薄膜複合逆浸透膜にカーボンナノチューブを組み込むための方法およびシステム
逆浸透膜を作製する方法が説明される。本方法は複数のカーボンナノチューブを、第一液体が水性層であって、第二層が水性層に非混和性の有機層である、2つの液体の界面に配向させ、2つの液体の界面において配向したカーボンナノチューブの周囲に薄層選択性膜を形成し、薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造支持層の上に接合させることを含む。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示の分野は一般的に逆浸透技術に関し、より具体的には薄膜複合逆浸透膜にカーボンナノチューブを組み込むための方法およびシステムに関する。
【0002】
逆浸透の概念、又は圧力下において溶質から溶媒を分離する選択性膜に対して溶液を押し込む行為が、長年にわたり存続してきた。この技術は、最初に酢酸セルロースベースの非対称膜の作製によって可能となり実用化された。この時以来、逆浸透膜は、pH、温度、及び過酷な化学物質への曝露の広範囲を許容するために開発されてきた。
【0003】
逆浸透膜の最も一般的な適用は、水、特に海水、及び汽水源に由来する水の脱塩及び精製である。一般的な逆浸透システムに含まれる部品は、単純であり、供給源、前処理フィルター、静水圧を起こすためのポンプシステム、及び逆浸透分離膜ユニット自体を含む。典型的な逆浸透膜は、多くのイオン種に対して99%以上の除去率を示すことができる一方で、この高い選択性にはコストがかかる。膜を通過するのに高圧力が必要であり、そのような圧力を作り出すことは、逆浸透システムに大きなエネルギーの入力を必要とする。
【0004】
一般的な逆浸透膜は、供給源の溶質に対する選択的な障壁として働く非常に密度の高い、薄い高分子膜の作製により生産されている。これらの膜の作製技術は、2つの主な戦略からなる。どちらも薄い高密度な選択層が、膜全体に構造的完全性を与えるために働く、より厚くてより多孔質な膜に隣接した非対称膜構造の形成を含む。
【0005】
膜の第一の型は、ときに非対称逆浸透膜と呼ばれ、単一高分子系を使用し、沈殿、又は溶媒に溶解した高分子膜をコートし、続いて高分子膜を非溶媒層に曝す転相技術に依存する。界面に最も近接する膜領域は物質の薄層を迅速に沈殿させ、一方下の層はよりオープンな多孔質網目構造を作り出す。
【0006】
第二の方法は、一般的に薄膜複合膜として知られる2つの別個な高分子系に依存する。この第二の方法は、膜の薄い選択的部分とその下の構造層を別々に生産し、並びに二者を単一の多層複合材に組み合わせるメカニズムを利用する。これは、単一組成の非対称膜よりもより複雑なアプローチである一方、膜全体において必要とされる選択的透過性及び構造的な役割に一番適した系を選択することにより、全体的な膜の性能を設計するにあたり、より大きな柔軟性を与える。
【0007】
逆浸透膜における選択性のメカニズムは、高分子鎖の間の間質腔を介する水分子の濾過に由来する。現在の逆浸透膜は純粋に高分子材料からなり、識別可能な細孔構造を持たず、結果として水の原料によって運ばれるイオンと他の溶質を排除することができる。水を溶質と不純物から分離することは、高分子鎖の間の間質腔を通じて水分子を通すことにより行われる。しかしながら、多孔質微細構造の欠如は、流れに対する摩擦抵抗を克服し、十分な流量を作り出すために、膜を通過する大きな機械的圧力を必要とする。この高圧は大きなエネルギーの入力を必要とし、一般的に逆浸透膜の特徴である。選択性を維持しつつ、圧力及びエネルギー需要を減少させ、膜を通過する流量を向上させるメカニズムは、逆浸透膜技術をより広範囲の用途に適用するコストと経済的実現可能性に直接影響するであろう。
【0008】
配向したカーボンナノチューブを高分子膜に組込むことは、配向膜の化学蒸着(CVD)成長を通じて行われる。これらの配向したカーボンナノチューブは、高分子溶液をカーボンナノチューブアレイ上にスピンコートすることで高分子マトリクスにより囲まれる。しかしながら、これらの技術は、高価で、時間がかかり、容易に拡張可能ではない方法を含む。CVDを用いて基板上に配向したカーボンナノチューブの膜を成長させることは、シリコン又は陽極アルミナ等の基板の鉄の薄層によるコーティングを含む。加熱により、鉄は、カーボンナノチューブ成長のための核形成点として作用する島状構造の均一なアレイに分離する。エタン等の炭素源が、次いでチャンバー内に導入され、カーボンナノチューブは、表面から上向きに成長させられ、高密度に配向したアレイを作成する。このアレイは、スピンコーティング技術により高分子膜で包まれ、複合膜の全体を基板から取り除くことが可能である。これらの技術はカーボンナノチューブの高密度層を高分子膜に組込むことが可能であるが、囲んでいる膜材料は従来の逆浸透膜のように必ずしも水に対して選択的では無い。
【0009】
同時に、配向しないカーボンナノチューブを膜に組込むことは、カーボンナノチューブを組込まない膜に対して改良された性能を与えると説明される。残念ながら、配向しないカーボンナノチューブを含む膜の厚さと多孔性は、それらを海水の脱塩等の用途に対して不適切ならしめる。
【0010】
近年、有機/水界面でカーボンナノチューブを集合させる技術の説明が報告された。簡単に言えば、カーボンナノチューブは、最初にエタノール中に分散される。この溶液は、次いで水で希釈され、ついで有機液体/水界面を作成するためにヘキサンが加えられる。制御された割合でこの混合物にエタノールを添加することで、カーボンナノチューブの集合体は有機液体/水界面の薄膜中に導かれる。
【発明の概要】
【0011】
一態様では、逆浸透膜を作製する方法が与えられる。本方法は複数のカーボンナノチューブを2つの液体の界面で配向させることを含み、第一の液体は水性層で、第二の層は水性層に非混和性の有機層であり、2つの液体の界面で配向したカーボンナノチューブの周りに薄層の選択性膜を形成し、薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造的な支持層上に接合させる。
【0012】
その他の態様では、複数の配向したカーボンナノチューブ、配向したカーボンナノチューブの周りに形成された薄層選択性膜、及び前記薄層選択性膜と接合した微細孔支持体構造を含む、逆浸透膜が与えられる。
【0013】
更にその他の態様では、逆浸透膜を作製する方法が与えられる。本方法はカーボンナノチューブを第一の溶液中に懸濁し、カーボンナノチューブが第一溶液と第二溶液の間の界面で配向するように、制御された割合で第一溶液に成分を添加し、少なくとも一成分を第一溶液に、及び少なくとも一成分を第二溶液に添加し、それにより第一溶液と第二溶液の間の界面、及び配向したカーボンナノチューブの周りに薄層選択性膜を作らせることを含む。
【0014】
