説明

薄膜材料の結晶子径測定方法、測定対象試料、及び測定対象試料の製造方法

【課題】X線回折測定により薄膜材料の結晶子径を簡易且つ高精度に測定する薄膜材料の結晶子径測定方法、薄膜に対するX線回折測定を行うための測定対象試料、及びこの測定対象試料の製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム上に薄膜が形成されている被検試料を10枚積層させ、X線が入射する側から数えて第1番目の被検試料1Jと第2番目の被検試料1Iとの間に標準粉末試料を仕込み、これを測定対象試料とする。この測定対象試料に対して透過法によるX線回折測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム上に形成されている薄膜を構成する薄膜材料の結晶子径をX線回折により測定する薄膜材料の結晶子径測定方法、薄膜に対するX線回折測定を行うための測定対象試料、及びこの測定対象試料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品の構成部材として樹脂フィルム上に金属薄膜が形成されている基板が広く使用されている。このような基板に対しては、通常、基板の電気的特性、機械的特性等と金属薄膜の結晶情報とを相関させた品質管理が行われている。
【0003】
結晶情報の一つである結晶子径は、通常、X線回折装置を用いて回折プロファイルを測定することにより測定されるが、標準試料を用いた補正が必要となる。
【0004】
被検試料が粉末試料である場合には、被検試料に標準粉末試料を混合させて内部標準とし、反射法により被検試料及び標準粉末試料の回折プロファイルを測定する方法がある。例えば特許文献1には、多孔質半導体に内部標準として高純度シリコン標準粉末試料を添加し反射法により測定することが記載されている。
【0005】
一方、被検試料が薄膜試料である場合には、反射法を採用する方法、透過法を採用する方法の何れも行われているが、標準粉末試料の具体的な取り扱いについては明確にされていない。例えば特許文献2には、シリコン単結晶の標準試料を内部標準とし、厚さ1mmの樹脂フィルムを反射法により測定する方法が開示されているが、その具体的な手法については開示されていない。また、特許文献3には、シリコン標準粉末試料を使用し、ポリイミドフィルムを透過法によって測定する方法が開示されているが、シリコン標準粉末試料が内部標準、外部標準の何れとして使用されたか等の具体的な手法については開示されていない。
【0006】
このように、被検試料が粉末試料である場合には、被検試料に標準粉末試料を混合して内部標準とし、反射法によりX線回折測定を行う手法が確立されているが、被検試料が薄膜試料である場合には、標準粉末試料をどのように使用するかについては明確にされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2008/007448号公報
【特許文献2】特公平1−7579号公報
【特許文献3】特開2004−217785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決しようとするものであり、フィルム上に形成されている薄膜を構成する薄膜材料の結晶子径をX線回折測定により簡易且つ高精度に測定する薄膜材料の結晶子径測定方法、薄膜に対するX線回折測定を行うための測定対象試料、及びこの測定対象試料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明者らは、上述の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、薄膜を有する被検試料を複数枚積層し、X線回折測定によって薄膜材料の結晶子径を簡易且つ高精度に測定する方法を見出した。
【0010】
すなわち、本発明に係る薄膜材料の結晶子径測定方法は、薄膜に対するX線回折測定により該薄膜を構成する薄膜材料の結晶子径を測定する薄膜材料の結晶子径測定方法であって、フィルム上に前記薄膜が形成されている被検試料が複数枚積層されており、該複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の該被検試料間に標準粉末試料が挟み込まれてなる測定対象試料に対して透過法によるX線回折測定を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る測定対象試料は、薄膜に対するX線回折測定を行うための測定対象試料であって、フィルム上に前記薄膜が形成されている被検試料が複数枚積層されており、該複