説明

薄膜個片の接合方法

【課題】薄膜個片の接合面の汚染および薄膜個片の支持層からの脱離を抑制すること。
【解決手段】複数の薄膜個片10a〜10dの上面上にそれぞれ支持層20を形成する工程と、第1基板50の下面に設けられた仮固定層40が前記複数の薄膜個片の上面および側面の少なくとも一部に接するように前記複数の薄膜個片を前記仮固定層を介し前記第1基板に仮固定する工程と、前記複数の薄膜個片の下面を第2基板60に接合する工程と、前記支持層および前記仮固定層の少なくとも一方を除去することにより、前記第1基板を前記複数の薄膜個片から剥離する工程と、を含む薄膜個片の接合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜個片の接合方法に関し、例えば、複数の薄膜個片を基板に接合する薄膜個片の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等を基板に接合する技術が開発されている。例えば、非特許文献1には、InGaAsP/InPをシリコン(Si)基板に接合する技術が記載されている。半導体素子等を基板に接合する方法として、基板に複数の薄膜個片を接合する技術が知られている
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】イーシーオーシー 2009、20−24 セプテンバー、2009、ウィーン、オーストリア(ECOC 2009, 20-24September, 2009, Vienna, Austria)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の薄膜個片を基板に接合するには、例えば、複数の薄膜個片の上面を仮固定層等を介し仮の基板に固定し、薄膜個片の下面を基板に接合する方法を用いる。この場合、薄膜個片の膜厚が薄いため、仮固定層が厚いと、薄膜個片の下面(接合面)が仮固定層により汚染されてしまう可能性がある。一方、仮固定層が薄いと、薄膜個片が仮固定層から脱離してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、薄膜個片の接合面の汚染および薄膜個片の支持層からの脱離を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の薄膜個片の上面上にそれぞれ支持層を形成する工程と、第1基板の下面に設けられた仮固定層が前記複数の薄膜個片の上面および側面の少なくとも一部に接するように前記複数の薄膜個片を前記仮固定層を介し前記第1基板に仮固定する工程と、前記複数の薄膜個片の下面を第2基板に接合する工程と、前記支持層および前記仮固定層の少なくとも一方を除去することにより、前記第1基板を前記複数の薄膜個片から剥離する工程と、を含むことを特徴とする薄膜個片の接合方法である。本発明によれば、薄膜個片の接合面の汚染および薄膜個片の支持層からの脱離を抑制することができる。
【0007】
上記構成において、前記複数の薄膜個片の少なくとも一つは膜厚が他の薄膜個片と異なる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記複数の薄膜個片を前記仮固定層を介し前記第1基板に仮固定する工程の前に、前記複数の薄膜個片を第3基板上に配列させる工程を含む構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第3基板の上面の凹凸は、前記第2基板の上面の凹凸に対応している構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記支持層を形成する工程は、第4基板上に配列された前記複数の薄膜個片の少なくとも一つ上に第1支持層を形成する工程と、前記第1支持層上に、前記第1支持層より粘性の高い第2支持層を形成する工程を含む構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記複数の薄膜個片の少なくとも1つは、オーバーハング部を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薄膜個片の接合面の汚染および薄膜個片の支持層からの脱離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)から図1(c)は、比較例に係る薄膜個片の接合方法を示す断面図である。
【図2】図2(a)から図2(c)は、実施例1に係る薄膜個片の接合方法を示す断面図(その1)である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、実施例1に係る薄膜個片の接合方法を示す断面図(その2)である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、実施例1の変形例を示す断面図である。
