説明

薬剤徐放システム

【課題】薬剤の徐放が、分解吸収性の異なる高分子の複合体により制御可能であり、至適濃度、至適期間生体内の薬物濃度を制御できる薬剤徐放システムを提供すること。
【解決手段】二種類以上の薬剤担体を有し、当該薬剤担体を相互に分解吸収速度の異なる分解吸収性高分子より形成し、安定した薬剤の単位時間当たりの徐放速度を制御可能にした薬剤徐放システム。前記単位時間当たりの徐放速度の制御は、二種類以上の薬剤担体として構成されるそれぞれの分解吸収性高分子の分解吸収速度の差により制御した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に一定期間保持され、内部に担持された生物学的に活性な物質または組成物(以下薬剤)を目的期間にわたり目的生体内濃度で、生体内で徐放させる薬剤徐放システムに関する。さらに詳述すれば、本発明は、1種以上の薬剤を使用環境に徐々に放出またはその放出速度等を制御できる薬剤徐放システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬剤の開発改良が進み、高分子医薬と呼ばれる高分子化合物を含有する医薬がさまざま上市されている。高分子医薬は主に高分子化合物それ自体が薬理活性を有するものと、薬理活性を有する低分子化合物をキャリヤーと呼ばれる高分子に結合させたものがある。
本発明の属する生体内徐放システムはどちらにも応用可能である。さらに徐放システムとは生体内への薬剤投与を効果的に行い、副作用を抑制する目的で、必要最小限の薬剤を治療すべき局所のみへ運び、さらに必要な時間だけ滞留させるように製剤からの薬剤放出速度と量を制御する方法である。または、薬剤の血中濃度が副作用発現濃度と最低有効濃度との範囲内にある最適治療濃度領域となるように、製剤からの薬剤放出速度と量を制御する方法である。
このような薬剤を制御放出する方法として、現在までのさまざまの薬物徐放システムが考案され、これに適合するための種々の高分子材料が検討されている。
その結果、現在の技術では、生体内の薬剤濃度を比較的一定にすることが可能になりつつあり、薬剤の濃度が急激に上昇し、その後減少するようなことはなくなりつつある。
【0003】
薬剤の徐放のための各種製剤についてはこれまで様々報告されてきた。これらの製剤のうちのあるものは、それらの効果を出すために拡散現象、薬剤徐放温度によるものが検討され、前者は特許文献1(特公平07−053672)、後者は特許文献2(特開平06−247841)、特許文献3(特開平11−92554)に記載されている。
しかしながら、薬剤徐放に関する単位時間当たりの徐放量の制御に関して述べるのであれば、前述の現状技術では、患者の容態に応じた単位時間当たりの薬剤徐放量のコントロールが不十分である。即ち、現状技術ではドラッグデリバリーシステムにおいて重要となる、ターゲティングと徐放という2つのものにたいしての考察が不完全である。敢えて限定的に詳しく述べるのであればターゲティングの技術の進歩は目覚しいものがあるが、その単位時間当たりの徐放速度の制御に関してはいまだに技術課題を残している。詳しく述べると、ターゲティングは薬剤及び担体が生体内に入った際に、その外部環境に応じて、薬剤の放出応答を開始する。この分野に関してはもっぱら前述のような発明、技術ブレイクスルーが生まれつつある。しかし、これだけの技術では薬剤の徐放そのもの、即ち、どれくらいの徐放期間、徐放量、徐放速度で、患者に投与すれば良いかという問題を解決できない。
【0004】
また、特許文献4(特開平10−298108)には水溶性ポリマー繊維、生分解性ポリマー及びリン酸カルシウム系化合物からなる複合体に薬剤を含ませることにより薬剤の徐放速度を制御すること述べられている。しかしながら、この技術では水溶性ポリマーの溶出を薬剤徐放に利用しており、本質的に分解吸収速度の異なる生体吸収性高分子より形成されているわけではない。そのため、分解吸収性によって薬剤の徐放がコントロールされているとは言えず、特許文献1と同様に、単に水溶性高分子よりの薬剤を拡散しているにすぎないので、十分な薬剤の徐放コントロールが可能であるとは考えにくい。
【0005】
【特許文献1】特開平05−229963(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平06−247841(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−92554(発明の効果の記載)
【特許文献4】特開平10−298108(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の徐放薬剤製剤では、患者に投与する際に、薬剤の徐放期間、量、速度等をコントロールしにくい点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、1種類以上の生理活性を有する有効剤を使用環境に徐放する製剤を提供することであり、使用環境に徐放する際には、至適濃度、至適期間徐放するような製剤を提供することである。
[1]本発明は、二種類以上の薬剤担体を有し、当該薬剤担体を相互に分解吸収速度の異なる分解吸収性高分子より形成し、安定した薬剤の単位時間当たりの徐放速度を制御可能にした薬剤徐放システムを提供する。
