記の薄切片標本作製装置において、前記切削機構は、前記包埋ブロックを切削する面と略平行な面内で、該包埋ブロックを回転させることが可能な包埋ブロック回転ステージと、該包埋ブロック回転ステージによって前記包埋ブロックを回転させる前記回転角度を入力可能な操作部とを備え、前記制御部は、前記方向データとして前記操作部によって入力された前記回転角度を検出し、該回転角度に基づいて前記スライドガラスを回転させることがより好ましいとされている。
【0011】
また、上記の薄切片標本の作製方法において、前記切削工程前に前記包埋ブロックを切削する面と略平行な面内で、該包埋ブロックを回転させて向きを調整する切削方向調整工程を備え、前記検出工程は、前記方向データとして、前記切削方向調整工程で回転させた前記包埋ブロックの回転角度を検出し、前記スライドガラス回転工程は、該回転角度に基づいて前記スライドガラスを回転させることがより好ましいとされている。
【0012】
この発明に係る薄切片作製装置及び薄切片の作製方法によれば、切削方向調整工程として、切削機構において、操作部によって入力された回転角度だけ、包埋ブロック回転ステージによって包埋ブロックを回転させることができる。このため、切削工程において、切削機構によって包埋された生体試料の向きを好適な向きとして包埋ブロックを切削して薄切片を作製することができる。また、制御部が、検出工程において、方向データとして入力された回転角度を検出し、スライドガラス回転工程において、この回転角度に基づいてスライドガラスを回転させることで、切削方向調整工程において包埋ブロックを回転させても生体試料の相対的な向きを略一定としてスライドガラスに薄切片を載置して薄切片標本を作製することができる。
【0013】
また、上記の薄切片標本作製装置において、前記搬送機構によって搬送される前記薄切片を撮像して、該薄切片の画像を取得可能な撮像手段を備え、前記制御部は、前記方向データとして、予め前記薄切片の向きと対応させて該薄切片に方向性を有して形成されて前記画像に映し出されたマークの向きを検出し、該マークの向きが予め設定された向きとなるように前記スライドガラスを回転させるものとしても良い。
【0014】
また、上記の薄切片標本の作製方法において、前記切削工程前に前記包埋ブロックの切削される面に、形成される薄切片の向きと対応させて方向性を有したマークを形成するマーク形成工程を備え、前記検出工程は、前記薄切片を撮影して画像を取得し、前記方向データとして、該画像に映し出された前記マークの向きを検出し、前記スライドガラス回転工程は、前記スライドガラスに対する前記マークの相対的な向きが予め設定された向きとなるように前記スライドガラスを回転させるものとしても良い。
【0015】
この発明に係る薄切片作製装置及び薄切片の作製方法によれば、マーク形成工程として、切削工程で包埋ブロックの切削される面には、薄切片の向きと対応して方向性を有するマークが形成される。そして、検出工程において、制御部は、撮像手段によって薄切片の画像を取得し、方向データとして画像に映し出されたマークの向きを検出する。一般に、生体試料は包埋ブロックの向きと対応した向きで包埋され、すなわち、生体試料の向きと薄切片の向きとは一定となる。このため、スライドガラス回転工程において、制御部によって、検出されたマークの向きが予め設定された向きとなるようにスライドガラスを回転させることで、生体試料の相対的な向きを略一定としてスライドガラスに薄切片を載置して薄切片標本を作製することができる。
【0016】
また、上記の薄切片標本作製装置において、前記搬送機構によって搬送される前記薄切片を撮像して、該薄切片の画像を取得可能な撮像手段を備え、前記制御部は、前記方向データとして、前記画像に映し出される前記薄切片に含まれた前記生体試料の範囲を検出し、検出された該生体試料の範囲と予め設定された範囲とでパターンマッチング要素を比較して略等しくなるように前記スライドガラスを回転させるものとしても良い。
【0017】
また、上記の薄切片標本の作製方法において、前記検出工程は、前記薄切片を撮影して画像を取得し、前記方向データとして、該画像に映し出された前記薄切片に含まれる前記生体試料の範囲を検出し、前記スライドガラス回転工程は、前記生体試料の範囲と予め設定された範囲とでパターンマッチング要素を比較して略等しくなるように前記スライドガラスを回転させるものとしても良い。
【0018】
