説明

薬剤副作用に関連したHLAアレルおよびその検出方法

本発明は、HLA−B1502またはHLA−B5801といった特定のHLAアレルの存在を決定する方法、および当該方法を実施するためのキットに関する。遺伝子マーカー(例えば、HLA−B1502、HLA−B5801、またはHLA−B4601)の存在または不存在に基づいて、患者が薬剤副作用(例えば、スティーブン−ジョンソン症候群、中毒性表皮剥離症または過敏性症候群)を引き起こすリスクがあるか否かを評価する方法もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
この出願は、その内容全体が引用される、2006年5月11日に出願された、米国仮特許出願第60/800,121号の利益を主張する。
【0002】
(背景)
薬剤副作用(ADR)は、望ましくない、かつ意図しない、薬剤の作用である。特に、予防、診断または治療に用いられる用量で、薬剤副作用は発生する。広く引用されているメタ分析によれば、ADRは死因の第4位から第6位の間にランクされている(Lazarou et al., JAMA, 279(15):1200−1205, 1998)。皮膚のADRは、すべての入院の約2〜3%を占めている(Bigby et al., JAMA, 256(24):3358−3363, 1986)。これらは軽度の斑丘疹(MPE)から、重症度が増すと、生命を脅かすADR、例えば、過敏性症候群(HSS)、スティーブン−ジョンソン症候群(SJS)、および中毒性表皮剥離症(TEN;ライル症候群)にまで及ぶ。後者の死亡率は40%もありうる。
【0003】
HSSは、発疹に加えて全身性の症状(例えば、発熱、関節痛、好酸球増多症、リンパ節腫脹)を伴う多臓器の関与(例えば、肝炎または腎炎)を特徴とする(Roujeau et al., N. Engl. J. Med., 331:1272−1285, 1994)。SJSおよびTENは、紫斑の水膨れの発疹の急速な成長並びに、斑の関与および皮膚の剥離を伴う標的様の損傷により特徴づけられる、免疫複合体媒介性の過敏性障害である(Roujeau et al. J Invest Dermatol, 1994, 102:28S−30S)。これらの多くは、スルホンアミド類、抗けいれん薬、アロプリノール、非ステロイド性抗炎症薬、および抗マラリア薬などの薬剤により引き起こされる(Roujeau et al., N. Engl. J. Med., 333(24):1600−1607, 1995)。台湾では、抗けいれん薬(例えば、CBZ、フェニトインおよびフェノバルビタール)、並びにアロプリノールがSJS/TENを引き起こす最も一般的な薬剤である。
【0004】
近年の薬理ゲノミクスの発展により、ADRへの罹患しやすさは特定の遺伝子アレルと関連していることが示唆されている。例えば、チオプリンメチルトランスフェラーゼの遺伝子多型は、リウマチ疾患または癌のための薬剤であるアザチオプリンにより誘発されるADRと密接に関連していることが判明した(Yates et al., Ann. Intern. Med., 126(8):608−614, 1997)。また、特定の薬剤により誘発されるSJS/TEN/HSSへの罹患しやすさは遺伝学的に決定されるということも示唆されている(Gennis MA, Am. J. Med., 91(6):631−634, 1991; Edwards SG, Postgrad. Med. J., 75(889):680−681, 1999)。しかしながら、実際に関与している遺伝的因子はいまだ同定されていない。
【0005】
薬理ゲノミクスのこれらの研究によれば、患者におけるADRに関連したアレルの検出は、当該患者がADRを引き起こすリスクがあるか否かを評価するのに有用なアプローチであることが示唆されている。臨床検査改善修正法案により認定されたこの種の分子診断は現在、米国および欧州において参照試験所により提供されている。
【0006】
特定の遺伝子アレルの存在を決定するには、1または2以上のアレル特異的ヌクレオチドを検出する必要がある。多くの場合、正確な決定を保証するには、当該アレル内の複数の領域を標的とせざるを得ない。例えば、現在利用可能なHLA−Bアレル(例えば、HLA−B1502またはHLA−B5801)を決定する方法では、当該アレル内の少なくとも6つの領域を検出することが必要である。
【発明の開示】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、患者が薬剤副作用(特に、SJS、TEN、またはHSS)を引き起こすリスクを予測する方法を提供する。数多くの薬剤(例えば、カルバマゼピン(CBZ))により誘発されるSJS/TENには、HLA−B1502が関連していることが判明している。また、また、アロプリノールにより誘発されるSJS/TENには、HLA−B5801が特に関連している。HLA−B5801はまた、アロプリノール誘発性のHSSにも関連している。斑点状丘疹、多形性紅斑、蕁麻疹、または固定薬疹などの、CBZにより誘発されるより緩和な皮膚反応には、HLA−B4601が特に関連している。
【0008】
したがって、本願は、患者が薬剤に応答して薬剤副作用を引き起こすリスクを評価する方法を提供するが、当該方法は、患者からの生体サンプルを用いてHLAタイピングを行なうことを含む。本発明では、少なくとも約40%の感度でADRと関連している任意のHLAアレルがリスクファクターとして用いられうる。好ましくは、このリスクファクターの感度は、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、または約90%である。より好ましくは、当該感度は少なくとも95%である。薬剤は、CBZ、オキシカルバゼピン(ブランド名:トリレプタール)、リカルバゼピン、アロプリノール、フェニトイン、スルファサラジン、アモキシシリン、イブプロフェンおよびケトプロフェンからなる群から選択されるものであることが好ましい。あるいは、当該薬剤は、好ましくは非ステロイド性抗炎症薬以外のものである。好ましくは、HLA−Bアレルがリスクファクターである。
【0009】
患者が薬剤に応答して薬剤副作用を引き起こすリスクの評価は、HLA−B1502、HLA−B5801およびHLA−B4601からなる群から選択されるHLA−Bアレルの存在を決定することにより行なわれうる。ここで、HLA−Bアレルの存在は、薬剤副作用についてのリスクの指標である。薬剤は、CBZ、オキシカルバゼピン、リカルバゼピン、アロプリノール、オキシプリノール、フェニトイン、スルファサラジン、アモキシシリン、イブプロフェンおよびケトプロフェンからなる群から選択されうる。
【0010】
薬剤副作用は、SJS、TEN、またはHSSのような皮膚の薬剤副作用である。一実施形態では、薬剤がCBZ、オキシカルバゼピン、リカルバゼピンから選択され、前記アレルがHLA−B1502である。他の実施形態では、HLA−B5801がSJS、TEN、またはHSSについてのリスクを予測するのに用いられ、薬剤はアロプリノールまたはオキシプリノールから選択されうる。HLA−B15、B58、またはB46の他のサブタイプ(例えば、HLA−B1503またはHLA−B1558)もまた、ADRの発生についてのリスクを予測するのに用いられうる。
【0011】
遺伝子アレルは、生体サンプル(例えば、血液、唾液、尿または毛髪)から調製されたゲノムDNAを用いて、アレル内の領域/ヌクレオチドを直接検出することによって、検出されうる。当該アレルはまた、例えば血清学的な手法または微量細胞毒性による手法によっても決定されうる。当該アレルはまた、当該アレルの等価遺伝的マーカーを検出することにより決定されることができ、当該マーカーは例えば、SNP(一塩基多型)、マイクロサテライトマーカーまたは他の種類の遺伝子多型でありうる。換言すれば、当該アレルそのものの存在よりもむしろ、HLA−B1502、5801、または4601ハプロタイプの存在が、薬剤副作用に対するリスクの指標である。HLA−B B1502ハプロタイプの等価遺伝的マーカーの例としては、Cw0801、Cw0806、A1101、およびMICA019が挙げられる。HLA−B5801の等価遺伝的マーカーの例としては、HLA−A3303、Cw0302、DRB10301、およびMICA00201が挙げられる。
【0012】
本発明の他の形態は、薬理ゲノミクスプロファイリングの方法である。当該方法は、HLA−B1502、HLA−B5801およびHLA−B4601からなる群から選択される少なくとも1つのHLA−Bアレルの存在を決定することを含む。一例としては、上記群から選択される少なくとも2つ(例えば、HLA−B1502およびHLA−B5801)の存在を決定する。他の例としては、3つの全てのアレルの存在を決定する。当該方法は、場合によっては、他の遺伝的因子の決定を含んでもよい。かような他の遺伝的因子は、ADRなどの任意の疾患または医学的症状の素因に関連していてもよい。例えば、これらの他の遺伝的因子は、チオプリンメチルトランスフェラーゼおよびQT延長症候群の遺伝子からなる群から選択されうる。
【0013】
患者がHLA−B1502またはHLA−B5801を有するか否かを決定する方法もまた、本発明の範囲に包含される。当該方法は、(1)HLA−B1502の領域1〜領域6またはHLA−B5801の領域1〜領域6のいずれかから選択される第1領域を検出する段階、(2)HLA−B1502の領域1〜領域6またはHLA−B5801の領域1〜領域6のいずれかから選択され、前記第1領域とは異なる第2領域を検出する段階、および、(3)患者が対象アレルを有しているか否かを決定することを含む。ここで、前記第1領域および前記第2領域が存在すれば、前記患者がHLA−B1502またはHLA−B5801を有することが示される。これらの領域は、リアルタイムPCR、またはELISAと共役した競合配列特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ(CSSO−ELISA)により決定されうる。一例では、HLA−B1502の領域1〜領域6から、またはHLA−B5801の領域1〜領域6から選択される2つの領域を検出すれば、HLA−B1502またはHLA−B5801の存在または不存在を決定するのに十分である。あるいは、HLA−B1502またはHLA−B5801中の3つ以上の領域を検出する。
【0014】
HLA−B1502の領域1、領域2、および領域3の検出はそれぞれ、領域1における1位および3位、領域2における1位および6位、並びに領域3における1位および3位のヌクレオチド(これらの位置でのセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかにおけるヌクレオチドを含む)を同定することにより、行われうる。
【0015】
HLA−B5801の領域1〜領域6の検出はそれぞれ、領域1における1位、2位および5位、領域2における1位、4位、6位、7位、8位、15位、16位および20位、領域3における2位、4位、5位、8位および9位、領域4における3位および5位、領域5における1位および9位、並びに領域6における3位および10位のヌクレオチドを同定することにより、行われうる。
【0016】
本発明はまた、遺伝子アレル(例えば、HLA−B1502またはHLA−B5801)を検出するためのキットをも提供する。一例として、当該キットは、それぞれHLA−B1502の領域1〜領域6またはHLA−B5801の領域1〜領域6から選択される領域を標的とする第1プローブおよび第2プローブを含む。この2つのプローブは、異なる領域を標的とする。当該キットは、内部制御アレルを標的とする第3プローブをさらに含んでもよい。また、当該キットは、HLA−B1502またはHLA−B5801における1以上の追加の領域を検出するための1以上の追加のプローブを含んでもよい。
【0017】
