説明

薬剤吸引排出装置および薬剤吸引排出システム

【課題】簡単な作業で患者に注射薬を投与できる、コンパクトな薬剤吸引排出装置および薬剤吸引排出システムを提供する。
【解決手段】本発明の薬剤吸引排出装置10は、シリンジ駆動装置11と、シリンジ駆動装置11を着脱可能に支持する基台12と、を備え、シリンジ駆動装置11は、ピストン駆動部15の動作パラメータを設定するパラメータ設定部16と、上記ピストン駆動部の動作を動作パラメータにより制御する制御部17と、を有し、基台12は、処方箋データ、処方の指示データおよび薬剤情報のデータのうち少なくともいずれかに基づいて薬剤情報のデータやピストン駆動部15の駆動手順のデータを送受信する情報通信部19と、を備え、シリンジ駆動装置11により薬剤容器の薬剤をシリンジ13に吸引または混合する構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療などの分野において、注射薬などの薬剤(薬液)をシリンジなどに吸引する(または、シリンジから他の薬品に排出する)時に用いる薬剤吸引排出装置および薬剤吸引排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院などで薬剤(薬液)を入院患者などに施用する時に、異なった薬剤容器から数種類の薬剤(薬液)を取り出して混合したものを施用する場合が多い。この時に、混合する薬剤(薬液)の種類の確認などを目視に頼っているので、薬剤の取り間違いなどの取り揃えミスが生じることがある。また、このような薬剤(薬液)を混合する作業については、看護師や薬剤師などの人手に頼ることが多く、薬剤容器に注射針などを挿入して、ブトウ糖などの粘度の高い薬剤(薬液)を吸引するので、大きい作業負担となっている。さらに、病院などで施用される薬剤(薬液)の中には、安全性に十分配慮して取り扱うべき薬剤(薬液)もあり、安全に取り扱えて取り揃えミスがなく、さらに作業負担が少なくて済む薬剤吸引排出装置の開発が望まれている。
【0003】
図9(a)、(b)、(c)は、従来の注射薬排出装置1と、その専用架台2を示す斜視図である。
【0004】
図9(a)は、シリンジ(図示せず)を保持する搭載部3と、シリンジのプランジャ(図示せず)を矢印4aの方向にスライドしてシリンジ内の注射薬を排出するスライダ4と、を有する注射薬排出装置1の斜視図である。この注射薬排出装置1は、患者への投与設定などの各種設定を行う設定部、外部と通信を行う通信部および患者固有情報を含む患者データを記憶し、患者と一対一対応を行う記憶部も備えている。
【0005】
図9(b)は、注射薬排出装置1を6個搭載できる専用架台2の斜視図である。図9(c)は、専用架台2の内1個の要部を拡大した斜視図である。図9(b)、(c)に示すように、専用架台2の載置面5には、注射薬排出装置1の通信部からのデータを受信する通信ユニット6、電力を供給する給電ユニット7および載置面5の正しい位置に固定するために位置を検知する検知ユニット8がそれぞれ配置されている。
【0006】
このような構成により、一人の患者に対して注射薬排出装置1を複数搭載可能として、それぞれの注射薬排出装置1から正しい量の注射薬を患者にそれぞれ投与する。この時に、専用架台2にから患者に対応した患者データがデータベースに送られ、この情報を共有して、それぞれの注射薬排出装置1から必要な注射薬が順番に患者に投与される。
【0007】
これにより、患者と注射薬排出装置1を複数搭載した専用架台2との一対一の対応を行い、看護師などの記憶に頼ることなく患者間違いによる注射薬の誤投与防止を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−167888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記で説明した従来の技術においては、予め患者に投与する注射薬を吸引した複数のシリンジをそれぞれの注射薬排出装置1に保持しておく必要がある。したがって、同じ形状の注射薬排出装置1が複数並んでおり、これらに搭載された複数のシリンジから所定の量の注射薬を正しい順番で患者に投与する時に、取り間違えが生じる可能性がある。また、同じく患者に投与する時に、それぞれの注射薬の吸引量を間違う可能性もある。さらに、複数の注射薬排出装置1を搭載した専用架台2は大きく、予め吸引したシリンジを使用する場合に場所を取り、また、その場所まで運搬するのに看護師などに多大な作業負担を強いるという課題もある。