この発明に係る薄切片作製装置及び薄切片の作製方法によれば、検出工程において、制御部は、撮像手段によって薄切片の画像を取得し、方向データとして画像に映し出された生体試料の範囲を検出する。そして、スライドガラス回転工程において、制御部によって、検出された生体試料の範囲と予め設定された範囲とでパターンマッチング要素を比較して略等しくなるようにスライドガラスを回転させる。このため、包埋ブロック及び薄切片と生体組織との相対的な向きと係らず、スライドガラスに対して生体試料の相対的な向きを略一定として薄切片を載置して薄切片標本を作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薄切片標本作製装置によれば、スライドガラス回転ステージと制御部とを備えることで、包埋ブロックの向きに係らず、方向データに基づいて、スライドガラスに対する生体試料の相対的な向きを一定の向きとして、一定の品質の薄切片標本を作製することができる。
また、本発明の薄切片標本の作製方法によれば、検出工程とスライドガラス回転工程とを備えることで、包埋ブロックの向きに係らず、方向データに基づいて、スライドガラスに対する生体試料の相対的な向きを一定の向きとして、一定の品質の薄切片標本を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
図1から図4は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1に示す薄切片標本作製装置1は、生体試料Sが包埋された包埋ブロックBから厚さ3〜5μm程度の極薄の薄切片B1を作製し、薄切片B1に含まれる生体試料Sを検査、観察する過程において、自動的に、包埋ブロックBから薄切片B1を切削し、スライドガラスP上に載置して薄切片標本を作製する装置である。生体試料Sは、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器などの組織から切除された試料であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野などで適時選択されるものである。また、包埋ブロックBは、上記のような生体試料Sを包埋剤B2によって包埋、すなわち周囲を覆い固めたものであり、生体試料Sは、通常、その種類毎に向きを統一させて包埋されている。そして、包埋ブロックBは、向きを統一して樹脂などで形成された包埋カセットCに搭載して取り扱われている。このような包埋ブロックBは、より詳しくは、以下のように作製されるものである。まず、上記の生体試料Sの塊をホルマリンに漬けて、生体試料Sを構成する蛋白質を固定する。そして、組織を固い状態にした後、適当な大きさに切断する。最後に、切断された生体試料Sの内部の水分を包埋剤B2に置き換えたものを、溶解した包埋剤B2の中に埋め込んで、固めることで作製される。ここで、包埋剤B2は、上記のように液状化と冷却固化が容易に可能とされるとともに、有機溶媒に浸漬することで溶解する材質であり、樹脂やパラフィンなどである。以下、薄切片標本作製装置1の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、薄切片標本作製装置1は、包埋ブロックBを切削して薄切片B1を作製する切削機構2と、スライドガラスPを載置する載置台3と、薄切片B1を切削機構2から載置台3まで搬送する搬送機構4と、各構成を制御する制御部5とを備える。切削機構2は、包埋ブロックBが搭載された包埋カセットCを載置可能な載置面10と、載置面10に載置された包埋ブロックBを移動させる包埋ブロック回転ステージ11及び包埋ブロックZステージ12と、載置面10に載置された包埋ブロックBを切削可能なカッター13と、カッター13を移動させるカッター駆動部14と、操作部15とを備える。
【0022】
載置面10には、図示しない搬送ロボットによって、包埋ブロックBが搭載された包埋カセットCを、向きを略同じくして載置して固定することが可能である。また、カッター13は、切削面B3内で包埋ブロックBを切削可能にカッター駆動部14に固定されている。また、カッター駆動部14は、カッター13を、切削面B3内で載置面10に載置された包埋ブロックBに向うX方向に進退させることが可能であり、これにより包埋ブロックBを切削面B3で切削することができる。なお、カッター駆動部14に変えて、カッター13に対して包埋ブロックBをX方向に移動させる構成としても良い。また、包埋ブロック回転ステージ11は、載置面10に載置された包埋ブロックBを切削面B3内で回転させることが可能であり、これによりカッター13によって任意の方向から包埋ブロックBを切削することができる。また、包埋ブロックZステージ12は、載置面10に載置された包埋ブロックBを切削面B3に略直交するZ方向に進退させることが可能であり、これによりカッター13によって任意の厚さで包埋ブロックBを切削することができる。
【0023】
