説明

薄膜の製造方法

【課題】基材上に金属化合物の薄膜をより低い温度で形成可能な製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から形成される合成樹脂製部材の基材上に金属化合物の薄膜を形成する方法は、薄膜形成用材料を含むゾルを用意することS10、ゾルを基材上に塗布することS20、ゾルが塗布された基材を配置した反応容器内にプラズマ源ガスを導入すること、ガスをプラズマ化することS30、プラズマの作用によりゾル由来の薄膜を基材上に形成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に金属化合物の薄膜を製造する方法に関し、特に、プラズマを利用して薄膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の基材と該基材上に目的とする金属化合物からなる薄膜(一層或いは多層)を有する電子材料は、種々の分野で用いられている。典型的には、太陽電池基板や液晶パネルを構成するTFT基板がその一例として挙げられる。
【0003】
ところで、上記分野で用いられている基材表面に薄膜を形成(製造)する方法としてCVD法、ゾルゲル法等が知られている。CVD法の典型的な態様では、ガラス基材をCVD反応容器内に入れて、目的とする薄膜の原料となる反応ガスを該容器内に流し、該ガスにプラズマを与えることにより反応生成物をガラス基材上に堆積させて薄膜を形成する。かかる方法では、反応ガスの反応性を高めてガラス基材上に反応生成物を堆積させるために基材を高温(例えば200℃以上)に加熱する必要がある。このため、耐熱性の低い材料を用いて構成された基材の表面に薄膜を形成するのは困難であった。
また、ゾルゲル法の典型的な態様では、目的とする薄膜を構成する金属のアルコキシド等を含むゾルを調製し、該ゾルをガラス基材表面に塗布してゲル状皮膜を形成する。次いで、該ゲル状皮膜に加熱処理を施すことにより目的とする薄膜を形成する。しかしながら、最終的な加熱処理が高温(例えば300℃程度)となるため、耐熱性の低い材料から成る基材を用いることが困難であった。
この点に関して、従来技術として、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、無機導電性粒子を含有する溶液を基体上に塗布して、活性エネルギー線を照射することによって透明電導膜を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−283445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術では、透明導電膜を形成する際に活性エネルギー線を照射しているため、形成された透明導電膜が逆スパッタされる等、形成した膜に不具合が生じる虞がある。さらに、活性エネルギー線自体の熱により成膜時の温度が上昇し、耐熱性の低い基材を用いた場合には該基材が熱変形する等損傷を受ける虞がある。
そこで、本発明は、上述した従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、より低い温度で基材上に薄膜を形成可能な製造方法を提供することである。特には、上記のような用途に適する電子材料を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく、本発明により、基材上に金属化合物の薄膜を形成する方法が提供される。即ち、ここで開示される製造方法の一つの態様は、上記薄膜形成用材料を含むゾルを用意すること、上記ゾルを上記基材上に塗布すること、上記ゾルが塗布された基材を配置した反応容器内にプラズマ源ガスを導入すること、上記ガスをプラズマ化すること、上記プラズマの作用により上記ゾル由来の薄膜を上記基材上に形成すること、を包含する。
【0007】
本発明によって提供される薄膜の製造方法では、金属化合物の薄膜形成用材料を含むゾルに対してプラズマを作用させることによって、該ゾル由来の薄膜を基材上に形成している。
このように、基材表面に塗布されたゾルに対して直接プラズマを作用させることによってゾル中において化学反応が進行し、比較的低温(典型的には100℃前後)で薄膜を基材上に形成することができる。
従って、本発明によると、従来のように高温加熱処理(典型的には200℃以上)することなく、より低い温度で基材上に薄膜を形成することが実現される。
【0008】
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、上記基材として、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から形成される合成樹脂製部材を使用する。
かかる構成によると、プラズマを基材上のゾルに作用させて薄膜を形成することは比較的低い温度で行われるため、耐熱性の低い合成樹脂製部材(プラスチック基板)の基材にダメージを与えることなく該基材上に薄膜を形成することができる。この結果、従来のガラス基材上に薄膜を形成する場合と比較して軽量化とコストの削減が実現され得る。
【0009】
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、上記薄膜を形成する際には、上記反応容器内を所定の圧力以下の真空状態に設定する。
かかる構成によると、ゾルにプラズマを作用させて薄膜を形成する際に真空度が高い(圧力が低い)場合には、余分な気体分子(残留ガス)の割合が小さいため該気体分子が不純物として薄膜に混入されず、より品質に優れた薄膜を形成することができる。
【0010】
