薄膜電極を形成する方法
燃料電池電極を形成する方法は、基材(130)及び少なくとも1つの堆積装置(110)を設けること、予め決定された所望の電極特性に基づいて、少なくとも1つの多孔質層を有する堆積特性プロファイルを生成すること、及び堆積装置(110)に対する基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、堆積装置(110)から材料をスパッタリングすることによって、堆積特性プロファイルに従って薄膜を形成することを包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
ここ数年の間に、大規模及び小規模両方の発電のための燃料電池の普及及び実用化がかなり進んできている。燃料電池は、水素と酸素のような反応剤による電気化学反応を起こして、電気及び熱を生成する。燃料電池は、蓄電池に類似するが、電力を供給しながら再充電し得る点で異なる。さらに、燃料電池は、炭化水素を燃焼するデバイス等の他の電力源よりも汚染が少ない。
【0003】
燃料電池は、モータ、ライト、コンピュータ又は任意の多数の電気機器に電力を供給するために用い得るDC(直流)電圧をもたらす。一般的な燃料電池は、燃料極と空気極との間に配置される電解質を備えている。いくつかの異なるタイプの燃料電池があり、それぞれ異なる化学反応を用いている。燃料電池は、通常、用いられる電解質のタイプによって分類される。燃料電池は、一般的に、プロトン交換膜(PEM)燃料電池、アルカリ燃料電池(AFC)、リン酸燃料電池(PAFC)、固体酸化物燃料電池(SOFC)及び溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)の5つのグループのうちの1つに分類される。
【0004】
たいていのSOFCは、高速酸素イオン伝導性セラミックのような固体材料から形成された電解質を備える。電解質内で十分なイオン伝導率を与えるために、SOFCは、通常、500〜1000℃の温度範囲において作動する。電解質の各々の側に1つの電極があり、一方が燃料極であり、他方が空気極である。空気のような酸化剤は空気極に供給され、空気極は電解質に酸素イオンを供給する。水素又はメタンのような燃料は燃料極に供給され、燃料極において、燃料は、電解質を通して輸送された酸素イオンと反応する。この反応によって電子が生成され、その後、電子は有用な電力として外部回路に送られる。
【0005】
SOFCの運転全体を通して、電池は、多くの場合、室温と最大作動温度との間を繰り返される。この熱サイクルによって、ハウジング材料は、その熱膨張率に応じて、収縮、膨張する。この膨張及び収縮によって熱応力が生じ、その熱応力はシール材及び他の構造部品を介してセラミックセルに直に伝達される可能性がある。これらの熱応力は、シール材を劣化させたり、又は構造的に脆性のセラミックセルを破壊したりすることによって、SOFCの耐用年数を実質的に低減させる。さらに、著しい応力を生み出す1つの機構は、レドックスサイクルによる燃料極及び空気極の膨張である。燃料極では、燃料供給が遮断されると、サーメットの金属部分が酸化されるようになる。結果として酸化することによって、燃料極は膨張し、セルの故障に繋がる可能性がある。同様の機構が、空気極において生じることも観察し得る。なかには、さらに多くの燃料を費やす複雑な起動及び停止手順を行うことによってこれに対処しようとするシステム、連続運転の実施を取り入れるシステム、又はデバイス性能を犠牲として(選択された材料の低い触媒性能に起因)、熱サイクルに対して復元力のある熱適合性の非常に高い材料を見つけて利用することを試みるシステムもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
燃料電池電極を形成する方法は、基材及び少なくとも1つの堆積装置を設けること、予め決定された所望の電極特性に基づいて、少なくとも1つの多孔質層を有する堆積特性プロファイルを生成すること、及び堆積装置に対する基材の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、堆積装置から材料をスパッタリングすることによって、堆積特性プロファイルに従って薄膜を形成することを包含する。
【0008】
添付の図面は本発明の装置及び方法の種々の実施形態を示しており、本明細書の一部を構成するものである。例示する実施形態は、本発明の装置及び方法を例示するものに過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0009】
複数の図面にわたって、同じ符号は、必ずしも同じではないが、類似の構成要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
燃料電池電極を形成する方法は、基材及び少なくとも1つの堆積装置を設けること、予め決定された所望の電極特性に基づいて、少なくとも1つの多孔質層を有する堆積特性プロファイルを生成すること、及び堆積装置に対する基材の相対的な位置を少なくとも1つの第1の軸に関して変化させながら、堆積特性プロファイルに従って、堆積装置から材料をスパッタリングすることにより薄膜を形成することを包含する。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いるとき、薄膜とは、10マイクロメートル未満の厚みを有する薄膜を意味するものと広義に理解されるべきである。さらに、多孔質層とは、約25%又はそれ以上の多孔率を有する層を意味するものと広義に理解されるべきであり、緻密層とは、約25%未満の多孔率を有する層を意味するものと広義に理解されるべきである。
【0012】
以下の記述では、本発明の方法及び装置を完全に理解できるようにするために、説明上、数多くの具体的な細部を記載する。しかしながら、これらの具体的な細部を用いることなく、本発明の方法及び装置を実現し得ることは当業者には理解されよう。本明細書において「一実施形態」又は「或る実施形態」という場合、その実施形態に関連して記述する個々の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な場所において「一実施形態では」という言い回しが現われるが、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているとは限らない。
例示的な構造
図1は、一般的に、スパッタガン(110)のような1つの堆積装置、及びスパッタガン(110)に対して基材(130)を動かす1つの基材前進機構(120)を備える電極形成システム(100)の概略図を示している。
【0013】
スパッタガン(110)の下方に材料が堆積されるが、材料が堆積される領域には、堆積厚プロファイル(150)に対応したスパッタパターン(140)を形成することができる。堆積される材料の密度は、スパッタガン(110)からのx方向及び/又はy方向の距離と共に変化する。従って、スパッタガン(110)は、基材(130)に対して概ね垂直方向にて位置合わせされるように配向され得、堆積厚プロファイル(150)によって特徴付けできるように材料を堆積させる。概ね垂直方向にて位置合わせされる場合、堆積厚プロファイル(150)は、スパッタガン(110)の真下において最大値を有し、その値はスパッタガン(110)からの距離が大きくなるに応じて減少する。
【0014】
前進機構(120)は、主な移動方向(160)において、基材(130)を前進させて、スパッタガン(110)を通過させるように構成されている。前進機構(120)は、基材(130)を第2の方向(170)のような他の方向において動かすこともでき、基材(130)が種々のx方向距離においてスパッタガン(110)の下を通過できるようにする。さらに、スパッタガン(110)の下を通過する際に、基材(130)を第2の方向(170)に動かすことができる。結果として、スパッタガン(110)の下を連続して通過させながら、スパッタガン(110)から基材(130)へのx方向距離を制御又は調節することにより、種々の密度を有する層を基材(130)上に形成することができる。主な移動方向(160)において基材(130)がスパッタガン(110)の下を連続して通過する長さも、形態的な変化の度合いを決定するであろう。基材(130)、又はスパッタガン(110)のいずれかを動かすことによって、基材−スパッタガン間の距離zを変化させることもできる。多数のスパッタガンを用いることによって、組成的及び/又は形態的特性に勾配のある層を形成することもできる。
