説明

薬剤溶出型のステントコーティングで使用するための生体吸収性、生体有益性のポリエステルポリマー

本開示はポリマーに及び、その一部は、医療用具への応用に有用である。これらの医療用具の一部は、体腔のような哺乳類の体内に埋め込み可能である。コポリマーは、ジオール、トリオール又はポリオールに由来する少なくとも1つのアルコール性部分を含む。さらに、該コポリマーは、ポリカルボン酸に由来する酸性部分及び生体有益性部分を含む。これらコポリマーの一部は生分解性又は生物腐食性である。これらのポリマーを含む医療用具及びこれらのポリマーの作製方法は、本開示の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリマーに関するものであり、そのうちの一部は、医療用具への応用に有用である。
【背景技術】
【0002】
生体材料研究の現在のパラダイムは、埋め込み型医療用具の表面へのタンパク質の吸着の制御である。部分的に変性したタンパク質の混合層をもたらす、制御されないタンパク質の吸着は、埋め込んだ場合の現在の生体材料の顕著な特徴である。現在の表面は、フィブリノーゲンや免疫グロブリンGのような吸着される血漿タンパクとは異なる細胞の結合部位を提示する。血小板並びに単球/マクロファージ及び好中球のような炎症性細胞は、これらの表面に付着する。そのように活性化されると、それらは、多種多様な炎症誘発性因子及び増殖因子を分泌する。これらの不都合な事象は吸着抑制の表面の使用によって制御することができる。吸着抑制の表面はタンパク質をほとんど又は全く吸着しない表面であり、それは主としてその親水性の表面特性による。従来技術のアプローチの1つは、ヒアルロン酸及びポリエチレングリコールを使用してこの吸着抑制の表面の特徴を提供することである。生体有益性のコーティングは、薬学上の活性剤を放出することなく、生物学的な利益を提供することを意図する表面コーティングである。別の種類の生体有益性のコーティングは、遊離のラジカル捕捉剤を含有して酸化窒素を保護し、酸化の損傷を防ぐ。
【0003】
Langer et al.は、彼らが「生体ゴム」と呼んでいる一種の生体吸収性もポリエステルポリマーを公表した(Nature Biotechnology, vol. 20:602, June, 2002)。このポリマーはセバシン酸とグリセロールから構成されるポリエステルコポリマーである。それは、架橋されたエラストマーであるが、生体有益性の部分又は生物活性のある部分は持たない。吸着抑制の表面又は生体有益性の表面を持つ改善されたポリマーは、当該技術の目標となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コポリマーに関するものであり、そのうちの一部は、医療用具への応用に有用である。これら医療用具の一部は、たとえば、体腔のような哺乳類の体内に埋め込み可能である。該コポリマーは、ジオール、トリオール又はポリオールに由来する少なくとも1つのアルコール部分を含む。さらに、該コポリマーは、ポリカルボン酸に由来する酸性部分及び生体有益性の部分を含む。これらコポリマーの一部は生分解性又は生物腐食性である。これらのポリマーを含む医療用具及びそのほかのポリマーの作製方法は、本発明の範囲内である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一群の生体吸収性、吸着抑制(生体有益性)のポリエステルポリマーを開示する。一部の実施態様では、これらのポリマーは埋め込み型の医療用具の基材を構成する。一部の実施態様では、埋め込み型の医療用具はこれらのポリマーを含む。そして一部の実施態様では、これらのポリマーは埋め込み型の医療用具のコーティングを構成する。この群のポリマーは以下の基礎成分を含む
(1)脂肪族ジオール類、トリオール類又はポリオール類に由来する部分;
(2)ポリカルボン酸(1より多くの酸官能性を含有するカルボン酸)に由来する部分;及び
(3)生体有益性、吸着抑制又は生物活性の部分。
【0006】
