説明

薄膜コーティング及びその作製方法

本発明は、改善された光学的及び赤外線反射特性を有するlow−E薄膜の光学積層体及びその作製方法を提供する。より特定的には、本発明は、硝酸といった強酸等の酸化剤を金属酸化物堆積工程において含めることにより、従前のものよりも低い放射率値を示す金属酸化物薄膜コーティングを提供する。本発明はまた、本願に記載の薄膜のコーティング効率を上昇させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して低放射率(「low−E」)コーティングに関し、より特定的には、赤外(IR)反射層として少なくとも一つの酸化金属層を組み入れたlow−Eコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
本願において参照する全ての米国特許及び米国特許出願は、それらの全体が参照としてここに組み入れられる。矛盾がある場合は、定義を含め本願によるものとする。
【0003】
ガラス上の低放射率(low−E)コーティングは、赤外(IR)線の放射を反射及び阻止しつつ、可視光の透過を可能とするよう設計されている。建築物の窓、自動車、並びに商業用の冷蔵庫及び冷凍庫に、高可視光透過率で低放射率のコーティングを用いることによって、冷暖房費等の環境管理関連コストの大幅な削減がなされうる。
【0004】
一般的に、高い可視光透過率及び低放射率を提供するコーティングは、典型的には透明な基板及び光学コーティングを含む積層体からなる。積層体は、反射防止誘電体層間に配置された、高い赤外線反射率及び低透過率を有する一以上の金属薄層を含みうる。反射防止誘電体層は、一般的には、可視光透過率を高めるよう選定された透明な物質である。これらの仕組みは輻射熱を反射し、太陽熱だけでなく冷気も遮断する。今日使用されているほとんどのlow−E積層体は、透明な金属酸化物誘電体層に挟まれた銀などの金属層を基礎にしている。一般に、誘電体層の厚さは、光透過率が高く(>60%)なるよう内側と外側の反射率を減らすべく調整されている。IR反射金属層は、例えば、銀、銅あるいは金など実際上どのような反射金属であってもよい。銀(Ag)はどちらかといえば中間色であるため、本用途に最もよく使用される。
【0005】
しかしながら、スパッタ堆積されたAg層と誘電体層と組合わせて多層積層体としたものを組み入れたコーティングは、高性能の日射制御製品(即ち、反射及び透過のいずれにおいても中間色に近いもの)を提供することができる一方で、かかるlow−E光学積層体において銀層を用いることにはかなりの不利な点もありうる。
【0006】
第一に、適当な銀層は、熱いガラスリボンが製造されるにつれて、即ち切断され製造ラインから取り除かれる前に、コーティングが塗布される方法であるオンライン堆積法では処理できず、マグネトロン・スパッタリングといったオフライン低圧技術によって塗布される。このスパッタ堆積銀層の制約は、最終的なコーティングされた製品の製造時間を増加させる。第二に、かかるコーティングの化学的及び機械的な耐性は限られており、加工及び出荷中の慎重な保護及び取扱いを必要とする。Agの薄い透明な金属層は、大気によって運ばれる塩化物、硫化物、二酸化硫黄等の種々の腐食剤と、湿った又は濡れた状態で接触すると腐食しやすい。Ag層を保護するため、Ag上に種々のバリア層が堆積されうる。しかしながら、従来のバリア層によって与えられる保護は不十分であることが多い。Agの薄い透明な金属層は、熱処理、曲げ、及び/又は焼き戻しの際に劣化を受けやすくもある。コーティングされたガラスが焼き戻しされ又は曲げられるとき、コーティングは、ガラスと共に、最長で数分間に亘り600℃程度の温度まで加熱される。これらの熱処理は、Agコーティングの光学特性を不可逆的に劣化させうる。この劣化は、Agの上下の層に亘って拡散する酸素によるAgの酸化により生じうる。劣化はまた、Agが、ガラスから移動するアルカリイオン、例えばナトリウム(Na+)と反応することにより生じうる。酸素又はアルカリイオンの拡散は、Agの上下の誘電体層の劣化又は構造的な変化により促進され、増大される。ガラス上のコーティングは、このような高温に耐えることが可能でなくてはならない。しかしながら、Agを赤外反射膜として使用する従来の既知の多層コーティングは、Ag膜のいくらかの劣化なしにはかかる温度に耐えることができない。
【0007】
従って、当業者によって知られている種々の上述の課題を解決するlow−Eコーティング積層体(及びその作製方法)が依然として必要とされている。特に、審美的な魅力、並びに、機械的及び/又は化学的な耐性が維持されるか又は高められ、かつ、必要であれば焼き戻し又は熱強化されうるlow−E光学コーティングが必要とされる。上述の銀コーティングの欠点がない高性能の日射制御ガラスを提供し、望ましくは反射及び透過についてほぼ中間色であるようなコーティングをもつことが望ましい。
【0008】
酸化スズ又はドープ酸化スズに基づく薄膜low−E赤外反射コーティング層は、スパッタコーティングされたAg赤外反射層の場合に生じうる種々の上述の課題を回避する代替物の代表的なものである。
【0009】
Low−E酸化スズ薄膜コーティングは、周知である。かかる酸化スズコーティングは、スパッタコーティングされたAg赤外反射層に対し幾つかの利点がある。一つのかかる利点は、酸化スズコーティングが、加熱されたガラスリボンの表面上に熱分解により堆積されうることである。換言すれば、酸化スズ薄膜層は、オンラインで熱分解により堆積されうるため、最終的な所望のコーティングされた製品についての製造時間が減少する。他のかかる利点は、熱分解によって堆積された酸化スズ薄膜層がハードコートであることである。ハードコートは、一般的に、オフラインでスパッタ堆積されたAg薄膜層といったソフトコートと比較して、より高い度合いの機械的・化学的耐性を有する。かかるハードコートは、low−E光学積層体に組み入れられた場合、熱処理、焼き戻し又は曲げの際の劣化に対するより高い耐性を与える。しかしながら、酸化スズ系のlow−E薄膜層は、一般的には金属、又はAgに基づくlow−E薄膜層のものに近いIR反射特性を有さない。更に、かかるガラス上の熱分解コーティングは耐熱性があり、ガラスは、コーティングを損傷することなく熱強化又は焼き戻しされうる。
【0010】
従って、この分野において、スパッタ堆積された金属、又はAgの薄膜層に関連する上述の課題を克服しうる酸化金属系のlow−E薄膜層が依然として必要とされている。特に、この分野において、スパッタ堆積された金属、又はAgの薄膜層のものに近い赤外線反射特性を有する酸化金属系のlow−E薄膜層が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、改善された光学特性を有するlow−E薄膜の光学積層体と、かかる改善されたlow−E薄膜の光学積層体を作製する方法を提供する。
【0012】
本発明の1つの面によれば、low−E薄膜の光学積層体の光学的及び/又は赤外線反射特性を改善する方法が提供される。
【0013】
本発明の他の面によれば、ドープ酸化スズ薄膜の熱分解堆積の最中に酸化化学添加剤を導入することにより、low−E薄膜の光学積層体の光学的及び/又は赤外線反射特性を改善する方法が提供される。
【0014】
本発明の他の面によれば、熱分解堆積工程において導入される酸化化学添加剤は、断熱ガラスユニット即ちIGUに組み込まれたときに、IGUに改善された光学的及び/又は赤外線反射特性を与える最終的なコーティングされた製品をもたらしうる。
【0015】
本発明の更なる他の面によれば、熱分解堆積工程において導入される酸化化学添加剤は、20%超のコーティング効率の上昇をもたらしうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一つの面による光学積層体構造を示す図である。
【図2】図2は、本発明の他の面による光学積層体構造を示す図である。
【図3】図3は、図1の光学積層体構造を含む断熱ガラスユニットを示す図である。
【図4】図4は、図2の光学積層体構造を含む断熱ガラスユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、多くの異なった形で具現化されうるが、本開示は、本発明の原理の例を与えるものと考えられるべきであって、かかる例は本願に記載及び/又は図示された望ましい実施例に本願を限定することが意図されたものではないとの理解のもと、本願には多くの例示的な実施例が記載されている。種々の実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に記載されている。他の実施形態が用いられてもよいこと、並びに、本発明の主旨又は範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な変更もなされうることが理解されるべきである。
【0018】
本発明は、改善された光学的及び赤外線反射特性を有するlow−E薄膜の光学積層体と、かかるlow−E薄膜の光学コーティング積層体を作製する方法を提供する。
【0019】
