説明

薬剤がその上に付着した基材の分析

基材上への薬剤の付着の程度を評価するための改良された分析、診断、監視、及び他の方法(並びにそれらに関係する装置)が記載されている。代表的な方法は、患者の歯科的健康状態の監視、或いは歯の表面上に口腔用活性薬剤を付着させるためのそれらの使用に関する配合物の迅速で効率的なスクリーニング及び/又は特性分析において用いることができる。この方法は、近IR分光法及び/又はUV分光法を用いてその上に薬剤が付着した基材の直接的又はin situ分析を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本発明は、基材(例えば義歯表面へのヒドロキシアパタイト表面)上への薬剤(例えば口腔用活性薬剤)の付着又は吸収の程度を測定するための方法及び装置に関する。薬剤の量又は濃度は、基材上で(例えば両方とも固体形態の薬剤及び基材を用いて)近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて効率的に測定することができる。
【背景技術】
【0002】
[02]デンタルケアにおいて用いる口腔用活性薬剤のような薬剤の付着を分析するための従来の方法は、薬剤を基材と共にインキュベートし、インキュベートされた基材を洗浄し、それを溶媒抽出にかけることを含む。その後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて抽出物を分析して、付着した薬剤の間接的な定量を与える。特定のタイプのかかる分析においては、ニート溶液中か又は歯磨剤配合物中のいずれかのトリクロサンのような口腔用活性薬剤を、硬質組織基材を模擬するために用いる唾液で被覆されたヒドロキシアパタイトディスクと共にインキュベートし、その後にディスク上で溶媒抽出を行う。
【0003】
[03]しかしながら、溶媒抽出/HPLC法には制限がある。例えば、この方法は、その上に薬剤を付着させた表面の直接的な分析ではなく、抽出物の間接的な分析に頼っている。抽出及びその後にHPLC工程を行う結果として、この分析はしばしば相当な時間がかかる。更に、この方法は抽出剤を使用することに頼っており、これは与えられた薬剤/基材系と必ずしも適合するとは限らない可能性がある(例えば、分析する薬剤との反応によって分解するか又は悪影響を受けるか、或いは他の様相で薬剤の形態に影響を与える可能性がある)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[04]したがって、基材上への薬剤の付着の速度又は量を効率的に分析又は特徴づけることができる方法に関する必要性が当該技術において存在する。理想的には、かかる方法は薬剤/基材系の直接的な分析によって行って、迅速な結果を与えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、表面上への薬剤(例えば口腔用活性薬剤)の付着を分析するためのスクリーニング法のような効率的で信頼性のある方法に関する。かかる方法を用いて、付着させる薬剤を含む異なる配合物、並びに薬剤に関する異なるデリバリーシステムを評価し比較することができる。また、この方法は、患者又は他のユーザーにおける評価又は診断目的のために適用することもでき、したがって例えば患者の歯の表面上への口腔用活性薬剤の付着の分析におけるin vivoシステムに適用することができる。また、この方法は、例えば特定のデンタルケア計画の有効性を監視することを望むユーザーの場合における個人使用のためにも好適である。
【0006】
[06]ここで記載する直接的方法を用いて、例えば数分(例えば5〜10分)又は更に数秒(例えば60秒未満又は10〜45秒)のオーダーの比較的短い時間で分析結果を得ることができる。幾つかの態様によれば、これらの分析法で表面に関する種々の薬剤の分布が求められ、例えばこれらを用いてそれらが均一に分布しているかどうかを求めることができる。
【0007】
[07]したがって、本発明の幾つかの形態は、基材上への口腔ケア活性薬剤のような口腔用薬剤の付着を測定する方法に関する。この方法は、基材を口腔用薬剤と接触させてその上に一定量の口腔用薬剤を付着させ、近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて基材を分析することを含む。
【0008】
[08]本発明の他の形態は、患者の口腔の状態を診断する方法に関する。この方法は、近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて患者試料中の口腔用薬剤の存在を測定することを含む。
【0009】
[09]本発明の他の形態は、口腔用デリバリーシステムの有効性を評価する方法に関する。この方法は、歯科器具を用いて基材上に口腔用薬剤を付着させ、更に近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて基材を分析して付着の程度を測定することを含む。
【0010】
[10]本発明の他の形態は、任意の上記の方法を実施するための器具又は装置に関する。
[11]本発明の他の形態は、実行した際にデータ処理システムによって、一次及び二次導関数法、ピーク領域積分法、部分最小二乗回帰法(PLS)、クベルカ−ムンク変換法、多重線形回帰法、及びスペクトル減算法(例えば背景信号を減算する)からなる群から選択される数学的方法を用いて、上記に記載の方法にしたがって生成する近IRスペクトル又はUVスペクトルを分析する工程を含む方法を実施する実行可能な命令を記憶した1以上の有形のコンピューター可読媒体に関する。
【0011】
[12]上記の方法及び装置は、基材上に付着している薬剤の量又は濃度の絶対測定において用いることができる。また、(例えば監視用途の場合においては)この方法を用いてこれらの薬剤の相対的な量又は濃度を得ることができる。この方法を用いて、薬剤の付着の程度を、初期組成物中(例えばここで記載する方法にしたがって基材をインキュベートするのに用いる歯磨剤中)のその濃度の関数として、異なるデリバリーシステム(例えばゲルシステムに対するペースト)の使用の関数として、或いは本開示を考慮して当業者によって認識されるであろう任意の複数の他のパラメーターの関数として比較することができる。