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、上記反応容器には、所定の距離を隔てて対向する一対の電極が敷設されており、上記一対の電極間に所定の高周波電圧を印加することによって発生したグロー放電プラズマにより上記薄膜を形成する。
かかる構成によると、このようなグロー放電プラズマを基材上に塗布されたゾルに作用させることにより、金属化合物の薄膜をより効率良く形成することができる。
【0011】
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、上記基材に塗布されたゾルの表面と上記電極との距離は3cm〜5cmである。
かかる構成によると、このような距離からプラズマをゾルに作用させることにより、プラズマをより効率良く薄膜の形成に利用することができる。
【0012】
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、上記薄膜形成材料として、薄膜を形成するための金属アルコキシドおよび/または塩を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る薄膜製造装置の構造を示す模式図である。
【図2】一実施形態に係る薄膜の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】実施例に係る電子材料のSEM(電子顕微鏡)写真である。
【図4】実施例に係る電子材料の中に含まれる炭素(C)をエネルギー分散型X線分光法(EDX)により分析した結果を示す写真である。
【図5】実施例に係る電子材料の中に含まれるジルコニウム(Zr)をエネルギー分散型X線分光法(EDX)により分析した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識に基づいて実施することができる。
【0015】
本発明によって提供される薄膜の製造方法は、薄膜形成材料を含むゾルを基板に塗布して、該塗布物にプラズマを作用させて金属化合物の薄膜を形成することによって特徴付けられる。
ここで開示される方法は、遷移金属元素および典型金属元素から選択されるいずれかの金属の化合物(酸化物)膜、および/または、これらの金属元素から選択される二種以上の金属を構成金属元素とする複合化合物(酸化物)から実質的に構成される薄膜(金属酸化物膜)の製造に適用され得る。
例えば、ジルコニア(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO),インジウム酸化スズ(Indium Tin Oxide,ITO),酸化銅(CuO),酸化アルミニウム(Al),酸化タングステン(WO)、酸化チタン(TiO),酸化タンタル(TaO)、酸化ケイ素(SiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等から選択されるいずれかの酸化物、またはこれらから選択される二種以上の酸化物を含む金属酸化物膜の製造方法として好適に採用され得る。また、ここで開示される方法の適用対象は上述した具体的な金属酸化物から実質的に構成される金属酸化物膜の製造に限定されるものではなく、従来の一般的なゾルゲル法により(金属酸化物の前駆体を含むゲルを高温で熱分解させることにより)製造可能な各種金属酸化物膜(薄膜)の製造に該方法を適用し得る。
【0016】
次に、上記薄膜が形成される基材について説明する。ここで開示される薄膜の製造方法に用いられる基材としては、例えば、ガラス(例えばソーダライムガラス、石英ガラス)、セラミックス、金属、合成樹脂等から選択される一種または二種以上の材料からなる基材が挙げられる。好ましくは、合成樹脂材料から形成される基材である。合成樹脂材料は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロプレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))樹脂、各種合成ゴム等が挙げられる。本発明によると、高温(例えば200℃以上)での熱処理をすることなく、ゾルから(直接)薄膜を形成することが可能であるため、耐熱性が比較的低い(即ち融点の低い)合成樹脂材料製(プラスチック製)の基材を使用する場合には特に該発明の効果が発揮され得る。なお、使用する基材の形状は特に限定されず、平板、フィルム、シート等であってもよい。
【0017】
次に、本実施形態に係る金属化合物の薄膜を形成するのに適した薄膜製造装置について説明する。図1は、本実施形態に係る薄膜製造装置10の構造を示す模式図である。
薄膜製造装置10は、大まかにいって、チャンバ20と、チャンバ20内に所定の距離を隔てて対向する一対の平行平板電極(電極板)30,40と、チャンバ20内にプラズマ源ガスを供給可能に構成されたガス供給部50とを備えている。ガス供給部50には、市販のガスボンベ、コンプレッサ、ブロア、窒素ガス供給装置などが設けられている。
チャンバ20にはガス供給口60及びガス排出口65が形成されており、ガス供給口65はガス供給部50と連結している。ガス供給部50にはプラズマ源ガス(例えば窒素ガス)を貯留しておくことができ、ガス供給部50からプラズマ源ガスをチャンバ20内に供給することにより、チャンバ20内をプラズマ源ガス雰囲気(例えば窒素ガス雰囲気)に保つことができる。また、図示しない排気ポンプ(例えばロータリーポンプ)によって、ガス排出口65からチャンバ20内のガス(気体)をチャンバ20外へと排出することによってチャンバ20内の圧力を調整することができる。これにより、チャンバ20内を所定の真空状態(減圧環境下)とすることができる。