本発明による方法は、図1に示すようなlow−E薄膜の光学積層体を提供しうる。かかるlow−E光学積層体は、ガラス基板/SiOC/SnO2:Fという一般的構成を有する。本発明による方法はまた、図2に示すような多数のアンダーコーティング及び/又は核生成層の上に堆積されたlow−E層にも適用可能である。かかるlow−E光学積層体は、ガラス基板/TiO/SiO/SnO:Fという一般的構成を有してもよい。この構成では、SiOとして堆積されるアンダーコーティングは、酸素に関して準化学量論的なケイ素の酸化物(「SiOx」又は「SiOC」と示す。)を含んでもよいし、Al及びSnといった金属ドーパントを含んでもよい。かかる他の多層構成は当業者によって認識され認められるであろう。
【0020】
本願において、「E2+」又は「Comfort E2+」とは、酸化化学添加物の存在下で、当業者に知られている熱分解化学蒸着法により、フッ素ドープ酸化スズ薄膜が堆積されたシステム、即ち、ガラス基板(GS)/SiOC/SnO:Fを表す。このシステムでは、HNOが酸化化学添加物である。かかるシステムは150nm乃至800nmの範囲の、より好ましくは約430nmの、酸化スズ薄膜の厚さを有しうる。
【0021】
「アンダーコート層」又は「アンダーコーティング」、又は「UC」は、様々な厚さ、例えば400オングストローム乃至1000オングストロームの範囲の厚さ、より好ましくは約720オングストロームの厚さ、のオキシ炭化ケイ素層を含みうる。UCは、色の中間色化に必要な屈折率を与え、それにより光学積層体全体の透過率を改善させるのに役立ち、更に、ガラス基板からlow−E薄膜へのナトリウムイオン移動を抑制するバリアとして作用する。
【0022】
「フロートガラス」又は「フラットガラス」とは、溶融したスズ槽の上に溶融したガラスの連続した流れを浮かべることによりフロートライン上で製造されたガラスをいう。溶融したガラスは、金属の表面上に広がり、高品質で一貫して平らなガラス板を作り出す。この方法により製造されるガラスは、ガラス製造の標準的な方法である。実際に、フラットガラスの世界生産量の95%超がフロートガラスである。特にことわりのない限り、本願においてガラスについて言及する場合は、フロートライン法で製造されたガラスを意味するものとする。
【0023】
「オンライン法」又は「オンライン」は、ガラスコーティング分野における当業者に周知かつ理解されている用語であり、本願の目的では、フロートライン上でのガラスの製造の最中にガラスリボンにコーティングをすることをいう。
【0024】
「オフライン法」又は「オフライン」もまた、ガラスコーティング分野における当業者に周知かつ理解されている用語であり、本願の目的では、ガラスが製造されフロートラインから取り除かれた後にガラスにコーティングすることをいう。
【0025】
本願において、「その上へ堆積される」又は「その上に堆積される」という場合は、物質又は層が、基準とされる物質又は層の上に直接的又は間接的に塗布されることを意味する。間接的に塗布される場合、一又はそれ以上の物質又は層が介在しうる。更に、特にことわりのない限り、本発明のコーティングについて、フォーマット「[物質又は層1]/[物質又は層2]/[物質又は層3]/...」又はフォーマット「第1の[物質1]層;第1の[物質2]層;第2の[物質1]層;第2の[物質2]層;...」といったフォーマットを用いて記述するとき、後続の物質又は層は各々、先行する物質又は層の上に直接的又は間接的に堆積されることを意味する。
【0026】
「ヘイズ(Haze)」は、本願においては、通過の際に入射ビームから平均して2.5度を超えてそれる光の割合、としてヘイズを定義する、ASTM D1003に従って定義している。「ヘイズ」は当業者によって知られている方法により測定されうる。本願に示すヘイズデータは、BYK Gardnerヘイズメータを用いて測定したものである(本明細書では、全てのヘイズ値はこのようなヘイズメータで測定され、散乱された入射光の割合として与えられる)。
【0027】
「反射率」は、この技術分野においてよく理解された用語であり、本願では周知の意味で用いる。例えば、本願で用いる「反射率」の語は、可視光、赤外線光、及び紫外線光について、面に当たる量に対して面により反射される量を意味する。
【0028】
「吸収率」は、この技術分野においてよく理解された用語であり、本願では周知の意味で用いる。吸収率は、吸収体に当たり吸収体によって吸収される太陽エネルギーの同温度の黒体(完全吸収体)に当たる太陽エネルギーに対する比率である。
【0029】
本明細書において「熱処理」、「熱処理された」、及び「熱処理する」の用語は、コーティングされたガラスを含む物品の焼き戻し、曲げ、又は熱強化を可能にするのに十分な温度まで、その物品を加熱することを意味する。この定義は、例えばコーティングされた物品を少なくとも華氏約1100度の温度(例えば、約550℃〜700℃の温度)に十分な期間にわたって加熱して、焼き戻し、熱強化、又は曲げを可能にすることを含む。
【0030】
「太陽熱取得係数」又は「SHGC」又は「G」は、当技術分野においてよく知られており、入射日射量に対する窓機構を通る全太陽熱取得の尺度を意味する。これは、窓がどれだけ良く日光からの熱を遮るかの尺度であり、窓を通って入る日光からの熱の割合を表す。SHGCは、0乃至1の数で表現される。窓のSHGCが低いほど、窓が透過する太陽熱は少ない。
【0031】
「放射率」(又はエミッタンス)(E)は、所与の波長における光の反射の尺度又は特性であり、赤外長波長については次の式で表される:E=1−反射率フィルム。放射率は、黒体又は表面によって発せられる放射とプランクの法則によって予測される理論的放射との比率である。放射率の語は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials(ASTM))規格により、赤外範囲で測定される放射率の値を表すのに用いられる。放射率は、放射分析測定法を用いて測定することができ、半球放射率及び垂直放射率として示される。放射率は、コーティングによって発せられる長赤外波長放射の割合を示す。より低い放射率は、より少ない熱しかガラスを通じて透過されないことを示す。かかる放射率値の測定についてのデータを実際に蓄積することは一般的であって当業者によって知られており、例えば、「VW」アタッチメントを備えたBeckman Model4260分光光度計(Beckman Scientific Inst. Corp.)を用いて行うことができる。この分光光度計は、波長に対する反射率を測定し、そこから、当業者によって知られている標準方程式を用いて放射率が計算されうる。
【0032】
本願では、「U値(U Value)」又は「U係数(U Factor)」又は「熱貫流率」は、ある物質又は組立体を通る非日射熱の損失又は取得のレートの測定値を表す。U値は、物質がいかに良く熱を通過させることを許すかを測る。U値の評価は、一般的には、0.20Btu/hr-sqft-°F乃至1.20Btu/hr-sqft-°Fの範囲である。U値が低ければ低いほど、熱流に対する製品の耐性は高くなり、製品の断熱値は高くなる。U値の逆数(1/U値)は、R値である。U値は、W/m-°C又はBtu/hr-sqft-°Fの単位で表される。米国では、値は、通常は、NFRC/ASHRAEの冬の条件、即ち、外気温0°F(−18°C)、室温70°F(21°C)、風速15mph(約6.71m/s)、及び日射負荷なしの場合について与えられる。U値は、しばしば窓や扉について示される。例えば、窓の場合、U値は、ガラス単体について、又は、枠及びスペーサ物質の効果を含む窓全体について表現されうる。
【0033】
本願では、「Low−E」又は「Low−Eコーティング」は、ガラスを通る輻射熱流を抑制することにより放射率を減少させるようガラス表面上に堆積された、顕微鏡でなければ見えないほど薄い、ほとんど目に見えない金属又は金属酸化物の層である。
【0034】
本願においてlow−E薄膜コーティングについて言う「ハードコート」又は「ハードコーティング」とは、フロートガラス法において高温でガラス表面に噴霧又は塗布された熱分解堆積されたコーティングを意味する。
【0035】
本願においてlow−E薄膜コーティングについて言う「ソフトコート」又は「ソフトコーティング」は、誘電体(通常は金属酸化物)の層の間に挟まれた多層の光学的に透過性のある金属に塗布された真空スパッタリングされたコーティングを意味する。
【0036】
「透過率」は、本技術分野において良く理解された用語であり、本願では周知の意味に用いるものとする。本願で用いる透過率の語は、可視、赤外、及び紫外エネルギー透過率から構成されている。
【0037】