操作部15は、包埋ブロック回転ステージ11による回転角度、及び、包埋ブロックZステージ12によるZ方向への移動量を手動で設定可能であり、また、カッター駆動部14を手動で駆動させてカッター13によって切削することが可能である。一方、制御部5は、操作部15による操作に係らず、予め設定された薄切片厚に応じて包埋ブロックZステージ12の移動量を設定し駆動させるとともに、予め設定された切削速度でカッター駆動部14を駆動させてカッター13によって切削することが可能である。また、操作部15によって各手動操作を行った場合には、操作部15による操作結果が出力され、制御部5は、包埋ブロック回転ステージ11による回転角度や包埋ブロックZステージ12によるZ方向の移動量などを検出することが可能である。
【0024】
また、載置台3は、上部にスライドガラスPを載置可能な載置面20aを有し、載置面20a内でスライドガラスPを回転させることが可能なスライドガラス回転ステージ20と、スライドガラスPをX方向、Y方向及びZ方向の三軸に移動させることが可能なスライドガラス三軸ステージ21とを備える。そして、スライドガラス回転ステージ20及びスライドガラス三軸ステージ21は制御部5と接続されていて、制御部5による制御のもと、図示しない搬送ロボットによって搬送されて載置面20aに載置されたスライドガラスPを移動させることができる。なお、制御部5による制御の詳細については後述する。また、スライドガラスPは、上記の図示しない搬送ロボットによって、薄切片B1を吸着させる液滴P2が載置面P1に付着した状態で、向きを略一定として載置面20aに載置される。なお、載置台3も操作部を有する構成とし、手動によってスライドガラス回転ステージ20及びスライドガラス三軸ステージ21を駆動させることが可能な構成としても良い。
【0025】
また、搬送機構4は、切削機構2から載置台3までX方向に沿って配設された搬送テープ25によって構成されていて、切削機構2側から載置台3側へ向かって順に、テープ送り出し部26と、第一のローラ27と、第二のローラ28と、テープ巻取り部29とを備えている。テープ送り出し部26は、搬送テープ25がロール状に巻回されていて、切削機構2の試料台3に向かって搬送テープ25を供給するものであり、搬送テープ25が巻回された軸体26aと、軸体26aを回転させる図示しない駆動部とを備えている。図示しない駆動部は、制御部5と接続されていて、制御部5による制御のもと所定の回転数で軸体26aを回転させることが可能である。同様に、テープ巻取り部29は、搬送テープ25がロール状に巻回されていて、載置台3を通過した搬送テープ25を回収するものであり、搬送テープ25が巻回された軸体29aと、軸体29aを回転させる図示しない駆動部とを備えている。図示しない駆動部は、制御部5と接続されていて、制御部5による制御のもと所定の回転数で軸体29aを回転させることが可能である。また、第一のローラ27及び第二のローラ28は、それぞれ、切削機構2または載置台3を挟んでテープ送り出し部26またはテープ巻取り部29と対向して設けられ、搬送テープ25を案内するものである。なお、第一のローラ27及び第二のローラ28にも図示しない駆動部が設けられていて、制御部5による制御のもと、テープ送り出し部26及びテープ巻取り部29と独立して回転することが可能である。
【0026】
そして、テープ送り出し部26及び第一のローラ27を独立して回転させることで、搬送テープ25を、切削機構2の載置面10に載置された包埋ブロックBの上方に配設された状態から、弛ませて下面25aを包埋ブロックBの切断面B4に当接させた状態にすることができる。また、第二のローラ28及びテープ巻取り部29を独立して回転させることで、搬送テープ25を、載置台3の載置面20aに載置されたスライドガラスPの上方に配設された状態から、弛ませて下面25aをスライドガラスPの載置面P1に当接させた状態にすることができる。また、テープ送り出し部26から送り出される搬送テープ25には、図示しない帯電装置によって上面25bにマイナスの電荷が与えられている。一方、載置面10に載置された包埋ブロックBの切断面B4には、図示しない他の帯電装置によってプラスの電荷が与えられている。このため、搬送テープ25の下面25aには、プラスの電荷が与えられた包埋ブロックBから切削された薄切片B1を貼り付けることができ、テープ送り出し部26、第一のローラ27、第二のローラ28、及び、テープ巻取り部29を連動させて駆動することで、薄切片B1をX方向に搬送することができる。
【0027】
次に、薄切片標本作製装置1による薄切片標本の作製方法、及び、制御部5による制御の詳細について説明する。図2は薄切片標本作製のフロー図を示している。まず、準備工程S1として、図示しない搬送ロボットによって所定の包埋ブロックBが搭載された包埋カセットCを選択して、切削機構2の載置面10に包埋ブロックBを予め決められている方向に合わせて載置して固定する。また、図示しない他の搬送ロボットによって、載置面P1に液滴P2が付着したスライドガラスPを、予め決定された向きとして載置台3の載置面20aに載置する。
【0028】