議論された特徴、機能、及び利点は様々な実施態様において独立に達成される可能性があり、又は更に他の実施態様にて、以下の記述及び図の参照により理解できる更なる詳細が組み合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は単一のカーボンナノチューブの図である。
【図2】図2は、カーボンナノチューブを組み込んだ複合逆浸透膜の作製方法を示すフローチャートである。
【図3】図3はエタノール溶液中のカーボンナノチューブの懸濁液を示す。
【図4】図4は水とエタノールの混合物を形成するため水を添加することによる、図3のエタノール溶液の希釈を図示する。
【図5】図5は、バッキング部材上に配され、希釈エタノール溶液中に配された微細孔支持膜を図示する。
【図6】図6は液液界面を形成するために、希釈エタノールと水の溶液へ水に非混和性の有機溶媒層の追加を図示する。
【図7】図7は希釈エタノール溶液に追加のエタノールを制御して添加し、液液界面でカーボンナノチューブを配向させることを図示する。
【図8】図8は集合したカーボンナノチューブ層を図示する。
【図9】図9は希釈エタノール溶液への多官能性アミン成分の添加と、有機層への多官能性アミン反応性成分の添加を図示する。
【図10】図10は前もって集合したカーボンナノチューブ層(180)を包む薄膜を形成するための液液界面での自発的重合を図示する。
【図11】図11は薄層膜/カーボンナノチューブ複合材の、複合材に対する構造的支持を与えるために作られた微細孔支持膜上への移転を図示する。
【図12】図12は微細孔支持膜への薄層膜/カーボンナノチューブ複合材の積層を図示する。
【図13】図13は逆浸透膜の中に懸濁した配向カーボンナノチューブの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施態様はカーボンナノチューブを従来の逆浸透膜に組込むことに関する。カーボンナノチューブは、イオン性成分や不純物の通過を禁止しつつ、水分子のために低抵抗経路を与える膜貫通チャネルを生成する。流れに対する抵抗の減少は、これらの膜を使用して水を精製するために必要なエネルギー所要量に直接関連し、膜の通過に必要とされる低圧力をもたらす。
【0017】
より具体的には、カーボンナノチューブの棒は従来の逆浸透膜に類似した組成を有する高分子フィルム中に懸濁されており、周囲の高分子材料は現在使用されている逆浸透膜に見られる分離と選択性を保持することを確実にしている。本明細書にて更に説明される通り、カーボンナノチューブを濃縮し配向させるための作製技術は液液界面でのカーボンナノチューブの集合に基づく。その結果、生成された複合フィルムは現在の化学蒸着法に比べてより短時間で生産されることが可能であり、より拡張可能で、かつより安価である。説明される実施態様は、逆浸透膜技術による水の精製に対して経済的に有効な解決策である商業化において必要とされる、増大したスケールで大きな膜を生産することを可能とする。
【0018】
図を参照すると、図1は、単一のカーボンナノチューブ(10)の図である。カーボンナノチューブ(10)はナノチューブ(10)の長さ方向に延びる開口(12)を有する長尺の管状構造を有している。カーボンナノチューブ(10)は物理的に非常に小さい。カーボンナノチューブ(10)の開口(12)は、海水又はその他の汽水源に懸濁している可能性のある大きな分子やイオンの通過をブロックしつつ、水分子が通過できるような大きさである。
【0019】
図2は、カーボンナノチューブを組込んだ複合逆浸透膜の作製を説明するフローチャート(50)である。本明細書で更に説明する通り、膜の構造は、流れ抵抗を減少させ、かつエネルギー入力を減少させるためのカーボンナノチューブを含む一方、その作製技術は効率良くカーボンナノチューブを膜に組込む。一実施態様では、複合逆浸透膜は半透過性の薄膜及び微細孔構造支持体を有し、ここで半透過性の薄膜又は膜はカーボンナノチューブを保有している。
【0020】
図2を参照すると、その方法は、(52)複数の整列したカーボンナノチューブを液液界面に集合させ、次いで、(54)液液界面でカーボンナノチューブの周りに薄層選択性膜をその場で形成する。本方法は、液液界面から薄層膜/カーボンナノチューブ複合材を移動させ、又は(58)薄膜層/カーボンナノチューブ複合材を下の構造支持層に積層又は接合させることにより終了する。
【0021】
別の方法では、薄層選択性膜は界面技術を用いて形成され得る。この方法では、多孔質構造支持層は最初に多官能性アミンと共に、典型的には浸漬被覆技術によりコーティングされる。多官能性アミンは別の工程で水性層に導入され得る。コーティングされた支持層は次いで、水/エタノール層から配向したカーボンナノチューブを含む液液界面を通じて非混合性有機層へ移される。有機層はカーボンナノチューブを被包する薄層膜を形成し、それを下層の支持体に接合させるために多官能性アミン反応性成分を含む。
【0022】
図2に記載された幾つかの工程は、以下の段落とそれらに付随する図において更に十分に説明される。例えば、カーボンナノチューブを液液界面に集合させるために、カーボンナノチューブをまず最初に有機層と水性層(水)からなる液液界面に集合させる。この溶液、及び液液界面は、図3に示した通り、カーボンナノチューブ(10)をエタノール溶液(100)中に懸濁することで調製される。注目すべきは他のアルコールを使用しても良いことであり、例えばメタノール、イソプロピル又は他のアルコールがエタノールと置換され得る。図4はエタノール溶液(100)を水(110)を加えて希釈し、水とエタノール混合物(120)を作ることを図示する。水とエタノール混合物(120)等の希釈されたアルコール溶液は、本明細では時には水性層と称され得る。
【0023】
さて図5を参照すると、微細孔支持膜(130)(一実施態様ではポリスルホン)が多セル発泡体等のバッキング材(140)の上に配され、水とエタノール混合物(120)の中へ配される。水とエタノール混合物(120)は水性カーボンナノチューブ懸濁液、又は水性層と称され得る。有機溶媒、又は有機層(150)を水性カーボンナノチューブ懸濁液(120)へ添加し、液液界面(154)を形成することが図6に説明されている。一実施態様では、液液界面は有機物−水性界面と称される。有機層(150)が水とエタノール溶液に関して非混和性であるため、液液界面(154)が形成される。
【0024】
図7は追加エタノール(160)の、水とエタノール混合物(120)への制御された添加を図示し、それによりカーボンナノチューブ(10)を液液界面(154)に配向させ、図8に図示した通り集合したカーボンナノチューブ層(180)を形成する。
【0025】
上記の通り、次の工程は液液界面(154)にて配向したカーボンナノチューブ(180)の周りの薄層選択性膜のその場形成に関連する。一実施態様にて、図9及び10に図示した通り、集合したカーボンナノチューブ層(180)を包み込む薄層の作製が、界面技術を使用して実施される。特に図9を参照し、水性層(水とエタノール混合物(120))に多官能性アミン成分(200)が注入され、有機層(150)に多官能性アミン反応性成分(210)が注入される。アミン成分(200)は少なくとも2つの第一アミノ基を有し、芳香族、脂肪族及び脂環式多官能性アミンから成る群から選択することができる。アミノ反応性成分(210)は少なくとも2つのアミノ反応基を有する。好ましいアミノ反応性官能基は、酸ハロゲン化物と、芳香族、脂肪族及び脂環式多官能性化合物からなる群から選択される少なくとも一つのアミン反応性化合物を含む。