「シート抵抗(Rs)」は、本技術分野において良く理解された用語であり、本願では周知の意味に用いる。本願では、オーム毎スクエアの単位で表す。概して、この語は、ガラス基板上の層構造の任意の四角形を横切って層構造を通る電流に対する抵抗をオームで示したものを指す。シート抵抗は、どれくらい良く層又は層構造が赤外エネルギーを反射しているかについて表すものであり、従って、この特性の尺度としてしばしば放射率と共に使用される。「シート抵抗」は、4端子プローブの抵抗計、例えば、カリフォルニア州サンタクララのシグネトーン社(Signatone Corp.)製のモデルM−800にマグネトロン・インスツルメンツ社(Magnetron Instruments Corp.)のヘッドを付けた使い捨て型4端子抵抗率プローブを使用して、便利に測定することもできる。
【0038】
「断熱ガラスユニット(Insulating Glass Unit)」又は「IGU」は、当業者に周知の用語である。IGUは、一般的に、2枚又は3枚の板ガラスがそれらの周縁において一般的にエッジシールと称されるシーラント組立体によってシールされたもので構成される。3枚の板ガラスから構成されるIGUでは、3枚の板ガラスの間に2つの断熱室が形成される。2枚の板ガラスから構成されるIGUでは、1つの断熱室が形成される。IGUに含まれる板ガラスの枚数は、IGUの用途次第である。例えば、冷蔵庫に使用されるIGUは、一般的には2枚のガラス板から構成され、冷凍庫用のIGUは、一般的には3枚のガラスを用いる。最終的な封止の前に、各室は、IGUの熱性能を改善するべく、空気、又は、アルゴン、クリプトンその他の適当なガスといった不活性ガスで充填されうる。
【0039】
本願において、「コーティング効率」とは、出発物質の100%が最終的な堆積される薄膜へと変換されるとの仮定の下で、SnO:F層の実際の厚さを同一のSnO:F層の理論上の厚さで割り算したものとして定義される。理論上の厚さは、ガラス基板の表面へ供給されるスズ出発物質の量、スズ出発物質の流量、コーティングされているガラスリボンの表面積、及び、酸化スズ出発物質を供給しているコーターの下を通るときのガラスリボンの速さに基づいて計算される。かかる理論上の厚さを計算する方法は当業者に知られている。
【0040】
以下、本発明による、アンダーコーティング及びフッ素ドープ酸化スズといった金属酸化物薄膜を与える方法について説明する。以下の説明は、限定的ではないものであることが意図され、一般的に記載された方法の変更及び変形は、変更が依然として本発明の範囲にあれば、薄膜コーティング技術における当業者によって、所望の最終製品へと適用及び変更されうる。
【0041】
周知のガラスバッチ組成から作られるケイ酸ソーダ石灰フロート又はフラットガラスは、ガラス溶融炉における加熱によって溶融されうる。かかるガラスバッチ溶融に要求される温度は、一般的には約1500℃乃至1600℃である。溶融ガラスを作るために融解した後、溶融したガラスは溶融スズのフロートバスへ流し込まれ、そこからガラスが浮かび出てガラスリボンを形成する。ガラスリボンは、一般的には、溶融スズのフロートバス内では約600℃乃至1100℃の温度を有する。ガラスリボンは、ガラス溶融炉から遠ざかって動くにつれて冷える。フロートライン上の、アンダーコーティングと本発明のフッ素ドープ化スズ薄膜が熱分解により堆積される領域では、ガラスリボンの温度は一般的には約500℃乃至800℃である。
【0042】
フロートバス内に配置される第1のコーターから、本発明のアンダーコーティングは熱分解により堆積されうる。シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)及び窒素(キャリアガス)を含有する混合ガスストリームは、オキシ炭化ケイ素薄膜アンダーコーティングの作製及び堆積のためにガラスリボンの加熱された表面へ向かうようにされうる。上述の出発物質の各々に含まれる混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)2.0−40.0g/min、(2)二酸化炭素(CO)50.0−500.0g/min、(3)エチレン(C)0.0−150.0g/min、及び(4)窒素(キャリアガス)0.0−200.0g/min、で供給されうる。出発物質の送出の好ましい範囲は、(1)シラン(SiH)15.0−25.0g/min、(2)二酸化炭素(CO)150.0−200.0g/min、(3)エチレン(C)20.0−100.0g/min、及び(4)窒素(キャリアガス)30.0−60.0g/min、である。二層アンダーコーティングTiO2−SiOが用いられる場合、フロートバス内には、Si系の層を堆積させる第1のコーターの前にプレコーターも配置されうる。酸化チタン薄膜アンダーコーティングの作製及び堆積のため、チタンテトライソプロポキシド(titanium tetra-isopropoxide):Ti[−O−CH−(CH(「TTIP」と省略する)及び窒素(キャリアガス)を含有する混合ガス流が、プレコーターから基板の表面に当てられうる。当業者は、コーターの配置が変更可能であることを認識し、認めるであろう。非限定例としては、上述のように、両方のアンダーコーティング用コーターをフロートバス内に配置すること、又は、一方のアンダーコーティング用コーターをフロートバス内に配置し、他方のアンダーコーティング用コーターをフロートバス内において一方のアンダーコーティング用コーターよりも下流に配置すること、が挙げられる。また、両方のアンダーコーティング用コーターをフロートバスよりも下流に配置してもよい。
【0043】
第1のコーターよりも下流に配置された第2のコーターから、本発明のフッ素ドープ酸化スズ薄膜が熱分解により堆積されうる。モノブチル三塩化スズ(monobutyl tin trichloride)(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気、酸素及び硝酸(HNO−酸化化学添加剤)を含有する混合ガス流は、フッ素ドープ酸化スズ薄膜の作製及び堆積のため、アンダーコーティングの表面に当てられうる。当業者によって認識されるように、含スズ出発物質の揮発性の制御を助けるため、並びに、ガスの混合物の出発物質が互いに反応することを防止するため、含スズ出発物質を溶液中に維持する助けとなるような溶媒を用いることが必要な場合がある。これを達成するための周知の溶媒は、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトンといった低級(C1−C5)ジアルキルケトンである。本発明の望ましい低級ジアルキルケトンは、メチルイソブチルケトンである。ガスが個々に又は別々に加熱表面へ運ばれる場合、かかる溶媒は必要ではないが、所望であれば使用してもよい。
【0044】
混合ガス流のガスは、以下の流量で供給される上述の出発物質の各々、即ち、(1)70%−95%のモノブチル三塩化スズ、5%−20%のトリフルオロ酢酸及び0%−15%のメチルイソブチルケトンを含有する混合物が0.20−2.00kg/min、(2)水蒸気が0.00−5.00kg/min、(3)空気が0.00−2.00kg/min、並びに、(4)10%−100%硝酸の水溶液が0.10−2.50kg/min、に含まれうる。出発物質を運ぶときの望ましい範囲は、(1)80%−95%のモノブチル三塩化スズ、5%−15%のトリフルオロ酢酸、及び、0%−15%のメチルイソブチルケトンを含有する混合物が0.20−2.00kg/min、(2)水蒸気が0.00−2.5kg/min、(3)空気が0.00−2.00kg/min、及び(4)20%−100%硝酸の水溶液が0.30−2.20kg/min、である。
【0045】
あるいは、本発明のフッ素ドープ酸化スズ薄膜は、以下の前駆体から熱分解により堆積されてもよい。モノブチル三塩化スズ(CSnCl又は「MBTC」)、空気、蒸気、フッ化水素(HF)及び硝酸(HNO)を含有する混合ガス流は、フッ素ドープ酸化スズ膜の作製及び堆積のためにアンダーコーティングの表面に当てられてもよい。この代替例では、更なる溶媒は要求されない。代替的なガス流のガスは、以下の範囲、即ち、(1)MBTCが20−170kg/h、(2)空気が100−2000kg/h、(3)HOが0−30kg/h、(4)HF(2.5重量%の水溶液)が10−50kg/h、並びに、HNO(70重量%の水溶液)が最大で30kg/h、で供給されうる。
【0046】
水、空気、又は酸素以外の酸化化学剤の導入は、当業者によって知られている方法で行われうる。酸化化学剤の導入についての非限定的な一例は、フッ素ドープ酸化スズコーターでの処理を受ける前に、酸化化学剤の蒸気を熱分解蒸気と混ぜることである。酸化化学剤の導入の非限定的な他の例は、フッ素ドープ酸化スズコーターの前で酸化化学剤蒸気を当てるものである。
【0047】
本願に開示される本発明の発明者は、驚くべきことに、SnO:F low−E薄膜をガラス上に熱分解により堆積しているときに、従来の水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤を用いることにより、low−E薄膜の光学的及び赤外線反射特性が増加しうることを見出した。従って、かかる特性を有するlow−E光学コーティング構造は、1枚ガラス板及び多ガラス板製品へ組み込まれることが望ましい。多ガラス板製品の非限定的な一例は、図3及び図4に示すような断熱ガラスユニット(IGU)モジュールである。
【0048】