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、薬剤の取り間違えや混合調製手順、薬剤の吸引量や排出量の間違いを防止し、簡単な作業で薬剤の吸引や排出を行うことのできる、薬剤吸引排出装置および薬剤吸引排出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の薬剤吸引排出装置は、シリンジを保持して駆動させるシリンジ駆動装置と、前記シリンジ駆動装置を着脱可能に支持する基台と、を備えた薬剤吸引排出装置であって、前記シリンジ駆動装置は、前記シリンジのシリンダーを保持するシリンダー保持部と、前記シリンジのピストンを駆動するピストン駆動部と、処方箋データおよび処方の指示データおよび薬剤情報のデータの内の少なくともいずれかに基づいてピストン駆動部の動作パラメータを設定するパラメータ設定部と、前記ピストン駆動部の動作を前記動作パラメータにより制御する制御部と、を有し、前記基台は、前記処方箋データおよび前記処方の指示データおよび前記薬剤情報のデータの内の少なくともいずれかに基づく薬剤情報のデータを前記シリンジ駆動装置に送信する送信部と、前記シリンジ駆動装置を保持する保持部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薬剤の取り間違えや混合調製手順、薬剤の吸引量や排出量の間違いを防止し、簡単な作業で薬剤の吸引や排出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置の概略構成を示す斜視図
【図2】(a)本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置を構成するシリンジ駆動装置の斜視図、(b)本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置を構成するシリンジ駆動装置の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置を構成する基台の斜視図
【図4】本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置の基本的な動作フローチャート
【図5】本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置の主要な構成要素を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出システムの概略構成を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出システムの主要な構成要素を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態2にかかる薬剤吸引排出システムの概略構成を示す斜視図
【図9】(a)従来の注射薬排出装置の斜視図、(b)その専用架台を示す斜視図、(c)その専用架台を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置10の概略構成を示す斜視図である。図2(a)、(b)は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置10を構成するシリンジ駆動装置11の斜視図である。図2(a)は、側面方向から見たシリンジ駆動装置11の斜視図、図2(b)は斜め上部から見たシリンジ駆動装置の斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置10を構成する基台12の斜視図である。なお、本実施の形態1では、薬剤として注射薬(薬液)を想定しており、注射薬を使用する場合を例として説明している。
【0016】
図1に示すように本実施の形態1の薬剤吸引排出装置10は、シリンジ13を保持してそのピストン13bを駆動させるシリンジ駆動装置11と、シリンジ駆動装置11を着脱可能に支持する基台12と、を備えた構成である。
【0017】
図1および図2(a)、(b)に示すように、シリンジ駆動装置11は、シリンジ13のシリンダー13aを保持するシリンダー保持部14と、シリンジ13のピストン13bを駆動させるピストン駆動部15と、パラメータ設定部16と、制御部17と、を有している。ここで、パラメータ設定部16は、処方箋データ、処方の指示データおよび薬剤情報のデータの内の少なくともいずれかに基づいて、ピストン駆動部15の動作パラメータを設定する。制御部17は、ピストン駆動部15の動作を動作パラメータにより制御する。ここで、処方の指示データとは、処方箋データの形態になっていない薬剤の混合調製や処方などを指示するデータのことをいう。
【0018】
