説明

薄型フラットツイストぺアすきまケーブル及びすきまナビゲータユニット

【課題】従来、高速伝送に使用していた丸形のツイストペアケーブルをサッシの隙間に通す為に、対撚線(ツイストペア)を細径化し並列に並べて、2枚のテープで融着固定して、フラット化した薄型フラットツイストぺアすきまケーブル及びすきまナビゲータユニットである。
【解決手段】細径導体上にPE等の絶縁被覆を施した心線2条を均一に撚り合わせた対撚線とし、この対撚線を所要数、並列に並べる。2枚のプラスチックテープの2枚のプラスチックテープの内側を熱可塑性接着剤でコーティングし、かつその2枚のプラスチックテープでサンドイッチにして前記ケーブルを挟み込み、並列に並べた対撚線がテープの幅の中央部に来るように熱融着し、フラット化したすきまケーブルである。このフラットケーブルの片側にサッシの隙間に沿わせて貼り付けるために、粘着テープを施した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅の窓用サツシ等の隙間部分に貼り付けて通線する高速伝送可能な薄型フラットツイストペアケーブル及びすきまナビゲータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のLANケーブルに代表される高速伝送用ツイストペアケーブルは、0.5mmΦの導体上にPE絶縁体を施した絶縁心線2条を撚り合わせて対撚線を構成し、この対撚り線4条を更に撚り合わせ、その上から外被を施した丸形ケーブルで、その外径は5〜6mmと太いため、住宅内に引き込む時は、壁に穴を空ける等の方法で通線していた。
【0003】
【特許文献1】特開平9−50715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、高速伝送用ツイストペアケーブルをサッシの隙間に無理なく通線するために、厚さを2mm以下とし、かつ、隙間通線部の長さはせいぜい20〜30cmと短いことから減衰性能を除き、その他の性能を満たす細径ツイストペア構造とし、2枚の耐紫外線性能を有するプラスチックテープの片面に熱可塑性接着剤をコーティングしたものをコーティング面を対向させ、その中央部に細径対撚線を所要数挿入し、この2枚のプラスチックテープを融着させることでツイストペアを確実に固定し薄型で高性能なフラットケーブルが提供できる。更に、窓の開閉による衝撃圧力から、このツイストペアを保護するためにフラットケーブルの両端に貼り付ける粘着テープの厚さを対撚線外径より厚くしたり、または、ツイストペアの外径より太い心線や介在の挿入を行った構造のすきまケーブルを提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本発明の薄型フラットツイストペアケーブルを使用すれば、短い距離という制限がつくものの、高速伝送性能を有して、かつサッシの凹凸に沿って確実に貼り付けることが容易にでき、窓の開閉にも耐えられ、屋外にも使え壁に穴を空ける等の面倒な工事が不要で引き込みが出来るという効果がある。という優れた利点があるので、その工業的価値は大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の薄型フラットツイストぺアすきまケーブル1及びすきまナビゲータユニット9の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0007】
