説明

薄膜太陽電池およびその製造方法

【課題】光電変換効率および信頼性の高い薄膜太陽電池を得ること。
【解決手段】透光性絶縁基板2上に、透明導電膜からなる第1電極層3と、光電変換を行う光電変換層4と、光を反射する導電膜からなる第2電極層5と、をこの順で有する複数の薄膜太陽電池セルが配設されるとともに、隣接する前記薄膜太陽電池セル同士が電気的に直列接続された薄膜太陽電池20であって、前記透明導電膜は、前記光電変換層4側の内径が1μm〜2μmであり、前記光電変換層4側の表面から前記透光性絶縁基板2側に向かって開口径が小さくなるように傾斜した側面を有する凹部B2が分散して形成され、該凹部B2が前記光電変換層4により充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜太陽電池およびその製造方法に関し、特にテクスチャー構造を採用した薄膜太陽電池およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、透明絶縁性基板側から光を入射する薄膜太陽電池における光閉じ込め技術としては、透明絶縁性基板上に形成した透明導電膜表面に凹凸構造を形成する方法が用いられている。この凹凸構造を形成する光閉じこめ技術は、光反射率の低減、光散乱効果により、薄膜太陽電池の光変換効率が向上することが一般的に知られている。詳細に述べると、透明絶縁性基板側から入射してきた光は、凹凸形状を有する透明導電膜と光電変換層との界面で散乱された後に光電変換層に入射するので、光電変換層に概ね斜めに入射する。そして、光電変換層に斜めに光が入射することにより、光電変換層に入射した光の実質的な光路が延びて光の吸収が増大するため、光起電力素子の光電変換特性が向上して出力電流が増加する。
【0003】
従来、凹凸構造を形成する透明導電膜として、酸化スズ(SnO)からなる透明導電膜が広く知られている。一般的に、SnO透明導電膜に形成する凹凸構造は、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により数10〜数100nm径の結晶粒を膜表面に成長させることにより形成される。しかし、このSnO膜表面に良好な凹凸構造を形成するためには、500〜600℃の高温プロセスが必要であり、また1μm程度の膜厚を要することから、製造コストが増大する要因の1つとなっている。
【0004】
このため近年は、プラズマ耐性に優れ資源の豊富さという観点から、SnOに変わる材料として酸化亜鉛(ZnO)が普及しつつある。しかし、透明導電膜としてZnOを用いる場合は、表面に良好な凹凸構造を形成するためには、2μm程度の膜厚を要するという問題があった。
【0005】
そこで、SnO膜のような高温プロセスを実施せずにZnO膜を低温形成で薄膜形成した場合であっても良好な光閉じこめ効果を有する凹凸構造の形成方法として、ガラス基板上にスパッタリング法により透明導電膜を形成し、酸によりエッチングすることで表面に凹凸構造を形成する技術が報告されている。この方法により、太陽電池装置のコスト低減が期待されている。
【0006】
また、薄膜太陽電池用の基板に凹凸をつけるために、透明電極層自体に凹凸を形成するのではなく、ガラス基体の表面に凹凸のある下地層を設け、その上に透明電極層を形成する手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、ガラス基体の上に、平均粒径が0.1〜1.0μmの絶縁性微粒子とバインダーからなる凹凸を有する下地層を形成し、その上に透明電極層を堆積することで、微粒子により微細な凹凸がガラス基板上に形成されていることから、透明電極層自体には特に凹凸を形成する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−243676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した技術には、いつかの問題が残されている。すなわち特許文献1の技術では、ガラス基体上への絶縁性微粒子の分散が不均一になり、例えばガラス基体上に絶縁性微粒子が付着していない領域が発生することで光の吸収量が減少し、出力電流が低下し、基板全体としての薄膜光電変換効率が低下する、という問題があった。
【0009】
また、このような方法でヘイズ率を高く、例えば20%以上にしようとすると、下地層の凹凸を大きくする必要があり、その結果、絶縁性微粒子の粒径を大きくする必要が生じる。しかし、大きな絶縁性微粒子を用いた場合には、ガラス基体上への絶縁性微粒子の分散が不均一になり、例えばガラス基体上に絶縁性微粒子が付いてない領域が発生し、面内でのヘイズ率分布により光の散乱性の不均一が生じ、基板全体としての平均の光電変換効率が低下する、という問題があった。
【0010】
さらに、大きな絶縁性微粒子を用いて大きな凹凸を形成しようとすると、バインダーによる絶縁性微粒子のガラス基体への付着が不十分となり、薄膜太陽電池そのものの信頼性が低下する虞がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光電変換効率および信頼性の高い薄膜太陽電池およびその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる薄膜太陽電池は、透光性絶縁基板上に、透明導電膜からなる第1電極層と、光電変換を行う光電変換層と、光を反射する導電膜からなる第2電極層と、をこの順で有する複数の薄膜太陽電池セルが配設されるとともに、隣接する前記薄膜太陽電池セル同士が電気的に直列接続された薄膜太陽電池であって、前記透明導電膜は、前記光電変換層側の内径が1μm〜2μmであり、前記光電変換層側の表面から前記透光性絶縁基板側に向かって開口径が小さくなるように傾斜した側面を有する凹部が分散して形成され、該凹部が前記光電変換層により充填されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明導電層の面内において均一に凹凸形状を形成でき、広い範囲の波長の光に対する光閉込効果により光吸収量を増大させ、また凹凸の高低差に起因した局所的な電流ロスを減少することより、光電変換効率および信頼性に優れた薄膜太陽電池が実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1−1】図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の概略構成を示す平面図である。
【図1−2】図1−2は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の概略構成を示す断面図である。
【図2−1】図2−1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図2−2】図2−2は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図2−3】図2−3は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図2−4】図2−4は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図2−5】図2−5は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図2−6】図2−6は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図2−7】図2−7は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図2−8】図2−8は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池のパターン開口形成領域の概略構成を示す平面図である。
【図4】図4は、実施例1、比較例の薄膜太陽電池における透明導電膜形成後のヘイズ率を示した特性図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の概略構成を示す断面図である。
【図6−1】図6−1は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図6−2】図6−2は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図6−3】図6−3は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図6−4】図6−4は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図6−5】図6−5は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図6−6】図6−6は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図6−7】図6−7は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池の製造工程を説明するための断面図である。
【図7】図7は、実施例2、比較例の薄膜太陽電池における透明導電膜形成後のヘイズ率を示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる薄膜太陽電池およびその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
【0016】
実施の形態1.