図1および図3に示すように、基台12は、受信部19aと、送信部19bと、保持部21と、を備えている。ここで、受信部19aと送信部19bとにより、情報通信部19が構成されている。受信部19aは、処方箋データ、処方の指示データおよび薬剤情報のデータの内の少なくともいずれかに基づいてシリンジ13に吸引する薬剤情報のデータベース(図示せず)を受信する。送信部19bは、ピストン駆動部15の駆動手順のデータを、シリンジ駆動装置11に送信する。そして、保持部21は、シリンジ駆動装置11を保持する。なお、シリンジ駆動装置11の握り手部25の下部には、一対の充電端子受容部26と情報端子受容部27とが配置されている。
【0019】
また、基台12は、シリンジ駆動装置11を操作する人を認証する認証部18と、シリンジ駆動装置11のピストン駆動部15の動力源である電池部22を充電する充電部20と、を備えた構成としてもよい。シリンジ駆動装置11を人が扱う場合には、認証部18により、その人の指紋または虹彩などを認証し、シリンジ駆動装置11を扱い許可を予め登録された人であることを確認している。すなわち、認証部18には、指紋認証装置(図示せず)および虹彩認証装置(図示せず)の内の少なくともいずれかが配置されている。そして、基台12の握り手部25を保持する位置には、上述の一対の充電端子受容部26と情報端子受容部27と対応した一対の充電端子26aと情報端子27aとが配置されている。このような配置により、基台12の充電部20で充電された電荷は、充電端子26aおよび充電端子受容部26を介して配線(図示せず)などでシリンジ駆動装置11の電池部22に伝送される。
【0020】
この構成により、薬剤(注射薬)の吸引排出作業の流れの中で、薬剤(注射薬)の吸引排出やその混合調製を取り扱う人を間違いなく認識し、常に充分に充電されたシリンジ駆動装置を用いて効率よく作業を行うことができる。
【0021】
シリンジ駆動装置11の制御部17およびパラメータ設定部16と基台12の情報通信部19とは、情報端子27aおよび情報端子受容部27を介して、配線(図示せず)などにより電気的に相互に薬剤情報(医療情報)を伝送する。
【0022】
この構成により、シリンジ13は、シリンジ駆動装置11に搭載される。そして、シリンジ13のシリンダー13aはシリンダー保持部14に固定され、ピストン13bはピストン駆動部15に固定されて、それぞれ保持される。ピストン駆動部15は、シリンダー13aを挟んで両側に配置されたラック15a、15bによりピストン13bを駆動させる。このラック15a、15bは、モータ(図示せず)の電力を伝達するピニオン(図示せず)を矢印15cの方向に移動させることで駆動する。すなわち、シリンジ駆動装置11のピストン駆動部15とピストン13bとが可動部として矢印15cの方向に移動し、注射針13cの先端から薬剤容器(図示せず)の薬液を吸引または排出する。これにより、薬剤吸引排出装置10は、シリンジ駆動装置11により、薬剤容器の薬剤(注射薬)をシリンジ13に吸引する。あるいは、輸液バッグ(図示せず)に排出して混合する。なお、シリンジ13のシリンダー13aおよびピストン13bは、押さえ具11a、11bにより、その上部を押さえて固定されている。また、ピストン駆動部15を注射針13cに近い方向(または、その逆方向)に動かすには、握り手部25に設けられた一組のボタン25a、25bのいずれかを押せばよい。
【0023】
以上の構成により、シリンジ13をほぼシリンジ駆動装置11に固定した状態で、簡単な操作により患者に注射薬を投与できる。したがって、看護師などの作業負担を軽減したコンパクトな薬剤吸引排出装置10を実現できる。
【0024】
図1および図3に示すように、基台12は、シリンジ13に吸引する薬剤を表示する表示部23と、シリンジ13に吸引する薬剤を認識する薬剤認証部24と、を備えている。ここで、表示部23は、基台12の側面12aに嵌め込まれているが、表示部23の一辺23aを矢印の方向を軸に矢印23bの方向に表示部23の表示面23cの方向を変えて移動させることができる。この表示面23cに、どの薬剤(注射薬)をどういう順番で取り扱うかについての指示や、混合調製の方法、手順および注意点並びに使用する注射薬の吸引量や排出量を、わかり易く表示する。また、このような表示面23cへの表示は、まず、取り扱うべき薬剤(注射薬)が薬剤認証部24で認証された後でないと表示されない。そうすると、扱う薬剤(注射薬)を順序良く薬剤認証部24で認証し、これにより表示面23cに表示された指示内容に従い、混合調製を行い、薬剤(注射薬)の吸引等を行う。また、表示面23cが見にくい位置で作業をする時には、矢印23bの方向に表示面23cの方向を変えて移動し、指示内容を見て混合調製などの作業を確実に行うことができる。
【0025】
この構成により、薬剤(注射薬)の取り間違えや混合調製手順および注射薬の吸引量や排出量の間違いをさらに防止することができる。