一部の発明の実施態様は、1以上のジオール類、トリオール類又はポリオール類と、毒性学上許容可能な酸モノマー(ポリカルボン酸)、たとえば、以下のC〜C12の直鎖、脂肪族の二酸、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザレイン酸、及びセバシン酸とのブロックコポリマーである。ドデカン二酸、テトラデカン二酸及びヘキサデカン二酸で見い出されるようなさらに長い鎖も可能である。ポリカルボン酸にはクエン酸及び酒石酸も含まれる。不飽和ポリカルボン酸には、フマル酸及びムコン酸が挙げられる。最後に、有用な芳香族ポリカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、1,3−ビス(p−フェノキシカルボキシ)プロパン及び1,4−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ブタンが挙げられる。一部の発明の実施態様では、毒性学上許容可能なポリカルボン酸モノマーは具体的にセバシン酸を排除する。
【0007】
一部の発明のブロックコポリマーは、以下の式[AB][A’B’]によって表すことができる。この式では、Aは脂肪族ジオール、トリオール又はポリオールに由来する部分を表す。Bは、ポリカルボン酸に由来する部分を表す。一部の実施態様では、これらは、毒性学上許容可能なポリカルボン酸モノマーに限定され、これらの、又はそのほかの実施態様では、ポリカルボン酸モノマーは上で具体的に開示されたものから選択される。A’は、Aと同一又は異なった脂肪族ジオール、トリオール又はポリオールに由来する部分を表す。そして、B’はBと同一又は異なったポリカルボン酸に由来する部分を表す。n及びmは、このブロックコポリマーにおける各ブロックの相対的な長さを表す。
【0008】
本開示の目的のために、我々は、さらに低いTを有する又は水で非常に膨潤しやすい軟質ブロックを定義する。一部の実施態様では、ほとんどの生体有益性の部分は親水性又は水を吸収するので、「n」を標識されるブロックはBB部分を含有し、従って軟質断片又は軟質ブロックである。「m」で標識されるそのほかのブロックは、硬質断片という。本開示の目的のために、我々は、低い水吸収性又はさらに高いTを持つブロックとして硬質ブロックを定義する。
【0009】
発明のコポリマーは直鎖又は分枝鎖であることができ、且つ、所望であれば架橋することができる。一部の例では、ポリマー主鎖からの官能基、ペンダントを介して架橋が生じる。たとえば、一部の実施態様では、主鎖における酸からの官能基が架橋部位として作用することができる。他の実施態様では、不飽和二酸における不飽和が架橋部位として作用する。さらに他の実施態様では、ヒドロキシル基がポリマー主鎖からのペンダントになっており、架橋部位として作用する。当業者は、ポリマー鎖の間での架橋を達成する他の方法が発明のコポリマーに適用されうることを認識するであろう。たとえば、ポリマーをUVで架橋するには、一部の実施態様はモノマーにUV重合可能な基を有する。そのような基は通常、アクリレート類又はメタクリレート類である。一般的なスキームは、ヒドロキシル基及びカルボキシル基をアクリレート又はメタクリレートで置換することを含む。これによって別の部類のポリマーを生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のブロックコポリマーのいくつかは、以下の式によって表すことができる。
【化1】

【0011】
これらの式において、Qは1〜18の炭素原子の炭化水素鎖を表し;Wは1〜8の炭素原子の炭化水素鎖を表し;Tは、1〜16の炭素原子の炭化水素鎖を表し;及びBBは生体有益性の部分を表す。本開示の目的のために、炭化水素鎖は、1〜50の炭素原子を含有する鎖として定義され、直鎖及び分枝鎖のアルキル鎖、ペンダント又は鎖中環を含有する鎖、ペンダント又は鎖中環及びアルキル置換基を含有する鎖、並びに芳香族基及びアルキル置換基を含有する鎖が挙げられる。好適な置換されたヒドロカルビル鎖は、1以上のハロゲン、アミド、ホスフィド、アルコキシ、エーテル、スルフィド、ホスフェートエステル、又はそのほかのルイス酸又は塩基の官能性で独立して置換される、上で定義したようなヒドロカルビル鎖である。n及びmはブロックの長さを表す。一部の実施態様では、nは2〜1250のいずれの値も取る。一部の実施態様では、mは10〜4500のいずれの値も取る。n:mは普通1:2250〜125:1の範囲内である。このことは、一部の実施態様では、m−ブロックが2250反復単位の長さであるのに対してn−ブロックが1反復単位の長さであることを意味する。最終的に、Lは架橋を含有するそれらブロックについては架橋基を表し、また、Lは架橋を含有しないそれらブロックについては水素を表す。
【0012】