図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池である薄膜太陽電池モジュール(以下、モジュールと呼ぶ)10の概略構成を示す平面図である。図1−2は、モジュール10を構成する薄膜太陽電池セル(以下、セルと呼ぶ場合がある)1の短手向における断面構造を説明するための図であり、図1−1の線分A−A’方向における要部断面図である。
【0017】
図1−1および図1−2に示すように、実施の形態1にかかるモジュール10は、透光性絶縁基板2上に形成された短冊状(矩形状)のセル1を複数備え、これらのセル1が電気的に直列に接続された構造を有する。セル1は、図1−2に示すように透光性絶縁基板2、透光性絶縁基板2上に形成され第1電極層となる透明電極層(透明導電膜)3、透明電極層3上に形成される光電変換層4、光電変換層4上に形成され第2電極層となる裏面電極層5が順次積層された構造を有する。このように構成された本実施の形態にかかるモジュール10はスーパーストレート型の太陽電池である。
【0018】
また、透明電極層3の表面には、テクスチャー構造として微小凹凸B1および該微小凹凸B1よりも径の大きく且つ深さが深い大きい凹部B2を含む凹凸形状が形成されている。すなわち、透明電極層3の表面には、部分的に高低差の異なる凹凸形状(テクスチャー構造)が形成されている。光電変換層4側の大きい凹部B2の直径は、1μm〜2μm程度、深さおよび凹凸の高低差は500nm以下程度である。
【0019】
つぎに、上記のように構成された実施の形態1にかかるモジュール10の製造方法について説明する。図2−1〜図2−8は、実施の形態1にかかるモジュール10の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【0020】
まず、透光性絶縁基板2を用意する。ここでは、透光性絶縁基板2として無アルカリガラス基板を用いて以下説明する。また、透光性絶縁基板2として安価な青板ガラス基板を用いてもよいが、この場合は、透光性絶縁基板2からのアルカリ成分の拡散を防止するためにPCVD法やスパッタリング法などによりSiO膜(屈折率1.4〜1.5)を100nm以下程度形成するのがよい。
【0021】
つぎに、透光性絶縁基板2上に第1の電極層となる透明電極層3として、アルミニウム(Al)を数wt%ドーパントとして含む膜厚1μm程度の酸化亜鉛(ZnO)膜をDCスパッタリング法で形成する(図2−1)。本実施の形態では透明電極層3としてアルミニウム(Al)ドーパントしたZnO膜を形成するが、透明電極層3としてはこれに限定されることなく、ドーパントとしてアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ホウ素(B)、イットリウム(Y)、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)から選択した少なくとも1種類以上の元素を用いたZnO膜またはこれらを積層して形成した透明導電膜であってもよく、光透過性と導電性を有している透明導電膜であればよい。また、ZnO膜以外に、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)の何れかを主成分とする材料からなる膜を使用してもよい。また、上述した例では、スパッタリング法により透明電極層3を形成しているが、真空蒸着法,イオンプレーティング法などの物理的方法や、スプレー法,ディップ法,CVD法などの化学的方法を用いてもよい。
【0022】
次に、この透明電極層3に、2μm以下のホール径のパターンをフォトリソグラフィープロセスにより形成する。フォトリソグラフィープロセスでは、感光性レジストを透明電極層3上に塗布・乾燥した後に、所定のパターンが形成された転写マスクを通して感光性レジストを露光し、現像する。そして、感光性レジストのパターンを加熱硬化させる。これにより、写真製版的にマスクパターンを転写したレジストパターン6を透明電極層3上に形成する(図2−2)。
【0023】
この際、透明電極層3と感光性レジストとの濡れ性が不良であり、感光性レジストのはじきが生じる場合には、塗布前にUVO洗浄あるいは常圧プラズマなどの処理を行うとよい。また、感光性レジストと透明電極層3との密着性が不良であり、感光性レジストの剥がれが生じる場合には、加熱硬化温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりするなどの処理を行うとよい。
【0024】
また、フォトリソグラフィープロセスで形成されるホールパターンは、図2−2、図3に示されるレーザによるパターン開口形成領域C以外に形成する。図3は、実施の形態1にかかる薄膜太陽電池のパターン開口形成領域Cの概略構成を示す平面図である。その理由としてパターン開口形成領域Cでは、レーザによるパターン開口を行った場合に、透明電極層3の膜厚変化に起因して最適レーザ加工条件のズレが発生し、開口不良等の加工不良を引き起こすからである。
【0025】
また、本実施の形態のフォトリソグラフィープロセスでは、露光用の転写マスクとして、例えば直径が1.5μm程度の略円形の穴が0.3個/μm程度の密度で形成された転写マスクを用いる。
【0026】
次に、第1のエッチング工程として、レジストパターン6をマスクとして透明電極層3のエッチングを行ない、透明電極層3の表面に開口3aを形成する(図2−3)。透明電極層3のエッチング方法としては、エッチング液等で処理する化学的方法、透明電極層3の表面にイオンやプラズマ等を照射する物理的方法等の種々の方法が挙げられる。なお、上記方法は、単独で行ってもよく、2種以上の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0027】
本実施の形態では、第1のエッチング工程のエッチング方法として、平行平板型RIE(Reactive on Etching)法によるドライエッチングを行う。エッチングガスとしては、有機系ガス、ハロゲン系ガスを用いることが可能である。透明電極層3の加工深さ(エッチング深さ)は、エッチング時間を調整することにより制御が可能である。