さらに、ある化合物が、薬剤(CBZ、アロプリノール、またはフェニトイン)により誘発される薬剤副作用(ADR)に関連したHLAアレル(例えば、HLA−B1502、HLA−B5801、またはHLA−B4601)を有する患者におけるADR(SJS/TEN、HSS、またはより緩和な皮膚のADR)を誘発する候補であるか否かを決定する方法が提供される。当該方法は、(1)ADRに関連したHLAアレルを有する当該ADRの患者からT細胞を単離する段階、(2)前記ADRを誘発する薬剤に反応性のT細胞を展開する段階、(3)前記患者から抗原提示細胞を単離する段階、(4)APCの存在下で、展開されたT細胞を化合物と接触させること、および(5)前記化合物が、展開されたT細胞を活性化するか否かを調べる段階を含む。上記T細胞を活性化する化合物は、同一のHLAアレルを有する患者におけるADRを誘発する候補である。
【0018】
一般の人口集団がADRを引き起こす可能性よりも、患者がADRを引き起こす可能性が高い場合、当該患者はADRについて「リスク」を有することになる。患者がADRを引き起こす可能性は、一般の人口集団がADRを引き起こす可能性の、少なくとも約1.5倍高く、より好ましくは少なくとも約2倍高く、さらにより好ましくは少なくとも約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、または約9倍高く、最も好ましくは少なくとも約10倍高い。この可能性は、リスクファクターの発生率を用いるなどの、本技術分野において公知の任意の方法により決定されうる。例えば、あるリスクファクターは一般の人口集団の5%に存在する。仮にこのファクターがADRを有する患者の10%に存在するのであれば、当該リスクファクターを有する患者がADRを引き起こす可能性は、一般の人口集団がADRを引き起こす可能性の2倍高い。
【0019】
ADRについての「リスクファクター」は、ADRに関連したファクターである。リスクファクターの感度は、好ましくは少なくとも約40%であり、より好ましくは少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、または約90%である。最も好ましくは、当該感度は少なくとも95%である。ADRを予測するためのリスクファクターの「感度」は、ADR患者のうち、リスクファクターを有する者の百分率である。換言すれば、全てのSJS患者がアレルAを有する場合、SJSを予測するためのアレルAの感度は100%である。40名のSJS患者のうち20名がアレルBを有するのであれば、SJSを予測するためのアレルBの感度は50%である。
【0020】
対象アレルの「等価遺伝子マーカー」とは、対象アレルと連鎖した遺伝子マーカーを意味する。すなわち、等価遺伝子マーカーは、対象アレルと連鎖非平衡性を示す。
【0021】
「薬理ゲノミクスプロファイリング」とは、疾患または医学的症状(特に、薬剤に対する望ましくない反応)に関連した対象者に存在する遺伝的因子の決定を意味する。典型的には、薬理ゲノミクスプロファイリングでは一連の遺伝的因子を決定するが、当該因子は、同じ疾患、医学的症状、または薬剤に対する反応に関連するものであってもよいし、そうでなくてもよい。
【0022】
本明細書で用いられる場合、医薬化合物とは、薬剤である化合物、または、薬剤における少なくとも1つの水素がハロ、ヒドロキシル、アシルアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、アリールオキシアリール、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル置換アルキル、カルボキシルシクロアルキル、カルボキシル置換シクロアルキル、カルボキシルアリール、カルボキシル置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル置換ヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アリール、置換アリールオキシ、置換アリールオキシアリール、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、または置換ヘテロサイクリックの基で置換されたこと以外は薬剤と同一である化合物を意味する。上記化学基は、以下に定義される。置換基は、0〜10個、0〜6個、0〜4個、または0〜2個の炭素原子を含みうる。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」とは、1〜10個の炭素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「置換アルキル」とは、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールオキシアリール、置換アリールオキシアリール、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルキル、カルボキシル置換アルキル、カルボキシルシクロアルキル、カルボキシル置換シクロアルキルカルボキシルアリール、カルボキシル置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル置換ヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホンチオール、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−OS(O)−アルキル、−OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−OS(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−NRS(O)−-NR−アリール、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−NRS(O)−-NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−置換ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロサイクリックアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミンからなる群から選択される1〜5個の置換基を有する、好ましくは1〜10個の炭素原子のアルキル基;慣用の保護基で保護されたアミノ基を有する置換アルキル基、並びに、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アルケニル、−SO−置換アルケニル、−SO−シクロアルキル、−SO−置換シクロアルキル、−SO−アリール、−SO−置換アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−置換ヘテロアリール、−SO−ヘテロサイクリック、−SO−置換ヘテロサイクリック、または−SO−-NRRで置換されたアルキル基/置換アルキル基(ここで、Rは水素またはアルキルである)を意味する。
【0024】
「アルコキシ」とは、「アルキル−O−」基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシなどが挙げられる。「置換アルコキシ」とは、「置換アルキル−O−」基を意味する。
【0025】
「アシル」とは、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、置換アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、置換アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、置換アルキニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、置換シクロアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、置換アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−、置換ヘテロアリール−C(O)−、ヘテロサイクリック−C(O)−、および置換ヘテロサイクリック−C(O)−の基を意味し、ここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックは、本明細書で定義される。
【0026】
「アシルアミノ」とは、−C(O)NRR基を意味し、ここでRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックからなる群から選択され、Rはそれぞれ、窒素原子とともにヘテロ環または置換ヘテロ環を形成してもよい。なお、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックは、本明細書で定義される。
【0027】
「アシルオキシ」とは、アルキル−C(O)O−、置換アルキル−C(O)O−、アルケニル−C(O)O−、置換アルケニル−C(O)O−、アルキニル−C(O)O−、置換アルキニル−C(O)O−、アリール−C(O)O−、置換アリール−C(O)O−、シクロアルキル−C(O)O−、置換シクロアルキル−C(O)O−、ヘテロアリール−C(O)O−、置換ヘテロアリール−C(O)O−、ヘテロサイクリック−C(O)O−、および置換ヘテロサイクリック−C(O)O−の基を意味する。なお、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックは、本明細書で定義される。
【0028】
「アルケニル」とは、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1〜2個のアルケニル不飽和部位を有する、アルケニル基を意味する。「置換アルケニル」とは、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールオキシアリール、置換アリールオキシアリール、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルキル、カルボキシル置換アルキル、カルボキシルシクロアルキル、カルボキシル置換シクロアルキルカルボキシルアリール、カルボキシル置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル置換ヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホンチオール、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−OS(O)−アルキル、−OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−OS(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−NRS(O)−-NR−アリール、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−NRS(O)−-NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−置換ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロサイクリックアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミンからなる群から選択される1〜5個の置換基を有するアルケニル基;慣用の保護基(例えば、Boc、Cbz、ホルミルなど)で保護されたアミノ基を有する置換アルケニル基、並びに、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アルケニル、−SO−置換アルケニル、−SO−シクロアルキル、−SO−置換シクロアルキル、−SO−アリール、−SO−置換アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−置換ヘテロアリール、−SO−ヘテロサイクリック、−SO−置換ヘテロサイクリック、または−SO−-NRRで置換されたアルケニル基/置換アルケニル基(ここで、Rは水素またはアルキルである)を意味する。