【0012】
[13]本発明のこれら及び他の形態は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
[14]添付の図面(これらは本発明の種々の形態及び/又は関係する原理の例示を示すものであると理解すべきである)を考慮して以下の記載を参照することによって、本発明及びその有利性のより完全な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】[15]図1は、近IR又はUV分光法において用いるために好適な波長を含む電磁スペクトルを示す。
【図2】[16]図2は、口腔用活性薬剤であるトリクロサンの「識別特徴」を示す近IRスペクトルである。
【図3】[17]図3はトリクロサンの近IRスペクトルの二次導関数である。
【図4】[18]図4は、近IRを用いて測定したトリクロサンのピーク面積と、HPLCを用いて測定したトリクロサン濃度(ppm)との間の関係を示す。
【図5】[19]図5は、近IR分析法の検証中に得られたデータを示す。
【図6】[20]図6は、HAPディスクを近IR又はUV分光計中に取り付ける実験工程を示す。
【図7】[21]図7は、近IR分析法を従来の溶媒抽出/HPLC法と関連付ける方法を示す。
【図8】[22]図8は、近IR分析法を従来の溶媒抽出/HPLC法と関連付ける際にデータ分析法を用いることを示す。
【図9】[23]図9は、近IR分析法を従来の溶媒抽出/HPLC法と関連付ける際に、部分最小二乗回帰法を含むデータ分析法を用いることを示す。
【図10】[24]図10は、近IR分析法を従来の溶媒抽出/HPLC法と関連づける際に、部分最小二乗回帰法及び多重線形回帰法を含むデータ分析法を用いることを示す。
【図11】[25]図11は、積分球付属装置で改造された分光計を用いるUV分光法を用いて得られた2成分の混合物に関するUVスペクトルを示す。
【図12】[26]図12は、トリクロサンと共に5分間及び30分間インキュベートしたプラセボ試料及び基材を含む種々の試料に関するUVスペクトルを示す。
【図13】[27]図13は、本発明の1以上の形態を具現化する代表的なコンピューターシステム環境を示す。
【図14】[28]図14は、本発明の1以上の形態を具現化する代表的な口腔ケアの実施環境を示す。
【図15】[29]図15は、本発明の1以上の形態を具現化する歯ブラシ/プローブの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[30]本発明の幾つかの形態は、基材(例えば歯又は軟組織のような口腔内の基材)上に分配され付着している薬剤(例えば口腔用薬剤)を検出するための方法及び装置に関する。他の基材としては、薬剤(例えば医薬化合物)の吸収又は付着を分析するためにここで記載する方法にしたがって分析することができる血液及び唾液のような体液が挙げられる。この方法によって、基材による薬剤の吸収量を定量することができ、したがってこれらの方法は、例えば変化する条件下での付着薬剤の吸収速度及び/又は全量を比較するのに有用である。この方法はまた、薬剤と基材との間の相互作用の性質を特徴づけるのにも有用である。
【0015】
[31]口腔用薬剤のような薬剤としては、口腔ケアにおいて用いられるもの、及び/又は典型的な口腔用薬剤として用いられるものが挙げられる。例としては、ホスフェート、アミノ酸、カリウム塩、及びスズ化合物が挙げられる。トリクロサン及びラウリル硫酸ナトリウムは、口腔ケアにおいて用いられる活性薬剤の代表的な例である。口腔用薬剤の場合においては、これらは本方法及び装置において純粋な化合物として用いることができるが、しばしば水性又は有機溶媒による溶液の形態である。溶液は、通常は実際の使用条件を最も良好にシミュレートするように生理学的に許容できるものである。口腔用薬剤はまた、ペースト、ゲル、又はスラリーのような歯磨剤の形態であってもよい。
【0016】
[32]薬剤は一般に基材と接触させて、得られる薬剤含有基材をここで議論する方法を用いて分析して基材上への薬剤の吸収又は付着を測定することができるようにする。口腔用薬剤の場合においては、通常用いられる基材は、歯の表面の模擬するために用いるHAPディスクのようなヒドロキシアパタイト(HAP)試料である。例えば、唾液で被覆したHAPディスク(scHAP)を、口腔用薬剤の少なくとも一部が基材上に付着する条件下において、口腔用薬剤で処理又はこれと接触させることができる。「唾液」とは、自然の唾液、又は精製及び/又は他の方法で処理した唾液、或いは更に分析目的のために自然の唾液の特性を模擬するようにデザインした合成唾液を指すことができる。
【0017】
[33]他の態様によれば、基材は実際の組織、例えば歯の表面上への口腔用薬剤の付着の程度の知見を欲する歯科の患者又は歯磨剤のユーザーの歯又は軟組織であってよい。この情報は、口腔ケアの専門家によって管理されるか又は患者自体によって管理される患者のケアに関連させることができる。
【0018】
[34]代表的な態様においては、scHAPディスクのような基材を、液体歯磨剤溶液又は歯磨剤スラリーの形態のトリクロサンのような口腔用薬剤で処理するか又はこれと接触させる。次に、得られる薬剤含有(則ち口腔用薬剤がその上に付着している)基材を、近IR分光法又はUV分光法、或いはこれらの方法の組み合わせを用いて分析する。これらの分析の結果により、非常により煩雑で時間のかかる溶媒抽出を含む従来の方法との比較に基づいて、付着を正確に測定することができることが示される。
【0019】