【0026】
次に、本実施の形態1の薬剤吸引排出装置10の基本的な動作について説明する。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置10の基本的な動作フローチャートを示す。図5は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出装置10の主要な構成要素を示すブロック図である。
【0028】
図4および図5に示すように、薬剤(注射薬)の吸引排出を行う時には、まず、薬剤吸引排出装置10を操作する看護師や薬剤師などの人を認証部18で認証する(人認証ステップS1)。認証には指紋や虹彩などが用いられ、薬剤吸引排出装置10を操作できる人は、予め登録されている。登録された人が認証されると、薬剤吸引排出装置10の充電用電源20aを含む電源がオンする。登録された人以外は、認証部18で認証されないので、薬剤吸引排出装置10の電源はオフのままで、薬剤吸引排出装置10の使用ができない。
【0029】
次に、処方箋に基づいて、シリンジ13に吸引する薬剤情報のデータを基台12の情報通信部19の受信部19aで受信する(データ受信ステップS2)。この薬剤情報のデータは、データベースから無線で送信されても、固体メモリにより入力されてもよい。
【0030】
薬剤情報のデータが入力されると、シリンジ13に吸引する薬剤(注射薬)が表示部23に表示される(表示ステップS3)。この表示内容に従い、表示された薬剤(注射薬)を選択して、薬剤を薬剤認証部24で認識させる(薬剤認証ステップS4)。選択した薬剤が吸引する薬剤であることが正しく認識されると、シリンジ駆動装置11で薬剤を吸引するのに必要なデータ、例えば、薬剤の吸引量、薬剤の粘度などの特性に対応した吸引スピードなどが送信される(データ送信ステップS5)。具体的には、吸引する薬剤の粘度が高いなどで泡立ち易い時には、シリンジ駆動装置11により薬剤をゆっくりと吸引するように、そのモータの動作を制御する。逆に薬剤の粘度が低い時には、薬剤をすばやく吸引するように、そのモータの動作を制御する。また、薬剤の種類によっては高速で扱うと分子等を破損するものも有り、その場合は低速で吸引するようにモータを制御する。また、薬剤の吸引量が多い時には、吸引の始めは早く吸引し、吸引の終わりにはゆっくりと吸引するように、モータの動作を制御するようにしてもよい。
【0031】
この吸引のスピードなどのデータをシリンジ駆動装置11の制御部17で受信すると、ピストン駆動部15において、このデータに基づいた薬剤の吸引量や吸引スピードなどの動作パラメータが設定される(動作パラメータ設定ステップS6)。制御部17は、この動作パラメータにより、ピストン駆動部15の動作を制御する。これにより、シリンジ13の中に吸引する薬剤の特性や作業性を考慮した吸引スピードで所定の量の薬剤が吸引される(吸引排出ステップS7)。なお、動作パラメータは、シリンダー13aへの薬剤の吸引の速度、シリンダー13aからの薬剤の排出の速度および吸引する薬剤の吸引量に対応して設定する交換用の空気の量のうちの少なくともいずれかのパラメータを含む構成としている。
【0032】
この構成により、シリンダー13aに吸引する、または、シリンダー13aから排出する薬剤の特性を考慮して動作パラメータを設定するので、薬剤の特性に適した薬剤(注射薬)の混合調製を行うことができる。
【0033】
吸引排出ステップS7において、シリンダー13a内に吸引した薬剤を輸液バッグなどに混合調製したい場合には、シリンジ駆動装置11を用いて、注射針13cを輸液バッグなどに挿入して、シリンダー13a内の薬剤の排出を行う。一連の吸引および排出が終わると、シリンジ駆動装置11は基台12の保持部21に保持される(保持ステップS8)。
【0034】
最後に、一連の動作フローチャートで新たに取得したデータを蓄積する(データ蓄積ステップS9)。例えば、一連のデータの中で取り間違えが起こりやくい注射薬の組み合わせや混合調製の作業を間違えやすい手順などのデータが蓄積される。また、薬剤(注射薬)を吸引する時に間違いやすい吸引量や排出量の数値の組み合わせなども、蓄積されたデータを統計的に分析することにより明確にすることができ、混合調製の作業時に特に注意を促して間違えを回避することもできる。
【0035】
この構成により、薬剤(注射薬)の取り間違えや混合調製手順および薬剤(注射薬)の吸引量や排出量の間違いを防止し、作業内容を簡単にするように改善して患者に薬剤(注射薬)を投与できる。
【0036】