【図5】図5(a)から図5(c)は、薄膜個片上に支持層を形成する方法を示す断面図(その1)である。
【図6】図6(a)から図6(c)は、薄膜個片上に支持層を形成する方法を示す断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、仮固定層を用いた複数の薄膜個片の接合方法について説明する。図1(a)から図1(c)は、比較例に係る薄膜個片の接合方法を示す断面図である。図1(a)に示すように、基板30上に、複数の薄膜個片10aから10dを配列させる。例えば、薄膜個片10aから10dは膜厚および下面の面積が異なる。また、薄膜個片10dには、オーバーハング部12が設けられている。このオーバーハング部12は、トランジスタのゲート電極の形状を反映したものである。このような構造を有する基板30の表面に対して、下面に仮固定層40が設けられた基板50を押圧する。これにより。薄膜個片10aから10dが仮固定層40に埋め込まれる。この後、紫外線を照射することにより、仮固定層40を硬化させる。
【0015】
図1(b)に示すように、複数の薄膜個片10aから10dを基板30から剥がし、基板60に接合させる(矢印参照)。接合の方法としては、薄膜個片10aから10dの下面および基板60の上面に真空槽中でArイオンを照射して、これらの面を活性化する。その後、薄膜個片10aから10dと基板60とを接合する方法がある。また、薄膜個片10aから10dと基板60とを圧接したまま熱処理を加える方法がある。このように、接合の方法は、適宜採用することができる。図1(c)のように、仮固定層40を溶媒に溶解させることにより、基板50を複数の薄膜個片10aから10dから剥離する(矢印参照)。以上により、基板60上に薄膜個片10aから10dを接合することができる。
【0016】
図1(a)のように、複数の薄膜個片10aから10dは、ピンセット等で取り扱いが難しい程度の厚さである。例えば、複数の薄膜個片10aから10dのうち少なくとも1つの膜厚は数μmから数100μmである。このため、仮固定層40を用い、複数の薄膜個片10aから10dを仮固定するためには、仮固定層40の下面と基板30とのギャップG1を狭くすることになる。このため、仮固定層40の成分により薄膜個片10aから10dの下面が汚染されてしまう可能性がある。一方、ギャップG1を大きくすると、薄くて上面の面積が小さい薄膜個片10cは、仮固定層40に接する面積が小さくなってしまう。このため、薄膜個片10cが仮固定層40から脱離してしまう可能性がある。さらに、薄膜個片10dのように、オーバーハング部12を有する場合、オーバーハング部12下に空洞42が形成される可能性がある。空洞42が形成された場合、その後接合のため真空槽で真空に引いたり熱処理を加えたりする際に、空洞42が破裂する可能性がある。
【0017】
以下の実施例においては、上記問題を解決するため、複数の薄膜個片10aから10dの上面に支持層を設ける。
【実施例1】
【0018】
図2(a)から図3(b)は、実施例1に係る薄膜個片の接合方法を示す断面図である。図2(a)のように、例えばサファイア基板等の基板30(第3基板)上に複数の薄膜個片10aから10dを配列する。複数の薄膜個片10aから10dは、基板30の上面に置かれているだけでもよいし、基板30に吸着されていてもよい。複数の薄膜個片10aから10dを基板30に吸着させる方法としては、例えば真空吸着または静電吸着がある。各薄膜個片10aから10dの上面には支持層20が形成されている。支持層20は少なくとも最も厚い薄膜個片より厚いことが好ましい。支持層20の膜厚は例えば数μmから数100μmとすることができる。薄膜個片10aから10dに形成する支持層20は全て同じ膜厚である必要はなく、適宜、薄膜個片により異なる膜厚をとることもできる。支持層20としては、例えばフォトレジストを用いることができる。支持層20の形成方法については後述する。
【0019】
図2(b)に示すように、例えばサファイア基板等の基板50(第1基板)の下面に紫外線硬化接着剤等の仮固定層40を塗布する。仮固定層40の厚さは、支持層20の膜厚等に応じて適宜設定することができる。例えば20μmとすることができる。基板50を支持層20に押圧する(矢印参照)。これにより、支持層20の一部が仮固定層40に埋もれる。これにより、支持層20の上面の全面及び側面の少なくとも一部が仮固定層40に接する。基板50を介し紫外線を照射することにより、仮固定層40を硬化させる。これにより、仮固定層40を介し複数の薄膜個片10aから10dが基板30に仮固定される。仮固定層40として、例えば熱可塑性の樹脂を用いてもよい。しかしながら、仮固定層40として紫外線硬化接着剤を用いることにより、基板30の押圧および仮固定をいずれも室温で行なうことができる。
【0020】
図2(c)に示すように、基板30を剥離する。複数の薄膜個片10aから10dが基板30上に固定されていない場合は、基板30を外すだけでよい。また、複数の薄膜個片10aから10dが基板30上に吸着されている場合は、吸着力を開放すればよい。