【0026】
選択された反応性成分は、図10に示す通り、前もって集合したカーボンナノチューブ層(180)を包む薄膜(230)を形成するために、液液界面(154)で自発的に重合するであろう。薄膜(230)はまた本明細書では薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)とも称される。図11及び12は、薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)を、下の微細孔支持膜の構造支持層(130)への移動と接合を図示する。
【0027】
特に、液液界面(154)での薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)の形成に続いて、薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)を微細孔支持層(130)へ移動することが必要である。一実施態様では、この移動は薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)を微細孔支持層(130)へ積層するか又は接合する界面重合方式を用いて達成される。
【0028】
上述の通り、水性層(水とエタノール混合物(120))を多官能性アミン成分(200)を添加する前に導入後、バッキング材(140)により支持された微細孔支持体(130)が希釈されたエタノール溶液(120)の中へ沈められる。図11に示した通り、液液界面(154)における薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)のその場形成に続いて、液液界面(154)で薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)と接触するように、微細孔支持体(130)がゆっくりと上昇させられる。次に図12を参照し、組み合わされた微細孔支持体(130)と薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)は次いで有機層(150)の中へ引き上げられ、残留ジアミン化合物と酸ハロゲン化物類の反応を通じて、2つの層(130と230)を界面接合するに十分な時間が経過するまでそこへ留められる。集合体は次いで有機層(150)から移され、洗浄され、多セル発泡体(140)の固い支持から外される。
【0029】
図13は複数のカーボンナノチューブ(10)が懸濁した様を図示した薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)の図である。上記作製技術で効率良くカーボンナノチューブ素材を逆浸透膜の中へ導入しつつ、複合材(230)の膜構造は流れ抵抗とエネルギー入力を減らすように操作可能である。
【0030】
あるいは、上記の通り、配向したカーボンナノチューブを組込んだ薄層選択性膜(複合材230)は改良した界面技術を用いて形成され得る。この技術は最初に多孔質支持体(130)を、アミン溶液中への浸漬被覆により多官能性アミンによりコーティングし、次いで支持体(130)を乾燥させることを含む。得られたアミン被覆多孔質支持体は次いで、水/エタノール層(120)の中へ配され、配向したカーボンナノチューブ(180)を含む液液界面(154)を通過し、多官能性アミン反応性化合物を含む有機層(159)の中へ通すことができる。このアミン反応性化合物は、一実施態様にて、多官能性の酸ハロゲン類である。多孔質支持層(130)を液液界面(154)を通して反応性有機層(150)へ移動することは、液液界面(154)にて配向した複数のカーボンナノチューブ(10)を効率良く組込む支持体の表面において、薄層選択性膜を重合させる。
【0031】
従来の逆浸透膜の中へカーボンナノチューブを組込むことは、水分子に対して低い抵抗経路を与えるが水源中のイオン成分及び他の不純物の通過を妨げる、膜貫通チャンネルを作り出す。流れに対する抵抗の減少は膜を通過するのに必要な、より低い圧力、従って膜を貫通する流れを引き起こすために要求されるエネルギー量の減少をもたらす。そのような構造は、カーボンナノチューブを薄い選択性逆浸透水精製膜へ組み込むための効率的な組織化と統合(consolidation)への道筋を与える。
【0032】
要約すると、本実施態様では、カーボンナノチューブを界面で配向させること、及び液液界面のその場でカーボンナノチューブを包む薄い半透過性高分子膜を作ることの組合わせを説明する。本明細で説明した組合わせは、水を精製可能な高分子マトリックスにより囲まれたカーボンナノチューブからなる水の精製のための透過性選択性膜への道筋を与える。本実施態様は、低エネルギー消費で海水と他の供給原料を精製することが可能であるため、識別可能である。低エネルギー消費は、現在の膜技術と比較して必要とされるより低い摩擦損失と機械的圧力条件のためである。説明された実施態様は、液液界面で効率的にカーボンナノチューブを濃縮し配向させることで、カーボンナノチューブをロードした類似の膜よりも、より大型でかつ低コストで容易に生産されることを可能とする。液液界面でのカーボンナノチューブの統合により、次いで透過性かつ選択性の高分子膜が界面重合によってカーボンナノチューブ周囲でその場形成されることが可能である。そのような薄膜複合選択性膜は、主に海水及び汽水を飲料用へ変換することに有用である。
【0033】
本開示から理解される通り、説明された実施態様の一つの主な目的は、海水及び他の汽水の飲料用水への精製である。現在の技術において、水の精製のためのこれらの新しい選択性膜の性能を向上することは、1)膜と周囲の水精製ユニットのエネルギー効率の増加、2)膜の生産に関する製造コストの減少と拡張性の双方を含む。
【0034】
この文書による説明は、任意の装置又はシステムを作り及び使用すること、及び任意の組込まれた方法を実行することを含み、任意の当業者がそれらの実施態様を実行するのを可能とする最良の態様を含む、幾つかの実施態様を開示するための実施例を使用する。特許範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者に起きる他の実施例を含み得る。そうした他の実施例は、それらが特許請求範囲の一語一句の言葉と相違ない構造的要素を有する場合、又はそれらが特許請求範囲の一語一句の言葉とわずかな相違を持つ等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図されている。
【背景技術】
【0001】