例示的な実施形態及び運転
図2は、基材前進機構(120)上に載せられた基材(130)の上方に、相対して配置された複数のスパッタガン(110a、110b)を備える電極形成システム(100a)を示している。図1のスパッタガン(110a、110b)と同様、各スパッタガン(110a、110b)は、ターゲット材料1及びターゲット材料2のスパッタパターン(140a、140b)を形成する。スパッタパターン(140a、140b)は、重ねることもできる。さらに、スパッタパターン(140a、140b)の大きさを個別に制御することができ、それによって異なる堆積プロファイルを形成することができる。そのような構成によって、組成勾配及び/又は形態勾配のある、正確に制御された層を形成できるようになる。さらに、図2は、前進線A、B、C(200、210、220)を示している。これらの層の形成及び前進経路(200、210、220)の意味は、後にさらに詳細に説明することとする。
【0015】
図3は、勾配特性を有する薄膜電極を形成する方法のフロー図である。その工程の最初のステップは、薄膜内に組成的及び/又は形態的な特性プロファイルを形成する、電極の組成的及び/又は形態的特性を含む所望の堆積特性を決定することである(300)。従って、このステップは、堆積特性及びそれらのプロファイルの所望のプロファイルを決定することを含む。その工程の次のステップは、その上に電極が形成されることになる基材を設けることである(ステップ310)。その基材には、任意の適切な基材を用いることができる。それらの例としては、多孔性セラミック基材又は緻密な電解質材料を挙げることができる。
【0016】
基材上に薄膜を形成することは、各スパッタガンに関する、必要な堆積厚プロファイルを決定することを含む(ステップ320)。本発明の方法は、スパッタガンのような少なくとも1つの材料堆積デバイスを備えるシステムを利用することができる。材料をスパッタリングする際、各スパッタガンは、図1、図4A、図5A及び図6Aに示すものに類似のスパッタ堆積厚プロファイルを生成する。
【0017】
このステップにはまた、少なくとも1つの材料堆積装置、即ち、スパッタガンによって生成される、必要な堆積厚プロファイルを、時間と共に如何に変化させることができるかを決定することも含まれる。例えば、先(ステップ300)に決定された所望の特性を有する薄膜を形成するために、形成工程全体にわたって、又は形成工程の或る特定の時間中に、一方が他方よりも大きくなるように互いに対して堆積厚プロファイルを変更する必要があるかもしれない。第1の堆積厚プロファイルが他方のプロファイルよりも大きい場合には、スパッタガン間を前進する基材は、第2のスパッタガンからのターゲット材料2を受ける前に、第1のスパッタガンからのターゲット材料1を受けることができる。これにより、薄膜内の組成勾配を制御できるようになる。この組成制御は、スパッタガンからの相対的な距離が大きくなると、堆積される材料が少なくなることによる。第1の堆積厚プロファイルを用いることにより、第1のスパッタガンからの材料が、相対的に大きな距離で被着されることになる。この距離で堆積される材料は、密度が低い層を形成することになり、その層は、ナノポア、メソポア及び/又はマイクロポアのような細孔を含むことができる。ナノポアは約10nm未満の細孔であり、メソポアは通常約10〜100nmの大きさであり、マイクロポアは約0.1μmよりも大きい。便宜上、本明細書では、これらの細孔構造をまとめて細孔と称する。これらの細孔を形成する結果として、形成された層内にナノ空洞が形成される。ナノ空洞は、細孔の大きさの空洞である。これらのナノ空洞は、凝集による金属ナノ微粒子の大きさを制限し(それは、表面積を大きくすること、及び/又は量子閉じ込め効果によって、個々の触媒活性を高める)、反応剤及び生成物の物質輸送に影響を及ぼす。さらに、細孔を小さくすることにより、表面積が大きくなり、触媒反応サイトの数が増える。さらに、細孔を形成するための材料の曲率に関連する歪みが、材料の触媒特性に影響を及ぼす等の効果もある。
【0018】
スパッタガンからの基材の距離(主にx方向)に応じて、第1のスパッタガンによって堆積される多孔性材料を基材上に堆積することができる。この場合、結果として形成される薄膜の相対的な形態は、より大きなパーセンテージの多孔率を有することができる。結果として、堆積厚プロファイルを制御することによって、組成勾配及び/又は形態勾配を有する薄膜を形成できるようになる。
【0019】
堆積厚プロファイルは、互いに対する、及び/又は基材に対するスパッタガンの角度を変更すること、単位時間当たりに堆積される材料の量を変更すること、或いは任意の他の適切な手段によって制御することができる。堆積厚プロファイルは、必ずしも変更する必要はない。組成勾配及び/又は形態勾配の形成は、堆積厚プロファイルを変更すること、及び/又は基材前進経路を制御すること、及び/又は任意の他の多数の要素の任意の組み合わせによって制御することができる。
【0020】
従って、本発明の方法における次のステップは、基材前進経路を決定することである(ステップ330)。基材前進経路は、薄膜電極の形成時に、基材が移動する経路を表す。基材前進経路の制御には、任意の方向における前進速度の変化、及び/又は任意の方向における基材の前進の制御が含まれ得る。堆積ゾーンを通過する所要時間を変化させること、又は堆積ゾーンを完全には通過させないこと等の、複雑な通過のさせ方をはじめとする、任意の基材前進経路に従うことができる。先に説明したように、基材の位置を制御することによって、形態勾配及び/又は組成勾配を形成できるようになる。スパッタガンの下を何度も通過させることによって、又はスパッタガンの下を前後に複数回行き来させることによって、多数の勾配を形成することができる。
【0021】
組成勾配及び/又は形態勾配の形成の制御は、基材前進経路及び/又は堆積厚プロファイルを調節すること以外の要素によって制御することもできる。例えば、電力、基材の傾き、スパッタガン−基材間距離及び磁界を変更することによって、一方のスパッタガンによって堆積される厚みを他方とは別個に制御することができる。システム圧力によってもまた、堆積プロファイルを変更することができるが、別個には変更できない。したがって、他のシステム要素が決定されなければならない(ステップ340)。
【0022】
先行するステップによって、全ての工程パラメータが決定されると、基材上に電極が形成される(ステップ350)。予め決定された所望の組成的及び/又は形態的特性を有する薄膜を形成するために、電極は、上記のパラメータに従って基材上にスパッタリングされる。
【0023】
上記のように、本発明は、薄膜の厚み全体にわたって組成勾配及び形態勾配を正確に制御された薄膜電極を形成する方法を提供する。そのような薄膜は、SOFCの燃料極及び空気極として優れた容積エネルギー(厚み1μm当たりのエネルギー)を有する。多孔性の低い材料によって接続された「ナノ空洞」の存在(z方向)に起因して、レドックスサイクルに対する燃料極(サーメット)の安定性も改善される。結果として、薄膜SOFCの性能は、850mW/cm2又はそれ以上ともし得る。さらに、当然ではあるが、その薄膜構造は、他の解決法よりも必要とされる材料が少ない。
【0024】
