説明

薄板金属の孔明け用のパンチ及びこのパンチを具備した薄板金属の孔明け装置

本発明の薄板金属(8)の孔明け用のパンチ(13)は、パンチ本体(25)と、このパンチ本体の一方の端面に当該端面の外縁が内接する仮想円の中心と同心であって当該仮想円の直径よりも小さな直径を有する仮想円に内接する外縁を有する底面をもって一体的に設けられた錐状の突起(28)とを具備しており、端面の外縁が内接する仮想円の中心を通る軸心と交差すると共に端面の外縁が内接する仮想円と突起の先端面とに接する接線と端面とのなす角θは25°以上であって60°以下であり、端面の外縁が内接する仮想円の半径D1/2と底面の外縁が内接する仮想円の半径d1/2との差eと端面の外縁が内接する仮想円の円周の長さLとの比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板金属の孔明け用のパンチ及びこのパンチを具備した薄板金属の孔明け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイスの孔径よりも小さい外径を有した円柱本体とこの円柱本体の一端面に円錐形の突起とを有したパンチを薄板金属に押し付け、パンチの突起により薄板金属に突き破り孔をあけ、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチをダイスの孔に挿入することによりパンチの円柱本体の一端面の周りで薄板金属を破断させダイスの孔と略同径の貫通孔を薄板金属に形成するようにした孔明け装置が提案されている。
【特許文献1】:特開2002−153920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
斯かる孔明け装置によれば、突起でもって薄板金属を位置決めし、しかも、剪断力よりも主として引っ張り力を薄板金属に加えて貫通孔を形成するために、バリを生じさせることなく正確に貫通孔を薄板金属に形成できるのであるが、薄板金属の厚み、薄板金属に形成しようとする貫通孔の径等との関連で、場合により、突起によって薄板金属に突き破り孔を所望に形成できないことがある上に、薄板金属に対する引っ張り力による破断よりも剪断力による切断が主となる結果、正確に貫通孔を薄板金属に形成できない上に、貫通孔の形成後の薄板金属にバリを生じさせる虞がある。
【0004】
本発明者等は、前記諸点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の形状の突起等により正確に貫通孔を薄板金属に形成でき、貫通孔の形成後の薄板金属にバリを生じさせないことを見出し本発明を完成するに至ったのであり、そこで、本発明の目的は、貫通孔を形成しようとする薄板金属の厚みが異なっても、また、薄板金属に形成しようとする貫通孔の大きさ、例えば径及び形状が異なっても、これら異なる厚みの薄板金属及び異なる大きさ及び形状の貫通孔に対して最適に孔明けを行うことができ、而して、バリのない上に正確な位置に貫通孔を形成することができるパンチ及びこのパンチを具備した孔明け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様の薄板金属の孔明け用のパンチは、パンチ本体と、このパンチ本体の一方の端面に当該端面の外縁が内接する仮想円の中心と同心であって当該仮想円の直径よりも小さな直径を有する仮想円に内接する外縁を有する底面をもって一体的に設けられた錐状の突起とを具備しており、端面の外縁が内接する仮想円の中心を通る軸心と交差すると共に端面の外縁が内接する仮想円と突起の先端面とに接する接線と端面とのなす角度θは25°以上であって60°以下であり、端面の外縁が内接する仮想円の半径D1/2と底面の外縁が内接する仮想円の半径d1/2との差eと端面の外縁が内接する仮想円の円周の長さLとの比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値である。
【0006】
本発明に係る薄板金属の孔明け用のパンチは、突起によりまず薄板金属に突き破り孔を形成し、この突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制し、その後、パンチ本体の端面の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するのであるが、本発明は、斯かるパンチにおいては、突起が低すぎると突き破り孔から突起が抜け出して薄板金属の移動を規制することができなくなり、突起があまり高すぎると突起の曲がり、折損等を生じて頻繁な交換を要することになり、また、突起の底面が内接する仮想円の径がパンチ本体の端面が内接する仮想円の径に近づくと、突き破り孔の影響により薄板金属を良好に破断することができず、突起の底面が内接する仮想円の径がパンチ本体の端面が内接する仮想円の径よりも十分に小さいと、突起の曲がり、折損等を生じて頻繁な交換を要することになるという知見に基づくものである。
【0007】