本開示の分野は一般的に逆浸透技術に関し、より具体的には薄膜複合逆浸透膜にカーボンナノチューブを組み込むための方法およびシステムに関する。
【0002】
逆浸透の概念、又は圧力下において溶質から溶媒を分離する選択性膜に対して溶液を押し込む行為が、長年にわたり存続してきた。この技術は、最初に酢酸セルロースベースの非対称膜の作製によって可能となり実用化された。この時以来、逆浸透膜は、pH、温度、及び過酷な化学物質への曝露の広範囲を許容するために開発されてきた。
【0003】
逆浸透膜の最も一般的な適用は、水、特に海水、及び汽水源に由来する水の脱塩及び精製である。一般的な逆浸透システムに含まれる部品は、単純であり、供給源、前処理フィルター、静水圧を起こすためのポンプシステム、及び逆浸透分離膜ユニット自体を含む。典型的な逆浸透膜は、多くのイオン種に対して99%以上の除去率を示すことができる一方で、この高い選択性にはコストがかかる。膜を通過するのに高圧力が必要であり、そのような圧力を作り出すことは、逆浸透システムに大きなエネルギーの入力を必要とする。
【0004】
一般的な逆浸透膜は、供給源の溶質に対する選択的な障壁として働く非常に密度の高い、薄い高分子膜の作製により生産されている。これらの膜の作製技術は、2つの主な戦略からなる。どちらも薄い高密度な選択層が、膜全体に構造的完全性を与えるために働く、より厚くてより多孔質な膜に隣接した非対称膜構造の形成を含む。
【0005】
膜の第一の型は、ときに非対称逆浸透膜と呼ばれ、単一高分子系を使用し、沈殿、又は溶媒に溶解した高分子膜をコートし、続いて高分子膜を非溶媒層に曝す転相技術に依存する。界面に最も近接する膜領域は物質の薄層を迅速に沈殿させ、一方下の層はよりオープンな多孔質網目構造を作り出す。
【0006】
第二の方法は、一般的に薄膜複合膜として知られる2つの別個な高分子系に依存する。この第二の方法は、膜の薄い選択的部分とその下の構造層を別々に生産し、並びに二者を単一の多層複合材に組み合わせるメカニズムを利用する。これは、単一組成の非対称膜よりもより複雑なアプローチである一方、膜全体において必要とされる選択的透過性及び構造的な役割に一番適した系を選択することにより、全体的な膜の性能を設計するにあたり、より大きな柔軟性を与える。
【0007】
逆浸透膜における選択性のメカニズムは、高分子鎖の間の間質腔を介する水分子の濾過に由来する。現在の逆浸透膜は純粋に高分子材料からなり、識別可能な細孔構造を持たず、結果として水の原料によって運ばれるイオンと他の溶質を排除することができる。水を溶質と不純物から分離することは、高分子鎖の間の間質腔を通じて水分子を通すことにより行われる。しかしながら、多孔質微細構造の欠如は、流れに対する摩擦抵抗を克服し、十分な流量を作り出すために、膜を通過する大きな機械的圧力を必要とする。この高圧は大きなエネルギーの入力を必要とし、一般的に逆浸透膜の特徴である。選択性を維持しつつ、圧力及びエネルギー需要を減少させ、膜を通過する流量を向上させるメカニズムは、逆浸透膜技術をより広範囲の用途に適用するコストと経済的実現可能性に直接影響するであろう。
【0008】
配向したカーボンナノチューブを高分子膜に組込むことは、配向膜の化学蒸着(CVD)成長を通じて行われる。これらの配向したカーボンナノチューブは、高分子溶液をカーボンナノチューブアレイ上にスピンコートすることで高分子マトリクスにより囲まれる。しかしながら、これらの技術は、高価で、時間がかかり、容易に拡張可能ではない方法を含む。CVDを用いて基板上に配向したカーボンナノチューブの膜を成長させることは、シリコン又は陽極アルミナ等の基板の鉄の薄層によるコーティングを含む。加熱により、鉄は、カーボンナノチューブ成長のための核形成点として作用する島状構造の均一なアレイに分離する。エタン等の炭素源が、次いでチャンバー内に導入され、カーボンナノチューブは、表面から上向きに成長させられ、高密度に配向したアレイを作成する。このアレイは、スピンコーティング技術により高分子膜で包まれ、複合膜の全体を基板から取り除くことが可能である。これらの技術はカーボンナノチューブの高密度層を高分子膜に組込むことが可能であるが、囲んでいる膜材料は従来の逆浸透膜のように必ずしも水に対して選択的では無い。
【0009】
同時に、配向しないカーボンナノチューブを膜に組込むことは、カーボンナノチューブを組込まない膜に対して改良された性能を与えると説明される。残念ながら、配向しないカーボンナノチューブを含む膜の厚さと多孔性は、それらを海水の脱塩等の用途に対して不適切ならしめる。
【0010】
近年、有機/水界面でカーボンナノチューブを集合させる技術の説明が報告された。簡単に言えば、カーボンナノチューブは、最初にエタノール中に分散される。この溶液は、次いで水で希釈され、ついで有機液体/水界面を作成するためにヘキサンが加えられる。制御された割合でこの混合物にエタノールを添加することで、カーボンナノチューブの集合体は有機液体/水界面の薄膜中に導かれる。
【発明の概要】
【0011】
一態様では、逆浸透膜を作製する方法が与えられる。本方法は複数のカーボンナノチューブを2つの液体の界面で配向させることを含み、第一の液体は水性層で、第二の層は水性層に非混和性の有機層であり、2つの液体の界面で配向したカーボンナノチューブの周りに薄層の選択性膜を形成し、薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造的な支持層上に接合させる。
【0012】
その他の態様では、複数の配向したカーボンナノチューブ、配向したカーボンナノチューブの周りに形成された薄層選択性膜、及び前記薄層選択性膜と接合した微細孔支持体構造を含む、逆浸透膜が与えられる。
【0013】
更にその他の態様では、逆浸透膜を作製する方法が与えられる。本方法はカーボンナノチューブを第一の溶液中に懸濁し、カーボンナノチューブが第一溶液と第二溶液の間の界面で配向するように、制御された割合で第一溶液に成分を添加し、少なくとも一成分を第一溶液に、及び少なくとも一成分を第二溶液に添加し、それにより第一溶液と第二溶液の間の界面、及び配向したカーボンナノチューブの周りに薄層選択性膜を作らせることを含む。
【0014】
議論された特徴、機能、及び利点は様々な実施態様において独立に達成される可能性があり、又は更に他の実施態様にて、以下の記述及び図の参照により理解できる更なる詳細が組み合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は単一のカーボンナノチューブの図である。
【図2】図2は、カーボンナノチューブを組み込んだ複合逆浸透膜の作製方法を示すフローチャートである。
【図3】図3はエタノール溶液中のカーボンナノチューブの懸濁液を示す。
【図4】図4は水とエタノールの混合物を形成するため水を添加することによる、図3のエタノール溶液の希釈を図示する。
【図5】図5は、バッキング部材上に配され、希釈エタノール溶液中に配された微細孔支持膜を図示する。