図3中、図1のコーティングを含む2枚ガラス板IGU組立体を示す。IGU組立体10は、室70、枠50及びシーラント組立体60で分離された外側ガラス板20及び内側ガラス板30を含む。図1のコーティング40は、外側ガラス板20の内表面上に配置される。コーティング40はまた、所望であれば(外側ガラス板20のかわりに)内側ガラス板30の内表面上に配置されてもよい。本発明のlow−Eコーティングは、外側ガラス板20又は内側ガラス板30のいずれの内向きの表面上に配置されてもよい。
【0049】
図4中、図2のコーティングを含む2層ガラスIGU組立体を示す。IGU組立体10は、室70、枠50及びシーラント組立体60で分離された外側ガラス板20及び内側ガラス板30を含む。図2のコーティング40は、外側ガラス板20の内表面上に配置される。コーティング40はまた、所望であれば(外側ガラス板20のかわりに)内側ガラス板30の内表面上に配置されてもよい。
【0050】
本願発明者は、ガラス上にオンライン堆積された金属酸化物low−E薄膜を作製するときに、従来の水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤を熱分解蒸着工程に加えると、金属酸化物薄膜の赤外線反射特性が高まることを見出した。ガラスへの金属酸化物薄膜のオンライン堆積について本願に開示されている方法は、ガラス上にオフラインで作製された金属酸化物薄膜にも適用可能である。かかるオフライン方法への適応は当業者によって認識されるであろう。
【0051】
適当な酸化化学添加剤の非限定例は、酸素、オゾン、過酸化水素その他の過酸化物、硝酸、硝酸アンモニウムその他の硝酸塩、亜硝酸塩、亜酸化窒素、硫酸、硫酸塩その他の過硫酸塩、次亜塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩並びにホウ酸塩でありうる。
【0052】
本発明の更なる面によれば、堆積された金属酸化物薄膜の光学的及び赤外線反射特性の改善を可能とする、金属酸化物薄膜製造方法が提供される。
【0053】
本発明の金属酸化物薄膜については、アンダーコーティングが基板と金属酸化物薄膜の間に位置するよう、金属酸化物薄膜の下にアンダーコーティングを配置することが望ましい。アンダーコーティングは、多くの目的の役に立つ。アンダーコーティングは、基板、即ちガラスに含まれるアルカリ成分が、アンダーコーティングの上に配置された薄膜へと熱的に拡散するのを防止するのに役立ちうる。また、アンダーコーティングは、薄膜に対する基板の結合を、薄膜の特性が容易に低下しない程の十分な強度にまで強化する役割を果たしうる。更に、アンダーコーティングは、所望の屈折率を与える役割を果たすことができ、薄膜又は基板から生ずる干渉色を減少させうるような色抑制層としての役割を果たすことができる。
【0054】
本発明のアンダーコーティングは、単一薄膜層構造であってもよく、又は多層構造を有してもよい。本発明のアンダーコーティングに用いられる物質は、当業者に周知である。これらの物質の非限定例は、チタン、ケイ素、スズ、亜鉛、ジルコニウム、クロム、アルミニウム、インジウム、マンガン、バナジウムの酸化物、窒化物、炭化物、オキシ窒化物、オキシ炭化物、及びこれらの組合せである。
【0055】
本発明のアンダーコーティングについては、ケイ素を含む単一薄膜層を用いることが好ましい。より好ましくは、アンダーコーティングは、ケイ素及び酸素を含む薄膜物質を用いる。好ましいアンダーコーティングは、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、及びこれらの組合せでありうるが、これらに限られるものではない。本願に例示するアンダーコーティングは、オキシ炭化ケイ素薄膜である。
【0056】
オキシ炭化ケイ素の蒸着は、薄膜コーティング分野において周知である。本発明で用いられるオキシ炭化ケイ素アンダーコーティングは、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)及び窒素(キャリアガス)といった出発物質から、好ましくは400℃乃至800℃の範囲の高温下で、熱分解により蒸着されうる。より好ましくは、高温下のガラス基板の温度は、650℃乃至750℃の範囲である。
【0057】
本発明のアンダーコーティングの厚さは、特に限定されない。望ましい厚さは、400Å乃至1000Å厚の範囲の厚さである。より好ましくはアンダーコーティングの厚さは、600Å乃至900Åである。最も好ましくは、アンダーコーティング薄膜の厚さは、700Å乃至800Åである。上述の厚さ範囲にある本発明のオキシ炭化ケイ素アンダーコーティングは、酸化スズの虹色効果(iridescence)から生ずる色の色抑制をもたらしうる。
【0058】
他の含ケイ素出発物質もまた、本発明の範囲において利用可能である。他の周知の含ケイ素出発物質は、ジシラン、トリシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、1,2-ジメチルシラン、1,1,2-トリメチルジシラン及び1,1,2,2-テトラメチルジシランを含むが、これらに限られない。出発物質としてシランを用いるとき、ガス流に酸化物質を含むことが一般的である。酸化物質は、二酸化炭素、一酸化炭素及び二酸化窒素でありうる。出発物質としてシランを用いるとき、シラン出発物質が基板表面に達する前に反応するのを防止するべく、エチレン、アセチレン、又はトルエン等の不飽和炭化水素ガスがガス流に加えられてもよい。
【0059】
本発明による追加的なTi系のアンダーコーティングを用いるとき、使用されうる含チタン出発物質は、TiCl4等のハライド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシド等のアルコキシド、並びに、チタン(ジイソプロポキシ)ビスアセチルアセトナート等のβ−ジケトンを含むが、これらに限られない。チタンテトライソプロポキシド(Ti[-O-CH-(CH、即ち「TTIP」)は、揮発性が高く、一般的に好ましい。
【0060】
本発明のフッ素ドープ酸化スズ膜は、薄膜技術における当業者に周知の熱分解堆積法により作製されうる。この処理においては、最終的な薄膜low−E金属酸化物製品に到達するのに、多くの周知の出発物質や前駆体を利用しうる。
【0061】
本発明の熱分解堆積法によって作製される薄膜コーティングのためのスズ前駆体は、この分野において一般的であって周知である。特に適したスズ前駆体は、モノブチル三塩化スズである。この物質は、周知であり、容易に入手可能であり、フラットガラス上に含スズ薄膜コーティングの堆積を行う際のスズ前駆体として一般的に使用される。他のスズ前駆体もまた、本発明の範囲内で利用可能である。他の周知のスズ前駆体は、二塩化ジメチルスズ、二塩化ジブチルスズ、テトラメチルスズ、テトラブチルスズ、二塩化ジオクチルスズ、ジブチルスズジアセテート、及び四塩化スズを含むが、これらに限られない。
【0062】
酸化スズ薄膜のフッ素ドーピングもまた、薄膜コーティング技術の当業者に周知である。これを行うため、含スズ出発物質とともに含フッ素出発物質がガス流に加えられてもよい。含フッ素出発物質の非限定例は、フッ素ガス、フッ化水素、三フッ化窒素、トリフルオロ酢酸、ブロモトリフルオロメタン、ジフルオロエタン、及びクロロジフルオロメタンである。
【0063】
本発明のフッ素ドープ酸化スズ薄膜コーティングは、モノブチル三塩化スズ(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気、並びに、水、空気、又は酸素以外の追加的な酸化化学添加剤といった出発物質から、高温下で熱分解により堆積されうる。好ましくは、熱分解による蒸着工程のための高温は、400℃乃至800℃の範囲である。最も好ましくは、高温は、550℃乃至750℃の範囲である。
【0064】
本発明のフッ素ドープ酸化スズ薄膜コーティングの厚さは、好ましくは100nm乃至1000nm厚である。より好ましくは、フッ素ドープ酸化スズ薄膜コーティングの厚さは、200nm乃至800nmである。最も好ましくは、フッ素ドープ酸化スズ薄膜コーティングの厚さは、200nm乃至600nmである。
【0065】
〔実施例1〕
フロートバスの内部に配置した第1のコーターから、シラン(SiH4)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流を、ガラスリボンの加熱された表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)13.5gm/min;(2)二酸化炭素(CO)100.0gm/min;(3)エチレン(C)50.0gm/min;及び(4)窒素(キャリアガス)40.0gm/min、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0066】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、モノブチル三塩化スズ(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気及び硝酸(HNO−酸化化学添加剤)を含む混合ガス流を、アンダーコーティングの表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)93%のモノブチル三塩化スズ、5%のトリフルオロ酢酸及び2%のメチルイソブチルケトンを含む混合物を0.98kg/min;(2)水蒸気を0.85kg/min;(3)空気を0.88kg/min;並びに(4)67.2%硝酸の水溶液を0.78kg/min、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0067】