上記知見に基づいて本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、貫通孔を形成しようとする薄板金属の厚みが異なっても、また、薄板金属に形成しようとする貫通孔の大きさ、例えば径及び形状が異なっても、角度θが25°以上であると、突起の突き破り孔からの抜け出しを効果的に防止でき、比e/Lが0.05以上であると、突き破り孔の影響をなくし得て薄板金属を良好に破断することができ、しかも、角度θが60°以下であって、比e/Lが0.05以下であると、突起の曲がり、折損等を良好に回避できることが判明したのであって、したがって、本発明の第一の態様の薄板金属の孔明け用のパンチによれば、厚みの異なる薄板金属及び異なる大きさ及び形状の異なる貫通孔に対して最適に孔明けを行うことができ、而して、バリのない上に正確な位置に貫通孔を形成することができる。
【0008】
本発明において、突起の先端は、尖っていても又は多少丸みが付けられていてもよい。
【0009】
好ましくは本発明の第二の態様のパンチのように、角度θは30°以上であって55°以下であり、比e/Lは0.09以上であって0.12以下である。
【0010】
端面の外縁は、面取りされていなくてもよいのであるが、バリの原因となる剪断の効果を減じて薄板金属をより良好に引っ張り破断させるために、好ましくは本発明の第三の態様のパンチのように、0.3mmから3mmの曲率半径Rをもって面取りされている。
【0011】
端面の外縁が内接する仮想円の直径D1は、好ましくは本発明の第四の態様のパンチのように100mm以下であるが、より好ましくは本発明の第五の態様のパンチのように35mm以下であり、更により好ましくは本発明の第六の態様のパンチのように30mm以下である。
【0012】
パンチは、好ましくは本発明の第七の態様のそれのように、突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にダイスの孔に挿入することによりパンチ本体の端面の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっていると共に薄板金属の孔明け装置に用いるものである。
【0013】
ダイスの孔は、パンチ本体が円柱状であってその端面の外縁が円形状である場合には、通常、本発明の第八の態様のそれのように円孔であるが、パンチ本体が円柱状以外であってその端面の外縁もまた円形状以外である場合には、パンチ本体及びその端面の外縁の形状に対応した形状を有しているのが好ましい。
【0014】
本発明の第九の態様のパンチのように、パンチ本体は円柱状であって、パンチ本体の端面の外縁は円形状であってもよく、本発明の第十の態様のパンチのように、パンチ本体は三角柱状を含む多角柱状であり、パンチ本体の端面の外縁は三角形状を含む多角形状であってもよく、本発明の第十一の態様のパンチのように、パンチ本体は楕円柱状であり、パンチ本体の端面の外縁は楕円形状であってもよい。このようにパンチ本体及びその端面の外縁は、形成する貫通孔との関連で種々の形状を有していてもよく、また、円柱状、多角柱状及び楕円柱状並びに円形状、多角形状及び楕円形状に限らないのであって、形成する貫通孔との関連でその他の形状であってもよい。
【0015】
本発明の第十二の態様のパンチのように、突起は円錐状であって、突起の底面の外縁は円形状であっても、本発明の第十三の態様のパンチのように、突起は楕円錐状であって、突起の底面の外縁は楕円形状であっても、更には本発明の第十四の態様のパンチのように、突起は三角錐状を含む多角錐状であって、突起の底面の外縁は三角形状を含む多角形状であってもよく、斯かる突起及びその底面の外縁もまた、貫通孔を形成する薄板金属の厚み及び形成する貫通孔との関連で種々の形状を有していてもよく、また、円錐状、楕円錐状及び多角錐状並びに円形状、楕円形状及び多角形状に限らないのであって、貫通孔を形成する薄板金属の厚み及び形成する貫通孔との関連でその他の形状であってもよい。
【0016】
本発明の第一の態様の薄板金属の孔明け装置は、上記のいずれかの態様のパンチと、このパンチが挿入される孔を有したダイスとを具備しており、ここで、端面の外縁が内接する仮想円の直径D1に対するダイスの孔の外縁が内接する仮想円の直径D2の比D1/D2は0.80以上であって、孔明けすべき薄板金属の厚みをtとすると、端面の外縁が内接する仮想円の半径D1/2とダイスの孔の外縁が内接する仮想円の半径D2/2との差fは0.15t以上である。
【0017】
本発明の孔明け装置は、パンチとダイスとにより薄板金属に多少の剪断に加えて主に引っ張り破断を生じさせて薄板金属に貫通孔を形成するのであるが、比D1/D2が小さすぎると剪断が殆どなされなくなり、差fが小さすぎると剪断が主となって引っ張り破断が殆どなされなくなり、第一の態様の孔明け装置のように、比D1/D2が0.80以上であって、差fが0.15t以上であると、多少の剪断に加えて主に引っ張り破断を生じさせて効果的に薄板金属に貫通孔を形成することができる。