上記式では、Rがアルキル、フェニル又は1〜6の炭素原子を含有するハロゲン化アルキルである−Si(OR)−によって−CH−基を置換することができる。ケト基C=Oによって−CH−基を置換することができる。そして、酸素についてイオウを置換することができ、それによってエーテル結合をスルフィド結合に変換する。
【0013】
一部の実施態様では、ブロックコポリマーは吸着抑制部分又は生体有益性部分を含んでもよい。以下に示す式は、発明のポリマーの2つの具体的な部類を表す。
【化2】

【0014】
本ポリマーは、グリコール、アジピン酸及びmPEGに由来する部分から構成される。ジブロック構造は、すべてのグリセロールがmPEGで誘導体化されるわけではないことを示す。グリセロールに由来する部分の一部は、(R)で示されるようなエステル架橋に関与するか、又は(H)で示されるような遊離のヒドロキシルを有する。この構造では、PEGはペンダントであるが、ポリマー主鎖にも存在しうる。
【0015】
〈ジオール、トリオール又はポリオール〉
ジオール、トリオール又はポリオールの成分は、1以上のアルコール官能性を持つ鎖である。一部の実施態様では、この成分は、たとえば、PEGジオール、グリセロール、そのほかのトリオールなどとの混合物のような、ジアルコール分子又は多重アルコール分子の混合物である。一部の実施態様では、この成分は、PEGジオール、プルロニック(TM)ジオール、又はグリセロール又はそのほかのトリオールを含む混合物である。
【0016】
ジオール、トリオール又はポリオールでは、加水分解可能なエステル結合を形成するために、少なくとも1つのヒドロキシ基が存在すべきである。ヒドロカルビル基T及びWは不飽和を有してもよい。T基及びW基を含有するポリマー前駆体では、少なくとも1つのヒドロキシル基がエステル結合を形成したままである限り、ヒドロキシル基についてスルフヒドリル基及びアミノ基が置換しうる。
【0017】
スルフヒドリル基置換を持つポリマー:メルカプトエタノール、セバシン酸及びPEG300を用いたものがある。
【化3】

【0018】
ポリオール成分を選択する基準は、その成分がヒドロカルビル基T又はW基のためであるかどうかに依存する。2つのヒドロキシル基に加えて、ポリマー主鎖の一部であるために、W基は生体有益性部分に結合する第3のペンダント官能性を必要とする。T基がペンダントのヒドロキシル基又はアルコキシ基を有するべきであれば、それもこの第3の官能性を有さなければならない。しかしながら、T基がペンダント官能基を有さない又は有することを所望されない場合、それは二官能性でありうる。優れた生体適合性を有する一部の実施態様では、ポリオール(単数)又はポリオール(複数)は、内因性であるか又は確立された生体適合性を有する。
【0019】
好適なポリオールは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、C16までのさらなる高級ジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、セリノール、ジエタノールアミン、並びにたとえば、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、ジヒドロキシアセトン、エリスルロース、キシルロース、アルドース及びケトースのような糖類である。一部の実施態様では、ポリオールは、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセロール、セリノール、ジエタノールアミン、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールである。
【0020】
実施態様の1つは、ホスホリルコリン−co−HEMA生体有益性メタクリレートコポリマーを使用する。本ポリマーでは、ホスホリルコリン基がメタクリレートに結合する。これらのポリマーは普通、ヒドロキシ末端ではないが、特定のリビング重合のスキームは、これらのヒドロキシ末端のポリマーと共に機能する。
【0021】
三官能性又は多官能性の−OHは、2つのヒドロキシル基が作用してポリオール鎖をポリマーに組み入れるように主鎖中で共重合することができる。これは、1以上の残りのヒドロキシル基を脱離して生体活性のある部分を抱合する。或いは、1以上の残りのヒドロキシル基は架橋部位として作用することができる。
【0022】
〈ポリカルボン酸〉