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の該被検試料間に標準粉末試料が挟み込まれてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る測定対象試料の製造方法は、薄膜に対するX線回折測定を行うための測定対象試料の製造方法であって、フィルム上に前記薄膜が形成されている被検試料を複数枚積層し、該複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の該被検試料間に標準粉末試料を挟み込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルム上に薄膜が形成されている被検試料が複数枚積層されており、該複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の被検試料間に標準粉末試料が挟み込まれてなる測定対象試料に対して透過法によるX線回折測定を行うことにより、薄膜材料の結晶子径を簡易且つ高精度に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】被検試料の構成を示す図である。
【図2】測定対象試料の構成を示す図である。
【図3】実施例1におけるX線回折装置による測定によって得られた回折プロファイルを示す図である。
【図4】比較例1及び比較例2におけるX線回折装置による測定によって得られた回折プロファイルを示す図である。
【図5】比較例3におけるX線回折装置による測定によって得られた回折プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施の形態(以下「本実施の形態」と記す。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態における薄膜材料の結晶子径測定方法は、樹脂フィルム上に金属薄膜が形成されている基板を被検試料とし、この被検試料が複数枚積層されており、検試料間の内、少なくとも1以上の被検試料間に、内部標準として標準粉末試料が挟み込まれてなる測定対象試料に対してX線回折測定を行うことで、金属薄膜を構成する金属の結晶子径を測定するものである。
【0017】
薄膜を被検試料とするX線回折測定では、標準試料を外部標準とした反射法によるX線回折測定を行うことが考えられる。この場合には、被検試料と標準試料とを別の測定対象試料として測定していることに起因して、被検試料の結晶子径の測定誤差が大きくなるおそれがある。また、反射法による薄膜のX線回折測定は、樹脂フィルムの影響を強く受けて薄膜由来の回折ピークが樹脂の回折ピークに隠れたり、あるいは回折ピークが出現しないといった場合があり、測定自体の困難さがある。
【0018】
このような観点から、本実施の形態では、標準粉末試料を内部標準とした透過法によるX線回折測定を行うようにした。さらに、被検試料を複数枚積層することにより、X線回折強度が積算されて被検試料である金属薄膜由来の回折ピークを十分な強度で検出することが可能となった。
【0019】
本実施の形態における薄膜材料の結晶子径測定方法は、上述したように、X線回折測定により薄膜材料の結晶子径を測定する際、複数枚積層した被検試料間の内、少なくとも1以上の被検試料間に内部標準として標準粉末試料を挟み込む。そして、透過法により被検試料及び標準粉末試料由来の回折ピークを測定し、標準粉末試料由来の回折ピークを用いて被検試料由来の回折ピークの半値幅を補正する。これにより、X線回折装置自体に起因する回折ピークの線幅を差し引いた被検試料のみに依存する回折ピークの半値幅を得ることができる。
【0020】
本実施の形態における薄膜材料の結晶子径測定方法は、被検試料を複数枚積層することで十分な強度で被検試料由来の回折ピークを検出するとともに、積層した複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の被検試料間に標準粉末試料を内部標準として添加させることにより、X線回折装置自体に起因する回折ピークの線幅を差し引いた被検試料のみに依存する回折ピークの半値幅を得ることができるため、簡易な方法で薄膜材料の結晶子径を高精度に測定することができる。
【0021】
以下、本実施の形態における薄膜材料の結晶子径測定方法について順を追って説明する。
【0022】
<1.測定対象試料の作製>
図1に示すように、被検試料1は、樹脂フィルム11上に金属薄膜12が形成されている。樹脂フィルム11としては、例えば、耐熱性及び機械物性に優れ、薄層電子部品の基板として広く使用されているポリイミドフィルムを挙げることができるが、これに限られるものではない。