【0018】
本発明の第二の態様の孔明け装置のように、比D1/D2が0.85以上であると、より効果的に薄板金属に貫通孔を形成することができる。
【0019】
ダイスの孔に対するパンチのクリアランスとしての差fは0.15t以上であればよいのであるが、好ましくは本発明の第三の態様の孔明け装置のように、2mm以下であるとよい。
【0020】
孔明け装置は、本発明の第四の態様の孔明け装置のように、突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチをダイスの孔に挿入することによりパンチ本体の端面の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっている。
【0021】
上記のいずれかの孔明け装置において、ダイスは、本発明の第五の態様の孔明け装置のように、その孔に連接していると共に当該孔の外縁が内接する仮想円の直径D2よりも小さい一方、端面の外縁が内接する仮想円の直径D1よりも大きい直径D3の仮想円に内接する外縁を有する小孔を更に有していてもよく、斯かる小孔を具備していると、貫通孔の形成後に生じるパンチ屑(スクラップ)を小孔で保持することができるために、例えば孔及び小孔を斜め又は水平に配置しても、換言すれば、パンチを斜め又は水平に移動させて貫通孔の形成を斜め又は水平から行うようにしても、パンチ屑が小孔で倒れて小孔から排出できないような不都合をなくし得て、次々に供給される薄板金属に貫通孔を連続的に形成できる。
【0022】
孔及び小孔のうちの少なくとも一方は、本発明の第六の態様の孔明け装置のように、パンチ本体の形状に対応して、円形、三角形を含む多角形又は楕円形であるとよい。
【0023】
本発明の孔明け装置によって孔明けされる薄板金属は、良好な結果を得るには、その板厚が0.4mmから2.0mm程度のものであるが、より良好な結果を得るには、その板厚が0.6mmから1.6mm程度のものである。
【0024】
本発明の第一の態様のパンチユニットは、ケースと、ケースに上下方向に摺動自在に装着されたスライダと、スライダ内に上下方向に摺動自在に装着されていると共に上記第一から第十四のいずれかの態様のパンチと、スライダ内に配されていると共にパンチ及びスライダを上方向に弾性的に付勢してパンチ及びスライダを初期位置に復帰させる復帰手段とを具備している。
【0025】
第一の態様のパンチユニットでは、好ましくは本発明の第二の態様のパンチユニットのように、パンチの上下方向の移動を案内するようにケースに設けられた滑り案内部材を更に具備している。
【0026】
スライダは、本発明の第三の態様のパンチユニットのように、凹所を具備しており、復帰手段の弾性力によってケースから抜け出さないように、ケースに固着された抜け止めピンに凹所において係合するようになっているとよく、復帰手段は、好ましくは本発明の第四の態様のパンチユニットのように、コイルばねを具備しているが、本発明ではこれに限定されず、その他の弾性部材であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、貫通孔を形成しようとする薄板金属の厚みが異なっても、また、薄板金属に形成しようとする貫通孔の大きさ及び形状が異なっても、これら異なる厚みの薄板金属並びに異なる大きさ及び形状の貫通孔に対して最適に孔明けを行うことができ、而して、バリのない上に正確な位置に貫通孔を形成することができるパンチ及びこのパンチを具備した孔明け装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0029】
図1から図4において、本例の薄板金属の孔明け装置1は、油圧ラム等により昇降される上型ホルダ2と、上型ホルダ2に固着された押圧板3と、上型ホルダ2に弾性部材4を介して吊り下げられている押圧パッド5と、押圧パッド5にボルト6等を介して固着されたパンチユニットとして構成されたパンチホルダ7と、孔明け加工が施される薄板金属8が載置される下型9と、下型9に埋設されたダイス10とを具備している。
【0030】
パンチホルダ7は、押圧パッド5にボルト6等を介して固着された円筒状のケース11と、ケース11に上下方向に摺動自在に装着された円筒状のスライダ12と、スライダ12内に上下方向に摺動自在に装着されたパンチ13と、スライダ12内に配されていると共にパンチ13及びパンチ13を介してスライダ12を上方向に弾性的に付勢してパンチ13及びスライダ12を初期位置に復帰させるコイルばね14を具備した復帰手段と、パンチ13の上下方向の移動を案内するようにケース11に設けられた滑り案内部材15とを具備している。
【0031】
スライダ12は、凹所22を具備しており、コイルばね14の弾性力によってケース11から抜け出さないように、ケース11に固着された抜け止めピン21に凹所22において係合するようになっており、上型ホルダ2の下降において押圧板3により下方に押圧されるようになっている。
【0032】