【0028】
また、第1のエッチング工程における透明電極層3のエッチングは、エッチングにより形成される開口3aのパターンエッジがテーパー形状となるようにエッチング条件を調整することが好ましい。すなわち、厚み方向において透明電極層3の表面から透光性絶縁基板2に向かって開口径が小さくなるように傾斜した側面を有するテーパー状の断面を有する開口を形成することが好ましい。これにより、透明電極層3の表面における段差に起因した短絡を防止することができる。ここで、テーパー形状とは、開口3aの断面形状において透明電極層3の表面側(光電変換層4側)が長辺、透光性絶縁基板2側が短辺となる台形状になるようにパターンエッジがエッチングされた形状のことを意味する。
【0029】
このようにして透明電極層3に形成された開口3aの数、大きさ、形状、深さを調整することにより、光電変換層4における光吸収特性に適した太陽光の散乱または反射状態を生じさせることができる。また、これらの条件は、透明電極層3の上に積層する光電変換層4の欠陥密度低減に適した状態にする必要がある。
【0030】
これらの開口条件は、例えば、太陽光スペクトルの短波長から長波長まで十分な光散乱効果を生じさせることができるものが好ましい。具体的には、円柱、円錐、球、半球等、またはこれらの複合形状等が挙げられる。透明電極層3の表面側の開口3aの直径は、1〜2μm程度、開口3aの深さおよび凹凸の高低差は500nm以下程度である。本実施の形態において開口3aを形成した透明電極層3の表面形状を原子間力顕微鏡により測定したところ、透明電極層3の表面側の直径が1〜2μm程度の開口3aが0.3個/μm程度の密度で形成され、開口3aの深さは300nm程度であった。
【0031】
次に、透明電極層3の表面に残存するレジストパターン6を、例えば酸素プラズマ処理や薬液処理により除去する(図2−4)。
【0032】
次に、第2のエッチング工程として、透明電極層3をウエットエッチングして透明電極層3の表面に微小凹凸B1を形成する(図2−5)。詳しくは、透光性絶縁基板2を1wt%の塩酸(HCl)水溶液中に30秒間浸し、その後、透光性絶縁基板2に対して1分間以上の純水洗浄を行い、乾燥する。これにより、透明電極層3の表面には、第1のエッチング工程で形成された開口3a以外の部分に微小凹凸B1が形成される。また、開口3a内もエッチングがなされ、開口3aは微小凹凸B1よりも径の大きく且つ深さが深い大きい凹部B2とされる。このとき、大きい凹部B2の透明電極層3の表面側の直径は1μm〜2μm程度、深さおよび凹凸の高低差は500nm以下程度である。
【0033】
ここで、大きい凹部B2の透明電極層3の表面側の直径が1μm未満の場合、生産技術的に安定して形成できない虞がある。また、直径が2μm以上の場合、有効な光散乱効果を得ることができない虞、特に低波長域の光の散乱効果が低下する虞がある。また、透明電極層3と光電変換層4との密着性が低下する虞がある。したがって、大きい凹部B2の直径は、1μm〜2μm程度とすることにより、確実に有効な光散乱効果を得ることができ、また信頼性の高い薄膜太陽電池を得ることができる。
【0034】
この場合の微小凹凸B1における高低差は、10〜200nm程度のものが好ましい。ここで、微小凹凸B1における高低差とは、微小凹凸B1の凸部の平均高さと、微小凹凸B1の凹部の平均高さとの高低差である。本実施の形態で形成した微小凹凸B1の表面形状を原子間力顕微鏡により測定したところ、透明電極層3の表面の微小凹凸B1の平均高さは200nm程度であった。
【0035】
この第2のエッチング工程により形成された微小凹凸B1は、透明電極層3上に積層するシリコンを材料とする光電変換層4との密着力向上により、透明電極層3と光電変換層4との間の膜はがれを抑制することができる。また、透明電極層3と光電変換層4との界面における反射光ロスも低減できる。透明電極層3と光電変換層4との間の膜はがれが生じると、セルが直列接続する集積型太陽電池構造において直列抵抗を増加させ、また、光電変換層4の受光面積が減少することから、Jscの値も低下させる原因となる。
【0036】
次に、透明電極層3の一部を透光性絶縁基板2の短手方向と略平行な方向のストライプ状に切断・除去して、透明電極層3を短冊状にパターニングし、複数の透明電極層3に分離する(図2−6)。透明電極層3のパターニングは、レーザスクライブ法により、透光性絶縁基板2の短手方向と略平行な方向に延在して透光性絶縁基板2に達するストライプ状の第1の溝D1を形成することで行う。なお、このように透光性絶縁基板2上に基板面内で互いに分離された複数の透明電極層3を得るには、写真製版などで形成したレジストマスクを用いてエッチングする方法や、メタルマスクを用いた蒸着法などの方法でも可能である。
【0037】
次に、透明電極層3上に例えばPIN接合を有する光電変換層4をプラズマCVD法により形成する。本実施の形態では、光電変換層4として、光電変換層4側からp型の微結晶シリコン膜(μc−Si膜)、i型の微結晶シリコン膜(μc−Si膜)、n型の微結晶シリコン膜(μc−Si膜)を順次積層形成する。このようにして形成された光電変換層4に、透明電極層3と同様にレーザスクライブによってパターニングを施す(図2−7)。
【0038】
すなわち、光電変換層4の一部を透光性絶縁基板2の短手方向と略平行な方向のストライプ状に切断・除去して、光電変換層4を短冊状にパターニングし、分離する。光電変換層4のパターニングは、レーザスクライブ法により、第1の溝D1と異なる箇所に、透光性絶縁基板2の短手方向と略平行な方向に延在して透明電極層3に達するストライプ状の第2の溝D2を形成することで行う。第2の溝D2の形成後、第2の溝D2内に付着している飛散物を高圧水洗浄、メガソニック洗浄、あるいはブラシ洗浄により除去する。
【0039】