次に、切削方向調整工程S2として、作業者は、操作部15の操作のもと、包埋ブロックBに包埋された生体試料Sを確認しながら、包埋ブロック回転ステージ11を回転させて、生体試料Sが切削するX方向に対して最適な向きとなるように調整する。この際、検出工程S3として、調整に要した回転角度は、操作部15から制御部5に入力され、制御部5は、この回転角度を方向データとして検出する。さらに、スライドガラス回転工程S4として、制御部5は、検出された方向データである回転角度に基づいて、スライドガラスPの向きを調整する。すなわち、制御部5は、検出された回転角度と同じだけスライドガラス回転ステージ20によってスライドガラスPを回転させる。例えば、図3に示すように、切削方向調整工程S2において包埋ブロックBを回転させなかった場合は、検出される回転角度は0度であり、制御部5は、スライドガラス回転ステージ11を駆動させない。一方、図4に示すように、切削方向調整工程S2において包埋ブロックBを左回りに90度回転させた場合は、左回りを正とすれば、検出される回転角度は+90度であり、制御部5は、スライドガラス回転ステージ11を+90度回転させる。このため、包埋ブロックBに包埋された生体試料SとスライドガラスPとの相対的な向きは常に一定となる。なお、図3及び図4において、スライドガラスPの載置面P1において、一端部側にはフロスト部P4が設けられている。フロスト部P4は、例えば、表面を粗面加工したもので、識別用文字などを記入することが可能なものであり、本実施形態では、これによりスライドガラスPの向きが決定付けられている。また、スライドガラス回転工程S4とともに、スライドガラス三軸ステージ21を駆動して、スライドガラスPをX方向、Y方向及びZ方向に移動させるものとしても良い。X方向及びY方向に移動させることで、スライドガラスPをXY平面内(スライドガラスPの長さ方向及び幅方向)で位置調整することが可能であり、また、Z方向に移動させることで、スライドガラスPと搬送テープ25との離間距離を調整することが可能である。
【0029】
一方、上記の検出工程S3及びスライドガラス回転工程S4と同時に、切削工程S5として、包埋ブロックBを所定の厚さで切削して薄切片B1が作製される。すなわち、制御部5は、所定の厚さとなるように、切削機構2の包埋ブロックZステージ12を駆動し包埋ブロックBをZ方向に移動させる。次に、制御部5は、搬送機構4のテープ送り出し部26及び第一のローラ27を駆動し、搬送テープ25を弛ませて下面25aを包埋ブロックBの切断面B4に当接させた状態にする。ここで、図示しない帯電装置によって、包埋ブロックBはプラスの電荷が帯電し、また、搬送テープ25の上面25bにはマイナスの電荷が帯電している。このため、搬送テープ25の下面25aと包埋ブロックBの切断面B4とは静電気力によって密着保持された状態となる。そして、制御部5は、カッター駆動部14を駆動し、所定の切削速度でカッター13を包埋ブロックBに向かって移動させることで、包埋ブロックBを切削し、所定の厚さの薄切片B1を作製することができる。ここで、包埋ブロック回転ステージ11によって包埋ブロックBに包埋された生体試料Sの向きを、切削する方向であるX方向に対して好適な向きとして切削することができるので、良好な切断面として薄切片B1を作製することができる。
【0030】
次に、搬送工程S6として、作製された薄切片B1を受け取って載置台3に向かって搬送する。すなわち、切削工程S5で作製された薄切片B1は静電気力により搬送テープ25に受け取られ、下面25aに密着保持された状態となる。そして、制御部5は、テープ送り出し部26及び第一のローラ27を駆動させることで、薄切片B1を密着保持した搬送テープ25が包埋ブロックBの上方に移動し、薄切片B1は包埋ブロックBから離脱する。さらに、制御部5は、第二のローラ28及びテープ巻取り部29も駆動させ、テープ送り出し部26及び第一のローラ27と連動させることで、搬送テープ25をX方向に沿って載置台3側へ移動させ、これにより薄切片3は載置台3のスライドガラスPの上方まで搬送されることとなる。
【0031】
次に、受渡工程S7として、薄切片B1を搬送テープ25からスライドガラスPに受渡し、薄切片標本を完成させる。すなわち、制御部5は、薄切片B1が載置面20aに載置されたスライドガラスPの上方に位置した状態で、第二のローラ28及びテープ巻取り部29を駆動し、薄切片B1がスライドガラスPの載置面P1に当接するまで、搬送テープ25を降下させる。スライドガラスPの載置面P1に薄切片B1が当接すると、載置面P1には液滴P2が付着しているので、液滴P2の表面張力により薄切片B1は搬送テープ25から離脱しスライドガラスPの載置面P1に吸着された状態となり、これにより薄切片標本が作製される。