〔実施例2〕
フロートバスの内部に配置した第1のコーターから、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流を、ガラスリボンの加熱された表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)13.5gm/min;(2)二酸化炭素(CO)100.0gm/min;(3)エチレン(C)50.0gm/min;及び(4)窒素(キャリアガス)40.0gm/min、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0068】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、モノブチル三塩化スズ(CSnCl)、トリフルオロ酢酸(CFCOH)、空気、蒸気及び硝酸(HNO−酸化化学添加剤)を含む混合ガス流を、アンダーコーティングの表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)81%のモノブチル三塩化スズ、15%のトリフルオロ酢酸及び4%のメチルイソブチルケトンを含む混合物を0.81kg/min;(2)水蒸気を0.80kg/min;(3)空気を1.62kg/min、並びに(4)67.2%硝酸の水溶液を0.34kg/min、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0069】
本発明の方法によって作製されるフッ素ドープ酸化スズ薄膜は、硝酸といった酸化化学添加剤が存在しない場合に熱分解により堆積されるフッ素ドープ酸化スズ薄膜と比較して、より高い光学的及び赤外線反射特性を示す薄膜を生成する。本発明の方法により作製されるフッ素ドープ酸化スズの光学的及び赤外線反射特性について以下に説明する。なお、上述の代表的な本発明による方法は、後述の本発明の試料を作製する例示的な方法を与えるものである。
【0070】
表1は、本発明の試料E2+を参照試料E2と比較したときの光学的及び赤外線反射特性を示す。いずれの試料も、厚さ3.2mmのフロートガラス上に堆積させた。
【0071】
【表1】

表1. 3.2mm厚ガラスの単一ガラス板上のE2+及びE2Low−Eコーティングの光学的及び赤外線反射特性
【0072】
表1に示すデータについて、本発明の試料E2+については出発物質の混合ガス流に酸化化学添加剤、即ち本実施例では硝酸、が添加されていることが唯一の実質的な相違点であることを除き、本発明の試料E2+及び参照試料E2のいずれに堆積されたフッ素ドープ酸化スズ薄膜コーティングも、ほぼ同じ出発物質及び堆積条件で堆積されたことに留意すべきである。
【0073】
本発明の試料E2+については、参照試料E2と比較して値にして0.09だけ低い放射率が観察された。いずれの試料の放射率も、当業者に周知の装置である放射計によって測定した。本発明の試料E2+についてのSnO:F薄膜出発物質の混合ガス流に、硝酸といった酸化化学添加剤を添加することは、薄膜コーティングの放射率に対して予期せぬ著しい効果がありうる。本発明の試料E2+について、参照試料E2と比較して、より低い約10.0のシート抵抗(Rs)も観察された。いずれの試料のシート抵抗も、当業者に周知の装置である4端子プローブ型シート抵抗計で測定した。構造的及び審美的な目的上、シート抵抗は、層又は層構造がどの程度よく赤外線エネルギーを反射しているかを示すものであり、従って、この特性の尺度として放射率とともに用いられることが多い。従って、放射率及びシート抵抗の値はいずれも、本発明の試料E2+については参照試料E2についてのものよりも予期しないほど低く、このことは、SnO2:F薄膜の堆積の最中に硝酸といった酸化化学添加剤を混合ガス流に入れることにより、驚くほど改善された赤外線反射特性を有する薄膜コーティング、即ちE2+薄膜コーティングが得られることを示す。
【0074】
本発明の試料E2+及び参照試料E2のいずれについてもほぼ同じヘイズ値が観察された。このことは、E2+についてのSnO2:F出発物質の混合ガス流に酸化化学添加剤を添加することは、最終的なコーティングがもつ光を散乱させる能力に対してほぼ影響がないことを示す。また、SnO:F薄膜厚さについて非常に大きな違いが観察された。本発明の試料E2+について、430nmの薄膜厚さが観察された。参照試料E2について、280nmの薄膜厚さが観察された。上述のように、本発明の試料E2+については出発物質の混合ガス流に酸化化学添加剤、即ち本実施例では硝酸が添加されていることが唯一の実質的な相違点であることを除き、本発明の試料E2+及び参照試料E2に堆積されたSnO:F薄膜コーティングはいずれも、ほぼ同じ出発物質、それらの量、及び堆積条件のもとで堆積された。上記のように、E2+についてのSnO:F薄膜の厚さ(430nm)は、E2についてのSnO:F薄膜の厚さ(280nm)よりもはるかに大きい。従って、そして予期せぬことに、硝酸といった酸化化学添加剤を用いることは、SnO:F薄膜の堆積に関してコーティング効率の大きな上昇をもたらしうる。表1に記載の薄膜厚さデータは、約150nmの薄膜厚さの増加を示す。これは、50%超(約55%)の薄膜コーティング効率上昇につながる。換言すると、本発明の試料E2+の作製に用いられる方法では、出発物質の混合ガス流への硝酸の添加により、約55%厚いSnO2:F薄膜厚さを実現できる。このコーティング効率の上昇は、使用される出発物質の量を増加させる必要なしに実現され、本発明の薄膜コーティングを生成するうえでの製造コストが減少するという利点をもたらす。
【0075】
表2は、本発明の試料E2+及び参照試料E2を組み込んだIGUについての光学的及び赤外線反射特性を示す。比較として、「EnergyAdvantage」及び「ComfortTi−PS」なる薄膜を組み込んだIGUについてのデータも示す。ComfortTi−PSガラスは、米国ジョージア州アルファレッタ(Alpharetta)のAGC Flat Glass North America社製のlow−Eコーティングされたガラスである。Ti−PS構造については、赤外反射層としてAgが用いられる。EnergyAdvantage(EA)ガラスは、英国マージーサイド(Merseyside)のPilkington社製のlow−Eコーティングされたガラスである。EA構造については、赤外反射層としてSnO:Fが用いられる。
【0076】
【表2】

表2 断熱ガラスユニットに組み込まれたE2+及びE2、EA及びTi−PS Low−Eコーティングの光学的及び赤外線反射特性
【0077】
表2に記載のデータは、3.2mmの厚さを各々有し、12mm離間した2枚の板ガラスからなるIGUに組み込まれたガラス上の、本発明のlow−E薄膜コーティング、参照用のlow−E薄膜コーティング、及び、比較用のlow−E薄膜コーティングを表す。2枚の板ガラスの間に封じ込められているガスは、空気又はアルゴンのいずれかであり、表中に示されている。また、本願に記載の本発明のlow−Eコーティング及び参照low−Eコーティングは、周辺光が入射してくる第3のガラス表面上に配置されている。
【0078】
2つの板ガラスの間に空気又はアルゴンのいずれかを有するIGUに組み込まれたとき、本発明の薄膜E2+について、参照薄膜E2と比較して、より低いU値が観察された。2枚のガラス板の間のガスが空気である場合、E2+とE2を組み込んだIGU間で0.016即ち4.6%のU値の差を実現した。2枚のガラス板の間のガスがアルゴンである場合、E2+とE2を組み込んだIGU間で0.020即ち6.6%のU値の差を実現した。2枚のガラス板の間に空気又はアルゴンのいずれかを有するIGUに組み込まれたとき、本発明の薄膜E2+については、参照薄膜E2と比較して、より低い日射熱取得係数(SHGC)値及びT−vis値が観測された。表2に記載の熱分解により堆積されたSnO2:F薄膜である3つの製品のうち、本発明の試料E2+は、参照試料E2及び比較試料EAよりも、低い放射率、低いU値、低いSHGC、及び低い可視光透過率、をそれぞれ有することが観察された。Ag系のlow−EコーティングをされたガラスであるTi−PSは、E2+よりも良い赤外線反射特性(放射率、U値、SHGC)を示す。更に、Ti−PSもまた、E2及びEAよりも良い赤外線反射特性を有する。
【0079】