【0029】
「アルキニル」とは、好ましくは2〜10個、より好ましくは3〜6個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1〜2個のアルキニル不飽和部位を有する、アルキニル基を意味する。「置換アルキニル」とは、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールオキシアリール、置換アリールオキシアリール、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルキル、カルボキシル置換アルキル、カルボキシルシクロアルキル、カルボキシル置換シクロアルキルカルボキシルアリール、カルボキシル置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル置換ヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホンチオール、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、ヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−OS(O)−アルキル、−OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−OS(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−NRS(O)−-NR−アリール、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−NRS(O)−-NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−置換ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロサイクリックアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミンからなる群から選択される1〜5個の置換基を有するアルキニル基;慣用の保護基(例えば、Boc、Cbz、ホルミルなど)で保護されたアミノ基を有する置換アルキニル基、並びに、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アルケニル、−SO−置換アルケニル、−SO−シクロアルキル、−SO−置換シクロアルキル、−SO−アリール、−SO−置換アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−置換ヘテロアリール、−SO−ヘテロサイクリック、−SO−置換ヘテロサイクリック、または−SO−-NRRで置換されたアルキニル基/置換アルキニル基(ここで、Rは水素またはアルキルである)を意味する。
【0030】
「アミノアシル」とは、−NRC(O)アルキル、−NRC(O)置換アルキル、−NRC(O)シクロアルキル、−NRC(O)置換シクロアルキル、−NRC(O)アルケニル、−NRC(O)−置換アルケニル、−NRC(O)−アルキニル、−NRC(O)−置換アルキニル、−NRC(O)−アリール、−NRC(O)置換アリール、−NRC(O)ヘテロアリール、−NRC(O)置換ヘテロアリール、−NRC(O)ヘテロサイクリック、および−NRC(O)置換ヘテロサイクリックの基(ここで、Rは水素またはアルキルである)を意味する。なお、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックは、本明細書で定義される。
【0031】
「アミノカルボニルオキシ」とは、−NRC(O)O−アルキル、−NRC(O)O−置換アルキル、−NRC(O)O−アルケニル、−NRC(O)O−置換アルケニル、−NRC(O)O-アルキニル、−NRC(O)O−置換アルキニル、−NRC(O)O−シクロアルキル、−NRC(O)O−置換シクロアルキル、−NRC(O)O−アリール、−NRC(O)O−置換アリール、−NRC(O)O−ヘテロアリール、−NRC(O)O−置換ヘテロアリール、−NRC(O)O−ヘテロサイクリック、および−-NRC(O)O−置換ヘテロサイクリックの基(ここで、Rは水素またはアルキルである)を意味する。なお、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックは、本明細書で定義される。
【0032】
「オキシカルボニルアミノ」とは、−OC(O)NRR、−OC(O)NR−アルキル、−OC(O)NR−置換アルキル、−OC(O)NR−アルケニル、−OC(O)NR−置換アルケニル、−OC(O)NR−アルキニル、−OC(O)NR−置換アルキニル −OC(O)NR−シクロアルキル、−-OC(O)NR−置換シクロアルキル、−OC(O)NR−アリール、−OC(O)NR−置換アリール、−OC(O)NR−ヘテロアリール、−OC(O)NR−置換ヘテロアリール、−OC(O)NR−ヘテロサイクリック、および−OC(O)NR−置換ヘテロサイクリックの基(ここで、Rは水素またはアルキルである)を意味し、Rはそれぞれ、窒素原子とともにヘテロ環または置換ヘテロ環を形成してもよい。なお、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および置換ヘテロサイクリックは、本明細書で定義される。
【0033】
「アリール」または「Ar」とは、単環(例えば、フェニル)または縮合した複数の環(例えば、ナフチルもしくはアントリル)を有する、6〜14個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環基を意味する。なお、縮合した環は芳香族(例えば、2−ベンズオキサゾリノン、2H−1,4−ベンズオキサジン−3(4H)−オン−7−イルなど)であってもなくてもよい。好ましいアリールとしては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0034】
置換アリールとは、ヒドロキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノ、アミノアシル、アミノカルボニルオキシ、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル-置換アルキル、カルボキシルシクロアルキル、カルボキシル置換シクロアルキル、カルボキシルアリール、カルボキシル置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル置換ヘテロサイクリック、カルボキシルアミド、シアノ、チオール、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホン、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−SO(O)−アルキル、−S(O)−置換アルキル、−S(O)−シクロアルキル、−S(O)−置換シクロアルキル、−S(O)−アルケニル、−S(O)−置換アルケニル、−S(O)−アリール、−S(O)−置換アリール、−S(O)−ヘテロアリール、−-S(O)−置換ヘテロアリール、−S(O)−ヘテロサイクリック、−S(O)−置換ヘテロサイクリック、−OS(O)−アルキル、−OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−OS(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−-OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−-NRS(O)−NR−アリール、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−-NRS(O)−NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−置換−NRS(O)−NR-置換 ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−-ヘテロサイクリックアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ;アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリックからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二-置換アミン、慣用の保護基(例えば、Boc、Cbz、ホルミルなど)で保護された置換アリール上のアミノ基、並びに−SONRR(ここで、Rは水素またはアルキルである)からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されたアリール基を意味する。
【0035】
「置換アリールオキシアリール」とは、一方または双方のアリール環上が、ヒドロキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノ、アミノアシル、アミノカルボニルオキシ、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル置換アルキル、カルボキシルシクロアルキル、カルボキシル置換シクロアルキル、カルボキシルアリール、カルボキシル置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル置換ヘテロサイクリック、カルボキシルアミド、シアノ、チオール、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホン、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−S(O)−アルキル、−S(O)−置換アルキル、−S(O)−シクロアルキル、−S(O)−置換シクロアルキル、−S(O)−アルケニル、−S(O)−置換アルケニル、−S(O)−アリール、−S(O)−置換アリール、−S(O)−ヘテロアリール、−S(O)−置換ヘテロアリール、−S(O)−ヘテロサイクリック、−S(O)−置換ヘテロサイクリック、−OS(O)−アルキル、−OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−OS(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−NRS(O)−NR−アリール、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−-NRS(O)−NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−-NR−置換ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−-ヘテロサイクリックアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ;アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリックおよび置換ヘテロサイクリックからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二-置換アミン、慣用の保護基で保護され、−SONRRで置換された置換アリール上のアミノ基(ここで、Rは水素またはアルキルである)からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されたアリールオキシアリール基を意味する。
【0036】
「シクロアルキル」とは、単環を有する3〜8個の炭素原子の環状のアルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどが挙げられる。アダマンタニルのような複数環のアルキル基はこの定義から除かれる。「シクロアルケニル」とは、1以上の不飽和結合を有するが芳香族ではない、3〜8個の炭素原子の環状のアルケニル基を意味する。