なお、シリンジ駆動装置11の電池部22は、例えば乾電池などの1次電池からなる電池22aと、例えばリチウムイオン電池などの2次電池やキャパシタなどからなる充電電池22bとが併用できるように構成されている。そして、シリンジ駆動装置11が基台12の保持部21で保持されている間に、必要に応じて充電電池22bは、基台12の充電部20により充電される。
【0037】
次に本実施の形態1の薬剤吸引排出装置10を用いた薬剤吸引排出システム30について説明する。
【0038】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出システム30の概略構成を示す斜視図である。図7は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤吸引排出システム30の主要な構成要素を示すブロック図である。
【0039】
図6に示すように、本実施の形態1の薬剤吸引排出システム30は、上述の薬剤吸引排出装置10と、処方箋情報、監査情報および混合調整情報の内の少なくともいずれかの情報を送受信する医療情報データベース31と、を備えている。そして、薬剤吸引排出システム30は、薬剤吸引排出装置10の基台12と医療情報データベース31との間で送受信した医療情報に基づいてシリンジ駆動装置11により薬剤容器の薬剤をシリンジに吸引または混合する。
【0040】
この構成により、医療情報データベース31を活用して混合調製作業を行って蓄積されたデータも活用するので、薬剤(注射薬)の取り間違えや混合調製手順および薬剤(注射薬)の吸引量や排出量の間違いをさらに確実に防止することができる。なお、薬剤吸引排出システム30の動作フローチャートは、図4に示す薬剤吸引排出装置10の動作フローチャートと同じである。ただし、データの送受信や医療情報の各構成要素間のやり取りの中で、情報通信部19は医療情報データベース31を必要に応じて活用することができる。すなわち、医療情報データベース31においては、システムが持っている医療情報(薬剤情報)の全てをデータベースとして利用できるだけでなく、他の場所の端末として使用された利用者認証部32の認証データや患者ごとの処方箋を含む指示書33のデータも利用できる。これらのデータは、図7に示すように、通信部34と薬剤吸引排出装置10の基台12の情報通信部19の間で交換され利用される。なお、この指示書33は、処方箋データ、処方の指示データおよび薬剤情報のデータのうち少なくともいずれかに基づいて作成されたものである。
【0041】
また、薬剤吸引排出システム30において、例えば、処方箋33から取得した医療情報に基づき、医療情報データベース31により必要な動作パラメータを抽出する。この抽出された動作パラメータを基台12に送信した後、基台12からシリンジ駆動装置11のパラメータ設定部16に伝送する構成としてもよい。なお、医療情報は、処方箋データ、処方の指示データおよび薬剤情報のデータのうち少なくともいずれかに基づいた薬剤に関する情報であればよい。
【0042】
この構成により、シリンジ駆動装置11に必要な情報は適切な時に適切な量だけ基台12から取得することができる。これにより、医療情報データベース31の情報が必要な時には予め基台12の受信部19aに取り込み、シリンジ駆動装置11がその情報を使用する直前にシリンジ駆動装置11にその情報を転送することができる。そうすると、シリンジ駆動装置11が記憶すべきメモリの量は少なくなるので、形状も小型にできる。以上により、医療情報データベース31の情報は全て使用することができ、かつ、その情報を適切に使用したコンパクトなシリンジ駆動装置11が実現できる。その結果、コンパクトな薬剤吸引排出システム30を実現できる。
【0043】
また、薬剤吸引排出システム30において、基台12は、シリンジ駆動装置11を操作する人を認証する認証部18を有し、認証部18の人の認証結果により、シリンジ駆動装置11の動作をアクティブ、または、非アクティブにする。
【0044】
この構成により、予め登録されたシリンジ駆動装置11を操作する人を確実に認証し、それ以外の人は認証しない。したがって、予め登録された人以外は操作できない。したがって、一定のレベル以上の知識とスキルを持った人だけが予め登録できることとすると、シリンジ駆動装置11を操作する人を限定できる。これにより、薬剤吸引排出システム30の安全性が向上する。
【0045】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2にかかる薬剤吸引排出システム40の概略構成を示す斜視図である。
【0046】