従って、本発明のSnO:F薄膜の堆積の最中に、混合ガス流に硝酸といった酸化化学添加剤を添加することにより、かかる本発明のSnO:F薄膜が2枚のガラス板からなる断熱ガラスユニットに組み込まれているとき、赤外線反射特性が少なくとも4%上昇する。このような赤外線反射特性の上昇により、性能の観点から、SnO:F系low−Eコーティングは従来のAg系low−E薄膜コーティングとの競争力をもつことが可能となる。更に、本発明の薄膜及びその作製方法は、SnO:Fの熱分解による堆積と比較して、コーティング効率の飛躍的な上昇を可能とする。かかるコーティング効率の上昇により、コストの観点からも、SnO:F系low−Eコーティングは従来のAg系low−E薄膜コーティングとの競争力をもつことが可能となる。
【0080】
薄膜コーティングの分野においては、より良いコーティング効率がより厚い堆積された薄膜層をもたらすことは周知である。堆積された薄膜層が厚ければ厚いほど、薄膜の透過率の値は低くなる。従って、硝酸といった酸化化学添加剤を含むことにより得られたコーティング効率は、赤外線反射特性の上昇も可能とする。
【0081】
〔実施例3〕
フロートバス内に配置した第1のコーターから、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流を、ガラスリボンの加熱された表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)1.2kg/h;(2)二酸化炭素(CO)14kg/h;(3)エチレン(C)2kg/h;及び(4)窒素(キャリアガス)1.6kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0082】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、モノブチル三塩化スズ(CSnCl又は「MBTC」)、フッ化水素酸(HF)、空気及び蒸気を含む混合ガス流がアンダーコーティングの表面に当てられた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)MBTCを93.5kg/h;(2)空気を1160kg/h;(3)水を8.4kg/h;及び(4)2.5重量%のHF水溶液を22.5kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0083】
〔実施例3+〕
フロートバス内に配置した第1のコーターから、シラン(SiH)、二酸化炭素(CO)、エチレン(C)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流がガラスリボンの加熱された表面に当てられた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)1.2kg/h;(2)二酸化炭素(CO)14kg/h;(3)エチレン(C)2kg/h;及び(4)窒素(キャリアガス)1.6kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0084】
第1のコーターよりも下流に配置し第2のコーターから、モノブチル三塩化スズ(CSnCl又は「MBTC」)、フッ化水素酸(HF)、硝酸(HNO)、空気及び蒸気を含む混合ガス流がアンダーコーティングの表面に当てられた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)MBTCを85.0kg/h;(2)空気を1160kg/h;(3)水を4.3kg/h;(4)2.5重量%のHF水溶液を22.5kg/h;及び(5)70重量%のHNO3水溶液を10.5kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0085】
本発明の方法によって作製されるフッ素ドープ酸化スズ薄膜は、同程度の厚さであっても、同じ赤外線反射特性についてより高い光学特性を示す薄膜を生成する。以下の図3に、選ばれた光学特性を示す。
【0086】
【表3】

表3 3.85mm厚ソーダ石灰ガラスの単一板ガラス上の実施例3+及び3Low−Eコーティングの光学的及び赤外線反射特性。*光源D65、2°立体角。**ISO9050(2003)標準による。
【0087】
表より、HNOの導入(実施例3+)により、HNOなしに作製される実施例3と比較して、遮蔽係数が上昇し、ヘイズが減少したことがわかる。また、可視光(luminar)透過率及び遮蔽係数が上昇した。
【0088】
〔実施例4〕
フロートバス内部に配置した第1のコーターから、チタンテトライソプロポキシド(Ti[-O-CH-(CH、即ち「TTIP」)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流を、ガラスリボンの加熱された表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)TTIP 1.85kg/h及び(2)窒素(キャリアガス)150kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0089】
フロートバスの下流かつTiOプレコーターの下流に配置した第1のコーターから、シラン(SiH)、空気、エチレン(C)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流を、ガラスリボンの加熱された表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)0.75kg/h;(2)空気96kg/h;(3)エチレン(C)1.0kg/h;及び(4)窒素(キャリアガス)101kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0090】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、モノブチル三塩化スズ(CSnCl、即ち「MBTC」)、フッ化水素酸(HF)、硝酸(HNO)、空気及び蒸気を含む混合ガス流を、アンダーコーティングの表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)MBTCが98.6kg/h;(2)空気が970k/h;(3)水が9.1kg/h;及び(4)2.5重量%のHF水溶液が25.6kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0091】
〔実施例4+〕
フロートバスの内部に配置したプレコーターから、チタンテトライソプロポキシド(Ti[-O-CH-(CH、即ち「TTIP」)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流を、ガラスリボンの加熱された表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)TTIP 1.85kg/h及び(2)窒素(キャリアガス)150kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0092】
フロートバスの下流かつTiOプレコーターの下流に配置した第1のコーターから、シラン(SiH)、空気、エチレン(C)及び窒素(N−キャリアガス)を含む混合ガス流を、ガラスリボンの加熱された表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)0.75kg/h;(2)エチレン(C)1.0kg/h;及び(3)窒素(キャリアガス)101kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0093】
第1のコーターの下流に配置し第2のコーターから、モノブチル三塩化スズ(CSnCl又は「MBTC」)、フッ化水素酸(HF)、硝酸(HNO)、空気及び蒸気を含む混合ガス流を、アンダーコーティングの表面に当てた。混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)MBTCが85.0kg/h;(2)空気が970kg/h;(3)水が4.9kg/h;(4)2.5重量%のHF水溶液が25.6kg/h;及び(5)HNOが14.0kg/h、で供給される出発物質を含むものを用いた。
【0094】
本発明の方法で作製されるフッ素ドープ酸化スズ薄膜は、同程度の厚さであっても、同じ赤外線反射特性についてより高い光学特性を有する薄膜を生成する。以下の表4に、特性の測定の結果を示す。
【0095】
【表4】

表4 3.85mm厚のソーダ石灰ガラスの単一板ガラス上の実施例4+及び実施例4のLow−Eコーティングの光学的及び赤外線反射特性。*光源D65、2°立体角。**ISO9050(2003)標準による。
【0096】
上述と同様に、表から、HNOなしで作製された実施例4と比較して、HNOの導入(実施例4+)により、遮蔽係数が上昇し、ヘイズが減少したことがわかる。また、可視光(luminar)透過率及び遮蔽係数が上昇した。
【0097】