【0037】
「置換シクロアルキル」および「置換シクロアルケニル」とは、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールオキシアリール、置換アリールオキシアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル置換アルキル、カルボキシル-シクロアルキル、カルボキシル置換シクロアルキル、カルボキシルアリール、カルボキシル置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル-置換ヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホン、チオール、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−OS(O)−アルキル、−-OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−S(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−-NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−NRS(O)−-NR−アリール、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−NRS(O)−-NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−置換ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロサイクリックアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ、アルキル、置換 アルキル、 アリール、 置換 アリール、 ヘテロアリール、置換 ヘテロアリール、 ヘテロサイクリックおよび置換ヘテロサイクリックからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミン、慣用の保護基(例えば、Boc、Cbz、ホルミルなど)で保護されたアミノ基を有する置換アルキニル基、並びに、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アルケニル、−SO−置換アルケニル、−SO−シクロアルキル、−SO−置換シクロアルキル、−SO−アリール、−SO−置換アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−置換ヘテロアリール、−SO−ヘテロサイクリック、−SO−置換ヘテロサイクリックまたは−SONRRで置換されたアルキニル基/置換アルキニル基(ここで、Rは水素またはアルキルである)からなる群から選択される1〜5個の置換基を有する、好ましくは3〜8個の炭素原子のシクロアルキル基およびシクロアルケニル基を意味する。
【0038】
「シクロアルコキシ」とは、−O−シクロアルキル基を意味する。「置換シクロアルコキシ」とは、−O−置換シクロアルキル基を意味する。
【0039】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味し、好ましくはクロロまたはブロモのいずれかを意味する。
【0040】
「ヘテロアリール」とは、2〜10個の炭素原子、並びに、酸素、窒素および硫黄からなる群から選択される1〜4個の環内のヘテロ原子の芳香族炭素環基を意味する。かようなヘテロアリール基は、単環(例えば、ピリジルもしくはフリル)または縮合した複数の環(例えば、インドリジニルもしくはベンゾチエニル)を有しうる。好ましいヘテロアリール基としては、ピリジル、ピロリル、インドリルおよびフリルが挙げられる。
【0041】
「置換ヘテロアリール」とは、ヒドロキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノ、アミノアシル、アミノカルボニルオキシ、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル-置換アルキル、カルボキシル-シクロアルキル、カルボキシル-置換シクロアルキル、カルボキシルアリール、カルボキシル-置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル-置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル-置換ヘテロサイクリック、カルボキシルアミド、シアノ、チオl、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホン、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−S(O)−アルキル、−S(O)−置換アルキル、−S(O)−シクロアルキル、−S(O)−置換シクロアルキル、−S(O)−アルケニル、−S(O)−置換アルケニル、−S(O)−アリール、−S(O)−置換アリール、−S(O)−ヘテロアリール、−S(O)−置換ヘテロアリール、−S(O)−ヘテロサイクリック、−S(O)−置換ヘテロサイクリック、−OS(O)−アルキル、−OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−OS(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−-NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−-NRS(O)−NR−アリール、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−-NR−置換ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロサイクリックアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ;アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリックおよび置換ヘテロサイクリック、慣用の保護基(例えば、Boc、Cbz、ホルミルなど)で保護された置換アリール上のアミノ基、および−SONRRからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミン(ここで、Rは水素またはアルキルである)からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されたヘテロアリール基を意味する。
【0042】
「ヘテロアリールオキシ」とは、−O−ヘテロアリール基を意味し、「置換ヘテロアリールオキシ」とは、−O−置換ヘテロアリールを意味する。
【0043】
「ヘテロ環」または「ヘテロサイクリック」とは、1〜10個の炭素原子と、窒素、硫黄または酸素からなる群から選択される1〜4個の環内のヘテロ原子とを含み、単環または縮合した複数の環を有する、飽和または不飽和の基を意味する。縮合環系においては、1以上の環がアリールまたはヘテロアリールでありうる。
【0044】
「置換ヘテロサイクリック」とは、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アリールオキシアリール、置換アリールオキシアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル−置換アルキル、カルボキシル−シクロアルキル、カルボキシル−置換シクロアルキル、カルボキシルアリール、カルボキシル−置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル−置換ヘテロアリール、カルボキシルヘテロサイクリック、カルボキシル-置換ヘテロサイクリック、シクロアルキル、置換シクロアルキル、グアニジノ、グアニジノスルホン、チオール、チオアルキル、置換チオアルキル、チオアリール、置換チオアリール、チオシクロアルキル、置換チオシクロアルキル、チオヘテロアリール、置換チオヘテロアリール、チオヘテロサイクリック、置換チオヘテロサイクリック、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、置換ヘテロサイクリック、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロサイクリルオキシ、置換ヘテロサイクリルオキシ、オキシカルボニルアミノ、オキシチオカルボニルアミノ、−OS(O)−アルキル、−-OS(O)−置換アルキル、−OS(O)−アリール、−OS(O)−置換アリール、−OS(O)−ヘテロアリール、−OS(O)−置換ヘテロアリール、−OS(O)−ヘテロサイクリック、−OS(O)−置換ヘテロサイクリック、−OSO−NRR、−NRS(O)−アルキル、−NRS(O)−置換アルキル、−NRS(O)−アリール、−NRS(O)−置換アリール、−NRS(O)−ヘテロアリール、−-NRS(O)−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−置換ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アルキル、−NRS(O)−-NR−アルキル、−NRS(O)−NR−置換アリール、−NRS(O)−NR−ヘテロアリール、−NRS(O)−-NR−置換ヘテロアリール、−NRS(O)−NR−ヘテロサイクリック、−NRS(O)−NR−置換ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−(置換アルキル)アミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−(置換アリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロアリールアミノ、モノ−およびジ−(置換ヘテロアリール)アミノ、モノ−およびジ−ヘテロサイクリック、モノ−およびジ−(置換ヘテロサイクリック)アミノ;アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロサイクリックおよび置換ヘテロサイクリックからなる群から選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミン;慣用の保護基で保護されたアミノ基を有する置換アルキニル基;並びに、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アルケニル、−SO−置換アルケニル、−SO−シクロアルキル、−SO−置換シクロアルキル、−SO−アリール、−SO−置換アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−置換ヘテロアリール、−SO−ヘテロサイクリック、−SO−置換ヘテロサイクリックまたは−SONRRで置換されたアルキニル基/置換アルキニル基(ここで、Rは水素またはアルキルである)からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されたヘテロ環基を意味する。
【0045】
ヘテロ環およびヘテロアリールの例としては、以下に限定されないが、アゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0046】
「ヘテロサイクリルオキシ」とは、−O−ヘテロサイクリック基を意味し、「置換ヘテロサイクリルオキシ」とは、−O−置換ヘテロサイクリックを意味する。
【0047】
本発明の1または2以上の実施形態の詳細を以下に記載する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明および図面、並びに特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