図4Aは、前進方向A(200)に関する、第1及び第2のスパッタガン(110a、110b;図2)によって堆積されるターゲット材料1及びターゲット材料2の第1及び第2の堆積厚プロファイル(400、410)を示しており、図4Bは、厚み方向に関する、同じ材料の対応した第1及び第2の濃度プロファイル(420、430)を示している。図4Aは、基材(130;図2)が前進線A(200;図2)に沿ってy方向の向きにスパッタガン(110a、110b;図2)を通過し前進する際の、基材の堆積厚プロファイル(400、410)を示している。図4Aに示すように、基材が前進線A(200)に沿って移動する場合には、基材は、第2のスパッタガン(110b)からよりも、第1のスパッタガン(110a)からのターゲット材料1に関してより高い濃度を有することになる。図4Bからみてとれるように、薄膜全体にわたって、組成勾配(420、430)が存在するであろう。線A(200)に沿って移動する際、基材は最初にターゲット材料1だけを堆積されることになり、ターゲット材料2のパーセンテージは、基材が右に進むのに応じて増加する。スパッタガン(110a、110b)の下を通過した後に、ターゲット材料2のパーセンテージは減少し、ついには、ターゲット材料1だけが堆積され続ける。その結果が、図4Bに示す組成勾配である。組成プロファイル(420、430)はz方向に対して示されており、横座標は厚み方向を表し、縦座標は相対濃度を表す。
【0025】
図5Aは、前進方向B(210)に関する第1及び第2の堆積厚プロファイル(500)を示し、図5Bは、厚み方向に関する濃度プロファイル(510)を示している。図2の例示的な堆積プロファイルによれば、堆積される薄膜は、線B(210)に沿って堆積される場合には、組成勾配や厚み勾配を有さず、2つの同じ堆積厚プロファイル(500)及び組成プロファイル(510)を構成するであろう。重ねて、濃度プロファイル(510)は、方向B(210)に沿って右に進む基材(130;図2)に対して示されており、組成プロファイル(510)はz方向に対して示されており、横座標は厚み方向を表し、縦座標は相対濃度を表す。
【0026】
図6Aは、前進方向C(220)に関する、結果として生成される第1及び第2の堆積厚プロファイル(600、610)を示しており、図6Bは厚み方向に関する濃度プロファイル(620、630)を示している。図4A及び図4Bのプロファイルとは逆の濃度プロファイル(620、630)及び堆積厚プロファイル(600、610)を有する薄膜は、基材(130;図2)が、線A(200)ではなく、線C(220)に沿って移動する場合に堆積されることになる。上記のように、堆積厚プロファイル(600、610)は右に進む基材(130;図2)に対して示されており、組成プロファイル(620、630)はz方向に対して示されており、横座標は厚み方向を表し、縦座標は相対濃度を表す。
【0027】
結果として、本発明の方法は、所望の、且つ固有の薄膜構造を提供する。薄膜の組成及び多孔率/密度は、薄膜全体にわたって周期的に調整される。多孔率を調節することにより、薄膜の機械的性能を改善できるようになる。薄膜多孔率を調節すると共に、薄膜組成を調整することにより、表面移動度が内部移動度よりも大幅に高くなるため、活性種の触媒反応速度及び移動度が改善される。
【0028】
図7は、基材(130)が図6A及び図6B記載の実施態様と同じようにして基材前進経路C(220)に沿って移動する状況を示している。本実施態様では、基材(130)の傾きのような他の要素が制御されており、そこでは、基材(130)は最初にターゲット材料1を受けるが、短い時間で同じ量のターゲット材料2が堆積され、結果として、第2の堆積厚プロファイル(710)のピークが高くなる。第1及び第2の堆積厚プロファイル(700、710)を図7Aに示しており、また、結果として生成される濃度プロファイル(720、730)を図7Bに示している。このように、堆積厚プロファイル(700、710)の調節及び基材前進経路(22)によって、組成勾配及び形態勾配を有する種々の薄膜の形成の制御がもたらされる。基材前進経路(220)の位置を調節する以外に、基材前進速度を調節することによっても、組成勾配及び/又は形態勾配の形成を制御することができる。
【0029】
先に記載したように、基材前進機構(120)は、スパッタガン(110a、110b)に対して基材が動く方向を制御することができる。この制御には、より長い距離にわたって、又は完全にスパッタゾーンを通過させること、及びいくつかの方向において基材(130)の動きを変化させて何度もスパッタゾーンを通過させることが含まれ得る。長い距離又は短い距離にわたって通過させること、及び多数の方向において通過させることによって、多孔率のような組成的特性及び形態的特性を同時に調節又は制御するのがさらに容易となる。従って、本発明の方法及びシステムは、熱デバイスサイクルに対して大きな復元力を有する固有の薄膜構造の形成を提供する。さらに、厚み方向において段階的に変化する薄膜、及び段階的又は交互に変化する多孔率を有する固有の薄膜構造に起因して、燃料極/空気極薄膜が非効率的であるという設計上の欠点を抱えていたSOFCデバイスの作動効率が改善される。このようにして構成された薄膜は、従来技術よりも大幅な改善を実現することができる。さらに、この方法は良好に制御され、大量生産可能である。
【0030】
図8は、本発明の方法に従って形成された薄膜電極(800)を示している。当該電極(800)は、交互に配置された緻密層(810)と非緻密層(820)を含む。非緻密層は、ナノポアを含む。ナノポアは、触媒系の表面積を大幅に増加させる。所与の材料に関しては、表面積が増加すると、触媒比活性は概ね一定であるものの、総体的な触媒活性は高くなる。またナノポアは、触媒表面から離れる未反応の化学種の拡散を制限することにより、燃料及びO2の利用促進も支援する。これは、緻密層及び多孔質層が交互に配置された多層系の場合に特に当てはまる。これらの系は、反応剤化学種のための多数の「障害」を生成し、それによって反応剤が小さな「反応チャンバ」(多孔質層)内に留まるため、反応の確率を高める。燃料極サーメット系では特に、ナノポアは、大きな細孔に比べて、レドックスサイクル時の薄膜応力を低減し、性能を改善する。ナノポアのセラミックフレームは、金属成分の凝集を抑制し、結果として、金属片が小さくなる。金属片が小さくなると、レドックスサイクル時の膨張/収縮が小さくなるだけでなく、表面積が大きくなり、結果として触媒活性が高くなる。薄膜電極は、多数のあらゆる組成勾配及び/又は形態勾配を含むことができる。その薄膜電極は、本発明の方法及びシステムによって形成することができ、燃料極、空気極及び/又は電解質を含む。適切な燃料極材料としては、ニッケル、プラチナ、Ni−イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、Cu−YSZ、Ni−サマリウムドープセリア(SDC)、Ni−ガドリニウムドープセリア(GDC)、Cu−SDC、Cu−GDCを挙げることができる。適切な空気極材料には、銀、プラチナ、サマリウムストロンチウムコバルト酸化物(SSCO、SmxSryCoO3−δ)、バリウムランタンコバルト酸化物(BLCO、BaxLayCoO3−δ)、ガドリニウムストロンチウムコバルト酸化物(GSCO、GdxSryCoO3−δ)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM、LaxSryMnO3−δ)及びランタンストロンチウムコバルトフェライト(LawSrxCoyFezO3−δ)並びにその混合物が含まれ得る。
【0031】
図9は、本発明の方法及びシステムに従って形成された、燃料極(910)、空気極(920)及び電解質(930)を有する燃料電池(900)を示している。電極を含む複数の層は薄く、10〜500ナノメートルの厚みを有することができる。さらには、これらの層の厚みは、30〜80ナノメートルとすることもできる。電極(910、920)の細孔の大きさ、多孔率、層厚、及び全薄膜厚を変更することによって、燃料電池(900)の性能を大幅に高めることができる。SSCOは、高い酸素還元作用、イオン及び電子伝導率、及び界面での低い分極損失等に起因して、LSMよりも実用的な空気極材料であることが知られている。これらの利点を達成し得るにもかかわらず、その非常に高い熱膨張係数(TCE)に起因して、SSCOは用いられないことが多い。本発明の方法によって形成される電極は、薄膜構造内に種々の多孔率を有する層状の薄膜を有し、TCEの著しい不整合を克服することにより、より実効的に電極を使用するのを容易にする。その電極(910、920)は、一般的な電極よりも一桁薄い。また、その電極(910、920)は著しく大きな容積電力密度を有する。さらに、その電極(910、920)は、高い電力で作動させる際に性能を劣化させる恐れがある物質輸送制限を低減する。電極内の組成を変化させることは、触媒粒子の大きさ、触媒活性及び選択性、並びにイオン及び電子伝導を制御することに関する他の利点も有する。本特許出願に記載する方法によってこれらの要素を制御することにより、性能が最大限に発揮される。