[35]他の態様においては、ここで記載する方法は、患者における口腔処置計画(例えば口腔の健康状態を向上させる、歯を白くする、或いは歯の光沢を与える)の進展などの口腔の状態(例えば口腔用活性薬剤の付着、バイオフィルムの付着、或いは歯の漂白又は歯の光沢の程度)を診断するために適用することができる。更に他の態様においては、本方法は口腔ケアデリバリーシステムの有効性を測定するのに適用することができる。また、それらの所期の用途にしたがって変化する複雑性を有するこれらの方法を実施するための装置も意図される。例えば、実験用装置は広範囲の波長にわたる吸光度(又は反射率)を分析する能力を有していてもよいが、歯科専門家によって用いられるより簡単な装置は、より限定された能力を有し、対象の口腔用薬剤/基材系(例えば、特定の口腔用活性薬剤/歯の系)に特徴的な明瞭な波長又は波長範囲のみにおける吸光度を測定するものであってよい。
【0020】
[36]更により簡単な装置は、例えば時間の経過に伴う付着した薬剤の相対量を測定することによって継続中の口腔処置計画を監視するための消費者による家庭使用に適用することができる。かかる装置は、単独で用いることができ、或いは歯ブラシ又は他の口腔ケア器具中に含ませることもできる。器具のユーザーは、有利には、迅速な結果を得て口腔ケア計画の有効な監視を可能にすることができる。また、ユーザーは、計画を適切に変更することによって(例えばブラッシング及び/又はフロッシングをより頻繁か又はより長い時間行うことによって)かかる結果に対応することができる。
【0021】
[37]このように、ここで記載する方法は、所望の薬剤(例えばトリクロサンのような有益な口腔用活性薬剤)の程度又は時間経過に伴う傾向を監視するために有用である。しかしながら、本方法はまた、適切な対応によって対処することができる有害な歯への膜の付着のような付着した望ましくない薬剤の特徴づけるのにも適用することができる。本方法は、必要な場合には特定の薬剤/基材系を適切に特徴づける蛍光法のような他の方法と組み合わせることができる。
【0022】
[38]その上に薬剤が付着している基材の分析は、近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて行う。一般に、分光装置は、基材上に付着している薬剤の直接測定(量又は濃度)を行うために、固体測定用の付属装置を用いて改造する。近IR分光装置又はUV分光装置の場合においては、固体測定付属装置は、それぞれラピッドコンテントアナライザー(RCA)又は積分球であってよい。積分球の場合においては、分析する薬剤含有基材の試料を、Spectralonの名称で商業的に入手できる白色のセラミックプレートのような反射ディスクプレート上に配置させる(例えば光線を用いて中央に配置させる)ことができる。
【0023】
[39]その上に薬剤が付着している基材試料を調製するための代表的な技術は、試料を例えば所定の水濃度に乾燥して、検討されるパラメーターによるものではない結果における試料−試料の変動を最小にすることを含む。検討される代表的なパラメーターとしては、(i)溶液又は歯磨剤組成物中に始めに存在する薬剤濃度のような薬剤濃度、或いは(ii)薬剤デリバリー向上剤又は薬剤デリバリー遅延剤の濃度(例えばかかる溶液又は歯磨剤組成物中の初期濃度)のいずれかの関数としての、制御された条件下での付着薬剤の量の変化が挙げられる。
【0024】
[40]薬剤含有試料(例えば溶液又は歯磨剤中に始めに存在する薬剤の少なくとも一部がその上にある試料)の近IR又はUV分析によって、用いる試料の吸光度と波長との間の関係によって特徴づけられる対応するスペクトル(例えば近IRスペクトル又はUVスペクトル)が生成する。UVスペクトル(例えば固体測定付属装置として積分球を用いて得られるもの)の場合においては、初期スペクトルを波長に対する反射率によって特徴づけることができる。しかしながら、これらの反射率値はクベルカ−ムンク変換法のような変換操作を実施することによって対応する吸収スペクトルに変換することができる。
【0025】
[41]ここで記載する方法にしたがう分析から得られる近IR又はUVスペクトルのいずれかの場合においては、しばしば薬剤を有する溶液中に存在する公知の添加剤のような物質によるバックグラウンド又は基準信号を減じることが望ましい。したがって、データ分析法は、しばしば、スペクトル減算を実施して対象の薬剤のスペクトルをより良好に分解する(例えば、唾液単独から得られるもののような基準スペクトルを減算することによって分解スペクトルを得る)ことが必要である。有利に実施される更なるデータ処理技術は、近IR又はUVスペクトル(上記に記載のようにしてUVの場合には変換及び/又は分解することができる)の一次又は二次導関数を求めて(例えば試料ピークを干渉ピークから区別することによって)ピークの明瞭性を向上させることを含む。これら(及び場合によっては他のデータ処理技術)を用いてピークの明瞭性を所望の程度まで分解したら、種々の関連する得られたピークの下の面積を積分によって求めることができ、この面積は対象の付着薬剤の濃度又は絶対量に対応する。
【0026】
[42]幾つかの態様においては、他のデータ処理技術を用いて、干渉ピーク、例えば添加剤、不純物、或いは更なる薬剤のような、ここで記載する方法を用いてその付着又は吸収が測定される物質から得られるものの程度を減少させることができる。例えば、付着薬剤の混合物の場合においては、混合物中の異なる薬剤からのピークの干渉又は重なりを補正するために、多重線形回帰法又は部分最小二乗回帰法が有用である可能性がある。
【0027】
[43]ここで記載する近IR及びUV分析法において用いる波長は、電磁スペクトルの一部にわたる非常に広範囲の波長範囲であってよい。これらの波長は、UV真空波長範囲、近UV範囲、可視光範囲、近IR範囲、及び/又はIR範囲であってよい。しばしば、分析のために用いる波長(又は波長範囲)を、特定の薬剤又は薬剤/賦形剤の組み合わせに特異的なもの(則ち、分析用照射線によって特徴的に吸収されるか又は反射されて、対象の薬剤を「識別」するために用いることができる波長)に合わせることが望ましいであろう。
【0028】