ある証拠によれば、いくつかの類似の多臓器ADRの発症には、MHC分子に直接結合するか内因性タンパク質に結合する薬剤またはその代謝物の制限されたMHC提示と、T細胞の活性化が関わっていることが示唆されている(Svensson et al., Pharmacol. Rev., 53(3):357−379, 2000)。SJS/TENといった水泡性反応では、皮膚浸潤性のCD8+細胞毒性T細胞が支配的であることが判明している(Hari et al., Clin. Exp. Allergy, 31(9):1398−1408, 2001)。これに対し、斑点状丘疹といった軽度の皮膚のADRの特徴は、CD4+ヘルパーT細胞である(Pichler et al., Int. Arch. Allergy Immunol., 113(1−3):177−180, 1997)。
【0049】
HLA−B1502、HLA−B5801、およびHLA−B4601は、CBZにより誘発されるSJS/TEN、アロプリノールにより誘発されるSJS/TEN/HSS、およびCBZにより誘発される軽度の皮膚のADR(例えば、斑点状丘疹、多形性紅斑、蕁麻疹、または固定薬疹)に、それぞれ関連していることが判明している。よって、これらのHLA−Bアレルは、患者が、CBZ化合物、アロプリノール化合物、または類似の構造を有する他の薬剤により誘発されるADRを引き起こすリスクがあるか否かを決定するのに有用な遺伝子マーカーである。
【0050】
CBZ(テグレトール、テゴール、G−32883、ビストン、カレプシン、カルバトロール、エピトール、フィンレプシン、シルタール、スタゼピン、テレスミン、またはチモニールとしても知られている)は、芳香族抗けいれん薬である。フェニトイン(ディランチン)およびフェノバルビタールなどの他の芳香族抗けいれん薬は、CBZに類似のADRを引き起こす。したがって、HLA−B1502は、これらの他の芳香族抗けいれん薬に対するADRについてのリスクを評価するのにも同様に用いられうる。HLA−B1502がリスクファクターとして用いられうる芳香族抗けいれん薬としては、CBZ、フェニトインまたはフェノバルビタールの化合物または代謝物も含まれる。これらの薬剤の代謝物は、本技術分野において公知であり(例えば、Gennis et al., 1991; Leeder, Epilepsia, 39 Suppl. 7:S8−16, 1998; Naisbitt et al., Mol. Pharmacol., 63(3):732−741, 2003を参照)、例えば、CBZ−10,11エポキシド、CBZ−10,11−ジオール、CBZ−2,3−ジオール、ジヒドロCBZ、CBZカテコール、およびCBZo−キノン、p−ヒドロキシフェニトイン、フェニトインジヒドロジオール、フェニトインカテコール、フェニトインメチルカテコール、およびフェニトインo−キノンが挙げられる。
【0051】
アロプリノールは、高尿酸血症および慢性痛風のための薬剤である。
【0052】
本発明は、患者における特定のHLAアレルまたはその等価遺伝子マーカーの存在に基づいて、患者がADR(特に、SJS、TEN、またはHSS)を引き起こすリスクがあるか否かを予測する方法を提供する。
【0053】
一例では、患者におけるHLA−B1502の存在は、当該患者が、CBZ化合物、CBZに構造的に類似した化合物、またはこれらの代謝物により誘発されるSJS/TENを引き起こすリスクがあることを示す。表Iは、HLA−B1502キャリアにおいてSJS/TENを誘発しうる化合物の例を示す。
【0054】
【表1】

【0055】
他の例では、患者におけるHLA−B5801の存在は、当該患者が、アロプリノール化合物、アロプリノールに構造的に類似した化合物、またはこれらの代謝物により誘発されるSJS/TENまたはHSSを引き起こすリスクがあることを示す。表IIは、HLA−B5801を有する患者においてSJS/TENまたはHSSを誘発しうる化合物の例を示す。
【0056】
【表2】

【0057】
さらに他の例では、患者におけるHLA−B4601の存在は、当該患者が、CBZにより誘発される軽度の皮膚のADR(例えば、斑点状丘疹)を引き起こすリスクがあることを示す。
【0058】
他のHLA−Bもまた、皮膚のADRの素因となりうる。例えば、強直性脊椎炎は、B2701−B2723などのHLA−B27アレルと強く関連している(Khan, Curr. Opin. Rheumatol., 12(4):235−238, 2000; Feltkamp et al., Curr. Opin. Rheumatol., 13(4):285−290, 2001)。
【0059】
遺伝的マーカー(例えば、HLAアレル)の存在は、当該マーカーの直接的な検出、または当該マーカー内の特定の領域の直接的な検出により決定されうる。アレル検出用のゲノムDNAは、本技術分野において周知の手法(例えば、ミネソタ州のジェントラ システムズ(Gedtra Systems)からのピュアジーン(PUREGENE)DNA精製システム)により、患者から調製されうる。対象となる遺伝的マーカー内の領域の検出では、当該領域内のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに位置するヌクレオチドを調べる。例えば、配列特異的オリゴヌクレオチド−ハイブリダイゼーション、リアルタイムPCR、またはCSSO−ELISA(M. Hiratsuka et al, J. of Biochemical and Biophysic. Methods, 67:87−94, 2006)などの本技術分野において公知の手法が、特定の領域を検出するのに用いられうる。
【0060】
HLA−B1502の存在は、図1に示す領域1〜領域6の少なくとも2つを検出することにより決定されうる。これらの領域の存在は、これらの領域内の特定の位置(例えば、領域1の1位および3位、領域2の1位および6位、並びに領域3の1位および3位)のヌクレオチドを検出することにより決定されうる。領域1〜領域6のうちの任意の2つの存在により、当該患者がHLA−B1502のキャリアであることが示される。
【0061】
HLA−B5801の存在は、図2に示す領域1〜領域6の少なくとも2つを検出することにより決定されうる。これらの領域の存在は、これらの領域内の特定の位置(例えば、領域1の1位、2位および5位、領域2の1位、4位、6位、7位、8位、15位、16位、および20位、領域3の2位、4位、5位、8位、および9位、領域4の3位、および5位、領域5の1位、および9位、並びに、領域6の3位、および10位)のヌクレオチドを検出することにより決定されうる。領域1〜領域6のうちの任意の2つの存在により、当該患者がHLA−B5801のキャリアであることが示される。
【0062】
PCRにより得られたDNA産物は、配列特異的プローブ(例えば、タックマン、ビーコンズ、スコーピオンズ(TaqMan,Beacons,Scorpions)からの加水分解プローブ)またはハイブリダイゼーションプローブを用いて検出されうる。これらのプローブは、対象となる領域(例えば、HLA−B1502の領域1〜領域6、またはHLA−B5801の領域1〜領域6)に結合するように設計される。当該PCR産物はまた、DNA結合剤(例えば、SYBR(登録商標)グリーン)によっても検出されうる。
【0063】
対象アレルの存在はまた、当該アレルと等価な遺伝的マーカーを検出することにより決定されうる。対象アレルに近い遺伝的マーカーは、当該アレルと一緒に分離しているか、または当該アレルと連鎖非平衡性を示す。したがって、これらのマーカー(等価遺伝的マーカー)の存在は、対象アレルの存在の指標となり、そしてこれがADRの発生に対するリスクの指標となるのである。HLA−B1502に等価な遺伝的マーカーの例としては、DRB11202、Cw0801、Cw0806、A1101、およびMICA019が挙げられる。HLA−B5801に等価な遺伝的マーカーの例としては、A3303、Cw0302、DRB10301、およびMICA00201が挙げられる。
【0064】
等価遺伝的マーカーは、例えば、HLAアレル、マイクロサテライトマーカー、または一塩基多型(SNP)マーカーなどの任意の種類でありうる。有用な等価遺伝的マーカーは通常、対象アレルから約200kb(例えば、100kb、80kb、60kb、40kb、または20kb)以内である。上述の手法または本技術分野において公知の手法が、等価遺伝的マーカーの存在または不存在を検出するのに用いられうる。
【0065】
上記に代えて、またはこれに加えて、対象アレルのRNA産物、cDNA産物またはタンパク質産物を検出して、当該アレルの存在または不存在を決定してもよい。例えば、血清タイピング法または微量細胞毒性による手法が、HLAアレルのタンパク質産物を決定するのに用いられうる。
【0066】
リスク予測の正確さをさらに増大させるべく、対象アレルおよび/またはその等価遺伝的マーカーを、抗原提示細胞とT細胞との間の相互作用に関与するアクセサリー分子および共刺激分子の遺伝的マーカーと一緒に決定してもよい。これらの遺伝的マーカーとしては、マイクロサテライトマーカーおよび一塩基多型(SNP)マーカーが挙げられる。上記アクセサリー分子および共刺激分子としては、細胞表面分子(例えば、CD80、CD86、CD28、CD4、CD8、T細胞受容体(TCR)、ICAM−1、CD11a、CD58、CD2など)および炎症性サイトカインまたは前炎症性サイトカイン、ケモカイン(例えば、TNF−α)、並びにメディエータ(例えば、補体、アポトーシスタンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分など)が挙げられる。薬剤の生物学的活性化または非毒化に関与する薬剤代謝酵素の遺伝的マーカーもまた、対象となる。これらの遺伝的マーカーには、マイクロサテライトマーカーおよびSNPマーカーも含まれる。薬剤代謝酵素には、I相酵素(例えば、チトクロームP450スーパーファミリーなど)およびII相酵素(例えば、ミクロソームエポキシドヒドロラーゼ、アリールアミンN−アセチルトランスフェラーゼ、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼなど)が含まれる。
【0067】
本発明はさらに、薬理ゲノミクスプロファイリングのための方法を提供する。所定の個体に対して、それぞれがADRなどの疾患または臨床症状に対する素因と関連している一連の遺伝的因子が決定される。この方法では、遺伝的因子のパネルは、HLA−B1502、HLA−B5801、およびHLA−B4601からなる群から選択される少なくとも1つのアレルを含む。このパネルは、当該群からの2つのアレルまたは3つのすべてのアレルを含みうる。HLA−B1502、5801および/または4601に加えて、当該パネルは、チオプリンメチルトランスフェラーゼ、およびQT延長症候群の遺伝子などの他の任意の公知の遺伝的因子を含みうる。上述したアクセサリー分子、共刺激因子、および/または薬剤代謝酵素の遺伝的マーカーもまた含まれうる。
【0068】
遺伝的マーカー(例えば、HLA−B1502、HLA−B5801、またはHLA−B4601)を検出するためのプローブを含有するキットもまた、本発明の範囲に含まれる。本明細書で用いられる「プローブ」との語は、他の物質を検出するのに有用な任意の物質を意味する。よって、プローブは、対象アレル内の特定の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドまたは共役オリゴヌクレオチドでありうる。共役オリゴヌクレオチドとは、受容体分子(例えば、抗原に特異的な抗体)に高度に特異的なリガンド(当該抗原)を含むクロモフォアまたは分子に共有結合したオリゴヌクレオチドを意味する。当該プローブはまた、他のプライマーとともに対象アレル内の特定の領域を増幅するためのPCRプライマーであってもよい。さらに、当該プローブは、対象アレルまたは当該アレルのタンパク質産物を認識する抗体であってもよい。場合によっては、上記キットは内部制御アレルを標的とするプローブを含有してもよく、当該内部制御アレルは、GAPDH、β−アクチン、KIRなどの一般的な集団にみられる任意のアレルでありうる。内部制御アレルの検出は、当該キットの性能を保証するために設計される。