本発明について特定の実施形態に関して説明したが、本発明は上述の特定の詳細に限定されるものではなく、当業者に示唆を与えうる様々な変更及び修正を含み、それら全ては請求項によって定められる本発明の範囲にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜を作製する方法であって、
(a)基板を準備することと、
(b)前記基板の少なくとも一部分に第1のコーティングを堆積させることと、
(c)金属酸化物を含む前記第1のコーティングの少なくとも一部分に第2のコーティングを堆積させること、を含み、
前記第2のコーティングは、高温下で水、空気又は酸素以外の酸化剤の存在下で堆積される、方法。
【請求項2】
前記基板はガラス基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のコーティングの前記金属酸化物はスズの酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のコーティングの前記金属酸化物はフッ素ドープ酸化スズを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコーティングはケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のコーティングは、酸化物、窒化物若しくは炭化物又はそれらの組合せの形状のケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコーティングは、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素若しくはオキシ炭化ケイ素又はそれらの組合せからなる群から選択した物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のコーティングは、オキシ炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤は、純酸素、オゾン、過酸化物、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、亜酸化窒素、硫酸、硫酸塩、過硫酸塩、次亜塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤は、硝酸、亜酸化窒素、次亜塩素酸及び硫酸並びにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤は硝酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記高温は、200℃乃至800℃の範囲の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記高温は、450℃乃至750℃の範囲の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のコーティングは、単一の薄膜層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のコーティングは、多数の薄膜層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
低放射率を有する薄膜を作製する方法であって、前記方法は、
(a)基板を準備することと、
(b)前記基板の少なくとも一部分に第1のコーティングを堆積させることと、
(c)金属酸化物を含む前記第1のコーティングの少なくとも一部分に第2のコーティングを堆積させること、を含み、
前記第2のコーティングは、高温下で水、空気又は酸素以外の酸化剤の存在下で堆積され、
前記第2のコーティングは、水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤が存在しないときに堆積される第2のコーティングの放射率の値よりも少なくとも約0.04低い放射率の値を有する、方法。
【請求項17】
前記基板はガラス基板である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のコーティングの前記金属酸化物はスズの酸化物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のコーティングの前記金属酸化物はフッ素ドープ酸化スズを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のコーティングはケイ素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のコーティングは、酸化物、窒化物若しくは炭化物又はそれらの組合せの形状のケイ素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のコーティングは、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素若しくはオキシ炭化ケイ素又はそれらの組合せからなる群から選択した物質を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のコーティングは、オキシ炭化ケイ素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記酸化剤は、純酸素、オゾン、過酸化物、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、亜酸化窒素、硫酸、硫酸塩、過硫酸塩、次亜塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記酸化剤は、硝酸、亜酸化窒素、次亜塩素酸及び硫酸並びにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化剤は硝酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記高温は、200℃乃至800℃の範囲の温度である、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記高温は、450℃乃至750℃の範囲の温度である、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のコーティングは、単一の薄膜層を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のコーティングは、多数の薄膜層を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
薄膜を作製する方法であって、
(a)基板を準備することと、
(b)前記基板の少なくとも一部分に第1のコーティングを堆積させることと、
(c)金属酸化物を含む前記第1のコーティングの少なくとも一部分に第2のコーティングを堆積させること、を含み、
前記第2のコーティングは、高温下で水、空気又は酸素以外の酸化剤の存在下で堆積され、
前記第2のコーティングは、水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤が存在しないときに堆積される第2のコーティングの厚さよりも少なくとも約20%大きい厚さを有する、方法。
【請求項32】
前記基板はガラス基板である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2のコーティングの前記金属酸化物はスズの酸化物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記第2のコーティングの前記金属酸化物はフッ素ドープ酸化スズを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のコーティングはケイ素を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のコーティングは、酸化物、窒化物若しくは炭化物又はそれらの組合せの形状のケイ素を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のコーティングは、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素若しくはオキシ炭化ケイ素又はそれらの組合せからなる群から選択した物質を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のコーティングは、オキシ炭化ケイ素を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記酸化剤は、純酸素、オゾン、過酸化物、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、亜酸化窒素、硫酸、硫酸塩、過硫酸塩、次亜塩素酸、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記酸化剤は、硝酸、亜酸化窒素、次亜塩素酸及び硫酸並びにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記酸化剤は硝酸である、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記高温は、200℃乃至800℃の範囲の温度である、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記高温は、450℃乃至750℃の範囲の温度である、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のコーティングは、単一の薄膜層を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記第1のコーティングは、多数の薄膜層を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