図8に示すように、本実施の形態2の薬剤吸引排出システム40は、実施の形態1の薬剤吸引排出システム30と異なり、薬剤容器搭載部41と、情報提示部42と、輸液バッグ搭載部43と、基台部44と、を有する薬剤混合ステーション45を備えている。ここで、薬剤容器搭載部41は、薬剤容器41aを配置するものであり、輸液バッグ搭載部43は、シリンジ駆動装置11などにより、シリンダー13a内の薬剤を注入する輸液バッグ43aを配置するものである。基台部44は、薬剤容器搭載部41および輸液バッグ搭載部43と一体化した混合調製エリア46を配置したものである。
【0047】
したがって、本実施の形態2の薬剤吸引排出システム40は、シリンジ駆動装置11と、基台12と、を有する薬剤吸引排出装置10と、医療情報データベース31と、薬剤混合ステーション45と、を備えたシステムである。
【0048】
薬剤混合ステーション45の基台部44は、少なくとも記憶部45aと、記憶部45aおよび情報提示部42を制御するステーション制御部45bと、を内蔵している。このステーション制御部45bは、薬剤吸引排出装置10の送信部19b及び受信部19aと医療情報を送受信することにより、シリンジ駆動装置11により薬剤容器41aの薬剤をシリンジ13に吸引または混合する構成としている。
【0049】
次に、薬剤吸引排出システム40の基本的な動作について簡単に説明する。図8に示すように、情報提示部42の背面に配置された処方箋読取部47または医療情報データベース31により、例えば、患者ごとの処方箋33の情報を読み取る。この処方箋情報により、取り揃えるべき薬剤が入った薬剤容器41aの画像情報が情報提示部42に表示され、この画像情報に従い、薬剤容器搭載部41に薬剤容器41aを配置する。この時までに、薬剤(注射薬)を扱う人の認証は、基台12の認証部(図示せず)などで認証され、薬剤容器41aの認証も基台12の薬剤認証部(図示せず)などで認証されている。したがって、薬剤吸引排出システム40の薬剤吸引排出装置10のフローチャートは、実施の形態1で説明したものと同様に進行する。なお、医療情報は、処方箋データ、処方の指示データおよび薬剤情報のデータのうち少なくともいずれかに基づいた薬剤に関する情報であればよい。
【0050】
薬剤容器41aの認証によりシリンジ駆動装置11の吸引排出動作に必要なデータが、基台12の情報通信部(図示せず)を通じてシリンジ駆動装置11の制御部(図示せず)に送られている。そこで、最初に吸引する薬剤容器41aを取り、シリンジ駆動装置11により、中の薬剤(薬液)を吸引する。この時の薬剤(薬液)の吸引量や吸引のスピードなどのデータは、上述のように制御部に送られている。吸引が終わると、シリンジ駆動装置11に保持されたシリンジ13の中の薬剤(薬液)を混合調製する輸液バッグ43aに排出する。輸液バッグ43aは、シリンジ13の注射針13cが挿入しやすいように、その注出口栓43bを支持部43cで支えられている。
【0051】
薬剤の排出が終わると、次の薬剤容器41aも同様に薬剤(薬液)の吸引が続けて行われる。一連の吸引および排出が終わると、シリンジ駆動装置11は、基台12の所定の位置に置かれて保持される。この後に、一連の吸引および排出のプロセスに関する実施データが、シリンジ駆動装置11の制御部および基台12の情報通信部並びに薬剤混合ステーション45から医療情報データベース31に送信される。これらのデータは、必要に応じて医療情報データベース31に蓄積される。
【0052】
この構成により、作業場所を選ばないコンパクトな薬剤吸引排出システム40が実現できる。また、混合調製する薬剤が全て揃い、作業指示も見やすい情報提示部42により表示され、これらにより、薬剤吸引排出システム40がサポートされる。これにより、混合調製時の薬剤の取り間違いや吸引量の間違いなどを防止し、安全かつ正確に薬品を混合できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の薬剤吸引排出装置および薬剤吸引排出システムによれば、薬剤(注射薬)の取り間違えや混合調製手順および注射薬の吸引量や排出量の間違いを防止することができる。
【0054】
この薬剤吸引排出装置および薬剤吸引排出システムを用いれば、薬剤師や看護師などが安全かつ正確に薬品などを扱うことができ、病院などにおいて看護師や薬剤師などの作業負担を大幅に軽減でき、有用である。
【0055】
また、本発明の薬剤吸引排出装置および薬剤吸引排出システムは、病院などの医療分野だけでなく、バイオケミカルなどを用いた産業分野(農業や工業など)にも適用でき、有用である。
【符号の説明】
【0056】
10 薬剤吸引排出装置
11 シリンジ駆動装置
11a,11b 押さえ具
12 基台
12a 側面
13 シリンジ
13a シリンダー
13b ピストン
13c 注射針
14 シリンダー保持部
15 ピストン駆動部
15a,15b ラック
15c,23b 矢印
16 パラメータ設定部
17 制御部
18 認証部