この際、スライドガラス回転工程S4によりスライドガラスPの向きを調整していることで、スライドガラスPに対する薄切片B1に含まれた生体試料S1の相対的な向きを一定としてスライドガラスPの載置面P1上に薄切片B1を載置して、薄切片標本を作製することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態の薄切片標本作製装置1では、切削方向調整工程S2において包埋ブロックBを回転させたとしても、制御部5によって、方向データである回転角度に基づいて、スライドガラスPに対する生体試料Sの相対的な向きを一定の向きとして、一定の品質の薄切片標本を作製することができる。また、切削方向調整工程S2において、包埋ブロック回転ステージ11によって包埋ブロックBに包埋された生体試料Sの向きを切削する方向であるX方向に対して調整することができるので、最適な方向から包埋ブロックBを切削して良好な切断面B4の薄切片B1を作製することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、切削方向調整工程S2で包埋ブロックBを回転させた回転角度分だけスライドガラス回転工程S4でスライドガラスPを回転させるものとしたが、これに限るものでは無い。例えば、検出された回転角度に基づいて、予め設定された補正量で補正した角度分だけスライドガラスPを回転させるものとしても良い。また、切削方向調整工程S2において、作業者が操作部15の操作によって包埋ブロックBの回転角度を直接操作により決定するものとしたが、これに限るものではない。例えば、作業者が操作部15からIDナンバーを入力することで、IDナンバーと対応して記録された回転角度を呼び出して、包埋ブロックBを回転させて切削するものとしても良い。すなわち、包埋ブロックBが搭載された包埋カセットCには、それぞれ搭載された包埋ブロックBと対応させてIDナンバーが付与されていて、収納棚に複数収納されている。また、制御部5には、IDナンバーと、IDナンバーと対応する収納棚の収納位置、包埋された生体試料Sの種類、及び、包埋ブロック回転ステージ11で回転させる回転角度が記録されている。また、操作部15によって薄切片標本を作製する包埋ブロックBのIDナンバーを入力できる構成とする。このような場合、作業者が操作部15においてIDナンバーを入力することで、制御部5は、準備工程S1としてIDナンバーと対応する包埋カセットBを選択して切削機構2まで包埋カセットCを搬送する。そして、制御部5は、切削方向調整工程S2としてIDナンバーと対応する回転角度を呼び出して、この回転角度で包埋ブロックBを回転させる。最後に、切削工程S5において包埋ブロックBを切削することで、最適な向きで包埋ブロックBを切削して薄切片B1を作製することができる。
【0034】
また、搬送機構4として、搬送テープ25に静電気力で貼り付けて搬送する構成を例に挙げたが、これに限るものでは無い。例えば、搬送テープ25に粘着力を付与して、粘着させて搬送する、あるいは、搬送テープ25上に載置して搬送するものとしても良い。少なくとも、切削機構2で作製された薄切片B1を、向きを変えずに載置台3まで搬送して、スライドガラスPに受け渡し可能であれば良い。
【0035】
(第2の実施形態)
図5及び図6は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
図5に示すように、この実施形態の薄切片標本作製装置40は、切削機構2と載置台3との間において、搬送テープ25の上方に設けられ、搬送テープ25で搬送される薄切片B1を撮影可能な撮像手段である第一のCCDカメラ41と、載置台3の載置面20aの上方に設けられ、スライドガラスP及び搬送された薄切片B1を撮影可能な第二のCCDカメラ42とを備える。また、制御部5には、画像分析器43が搭載されていて、第一のCCDカメラ41及び第二のCCDカメラ42によって撮影された画像の分析を行うことが可能である。なお、制御部5の画像分析器43による画像の分析の詳細については後述する。
【0037】
また、本実施形態において、薄切片標本作製装置40で使用される包埋ブロックBには、包埋ブロックB及び薄切片B1の向きを表わすマークであるオリエンテーションフラット(以下、オリフラと称す)B5が形成されている。図6に示すように、オリフラB5は、略矩形の外形形状において、角部を、一定の角度を有して、厚さ方向に一様に面取り処理したものである。このため、いずれの位置で包埋ブロックBを切削して薄切片B1を作製したとしても、薄切片B1にも同様のオリフラB5が形成されることとなる。そして、第一のCCDカメラ41によって搬送テープ25で搬送されている薄切片B1を撮影し、制御部5の画像分析器43によって、その画像に映し出される薄切片B1のオリフラB5の向きを検出して、オリフラB5の向きを方向データとして薄切片B1の向きを検出することが可能である。また、第二のCCDカメラ42によって載置台3に載置されたスライドガラスPを撮影し、制御部5の画像分析器43によって、その画像に映し出されるスライドガラスPのフロスト部P4の向きによって、スライドガラスPの向きを検出することが可能である。