代替の実施形態
図10に示す代替の実施態様は、合計3つの堆積装置(110a、110b、110c)を備える電極形成システム(100b)を示している。先のシステム(100;図1、100a;図2)と同様に、基材前進経路、堆積厚プロファイル、前進速度、及び/又はさまざまな電力、基材の傾き、スパッタガン−基材間距離、磁界等の他の要素のうちの多数の要素を調節又は制御することによって、或いはシャッタを用いて、堆積装置(100a、100b、100c)のうちの少なくとも1つから吐出される材料の少なくとも一部を選択的に遮断することによって、正確に制御された組成特性及び/又は形態特性を有する薄膜を形成することができる。前進経路の一例(1000)が示されている。形成される薄膜における種々の組成勾配及び/又は形態勾配を達成するために、多数の前進経路に従うことができる。所望の特性に応じて、前進経路及び/又は複数の要素を個別に制御したり、又は組み合わせることができる。
【0032】
本発明の構成は、電池サイクル能力が改善され、且つ推定電力密度が2倍になるというように、優れた燃料電池性能を提供する。この構造の薄膜特性並びに違い違いの多孔率に起因して、当該システムは、熱及び酸化サイクルに対する耐性が大幅に高くなる。これまでに例示した実施態様では、1、2及び3つのスパッタガンシステムを示しているが、任意の数の堆積装置を利用することができる。さらに、多数のパラメータの制御を利用して、所望の特性を有する薄膜構造を備える電極を形成することができる。
【0033】
以上の記載は、本発明の方法及び装置を例示し、説明する目的でのみ提示した。それは、本開示を包括的に記載したり、開示したものと全く同じ形態に限定する意はない。上記の教示に鑑みて、数多くの変更及び改良が可能である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されることとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】例示的な一実施形態による、電極形成システムの図
【図2】例示的な一実施形態による、電極形成システムの図
【図3】例示的な一実施形態による、薄膜電極を形成する方法を示すフロー図
【図4A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図4B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図5A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図5B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図6A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図6B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図7】例示的な一実施形態による、電極形成システムの図
【図7A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図7B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図8】例示的な一実施形態による、薄膜電極を示す図
【図9】例示的な一実施形態による、燃料電池を示す図
【図10】例示的な一実施形態による、電極形成システムを示す図
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
ここ数年の間に、大規模及び小規模両方の発電のための燃料電池の普及及び実用化がかなり進んできている。燃料電池は、水素と酸素のような反応剤による電気化学反応を起こして、電気及び熱を生成する。燃料電池は、蓄電池に類似するが、電力を供給しながら再充電し得る点で異なる。さらに、燃料電池は、炭化水素を燃焼するデバイス等の他の電力源よりも汚染が少ない。
【0003】
燃料電池は、モータ、ライト、コンピュータ又は任意の多数の電気機器に電力を供給するために用い得るDC(直流)電圧をもたらす。一般的な燃料電池は、燃料極と空気極との間に配置される電解質を備えている。いくつかの異なるタイプの燃料電池があり、それぞれ異なる化学反応を用いている。燃料電池は、通常、用いられる電解質のタイプによって分類される。燃料電池は、一般的に、プロトン交換膜(PEM)燃料電池、アルカリ燃料電池(AFC)、リン酸燃料電池(PAFC)、固体酸化物燃料電池(SOFC)及び溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)の5つのグループのうちの1つに分類される。
【0004】
たいていのSOFCは、高速酸素イオン伝導性セラミックのような固体材料から形成された電解質を備える。電解質内で十分なイオン伝導率を与えるために、SOFCは、通常、500〜1000℃の温度範囲において作動する。電解質の各々の側に1つの電極があり、一方が燃料極であり、他方が空気極である。空気のような酸化剤は空気極に供給され、空気極は電解質に酸素イオンを供給する。水素又はメタンのような燃料は燃料極に供給され、燃料極において、燃料は、電解質を通して輸送された酸素イオンと反応する。この反応によって電子が生成され、その後、電子は有用な電力として外部回路に送られる。
【0005】
SOFCの運転全体を通して、電池は、多くの場合、室温と最大作動温度との間を繰り返される。この熱サイクルによって、ハウジング材料は、その熱膨張率に応じて、収縮、膨張する。この膨張及び収縮によって熱応力が生じ、その熱応力はシール材及び他の構造部品を介してセラミックセルに直に伝達される可能性がある。これらの熱応力は、シール材を劣化させたり、又は構造的に脆性のセラミックセルを破壊したりすることによって、SOFCの耐用年数を実質的に低減させる。さらに、著しい応力を生み出す1つの機構は、レドックスサイクルによる燃料極及び空気極の膨張である。燃料極では、燃料供給が遮断されると、サーメットの金属部分が酸化されるようになる。結果として酸化することによって、燃料極は膨張し、セルの故障に繋がる可能性がある。同様の機構が、空気極において生じることも観察し得る。なかには、さらに多くの燃料を費やす複雑な起動及び停止手順を行うことによってこれに対処しようとするシステム、連続運転の実施を取り入れるシステム、又はデバイス性能を犠牲として(選択された材料の低い触媒性能に起因)、熱サイクルに対して復元力のある熱適合性の非常に高い材料を見つけて利用することを試みるシステムもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
燃料電池電極を形成する方法は、基材及び少なくとも1つの堆積装置を設けること、予め決定された所望の電極特性に基づいて、少なくとも1つの多孔質層を有する堆積特性プロファイルを生成すること、及び堆積装置に対する基材の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、堆積装置から材料をスパッタリングすることによって、堆積特性プロファイルに従って薄膜を形成することを包含する。
【0008】