電極30と電極40との間に所定の電圧を印加するために、電極30は電圧印加手段である高周波電源70と接続しており、他方の電極40はアースに接続している。さらに、電極40は被照射物(ゾルが塗布された基材)を載置可能な形状に形成されている。高周波電源70を用いて、電極30,40間に高周波電圧を印加することによりチャンバ20内(例えば被照射物の表面近傍)に供給されたプラズマ源ガスをプラズマ(グロー放電プラズマ)化することができる。
【0018】
なお、電極40に載置された基材80のゾル90表面と電極30との距離は凡そ5cm以下(典型的には、凡そ1cm〜5cm、好ましくは凡そ3cm〜5cm、例えば凡そ3cm〜4cm)となるように電極30,40を敷設(配置)することが好ましい。ゾル90の表面と電極30との距離が上記5cmよりも遠すぎる(即ちゾル90の表面と電極30との間隔が広すぎる)場合には、電極30と電極40との間に発生させたプラズマの基材80表面に塗布されたゾル90に対する反応性が低下して、薄膜が形成されない虞がある。一方、ゾル90の表面と電極30との距離が上記1cmよりも近すぎる(即ちゾル90の表面と電極30との間隔が狭すぎる)場合には、電極30と電極40との間に発生させたプラズマをゾル90に作用させて薄膜が形成された後、該形成された薄膜に対して逆スパッタリングが発生して、薄膜に不具合が生じる虞がある。
【0019】
次に、図2を参照しつつ、本発明の金属化合物の薄膜の形成方法(製造方法)について説明する。図2は、一実施形態に係る薄膜の製造方法を説明するためのフローチャートである。
ここで開示される金属化合物の薄膜の製造方法では、化学反応(典型的には熱分解)によって薄膜(即ち金属化合物膜(典型的には金属酸化物膜))を形成可能な薄膜形成用材料を含むゾルに向けて、所定の条件下でプラズマを作用させる。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、薄膜形成用材料を含むゾルを調製(用意)することを包含する(ゾル調製工程S10)。金属化合物膜(例えば金属酸化物膜)は、典型的には、目的とする金属酸化物膜を構成する金属酸化物の組成に応じた薄膜形成用材料である金属アルコキシドおよび/または金属塩を含んでいるゾルを用いて形成することができる。かかるゾルは、例えば、目的とする金属酸化物膜を構成する金属酸化物の組成に応じた金属塩と、該金属塩を加水分解させるための水とを用いて調製することができる。該ゾルの調製には、必要に応じてさらに、適当な溶媒(均質な溶液を調製し得るものを選択することが好ましい。)、上記加水分解を促進し得る触媒(典型的には、酸またはアルコール)およびその他の添加剤(例えば界面活性剤)から選択される一種または二種を用いることができる。また、目的とする金属酸化物膜を構成する金属酸化物の組成に応じた金属アルコキシドを適当な有機溶媒(例えばメタノール)に添加して調製することができる。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、上記調製したゾルを基材上に塗布(付与)することを包含する(ゾル塗布工程S20)。ゾルを基材に塗布する方法は、従来の一般的なゾルゲル法と同様の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スリットコーター、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の適当な塗付装置を使用することにより、所望する形状・厚みとなるようにゾルを基材上に塗布する。なお、ゾルを基材の表面に塗布した後、必要に応じて適度に(例えば、室温以上100℃以下の温度に)加温してもよい。
また、本工程においてゾルを基材の所定の箇所だけに塗布することで、後述するプラズマ処理工程を経て所定のパターンの薄膜(金属酸化物膜)を基材上に形成(生成)することができる。
【0022】
次いで、上記基材に塗布されたゾルに対してプラズマを作用させる(照射する)ことを包含する(プラズマ処理工程S30)。より詳細には、ゾルが塗布された基材を配置した反応容器(図1のチャンバ20)内にプラズマ源ガスを導入すること、該ガスをプラズマ化すること、該プラズマをゾルに作用させること、そして、該プラズマの作用によりゾル由来の薄膜(例えば、金属酸化物膜)を前記基材上に形成(生成)することを包含する。このように、基材表面に塗布されたゾルに(直接)プラズマを作用させ、プラズマによる化学反応によって薄膜を形成する。
反応容器内に導入するプラズマ源ガスとして好ましく使用し得るガスは、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガス、水素(H)ガス、アンモニア(NH)ガス、酸素(O)ガス等が挙げられる。或いはこれらの混合気体から目的に応じて適宜選択して使用することができる。
また、反応容器内を所定の圧力以下の真空状態(即ち減圧環境下)に設定してプラズマを発生させる態様で好ましく実施することができる。上記真空の程度(減圧の程度)は、例えば凡そ10−1Pa〜10−5Pa(正確には、圧力が低い下限はない。)とすることができ、好ましくは凡そ10−2Pa〜10−3Pa、より好ましくは凡そ2×10−2Pa〜4×10−2Paとすることが適当である。
また、プラズマを作用させる際の温度(即ち、上記ゾルから薄膜を形成させる際の温度)は特に限定されない。本発明の薄膜の製造方法では、100℃前後(例えば100℃以下、好ましい態様では80℃以下)の温度域でゾルから薄膜を基材上に形成することができる。従って、本発明の方法によると、従来の一般的なプラズマCVDやゾルゲル法での適用が困難な基材(例えばポリエチレンのように耐熱温度が低い材料から構成される基材)であっても該基材の損傷を未然に防止して該基材の表面にも薄膜を適切に形成することができる。