19 情報通信部
19a 受信部
19b 送信部
20 充電部
20a 充電用電源
21 保持部
22 電池部
22a 電池
22b 充電電池
23 表示部
23a 一辺
23c 表示面
24 薬剤認証部
25 握り手部
25a,25b ボタン
26 充電端子受容部
26a 充電端子
27 情報端子受容部
27a 情報端子
30,40 薬剤吸引排出システム
31 医療情報データベース
32 利用者認証部
33 指示書
34 通信部
41 薬剤容器搭載部
41a 薬剤容器
42 情報提示部
43 輸液バッグ搭載部
43a 輸液バッグ
43b 注出口栓
43c 支持部
44 基台部
45 薬剤混合ステーション
45a 記憶部
45b ステーション制御部
46 混合調製エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジを保持して駆動させるシリンジ駆動装置と、前記シリンジ駆動装置を着脱可能に支持する基台と、を備えた薬剤吸引排出装置であって、
前記シリンジ駆動装置は、前記シリンジのシリンダーを保持するシリンダー保持部と、前記シリンジのピストンを駆動するピストン駆動部と、処方箋データおよび処方の指示データおよび薬剤情報のデータの内の少なくともいずれかに基づいてピストン駆動部の動作パラメータを設定するパラメータ設定部と、前記ピストン駆動部の動作を前記動作パラメータにより制御する制御部と、を有し、
前記基台は、前記処方箋データおよび前記処方の指示データおよび前記薬剤情報のデータの内の少なくともいずれかに基づく薬剤情報のデータを前記シリンジ駆動装置に送信する送信部と、前記シリンジ駆動装置を保持する保持部と、を備えた、
薬剤吸引排出装置。
【請求項2】
前記基台は、前記シリンジ駆動装置を操作する人を認証する認証部と、前記シリンジ駆動装置の前記ピストン駆動部の電池部を充電する充電部と、を備えた、
請求項1に記載の薬剤吸引排出装置。
【請求項3】
前記基台は、前記シリンジに吸引する薬剤を表示する表示部と、前記シリンジに吸引する薬剤を認識する薬剤認証部と、を備えた、
請求項1または2に記載の薬剤吸引排出装置。
【請求項4】
前記動作パラメータは、前記シリンジへの薬剤の吸引の速度、または、前記シリンジからの薬剤の排出速度および薬剤の吸引量に対応して設定する交換用の空気量の少なくともいずれかのパラメータを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の薬剤吸引排出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の薬剤吸引排出装置と、
処方箋情報、監査情報および混合調整情報の内の少なくともいずれかの情報を送受信する医療情報データベースと、を備え、
前記薬剤吸引排出装置の基台と前記医療情報データベースとの間で送受信した医療情報に基づいて前記シリンジ駆動装置により薬剤容器の薬剤を前記シリンジに吸引または混合する、
薬剤吸引排出システム。
【請求項6】
処方箋から取得した医療情報に基づき、前記医療情報データベースにより必要な動作パラメータを抽出して、抽出された前記動作パラメータを基台に送信した後、前記基台から前記シリンジ駆動装置の前記パラメータ設定部に伝送する、
請求項5に記載の薬剤吸引排出システム。
【請求項7】
前記基台は、前記認証部の人の認証結果により、前記シリンジ駆動装置の動作をアクティブ、または、非アクティブにする、
請求項5または6に記載の薬剤吸引排出システム。
【請求項8】
薬剤容器を配置する薬剤容器搭載部と、
処方箋情報、監査情報および混合調製情報の内の少なくとも何れかを画面に表示する情報提示部と、
前記薬剤を注入する輸液バッグを配置する輸液バッグ搭載部と、
前記薬剤容器搭載部および前記輸液バッグ搭載部と一体化した混合調整エリアを配置した基台部と、を有する薬剤混合ステーションを備え、
前記基台部は、少なくとも記憶部と、前記記憶部および前記情報提示部を制御するステーション制御部と、を内蔵し、
前記ステーション制御部は、前記薬剤吸引排出装置の送信部及び受信部との間で医療情報を送受信することにより、前記シリンジ駆動装置により前記薬剤容器の薬剤を前記シリンジに吸引または混合する、
請求項5から7のいずれか1項に記載の薬剤吸引排出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−115357(P2011−115357A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275113(P2009−275113)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】