始めに、本発明の第1実施例の薄型フラットツイストぺアすきまケーブル1Aとしては、図1(イ)に示すように、薄型と高速伝送性能を両立させるために、導体径が0.4mm以下の導体2上に、PEやPP等の絶縁体3を外径が0.8mm以下となるように被覆して絶縁心線を構成し、この絶縁心線2条を均一に撚り合わせて対撚線4を構成する。この時、絶縁心線の構造は、特性インピーダンスが100Ωとなるように、また、クロストーク性能に適合させるために、対撚りのピッチは対毎に異ならせてかつ細かく設定する。このような対撚線4を所要数(通常2〜4条)並列に並べる。この並べた対撚線4を内側に熱可塑性接着剤でコーティングし、かつその2枚のプラスチックテープでサンドイッチにして前記ケーブルを挟み込み、並列に並べた対撚線がテープの幅の中央部に来るように熱融着し、フラット化したすきまケーブルの総厚が、2mm以下である薄型フラットツイストペアすきまケーブル1Aである。
【実施例2】
【0008】
次に、本発明の第2実施例の薄型フラットツイストぺアすきまケーブル1Bとしては、図1(イ)に示すように、実施例1の薄型フラットツイストペアすきまケーブルにおいて、融着する2枚のプラスチックテープの1枚の厚さは、50μm以下、もう1枚の厚さは、100〜200μmと異なるテープ厚とした薄型フラットツイストペアすきまケーブル1Bである。このような構造にすることにより、厚い方をベースとして薄いテープが挟み込んだ対撚線を確実に中央部に固定内蔵することが出来て、高速伝送性能を維持させることが可能となる。またこのような構成とすることでフラットケーブルの総厚で2mm以下となり、サッシの隙間に貼り付ける際に、その凹凸の形状に沿って容易に貼り付けることが出来、かつ窓や戸の開閉の衝撃に耐えられる厚さと強度を有する。
【実施例3】
【0009】
本発明の第3実施例の薄型フラットツイストぺアすきまケーブル1Cとしては、図には示さないが、実施例1、2のプラスチックテープ5に紫外線遮断用微粉末を添加して内蔵する対撚線4を紫外線から保護した薄型フラットツイストペアすきまケーブルである。ここで、薄型フラットすきまケーブルは、サッシに貼り付けられるため、一部は屋外に出るケースが多く、これに用いるプラスチックテープは、無色透明でなくチタンホワイトのような紫外線を遮断する効果のある微粉末を添加したもので耐候性を保有し、ケーブルの両端をテープ間で融着してあるため、防水性能も保有している。
【実施例4】
【0010】
本発明の第4実施例の薄型フラットツイストぺアすきまケーブル1C、1Dとしては、図1(イ)、(ロ)、(ハ)に示すように、高速信号を伝送する対撚線を窓や戸を開閉する圧力から保護する為に、フラットすきまケーブルの両側に貼り付ける粘着テープ6の厚さを対撚線を内蔵したケーブル中央の凸部と同等もしくはそれより厚くするか、または、対撚線の外径より太い絶縁心線8や介在7を対撚線と並列に並べて内蔵させた構造、或いはその組み合わせ構造からなる薄型フラットツイストペアすきまケーブルである。ここで、粘着テープの厚さは、フラットケーブルと同等でも構わないが、それより厚い方が好ましい。プラスチックテープとしては、代表的なポリエステルテープを使用したがこれに限るものではない。この様な構造にすることにより、窓や戸の開閉の衝撃に対する強度を向上させるために、対撚線の外径より太い絶縁心線や介在を挿入することや、フラットケーブルの両端部分に対撚線の外径より厚い粘着テープを貼ることにより、これらがダンパーとなって、より強度アップが図れる。