次に、光電変換層4上および第2の溝D2内に、第2の電極層となる裏面電極層5をスパッタリング法により形成する。本実施の形態では、膜厚200nmの純銀または銀合金(Ag Alloy)膜を形成する。また、裏面電極層5の成膜方法として、CVD法やスプレー法などの他の成膜方法を用いてもよい。なお、光電変換層4のシリコンへの金属拡散を防止するために、裏面電極層5と光電変換層4との間に、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等を主成分とする材料からなる膜の酸化物を設け留ことが好ましい。
【0040】
裏面電極層5の形成後、裏面電極層5および光電変換層4の一部を透光性絶縁基板2の短手方向と略平行な方向のストライプ状に切断・除去して第1の溝D1および第2の溝D2とは異なる箇所に透明電極層3に達するストライプ状の第3の溝D3を形成し、短冊状にパターニングして複数のセル1に分離する(図2−8)。
【0041】
なお、反射率の高い裏面電極層5にレーザを直接吸収させるのは困難なので、光電変換層4にレーザ光エネルギーを吸収させて、半導体層とともに裏面電極層5を局所的に吹き飛ばすことによって複数の単位素子(発電領域)、すなわち複数のセル1に対応させて分離される。以上により、図1−1、図1−2に示すようなセル1を有するモジュール10が完成する。
【0042】
上記のようにして作製した微結晶シリコン薄膜太陽電池を実施例1の薄膜太陽電池とする。また、比較例として、透光性絶縁基板2に透明電極層3を形成した後、ウエットエッチングにより該透明電極層3の表面に凹凸形状を形成したこと以外、上記と同様にして微結晶シリコン薄膜太陽電池を作製した。この微結晶シリコン薄膜太陽電池を比較例の薄膜太陽電池とする。
【0043】
そして、これらの微結晶シリコン薄膜太陽電池に対して、ソーラーシミュレーターを用いてそれぞれAM(エア・マス)=1.5、100mW/cmの光を透光性絶縁基板2側から入射し、25℃で短絡電流(mA/cm)を測定して、太陽電池としての特性を評価した。その結果、比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池の短絡電流が20.0mA/cmであるのに対して、実施例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池の短絡電流は23.2mA/cmであり、実施例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池は、比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池に比べて短絡電流(mA/cm)が略15%以上も改善されていることが認められる。
【0044】
すなわち、透光性絶縁基板2側から入射してきた光は、微小凹凸B1および大きい凹部B2を有する透明電極層3と光電変換層4との界面で散乱されて光電変換層4に入射するため、光電変換層4に概ね斜めに入射する。そして、光電変換層4に斜めに光が入射することにより、光の実質的な光路が延びて光の吸収が増大するため、薄膜太陽電池の光電変換特性が向上して出力電流が増加する。なお、上記においては、光電変換層4に結晶質シリコンが使用されていたが、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質シリコンカーバイド等の非晶質シリコン系の半導体と、これらの非晶質シリコンと結晶質シリコンを積層させたタンデム型の薄膜太陽電池とすることもでき、この場合も同様の効果が得られる。
【0045】
図4は、実施例1、比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池における透明電極層3の形成後のヘイズ率(拡散透過率/全光透過率×100)を示した特性図である。ここでヘイズ率とは、光の拡散する度合いを表す数値である。図4よりわかるように、実施例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池の透明電極層3は、波長が長くなってもヘイズ率の低下が少なく、光の散乱効果の減少が少ない。一方、図4よりわかるように、比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池の透明電極層では、波長が長くなるにつれてヘイズ率が大きく減少し、光の散乱効果の減少が大きい。
【0046】
実施例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池では、膜厚と同等以上の直径を有する大きいサイズの凹部、例えば直径1〜2μm程度の大きい凹部B2が透明電極層3内に均一に分散されて形成されている。また、特にその大きい凹部B2の直径が1μm〜2μmで穴の断面がテーパー形状となっているので、大きい凹部B2の底部(透光性絶縁基板2側)の直径は0.5μm〜1.5μm程度になる。したがって、このサイズと同程度の波長の光が通過する際に、散乱や回折を生じる効果が大きくなったものと思われる。その結果、太陽光うちの比較的長い波長0.5μm〜1.5μmの光の光電変換の効率が向上する。
【0047】
すなわち、実施例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池では、比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池では発電に寄与していない太陽光を有効に使用して発電を行うことが可能となり、変換効率の向上が図られた薄膜太陽電池が実現されていると言える。
【0048】
上述した実施の形態1によれば、透明電極層3の表面に微小凹凸B1および該微小凹凸B1よりも径の大きく且つ深さが深い大きい凹部B2を含む凹凸形状(テクスチャー構造)が形成されているため、良好な光閉じこめ効果を有するとともに光散乱用のテクスチャー構造に起因した信頼性、光電変換特性の低下が防止され、信頼性、光電変換特性に優れ、長期使用の可能な薄膜太陽電池が実現される。
【0049】