[2]本発明は、前記単位時間当たりの徐放速度の制御は、二種類以上の薬剤担体として構成されるそれぞれの分解吸収性高分子の分解吸収速度の差により制御している[1]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[3]本発明は、前記それぞれの分解吸収性高分子の分解吸収速度の差は、それぞれ分解されるまでの期間が12時間以上異なる[1]ないし[2]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[4]本発明は、前記薬剤担体が、粒状、微粉末状、シート状、層状、コロイド状、ゲル状の中から選ばれる少なくとも一種類以上の組み合わせである[1]ないし[3]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[5]本発明は、第一の薬剤担体を第二の薬剤担体で段階構造となし、及び/又は前記第二の薬剤担体を第三の薬剤担体で段階構造となし、錠剤、微粉末状、コロイド状、シート状、ゲル状、チューブ状、ストランド状、またはそれらの多孔体のいずれかに形成した[1]ないし[4]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[6]本発明は、前記薬剤担体としての分解吸収性高分子は、脂肪族エステル化合物及びその誘導体、共重合体である[1]ないし[5]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[7]本発明は、前記薬剤担体としての分解吸収性高分子である脂肪族エステル化合物及びその誘導体、共重合体が、その共重合比で分解吸収性をコントロールしている[1]ないし[6]に記載の薬剤除放システムを提供する。
[8]本発明は、前記薬剤担体としての分解吸収性高分子が、その分子量で分解吸収性をコントロールしている[1]ないし[7]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[9]本発明は、前記薬剤担体としての脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンのいずれかを含む[1]ないし[8]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[10]本発明は、前記薬剤担体としての脂肪族エステルがポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンのうち、2種あるいは3種を共重合させたものである[1]ないし[9]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
[11]本発明は、前記薬剤が、抗炎症剤、抗生物質、アルキル化剤、制癌剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、血圧降下剤、ホルモン、神経成長因子、成長分化因子、軟骨由来成長因子、骨盤成長因子、上皮成長因子、線維牙細胞由来成長因子、血小板由来成長因子、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、インターロイキン1,2,3,インターフェロンα,β,γ,トランスフォーミング成長因子、インシュリン、カルシトニン、プロスタグランジンの中から選ばれる少なくとも一種類以上である[1]ないし[10]に記載の薬剤徐放システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、(1)薬剤の徐放が、分解吸収性の異なる高分子の複合体により制御可能である。(2)(1)により、至適濃度、至適期間生体内の薬物濃度を制御できる。(3)また本発明では、患者に薬剤を投与するに際し、どれくらいの徐放期間、徐放量、徐放速度で、患者に投与すれば良いかという問題にたいして、単位時間当たりの徐放速度を制御することにより、より明確な技術ブレイクスルーとなりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための薬剤徐放システムの原理、材料、形態を詳細に説明する。
[本発明の原理]
本発明の薬剤徐放システムは、二種類以上の薬剤担体を有し、当該薬剤担体を相互に分解吸収速度の異なる分解吸収性高分子より形成し、安定した薬剤の単位時間当たりの徐放速度を制御可能にしたものである。
前記単位時間当たりの徐放速度の制御は、薬剤担体として使用される分解吸収性高分子の分解吸収速度の差により制御している。
【0010】
さらに詳述すれば、生体内での分解吸収速度の異なる高分子の分解吸収され、或いは分解され薬剤を坦持できなくなる、このような高分子を用いることによって、1種類以上の薬剤を、生体内生理的液体に徐々に放出し、且つ、薬剤を投与される患者の必要度合いに応じて必要期間(至適期間)、必要濃度(至適濃度)徐放することが可能になる。
また本発明における「分解吸収速度が異なる」(分解吸収速度の差)とは、生理学的液体内にて薬剤を含有できなくなる強度に達するまでの期間が12時間以上、好ましくは24時間以上が良い。12時間未満の分解吸収性の差異は、薬剤を投与する患者にとって有効になる可能性は低い。
【0011】
[材料:生体内分解吸収性高分子]
本発明は、薬剤担体として生体内分解吸収性高分子(分解吸収性高分子ともいう)が使用される。分解吸収性高分子とは、生体内で分解吸収され、分解吸収の段階においては、加水分解や酵素分解されて最終的には代謝されて生体内より排出される高分子である。