ポリカルボン酸は、少なくとも2つのカルボン酸基を持つ化合物である。埋め込み用途については、本発明で使用されるポリカルボン酸は毒性学上許容可能とすべきである。このことは、それがポリマーに付与する毒性及び放出された際のモノマー自体の毒性が哺乳類体内でポリマーを使用することができるのに十分なくらい低くすべきであることを意味する。これらの具体例には、C〜C12の直鎖脂肪族二酸、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザレイン酸、セバシン酸及びシトラマル酸が挙げられる。ドデカン二酸、テトラデカン二酸及びヘキサデカン二酸に見い出されるようなさらに長い鎖長は本発明の実践に有用である。ポリカルボン酸にはクエン酸、トリカルバリル酸及び酒石酸が含まれる。不飽和ポリカルボン酸には、フマル酸及びムコン酸が挙げられる。最後に、有用な芳香族ポリカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、1,3−ビス(p−フェノキシカルボキシ)プロパン及び1,4−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ブタンが挙げられる。
【0023】
ポリカルボン酸の具体例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザレイン酸、セバシン酸、テレフタル酸、及びクエン酸が挙げられる。特に好適な例には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、トリカルバリル酸、クエン酸、フマル酸、テレフタル酸及び1,3−ビス(p−フェノキシカルボキシ)プロパンが挙げられる。
【0024】
〈生体有益性部分〉
本開示の目的で、用語「生体有益性の」は、薬学上の活性剤を放出することなく、埋め込み型医療用具に生物学的な利益を提供する任意の表面に対する包括的な記載である。「生体有益性の」のこの定義に続いて、用語「生体有益性部分」は、それ自体によって又は他の部分と共にポリマー又は表面に「生体有益性」である特徴を付与する部分である。この包括的な定義の範囲内で、一部の表面は吸着抑制とみなされ、一部は生物活性があるとみなされてもよく、他が血液適合性又は非発熱性であるとみなされてもよい。また、生体有益性部分は、生物活性、吸着抑制又は血液適合性の特徴の任意の組み合わせを有する部分も含む。
【0025】
主として吸着抑制である生体有益性部分は、ポリ(エチレングリコール)、ポリプロピレングリコール、プルロニック(TM)表面−ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、エラスチン、キトサン、水溶性キトサン、水溶性ヘパリン、水溶性エラスチン、トロポエラスチン、アルブミン、及びポリ(2−ヒドロキシエチルメチルメタクリレート)である。主として血液適合性である生体有益性部分は、ヘパリン、ヒルジン及びスルホン化ポリスチレンである。特定の生物活性剤には、スーパーオキシドジスムターゼ模倣剤、抗酸化剤及び遊離ラジカル捕捉剤が挙げられる。生体有益性部分は、これらの又はそのほかの特性の組み合わせを持つことができる。
【0026】
注意書きは、この成分の最大分子量は、放出された分子が腎臓を通過することができるように十分小さくすべきであり、たとえば、一部の実施態様では、ポリマーが加水分解又は酵素分解によって吸収可能でなければ、この成分の最大分子量は40,000ダルトン以下であるということである。この点で、20,000ダルトンの最大分子量はさらに好ましい。生体有益性部分自体が、ヘパリンの場合と同様に、生体によって加水分解される又は代謝されるならば、そのときは、最大分子量は、およそ40,000ダルトンの腎臓通過のカットオフよりも大きくてもよい。
【0027】
発明のポリマーは直鎖であることができ、又は架橋されることができる。生体有益性成分はペンダントであることができ、又はポリマー主鎖にあることができる。本発明のポリマーは、1より多くの種類の生体有益性部分を含有することができる。たとえば、吸着抑制部分は、「n」によって指定される精選反復単位上のペンダントであることができ、一方、生物活性部分は「m」によって指定されるほかの反復単位上に存在すればよい。生物活性部分は、300〜30,000の分子量を持つPEGジオールから選択することができる。
【0028】