請求項1に記載の方法により作製される薄膜。
【請求項47】
請求項16に記載の方法により作製される薄膜。
【請求項48】
請求項31に記載の方法により作製される薄膜。
【請求項49】
薄膜を作製する方法であって、
(a)基板を準備することと、
(b)前記基板の少なくとも一部分に第1のコーティングを堆積させることと、
(c)金属酸化物を含む前記第1のコーティングの少なくとも一部分に第2のコーティングを堆積させること、を含み、
前記第2のコーティングは、高温下で水、空気又は酸素以外の酸化剤の存在下で堆積され、
前記第2のコーティングは、水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤が存在しないときに堆積されるほぼ同じ厚さの第2のコーティングの日射遮蔽係数よりも少なくとも約0.01パーセント高い日射遮蔽係数を有する、方法。
【請求項50】
薄膜を作製する方法であって、
(a)基板を準備することと、
(b)前記基板の少なくとも一部分にプレコーティングを堆積させることと、
(c)前記プレコーティングの少なくとも一部分に第1のコーティングを堆積させることと、
(d)金属酸化物を含む前記第1のコーティングの少なくとも一部分に第2のコーティングを堆積させること、を含み、
前記第2のコーティングは、高温下で水、空気又は酸素以外の酸化剤の存在下で堆積され、
前記第2のコーティングは、水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤が存在しないときに堆積されるほぼ同じ厚さの第2のコーティングの光透過率よりも少なくとも約0.9パーセント高い光透過率を有する、方法。
【請求項51】
薄膜を作製する方法であって、
(a)基板を準備することと、
(b)前記基板の少なくとも一部分に第1のコーティングを堆積させることと、
(c)金属酸化物を含む前記第1のコーティングの少なくとも一部分に第2のコーティングを堆積させること、を含み、
前記第2のコーティングは、高温下で水、空気又は酸素以外の酸化剤の存在下で堆積され、
前記第2のコーティングは、水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤が存在しないときに堆積されるほぼ同じ厚さの第2のコーティングのヘイズよりも少なくとも約0.25パーセント低いヘイズを有する、方法。
【請求項52】
薄膜を作製する方法であって、
(a)基板を準備することと、
(b)前記基板の少なくとも一部分にプレコーティングを堆積させることと、
(c)前記プレコーティングの少なくとも一部分に第1のコーティングを堆積させることと、
(d)金属酸化物を含む前記第1のコーティングの少なくとも一部分に第2のコーティングを堆積させること、を含み、
前記第2のコーティングは、高温下で水、空気又は酸素以外の酸化剤の存在下で堆積され、
前記第2のコーティングは、水、空気、又は酸素以外の酸化化学添加剤が存在しないときに堆積されるほぼ同じ厚さの第2のコーティングのヘイズよりも少なくとも約0.25パーセント低いヘイズを有する、方法。
【請求項53】
前記プレコーティングは、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン若しくはオキシ炭化チタン又はこれらの組合せからなる群から選択される物質を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記プレコーティングは、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン若しくはオキシ炭化チタン又はこれらの組合せからなる群から選択される物質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記プレコーティングは、二酸化チタンを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記プレコーティングは、二酸化チタンを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
請求項49に記載の方法により作製される薄膜。
【請求項58】
請求項50に記載の方法により作製される薄膜。
【請求項59】
請求項51に記載の方法により作製される薄膜。
【請求項60】
請求項52に記載の方法により作製される薄膜。
【請求項61】
断熱ガラスユニットであって、
第1の板ガラスと、
第2の板ガラスと、
前記第1の板ガラスと前記第2の板ガラスを互いに離間した関係に維持するよう前記第1の板ガラスと第2の板ガラスの周囲の回りに設けられたシーラント組立体と、
前記第1又は前記第2の板ガラスの表面に隣接した、請求項1に記載の方法により作製された薄膜と、を含む断熱ガラスユニット。
【請求項62】
断熱ガラスユニットであって、
第1の板ガラスと、
第2の板ガラスと、
前記第1の板ガラスと前記第2の板ガラスを互いに離間した関係に維持するよう前記第1の板ガラスと第2の板ガラスの周囲の回りに設けられたシーラント組立体と、
前記第1又は前記第2の板ガラスの表面に隣接した、請求項16に記載の方法により作製された薄膜と、を含む断熱ガラスユニット。
【請求項63】
断熱ガラスユニットであって、
第1の板ガラスと、
第2の板ガラスと、
前記第1の板ガラスと前記第2の板ガラスを互いに離間した関係に維持するよう前記第1の板ガラスと第2の板ガラスの周囲の回りに設けられたシーラント組立体と、
前記第1又は前記第2の板ガラスの表面に隣接した、請求項31に記載の方法により作製された薄膜と、を含む断熱ガラスユニット。
【請求項64】
断熱ガラスユニットであって、
第1の板ガラスと、
第2の板ガラスと、
前記第1の板ガラスと前記第2の板ガラスを互いに離間した関係に維持するよう前記第1の板ガラスと第2の板ガラスの周囲の回りに設けられたシーラント組立体と、
前記第1又は前記第2の板ガラスの表面に隣接した、請求項49に記載の方法により作製された薄膜と、を含む断熱ガラスユニット。
【請求項65】
断熱ガラスユニットであって、
第1の板ガラスと、
第2の板ガラスと、
前記第1の板ガラスと前記第2の板ガラスを互いに離間した関係に維持するよう前記第1の板ガラスと第2の板ガラスの周囲の回りに設けられたシーラント組立体と、
前記第1又は前記第2の板ガラスの表面に隣接した、請求項50に記載の方法により作製された薄膜と、を含む断熱ガラスユニット。
【請求項66】
断熱ガラスユニットであって、
第1の板ガラスと、
第2の板ガラスと、
前記第1の板ガラスと前記第2の板ガラスを互いに離間した関係に維持するよう前記第1の板ガラスと第2の板ガラスの周囲の回りに設けられたシーラント組立体と、
前記第1又は前記第2の板ガラスの表面に隣接した、請求項51に記載の方法により作製された薄膜と、を含む断熱ガラスユニット。
【請求項67】
断熱ガラスユニットであって、
第1の板ガラスと、
第2の板ガラスと、
前記第1の板ガラスと前記第2の板ガラスを互いに離間した関係に維持するよう前記第1の板ガラスと第2の板ガラスの周囲の回りに設けられたシーラント組立体と、
前記第1又は前記第2の板ガラスの表面に隣接した、請求項52に記載の方法により作製された薄膜と、を含む断熱ガラスユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−520784(P2012−520784A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500963(P2012−500963)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027806
【国際公開番号】WO2010/107998
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(507090421)エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr.,Suite 400,Alpharetta,GA 30022,U.S.A.
【出願人】(508056523)エージーシー ガラス ヨーロッパ エスエー (4)
【Fターム(参考)】