薄板金属8の孔明け用のパンチ13は、円柱状のパンチ本体25と、パンチ本体25の一方の円形状の端面26に当該端面26の円形状の外縁35が接する仮想円(斯かる仮想円は、円形状の端面26の場合には当該端面26の円形状の外縁35に一致する)の中心と同心であって当該仮想円の直径D1よりも小さな直径d1を有する仮想円に内接する円形状の外縁31を有する円形の底面27(直径d1を有する仮想円は円形状の底面27の場合には当該底面27の円形状の外縁31に一致する)をもって一体的に設けられた錐状、本例では円錐状の突起28と、パンチ本体25の他方の円形の端面29に一体的に設けられた鍔部30とを具備している。
【0033】
パンチ13において、端面26の外縁35が内接する仮想円の中心、即ち端面26の円形状の外縁35の中心を通るパンチ本体25の軸心Oと交差すると共に端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち端面26の外縁35と突起28の先端面36とに接する接線37と端面26とのなす角度θは25°以上であって60°以下であり、端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち円形状の外縁35自体の半径D1/2と突起28の底面27の円形状の外縁31が内接する仮想円、即ち円形状の外縁31自体の半径d1/2との差eと端面26の外縁35が内接する仮想円の長さ、即ち外縁35自体の長さL(=πD1)との比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値であり、端面26の外縁35は0.3mm以上であって3mm以下の曲率半径Rをもって面取りされている。
【0034】
角度θは30°以上であって55°以下であってもよく、比e/Lは0.09以上であって0.12以下であってもよい。
【0035】
コイルばね14は、一端では鍔部30に他端では滑り案内部材15のフランジ部41に当接しており、滑り案内部材15は、フランジ部41に加えてフランジ部41と一体であると共にケース11の孔42において当該ケース11に嵌装されている円筒部43を有しており、円筒部43の内周面においてパンチ13のパンチ本体25の下端部を摺動自在に案内支持している。
【0036】
ダイス10は、パンチ13が挿入される孔である円孔51と、円孔51と連続していると共に円孔51よりも大径であってパンチ屑57を排出する円孔52とを有しており、端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち円形状の外縁35の直径D1に対する円孔51の円形状の外縁53が内接する仮想円(本例ではこの仮想円と円孔51の円形状の外縁53とが一致する)の直径D2の比D1/D2は0.80以上であって、孔明けすべき薄板金属8の厚みをtとすると、端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち円形状の外縁35自体の半径D1/2とダイス10の円孔51の円形状の外縁53が内接する仮想円、即ち円孔51の円形状の外縁53自体の半径D2/2との差(クリアランス)fは0.15t以上であって2mm以下である。
【0037】
比D1/D2は0.85以上であってもよく、直径D1は100mm以下、35mm以下又は30mm以下であってもよい。
【0038】
以上の孔明け装置1では、上型ホルダ2の下降と共に押圧板3、押圧パッド5及びパンチホルダ7が下降されると、下型9に載置された薄板金属8が押圧パッド5により押圧されて下型9と押圧パッド5との間に挟まれて固定されると共にスライダ12が押圧板3に押され、スライダ12の押下と共にパンチ13が下降され、パンチ13の下降で、図5に示すように突起28により薄板金属8に突き破り孔55が明けられ、突き破り孔55に挿入された突起28で薄板金属8の移動が規制された状態で更にパンチ13が下降されてダイス10の円孔51にパンチ13のパンチ本体25が挿入されると、図6に示すようにパンチ本体25の端面26の周りで薄板金属8が破断されて薄板金属8に貫通孔56が形成される。
【0039】
ところで、パンチ13では、角度θが25°以上であるために、薄板金属8に形成しようとする貫通孔56の径が異なっても突起28の突き破り孔55からの抜け出しを効果的に防止でき、また比e/Lが0.05以上であるために、突き破り孔55の影響をなくして得て薄板金属8を良好に引っ張り破断することができ、しかも、角度θが60°以下であって、比e/Lが0.05以下であるために、突起28の曲がり、折損等を良好に回避でき、而して、厚みtの異なる薄板金属8及び異なる径の貫通孔56に対して最適に孔明けを行うことができ、而して、バリのない上に正確な位置に貫通孔56を形成することができる。
【0040】
しかも、端面26の外縁35が0.3mmから3mmの曲率半径Rをもって面取りされているために、バリの原因となる剪断の効果を減じて薄板金属8をより良好に引っ張り破断させることができる上に、比D1/D2が0.80以上であって、差fが0.15t以上であるために、多少の剪断に加えて主に引っ張り破断を生じさせて効果的に薄板金属8に貫通孔56を形成することができる。