「n」及び「m」の選択は、最終ポリマーにおける各ブロックの合計重量分画を決定する。直鎖のポリマーについては、許容可能な機械的特性を保持する一方で組み込むことができる生体有益性部分の量への限定がある。たとえば、吸着抑制の生体有益性部分は大部分が親水性が高く、多数が水溶性である。吸着抑制成分部分の重量分画がおよそ80重量%を超えると、直鎖ポリマーは過剰に膨潤し、又は水に溶解さえする。従って、一部の実施態様では、吸着抑制成分部分の重量分画はおよそ80重量%未満であるように選択される。しかし、吸着抑制部分の重量分画が小さすぎると、ポリマーの表面特性を改変するのに不十分さが存在する。この程度は特定のポリマーに依存するが、1〜10重量パーセントの範囲であり、それより少ないと生体有益性、吸着抑制の特性は微妙である。従って、吸着抑制成分の重量分画は、一部の実施態様では1〜10重量%よりも多いように選択される。架橋系の場合、ポリマーの溶解の問題は除かれる。過剰な膨潤は依然として生じうるが、それは、一部の実施態様ではポリマーのコーティングを弱める。血液適合性、生体有益性部分の場合では、過剰な水膨潤のために、さらに大量のこれらの部分が機械的特性を犠牲にしてさらに高い表面濃度を生じるので、同様の懸念が適用される。生物活性、生体有益性部分は必ずしも親水性ではない。一部の実施態様では、ポリマーに組み入れることができるのと同じ量の血液適合性の生体有益性部分がポリマーに組み入れられ、ポリマーに医療用具での用途のための許容可能な機械的特性を依然として保持させる。一部の実施態様については、nの適当な値は2〜1250の間である。一部の実施態様については、mの適当な値は10〜4500の間である。
【0029】
発明のコポリマーの特定の実施態様の1つは、グリセロール、セバシン酸及びポリエチレングリコール(PEG300)の架橋されたターポリマーである。本ポリマーは以下に示す構造を有する。
【化4】

【0030】
PEG300とグリセロールの反応性は全く異なるので、2段階工程で本ポリマーを製造することが有利である。一般に、1当量のPEG300を2当量のセバシン酸と化合させる。これを減圧下で加熱してセバシン酸末端のPEG300を製造する。有用な反応温度は、10ミリトール〜760トールの減圧下で80〜140℃の範囲である。次いで、n:mの標的比及びコポリマーで所望される最終的な分子量によって、追加量のセバシン酸及びグリセロールを1:1のモル比で加え、反応を継続する。この工程における有用な反応パラメータには、10ミリトール〜760トールの減圧下、2〜48時間の反応時間での80〜140℃の反応温度が挙げられる。
【0031】
発明のコポリマーの別の特定の実施態様は、クエン酸、コハク酸、ブタンジオール及びmPEGのグラフトターポリマーである。このポリマーは以下の構造を有する。
【化5】

【0032】
発明のコポリマーの別の特定の実施態様は、トリカルバリル酸、クエン酸、1,4−ブタンジオール及びポリエチレングリコールMW=600(mPEG600)のモノメチルエーテルのグラフトターポリマーである。再び、本ポリマーを作製する方法の1つは、その低い反応性のためにmPEGを先ず反応させる2段階工程である。一般に、カルボジイミド化学薬品を介してアミン末端のmPEG(たとえば、Nektar、以前のShearwater Polymersから入手可能)をトリカルバリル酸にカップリングさせることによってmPEGをトリカルバリル酸にカップリングさせる。次いで、このmPEGで誘導体化された二酸を、1:1モル比での所望の量の1,4−ブタンジオール及びコハク酸と化合させる。熱及び減圧を用いた脱水を介したエステル形成の代わりに、たとえば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)又は1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような適当なカルボジイミドの添加によって、カルボン酸とヒドロキシル基をカップリングさせてポリエステルを形成する。一部の実施態様では、これによって溶媒に可溶性であり、現在のステントコーティング工程に敏感に反応する直鎖ポリマーが得られる。
【0033】
発明のコポリマーの別の特定の実施態様は、1,3−プロパンジオール、アジピン酸及びPEG600のターポリマーである。このポリマーは以下の構造を有する。
【化6】

【0034】