【0023】
金属薄膜12としては、通常電子部品として広く使用されているCu、Ni、Co、Au、Ag、Ti、Ta、Nb等の金属を挙げることができるが、特に限定されない。なお、金属薄膜12としては、このような金属単体ではなくNiO、Ta等の金属酸化物、TiN等の金属窒化物等の金属化合物であってもよい。
【0024】
次に、被検試料1を例えば15mm×15mmの正方形に裁断する。被検試料1の裁断サイズ及び裁断形状は、これに限定されず、使用するX線回折装置の試料台に支障なく設置できる何れのサイズ及び形状であってもよい。
【0025】
次に、図2(A)に示すように、裁断した被検試料1を10枚積層させる(被検試料1A〜1J)。被検試料の積層枚数は、透過法によるX線回折測定において金属薄膜由来の回折ピークが十分な強度で出現することが可能となる積層枚数であれば、これに限定されない。このように、被検試料1を複数枚積層させることで、後のX線回折測定にてX線回折強度が積算されて被検試料1の十分な強度の回折ピークを検出することが可能となる。
【0026】
被検試料1を積層する際には、図2(B)に示すように、X線が入射する側から数えて第1番目の被検試料1Jと第2番目の被検試料1Iとの間に標準粉末試料を仕込む。このとき、被検試料1Iを構成する金属薄膜12I上の全域ではなく、金属薄膜12I上のX線が入射する領域内にのみ標準粉末試料を位置させるようにすればよい。
【0027】
具体的には、金属薄膜12Iの平面中心を円中心とする直径約3mmの円の内部領域13Iに標準粉末試料を略均一に(局在しないように)位置させるように薬さじ等を用いて添加する。
【0028】
なお、標準粉末試料は、そのX線回折ピークを測定することが可能であればよい。このため、標準粉末試料を仕込む箇所は、積層した複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の被検試料間であれば特に限定されない。標準粉末試料を全ての被検試料間に仕込むことも可能である。標準粉末試料を全ての被検試料間に仕込むことにより、被検試料1A〜1Jの全てに対してより均一なX線回折測定を行うことが可能となる。但しこの場合、X線の回折強度は、著しく低下する。
【0029】
標準粉末試料としては、例えばX線回折測定用として広く使用されているシリコン標準粉末試料を使用することができるが、X線回折測定用の標準粉末試料であればこれに限らない。被検試料1間への標準粉末試料の仕込み量は、例えば0.5mgとすることができるが、X線回折測定において標準粉末試料由来の回折ピークが十分に出現することが可能な量であれば特に限定されない。
【0030】
このように、樹脂フィルム11上に金属薄膜12が形成されている被検試料1を複数枚積層し、この複数枚の被検試料1間の内、少なくとも1以上の被検試料1間に標準粉末試料を仕込んだものを測定対象試料とする。
【0031】
<2.X線回折測定>
作製した測定対象試料をX線回折装置の試料台に設置する。透過法によるX線回折を行う上で、出力、X線波長、入力X線径等の条件は、特に限定されないが、例えば、出力50kV−22mA、X線波長1.54056オングストローム、入射X線径300μmと設定することができる。
【0032】
<3.結晶子径の測定>
(3−1)回折角及び回折ピークの半値幅の算出
被検試料1の所定の回折角における回折ピークの半値幅を算出する。算出された半値幅は、X線回折装置に依存した値となるが、半値幅のX線回折装置依存性を除去するために、標準粉末試料由来の回折ピークの半値幅を用いて被検試料由来の回折ピークの半値幅を補正する。この場合、被検試料由来の回折ピークと同一の回折角に標準粉末試料由来の回折ピークが位置することがないため、従来より、例えば以下の方法が用いられている。
【0033】
1つの方法は、標準粉末試料の複数の回折ピークにおける回折角と半値幅との関係から任意の回折角における半値幅の相関式を作成し、この相関式を用いて被検試料と同一の回折角における標準粉末試料由来の回折ピークの半値幅を算出するものである。また、別の方法は、被検試料の所定の回折角の近傍に位置する標準粉末試料由来の回折ピークを、実際上、被検試料の所定の回折角に位置するものと見なして標準粉末試料由来の回折ピークの半値幅を簡易的に採用するものである。本実施の形態では、後者の方法により標準粉末試料由来の回折ピークの半値幅を採用することで、金属薄膜12の結晶子径の簡易な測定を実現する。
【0034】
(3−2)結晶子径の算出