【0041】
孔明け装置1では、パンチ13を上下動させて貫通孔56を形成したが、パンチ13を斜めに移動させて薄板金属8の傾斜部に貫通孔56を形成するようにしてもよい。
【0042】
また孔明け装置1では、パンチ13が挿入される円孔51とパンチ屑57を排出する円孔52とを有してダイス10を構成したが、これに代えて、図7に示すように、円孔51及び円孔52に加えて、円孔51に連接していると共に円孔51の円形状の外縁53が内接する仮想円、即ち円孔51の円形状の外縁53自体の直径D2よりも小さい一方、端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち円形状の外縁35自体の直径D1よりも大きい直径D3の仮想円に内接する円形状の外縁60を有する小孔、本例では小円孔61(斯かる小円孔61の場合には直径D3の仮想円と小円孔61の円形状の外縁60とが一致する)を更に具備してダイス10を構成してもよく、円孔51と円孔52との間に配された斯かる小円孔61までパンチ13を挿入し小円孔61を介してパンチ屑57を排出するようにすると、貫通孔56の形成後に生じるパンチ屑57を小円孔61で保持することができるために、例えば円孔51、円孔52及び小円孔61を斜め又は水平に配置しても、換言すれば、パンチ13を斜め又は水平に移動させて貫通孔56の形成を斜め又は水平から行うようにしても、パンチ屑57が小円孔61で倒れて小円孔61から排出できないような不都合をなくし得て、次々に供給される薄板金属8に貫通孔56を連続的に形成できる。
【0043】
以上の孔明け装置1において、パンチ本体25が円柱状であって、ダイス10の孔もパンチ本体25の形状に対応した円孔51であるが、これに代えて、図8から図13に示すように、パンチ本体25が正四角柱状、四角柱状又は楕円柱状であって、パンチ本体25の端面26の外縁35が正四角形(正方形)状、四角形(長方形)状又は楕円形状であってもよく、この場合、ダイス10としては、その孔がパンチ本体25の形状に対応した正四角形(正方形)、四角形(長方形)又は楕円形の孔51であるものが用いられる。
【0044】
図8及び図9に示すように、パンチ本体25が三角柱状を含む多角柱状の一つである正四角柱状であってパンチ本体25の端面26の外縁35が三角形状を含む多角形状の一つである正四角形状であるパンチ13と、三角形を含む多角形の一つである正四角形の孔51を有するダイス10との場合にも、端面26の外縁35が内接する仮想円71の中心を通るパンチ本体25の軸心Oと交差すると共に端面26の外縁35が内接する仮想円71と突起28の先端面36とに接する接線37と端面26とのなす角度θが25°以上であって60°以下であり、端面26の外縁35が内接する仮想円71の半径D1/2と突起28の底面27の円形状の外縁31が内接する仮想円、即ち円形状の外縁31自体の半径d1/2との差eと端面26の外縁35が内接する仮想円71の長さL(=πD1)との比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値であり、端面26の外縁35が0.3mm以上であって3mm以下の曲率半径Rをもって面取りされており、端面26の外縁35が内接する仮想円71の直径D1に対する正四角形の孔51の外縁53が内接する仮想円72の直径D2の比D1/D2が0.80以上であって、孔明けすべき薄板金属8の厚みをtとすると、端面26の外縁35が内接する仮想円71の半径D1/2とダイス10の正四角形の孔51の外縁53が内接する仮想円72の半径D2/2との差fが0.15t以上であって2mm以下であるようにする。
【0045】
また図10から図12に示すように、パンチ本体25が三角柱状を含む多角柱状の一つである四角柱状であってパンチ本体25の端面26の外縁35が三角形状を含む多角形状の一つである四角形状であるパンチ13と、三角形を含む多角形の一つである四角形(長方形)の孔51を有するダイス10との場合にも、端面26の外縁35が内接する仮想円71の中心を通るパンチ本体25の軸心Oと交差すると共に端面26の外縁35が内接する仮想円71と突起28の先端面36とに接する接線37と端面26とのなす角度θが25°以上であって60°以下であり、端面26の外縁35が内接する仮想円71の半径D1/2と突起28の底面27の円形状の外縁31が内接する仮想円、即ち円形状の外縁31自体の半径d1/2との差eと端面26の外縁35が内接する仮想円71の長さL(=πD1)との比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値であり、端面26の外縁35が0.3mm以上であって3mm以下の曲率半径Rをもって面取りされており、端面26の外縁35が内接する仮想円71の直径D1に対する四角形の孔51の外縁53が内接する仮想円72の直径D2の比D1/D2が0.80以上であって、孔明けすべき薄板金属8の厚みをtとすると、端面26の外縁35が内接する仮想円71の半径D1/2とダイス10の四角形の孔51の外縁53が内接する仮想円72の半径D2/2との差fが0.15t以上であって2mm以下であるようにする。