【0069】
上記キットはさらに、患者から生物学的サンプルを回収するための器具および/または試薬、並びに、当該サンプルからゲノムDNA、cDNA、RNA、またはタンパク質を調製するための器具および/または試薬を含みうる。例えば、ゲノムDNAの関係する領域を増幅するためのPCRプライマーが含まれてもよい。当該キットはまた、薬理ゲノミクスプロファイリングに有用な遺伝的因子(例えば、チオプリンメチルトランスフェラーゼ)に対するプローブを含有しうる。
【0070】
一例では、当該キットは、それぞれHLA−B1502の領域1〜領域6から、またはHLA−B5801の領域1〜領域6から選択される領域を検出するための第1プローブおよび第2プローブを含有する。当該第1プローブおよび第2プローブは、異なる領域を標的とする。これらの2つのプローブは、1対のPCRプライマー、またはハイブリダイゼーションアッセイに有用なラベル化オリゴヌクレオチドでありうる。場合によっては、当該キットは、内部制御アレルを検出するための第3プローブを含みうる。当該キットはまた、HLA−B1502またはHLA−B5801内の追加の領域を検出するための追加のプローブを含んでもよい。
【0071】
さらに他の形態において、本発明は、ADR(例えば、SJS/TENまたはHSS)に関連したHLAアレル(例えば、HLA−B1502、HLA−B5801、またはHLA−B4601)を有する患者においてADRを誘発する医薬化合物を同定する方法を提供する。薬剤は特定のHLA複合体により提示されてTリンパ球を活性化し、その結果としてADRを誘発することが示唆されている。これらの薬剤に反応性のT細胞は、これらの薬剤により誘発されるADRの発生に関与していることが示唆される。よって、これらのT細胞を活性化しうる化合物は、これらのADRに関連した1または2以上のHLAアレルを有する患者においてADRを誘発する候補である。その結果、この方法は、かようなADRを誘発しうる医薬化合物を発見するための新規薬剤の開発におけるスクリーニング方法として用いられうる。
【0072】
ADR患者が、当該疾患に関連したHLAアレルを有するか否かを決定するには、当該患者のジェノタイピングが行なわれうる。Tリンパ球および抗原提示細胞(例えば、B細胞または単球)が患者から単離され、本技術分野において周知の方法に従ってインビトロで培養されうる(Naisbitt DJ, Mol Pharmacol. 2003 Mar;63(3):732−41 , Wu et al, J Allergy Clin Immunol. 2006 Jul;118(1):233−41. E−published on 2006 Apr 27)。こうして単離されたB細胞は、エプスタイン・バーウイルスによって形質転換されてB細胞系を生成しうる。薬剤に反応性のT細胞は、薬剤および自己の抗原提示細胞の双方の存在下で展開されうる。次いで、展開されたT細胞を、自己の抗原提示細胞の存在下で試験化合物に曝露し、当該試験化合物が当該T細胞を活性化しうるか否かを決定する。そうであれば、当該試験化合物は、同一のHLAアレルを有する患者においてADRを誘発しうる候補である。
【0073】
さらなる詳細を必要とすることなく、上述の記載によって本発明は十分に実施可能であると考えられる。以下の実施例はしたがって、単なる例示のためのものであって、残りの開示をいかようにも限定するものではないと解されるべきである。本明細書に引用されたすべての文献は、その全体が参照により本明細書に引用される。
【実施例】
【0074】
実施例1.リアルタイムPCRを用いたHLA−B1502およびHLA−B5801の検出
ゲノムDNAを、患者の血液または唾液から抽出した。HLA−B1502の領域1および領域5、領域1および領域4、または領域1、領域3および領域4をそれぞれ標的とする3対のPCRプライマー(図1を参照)を合成した。また、HLA−B5801の領域2および領域4を標的とする1対のプライマー(図2を参照)を合成した。SYBR(登録商標)グリーン リアルタイムPCRシステム(アプライド バイオシステム)を用いて、上記標的領域を増幅し、検出した。簡単に言えば、上記プライマー、上記ゲノムDNA、およびパワーSYBR(登録商標)グリーンPCRマスターミクスチャ(上記リアルタイムPCRシステムに付属)を混合し、(i)95℃にて10分間ポリメラーゼを活性化させ、(ii)95℃にて15秒間変性させ、71℃にて1分間DNA鎖をアニーリング/伸長させ、(iii)変性/アニーリング/伸長を40サイクル行ない、(iv)95℃にて15秒間、および60℃にて1分間、増幅産物をそのテンプレートから解離させることにより、PCRを行なった。キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のPCR増幅を内部コントロールとして用いた。患者におけるHLA−B1502またはHLA−B5801の存在または不存在は、HLA−B1502またはHLA−B5801のCt値、および、HLA−B1502/HLA−B5801とKIRとの間のCt値の差(ΔCt値)に基づいて決定した。Ct値(閾値サイクル)は、レポーターダイの発光強度がバックグラウンドノイズを上回るサイクル数を同定することにより決定した。当該閾値サイクルは、反応の最も指数関数的な相で決定し、従来のPCR法により用いられる蓄積PCR産物の最終時点での測定よりも信頼性が高い。当該閾値サイクルは、標的テンプレートのコピー数に逆比例し、テンプレート数が多くなるほど、測定される閾値サイクルは小さくなる。
【0075】
ヒトB細胞系から抽出した170個のゲノムDNAサンプル、およびヒト血液またはヒト唾液から調製した35個のゲノムDNAサンプルについて、上述の方法に従って、HLA−B1502の存在を検出する目的で試験を行なった。HLA−B1502およびKIRのCt値は、それぞれ23〜27および19〜25の範囲であった。HLA−B1502とKIRとの間のΔCtの範囲が7未満であるときに、HLA−B1502は陽性であるとした。これらの170個のスーパーコントロール中、HLA−B1502を有するgDNAは15個存在していたが、これをダイナル(Dynal)SSOキットにより確認した結果、この方法の感度および特異性はともに99%を超えていることが示された。
【0076】
ヒトB細胞系から抽出した170個のゲノムDNAサンプル、およびヒト血液またはヒト唾液から調製した87個のゲノムDNAサンプルについて、上述の方法に従って、HLA−B5801の存在を検出する目的で試験を行なった。HLA−B5801陽性の患者由来のDNAサンプルについて、HLA−B5801およびKIRのCt値は、それぞれ22〜28および10〜26の範囲であった。HLA−B5801とKIRとの間のΔCtの範囲が7未満であるときに、HLA−B5801は陽性であるとした。HLA−B5801陰性の患者由来のDNAサンプルについて、HLA−B5801のCt値は約34であり、ΔCtは13超であった。全てのサンプル中、51個のgDNAがHLA−B5801陽性であることが判明し、これをダイナルSSOキットにより確認した。その結果、感度および特異性はともに99%を超えていることが示された。
【0077】
実施例2.CSSO−ELISAを用いたHLA−B1502およびHLA−B5801の検出
CSSO−ELISAを行なう手法を図3に概説する。
【0078】
一般に、ゲノムDNAをテンプレートとして用いてPCRを行なうと、図1または図2に示す特異領域を含む産物が産生する。フォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれかをリガンドI(LI)でラベル化した。なお、当該リガンドIは、酵素(例えば、HRP)に連結された分子I(Molecular I)により認識されうる。PCR反応は、1以上の特異領域(すなわち、HLA−B1502の領域1〜領域6、またはHLA−B5801の領域1〜領域6)を含む産物が産生するように設計して行なった。2つの競合配列特異的オリゴヌクレオチド(CSSO1およびCSSO2)を設計した。CSSO1はHLA−B1502の領域1〜領域6またはHLA−B5801の領域1〜領域6の1つを特異的に認識し、CSSO2はHLA−B15の一般的なタイプ(すなわち、非B1502アレルまたは非B5801)にプライミングするように設計した。CSSO1についてはリガンド2でラベル化した。なお、当該リガンド2は、反応プレートまたはストリップ上にコーティングされた分子II(Molecular II)により認識されうる。このようにして得られたPCR産物を、反応プレートまたは反応ストリップ上の2つのCSSOとハイブリダイズした。遊離分子を洗浄したのち、反応プレートに酵素の基質を添加した。色の存在により信号化された酵素反応は、HLA−B1502またはHLA−B5801の存在の指標である。
【0079】
実施例3.CBZ誘導性SJS/TENとHLA−B1502との相関
この研究のために、長庚記念病院(Chang Gung Memorial Hospital)または台湾中の他のいくつかの医療機関のいずれかから、合計で238名のADR患者(モンゴロイドまたはその子孫)を集めた。この患者について、用量および期間などの薬歴、並びにADRの表現型を記録した。臨床形態の診断基準は、Roujeau, J. Invest Dermatol., 102(6):28S−30S, 1994に従って定義した。例えば、SJSは体表面積の10%未満の皮膚剥離として定義し、重複SJS−TENは10〜30%の皮膚剥離として定義し、TENは30%超のものとして定義した。SJS、重複SJS−TEN、およびTENをまとめてSJS/TENと称する。
【0080】
それぞれの患者について、関与が疑われる薬剤を停止し、患者の症状を観察した。薬剤を止めても改善しない皮膚のADRを発症した患者は除外した。
【0081】
上述の判断基準によれば、112名の患者がSJS/TENであると診断され、126名の患者が種々の薬剤に対するより緩和な過敏性を示した。112名のSJS/TEN患者のうち、42名がCBZ(テグレトール)に曝露され、17名がアロプリノールを摂取しており、53名がCBZおよびアロプリノール以外の薬剤による治療を受けていた。
【0082】
テグレトールに耐性を示す73名の患者をコントロールとして含めた。台湾人の一般的な集団からのボランティア(n=94;年齢範囲:20〜80歳)を集めた。この研究は施設内治験審査委員会の承認を受けており、インフォームドコンセントを得た。
【0083】
これらの患者全員について、ジェノタイピングを行なった。簡単に言えば、配列特異的オリゴヌクレオチド(SSO)を用いたリバースラインブロットアッセイを行なうための試薬をダイナル バイオテック リミテッド(DYNAL Biotech Ltd.)(ブロムボロ、イギリス)より購入した。HLAのクラスIまたはクラスIIの遺伝子座の第2エクソンおよび第3エクソンのためのビオチン化プライマーを用いてPCR産物を得、次いでナイロン膜上に固定化したプローブのSSOのラインブロットにハイブリダイズさせた。特異的プローブに結合したビオチン化PCR産物の存在を、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)および発色性の可溶性基質を用いて検出して、陽性プローブの位置に青い「ライン」を生成させた。このプローブ反応性のパターンを、ジェノタイピングソフトウェアであるダイナルRELI(商標)SSO(ダイナル バイオテック リミテッド;ブロムボロ、イギリス)により解読した。潜在的な曖昧さについては、IHWG技術マニュアル(International Histocompatibility Working Group)に従った、配列に基づいたタイピングおよびDNAシーケンシングによりさらに解消した。Genomic Analysis of the Human MHC DNABased Typing for HLA Alleles and Linked Polymorphisms. Marcel G.J. Tilanus, Editor in Chief, ISBN No. 0−945278−02−0を参照のこと。