【実施例5】
【0011】
本発明の第5実施例の薄型フラットツイストぺアすきまケーブルとしては、図には示さないが、実施例1から4のそれぞれの薄型フラットツイストペアすきまケーブルを使用することにより、LAN用ケーブルの電気的性能規格に準拠した薄型フラットツイストペアすきまケーブルである。これについては、具体的実施例として、第1、2実施例を例に挙げ、近端漏話減衰量についての評価試験を表2に示し、近端漏話減衰量以外の電気的性能試験を表6に示す。このことから、本発明は、電気的性能規格に準拠して適合していることがわかる。
【実施例6】
【0012】
本発明の第6実施例のすきまナビゲータユニット9Aとしては、図1(ハ)に、両端がLAN用のモジュラローゼット10の場合を示しているが、これに限らず、両端がモジュラプラグ11の場合やその2つの組み合わせでも構わない。
【実施例7】
【0013】
本発明の第7実施例のすきまナビゲータユニットとしては、実施例6のモジュラローゼットにパルストランスを内蔵させることにより、接続されている機器を保護するすきまナビゲータユニットである。ここで、モジュラローゼット内にトランスを設ける理由としては、イーサネット(登録商標)ケーブルの空ピンを使用した電源給電等を想定した場合に、すきまケーブルで被覆の破損やケーブル断線が発生し、イーサネット(登録商標)信号線に短絡すると、被接続機器のイーサネット(登録商標)入出力デバイス破損の可能性がある。これを保護するためにケーブル内にトランスを設ける。ケーブルにトランスを設けることにより、イーサネット(登録商標)信号ラインに直流が印可されてもデバイスには電圧が印可されることなく、かつ電流も流れないため、被接続機器のインターフェース回路に依存することなく保護することが可能となる。
【実施例8】
【0014】
本発明の第8実施例のすきまナビゲータユニットとしては、図1(ニ)に示すように、実施例6のモジュラローゼットに接続されているフラットツイストペアケーブルは、図1(ハ)に示す上方向以外に左右方向の引き出しを可能にするすきまナビゲータユニット9Bである。このような構造にすることにより、自由度が増し、窓用サッシ等の取り付け位置や規格サイズや規格外及びレイアウト変更や配線変更に対しても柔軟に対応することが可能になる。
【実施例9】
【0015】
本発明の第9実施例のすきまナビゲータユニット9Cとしては、図1(ホ)に示すように、実施例6から8の各々の薄型フラットツイストペアすきまケーブルにおいて、通常の丸形ケーブルに接続するために中継部14を更に設けたすきまナビゲータユニットである。ここで、中継部14の役目は、熱収縮チューブと基板等から構成され、LANケーブルとフラットケーブルを接続する役目を果たしている。
【0016】
次に、本発明の本発明の第4実施例の薄型フラットツイストぺアすきまケーブル1D(対撚線4の両サイドに対撚線4より太い絶縁心線8を配置し、かつその外側に設けたプラスチックテープ5の両サイドに更に、粘着テープ6を設けた構造)の具体的実施例を挙げて説明する。下記の表1にその構成表を示す。この実施例の場合、表1から明らかように、フラットケーブル部の厚さは、約1mmとなり、好ましい結果を示したが、許容範囲として約2mmなら問題はない。また、両端の粘着材を貼り付けた部分(2枚のテープ部分を含む)の厚さは、約1.5mmとなった。
【0017】