【0046】
更に図13に示すように、パンチ本体25が楕円柱状であってパンチ本体25の端面26の外縁35が楕円形状であるパンチ13と、楕円形の孔51を有するダイス10との場合にも、端面26の外縁35が内接する仮想円71の中心を通るパンチ本体25の軸心Oと交差すると共に端面26の外縁35が内接する仮想円71と突起28の先端面36とに接する接線37と端面26とのなす角度θが25°以上であって60°以下であり、端面26の外縁35が内接する仮想円71の半径D1/2と突起28の底面27の円形状の外縁31が内接する仮想円、即ち円形状の外縁31自体の半径d1/2との差eと端面26の外縁35が内接する仮想円71の長さL(=πD1)との比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値であり、端面26の外縁35が0.3mm以上であって3mm以下の曲率半径Rをもって面取りされており、端面26の外縁35が内接する仮想円71の直径D1に対する楕円形の孔51の外縁53が内接する仮想円72の直径D2の比D1/D2が0.80以上であって、孔明けすべき薄板金属8の厚みをtとすると、端面26の外縁35が内接する仮想円71の半径D1/2とダイス10の楕円形の孔51の外縁53が内接する仮想円72の半径D2/2との差fが0.15t以上であって2mm以下であるようにする。
【0047】
以上の孔明け装置1においては、円錐状の突起28を用いたが、これに代えて、例えば図14及び図15に示すように三角錐状を含む多角錐状の一つである六角錐状の突起28を用いてもよい。図14及び図15に示すように、例えばパンチ本体25が円柱状であってパンチ本体25の端面26の外縁35が円形状であって、しかも、突起28が六角錐状であって突起28の底面27の外縁31が六角形状であるパンチ13の場合も、端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち端面26の円形状の外縁35の中心を通るパンチ本体25の軸心Oと交差すると共に端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち端面26の円形状の外縁35と六角錐状の突起28の先端面36とに接する接線37と端面26とのなす角度θが25°以上であって60°以下であり、端面26の外縁35が内接する仮想円、即ち円形状の外縁35自体の半径D1/2と突起28の底面27の六角形状の外縁31が内接する仮想円73の半径d1/2との差eと端面26の外縁35が内接する仮想円の長さ、即ち外縁35自体の長さL(=πD1)との比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値であり、端面26の外縁35が0.3mm以上であって3mm以下の曲率半径Rをもって面取りされているようにする一方、厚みt及び差fを前述と同様にする。
【0048】
図8から図15に示すいずれの例でも、角度θは30°以上であって55°以下であり、比e/Lは0.09以上であって0.12以下であってもよく、比D1/D2は0.85以上であってもよく、直径D1は100mm以下、35mm以下又は30mm以下であってもよい。
【0049】
また図1に示す薄板金属の孔明け装置1におけるパンチホルダ7に代えて図16に示すようなパンチホルダ7を用いてもよい。図16に示すパンチホルダ7では、パンチ本体25の他方の円形の端面29に一体的に設けられた鍔部30は、スライダ12の円形の窪み75に挿着されて位置決めされており、滑り案内部材15が省かれてパンチ本体25の下端部は、滑り案内部材15に代えて、孔42を規定するケース11の円筒状の内周面76により摺動自在に案内支持されており、凹所22が省かれたスライダ12には抜け止めピン77が螺着されており、抜け止めピン77は、コイルばね14の弾性力によってスライダ12がケース11から抜け出さないように、ケース11に設けられた長孔78において当該ケース11に係合するようになっており、コイルばね14は、一端では鍔部30に係合したばね受79に他端ではケース11の円環状の端部80に夫々当接し、しかも、パンチ13と同心に且つパンチ13を取り囲んでケース11内に配されている。図16に示すパンチホルダ7は、ボルト6及び係合板81を介してケース11の環状鍔部82で押圧パッド5に固着されており、斯かるパンチユニットとして構成された図16のパンチホルダ7でも、図1に示すパンチホルダ7と同様に、上型ホルダ2の下降による押圧板3の下降で、スライダ12が押圧板3に押され、スライダ12の押下と共にパンチ13が下降され、パンチ13の下降で図5に示すように突起28により薄板金属8に突き破り孔55を明け、突き破り孔55に挿入された突起28で薄板金属8の移動が規制された状態で更にパンチ13が下降されてダイス10の円孔51にパンチ13のパンチ本体25が挿入されると、図6に示すようにパンチ本体25の端面26の周りで薄板金属8を破断して薄板金属8に貫通孔56を形成するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