[44]与えられた系に関して最も適切な波長のみ(例えば3つ又は4つの特性波長のみ)を選択することは、分光装置の複雑さ及び/又はコストを低減させるのに有益である可能性がある。分析において用いるための波長の選択プロセスは、例えば、種々の較正試料(則ち公知量又は基準量の薬剤を含むもの)において測定される薬剤の濃度に関して、候補波長に関する積分ピーク面積の線形回帰又は最小二乗分析に基づくことができる。また、選択方法には、対象の特定の薬剤に独特(例えば薬剤の純粋な溶液又は純粋な粉末形態から得られるスペクトルに基づく)か、或いは他の物質のピークとの重なりが最小の吸収波長を決定することを含ませることができる。例えば、選択プロセスを用いて、トリクロサンの近IR分析のために好適な波長としては、1604〜1804nm及び2190〜2300nmの範囲のものが挙げられることが求められた。口腔用活性薬剤であるラウリル硫酸ナトリウムの近IR分析のために好適な波長としては、1192〜2198nm、1626〜1814nm、及び2250〜2400nmの範囲のものが挙げられる。UV分析を用いる好適な波長としては、200〜500nmの範囲のものが挙げられる。
【0029】
[45]近IR及びUV/Vを、別々か又は更に組み合わせて用いて、口腔用活性薬剤、主成分、及び賦形剤のような添加剤などの薬剤のデリバリーに関する所望の情報を得ることができる。幾つかの態様によれば、近IR分析によって付着薬剤の全量を与えることができ、UV分析によって薬剤の混合物又は1種類以上の薬剤と1種類以上の添加剤との混合物中の個々の成分の濃度を求めることができる。
【0030】
[46]したがって、ここで記載する方法及び装置は、種々の用途において複数の可能な有利性を与える。例えば、本方法は口腔表面モデル上の活性薬剤のデリバリーを直接定量化する迅速分析法の開発において有用である。代表的な方法によって、HAP基材上の口腔用活性薬剤の付着を直接測定することができる。本方法は更に、歯磨剤マトリクス中での自然な状態の口腔用活性薬剤を検査し、最終生成物を分析するために有用である。本開示を考慮すると、他の有利性を達成することができ、他の有利な結果を得ることができることが明らかであろう。また、上記で記載する方法及び装置は、従来の方法及び装置と共に用いるか又はこれらと併用して実施することができることも認識されるであろう。本開示の範囲から逸脱することなく上記の装置及び方法において種々の変更を行うことができるので、本出願に含まれる全ての事項は例示のみのものとして解釈すべきであると意図される。
【0031】
コンピューターデータ処理環境:
[47]コンピューター実施環境において実行されるデータ構造、プログラムモジュール、プログラム、及びコンピューター命令と関連させて本発明の種々の形態を実施することができる。したがって、汎用のコンピューティング環境を簡単に議論することが有益である。したがって、本発明の1以上の形態は、図13において示されるような1以上のコンピューターシステムにおいて具現化することができる。図13において、コンピューター100は、中央処理装置110、システムメモリー112、及びシステムメモリー112を含む種々のシステム要素を中央処理ユニット110に接続するシステムバス114を含む。システムバス114は、任意の種々のバス構造を用いるメモリーバス又はメモリーコントローラー、周辺バス、及びローカルバスを含む任意の種々のタイプのバス構造のものであってよい。システムメモリー112の構造は当業者に周知であり、リードオンリーメモリー(ROM)内に記憶された基本入出力システム(BIOS)、並びにランダムアクセスメモリー(RAM)内に記憶されたオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、及びプログラムデータのような1以上のプログラムモジュールを含ませることができる。
【0032】
[48]また、コンピューター100には、データを読み書きするための種々のインターフェースユニット及びドライブを含ませることもできる。特に、コンピューター100は、それぞれハードディスクドライブ118及びリムーバブルメモリードライブ122をシステムバス114に接続するハードディスクインターフェース116及びリムーバブルメモリーインターフェース120を含む。リムーバブルメモリードライブの例としては、磁気ディスクドライブ及び光学ディスクドライブが挙げられる。ドライブ、及びフロッピーディスク124のようなそれらに関連するコンピューター可読媒体によって、コンピューター100に関するコンピューター可読の命令、データ構造、プログラムモジュール、及び他のデータの不揮発性の記憶が与えられる。単一のハードディスクドライブ118及び単一のリムーバブルメモリードライブ122が例示のみの目的のために示されているが、コンピューター100には幾つかのかかるドライブを含ませることができると理解される。更に、コンピューター100には、他のタイプのコンピューター可読媒体と接続するためのドライブを含ませることができる。
【0033】
[49]ユーザーは種々の入力装置を用いてコンピューター100と交信することができる。図13においては、キーボード128及びポインティングデバイス130をシステムバス114に接続するシリアルポートインターフェース126が示されている。ポインティングデバイス128は、マウス、トラックボール、ペン装置、又は同様の装置を用いて実施することができる。勿論、ジョイスティック、ゲームパッド、衛星放送用パラボラアンテナ、スキャナー、タッチスクリーンなどのような1以上の他の入力装置(図示せず)をコンピューター100に接続することができる。
【0034】
[50]コンピューター100には、装置をシステムバス114に接続するための更なるインターフェースを含ませることができる。図13には、ビデオ又はデジタルカメラ134をシステムバス114に接続するユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース132が示されている。IEEE1394インターフェース136を用いて、更なる装置をコンピューター100に接続することができる。更に、インターフェース136は、Apple Computerによって開発されたFireWire、及びSonyによって開発されたi.Linkのような特定の製造者インターフェースを用いて操作するように構成することができる。また、入力装置は、パラレルポート、ゲームポート、PCIボード、又は入力装置をコンピューターに接続するために用いる任意の他のインターフェースを介してシステムバス114に接続することもできる。