また、実施の形態1によれば、透明電極層3の面内において均一に凹凸形状を形成でき、光の散乱性の不均一を防止して光電変換効率の低下を防止できる。また、微小凹凸B1と比べて径の大きい凹部B2を形成することにより、広い範囲の波長の光に対する光閉込効果により光吸収量を増大させて、光電変換効率に優れた薄膜太陽電池が実現できる。また、大きい凹部B2の光電変換層4側の直径を1μm〜2μm程度とすることにより、確実に有効な光散乱効果を得ることができ、また信頼性の高い薄膜太陽電池を得ることができる。そして、大きい凹部B2の深さを調整することにより、凹凸の高低差に起因した局所的な電流ロスを減少させて、光電変換効率および信頼性に優れた薄膜太陽電池が実現できる。
【0050】
また、実施の形態1によれば、所望の分布密度で大きい凹部B2の形成が可能となり、例えば、ファトリソグラフィプロセスで開口3aを形成する際に概ね均一な分布密度とすると、光吸収特性が面内で均一な薄膜太陽電池を容易に再現良く形成することができる。
【0051】
なお、上記においては、大きい凹部B2の形状を略円形としたが大きい凹部B2の形状は円形でなくてもよく、四角形等でもよい。また、その内径は上記と同様に1μm〜2μmとされ、底部の直径は0.5μm〜1.5μm程度とされる。これにより、上述したような大きい凹部B2の形状が略円形である場合と同様な効果がある。また、その際に大きい凹部B2の深さ(開口面から最も深い穴の底部までの高さ)は、透明電極層3の平均厚さ(大きい凹部B2が形成されていない領域の厚みを平均した厚さ)に対して30%以上とすると、本発明の効果が顕著となる。
【0052】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2にかかる薄膜太陽電池である薄膜太陽電池モジュール(以下、モジュールと呼ぶ)20を構成する薄膜太陽電池セル(以下、セルと呼ぶ場合がある)21の短手向における断面構造を説明するための図であり、図1−1の線分A−A’方向における要部断面図である。なお、モジュール20の基本的な構造は、実施の形態1にかかるモジュール10と同様であり、図5においてはモジュール10と同じ部材については同じ符号を付してある。
【0053】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に透明電極層3の表面に、微小凹凸に比べて径の大きい凹部を形成するが、この径の大きい凹部に透明電極層に比べて光透過性の高い透明樹脂を充填する場合について説明する。すなわち、フォトリソグラフィー工程とエッチング工程で形成した径の大きい凹部に透明樹脂を埋め込む場合について説明する。
【0054】
透明電極層3に比べて光透過性の高い透明樹脂を用いることで、透明電極層3による光吸収ロスを低減させることが可能となる。すなわち、例えば図1−2に示した実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の場合は、大きい凹部B2と透光性絶縁基板2との間には透明電極層3が存在する。この場合、透明電極層3による光吸収ロスが発生し、光電変換層4への入射光量の低減が発生する。これは、光電変換効率の低下につながる。
【0055】
一方、実施の形態2にかかるモジュール20では、実施の形態1のモジュール10と同様に、透明電極層3の表面に微小凹凸B3と、該微小凹凸B3よりも径の大きい凹部B4とが形成されている。これにより、実施の形態2にかかるモジュール20では、実施の形態1のモジュール10と同様に、透明電極層3の面内において均一に凹凸形状を形成でき、広い範囲の波長の光に対する光閉込効果により光吸収量を増大させ、また凹凸の高低差に起因した局所的な電流ロスを減少することより、光電変換効率および信頼性に優れた薄膜太陽電池が実現できる、という効果を有する。
【0056】
さらに、実施の形態2にかかるモジュール20では、径の大きい凹部B4の内部に、透明電極層3に比べて光透過性の高い透明樹脂層21が充填されている。これにより、モジュール10のように、大きい凹部B2と透光性絶縁基板2との間には透明電極層3が存在する場合と比べて、透明電極層3による光吸収ロスを抑制し、光電変換層4への入射光量を増加させることができ、さらに光電変換効率を向上させることができる。このような透明樹脂層21は、透明電極層3の面積の30%以上の領域に充填されることにより、光電変換効率の向上効果がより顕著となる。
【0057】
また、透明樹脂層21は、透光性絶縁基板2の屈折率または透光性絶縁基板2と透明電極層3との間に形成される中間層(例えば透光性絶縁基板2として青板ガラス基板を用いた場合に該青板ガラス基板の表面に形成されるSiO膜(屈折率1.4〜1.5)など)の屈折率と、透明電極層3の屈折率との間の値の屈折率を有することが好ましい。これにより、透明樹脂層21における光の反射ロスを低減することができる。このような例として、透光性絶縁基板2の屈折率または透光性絶縁基板2と透明電極層3との間に形成される中間層の屈折率が1.4〜1.5であり、透明電極層3の屈折率が1.9〜2.0であり、透明樹脂層21の屈折率が1.5〜2.0であるパターンが挙げられる。
【0058】
また、径の大きい凹部B4内、透明樹脂層21上および透明電極層3上には、連続した透明導電層22が形成されている。この透明導電層22を備えることにより、径の大きい凹部B4内は透明電極層3と電気的に接合され、実行面積の低減による出力電流の低下を抑制することができる。
【0059】
つぎに、上記のように構成された実施の形態2にかかるモジュール20の製造方法について説明する。図6−1〜図6−7は、実施の形態2にかかるモジュール20の製造工程の一例を説明するための断面図である。
【0060】
まず、透光性絶縁基板2を用意する。ここでは、実施の形態1の場合と同様に、透光性絶縁基板2として無アルカリガラス基板を用いて以下説明する。また、透光性絶縁基板2として安価な青板ガラス基板を用いてもよいが、この場合は、透光性絶縁基板2からのアルカリ成分の拡散を防止するためにPCVD法やスパッタリング法などによりSiO膜(屈折率1.4〜1.5)を100nm以下程度形成するのがよい。