【表1】

【0018】
次に、本発明の第4実施例の薄型フラットツイストぺアすきまケーブル1Dを実際に窓用アルミサッシに貼り付け、布設試験(1)と挟み込み試験(2)と衝撃試験(3)を行い、まとめた結果の一覧表を下記の表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
本発明のケーブルを使用し、1番目の布設試験を行った近端漏話減衰量(NEXT)性能評価試験結果(1)を下記の表3に示す。
【0021】
【表3】

【0022】

本発明のケーブルを使用し、2番目の挟み込み試験を行った近端漏話減衰量(NEXT)性能評価試験結果(2)を下記の表4に示す。
【0023】
【表4】

本発明のケーブルを使用し、3番目の衝撃試験を行った近端漏話減衰量(NEXT)性能評価試験結果(3)を下記の表5に示す。
【0024】

【表5】

【0025】
以上の表3、4,5の評価試験結果から、いずれも、初期値と試験後において、いずれも変化なく、近端漏話減衰量の基準値に対して、性能レベルに適合していることがわかる。
【0026】

更に、近端漏話減衰量以外の電気的試験についても評価試験を行い、まとめて一覧表にした結果を下記の表6に示す。
【表6】

【0027】
このことから、本発明は、近端漏話減衰量を初めとする電気的性能規格に準拠して適合されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
これまで、本発明は、窓用サッシに取り付ける場合や中継部を代表的に取って説明してきたが、多少の変形例があっても構わず、幅広い用途に応用することが可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(イ)は、本発明の第1、第2実施例の薄型フラットツイストペアすきまケーブル1A、1Bの断面図である。(ロ)は、本発明の第4実施例の薄型フラットツイストペアすきまケーブル1C、1Dの断面図である。(ハ)は、本発明の第6実施例のすきまナビゲータユニット9Aの斜視図である。(ニ)は、本発明の第8実施例のすきまナビゲータユニット9Bの斜視図である。(ホ)は、本発明の第9実施例のすきまナビゲータユニット9Cの斜視図である。
【図2】従来のLANケーブル1′の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1A、1B、1C、1D
本発明の薄型フラットツイストペアすきまケーブル
2 導体
3 絶縁体
4 対撚線
5 プラスチックテープ
6 粘着テープ
7 介在
8 絶縁心線
9A、9B、9C
本発明のすきまナビゲータユニット
10 モジュラローゼット
11 モジュラプラグ
12 フラットツイストペアケーブル
13 丸形LANケーブル
14 中継部
1′ 従来のLANケーブル
2′ 導体
3′ 絶縁体
4′ 対撚線
7′ 介在
15′ 外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体外径が0.4mmΦ以下の細径導体上に、0.8mmΦ以下のPE等の絶縁被覆を施した心線2条を撚り合わせて対撚線を構成し、この対撚線を所要数並列に並べ、2枚のプラスチックテープの内側を熱可塑性接着剤でコーティングし、かつその2枚のプラスチックテープでサンドイッチにして前記ケーブルを挟み込み、並列に並べた対撚線がテープの幅の中央部に来るように熱融着し、フラット化したすきまケーブルの総厚が、2mm以下であることを特徴とする薄型フラットツイストペアすきまケーブル。
【請求項2】
請求項1の薄型フラットツイストペアすきまケーブルにおいて融着する2枚のプラスチックテープの1枚の厚さは、50μm以下、もう1枚の厚さは、100〜200μmと異なるテープ厚としたことを特徴とする薄型フラットツイストペアすきまケーブル。
【請求項3】
請求項1、請求項2のプラスチックテープに紫外線遮断用微粉末を添加して内蔵する対撚線を紫外線から保護したことを特徴とする薄型フラットツイストペアすきまケーブル。
【請求項4】
請求項1、2、3の薄型フラットツイストペアすきまケーブルにおいて、高速信号を伝送する対撚線を窓や戸を開閉する圧力から保護する為に、フラットすきまケーブルの両側に貼り付ける粘着テープの厚さを対撚線を内蔵したケーブル中央の凸部と同等もしくはそれより厚くするか、または、対撚線の外径より太い心線や介在を対撚線と並列に並べて内蔵させた構造、或いはその組み合わせ構造からなることを特徴とする薄型フラットツイストペアすきまケーブル。
【請求項5】
請求項1から4のそれぞれの薄型フラットツイストペアすきまケーブルを使用することにより、LAN用ケーブルの電気的性能規格に準拠したことを特徴とする薄型フラットツイストペアすきまケーブル。
【請求項6】
請求項1から5のそれぞれの薄型フラットツイストペアすきまケーブルを使用してモジュラローゼットまたはモジュラプラグを両端に取り付け、或いはそれを組み合わせて取り付けたことを特徴とするすきまナビゲータユニット。
【請求項7】
請求項6のモジュラローゼットにパルストランスを内蔵させることにより、接続されている機器を保護することを特徴とするすきまナビゲータユニット。
【請求項8】
請求項6のモジュラローゼットに接続されているフラットツイストペアケーブルは、上方向以外に左右方向の引き出しを可能にすることを特徴とするすきまナビゲータユニット。
【請求項9】
請求項6から8の各々の薄型フラットツイストペアすきまケーブルにおいて、通常の丸形ケーブルに接続するために中継部を更に設けたことを特徴とするすきまナビゲータユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−19055(P2006−19055A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193075(P2004−193075)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【出願人】(390002598)沖電線株式会社 (45)
【Fターム(参考)】