【0035】
[51]また、コンピューター100は、ディスプレイ装置142をシステムバス114に接続するビデオアダプター140も含む。ディスプレイ装置142としては、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電界放出ディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイ、又はユーザーによって見ることができる画像を生成する任意の他の装置を挙げることができる。印刷装置(図示せず)のような更なる出力装置をコンピューター100に接続することができる。
【0036】
[52]マイク144及びスピーカー146を用いて、音を記録及び再生することができる。サウンドカード148を用いて、マイク144及びスピーカー146をシステムバス114に接続することができる。当業者であれば、図13において示される装置の接続は例示のみの目的のためであり、幾つかの周辺装置を別のインターフェースによってシステムバス114に接続することができることを認識するであろう。例えば、ビデオカメラ134をIEEE1394インターフェース136に接続することができ、ポインティングデバイス130をUSBインターフェース132に接続することができる。
【0037】
[53]コンピューター100は、1以上の遠隔コンピューター、或いはサーバー、ルーター、ネットワークパーソナルコンピューター、ピア装置又は他の共通ネットワークノード、携帯電話又は携帯個人端末のような他の装置への論理結合を用いるネットワーク環境において操作することができる。コンピューター100は、システムバス114をローカルエリアネットワーク(LAN)152に接続するネットワークインターフェース150を含む。ネットワーク環境は、事務所、企業規模のコンピューターネットワーク、及び家庭用コンピューターシステムにおいて一般的である。
【0038】
[54]コンピューター100によってインターネットのような広域ネットワーク(WAN)154にアクセスすることもできる。図13には、シリアルポートインターフェース126及びWAN154に接続したモデムユニット156が示されている。モデムユニット156は、コンピューター100の内部又は外部に配置することができ、ケーブルモデム又は衛星モデムのような任意のタイプの通常のモデムであってよい。また、LAN152を用いてWAN154に接続することもできる。図13には、通常の方法でLAN152をWAN154に接続することができるルーター158が示されている。
【0039】
[55]示されているネットワーク接続は例示であり、コンピューター間の通信リンクを確立する他の方法を用いることができることが認識されるであろう。TCP/IP、フレームリレー、イーサネット、FTP、HTTPなどのような任意の種々の周知のプロトコルの存在が考えられ、コンピューター100をクライアント−サーバー構成で操作して、ユーザーがウエブベースのサーバーからウエブページを引き出すことができるようにすることができる。更に、任意の種々の従来のウエブブラウザを用いてウエブページ上のデータを表示及び処理することができる。
【0040】
[56]コンピューター100の操作は、種々の異なるプログラムモジュールによって制御することができる。プログラムモジュールの例は、特定のタスクを実施するか或いは特定の抽象データ型を実行するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、ライブラリー等である。また、本発明は、携帯装置、マルチプロセッサーシステム、マイクロプロセッサーをベースとするか又はプログラム可能な家庭用電子製品、ネットワークPCS、ミニコンピューター、メインフレームコンピューター、携帯情報端末、携帯電話などの他のコンピューターシステム構成を用いて実施することもできる。更に、本発明は、無線又は有線通信ネットワークを介して接続されている処理装置を遠隔操作することによってタスクを実施する分散コンピューティング環境で実施することもできる。分散コンピューティング環境においては、プログラムモジュールは局部又は遠隔メモリー記憶装置内に配置することができる。
【0041】
[57]上記で議論したように、種々の本発明方法は、フロッピーディスク、CD−ROM、リムーバブル記憶装置、ハードディスク、システムメモリー、内蔵メモリー、又は他のデータ記憶媒体のような1つ又は複数のコンピューター可読媒体上に記憶されているコンピューター可読命令として具現化することができる。コンピューター可読媒体は、コンピューターで実行可能なコンポーネント又はソフトウェアモジュールを記憶する。或いは、より多いか又はより少ないソフトウェアモジュールを用いることができる。それぞれのコンポーネントは、実行可能プログラム、データリンクライブラリー、環境設定ファイル、データベース、図形イメージ、バイナリデータファイル、テキストデータファイル、オブジェクトファイル、ソースコードファイルなどであってよい。1以上のコンピュータープロセッサーによって1以上のソフトウェアモジュールを実行する場合には、本発明の教示にしたがってソフトウェアモジュールを相互作用させて1以のコンピューターシステムを実行させる。
【0042】
歯ブラシ/プローブ環境:
[58]図14及び15において示されるように、ユーザーが歯ブラシ/プローブ300を把持して、彼/彼女の歯401をブラッシングすることができる。時には、ユーザーは彼/彼女の舌402もブラッシングすることができる。操作においては、診断センサーシステム305をプロセッサー110と組み合わせて用いて歯ブラシ/プローブ300によって種々の試料を得て、例えば時間に伴う付着薬剤の相対量を測定することによって進行中の口腔処置計画を監視するための消費者による家庭での使用が提供される。かかる歯ブラシ/プローブ器具は、単独で用いることができ、或いは歯ブラシ又は他の口腔ケア器具中に含ませることができる。この器具のユーザーは、有利なことに、迅速な結果を得て口腔ケア計画の有効な監視を可能にすることができる。また、ユーザーは、(例えばブラッシング及び/又はフロッシングをより頻繁か又はより長い時間行うことにより)計画を適切に変更することによってかかる結果に対応することができる。