【0038】
次に、薄切片標本作製装置40による薄切片標本の作製方法、及び、制御部5による制御の詳細について説明する。なお、第1の実施形態と同様である点については詳細を省略する。本実施形態においては、薄切片標本となる包埋ブロックBを作製するに際して、マーク形成工程としてオリフラB5を形成する。なお、オリフラB5の形成は、包埋ブロックBを形成する包埋剤B2の型を、オリフラB5を有する形状としても良いし、包埋剤B2が固結後に切削加工してオリフラB5を形成するものとしても良い。
【0039】
そして、準備工程S1として包埋ブロックBを切削機構2に載置するとともに、スライドガラスPを載置台3に載置する。次に、切削方向調整工程S2として、包埋ブロックBの向きを操作部15によって調整し、切削工程S5で切削する。そして、搬送工程S6として、切削して作製された薄切片B1は搬送機構4によって搬送される。そして、搬送途中において、検出工程S3として搬送テープ25に密着保持された状態で、第一のCCDカメラ41で薄切片B1を撮影する。撮影して取得された画像は、制御部5の画像分析器43に入力され、制御部5はオリフラB5の向きを方向データとして検出する。
【0040】
次に、スライドガラス回転工程S4として、制御部5は、検出された方向データであるオリフラB5の向きに基づいて、スライドガラス回転ステージ20によってスライドガラスPを回転させて向きを調整する。すなわち、制御部5は、検出されたオリフラB5の向きと、薄切片B1に含まれる生体試料Sの向きがスライドガラスPに対して最適となる場合の薄切片B1の向きと対応して予め設定されているオリフラB5の向きとを比較し、必要な角度補正値を決定する。そして、制御部5は、この角度補正値分だけスライドガラス回転ステージ20によってスライドガラスPを回転させる。このため、薄切片B1に含まれた生体試料S1の向きと、スライドガラスPの向きとを一定の状態にすることができる。ここで、制御部5は、さらに、第二のCCDカメラ43によって、スライドガラスPのフロスト部P1の向きに基づいて、スライドガラスPの向きの監視を行っている。このため、仮に準備工程S1においてスライドガラスPが所定の向きで載置されていなかったとしても、スライドガラスPのずれに対応する角度補正値だけさらに補正して回転させることができ、より正確に生体試料S1の向きと、スライドガラスPの向きとを調整することができる。最後に受渡工程S7として、向きを調整したスライドガラスP上に薄切片B1を載置することで、スライドガラスPに対して生体試料S1の相対的な向きを一定とした薄切片標本を作製することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、薄切片の向きと対応させて方向性を有したマークとして、オリフラB5を例に挙げたがこれに限るものでは無い。図7及び図8には、変形例を示している。すなわち、図7に示すように、包埋ブロックBのいずれかの辺に、厚さ方向に一様に、ノッチを形成するものとしても良い。また、図8に示すように、生体試料Sを包埋剤B2によって包埋する際に、マークとして所定の位置に、第一のCCDカメラ41で撮像された画像で識別可能な略棒状の指標物B7を厚さ方向に配設して包埋するようにしても良い。この場合、少なくとも所定の二箇所に指標物B7を包埋することで、方向データとして機能することが可能であるが、図8のように三箇所以上とすることで、より正確に薄切片B1の向きを識別することができる。また、上記の例はいずれも、包埋ブロックBが切削機構2に載置される前において形成するものであるが、これに限るものでは無い。例えば、切削機構2が、包埋ブロックBの切断面B4に一定の方向性を有する溝を形成可能な機構を備えるものとし、切削方向調整工程S2を実施する前に、包埋ブロックBの切断面B4にマークとして上記溝を形成するものとしても良い。また、第1の実施形態同様に、包埋カセットCにIDナンバーが付与された構成とし、入力されたIDナンバーに基づいて、切削方向調整工程S2における包埋ブロック回転ステージ11による回転角度を設定するものとしても良い。また、入力されたIDナンバーに基づいて、生体試料の種類毎に、スライドガラス回転工程S5においてオリフラB5などのマークを向きを異なる向きに設定するものとしても良い。
【0042】
(第3の実施形態)
図5及び図9は、この発明に係る第3の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、本実施形態の薄切片標本作製装置50の構成としては、制御部5の制御方法を除いて、第2の実施形態と同様である。
【0043】