本発明に使用する前記薬剤担体としての分解吸収性高分子は、特に限定するものではないが、例えば生体内で加水分解ないし吸収される、脂肪族エステル化合物及びその誘導体、共重合体等であって、その中でも乳酸、グリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族のポリエステル化合物等が好適である。
前記脂肪族のポリエステル化合物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−εカプロラクトンのいずれかを含み、好ましくは、これらのうち、2種あるいは3種を共重合させたものが好適である。特にこれらの脂肪族のポリエステル化合物は、前記乳酸、グリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンをそれぞれを重合単位として、単独重合や共重合が可能であり、且つ共重合単位で分解吸収速度(分解吸収性)が異なるため、それぞれの共重合比、分子量での分解吸収性が制御可能であるために好適である。
さらにそれぞれの薬剤担体を形成する際の、それぞれの共重合モル比及びその分子量(モル平均)は、それぞれの分解期間を考慮した範囲であれば如何なる制約も受けることなく使用可能である。使用範囲をあえて論ずるのであれば、薬剤担体の分解期間を考慮して、薬剤担体内層及び薬剤担体外層の分解吸収性(分解吸収性とは単体が薬剤を坦持できなくなる期間をいう)の速度の異なる高分子を用いることであり、それら分解吸収性の速度は各高分子の共重合比あるいは分子量によって推測、考慮できるために、その処方する患者の様態に適合した担体設計が望まれる。
【0012】
[形態]
本発明の薬剤徐放システムは、前記薬剤担体として、例えば、錠剤、微粉末状、コロイド状、シート状、ゲル状、チューブ状、ストランド状、またはそれらの多孔体から選ばれる少なくとも一種類以上の組み合わせて使用することができる。
本発明の薬剤徐放システムの好ましい形態は、第一の薬剤担体を第二の薬剤担体で段階構造となし、及び/又はさらに前記第二の薬剤担体を第三の薬剤担体で段階構造となす。
すなわち相互に分解吸収速度(生体吸収性)の異なる生体吸収性高分子を段階構造とし、それぞれの生理学的溶液内、或いは生体内においての分解性を制御することによって薬剤の徐放をコントロールすることができる。段階構造とは、固体を液体で積層(コーテイング)(積層)する手段、粒状等の固体(またはコロイド)を同固体(またはコロイド)で積層する手段等も含む。
前記薬剤担体の各形態を組み合わせて、錠剤、微粉末状、コロイド状、シート状、ゲル状、チューブ状、ストランド状、またはそれらの多孔体のいずれかに形成する。
(1)錠剤
前記第一の薬剤担体は、薬剤を含有した第二及び/又は第三の薬剤担体の内部に存在し内層を形成する。前記第二及び/又は第三の薬剤担体は、薬剤の含有した第一の薬剤担体の外部に存在して外層を形成する。
前記第一の薬剤担体(分解吸収性高分子)は、ゲル状または固体であり薬剤を徐放するのに好適な形態を有する。その形態は第二及び/又は第三の薬剤担体内部に存在するのであれば如何なる形状でもかまわないが薬剤を徐放するその性質より、安定した形態を維持しておいたほうがより好ましい。
【0013】
(2)コロイド状
本発明の薬剤徐放システムの好ましい形態は、第一の薬剤担体及び第二の薬剤担体、及び/又は第三の薬剤担体が水分散性の高分子である。
すなわち相互に分解吸収速度(生体吸収性)の異なる高分子コロイドを形成することによって、高分子コロイドの内部あるいは、高分子コロイド自体に含有させた薬剤を、前記高分子の分解性を制御することによって薬剤の徐放をコントロールすることができる。
【0014】
[薬剤徐放の制御方法]
本発明の分解吸収性高分子を利用した薬剤徐放の制御は、分解性高分子の分解速度差を利用したものである。詳しくは分解性高分子が分解して、薬剤を含有できなるまでの時間差を利用したものである。
また、薬剤を含有できなくなるまでの時間差は、製造者の意図する期間に設定可能である。例えば、本発明の含まれる分解吸収性高分子の中には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリε−カプロラクトン、などの脂肪族炭化水素は、その分子構造によって分解期間が異なることは周知の事実である。さらに、われわれが鋭意検討した結果、それらの共重合体などは、それらの構成される脂肪族炭化水素に依存した分解吸収性を示し、かつ、より精密な分解期間の設定が可能あることが分かっている。さらにそれらの脂肪族炭化水素は分子量、分子量分布により制御可能であることも分かっており、これらによって分解期間の設定は可能である。
[薬剤]
また、本発明は1種類以上の有効な生理学的活性を有する薬剤を、人間のような哺乳動物を含めた、全ての生理学的液体を有する生物に対応するものである。
本発明で使用される薬剤として、例えば、抗炎症剤、抗生物質、アルキル化剤、制癌剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、血圧降下剤、ホルモン、神経成長因子、成長分化因子、軟骨由来成長因子、骨盤成長因子、上皮成長因子、線維牙細胞由来成長因子、血小板由来成長因子、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、インターロイキン1,2,3,インターフェロンα,β,γ,トランスフォーミング成長因子、インシュリン、カルシトニン、プロスタグランジンの中から選ばれる少なくとも一種類以上である。
【実施例】