【0021】
図3(a)に示すように、複数の薄膜個片10aから10dの下面を例えばSiC基板である基板60(第2基板)の上面に接合させる。接合方法としては、例えば表面活性化接合法(surface
activation bonding)を用いることができる。例えば、超高真空中において、薄膜個片10aから10dの下面と基板60の上面とにArイオン等を照射する。これにより、表面が活性化する。薄膜個片10aから10dの下面と基板60の上面とを常温において密着させることにより、薄膜個片10aから10dと基板60とが接合する。接合の方法しては、薄膜個片10aから10dと基板60とを圧接したまま熱処理を加える方法等、適宜採用することができる。
【0022】
図3(b)のように、基板50および60を支持層20が可溶な溶媒に湿潤させる。例えば、支持層20がフォトレジストの場合、溶媒としてアセトン等の有機溶媒を用いることができる。仮固定層40が複数の薄膜個片10aから10eまで達していないため、支持層20が溶解することにより、基板50を複数の薄膜個片10aから10dから剥離することができる。基板50の複数の薄膜個片からの剥離は、支持層20および仮固定層40の少なくとも一方を除去することにより行なうことができる。以上により、基板60に複数の薄膜個片10aから10dを接合させることができる。
【0023】
実施例1によれば、図2(b)のように、複数の薄膜個片10aから10dの上面上に支持層20が形成されている。仮固定層40が、複数の薄膜個片10aから10dの上面および側面の少なくとも一部に接するように複数の薄膜個片10aから10dを仮固定する。これにより、仮固定層40の下面と基板30とのギャップG2を大きくできる。よって、仮固定層40の成分により複数の薄膜個片10aから10dの下面が汚染されることを抑制できる。薄くて上面の面積が小さい薄膜個片10cにおいても、仮固定層40に接する支持層20の側面の高さHを大きくできる。このため、支持層20が仮固定層40に接触する面積を大きくできる。よって、複数の薄膜個片10cが仮固定層40から脱離することを抑制できる。
【0024】
複数の薄膜個片10aから10dは全て同じ大きさでもよい。しかしながら、複数の薄膜個片の少なくとも一つは膜厚が他の薄膜個片と異なる場合、図1(a)から図1(d)に示した比較例のように、薄膜個片10aから10dが仮固定層40に埋め込まれる深さが異なってしまう。このため、仮固定層40を全ての薄膜個片10aから10dに合った深さに埋め込むことが難しい。一方、実施例1によれば、支持層20を仮固定層40に埋め込むため、全ての薄膜個片10aから10dを十分に仮固定することができる。
【0025】
また、複数の薄膜個片の少なくとも1つがオーバーハング部12を有する場合、比較例においては、図1(a)のように、薄膜個片10dのオーバーハング部12の下に空洞42が形成される場合がある。一方、実施例1によれば、支持層20により、オーバーハング部12の下を埋め込むことにより、仮固定層40を用い薄膜個片10dのオーバーハング部12の下に空洞が形成されることを抑制することができる。
【0026】
また、実施例1においては、図2(a)のように、複数の薄膜個片10aを仮固定層40を介し基板50に仮固定する工程の前に、複数の薄膜個片10aから10dを基板30上に配列させる。これにより、複数の薄膜個片10aから10dの仮面を同一平面上に配置することができる。よって、図3(a)のように、基板60に複数の薄膜個片10aから10dを接合する際に、複数の薄膜個片10aから10dと基板60を隙間無く接合させることができる。
【0027】
図4(a)および図4(b)は、実施例1の変形例を示す断面図である。図4(a)に示すように、凹凸のある基板30a上に複数の薄膜個片10aから10dを配列させる。その後、実施例1の図2(b)から図2(c)の工程を行なう。図4(b)に示すように、基板30aの凹凸に対応する凹凸を有する基板60aに複数の薄膜個片10aから10dを接合させる。その後、図3(b)の工程を行なう。
【0028】
このように、基板30aの上面の凹凸は、基板60aの上面の凹凸に対応していることが好ましい。これにより、複数の薄膜個片10aから10dと基板60aとを隙間無く接合させることができる。
【0029】
図5(a)から図6(c)は、薄膜個片上に支持層を形成する方法を示す断面図である。薄膜個片として薄膜個片10dを例に説明する。図5(a)に示すように、例えばGaAs基板である基板70(第4基板)上に例えばAlAsからなる犠牲層72を挟み半導体デバイスを形成する。半導体デバイスが薄膜個片10dに対応する。半導体デバイスは、例えばIII−V族化合物半導体を用いた半導体デバイスである。各半導体デバイス間は基板70までのエッチングにより分離されている。
【0030】