図5に示すように、本実施形態の薄切片標本作製装置50において、制御部5の画像分析器43は、方向データとして、第一のCCDカメラで撮像された画像から薄切片B1に含まれた生体試料S1の範囲を検出することが可能である。また、制御部5には、スライドガラスPに対して生体試料S1を最適な向きとした場合の画像が標準画像として記録されていて、標準画像における生体試料の範囲を基準とするように予め設定されている。このため、制御部5は、スライドガラス回転工程S4において、検出工程S3で検出された画像中における薄切片B1に含まれた生体試料Sの範囲と、標準画像の生体試料の範囲とで、パターンマッチング要素を比較して、略等しくなるように検出された画像を回転させる。そして、略等しくなった時の角度補正値分だけスライドガラスPを回転させる。
【0044】
このようにすることで、例えば第1の実施形態同様、図5に示すように、切削方向調整工程S2で包埋ブロックBを回転させても、スライドガラス回転工程S4で対応してスライドガラスPを回転させることができ、スライドガラスPに対して生体試料Sの相対的な向きを一定として薄切片標本を作製することができる。ここで、図9に示すように、包埋ブロックBを作製する作業者のミスなどにより、包埋ブロックBの向きに対して生体試料Sの向きを通常の向きと異なって包埋してしまう場合がある。しかしながら、本実施形態の場合、生体試料Sの向きを直接方向データとして検出することができるので、スライドガラス回転工程S4においてスライドガラスPに対して生体試料S1の相対的な向きを一定として薄切片B1を載置し薄切片標本を作製することができる。
【0045】
なお、本実施形態において、操作部15によってIDナンバーを入力可能な構成とし、制御部5にIDナンバーと対応させて、生体試料の種類、及び、生体試料の種類毎に上記標準画像が記録されていることが好適である。このようにすることで、IDナンバーを入力するのみで、制御部5が作製される薄切片標本の生体試料の種類を特定し、生体試料の種類毎に生体試料の向きを最適として、薄切片B1をスライドガラスPに載置して薄切片標本を作製することができる。
【0046】
また、第2の実施形態及び第3の実施形態においては、第一のCCDカメラ41を切削機構2と載置台3の間で、搬送ベルト25の上方に配置して、搬送途中の薄切片B1を撮影するものとしたが、これに限るものでは無い。例えば、切削機構2の載置面10に載置された包埋ブロックBの上方に第一のCCDカメラ41を配置して、切削方向調整工程S2後の包埋ブロックBの切断面B4を撮影するものとしても良い。搬送途中で薄切片B1の向きを変更しない限り、包埋ブロックBの向きと薄切片B1の向きは一定であるので、同様に、スライドガラス回転工程S4でスライドガラスPの向きを調整することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の第1の実施形態の薄切片標本作製装置の全体図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の薄切片作製のフロー図である。
【図3】この発明の第1の実施形態のスライドガラス回転工程の説明図である。
【図4】この発明の第1の実施形態のスライドガラス回転工程の説明図である。
【図5】この発明の第2の実施形態及び第3の実施形態の薄切片標本作製装置の全体図である。
【図6】この発明の第2の実施形態の薄切片標本作製装置で使用される包埋ブロックを示す上面図である。
【図7】この発明の第2の実施形態の薄切片標本作製装置で使用される包埋ブロックの一の変形例を示す上面図である。
【図8】この発明の第2の実施形態の薄切片標本作製装置で使用される包埋ブロックの他の変形例を示す上面図である。
【図9】この発明の第3の実施形態のスライドガラス回転工程の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1、40、50 薄切片標本作製装置
2 切削機構
4 搬送機構
5 制御部
10 載置面
11 包埋ブロック回転ステージ
13 カッター
15 操作部
20 スライドガラス回転ステージ
20a 載置面
41 第一のCCDカメラ(撮像手段)
B 包埋ブロック
B1 薄切片
B3 切削面
B5 オリフラ(マーク)
B6 ノッチ(マーク)
B7 指標物(マーク)
S、S1 生体試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋剤によって包埋された包埋ブロックから薄切片を切削し、該薄切片をスライドガラス上に載置して薄切片標本を作製する薄切片標本作製装置であって、
前記包埋ブロックを切削して、前記薄切片を作製する切削機構と、
前記スライドガラスを載置する載置面を有し、該載置面と略平行な面内で前記スライドガラスを回転させることが可能なスライドガラス回転ステージと、