[図1]本発明の実施の形態の好ましい一例の断面図である。
[図2]図1に示す例に用いたパンチの一部の側面説明図である。
[図3]図2に示すパンチの正面図である。
[図4]図1に示す例に用いたパンチとダイスとの説明図である。
[図5]図1に示す例の動作説明図である。
[図6]図1に示す例の動作説明図である。
[図7]本発明の実施の形態の好ましい他の例の一部の断面図である。
[図8]パンチの好ましい他の例の一部の側面説明図である。
[図9]図8に示すパンチとダイスとの関係を示す正面図である。
[図10]パンチの好ましい更に他の例の一部の一方の側面説明図である。
[図11]図10に示すパンチの他方の側面説明図である。
[図12]図10及び図11に示すパンチとダイスとの関係を示す正面図である。
[図13]パンチの好ましい更に他の例のダイスとの関係を示す正面図である。
[図14]パンチの好ましい更に他の例の側面説明図である。
[図15]図14に示すパンチとダイスとの関係を示す正面図である。
[図16]本発明の実施の形態の好ましい他の例の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 孔明け装置
2 上型ホルダ
3 押圧板
4 弾性部材
5 押圧パッド
6 ボルト
7 パンチホルダ
8 薄板金属
9 下型
10 ダイス
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ本体と、このパンチ本体の一方の端面に当該端面の外縁が内接する仮想円の中心と同心であって当該仮想円の直径よりも小さな直径を有する仮想円に内接する外縁を有する底面をもって一体的に設けられた錐状の突起とを具備しており、端面の外縁が内接する仮想円の中心を通る軸心と交差すると共に端面の外縁が内接する仮想円と突起の先端面とに接する接線と端面とのなす角度θは25°以上であって60°以下であり、端面の外縁が内接する仮想円の半径D1/2と底面の外縁が内接する仮想円の半径d1/2との差eと端面の外縁が内接する仮想円の円周の長さLとの比e/Lが0.05以上であって0.14以下の値である薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項2】
角度θは30°以上であって55°以下であり、比e/Lは0.09以上であって0.12以下である請求項1に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項3】
端面の外縁は0.3mm以上であって3mm以下の曲率半径Rをもって面取りされている請求項1又は2に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項4】
端面の外縁が内接する仮想円の直径D1は100mm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項5】
端面の外縁が内接する仮想円の直径D1は35mm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項6】
端面の外縁が内接する仮想円の直径D1は30mm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項7】
突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にダイスの孔に挿入することによりパンチ本体の端面の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっていると共に薄板金属の孔明け装置に用いる請求項1から6のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項8】
ダイスの孔は円孔である請求項7に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項9】
パンチ本体は円柱状であり、パンチ本体の端面の外縁は円形状である請求項1から8のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項10】
パンチ本体は三角柱状を含む多角柱状であり、パンチ本体の端面の外縁は三角形状を含む多角形状である請求項1から7のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項11】
パンチ本体は楕円柱状であり、パンチ本体の端面の外縁は楕円形状である請求項1から7のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項12】