被検試料1中の金属薄膜12を構成する金属の所定の回折角における回折ピークの半値幅を算出し、標準粉末試料由来の回折ピークの半値幅で補正した後、以下に示す式(1)(Scherrerの式)から金属薄膜12を構成する金属の結晶子径Dを算出する。
D=Kλ/(β×cosθ) (1)
K:シェラーの定数(K=0.9とする)
D:結晶子径
λ:入射X線の波長
θ:ブラッグ角(回折ピークの回折角2θの半分)
β:金属薄膜由来の回折ピークの線幅(半値幅)
【0035】
ここで、式(1)におけるβは、実測した回折ピークの線幅(β)から光学系による拡がり幅(β)を差し引いた値を採用する。これらを差し引く近似式には、ガウス型近似(β=β−β)とコーシー型近似(β=(β)1/2)がある。なお、βには、同じ光学系で測定した標準粉末試料由来の回折ピーク半値幅を用いる。
【0036】
この式(1)から、被検試料1中の金属薄膜12を構成する金属の結晶子径Dを簡易に算出する。このように、X線回折装置自体に起因する回折ピークの線幅を差し引いた被検試料1のみに依存する回折ピークの半値幅を得ることにより、金属薄膜12の結晶子径を高精度に測定することができる。
【0037】
本実施の形態における薄膜材料の結晶子径測定方法によれば、電子部品の構成部材として広く使用されている樹脂フィルム上に金属薄膜が形成されている基板に対し、簡易な方法で高精度に金属薄膜を構成する金属の結晶子径を測定することができるため、基板の電気的特性、機械的特性等と金属薄膜の結晶情報とを相関させた品質管理を行うことができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、被検試料1を構成するフィルムが樹脂フィルム11であるとともに、被検試料1を構成する薄膜が金属薄膜12である場合について説明したが、フィルム材料、薄膜材料の何れも他の材料である場合であっても本実施の形態を適用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
<1.測定対象試料のX線回折測定>
(実施例1)
厚さ40μmのポリイミドフィルム上に厚さ10nmのNi薄膜が形成されている被検試料を15mm×15mmの形状に裁断し、この裁断した被検試料を10枚積層させ、その内、X線が入射する側から数えて第1番目の被検試料と第2番目の被検試料との間にシリコン標準粉末試料(NIST製)0.5mgを被検試料の平面中心を円中心とする円(直径約3mm)の内部領域に略均一に薬さじを用いて位置させ、これを測定対象試料とした。
【0041】
測定対象試料をX線回折装置(商品名D8 DISCOVER、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)の試料台に設置し、出力50kV−22mA、X線波長1.54056オングストローム、入射X線径300μmに設定して透過法によるX線回折測定を行った。
【0042】
実施例1のX線回折測定において得られた回折プロファイルを図3に示す。ポリイミドフィルム由来の回折ピーク31、Ni薄膜由来の回折ピーク32、シリコン標準粉末試料由来の回折ピーク33、34の何れの回折ピークも十分な強度で検出された。
【0043】
Ni薄膜由来の回折ピーク32としては、回折角2θ(deg.)=44.15°(面指数(111))、半値幅β(deg.)=1.522(ラジアン表示では0.02656)の回折ピークを得るとともに、Ni薄膜由来の回折ピーク32の回折角近傍に、シリコン標準粉末試料由来の回折ピーク33を得た。シリコン標準粉末試料由来の回折ピーク33の実際の回折角は、2θ(deg.)=47.5°(面指数(220))であるが、この回折ピーク33が回折ピーク32と同一回折角に位置すると見なし、シリコン標準粉末試料由来の回折ピーク33の半値幅β(deg.)=0.2822(ラジアン表示では0.00493)を得た。
【0044】
この結果より、式(1)で用いられる各値を得た。
λ=1.54056
β=((0.02656)−(0.00493)1/2=0.02610
(コーシー近似を用いてβを計算した。)
cosθ=0.9267
これらλ、β、cosθの各値を式(1)に代入し、D=57.3オングストロームを得た。
【0045】
このように、実施例1では、X線回折測定において、ポリイミドフィルム由来、Ni薄膜由来、シリコン標準粉末試料由来の回折ピークを十分な強度で検出され、その測定結果から、X線回折装置自体に起因する回折ピークの線幅を差し引いたNi薄膜のみに依存する回折ピークの半値幅を算出することで、Ni薄膜のNi結晶子径Dを測定できた。
【0046】
(比較例1)