前記切削機構で作製された前記薄切片を受け取って搬送するとともに、前記スライドガラス回転ステージの前記載置面に載置された前記スライドガラス上に前記薄切片を受け渡すことが可能な搬送機構と、
前記切削機構によって作製された前記薄切片に含まれた前記生体試料の向きを表わす方向データを検出し、該方向データに基づいて、前記搬送機構から受け渡される前記薄切片に含まれた前記生体試料と前記スライドガラスとの相対的な向きが予め設定された向きとなるように、前記スライドガラス回転ステージによって前記スライドガラスを回転させる制御部とを備えることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄切片標本作製装置において、
前記切削機構は、前記包埋ブロックを切削する面と略平行な面内で、該包埋ブロックを回転させることが可能な包埋ブロック回転ステージと、
該包埋ブロック回転ステージによって前記包埋ブロックを回転させる前記回転角度を入力可能な操作部とを備え、
前記制御部は、前記方向データとして前記操作部によって入力された前記回転角度を検出し、該回転角度に基づいて前記スライドガラスを回転させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薄切片標本作製装置において、
前記搬送機構によって搬送される前記薄切片を撮像して、該薄切片の画像を取得可能な撮像手段を備え、
前記制御部は、前記方向データとして、予め前記薄切片の向きと対応させて該薄切片に方向性を有して形成されて前記画像に映し出されたマークの向きを検出し、該マークの向きが予め設定された向きとなるように前記スライドガラスを回転させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項4】
請求項1に記載の薄切片標本作製装置において、
前記搬送機構によって搬送される前記薄切片を撮像して、該薄切片の画像を取得可能な撮像手段を備え、
前記制御部は、前記方向データとして、前記画像に映し出される前記薄切片に含まれた前記生体試料の範囲を検出し、検出された該生体試料の範囲と予め設定された範囲とでパターンマッチング要素を比較して略等しくなるように前記スライドガラスを回転させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項5】
生体試料が包埋剤によって包埋された包埋ブロックから薄切片を切削し、該薄切片をスライドガラス上に載置して薄切片標本を作製する薄切片標本の作製方法であって、
前記包埋ブロックを切削して、前記薄切片を作製する切削工程と、
該切削工程で作製された前記薄切片を受け取って搬送する搬送工程と、
前記薄切片に含まれた前記生体試料の向きを表わす方向データを検出する検出工程と、
該検出工程で検出された前記方向データに基づいて、前記薄切片に含まれた前記生体試料と前記スライドガラスとの相対的な向きが予め設定された向きとなるように前記スライドガラスを回転させるスライドガラス回転工程と、
該スライドガラス回転工程によって向きを調整した前記スライドガラス上に、前記搬送工程で受け取った前記薄切片を受け渡す受渡工程とを備えることを特徴とする薄切片標本の作製方法。
【請求項6】
請求項5に記載の薄切片標本の作製方法において、
前記切削工程前に前記包埋ブロックを切削する面と略平行な面内で、該包埋ブロックを回転させて向きを調整する切削方向調整工程を備え、
前記検出工程は、前記方向データとして、前記切削方向調整工程で回転させた前記包埋ブロックの回転角度を検出し、
前記スライドガラス回転工程は、該回転角度に基づいて前記スライドガラスを回転させることを特徴とする薄切片標本の作製方法。
【請求項7】
請求項5に記載の薄切片標本の作製方法において、
前記切削工程前に前記包埋ブロックの切削される面に、形成される薄切片の向きと対応させて方向性を有したマークを形成するマーク形成工程を備え、
前記検出工程は、前記薄切片を撮影して画像を取得し、前記方向データとして、該画像に映し出された前記マークの向きを検出し、
前記スライドガラス回転工程は、前記スライドガラスに対する前記マークの相対的な向きが予め設定された向きとなるように前記スライドガラスを回転させることを特徴とする薄切片標本の作製方法。
【請求項8】
請求項5に記載の薄切片標本の作製方法において、
前記検出工程は、前記薄切片を撮影して画像を取得し、前記方向データとして、該画像に映し出された前記薄切片に含まれる前記生体試料の範囲を検出し、
前記スライドガラス回転工程は、前記生体試料の範囲と予め設定された範囲とでパターンマッチング要素を比較して略等しくなるように前記スライドガラスを回転させることを特徴とする薄切片標本の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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