【0043】
[59]図14及び15を参照すると、歯ブラシ/プローブ300は、頭部301及び柄部302を有する。頭部301は、剛毛のような1以上の歯洗浄部材303を含む口腔ケア領域を含んでいてよい。頭部301及び柄部302は、硬質プラスチック、樹脂、ラバー等、例えばポリプロピレンのような所望の材料から形成することができる。
【0044】
[60]ここで用いる「歯洗浄部材」又は「洗浄部材」という用語は、歯及び歯肉の部分と接触させることによって口腔の健康上の利益(例えば歯の洗浄、歯の研磨、歯の漂白、マッサージ、刺激等)を与えるのに通常用いられるか又は用いるのに好適な任意のタイプの構造を含む。かかる歯洗浄部材としては、複数の異なる形状及び寸法を有するように形成することができる剛毛の房、及び複数の異なる形状及び寸法を有するように形成することができる弾性洗浄部材、或いは剛毛及び弾性洗浄部材の両方の房の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
[61]歯ブラシ/プローブ300には、発光ダイオード(LED)、或いはスペクトル分析のための電磁周波数を与える任意の他の所望の形態の光学出力装置のような照明器具307を含ませることができる。例えば、照明器具307は、色、温度、強度、電磁波長などのような所望の特性を与えるように調整することができる有機LEDであってよい。OLED技術を歯ブラシ成形体中に埋め込むことができ、或いは歯ブラシ体の表面に適用することができる。本発明は分析において用いるいかなる特定のタイプの光にも限定されないことは、当業者によって理解される。
【0046】
[62]また、歯ブラシ/プローブ100には診断センサーシステム又はバイオセンサーシステム305を含ませることもできる。診断センサーシステム305には、近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法のための光を与えることを含む所望の方法にしたがって種々の特性を検出する1以上の個々のセンサー又はセンサーの組を含ませることができる。例えば、診断センサーシステム305には、試料中の特定の化学物質又は活性薬剤の存在、或いはここで記載する任意の他の所望の特性を検出するように構成されているセンサーを含ませることができる。
【0047】
[63]上記に記載したセンサーシステム305は、中央処理装置110、例えばオンボードプロセッサーに電気的又は通信的に接続することができる。プロセッサー110は、一般にセンサーシステム305によって集められた情報を処理し、その情報の分析結果をユーザーに報告して、彼/彼女の口腔内の状態をユーザーに知らせることを助ける。例えば、歯ブラシ/プローブ300のプロセッサー110は、ユーザーの歯の上左部分において一定レベルのトリオスキャンが検出されたことを報告することができる。
【0048】
[64]以下の実施例は本発明の例示として示す。これらの実施例は本発明の範囲をこれらとして限定するように解釈されるものではなく、他の等価の態様は本開示を考慮すれば明らかであろう。
【実施例】
【0049】
実施例1:
[65]口腔表面モデル上への活性薬剤のデリバリーを直接的に定量するための迅速分析法を評価及び開発して、唾液で被覆されたヒドロキシアパタイトディスク上へのトリクロサンのデリバリーを分析するために近IR分光法を使用することを検証し、結果を従来の溶媒抽出法と関連づけるために実験を行った。近IR分光法は分子の振動を測定する。−CH、=NH、−OH、及び−SHの信号が強い。近IRにおける倍音は、分析のための独特の結合バンドを示す。この装置によってより大きな表面積にわたる測定が可能である。
【0050】
[66]人間の唾液を採取し、測定した。健康な成人から、パラフィルム刺激全唾液を滅菌遠心分離管内に採取した。10,000RPMにおいて10分間遠心分離する(Sorvall SS-34ローター)ことによって全唾液を清澄化した。唾液の上澄み液を、UV光下において最小で45分間滅菌した。明澄化した滅菌唾液は、次に薄膜形成において用いることができる状態であった。HAP上での薄膜形成は、HAPディスク(直径0.5”×厚さ0.05”、Clarkson Chromatography, Inc.)を、37℃の振盪水浴中、14mLの滅菌丸底管内において1mLの清澄化滅菌唾液と共に20時間インキュベーションすることを含んでいた。吸引によって唾液を除去した。唾液で被覆されたHAPディスクを、1mLのトリクロサン処理溶液と共に5分間インキュベーションした(3重に行った)。処理したディスクをDI水で3回洗浄し、37℃のオーブン内において1時間乾燥した。処理溶液あたり3つのディスクを用いて、処理したディスクを近IRによって直接測定した。それぞれの側を3回測定した。またディスクは、その後に溶媒抽出(エタノールを使用)及びHPLCによっても測定した。
【0051】
[67]実験の結果、近IR分光法を用いてscHAP基材上へのトリクロサンの付着を直接測定することができることが分かった。また、開発した方法を用いて、異なる活性薬剤デリバリーシステムによって達成される付着を迅速に評価することができる。
【0052】
実施例2:
[68]近IR及びUV/Visによる活性薬剤の直接分析法:
[69](1)分析プロトコル(試料の調製及びデータの採取):
[70]全ての測定に関してブランクの試料を調製して、処理試料からのプラセボ試料の区別を確保した。
【0053】
[71](2)波長の選択(幾つかの方法で行った):
[72]純粋な物質を粉末又は溶液として測定し、特性信号からブランク信号を減じたものを測定した。対象の成分のスペクトル識別特徴を観察し、干渉成分を含まないと思われる領域及び波長を確認した。幾つかの場合においては、一次又は二次導関数前処理を適用して、混合物中に存在する成分間の分離を強くした。
【0054】