【図6】図6は液液界面を形成するために、希釈エタノールと水の溶液へ水に非混和性の有機溶媒層の追加を図示する。
【図7】図7は希釈エタノール溶液に追加のエタノールを制御して添加し、液液界面でカーボンナノチューブを配向させることを図示する。
【図8】図8は集合したカーボンナノチューブ層を図示する。
【図9】図9は希釈エタノール溶液への多官能性アミン成分の添加と、有機層への多官能性アミン反応性成分の添加を図示する。
【図10】図10は前もって集合したカーボンナノチューブ層(180)を包む薄膜を形成するための液液界面での自発的重合を図示する。
【図11】図11は薄層膜/カーボンナノチューブ複合材の、複合材に対する構造的支持を与えるために作られた微細孔支持膜上への移転を図示する。
【図12】図12は微細孔支持膜への薄層膜/カーボンナノチューブ複合材の積層を図示する。
【図13】図13は逆浸透膜の中に懸濁した配向カーボンナノチューブの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施態様はカーボンナノチューブを従来の逆浸透膜に組込むことに関する。カーボンナノチューブは、イオン性成分や不純物の通過を禁止しつつ、水分子のために低抵抗経路を与える膜貫通チャネルを生成する。流れに対する抵抗の減少は、これらの膜を使用して水を精製するために必要なエネルギー所要量に直接関連し、膜の通過に必要とされる低圧力をもたらす。
【0017】
より具体的には、カーボンナノチューブの棒は従来の逆浸透膜に類似した組成を有する高分子フィルム中に懸濁されており、周囲の高分子材料は現在使用されている逆浸透膜に見られる分離と選択性を保持することを確実にしている。本明細書にて更に説明される通り、カーボンナノチューブを濃縮し配向させるための作製技術は液液界面でのカーボンナノチューブの集合に基づく。その結果、生成された複合フィルムは現在の化学蒸着法に比べてより短時間で生産されることが可能であり、より拡張可能で、かつより安価である。説明される実施態様は、逆浸透膜技術による水の精製に対して経済的に有効な解決策である商業化において必要とされる、増大したスケールで大きな膜を生産することを可能とする。
【0018】
図を参照すると、図1は、単一のカーボンナノチューブ(10)の図である。カーボンナノチューブ(10)はナノチューブ(10)の長さ方向に延びる開口(12)を有する長尺の管状構造を有している。カーボンナノチューブ(10)は物理的に非常に小さい。カーボンナノチューブ(10)の開口(12)は、海水又はその他の汽水源に懸濁している可能性のある大きな分子やイオンの通過をブロックしつつ、水分子が通過できるような大きさである。
【0019】
図2は、カーボンナノチューブを組込んだ複合逆浸透膜の作製を説明するフローチャート(50)である。本明細書で更に説明する通り、膜の構造は、流れ抵抗を減少させ、かつエネルギー入力を減少させるためのカーボンナノチューブを含む一方、その作製技術は効率良くカーボンナノチューブを膜に組込む。一実施態様では、複合逆浸透膜は半透過性の薄膜及び微細孔構造支持体を有し、ここで半透過性の薄膜又は膜はカーボンナノチューブを保有している。
【0020】
図2を参照すると、その方法は、(52)複数の整列したカーボンナノチューブを液液界面に集合させ、次いで、(54)液液界面でカーボンナノチューブの周りに薄層選択性膜をその場で形成する。本方法は、液液界面から薄層膜/カーボンナノチューブ複合材を移動させ、又は(58)薄膜層/カーボンナノチューブ複合材を下の構造支持層に積層又は接合させることにより終了する。
【0021】
別の方法では、薄層選択性膜は界面技術を用いて形成され得る。この方法では、多孔質構造支持層は最初に多官能性アミンと共に、典型的には浸漬被覆技術によりコーティングされる。多官能性アミンは別の工程で水性層に導入され得る。コーティングされた支持層は次いで、水/エタノール層から配向したカーボンナノチューブを含む液液界面を通じて非混合性有機層へ移される。有機層はカーボンナノチューブを被包する薄層膜を形成し、それを下層の支持体に接合させるために多官能性アミン反応性成分を含む。
【0022】
図2に記載された幾つかの工程は、以下の段落とそれらに付随する図において更に十分に説明される。例えば、カーボンナノチューブを液液界面に集合させるために、カーボンナノチューブをまず最初に有機層と水性層(水)からなる液液界面に集合させる。この溶液、及び液液界面は、図3に示した通り、カーボンナノチューブ(10)をエタノール溶液(100)中に懸濁することで調製される。注目すべきは他のアルコールを使用しても良いことであり、例えばメタノール、イソプロピル又は他のアルコールがエタノールと置換され得る。図4はエタノール溶液(100)を水(110)を加えて希釈し、水とエタノール混合物(120)を作ることを図示する。水とエタノール混合物(120)等の希釈されたアルコール溶液は、本明細では時には水性層と称され得る。
【0023】
さて図5を参照すると、微細孔支持膜(130)(一実施態様ではポリスルホン)が多セル発泡体等のバッキング材(140)の上に配され、水とエタノール混合物(120)の中へ配される。水とエタノール混合物(120)は水性カーボンナノチューブ懸濁液、又は水性層と称され得る。有機溶媒、又は有機層(150)を水性カーボンナノチューブ懸濁液(120)へ添加し、液液界面(154)を形成することが図6に説明されている。一実施態様では、液液界面は有機物−水性界面と称される。有機層(150)が水とエタノール溶液に関して非混和性であるため、液液界面(154)が形成される。
【0024】
図7は追加エタノール(160)の、水とエタノール混合物(120)への制御された添加を図示し、それによりカーボンナノチューブ(10)を液液界面(154)に配向させ、図8に図示した通り集合したカーボンナノチューブ層(180)を形成する。
【0025】
上記の通り、次の工程は液液界面(154)にて配向したカーボンナノチューブ(180)の周りの薄層選択性膜のその場形成に関連する。一実施態様にて、図9及び10に図示した通り、集合したカーボンナノチューブ層(180)を包み込む薄層の作製が、界面技術を使用して実施される。特に図9を参照し、水性層(水とエタノール混合物(120))に多官能性アミン成分(200)が注入され、有機層(150)に多官能性アミン反応性成分(210)が注入される。アミン成分(200)は少なくとも2つの第一アミノ基を有し、芳香族、脂肪族及び脂環式多官能性アミンから成る群から選択することができる。アミノ反応性成分(210)は少なくとも2つのアミノ反応基を有する。好ましいアミノ反応性官能基は、酸ハロゲン化物と、芳香族、脂肪族及び脂環式多官能性化合物からなる群から選択される少なくとも一つのアミン反応性化合物を含む。
【0026】