【0015】
本実施例と比較例で使用した薬剤担体、製剤(薬剤徐放システム)の形態、薬剤を表1に記載した。製剤(薬剤徐放システム)の形態を図1に記載した。
実施例1
重量平均分子量が40万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(1)(モル費72:5:23)をアセトン100gに5wt%となるように溶解した。その後、溶液に50mgのアセチルサリチル酸を混合した。その後、溶媒を減圧下で除去し、薬剤Aを得た。
さらに重量平均分子量が10万のグリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体(2)(モル比68:32)をアセトン100gに10wt%となるように溶解し、溶液に5gのアセチルサリチル酸を混合した。これを薬剤Bとした。
薬剤Aを直径10mmのタブレット粒子になるように200度のプレス成形機で成形した。その後、薬剤Bをディッピングにより積層した。ディッピングは計5回行い、その都度減圧下にて溶媒(アセトン)を乾燥させた。ディッピングした厚みは約5mmであった。
薬剤Aに薬剤Bがコーティングされた薬剤ABを得た。
尚、事前に薬剤ABは外層の高分子の分解が開始後10〜20日であると予測されその時期に薬剤の大量徐放が起こるものと予測された。
【0016】
実施例2
重量平均分子量が40万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体(3)(モル比75:8:17)をアセトン100gに10wt%となるように溶解し、溶液に5gのアセチルサリチル酸を混合した。これを薬剤Cとした。
さらに重量平均分子量が10万のグリコール酸/ε−カプロラクトンの二元共重合体(2)(モル比44:56)をアセトン100gに5wt%となるように溶解した。その後、溶液に50mgのアセチルサリチル酸を混合した。その後、溶媒を減圧下で除去し、薬剤Dを得た。
薬剤Dを直径10mmのタブレット粒子になるように100度のプレス成形機で成形した。その後、薬剤Cをディッピングにより積層した。ディッピングは計5回行い、その都度減圧下にて溶媒(アセトン)を乾燥させた。ディッピングした厚みは約5mmであった。
薬剤Dに薬剤Cがコーティングされた薬剤CDを得た。
尚、事前に薬剤CDは内層の高分子の分解が外層の高分子の分解に先駆けて開始後20〜30日後に行われると予測され、内層の徐放と合わせるように錠剤形状を失うものと想定した。
【0017】
実施例3
重量平均分子量が40万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(3)(モル比75:8:17)をアセトン100gに5wt%となるように溶解した。その後、溶液に50mgのアセチルサリチル酸を混合した。その後、溶媒を減圧下で除去し、薬剤Eを得た。
さらに重量平均分子量が3万のグリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体(4)(モル比68:32)をアセトン100gに10wt%となるように溶解し、溶液に5gのアセチルサリチル酸を混合した。これを薬剤Fとした。
薬剤Eを直径10mmのタブレット粒子になるように200度のプレス成形機で成形した。その後、薬剤Fをディッピングにより積層した。ディッピングは計5回行い、その都度減圧下にて溶媒(アセトン)を乾燥させた。ディッピングした厚みは約5mmであった。
薬剤Eに薬剤Fがコーティングされた薬剤EFを得た。
尚、事前に10日以内に外層の薬剤の徐放が開始されるものと想定した。
【0018】
実施例4
重量平均分子量が40万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(3)(モル比75:8:17)をアセトン100gに5wt%となるように溶解した。その後、溶液に50mgのアセチルサリチル酸を混合した。その後、溶媒を減圧下で除去し、薬剤Gを得た。
さらに重量平均分子量が20万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体(5)(モル比20:50:30)をアセトン100gに10wt%となるように溶解し、溶液に5gのアセチルサリチル酸を混合した。これを薬剤Hとした。
さらに重量平均分子量が7万のグリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体(6)(モル比68:32)をアセトン100gに10wt%となるように溶解し、溶液に5gのアセチルサリチル酸を混合した。これを薬剤Iとした。
薬剤Gを直径5mmのタブレット粒子になるように200度のプレス成形機で成形した。その後、薬剤Hをディッピングにより積層した。ディッピングは5回行い、その都度減圧下にて溶媒(アセトン)を乾燥させた。その際のディピング層の厚みは約5mmであった。また、その後にも薬剤Iをディッピングにより積層した。ディッピングは5回行い、その都度減圧下にて溶媒(アセトン)を乾燥させた。ディッピングの厚みは5mmであった。
薬剤Gに薬剤H及び薬剤Iがコーティングされた薬剤GHIを得た。
尚、事前に最外層の高分子が開始後10日以内、中間層が20日以内で薬剤の徐放を開始することを想定した。
【0019】
比較例1
重量平均分子量が40万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(1)(モル比72:5:23)をアセトン100gに5wt%となるように溶解した。その後、溶液に50mgのアセチルサリチル酸を混合した。その後、溶媒を減圧下で除去し、薬剤Jを得た。