【0084】
一部の患者については、高スループットMALDI−TOF質量分析法を用いてSNPジェノタイピングを行なった。簡単に言えば、スペクトロデザイナー(SpectroDEISGNER)ソフトウェア(シーケノム、サン ディエゴ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を用いて、プライマーおよびプローブを設計した。多重ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行ない、エビアルカリフォスファターゼ(ホフマン−ラ ロシュ、バーゼル、スイス)を用いて取り込まれなかったdNTPを脱リン酸化し、次いでプライマー伸長を行なった。精製したプライマー伸長の反応物を384素子のシリコンチップ(スペクトロチップ(SpectroCHIP、シーケノム))にスポットし、ブルーカー バイフレックス(Bruker Biflex) III MALDI−TOF スペクトロリーダー(SpectroREADER)質量分析装置(シーケノム)を用いて分析し、スペクトロタイパー(SpectroTYPER)(シーケノム)を用いてスペクトルを加工した。
【0085】
異なる群のアレル頻度を、2×2の表を作製することによるイェーツ補正を伴うχ二乗法により比較した。生のP値に、遺伝子座内での存在が観察されたHLAアレルの数を積算することにより、複数のHLAアレルの比較のためにP値を補正した(Pc)。ゼロカウントの可能性を調整するために全セルに0.5を加算するというハルデン修飾を用いて、オッズ比を算出した。
【0086】
表1に示すように、HLA−Bの遺伝子座におけるDNA変異体(HLA−B1502)は、患者において、特にCBZ(テグレトール)を服用していた患者において、薬剤誘発性のSJS/TENに関連していた。
【0087】
【表3】

【0088】
CBZを服用していた42名のSJS/TEN患者のうち、42名(100%)においてHLA−B1502が検出された。当該アレルはまた、他の薬剤を服用していた53名のSJS/TEN患者のうち、17名(32%)において見られた(フェニトイン8名、アロプリノール2名、アモキシシリン2名、スルファサラジン1名、ケトプロフェン1名、イブプロフェン1名、および不明の薬剤2名)。特に、フェニトインの服用後にSJS/TENを発症した17名の患者のうち8名(47.05%)が、HLA−B1502アレルを有していた。これに対し、当該アレルが見られたのは、CBZ耐性群では4.1%(3/73)、フェニトイン耐性群では0%(0/32)、SJS以外のより緩和なADRを有する患者では6.3%(9/142)、一般的な集団では5.3%(5/94)のみであった。上記の耐性群をコントロールとして用いることで、CBZ誘発性のSJS/TENに関連したB1502のオッズ比、感受性、特異性、陽性的中率および陰性的中率は、それぞれ1712、100%、95.89%、96.0%および100%であった。陽性的中率および感受性がこのように高いため、当該HLA−Bアレルのタイピングは、薬剤誘発性のSJS/TEN、特にCBZまたはフェニトイン誘発性のSJS/TENに対する高リスク患者の同定に用いられうる。
【0089】
CBZにより誘発される緩和なADRは、他のアレルであるHLA−B4601に関連していることが判明した。これらのCBZに対するより緩和な反応を示した16名の患者のうち、10名(62.5%)がHLA−B4601を有していた。一方、当該アレルは、CBZ耐性群では26%(19/73)のみに見られた。B4601に関連した、CBZ誘発性のより緩和な皮膚のADRのオッズ比は4.73であった。したがって、HLA−B4601はCBZにより誘発される緩和な皮膚のADRに対するリスク評価に用いられうる。
【0090】
【表4−1】

【0091】
【表4−2】

【0092】
実施例4.アロプリノール誘発性SJS/TENとHLA−B5801との相関
アロプリノール誘発性のSJS/TENにはHLA−B5801が関連していることが判明した。このHLA−Bアレルは、アロプリノールで処置された17名のSJS/重篤ADR患者のすべて(100%)で見られたが(表3および表4)、一般的な台湾人の集団では18%のみに見られた(オッズ比155、感受性100%、特異性82%、陽性的中率84.7%、陰性的中率100%、Pc=3.7×10−9)。これらの結果から、HLA−B5801は、単独でまたは他の遺伝的マーカーと組み合わせて、アロプリノールを服用する患者がSJS/TENを発症するリスクがあるか否かを評価するのに有用な遺伝的マーカーであることが示唆される。
【0093】
【表5】

【0094】
【表6】

【0095】
実施例5.HLA−B5801とアロプリノール誘発性HSSとの相関
HLA−B5801はまた、アロプリノール誘発性HSSとも関連していることが判明した。このアロプリノール誘発性HSSとしては、皮膚疹(例えば、拡散型丘疹、剥脱性皮膚炎)、発熱、好酸球増多症、異型循環リンパ球、白血球増多症、急性肝細胞損傷、または腎機能の悪化が挙げられる(Arellano et al., Ann. Pharmacother., 27:337, 1993)。
【0096】
31名の患者について調べたが、これらのうち21名がSJS、3名がSJS/TEN、1名がTEN、そして15名がHSSを発症していた。登録されたすべての場合において、アロプリノール暴露から最初の2月以内にADRの症状が開始し、かつ、そのADRの症状が当該薬剤の停止により消失した場合には、アロプリノールを原因薬剤であるとみなした。ただし、以下の条件のいずれかを満たす患者は除外した:アロプリノールへの再暴露後も症状が出ない患者、および、HSS、SJSまたはTENの判断基準を満たさない、より緩和な皮膚発疹を有する患者。
【0097】
31名のすべての患者で、HSS症状の開始はアロプリノール暴露後の最初の2月以内であり、2名の患者では、アロプリノールへの再暴露後2日以内に第2の症状が見られた。12名の患者がアロプリノール以外にも他の薬剤を服用していたが、彼らの薬歴によればこれらの併用薬のみをアロプリノールなしに服用した場合にはADRは発現しなかったことがわかっている。すべての患者で高尿酸血症および/または痛風性関節炎、並びに、高血圧(14/31)、慢性腎臓病(16/31)、および糖尿病(9/31)などの他の慢性疾患が見られた。
【0098】
アロプリノールを少なくとも6月服用している(平均=38月、範囲=6〜107月)がADRの症状を示さなかった98名の痛風性関節炎の患者を、アロプリノール耐性コントロールとした。当該耐性群の性分布は、中国人における一般的な痛風の有病率と同程度であった。さらに、93名の健常人を健常コントロール群とした。これらの3つの群の人口統計学的変数を表5に示す。
【0099】
【表7】

【0100】
HLA−B5801は、アロプリノール誘発性の重篤なADRを有する患者の31名すべてに、アロプリノール耐性の98名の患者のうち16名(16.3%)に(オッズ比315、Pc<10−15)、そして93名の健常者のうち19名(20%)に(オッズ比241、Pc<10−13)、存在していた。アロプリノール耐性群について、HLA−B5801の不存在はアロプリノール誘発性ADRに対して100%の陰性的中率を示し、当該アレルの存在は66%の陽性的中率を示した。したがって、HLA−B5801は、皮膚のADR(例えば、SJS/TENまたはHSS)などのアロプリノール誘発性ADR、およびアロプリノール誘発性DRESS(好酸球増多症および全身症状を伴う薬剤反応)に高い特異性(84%)および感受性(100%)を示す有用なマーカーである。
【0101】
実施例6.HLA−B1502またはHLA−B5801と等価な遺伝的マーカー
対象となるHLAアレルに近い遺伝的マーカーは、当該対象アレルと一緒に分離するか、またはこれと連鎖非平衡性を示す傾向にある。その結果、これらのマーカー(等価遺伝的マーカー)の存在は、当該アレルの存在の指標となる。
【0102】
ADRを示した患者における潜在的な等価遺伝的マーカーの発生率を調べる目的で、HLA−B1502ハプロタイプにおける種々のマーカーについて、そのADRとの関連を決定した。実際、HLA−B1502ハプロタイプのHLAマーカー(DRB11202、Cw0801、Cw0806、A1101、およびMICA019など)は、CBZに曝露されたSJS/TEN患者において有意に高い頻度を示した(表6)。
【0103】
HLA−B5801に関連したマーカーについても決定した。HLA−B5801についてホモ接合性の4名の患者でアレル分布を分析し、当該アレルの祖先のハプロタイプがHLA−A3303、Cw0302、B5801およびDRB10301を含むものであることを同定した。この祖先のハプロタイプは、31名のアロプリノールADR患者のうち12名(38.7%)に存在していた(表7)が、耐性患者では7.1%のみ、健常者では9.7%のみであった。
【0104】
【表8】

【0105】
【表9】

【0106】
HLA−B5801と関連したMHCマーカーについても、ショートタンデムリピート多型アッセイ(STRP)を用いて決定した。簡単に言えば、MHC領域に位置する高度に多型性の20個のマイクロサテライトマーカーを、NCBIデータベースから選択した(すなわち、D6S258、D6S2972、D6S510、D6S265、D6S388、D6S2814、HLAC_CA1、HLABC_CA2、MIB、MICA、TNFd、BAT2_CA、D6S273、D6S1615、DQCAR、G51152、D6S2414、D6S1867、D6S1560、およびD6S1583)。これらのマーカーのヘテロ接合性の平均は、230kbの推定間隔で0.72であった。
【0107】
データベースに記載のこれらのマーカーの配列に基づき、プライマーを設計した。これらのマーカーを増幅し、患者におけるこれらのマーカーの存在または不存在を検出する目的で、ジーンアンプ(GeneAmp)9700サーモサイクラー(アプライド バイオシステムズ、フォスター シティ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を用いて、(10ngのゲノムDNAおよび0.33μMの各プライマーを含有する5μL体積で)PCRを行なった。
【0108】
適当なサイズを有し蛍光シグナルを示す6個以下のPCR産物をプールし、キャピラリーゲル電気泳動を行なった。内部サイズスタンダードとしてLIZ500サイズスタンダード(アプライド バイオシステムズ)を用い、ABI3730DNAシーケンサー(アプライド バイオシステムズ)の電気泳動により、多型アンプリコンのサイズを決定した。アレルのサイズについては、ジーンマッパー(GENMAPPER)プログラム バージョン3.0(アプライド バイオシステムズ)を用いて算出した。SASプログラムを用いて、アレルの呼び出し・除去(calling and binning)を行なった。すべてのジェノタイピング実験で、質を担保する目的で3つのCEPHコントロール個体(1331−01、1331−02、1347−2)およびH20を含めた。
【0109】
連鎖比平衡性プロットを用いたところ、HLA−CとTNFdとの間に位置するアレルブロックがアロプリノール誘発性ADR患者群では見られたが、アロプリノール耐性群では見られなかった。当該ブロックにおいて、HLA−Bアレルに近いハプロタイプ(MIB358−MICA206−TNFd140)が同定された。当該ハプロタイプのADRとの関連性は、HLA−B5801の同一ADRとの関連性と一致している(p=0.0018)。STRPマーカーおよびMICAアレルのシーケンシングを用いることで、アロプリノール誘発性ADR患者全員が同一のBアレル(B5801)、MICAアレル(MICA00201)、およびTNFSTRPマーカー(TNFd140)を有していることが判明した。1名の患者を除いて、他のすべての患者は同一のMIBマーカー(MIB358)をも有していることが判明した。