測定対象試料としてシリコン標準粉末試料を用いない以外は、実施例1と同じ操作を行った。得られた回折プロファイルを図4(a)に示す。
【0047】
ポリイミドフィルム由来の回折ピーク41とともにNi薄膜由来の回折ピーク42が十分な強度で検出された。Ni薄膜由来の回折ピーク42としては、回折角2θ(deg.)=44.15(面指数(110))、半値幅β(deg.)=1.522(ラジアン表示では0.02656)の回折ピークが得られた。
【0048】
しかしながら、シリコン標準粉末試料を添加しないものを測定対象試料としていることからシリコン標準粉末試料由来の回折ピークを測定できないため、Ni結晶子径は測定できない。
【0049】
(比較例2)
測定対象試料として、被検試料を1枚とし、またシリコン標準粉末試料を用いない以外は、実施例1と同じ操作を行った。得られた回折プロファイルを図4(b)に示す。Ni薄膜由来の回折ピークが検出された回折角に、Ni薄膜由来の回折ピークが検出されていない。
【0050】
(比較例3)
測定対象試料として被検試料を1枚とし、反射法によるX線回折測定を行った。得られた回折プロファイルを図5に示す。Ni薄膜由来の回折ピークが検出されていない。
【0051】
<2.結晶子径の測定精度の検証>
実施例1における結晶子径Dの測定精度を検証した。実施例1の操作をさらに9回行い、各回においてNiの結晶子径Dを測定した。また、1〜10回目において測定された10個の結晶子径Dの標準偏差σを算出した。[表1]に結晶子径Dの測定精度の検証結果を示す。測定順序の1回目の結果は、実施例1の結果に相当する。
【0052】
【表1】

【0053】
この[表1]においてa、b、c、β、β、β、cosθ、D、σをそれぞれ以下のように定義する。
a:Ni薄膜由来の回折ピークにおける回折角2θ(deg.)
b:aにおけるNi薄膜由来の回折ピークの半値幅(deg.)
c:aの近傍に位置するシリコン標準粉末試料の回折ピークの半値幅(deg.)
β:b×π/180
β:c×π/180
β:(β−β1/2
cosθ:cos(a×π/180)
D:0.9×1.54056/(β×cosθ)
σ:1〜10回目においてそれぞれ測定された結晶子径Dの標準偏差
【0054】
[表1]に示すように、10回測定した結果、結晶子径Dの平均値が57.3オングストロームであり、その標準偏差σが0.4オングストロームであった。この結果から、実施例1により、Ni薄膜を構成するNiの結晶子径を高精度に測定できることがわかる。
【符号の説明】
【0055】
1 被検試料、11 樹脂フィルム、12 金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜に対するX線回折測定により該薄膜を構成する薄膜材料の結晶子径を測定する薄膜材料の結晶子径測定方法であって、
フィルム上に前記薄膜が形成されている被検試料が複数枚積層されており、該複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の該被検試料間に標準粉末試料が挟み込まれてなる測定対象試料に対して透過法によるX線回折測定を行うことを特徴とする薄膜材料の結晶子径測定方法。
【請求項2】
前記薄膜材料は、金属又は金属化合物であることを特徴とする請求項1記載の薄膜材料の結晶子径測定方法。
【請求項3】
前記標準粉末試料は、シリコン標準粉末試料であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の薄膜材料の結晶子径測定方法。
【請求項4】
薄膜に対するX線回折測定を行うための測定対象試料であって、
フィルム上に前記薄膜が形成されている被検試料が複数枚積層されており、該複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の該被検試料間に標準粉末試料が挟み込まれてなることを特徴とする測定対象試料。
【請求項5】
薄膜に対するX線回折測定を行うための測定対象試料の製造方法であって、
フィルム上に前記薄膜が形成されている被検試料を複数枚積層し、該複数枚の被検試料間の内、少なくとも1以上の該被検試料間に標準粉末試料を挟み込むことを特徴とする測定対象試料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220989(P2011−220989A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114474(P2010−114474)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】