選択された反応性成分は、図10に示す通り、前もって集合したカーボンナノチューブ層(180)を包む薄膜(230)を形成するために、液液界面(154)で自発的に重合するであろう。薄膜(230)はまた本明細書では薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)とも称される。図11及び12は、薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)を、下の微細孔支持膜の構造支持層(130)への移動と接合を図示する。
【0027】
特に、液液界面(154)での薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)の形成に続いて、薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)を微細孔支持層(130)へ移動することが必要である。一実施態様では、この移動は薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)を微細孔支持層(130)へ積層するか又は接合する界面重合方式を用いて達成される。
【0028】
上述の通り、水性層(水とエタノール混合物(120))を多官能性アミン成分(200)を添加する前に導入後、バッキング材(140)により支持された微細孔支持体(130)が希釈されたエタノール溶液(120)の中へ沈められる。図11に示した通り、液液界面(154)における薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)のその場形成に続いて、液液界面(154)で薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)と接触するように、微細孔支持体(130)がゆっくりと上昇させられる。次に図12を参照し、組み合わされた微細孔支持体(130)と薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)は次いで有機層(150)の中へ引き上げられ、残留ジアミン化合物と酸ハロゲン化物類の反応を通じて、2つの層(130と230)を界面接合するに十分な時間が経過するまでそこへ留められる。集合体は次いで有機層(150)から移され、洗浄され、多セル発泡体(140)の固い支持から外される。
【0029】
図13は複数のカーボンナノチューブ(10)が懸濁した様を図示した薄層膜/カーボンナノチューブ複合材(230)の図である。上記作製技術で効率良くカーボンナノチューブ素材を逆浸透膜の中へ導入しつつ、複合材(230)の膜構造は流れ抵抗とエネルギー入力を減らすように操作可能である。
【0030】
あるいは、上記の通り、配向したカーボンナノチューブを組込んだ薄層選択性膜(複合材230)は改良した界面技術を用いて形成され得る。この技術は最初に多孔質支持体(130)を、アミン溶液中への浸漬被覆により多官能性アミンによりコーティングし、次いで支持体(130)を乾燥させることを含む。得られたアミン被覆多孔質支持体は次いで、水/エタノール層(120)の中へ配され、配向したカーボンナノチューブ(180)を含む液液界面(154)を通過し、多官能性アミン反応性化合物を含む有機層(159)の中へ通すことができる。このアミン反応性化合物は、一実施態様にて、多官能性の酸ハロゲン類である。多孔質支持層(130)を液液界面(154)を通して反応性有機層(150)へ移動することは、液液界面(154)にて配向した複数のカーボンナノチューブ(10)を効率良く組込む支持体の表面において、薄層選択性膜を重合させる。
【0031】
従来の逆浸透膜の中へカーボンナノチューブを組込むことは、水分子に対して低い抵抗経路を与えるが水源中のイオン成分及び他の不純物の通過を妨げる、膜貫通チャンネルを作り出す。流れに対する抵抗の減少は膜を通過するのに必要な、より低い圧力、従って膜を貫通する流れを引き起こすために要求されるエネルギー量の減少をもたらす。そのような構造は、カーボンナノチューブを薄い選択性逆浸透水精製膜へ組み込むための効率的な組織化と統合(consolidation)への道筋を与える。
【0032】
要約すると、本実施態様では、カーボンナノチューブを界面で配向させること、及び液液界面のその場でカーボンナノチューブを包む薄い半透過性高分子膜を作ることの組合わせを説明する。本明細で説明した組合わせは、水を精製可能な高分子マトリックスにより囲まれたカーボンナノチューブからなる水の精製のための透過性選択性膜への道筋を与える。本実施態様は、低エネルギー消費で海水と他の供給原料を精製することが可能であるため、識別可能である。低エネルギー消費は、現在の膜技術と比較して必要とされるより低い摩擦損失と機械的圧力条件のためである。説明された実施態様は、液液界面で効率的にカーボンナノチューブを濃縮し配向させることで、カーボンナノチューブをロードした類似の膜よりも、より大型でかつ低コストで容易に生産されることを可能とする。液液界面でのカーボンナノチューブの統合により、次いで透過性かつ選択性の高分子膜が界面重合によってカーボンナノチューブ周囲でその場形成されることが可能である。そのような薄膜複合選択性膜は、主に海水及び汽水を飲料用へ変換することに有用である。
【0033】
本開示から理解される通り、説明された実施態様の一つの主な目的は、海水及び他の汽水の飲料用水への精製である。現在の技術において、水の精製のためのこれらの新しい選択性膜の性能を向上することは、1)膜と周囲の水精製ユニットのエネルギー効率の増加、2)膜の生産に関する製造コストの減少と拡張性の双方を含む。
【0034】
この文書による説明は、任意の装置又はシステムを作り及び使用すること、及び任意の組込まれた方法を実行することを含み、任意の当業者がそれらの実施態様を実行するのを可能とする最良の態様を含む、幾つかの実施態様を開示するための実施例を使用する。特許範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者に起きる他の実施例を含み得る。そうした他の実施例は、それらが特許請求範囲の一語一句の言葉と相違ない構造的要素を有する場合、又はそれらが特許請求範囲の一語一句の言葉とわずかな相違を持つ等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜を作製する方法であって、該方法は、
複数のカーボンナノチューブを、第一の液体が水性層であり、第二の層が水性層に非混和性の有機層である2つの液体の界面で配向させ、
配向したカーボンナノチューブの周囲に薄層選択性膜を形成し、
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造支持層上へ接合する
ことを含む方法。
【請求項2】
複数のカーボンナノチューブを2つの液体の界面で配向させることが、
カーボンナノチューブをアルコール系溶液中に懸濁させ、
アルコール系溶液を水で希釈して水性層を形成し、
水性層中に非混和性である有機層を添加して、液液界面を形成し、
追加のアルコールを制御した割合で添加する
ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を接合させることが、有機層の添加前に微細孔支持膜を水性層中に配することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
微細孔支持膜を水性層中に配することが、微細孔支持膜をバッキング材上へ配することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブをアルコール系溶液中へ懸濁させることが、カーボンナノチューブをエタノール、メタノール、及びイソプロピルアルコールの一つに懸濁させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
2つの液体の界面にて配向したカーボンナノチューブの周囲の薄層選択性膜を形成することが、
多官能性アミン成分を水性層中へ注入し、
多官能性アミン反応性成分を有機層へ注入する
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
多官能性アミン成分を水性層中へ注入することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性アミンを水性層へ注入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
有機層にアミノ反応性成分を注入することが、少なくとも1つの多官能性アミン反応性化合物を有機層中へ注入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの多官能性アミン反応性化合物を注入することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性化合物を有機層中へ注入することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2つの液体の界面にて配向したカーボンナノチューブの周囲に薄層選択性膜を形成することが、配向したカーボンナノチューブを包む薄膜を作製するための界面技術を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造支持層上に接合させることが、薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を微細孔支持層へ積層するための界面重合方式を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造支持層上へ接合させることが、
有機層の添加前に微細孔支持体を水性層中へ沈め、
水性層から微細孔支持体を引き上げ、薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材と接触させ、
組み合わされた微細孔支持体と薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を有機層中へ引き上げ、
有機層中の組み合わされた微細孔支持体と薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を微細孔支持体と複合材を界面接合させるのに十分な時間が経過するまで留める
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
界面接合が残留ジアミン化合物と酸ハロゲン化物類の反応を通じて起きる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
配向したカーボンナノチューブの周囲に薄層選択性膜を形成することが、
構造支持層を多官能性アミンによりコーティングし、
コーティングされた構造支持層を、その上の配向したナノチューブと共に、有機層中の多官能性アミン反応性化合物に曝す
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
複数の配向したカーボンナノチューブ、
配向したカーボンナノチューブの周囲に形成された薄層選択性膜、及び
前記薄層選択性膜と接合した微細孔支持体構造
を含む逆浸透膜。
【請求項16】
前記複数の配向したナノチューブが、第一層が希釈されたアルコール系の層であり、第二層が有機層である、2つの非混和性液体層の間の界面を利用して配向される、請求項15に記載の逆浸透膜。
【請求項17】
前記薄層選択性膜の作製が、
多官能性アミン成分を希釈したアルコール系層の中へ注入し、
有機層に多官能性アミン反応性成分を注入し、それにより前記選択性膜を2つの非混和性層の間の界面に形成させる
ことを含む、請求項16に記載の逆浸透膜。
【請求項18】
前記多官能性アミン成分が少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性アミンを含む、請求項17に記載の逆浸透膜。
【請求項19】
前記多官能性アミン反応性成分が少なくとも1つの芳香族、脂肪族及び脂環式多官能性化合物を含む、請求項16に記載の逆浸透膜。
【請求項20】
逆浸透膜を作製する方法であって、該方法は
カーボンナノチューブを第一溶液中に懸濁し、
第一成分をカーボンナノチューブが第一溶液と第二溶液の間の界面で配向するように、制御された割合で第一溶液へ添加し、
少なくとも1つの第二成分を第一溶液へ、及び少なくとも1つの成分を第二溶液へ添加し、それにより薄層選択性膜を第一溶液と第二溶液の間の界面、及び配向したカーボンナノチューブの周りに形成させる
ことを含む方法。
【請求項21】
微細孔支持体構造を薄層選択性膜へ接合することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの第二成分を第一溶液へ添加することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性アミンを希釈したアルコール系溶液中へ添加することを含み、
少なくとも1つの成分を第二溶液へ添加することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性化合物を第二溶液へ添加することを含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項1】
逆浸透膜を作製する方法であって、該方法は、
複数のカーボンナノチューブを、第一の液体が水性層であり、第二の層が水性層に非混和性の有機層である2つの液体の界面で配向させ、
配向したカーボンナノチューブの周囲に薄層選択性膜を形成し、
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造支持層上へ接合する
ことを含む方法。
【請求項2】
複数のカーボンナノチューブを2つの液体の界面で配向させることが、
カーボンナノチューブをアルコール系溶液中に懸濁させ、
アルコール系溶液を水で希釈して水性層を形成し、
水性層中に非混和性である有機層を添加して、液液界面を形成し、
追加のアルコールを制御した割合で添加する
ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を接合させることが、有機層の添加前に微細孔支持膜を水性層中に配することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
微細孔支持膜を水性層中に配することが、微細孔支持膜をバッキング材上へ配することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブをアルコール系溶液中へ懸濁させることが、カーボンナノチューブをエタノール、メタノール、及びイソプロピルアルコールの一つに懸濁させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
2つの液体の界面にて配向したカーボンナノチューブの周囲の薄層選択性膜を形成することが、
多官能性アミン成分を水性層中へ注入し、
多官能性アミン反応性成分を有機層へ注入する
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
多官能性アミン成分を水性層中へ注入することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性アミンを水性層へ注入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
有機層にアミノ反応性成分を注入することが、少なくとも1つの多官能性アミン反応性化合物を有機層中へ注入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの多官能性アミン反応性化合物を注入することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性化合物を有機層中へ注入することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2つの液体の界面にて配向したカーボンナノチューブの周囲に薄層選択性膜を形成することが、配向したカーボンナノチューブを包む薄膜を作製するための界面技術を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造支持層上に接合させることが、薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を微細孔支持層へ積層するための界面重合方式を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を構造支持層上へ接合させることが、
有機層の添加前に微細孔支持体を水性層中へ沈め、
水性層から微細孔支持体を引き上げ、薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材と接触させ、
組み合わされた微細孔支持体と薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を有機層中へ引き上げ、
有機層中の組み合わされた微細孔支持体と薄層選択性膜/カーボンナノチューブ複合材を微細孔支持体と複合材を界面接合させるのに十分な時間が経過するまで留める
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
界面接合が残留ジアミン化合物と酸ハロゲン化物類の反応を通じて起きる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
配向したカーボンナノチューブの周囲に薄層選択性膜を形成することが、
構造支持層を多官能性アミンによりコーティングし、
コーティングされた構造支持層を、その上の配向したナノチューブと共に、有機層中の多官能性アミン反応性化合物に曝す
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
複数の配向したカーボンナノチューブ、
配向したカーボンナノチューブの周囲に形成された薄層選択性膜、及び
前記薄層選択性膜と接合した微細孔支持体構造
を含む逆浸透膜。
【請求項16】
前記複数の配向したナノチューブが、第一層が希釈されたアルコール系の層であり、第二層が有機層である、2つの非混和性液体層の間の界面を利用して配向される、請求項15に記載の逆浸透膜。
【請求項17】
前記薄層選択性膜の作製が、
多官能性アミン成分を希釈したアルコール系層の中へ注入し、
有機層に多官能性アミン反応性成分を注入し、それにより前記選択性膜を2つの非混和性層の間の界面に形成させる
ことを含む、請求項16に記載の逆浸透膜。
【請求項18】
前記多官能性アミン成分が少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性アミンを含む、請求項17に記載の逆浸透膜。
【請求項19】
前記多官能性アミン反応性成分が少なくとも1つの芳香族、脂肪族及び脂環式多官能性化合物を含む、請求項16に記載の逆浸透膜。
【請求項20】
逆浸透膜を作製する方法であって、該方法は
カーボンナノチューブを第一溶液中に懸濁し、
第一成分をカーボンナノチューブが第一溶液と第二溶液の間の界面で配向するように、制御された割合で第一溶液へ添加し、
少なくとも1つの第二成分を第一溶液へ、及び少なくとも1つの成分を第二溶液へ添加し、それにより薄層選択性膜を第一溶液と第二溶液の間の界面、及び配向したカーボンナノチューブの周りに形成させる
ことを含む方法。
【請求項21】
微細孔支持体構造を薄層選択性膜へ接合することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの第二成分を第一溶液へ添加することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性アミンを希釈したアルコール系溶液中へ添加することを含み、
少なくとも1つの成分を第二溶液へ添加することが、少なくとも1つの芳香族、脂肪族又は脂環式多官能性化合物を第二溶液へ添加することを含む、
請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−530591(P2012−530591A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516101(P2012−516101)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/036360
【国際公開番号】WO2010/147743
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/036360
【国際公開番号】WO2010/147743
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
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