なお、上記プラズマを基材表面に塗布されたゾルに作用させる(照射する)時間は特に制限されず、目的とする薄膜を形成可能な時間とすればよい。製造効率の観点から、通常は、プラズマ作用時間が凡そ30分間〜60分間(例えば、40分間〜50分間。)となるようにプラズマ照射(作用)条件(例えば、電源の出力、周波数、チャンバ内の圧力、電極からゾルまでの距離から選択される一または二以上の条件。)を選択することが適当である。
【0023】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0024】
[実施例]
(1)ゾルの用意
薄膜形成用材料としてのジルコニウムアルコキシドを含むゾルとして、MERCK社製、商品名「Zirconium(IV)oxide−Sol」を用意した。
(2)薄膜(ジルコニア膜)の形成
次いで、予め洗浄したプラスチック製の基材(ここではアクリル樹脂製の基材を使用)の表面にスリットコーターを用いて上記ゾルを塗布した。このとき塗布後のゾル膜厚が凡そ1μmとなるように塗布した。そして、該塗布物(ゾル)を100℃以下、60分間仮焼結した。仮焼結後に、低圧プラズマ装置(Femto Plasma;Diner社製)のチャンバ内に該仮焼結後のプラスチック製の基材を配置した。このチャンバ内の圧力は約2×10−2Pa〜4×10−2Paに調整されている。そして、チャンバ内にプラズマ源ガスとしての酸素及びアルゴンを供給し、上記プラズマ装置内でプラズマを発生させて、該発生させたプラズマを仮焼結後のゾルに作用させることによって薄膜(ジルコニア膜)を形成した。この結果、プラスチック基材上にジルコニア膜が形成された電子材料を得た。このときのプラズマ照射条件は、電源からの出力100W、周波数40kHz、照射時間30〜60分間、電極から塗布物の表面までの距離3〜5cmであった。
【0025】
上記実施例で得られた電子材料を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して得られた像を図3に示す。また、該電子材料の中に含まれる炭素(C)及びジルコニウム(Zr)をエネルギー分散型X線分光法(EDX)により元素分析した結果をそれぞれ図4及び図5に示す。EDX分析の結果、図4の白い部分が炭素であり、図5の白い部分がジルコニウムであることが判明した。以上図3〜図5から明らかなように、プラスチック基材上にジルコニア膜が形成されていることが確認できた。この結果から、プラスチック製の基材上に塗布されたゾル(塗布物)に上記プラズマを作用させることによって該基材上にジルコニア膜(薄膜)が形成されたことを確認した。
【0026】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によると、より低い温度で基材上に薄膜を形成可能な製造方法が提供されることから、特に従来用いることが困難であった耐熱性の低い合成樹脂材料製の基材上に良好な薄膜を形成する方法として好適に使用し得る。従って、本発明は、液晶ディスプレイや太陽電池などの分野をはじめとする広範な応用分野に好適に使用し得る。
【符号の説明】
【0028】
10 薄膜製造装置
20 チャンバ
30,40 平行平板電極
50 ガス供給部
60 ガス供給口
65 ガス排出口
70 高周波電源
80 基材
90 ゾル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属化合物の薄膜を形成する方法であって、
前記薄膜形成用材料を含むゾルを用意すること、
前記ゾルを前記基材上に塗布すること、
前記ゾルが塗布された基材を配置した反応容器内にプラズマ源ガスを導入すること、
前記ガスをプラズマ化すること、
前記プラズマの作用により前記ゾル由来の薄膜を前記基材上に形成すること、
を包含する、薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記基材として、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から形成される合成樹脂製部材を使用する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜を形成する際には、前記反応容器内を所定の圧力以下の真空状態に設定する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応容器には、所定の距離を隔てて対向する一対の電極が敷設されており、
前記一対の電極間に所定の高周波電圧を印加することによって発生したグロー放電プラズマにより前記薄膜を形成する、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記基材に塗布されたゾルの表面と前記電極との距離は3cm〜5cmである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜形成材料として、薄膜を形成するための金属アルコキシドおよび/または塩を使用する、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−256452(P2011−256452A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133843(P2010−133843)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】