[73]最適の波長を確認するための他の方法は、(1)IRのような他の方法を用いる二次元相関分光法を用いてNIR及びUVの両方において求められる波長を決定することを助けることを含んでいた。一定範囲の活性薬剤濃度にわたって調製した試料から構成されるデータ組の二次元相関を用いると、濃度につれて変化する領域を相関させて、中赤外を用いて近IR及びUV領域における正確なバンドの割当を行ってこれらの解釈を導くことを助けることができる。(2)波長を選択するための他の方法は、単純線形回帰法を用いて濃度に高く相関していた個々のバンドを見出すことであった。正確な波長を確認したら、ピーク面積法、多重線形回帰、及び部分最小二乗回帰など(しかしながらこれらに限定されない)の定量法を適用することができる。(3)波長を選択するための最後の方法は、「遺伝的アルゴリズム」を用いることであった。これは、部分最小二乗又は多重線形回帰分析を用いて相関統計を向上させ且つ回帰誤差を最小にするための波長の正しい組み合わせを見出す方法であった。
【0055】
[74](3)試験装置:
[75]ラピッドコンテント付属装置(RCA)を備えたFOSS分散近IRモデルXDS:
[76]UV WinLab5セキュリティ強化ソフトウェアを備えたPerkin Elmer Lambda 650 UV−可視分光計。サンプリング付属装置はL650積分球60mmから構成されている。
【0056】
[77](4)データの採取:
[78]近IR分析の場合においては、RCA測定窓の上に試料を配置した。400nmから2500nmの32のコアド走査を用いて試料を測定した。平均測定値を記憶させた。HAPディスク分析のために、3つの別々のHAPディスクにそれぞれの処理を施した。近IR測定は、ディスクあたり合計で6回の測定に関してそれぞれの側について3回、則ちそれぞれの処理あたり18回行った。付着した活性薬剤又は賦形剤(例えばSLS)の濃度を求めるために、それぞれのスペクトルの二次導関数を求めた。Thermo Galacticによって市販されているピーク積分ソフトウェアを用いてピーク領域を積分した。用いた波長は、上記で確認した分離領域によって定めた。トリクロサンは、1604〜1804nm及び/又は2190〜2300nmを含む。SLSに関しては、近IR領域は1192〜1298;1626〜1814;及び2250〜2400nmを含んでいた。UVにおいては、活性薬剤分析のために用いた領域は200〜500nmnの領域を含んでいた。それぞれのディスクに関する平均的な結果を評価して、同じ処理を施したディスク間の再現性を確保した。
【0057】
[79]UV分析の場合においては、両面テープを用いて試料を99%反射Spectralonディスク上の中央に載置した。試料を1nmの間隔で200〜400nmにおいて測定した。UV検出値を、波長に対する反射率%として記録した。反射率%をクベルカ−モンク吸光度単位に変換し、これを濃度に相関させた。次に、n回の反復の平均値をn個のプラセボディスクの平均値から減じた。10点の平滑化関数を用いて二次導関数を求めた。その際には、対象のバンドのピーク面積を実施するか又は262nm〜324nmのPLS回帰を用いた。
【0058】
[80]したがって、上記の実施例に関する総合的なアプローチによって、モデル口腔用活性薬剤としてトリクロサンを用いる分析技術を評価した。分析は近IR及びUV分光法を用いて行った。ピーク面積測定、多重線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)(ケモメトリクス)などの種々のデータ処理法を用いた。これらの実験においては、新しい分析技術を従来の溶媒抽出法と相関させた。
【0059】
[81]ここで記載し開発した方法は、口腔用活性薬剤のような新しい薬剤の特性分析において適用することができる。この方法は、口腔表面上へ活性薬剤をデリバリー及び保持するための改良された方法の開発において有用である。この方法は、表面上への付着(吸収)の量を定量するのに必要か又は有用である場合に適用される。上記に記載の実験例においては、この方法は、モデル硬質組織基材としてヒドロキシアパタイト(HAP)ディスクを用いた。開発された方法によって、分析の間接的な性質、伴われる時間のかかる工程、及び潜在的な薬剤−基材相互作用に関する情報の欠如などの従来の溶媒抽出/HPLC法の種々の制限が克服される。
【0060】
[82]分子の振動の測定に基づく近IR分析技術は、固体及び液体基材並びに最終製品の直接的で迅速な分析、並びに混合物中の口腔用活性薬剤のような薬剤の良好な化学種別分析を与える有利性を有する。したがって、複数成分(例えばトリクロサン及びラウリル硫酸ナトリウムなどの混合物)の分析が可能である。
【0061】
[83]エネルギーレベル間の電子遷移に基づくUV分析技術によっても、固体及び液体基材の直接的で迅速な分析が与えられる。歯磨剤マトリクス中におけるそれらの自然な状態の口腔用活性薬剤のような薬剤を特性分析する能力、増加した処理量、及び促進される新処方のスクリーニング及び分析試験などの種々の有利性及び利益が、ここで記載する直接的な分析法に関連して得られる。
【0062】
[84]ブロック図、フローチャート、及び実施例を用いて上記の詳細な説明により、種々の態様の装置及び/又は方法を説明した。かかるブロック図、フローチャート、及び実施例が1以上の作用及び/又は操作を含む場合には、かかるブロック図、フローチャート、又は実施例の範囲内でのそれぞれの作用及び/又は操作は、広範囲のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせによって、個々か及び/又は集合的に実施することができることが当業者によって理解されるであろう。一態様においては、特定用途向集積回路(ASIC)によって種々の形態を実施することができる。しかしながら、当業者であれば、ここで開示する種々の態様は、標準的な集積回路において、コンピューター上で作動するコンピュータープログラムとして、プロセッサー上で作動するプログラムとして、ファームウェアとして、或いはこれらの実質的に全ての組み合わせとして、全体的か又は部分的に同等に実施することができ、並びに回路をデザインし、及び/又はソフトウェア又はファームウェアのためのコードを書き込むことはこの開示に照らせば十分に当業者の知識の範囲内であることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材を口腔用薬剤と接触させて一定量の口腔用薬剤をその上に付着させ;そして