【0020】
比較例2
重量平均分子量が10万のグリコール酸/ε−カプロラクトンの二元共重合体(2)(モル比68:32)をアセトン100gに5wt%となるように溶解した。その後、溶液に50mgのアセチルサリチル酸を混合した。その後、溶媒を減圧下で除去し、薬剤Kを得た。
<薬剤放出試験>
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた本発明の徐放性製剤をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に浸漬し、アセチルサリチル酸の経時毎の生理食塩水中への溶出量を分光光度計により測定した。
薬剤放出試験の結果を表2と図2に、試験結果のまとめを表3に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】薬剤徐放システムの概略図
【図2】薬剤徐放率を示すグラフ
【符号の説明】
【0025】
AB、CD、EF、GHI、J、K 薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二種類以上の薬剤担体を有し、当該薬剤担体を相互に分解吸収速度の異なる分解吸収性高分子より形成し、安定した薬剤の単位時間当たりの徐放速度を制御可能にしたことを特徴とする薬剤徐放システム。
【請求項2】
前記単位時間当たりの徐放速度の制御は、二種類以上の薬剤担体として構成されるそれぞれの分解吸収性高分子の分解吸収速度の差により制御していることを特徴とする請求項1に記載の薬剤徐放システム。
【請求項3】
前記それぞれの分解吸収性高分子の分解吸収速度の差は、それぞれ分解されるまでの期間が12時間以上異なることを特徴とする請求項1ないし請求項2に記載の薬剤徐放システム。
【請求項4】
前記薬剤担体が、粒状、微粉末状、シート状、層状、コロイド状、ゲル状の中から選ばれる少なくとも一種類以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の薬剤徐放システム。
【請求項5】
第一の薬剤担体を第二の薬剤担体で段階構造となし、及び/又は前記第二の薬剤担体を第三の薬剤担体で段階構造となし、錠剤、微粉末状、コロイド状、シート状、ゲル状、チューブ状、ストランド状、またはそれらの多孔体のいずれかに形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の薬剤徐放システム。
【請求項6】
前記薬剤担体としての分解吸収性高分子は、脂肪族エステル化合物及びその誘導体、共重合体であることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の薬剤徐放システム。
【請求項7】
前記薬剤担体としての分解吸収性高分子である脂肪族エステル化合物及びその誘導体、共重合体が、その共重合比で分解吸収性をコントロールしていることを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の薬剤除放システム。
【請求項8】
前記薬剤担体としての分解吸収性高分子が、その分子量で分解吸収性をコントロールしていることを特徴とする請求項1ないし請求項7に記載の薬剤徐放システム。
【請求項9】
前記薬剤担体としての脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項8に記載の薬剤徐放システム。
【請求項10】
前記薬剤担体としての脂肪族エステルがポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンのうち、2種あるいは3種を共重合させたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項9に記載の薬剤徐放システム。
【請求項11】
前記薬剤が、抗炎症剤、抗生物質、アルキル化剤、制癌剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、血圧降下剤、ホルモン、神経成長因子、成長分化因子、軟骨由来成長因子、骨盤成長因子、上皮成長因子、線維牙細胞由来成長因子、血小板由来成長因子、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、インターロイキン1,2,3,インターフェロンα,β,γ,トランスフォーミング成長因子、インシュリン、カルシトニン、プロスタグランジンの中から選ばれる少なくとも一種類以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項10に記載の薬剤徐放システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−213600(P2006−213600A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25225(P2005−25225)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【出願人】(503091895)
【出願人】(503091910)
【出願人】(503091921)
【出願人】(503091943)
【出願人】(505040833)
【Fターム(参考)】