添付の図面は本発明の装置及び方法の種々の実施形態を示しており、本明細書の一部を構成するものである。例示する実施形態は、本発明の装置及び方法を例示するものに過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0009】
複数の図面にわたって、同じ符号は、必ずしも同じではないが、類似の構成要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
燃料電池電極を形成する方法は、基材及び少なくとも1つの堆積装置を設けること、予め決定された所望の電極特性に基づいて、少なくとも1つの多孔質層を有する堆積特性プロファイルを生成すること、及び堆積装置に対する基材の相対的な位置を少なくとも1つの第1の軸に関して変化させながら、堆積特性プロファイルに従って、堆積装置から材料をスパッタリングすることにより薄膜を形成することを包含する。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いるとき、薄膜とは、10マイクロメートル未満の厚みを有する薄膜を意味するものと広義に理解されるべきである。さらに、多孔質層とは、約25%又はそれ以上の多孔率を有する層を意味するものと広義に理解されるべきであり、緻密層とは、約25%未満の多孔率を有する層を意味するものと広義に理解されるべきである。
【0012】
以下の記述では、本発明の方法及び装置を完全に理解できるようにするために、説明上、数多くの具体的な細部を記載する。しかしながら、これらの具体的な細部を用いることなく、本発明の方法及び装置を実現し得ることは当業者には理解されよう。本明細書において「一実施形態」又は「或る実施形態」という場合、その実施形態に関連して記述する個々の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な場所において「一実施形態では」という言い回しが現われるが、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているとは限らない。
例示的な構造
図1は、一般的に、スパッタガン(110)のような1つの堆積装置、及びスパッタガン(110)に対して基材(130)を動かす1つの基材前進機構(120)を備える電極形成システム(100)の概略図を示している。
【0013】
スパッタガン(110)の下方に材料が堆積されるが、材料が堆積される領域には、堆積厚プロファイル(150)に対応したスパッタパターン(140)を形成することができる。堆積される材料の密度は、スパッタガン(110)からのx方向及び/又はy方向の距離と共に変化する。従って、スパッタガン(110)は、基材(130)に対して概ね垂直方向にて位置合わせされるように配向され得、堆積厚プロファイル(150)によって特徴付けできるように材料を堆積させる。概ね垂直方向にて位置合わせされる場合、堆積厚プロファイル(150)は、スパッタガン(110)の真下において最大値を有し、その値はスパッタガン(110)からの距離が大きくなるに応じて減少する。
【0014】
前進機構(120)は、主な移動方向(160)において、基材(130)を前進させて、スパッタガン(110)を通過させるように構成されている。前進機構(120)は、基材(130)を第2の方向(170)のような他の方向において動かすこともでき、基材(130)が種々のx方向距離においてスパッタガン(110)の下を通過できるようにする。さらに、スパッタガン(110)の下を通過する際に、基材(130)を第2の方向(170)に動かすことができる。結果として、スパッタガン(110)の下を連続して通過させながら、スパッタガン(110)から基材(130)へのx方向距離を制御又は調節することにより、種々の密度を有する層を基材(130)上に形成することができる。主な移動方向(160)において基材(130)がスパッタガン(110)の下を連続して通過する長さも、形態的な変化の度合いを決定するであろう。基材(130)、又はスパッタガン(110)のいずれかを動かすことによって、基材−スパッタガン間の距離zを変化させることもできる。多数のスパッタガンを用いることによって、組成的及び/又は形態的特性に勾配のある層を形成することもできる。
例示的な実施形態及び運転
図2は、基材前進機構(120)上に載せられた基材(130)の上方に、相対して配置された複数のスパッタガン(110a、110b)を備える電極形成システム(100a)を示している。図1のスパッタガン(110a、110b)と同様、各スパッタガン(110a、110b)は、ターゲット材料1及びターゲット材料2のスパッタパターン(140a、140b)を形成する。スパッタパターン(140a、140b)は、重ねることもできる。さらに、スパッタパターン(140a、140b)の大きさを個別に制御することができ、それによって異なる堆積プロファイルを形成することができる。そのような構成によって、組成勾配及び/又は形態勾配のある、正確に制御された層を形成できるようになる。さらに、図2は、前進線A、B、C(200、210、220)を示している。これらの層の形成及び前進経路(200、210、220)の意味は、後にさらに詳細に説明することとする。
【0015】
図3は、勾配特性を有する薄膜電極を形成する方法のフロー図である。その工程の最初のステップは、薄膜内に組成的及び/又は形態的な特性プロファイルを形成する、電極の組成的及び/又は形態的特性を含む所望の堆積特性を決定することである(300)。従って、このステップは、堆積特性及びそれらのプロファイルの所望のプロファイルを決定することを含む。その工程の次のステップは、その上に電極が形成されることになる基材を設けることである(ステップ310)。その基材には、任意の適切な基材を用いることができる。それらの例としては、多孔性セラミック基材又は緻密な電解質材料を挙げることができる。
【0016】
基材上に薄膜を形成することは、各スパッタガンに関する、必要な堆積厚プロファイルを決定することを含む(ステップ320)。本発明の方法は、スパッタガンのような少なくとも1つの材料堆積デバイスを備えるシステムを利用することができる。材料をスパッタリングする際、各スパッタガンは、図1、図4A、図5A及び図6Aに示すものに類似のスパッタ堆積厚プロファイルを生成する。
【0017】
このステップにはまた、少なくとも1つの材料堆積装置、即ち、スパッタガンによって生成される、必要な堆積厚プロファイルを、時間と共に如何に変化させることができるかを決定することも含まれる。例えば、先(ステップ300)に決定された所望の特性を有する薄膜を形成するために、形成工程全体にわたって、又は形成工程の或る特定の時間中に、一方が他方よりも大きくなるように互いに対して堆積厚プロファイルを変更する必要があるかもしれない。第1の堆積厚プロファイルが他方のプロファイルよりも大きい場合には、スパッタガン間を前進する基材は、第2のスパッタガンからのターゲット材料2を受ける前に、第1のスパッタガンからのターゲット材料1を受けることができる。これにより、薄膜内の組成勾配を制御できるようになる。この組成制御は、スパッタガンからの相対的な距離が大きくなると、堆積される材料が少なくなることによる。第1の堆積厚プロファイルを用いることにより、第1のスパッタガンからの材料が、相対的に大きな距離で被着されることになる。この距離で堆積される材料は、密度が低い層を形成することになり、その層は、ナノポア、メソポア及び/又はマイクロポアのような細孔を含むことができる。ナノポアは約10nm未満の細孔であり、メソポアは通常約10〜100nmの大きさであり、マイクロポアは約0.1μmよりも大きい。便宜上、本明細書では、これらの細孔構造をまとめて細孔と称する。これらの細孔を形成する結果として、形成された層内にナノ空洞が形成される。ナノ空洞は、細孔の大きさの空洞である。これらのナノ空洞は、凝集による金属ナノ微粒子の大きさを制限し(それは、表面積を大きくすること、及び/又は量子閉じ込め効果によって、個々の触媒活性を高める)、反応剤及び生成物の物質輸送に影響を及ぼす。さらに、細孔を小さくすることにより、表面積が大きくなり、触媒反応サイトの数が増える。さらに、細孔を形成するための材料の曲率に関連する歪みが、材料の触媒特性に影響を及ぼす等の効果もある。