【0061】
つぎに、実施の形態1の場合と同様に、透光性絶縁基板2上に第1の電極層となる透明電極層3として、アルミニウム(Al)を数wt%ドーパントとして含む膜厚1μm程度の酸化亜鉛(ZnO)膜をDCスパッタリング法で形成する。
【0062】
次に、実施の形態1の場合と同様に、この透明電極層3に、2μm以下のホール径のパターンをフォトリソグラフィープロセスにより形成する。フォトリソグラフィープロセスでは、感光性レジストを透明電極層3上に塗布・乾燥した後に、所定のパターンが形成された転写マスクを通して感光性レジストを露光し、現像する。そして、感光性レジストのパターンを加熱硬化させる。これにより、写真製版的にマスクパターンを転写したレジストパターン16を透明電極層3上に形成する(図6−1)。
【0063】
また、フォトリソグラフィープロセスで形成されるホールパターンは、実施の形態1の場合と同様に、レーザによるパターン開口形成領域以外に形成する。また、本実施の形態のフォトリソグラフィープロセスでは、露光用の転写マスクとして、例えば直径が1.5μm程度の略円形の穴が0.3個/μm程度の密度で形成された転写マスクを用いる。
【0064】
次に、第1のエッチング工程として、レジストパターン16をマスクとして透明電極層3のエッチングを行ない、透光性絶縁基板2の表面に達する開口13aを透明電極層3に形成する(図6−1)。透明電極層3のエッチング方法としては、エッチング液等で処理する化学的方法、透明電極層3の表面にイオンやプラズマ等を照射する物理的方法等の種々の方法が挙げられる。なお、上記方法は、単独で行ってもよく、2種以上の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0065】
本実施の形態では、第1のエッチング工程のエッチング方法として、平行平板型RIE(Reactive on Etching)法によるドライエッチングを行う。エッチングガスとしては、有機系ガス、ハロゲン系ガスを用いることが可能である。ここで、エッチング時間は、レジストパターン16に開口された穴の下部の透明電極層3が無くなる時点とする。これにより、透光性絶縁基板2の表面まで達する開口13aが形成される。
【0066】
開口13aは、例えば直径1μm〜2μm程度とされ、穴の深さは透明電極層3の厚みと同じとなる。本実施の形態では、直径1.5μm程度の開口13aが、0.1〜0.3個/μm程度の密度で形成され、開口13aの深さは透明電極層3の厚みと同じ1μm程度となる。
【0067】
エッチングにより開口13aを形成する際、エッチング時間を確認する方法として、エッチングガスのラジカルの消費割合をプラズマ発光強度変化から検出して求める方法を用いることができる。また、透明電極層3のエッチングは、エッチングにより形成される開口13aのパターンエッジがテーパー形状となるようにエッチング条件を調整することが好ましい。
【0068】
次に、透明電極層3の表面に残存するレジストパターン16を、例えば酸素プラズマ処理や薬液処理により除去した後、第2のエッチング工程として、透明電極層3をウエットエッチングして透明電極層3の表面に微小凹凸B3を形成する(図6−2)。詳しくは、透光性絶縁基板2を1wt%の塩酸(HCl)水溶液中に30秒間浸し、その後、透光性絶縁基板2に対して1分間以上の純水洗浄を行い、乾燥する。これにより、透明電極層3の表面には、第1のエッチング工程で形成された開口13a以外の部分に微小凹凸B3が形成される。また、開口13a内もエッチングがなされ、開口13aは微小凹凸B3よりも深さが深く且つ径の大きい凹部B4とされる。このとき、径の大きい凹部B4の直径は1〜2μm程度であり、本実施の形態では、直径1.5μm程度である。
【0069】
なお、本実施の形態では、第1のエッチング工程におけるエッチング時間を、レジストパターン16に開口された穴の下部の透明電極層3が無くなる間での時間としたが、第2のエッチング工程における透明電極層3のエッチング量分の膜厚を残すようにエッチング時間を調整してもよい。その場合、第1のエッチング時間の短縮が可能となる。
【0070】
次に、透明電極層3上および径の大きい凹部B4内に、ポジ型の感光性樹脂膜21aを例えば1.5μmの膜厚に形成する(図6−3)。感光性樹脂膜21aには、透明電極層3に比べて光透過性の高いものを使用する。そして、例えば100℃程度で焼成した後、感光性樹脂膜21aの膜面側から該感光性樹脂膜21aに対して光照射(露光処理)を行う。
【0071】
照射する光エネルギーとしては、例えば波長が200nm〜500nm程度の紫外光および可視光を用いる。具体的には、ステッパー等の転写装置により、超高圧水銀橙の輝線スペクトルのうち、g線(波長436nm)、i(波長365nm)の混合線を使用する。そして、感光性樹脂膜21aに対して化学反応プロセス(現像処理)として有機アルカリ溶剤処理および水洗処理を行った後、例えば250℃で焼成する。これにより、径の大きい凹部B4内に透明電極層3に比べて光透過性の高い透明樹脂層21が埋め込まれた状態とすることができる(図6−4)。
【0072】
この場合、感光性樹脂膜21aに照射する光エネルギーの露光量の制御により、最終的に残存させる感光性樹脂膜21aの膜厚を容易に制御することができる。また、感光性樹脂膜21aにはネガ型の感光性樹脂を用いてもよく、その場合は透光性絶縁基板2側から該ネガ型の感光性樹脂に、テーパー形状の径の大きい凹部B4を有する透明電極層3をマスクとして光照射(露光処理)を行うことが望ましい。
【0073】
例えば、穴内に残る透明樹脂層21の厚みを径の大きい凹部B4の深さの半分程度にすると、径の大きい凹部B4による段差が上部に形成される膜に対して影響が小さくなる。径の大きい凹部B4の深さの80%以上とするとさらに望ましい。透明樹脂層21は透明電極層3に形成された径の大きい凹部B4内に充填されている。透明樹脂層21が充填された後の径の大きい凹部B4aは、例えば透明電極層3の表面側の直径が1μm〜2μmに対して、深さがその半分〜同等程度であり、穴の側面積が穴の開口面積に対して同等以上である。このため、透明樹脂層21と透明電極層3との密着面積が大きくなり、透明樹脂層21が剥離しにくい。