突起は円錐状であって、突起の底面の外縁は円形状である請求項1から11のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項13】
突起は楕円錐状であって、突起の底面の外縁は楕円形状である請求項1から11のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項14】
突起は三角錐状を含む多角錐状であって、突起の底面の外縁は三角形状を含む多角形状である請求項1から11のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチと、このパンチが挿入される孔を有したダイスとを具備しており、端面の外縁が内接する仮想円の直径D1に対するダイスの孔の外縁が内接する仮想円の直径D2の比D1/D2は0.80以上であって、孔明けすべき薄板金属の厚みをtとすると、端面の外縁が内接する仮想円の半径D1/2とダイスの孔の外縁が内接する仮想円の半径D2/2との差fは0.15t以上である薄板金属の孔明け装置。
【請求項16】
比D1/D2は0.85以上である請求項15に記載の薄板金属の孔明け装置。
【請求項17】
差fは2mm以下である請求項15又は16に記載の薄板金属の孔明け装置。
【請求項18】
突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチをダイスの孔に挿入することによりパンチ本体の端面の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっている請求項15から17のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け装置。
【請求項19】
ダイスは、その孔に連接していると共に当該孔の外縁が内接する仮想円の直径D2よりも小さい一方、端面の外縁が内接する仮想円の直径D1よりも大きい直径D3の仮想円に内接する外縁を有する小孔を更に具備している請求項15から18のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け装置。
【請求項20】
孔及び小孔のうちの少なくとも一方は、円形、三角形を含む多角形又は楕円形である請求項15から19のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け装置。
【請求項21】
請求項15から20のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け装置に用いられるダイス。
【請求項22】
請求項15から20のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け装置により薄板金属に貫通孔を形成する方法であって、突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチをダイスの孔に挿入することによりパンチ本体の端面の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成する方法。
【請求項23】
ケースと、ケースに上下方向に摺動自在に装着されたスライダと、スライダ内に上下方向に摺動自在に装着されていると共に請求項1から14のいずれか一項に記載のパンチと、スライダ内に配されていると共にパンチ及びスライダを上方向に弾性的に付勢してパンチ及びスライダを初期位置に復帰させる復帰手段とを具備しているパンチユニット。
【請求項24】
パンチの上下方向の移動を案内するようにケースに設けられた滑り案内部材を更に具備している請求項23に記載のパンチユニット。
【請求項25】
スライダは、凹所を具備しており、復帰手段の弾性力によってケースから抜け出さないように、ケースに固着された抜け止めピンに凹所において係合するようになっている請求項23又は24に記載のパンチユニット。
【請求項26】
復帰手段はコイルばねを具備している請求項23から25のいずれか一項に記載のパンチユニット。
【請求項27】
請求項15から20のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け装置に用いられる請求項23から26のいずれか一項に記載のパンチユニット。

【国際公開番号】WO2004/096464
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505849(P2005−505849)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005668
【国際出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(500583726)有限会社ワンズ (9)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】