【0018】
スパッタガンからの基材の距離(主にx方向)に応じて、第1のスパッタガンによって堆積される多孔性材料を基材上に堆積することができる。この場合、結果として形成される薄膜の相対的な形態は、より大きなパーセンテージの多孔率を有することができる。結果として、堆積厚プロファイルを制御することによって、組成勾配及び/又は形態勾配を有する薄膜を形成できるようになる。
【0019】
堆積厚プロファイルは、互いに対する、及び/又は基材に対するスパッタガンの角度を変更すること、単位時間当たりに堆積される材料の量を変更すること、或いは任意の他の適切な手段によって制御することができる。堆積厚プロファイルは、必ずしも変更する必要はない。組成勾配及び/又は形態勾配の形成は、堆積厚プロファイルを変更すること、及び/又は基材前進経路を制御すること、及び/又は任意の他の多数の要素の任意の組み合わせによって制御することができる。
【0020】
従って、本発明の方法における次のステップは、基材前進経路を決定することである(ステップ330)。基材前進経路は、薄膜電極の形成時に、基材が移動する経路を表す。基材前進経路の制御には、任意の方向における前進速度の変化、及び/又は任意の方向における基材の前進の制御が含まれ得る。堆積ゾーンを通過する所要時間を変化させること、又は堆積ゾーンを完全には通過させないこと等の、複雑な通過のさせ方をはじめとする、任意の基材前進経路に従うことができる。先に説明したように、基材の位置を制御することによって、形態勾配及び/又は組成勾配を形成できるようになる。スパッタガンの下を何度も通過させることによって、又はスパッタガンの下を前後に複数回行き来させることによって、多数の勾配を形成することができる。
【0021】
組成勾配及び/又は形態勾配の形成の制御は、基材前進経路及び/又は堆積厚プロファイルを調節すること以外の要素によって制御することもできる。例えば、電力、基材の傾き、スパッタガン−基材間距離及び磁界を変更することによって、一方のスパッタガンによって堆積される厚みを他方とは別個に制御することができる。システム圧力によってもまた、堆積プロファイルを変更することができるが、別個には変更できない。したがって、他のシステム要素が決定されなければならない(ステップ340)。
【0022】
先行するステップによって、全ての工程パラメータが決定されると、基材上に電極が形成される(ステップ350)。予め決定された所望の組成的及び/又は形態的特性を有する薄膜を形成するために、電極は、上記のパラメータに従って基材上にスパッタリングされる。
【0023】
上記のように、本発明は、薄膜の厚み全体にわたって組成勾配及び形態勾配を正確に制御された薄膜電極を形成する方法を提供する。そのような薄膜は、SOFCの燃料極及び空気極として優れた容積エネルギー(厚み1μm当たりのエネルギー)を有する。多孔性の低い材料によって接続された「ナノ空洞」の存在(z方向)に起因して、レドックスサイクルに対する燃料極(サーメット)の安定性も改善される。結果として、薄膜SOFCの性能は、850mW/cm2又はそれ以上ともし得る。さらに、当然ではあるが、その薄膜構造は、他の解決法よりも必要とされる材料が少ない。
【0024】
図4Aは、前進方向A(200)に関する、第1及び第2のスパッタガン(110a、110b;図2)によって堆積されるターゲット材料1及びターゲット材料2の第1及び第2の堆積厚プロファイル(400、410)を示しており、図4Bは、厚み方向に関する、同じ材料の対応した第1及び第2の濃度プロファイル(420、430)を示している。図4Aは、基材(130;図2)が前進線A(200;図2)に沿ってy方向の向きにスパッタガン(110a、110b;図2)を通過し前進する際の、基材の堆積厚プロファイル(400、410)を示している。図4Aに示すように、基材が前進線A(200)に沿って移動する場合には、基材は、第2のスパッタガン(110b)からよりも、第1のスパッタガン(110a)からのターゲット材料1に関してより高い濃度を有することになる。図4Bからみてとれるように、薄膜全体にわたって、組成勾配(420、430)が存在するであろう。線A(200)に沿って移動する際、基材は最初にターゲット材料1だけを堆積されることになり、ターゲット材料2のパーセンテージは、基材が右に進むのに応じて増加する。スパッタガン(110a、110b)の下を通過した後に、ターゲット材料2のパーセンテージは減少し、ついには、ターゲット材料1だけが堆積され続ける。その結果が、図4Bに示す組成勾配である。組成プロファイル(420、430)はz方向に対して示されており、横座標は厚み方向を表し、縦座標は相対濃度を表す。
【0025】
図5Aは、前進方向B(210)に関する第1及び第2の堆積厚プロファイル(500)を示し、図5Bは、厚み方向に関する濃度プロファイル(510)を示している。図2の例示的な堆積プロファイルによれば、堆積される薄膜は、線B(210)に沿って堆積される場合には、組成勾配や厚み勾配を有さず、2つの同じ堆積厚プロファイル(500)及び組成プロファイル(510)を構成するであろう。重ねて、濃度プロファイル(510)は、方向B(210)に沿って右に進む基材(130;図2)に対して示されており、組成プロファイル(510)はz方向に対して示されており、横座標は厚み方向を表し、縦座標は相対濃度を表す。
【0026】
図6Aは、前進方向C(220)に関する、結果として生成される第1及び第2の堆積厚プロファイル(600、610)を示しており、図6Bは厚み方向に関する濃度プロファイル(620、630)を示している。図4A及び図4Bのプロファイルとは逆の濃度プロファイル(620、630)及び堆積厚プロファイル(600、610)を有する薄膜は、基材(130;図2)が、線A(200)ではなく、線C(220)に沿って移動する場合に堆積されることになる。上記のように、堆積厚プロファイル(600、610)は右に進む基材(130;図2)に対して示されており、組成プロファイル(620、630)はz方向に対して示されており、横座標は厚み方向を表し、縦座標は相対濃度を表す。
【0027】
結果として、本発明の方法は、所望の、且つ固有の薄膜構造を提供する。薄膜の組成及び多孔率/密度は、薄膜全体にわたって周期的に調整される。多孔率を調節することにより、薄膜の機械的性能を改善できるようになる。薄膜多孔率を調節すると共に、薄膜組成を調整することにより、表面移動度が内部移動度よりも大幅に高くなるため、活性種の触媒反応速度及び移動度が改善される。
【0028】
図7は、基材(130)が図6A及び図6B記載の実施態様と同じようにして基材前進経路C(220)に沿って移動する状況を示している。本実施態様では、基材(130)の傾きのような他の要素が制御されており、そこでは、基材(130)は最初にターゲット材料1を受けるが、短い時間で同じ量のターゲット材料2が堆積され、結果として、第2の堆積厚プロファイル(710)のピークが高くなる。第1及び第2の堆積厚プロファイル(700、710)を図7Aに示しており、また、結果として生成される濃度プロファイル(720、730)を図7Bに示している。このように、堆積厚プロファイル(700、710)の調節及び基材前進経路(22)によって、組成勾配及び形態勾配を有する種々の薄膜の形成の制御がもたらされる。基材前進経路(220)の位置を調節する以外に、基材前進速度を調節することによっても、組成勾配及び/又は形態勾配の形成を制御することができる。
【0029】