【0074】
次に、径の大きい凹部B4(B4a)内、透明樹脂層21上および透明電極層3上に、連続した透明導電層22として例えばアルミニウム(Al)ドーパントした酸化亜鉛(ZnO)膜を100nm以下程度の膜厚で形成する(図6−5)。ここでは、透明導電層22としてアルミニウム(Al)ドーパントしたZnO膜を用いるが、透明導電層22の材料はこれに限定されることなく、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ホウ素(B)、イットリウム(Y)、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)から選択した少なくとも1種類以上の元素を用いた酸化物または、これらの化合物や積層して形成した透明導電層であってもよく、光透過性と導電性とを有している透明導電膜であればよい。この透明導電層22を形成することにより、径の大きい凹部B4内は透明電極層3と電気的に接合され、実行面積の低減による出力電流の低下を抑制することができる。
【0075】
次に、実施の形態1の場合と同様に、透光性絶縁基板2の短手方向と略平行な方向に延在して透光性絶縁基板2に達するストライプ状の第1の溝D1を形成して透明電極層3を短冊状にパターニングする(図6−6)。次に、実施の形態1の場合と同様に、微結晶シリコンからなる光電変換層4を形成し、第1の溝D1と異なる箇所に、透光性絶縁基板2の短手方向と略平行な方向に延在して透明電極層3に達するストライプ状の第2の溝D2を形成して光電変換層4を短冊状にパターニング。そして、実施の形態1の場合と同様に、裏面電極層5を形成し、第1の溝D1および第2の溝D2とは異なる箇所に透明電極層3に達するストライプ状の第3の溝D3を形成し、短冊状にパターニングして複数のセル1に分離する(図6−7)。以上により、図5に示すようなモジュール20が完成する。
【0076】
上記のようにして作製した微結晶シリコン薄膜太陽電池を実施例2の薄膜太陽電池とする。そして、実施例2の微結晶シリコン薄膜太陽電池に対して、ソーラーシミュレーターを用いてそれぞれAM(エア・マス)=1.5、100mW/cmの光を透光性絶縁基板2側から入射し、25℃で短絡電流(mA/cm)を測定して、太陽電池としての特性を評価した。その結果、実施例1の微結晶シリコン薄膜太陽電池と同等の良好な短絡電流が得られることが分かった。
【0077】
図7は、実施例2、実施の形態1で作製した比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池における透明電極層3の形成後の光透過率を示した特性図である。図7よりわかるように、実施例2の微結晶シリコン薄膜太陽電池の透明電極層3は、全波長域において光透過率が増加している。したがって、実施例2の微結晶シリコン薄膜太陽電池では、比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池の透明電極層に比べて光吸収の少ない透明電極層が実現されていることが分かる。
【0078】
すなわち、実施例2の微結晶シリコン薄膜太陽電池では、比較例の微結晶シリコン薄膜太陽電池では発電に寄与していない太陽光、特に短波長域の太陽光を有効に使用して発電を行うことが可能となり、変換効率の向上が図られた薄膜太陽電池が実現されていると言える。
【0079】
上述した実施の形態2によれば、実施の形態1の場合と同様に、透明電極層3の表面に微小凹凸B3および該微小凹凸B3よりも深さが深く且つ径の大きい凹部B4を含む凹凸形状(テクスチャー構造)が形成されているため、良好な光閉じこめ効果を有するとともに光散乱用のテクスチャー構造に起因した信頼性、光電変換特性の低下が防止され、信頼性、光電変換特性に優れ、長期使用の可能な薄膜太陽電池が実現される。
【0080】
また、実施の形態2によれば、透明電極層3の面内において均一に凹凸形状を形成でき、光の散乱性の不均一を防止して光電変換効率の低下を防止できる。また、微小凹凸B3と比べて径の大きい凹部B4を形成することにより、広い範囲の波長の光に対する光閉込効果により光吸収量を増大させて、光電変換効率に優れた薄膜太陽電池が実現できる。また、大きい凹部B4の光電変換層4側の直径を1μm〜2μm程度とすることにより、確実に有効な光散乱効果を得ることができ、また信頼性の高い薄膜太陽電池を得ることができる。
【0081】
さらに、実施の形態2では、径の大きい凹部B4の一部を、透明電極層3に比べて光透過性の高い透明樹脂層21で埋め込む。これにより、モジュール10のように、大きい凹部B2と透光性絶縁基板2との間には透明電極層3が存在する場合と比べて、透明電極層3による光吸収ロスを抑制し、光電変換層4への入射光量を増加させることができ、さらに光電変換効率を向上させることができる。
【0082】
なお、上記においては、光電変換層4に結晶質シリコンが使用されていたが、光電変換層4は、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質シリコンカーバイド等の非晶質シリコン系の半導体、これらの非晶質シリコン系の半導体と結晶質シリコンを積層させたタンデム型の薄膜太陽電池とすることもでき、この場合も同様の効果が得られる。
【0083】
また、上記においては透明電極層3の光電変換層4側の表面から透光性絶縁基板2まで達する径の大きい凹部B4の底部に透明樹脂層21を埋め込まれている場合について説明したが、径の大きい凹部B4は実施の形態1の凹部B2のように透光性絶縁基板2まで達しない形態とすることも可能である。
【0084】