(b)近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて基材を分析する;
ことを含む、基材上の口腔用薬剤の付着を測定する方法。
【請求項2】
口腔用薬剤が口腔ケア活性薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材がヒドロキシアパタイト(HAP)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基材が唾液で被覆されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の後で工程(b)の前に、工程(a)において得られる口腔用薬剤含有基材を乾燥することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)において得られる口腔用薬剤含有基材を所定の水濃度まで乾燥する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
口腔用薬剤が溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶液が口腔用薬剤及びデリバリー向上剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
口腔用薬剤が歯磨剤配合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
固体測定付属装置を有する近IR分光装置又はUV分光装置を用いて基材を分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
近IR分光装置を用いて基材を分析し、固体測定付属装置がラピッドコンテントアナライザー(RCA)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
UV分光装置を用いて基材を分析し、固体測定付属装置が積分球付属装置である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)の後で工程(b)の前に、工程(a)において得られる口腔用薬剤含有基材を、積分球付属装置内の反射ディスク板上に配置することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)の後に、
数学的方法を適用して工程(b)において得られる近IRスペクトル又はUVスペクトルから量的情報を得る;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
数学的方法が、一次又は二次導関数法、ピーク領域積分法、部分最小二乗回帰法(PLS)、クベルカ−ムンク変換法、及びスペクトル減算法からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)において用いる波長が口腔用薬剤に対して特異的なものである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて患者試料中の口腔用薬剤の量を測定することを含む、患者の口腔の状態を診断する方法。
【請求項18】
患者試料が、唾液試料、歯の試料、又は歯肉試料である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)歯科器具を用いて基材上に口腔用薬剤を付着させ;そして
(b)近赤外(近IR)分光法又は紫外(UV)分光法を用いて基材を分析する;
ことを含む、口腔用デリバリーシステムの有効性を評価する方法。
【請求項20】
請求項1、17、又は19に記載の方法を行うための装置。
【請求項21】
実行した際にデータ処理システムによって、一次及び二次導関数法、ピーク領域積分法、部分最小二乗回帰法(PLS)、クベルカ−ムンク変換法、多重線形回帰法、及びスペクトル減算法からなる群から選択される数学的方法を用いて、請求項1に記載の方法にしたがって生成する近IRスペクトル又はUVスペクトルを分析する;
工程を含む方法を実施する実行可能な命令を記憶した1以上のコンピューター可読媒体。
【請求項22】
該方法が、近IRスペクトルからのスペクトル減算を行って、付着した口腔用薬剤に関する分解された近IRスペクトルを得て、分解された近IRスペクトルの二次導関数を求め、分解された近IRスペクトルの二次導関数の1以上の関連するピークの下側の領域を積分することを含む、請求項21に記載のコンピューター可読媒体。
【請求項23】
該方法が、クベルカ−ムンク変換を行ってUVスペクトルを対応するUV吸収スペクトルに変換し、対応するUV吸収スペクトルからのスペクトル減算を行って、付着した口腔用薬剤に関する分解された対応するUV吸収スペクトルを得て、分解された対応するUV吸収スペクトルの二次導関数を求め、分解された対応するUV吸収スペクトルの二次導関数の1以上の関連するピークの下側の領域を積分することを含む、請求項21に記載のコンピューター可読媒体。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−517776(P2011−517776A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503240(P2011−503240)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/039651
【国際公開番号】WO2009/124310
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.イーサネット
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】