図5(b)に示すように、基板70上にフォトレジストを塗布する。例えば、フォトレジストは、粘性の低い液体状のものを滴下し基板70の表面に湿潤したのちスピンコートする方法により塗布する。これにより、フォトレジストからなる塗布層が薄膜個片10d上に形成される。その後プリベークする。これにより、塗布層から第1支持層22が形成される。フォトレジストは粘性が低いため、オーバーハング部12の下が空洞になることを抑制できる。
【0031】
図5(c)に示すように、フォトマスクを用い露光、現像することにより、半導体デバイス(すなわち薄膜個片)毎に第1支持層22を残存させる。このとき、第1支持層22の幅は、半導体デバイスと同じ幅でもよいが、図5(c)のように、半導体デバイスよりやや小さくてもよい。なお、第1支持層22は、フォトレジスト以外の樹脂でもよく、エッチング等により分離してもよい。
【0032】
図6(a)に示すように、第1支持層22上にフィルム状のレジストを貼り付ける。図6(b)に示すように、フォトマスクを用い露光、現像することにより、第1支持層22毎に第2支持層24を残存させる。第2支持層24の幅は、第1支持層22と同じ幅でもよいが、図6(b)のように、第1支持層22と異なっていてもよい。第2支持層24は、フォトレジスト以外の樹脂でもよく、エッチング等により分離してもよい。第1支持層22と第2支持層24とから支持層20が形成される。
【0033】
図6(c)に示すように、基板70を希釈フッ酸中に浸す。AlAsからなる犠牲層が選択的に溶解する。これにより、上面に支持層20が形成された薄膜個片10dが個片化される。図6(c)のように、基板70から薄膜個片を剥離する方法として、犠牲層をエッチングする方法がある。この方法以外にも、基板を選択的にエッチングする方法、基板を研削研磨する方法等を用いることもできる。
【0034】
オーバーハング部12がない場合または第1支持層22で十分な厚さを確保できる場合には、第2支持層24を形成せず第1支持層22を支持層20とすることもできる。
【0035】
しかしながら、支持層20を形成する工程は、基板70上に配列された複数の薄膜個片の少なくとも一つ上に塗布された塗布層から第1支持層22を形成する工程と、第1支持層22上に、塗布層より粘性の高い第2支持層24を形成する工程を含むことが好ましい。粘性の低い塗布層を塗布することにより第1支持層22を形成する。これにより、薄膜個片となるデバイスを埋め込み易くなる。粘性の高い第2支持層24を用いることにより支持層20を厚く形成することができる。
【0036】
実施例においては、薄膜個片の例としてIII-V族化合物半導体デバイスをSiC基板上に接合する例を説明したが、その他デバイスまたは部品を所望の基板に接合することができる。
【0037】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10a−10d 薄膜個片
20 支持層
22 第1支持層
24 第2支持層
30 基板(第3基板)
40 仮固定層
50 基板(第1基板)
60 基板(第2基板)
70 基板(第4基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄膜個片の上面上にそれぞれ支持層を形成する工程と、
第1基板の下面に設けられた仮固定層が前記複数の薄膜個片の上面および側面の少なくとも一部に接するように前記複数の薄膜個片を前記仮固定層を介し前記第1基板に仮固定する工程と、
前記複数の薄膜個片の下面を第2基板に接合する工程と、
前記支持層および前記仮固定層の少なくとも一方を除去することにより、前記第1基板を前記複数の薄膜個片から剥離する工程と、
を含むことを特徴とする薄膜個片の接合方法。
【請求項2】
前記複数の薄膜個片の少なくとも一つは膜厚が他の薄膜個片と異なることを特徴とする請求項1記載の薄膜個片の接合方法。
【請求項3】
前記複数の薄膜個片を前記仮固定層を介し前記第1基板に仮固定する工程の前に、前記複数の薄膜個片を第3基板上に配列させる工程を含むことを特徴とする薄膜個片の接合方法。
【請求項4】
前記第3基板の上面の凹凸は、前記第2基板の上面の凹凸に対応していることを特徴とする請求項3記載の薄膜個片の接合方法。
【請求項5】
前記支持層を形成する工程は、第4基板上に配列された前記複数の薄膜個片の少なくとも一つ上に塗布された塗布層から第1支持層を形成する工程と、前記第1支持層上に、前記塗布層より粘性の高い第2支持層を形成する工程を含むことを特徴とする薄膜個片の接合方法。
【請求項6】
前記複数の薄膜個片の少なくとも1つは、オーバーハング部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の薄膜個片の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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