先に記載したように、基材前進機構(120)は、スパッタガン(110a、110b)に対して基材が動く方向を制御することができる。この制御には、より長い距離にわたって、又は完全にスパッタゾーンを通過させること、及びいくつかの方向において基材(130)の動きを変化させて何度もスパッタゾーンを通過させることが含まれ得る。長い距離又は短い距離にわたって通過させること、及び多数の方向において通過させることによって、多孔率のような組成的特性及び形態的特性を同時に調節又は制御するのがさらに容易となる。従って、本発明の方法及びシステムは、熱デバイスサイクルに対して大きな復元力を有する固有の薄膜構造の形成を提供する。さらに、厚み方向において段階的に変化する薄膜、及び段階的又は交互に変化する多孔率を有する固有の薄膜構造に起因して、燃料極/空気極薄膜が非効率的であるという設計上の欠点を抱えていたSOFCデバイスの作動効率が改善される。このようにして構成された薄膜は、従来技術よりも大幅な改善を実現することができる。さらに、この方法は良好に制御され、大量生産可能である。
【0030】
図8は、本発明の方法に従って形成された薄膜電極(800)を示している。当該電極(800)は、交互に配置された緻密層(810)と非緻密層(820)を含む。非緻密層は、ナノポアを含む。ナノポアは、触媒系の表面積を大幅に増加させる。所与の材料に関しては、表面積が増加すると、触媒比活性は概ね一定であるものの、総体的な触媒活性は高くなる。またナノポアは、触媒表面から離れる未反応の化学種の拡散を制限することにより、燃料及びO2の利用促進も支援する。これは、緻密層及び多孔質層が交互に配置された多層系の場合に特に当てはまる。これらの系は、反応剤化学種のための多数の「障害」を生成し、それによって反応剤が小さな「反応チャンバ」(多孔質層)内に留まるため、反応の確率を高める。燃料極サーメット系では特に、ナノポアは、大きな細孔に比べて、レドックスサイクル時の薄膜応力を低減し、性能を改善する。ナノポアのセラミックフレームは、金属成分の凝集を抑制し、結果として、金属片が小さくなる。金属片が小さくなると、レドックスサイクル時の膨張/収縮が小さくなるだけでなく、表面積が大きくなり、結果として触媒活性が高くなる。薄膜電極は、多数のあらゆる組成勾配及び/又は形態勾配を含むことができる。その薄膜電極は、本発明の方法及びシステムによって形成することができ、燃料極、空気極及び/又は電解質を含む。適切な燃料極材料としては、ニッケル、プラチナ、Ni−イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、Cu−YSZ、Ni−サマリウムドープセリア(SDC)、Ni−ガドリニウムドープセリア(GDC)、Cu−SDC、Cu−GDCを挙げることができる。適切な空気極材料には、銀、プラチナ、サマリウムストロンチウムコバルト酸化物(SSCO、SmxSryCoO3−δ)、バリウムランタンコバルト酸化物(BLCO、BaxLayCoO3−δ)、ガドリニウムストロンチウムコバルト酸化物(GSCO、GdxSryCoO3−δ)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM、LaxSryMnO3−δ)及びランタンストロンチウムコバルトフェライト(LawSrxCoyFezO3−δ)並びにその混合物が含まれ得る。
【0031】
図9は、本発明の方法及びシステムに従って形成された、燃料極(910)、空気極(920)及び電解質(930)を有する燃料電池(900)を示している。電極を含む複数の層は薄く、10〜500ナノメートルの厚みを有することができる。さらには、これらの層の厚みは、30〜80ナノメートルとすることもできる。電極(910、920)の細孔の大きさ、多孔率、層厚、及び全薄膜厚を変更することによって、燃料電池(900)の性能を大幅に高めることができる。SSCOは、高い酸素還元作用、イオン及び電子伝導率、及び界面での低い分極損失等に起因して、LSMよりも実用的な空気極材料であることが知られている。これらの利点を達成し得るにもかかわらず、その非常に高い熱膨張係数(TCE)に起因して、SSCOは用いられないことが多い。本発明の方法によって形成される電極は、薄膜構造内に種々の多孔率を有する層状の薄膜を有し、TCEの著しい不整合を克服することにより、より実効的に電極を使用するのを容易にする。その電極(910、920)は、一般的な電極よりも一桁薄い。また、その電極(910、920)は著しく大きな容積電力密度を有する。さらに、その電極(910、920)は、高い電力で作動させる際に性能を劣化させる恐れがある物質輸送制限を低減する。電極内の組成を変化させることは、触媒粒子の大きさ、触媒活性及び選択性、並びにイオン及び電子伝導を制御することに関する他の利点も有する。本特許出願に記載する方法によってこれらの要素を制御することにより、性能が最大限に発揮される。
代替の実施形態
図10に示す代替の実施態様は、合計3つの堆積装置(110a、110b、110c)を備える電極形成システム(100b)を示している。先のシステム(100;図1、100a;図2)と同様に、基材前進経路、堆積厚プロファイル、前進速度、及び/又はさまざまな電力、基材の傾き、スパッタガン−基材間距離、磁界等の他の要素のうちの多数の要素を調節又は制御することによって、或いはシャッタを用いて、堆積装置(100a、100b、100c)のうちの少なくとも1つから吐出される材料の少なくとも一部を選択的に遮断することによって、正確に制御された組成特性及び/又は形態特性を有する薄膜を形成することができる。前進経路の一例(1000)が示されている。形成される薄膜における種々の組成勾配及び/又は形態勾配を達成するために、多数の前進経路に従うことができる。所望の特性に応じて、前進経路及び/又は複数の要素を個別に制御したり、又は組み合わせることができる。
【0032】
本発明の構成は、電池サイクル能力が改善され、且つ推定電力密度が2倍になるというように、優れた燃料電池性能を提供する。この構造の薄膜特性並びに違い違いの多孔率に起因して、当該システムは、熱及び酸化サイクルに対する耐性が大幅に高くなる。これまでに例示した実施態様では、1、2及び3つのスパッタガンシステムを示しているが、任意の数の堆積装置を利用することができる。さらに、多数のパラメータの制御を利用して、所望の特性を有する薄膜構造を備える電極を形成することができる。
【0033】
以上の記載は、本発明の方法及び装置を例示し、説明する目的でのみ提示した。それは、本開示を包括的に記載したり、開示したものと全く同じ形態に限定する意はない。上記の教示に鑑みて、数多くの変更及び改良が可能である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されることとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】例示的な一実施形態による、電極形成システムの図
【図2】例示的な一実施形態による、電極形成システムの図
【図3】例示的な一実施形態による、薄膜電極を形成する方法を示すフロー図
【図4A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図4B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図5A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図5B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図6A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図6B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図7】例示的な一実施形態による、電極形成システムの図
【図7A】例示的な一実施形態による、薄膜電極の堆積厚プロファイルを示す図
【図7B】例示的な一実施形態による、薄膜電極の濃度プロファイルを示す図
【図8】例示的な一実施形態による、薄膜電極を示す図
【図9】例示的な一実施形態による、燃料電池を示す図
【図10】例示的な一実施形態による、電極形成システムを示す図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜燃料電池電極(800)を形成する方法であって:
基材(130)及び少なくとも1つの堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること;
予め決定された所望の電極(800)特性に基づいて、少なくとも1つの多孔質層を有する堆積特性プロファイルを生成すること;及び
前記堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記堆積装置(110、110a、110b、110c)から材料を堆積させることによって、前記堆積特性プロファイルに従って薄膜を形成すること、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記薄膜を形成することが、前記堆積装置(110、110a、110b、110c)に供給される電力を変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薄膜を形成することが、堆積される材料に対して前記基材(130)の傾きを変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜を形成することが、印加される磁界を変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記相対的な位置を変化させることが、基材の前進経路(220)に沿って前記基材(130)を前進させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記相対的な位置を変化させることが、前記基材(130)が前記堆積装置(110、110a、110b、110c)を通過する速度を変更することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること、及び前記第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記第2の装置(110、110a、110b、110c)から前記基材(130)上に第2の材料を堆積することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
薄膜燃料電池電極(800)であって:
基材(130)及び少なくとも1つの堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること;
予め決定された所望の電極(800)特性に基づいて、堆積特性プロファイルを生成すること;及び
前記堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記堆積装置(110、110a、110b、110c)から材料をスパッタリングすることによって、前記堆積特性プロファイルに従って、組成が段階的に変化した薄膜を形成すること、
によって形成される、薄膜燃料電池電極。
【請求項9】
さらに、第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること、及び、前記第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記第2の装置(110、110a、110b、110c)から前記基材(130)上に第2の材料をスパッタリングすることを含む、請求項8に記載の薄膜燃料電池電極。
【請求項10】
少なくとも1つの多孔質層を有する薄膜電極(800)間に配置される電解質を含んで成り、前記多孔質層が、10〜500ナノメートルの厚みを有する、燃料電池(900)。
【請求項1】
薄膜燃料電池電極(800)を形成する方法であって:
基材(130)及び少なくとも1つの堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること;
予め決定された所望の電極(800)特性に基づいて、少なくとも1つの多孔質層を有する堆積特性プロファイルを生成すること;及び
前記堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記堆積装置(110、110a、110b、110c)から材料を堆積させることによって、前記堆積特性プロファイルに従って薄膜を形成すること、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記薄膜を形成することが、前記堆積装置(110、110a、110b、110c)に供給される電力を変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薄膜を形成することが、堆積される材料に対して前記基材(130)の傾きを変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜を形成することが、印加される磁界を変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記相対的な位置を変化させることが、基材の前進経路(220)に沿って前記基材(130)を前進させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記相対的な位置を変化させることが、前記基材(130)が前記堆積装置(110、110a、110b、110c)を通過する速度を変更することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること、及び前記第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記第2の装置(110、110a、110b、110c)から前記基材(130)上に第2の材料を堆積することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
薄膜燃料電池電極(800)であって:
基材(130)及び少なくとも1つの堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること;
予め決定された所望の電極(800)特性に基づいて、堆積特性プロファイルを生成すること;及び
前記堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記堆積装置(110、110a、110b、110c)から材料をスパッタリングすることによって、前記堆積特性プロファイルに従って、組成が段階的に変化した薄膜を形成すること、
によって形成される、薄膜燃料電池電極。
【請求項9】
さらに、第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)を設けること、及び、前記第2の堆積装置(110、110a、110b、110c)に対する前記基材(130)の相対的な位置を少なくとも第1の軸に関して変化させつつ、前記第2の装置(110、110a、110b、110c)から前記基材(130)上に第2の材料をスパッタリングすることを含む、請求項8に記載の薄膜燃料電池電極。
【請求項10】
少なくとも1つの多孔質層を有する薄膜電極(800)間に配置される電解質を含んで成り、前記多孔質層が、10〜500ナノメートルの厚みを有する、燃料電池(900)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−510271(P2007−510271A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537978(P2006−537978)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/027331
【国際公開番号】WO2005/045968
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/027331
【国際公開番号】WO2005/045968
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
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