また、上記においては、透明電極層3の表面に微小凹凸B3を形成した後に、径の大きい凹部B4内に透明樹脂層21を充填したが、透明樹脂層21を充填した後に微小凹凸B3を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかる薄膜太陽電池は、テクスチャー構造を採用した薄膜太陽電池において光電変換効率および信頼性の高い薄膜太陽電池の実現に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 セル
2 透光性絶縁基板
3a 開口
3 透明電極層
4 光電変換層
5 裏面電極層
6 レジストパターン
10 薄膜太陽電池モジュール(モジュール)
13a 開口
16 レジストパターン
20 薄膜太陽電池モジュール(モジュール)
21 透明樹脂層
21a 感光性樹脂膜
22 透明導電層
B1 微小凹凸
B2 大きい凹部
B3 微小凹凸
B4 径の大きい凹部
D1 第1の溝
D2 第2の溝
D3 第3の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性絶縁基板上に、透明導電膜からなる第1電極層と、光電変換を行う光電変換層と、光を反射する導電膜からなる第2電極層と、をこの順で有する複数の薄膜太陽電池セルが配設されるとともに、隣接する前記薄膜太陽電池セル同士が電気的に直列接続された薄膜太陽電池であって、
前記透明導電膜は、前記光電変換層側の内径が1μm〜2μmであり、前記光電変換層側の表面から前記透光性絶縁基板側に向かって開口径が小さくなるように傾斜した側面を有する凹部が分散して形成され、該凹部が前記光電変換層により充填されていること、
を特徴とする薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記透明導電膜は、前記凹部の開口径よりも微細な凹凸形状を有する微細凹凸を前記光電変換層側の表面に有すること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池。
【請求項3】
前記凹部の深さが、前記透明導電膜の平均膜厚の30%以上であること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池。
【請求項4】
前記凹部の前記透光性絶縁基板側の内部に、前記透明導電膜よりも光透過性の高い透明樹脂層が充填されていること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池。
【請求項5】
前記透明樹脂層は、前記透明導電膜の面積の30%以上の領域に充填されていること、
を特徴とする請求項4に記載の薄膜太陽電池。
【請求項6】
前記透明樹脂層が、前記透光性絶縁基板の屈折率または前記透光性絶縁基板と前記透明導電膜との間に形成される中間層の屈折率と、前記透明導電膜の屈折率との間の値の屈折率を有すること、
を特徴とする請求項4に記載の薄膜太陽電池。
【請求項7】
前記透光性絶縁基板の屈折率または前記透光性絶縁基板と前記透明導電膜との間に形成される中間層の屈折率が1.4〜1.5であり、
前記透明導電膜の屈折率が1.9〜2.0であり、
前記透明樹脂層の屈折率が1.5〜2.0であること、
を特徴とする請求項6に記載の薄膜太陽電池。
【請求項8】
透光性絶縁基板上に、透明導電膜からなる第1電極層と、光電変換を行う光電変換層と、光を反射する導電膜からなる第2電極層と、をこの順で有する複数の薄膜太陽電池セルが配設されるとともに、隣接する前記薄膜太陽電池セル同士が電気的に直列接続された薄膜太陽電池の製造方法であって、
前記第1電極層を形成する工程は、
前記透光性絶縁基板上に前記透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程と、
前記透明導電膜の表面側の内径が1μm〜2μmであり、前記透明導電膜の表面から前記透光性絶縁基板側に向かって開口径が小さくなるように傾斜した側面を有する凹部を前記透明導電膜に形成する第1エッチングを前記透明導電膜に対して行う第1エッチング工程と、
前記凹部の開口径よりも微細な凹凸形状を有する微細凹凸を前記透明導電膜の表面に形成する第2エッチングを前記透明導電膜に対して行う第2エッチング工程と、
を含むことを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記第1エッチング工程後、第2エッチング工程の前後において、前記凹部の前記透光性絶縁基板側の内部に、前記透明導電膜よりも光透過性の高い透明樹脂層を充填する透明樹脂層形成工程を有すること、
を特徴とする請求項8に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記透明樹脂層上を含む前記凹部の内部および前記透明導電膜上に、透明導電膜からなる接合層を形成する工程を有すること、
を特徴とする請求項9に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記透明樹脂層形成工程では、
前記前記凹部の内部および前記透明導電膜上にポジ型の感光性を有する有機物材料膜を形成し、前記有機物材料膜に対して前記有機物材料膜の表面側から光を照射した後に現像処理を行って前記透明導電膜上の前記有機物材料膜を除去すること、
を特徴とする請求項9に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記第1エッチング工程では、前記凹部の深さを前記透明導電膜の平均膜厚の30%以上とすること、
を特徴とする請求項8に記載の薄膜太陽電池の製造方法。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図2−4】
image rotate

【図2−5】
image rotate

【図2−6】
image rotate

【図2−7】
image rotate

【図2−8】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図6−4】
image rotate

【図6−5】
image rotate

【図6−6】
image rotate

【図6−7】
image rotate

【図7】
image rotate