【0110】
実施例7.CBZ反応性T細胞のオキシカルバゼピンおよびリカルバゼピンに対する交差反応性
CBZ誘発性SJS/TENを有する2名の患者を、長庚記念病院から集めた。一方の患者はHLA−B1502/B4601を有しており、もう1名の患者はHLA−B1502/B5101を有していた。ピュアジーン(PUREGENE)DNA精製システム(ジェントラ システムズ、ミネソタ州、アメリカ合衆国)を用いて、当該患者からゲノムDNAを抽出した。HLB−アレルについては、配列特異的オリゴヌクレオチドリバースラインブロット(ダイナル バイオテック リミテッド、ブロムボロ、イギリス)を用いて確認した。
【0111】
フィコール−アイソパーク(Ficoll−Isopaque)(ファルマシア ファイン ケミカルズ、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)密度勾配遠心分離により、当該患者から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。当該PBMCの一部をエプスタイン・バーウイルスによって形質転換し、自家のB細胞系を樹立した。
【0112】
CBZに反応性のT細胞を、以下の通り展開した。上記患者から調製したPBMCを、37℃の5%COインキュベータ中、10%熱不活性化ヒト血清、IL−2(25U/mL)およびCBZ(25μg/mL)(シグマ)を含有する完全RPMI培地中で、7日間培養した。次いで、CBZの存在下で10日間、放射線照射(50Gy)した自家B細胞と共培養することにより、このT細胞を展開した。上記共培養の操作を2サイクルした後、CBZ活性化T細胞を集め、ELISPOTアッセイ(イーバイオサイエンス(eBioscience))に供した。
【0113】
このCBZ反応性T細胞について、化合物(例えば、CBZ10,11−エポキシド、オキシカルバゼピン(商品名:トリレプタール)、リカルバゼピン、およびスリンダク)に対する交差反応性を調べた。簡単に言えば、Tリンパ球(5×10細胞)を、試験化合物の存在下または不存在下で、10%FBSを含有する200μLのRPMI培地中で自家B細胞(5×10細胞)と混合した。次いでその細胞を、抗インターフェロンγ抗体(ミリポア)でコートしたELISPOTプレートのウェル中で24時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞培養の上清を回収し、本技術分野において公知の抗体介在性の手法を用いて、その中に含まれるインターフェロンγを検出した。
【0114】
本研究の結果によれば、CBZ反応性T細胞はCBZ10,11−エポキシド、オキシカルバゼピン、およびリカルバゼピンには交差反応性であるが、スリンダクに対してはそうではないということが判明した。
【0115】
(他の実施形態)
本明細書に開示された全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合されうる。本明細書に開示されたそれぞれの特徴は、同一の、等価な、または類似の目的に資する他の特徴により置換されうる。よって、そうでないと明記しない限り、開示されたそれぞれの特徴は、等価な、または類似の上位概念の一連の特徴の例示にすぎない。
【0116】
上述の記載から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に把握することができ、その思想および範囲から逸脱することなく、本発明を種々の用途および条件に適合させる目的で種々の変更および修飾を加えることが可能である。よって、他の実施形態もまた、後述する特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】HLA−B1502の特異領域を示す図である。
【図2】HLA−B5801の特異領域を示す図である。
【図3】CSSO−ELISAを行なう手法を概説する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者がHLA−B1502を有するか否かを決定する方法であって、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出すること、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出すること、および、
前記患者がHLA−B1502を有するか否かを決定することを含む、方法;
この際、前記第1領域および前記第2領域の双方が存在すれば、前記患者がHLA−B1502を有することが示される。
【請求項2】
前記領域1の検出は、当該領域1における1位および3位のヌクレオチドを同定することにより行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記領域2の検出は、当該領域2における1位および6位のヌクレオチドを同定することにより行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記領域3の検出は、当該領域3における1位および3位のヌクレオチドを同定することにより行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1領域または前記第2領域のいずれかがCSSO−ELISAまたはリアルタイムPCRにより検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者がHLA−B1502を有するか否かを決定する方法であって、実質的に、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出すること、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出すること、および、
前記患者がHLA−B1502を有するか否かを決定することからなる、方法;
この際、前記第1領域および前記第2領域の双方が存在すれば、前記患者がHLA−B1502を有することが示される。
【請求項7】
前記領域1の検出は、当該領域1における1位および3位のヌクレオチドを同定することにより行なわれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記領域2の検出は、当該領域2における1位および6位のヌクレオチドを同定することにより行なわれる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記領域3の検出は、当該領域3における1位および3位のヌクレオチドを同定することにより行なわれる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記領域がCSSO−ELISAまたはリアルタイムPCRにより検出される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
患者がHLA−B1502を有するか否かを決定するためのキットであって、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出するための第1プローブと、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出するための第2プローブと、
を含む、キット。
【請求項12】
内部制御アレルを検出するための第3プローブをさらに含む、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記第1プローブおよび前記第2プローブがオリゴヌクレオチドである、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが1対のプライマーである、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
患者がHLA−B1502を有するか否かを決定するための3プローブキットであって、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出するための第1プローブと、
HLA−B1502の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出するための第2プローブと、
内部制御アレルを検出するための第3プローブと、
を含む、キット。
【請求項16】
患者がHLA−B5801を有するか否かを決定する方法であって、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出すること、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出すること、および、
前記患者がHLA−B5801を有するか否かを決定することを含む、方法;
この際、前記第1領域および前記第2領域の双方が存在すれば、前記患者がHLA−B5801を有することが示される。
【請求項17】
患者がHLA−B5801を有するか否かを決定する方法であって、実質的に、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出すること、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出すること、および、
前記患者がHLA−B5801を有するか否かを決定することからなる、方法;
この際、前記第1領域および前記第2領域の双方が存在すれば、前記患者がHLA−B5801を有することが示される。
【請求項18】
患者がHLA−B5801を有するか否かを決定するためのキットであって、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出するための第1プローブと、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出するための第2プローブと、
を含む、キット。
【請求項19】
患者がHLA−B5801を有するか否かを決定するためのキットであって、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第1領域を検出するための第1プローブと、
HLA−B5801の領域1〜6からなる群から選択される第2領域を検出するための第2プローブと、
内部制御アレルを検出するための第3プローブと、
を含む、キット。
【請求項20】
ある化合物が、薬剤により誘発される薬剤副作用(ADR)に関連したHLAアレルを有する患者におけるADRを誘発する候補であるか否かを決定する方法であって、
前記ADRに関連したHLAアレルを有するADR患者からT細胞を単離すること、
前記薬剤に対して反応性のT細胞を展開すること、
前記患者から抗原提示細胞(APC)を単離すること、
前記APCの存在下で、展開された前記T細胞を化合物と接触させること、および、
前記化合物が、展開された前記T細胞を活性化するか否かを調べることを含む、方法;
この際、展開された前記T細胞を活性化する化合物は、ADRに関連したHLAアレルを有する患者におけるADRを誘発する候補である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−536828(P2009−536828A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510183(P2009−510183)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/068782
【国際公開番号】WO2007/134235
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【出願人】(508316302)ファーミジーン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】