一般に、この種のコポリマーも2段階工程で合成することができる。先ず、無水条件下で放出されるHClを吸収するための適当量のピリジンを入れた反応容器に塩化アジポイルの全量を加える。溶媒はトルエンである。次に、無水PEG600を加える。PEG600が反応した後(塩化アジポイル末端のPEG600を生じる)、1,3−プロパンジオールを加える。1,3−プロパンジオールは、モノマーの炭酸トリメチレンを含有する生分解性ポリマーすべての分解産物である。1,3−プロパンジオールは生体適合性である。種々の実施態様では、PEGの分子量を変化させることができ、ジオールを変えることができ、二酸を変えることができる。一部の実施態様では、二酸は、1以上のコハク酸、アジピン酸又はセバシン酸である。一部の実施態様では、この種のポリマーは直鎖であり、溶媒に可溶性である。ペンダント及び鎖内の生体有益性部分の双方を持つコポリマーを作製することも可能である。異なった2種の酸が末端にある、生体有益性で誘導体化されたブロックを別々に合成し、次いで化合させ、さらに追加の二酸及びジオールと反応させることができる2段階反応スキームにおいて、このことは特に真実である。
【0035】
種々の実施態様において、PEGの分子量を変化させることができ、ジオールを変えることができ、二酸を変えることができる。一部の実施態様では、二酸は1以上のアジピン酸、コハク酸及びセバシン酸である。一部の実施態様では、この種のコポリマーは直鎖であり、溶媒に可溶性である。
【0036】
一部の実施態様では、生物活性部分は、遊離のラジカル捕捉特性を有するように又はそれも有するように選択される。遊離のラジカル捕捉特性を有する有用な生物活性部分の具体例には、スーパーオキシドジスムターゼ又は酸化窒素供与体が挙げられる。
【0037】
吸着抑制のコーティングとして使用されることに加えて、発明のコポリマーをポリマーステント、金属ステント、又はむき出しの金属ステントの上に被覆してもよく、ステント上にすでに存在する薬剤溶出用のコーティングの上に被覆してもよい。或いは、発明のコポリマーをステントと薬剤溶出用のコーティングの間に配置してもよい。また、発明のコポリマーを用いてポリマーに基づいた医療用具を構築することができ、又は医療用具(埋め込み型又はそうでない)を構築する基材として作用させることができる。
【0038】
他のポリマーとの混合物としても、発明のコポリマーを使用することができる。たとえば、発明のポリマーを、PEG、ポリアクティブ(商標)又はそのほかの生体有益性ポリマーと物理的に混合することができる。これらの混合物を製剤化して生物学的な結果を調節すればよい。
【0039】
本開示の目的で、「生物学的な結果を調節する」とは、フィブリノーゲンの吸着、血小板の結合、付着するマクロファージ及び炎症性細胞の数、及び炎症性細胞が活性化される程度をできるだけ抑えるためにポリマーの生体有益性成分の含量を調節することを意味する。
【0040】
これらの混合物を製剤化して、これらの混合物と薬剤又は治療剤とによって構成されるコーティング、容器又は粒子からの薬剤の放出速度を調節する又は整調すればよい。他のポリマーとの混合物を製剤化して発明のポリマーの機械的特性を調節することができる。たとえば、他のポリマーを発明のポリマーに混合して機械的特性を改変すればよいし、逆もまた同様である。そのような混合物を調製するのに有用なポリマーには、ポリカプロラクトン、ポリ(D,Lラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−L−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−ヒドロキシバレレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリ(チロシンアリーレート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(オルソエステル)及びポリ(エステルアミド)が挙げられる。
【0041】
一部の実施態様では、発明のコポリマーをコーティングの材料基剤として用いてコーティングを医療用具上に形成してもよい。一部の実施態様では、コポリマーが実質的に架橋される前に、薬剤、ポリオール及び二酸のコポリマーを医療用具の表面に塗布することによってこれが達成される。次いで、コーティングを加熱することによってコーティングをゆっくりと架橋することができる。2級(又は3級)ヒドロキシルである「第3の」ヒドロキシル基の存在によって、緩慢な架橋が促進される。或いは、たとえば熱又は電子線による滅菌のような滅菌の間に架橋工程を同時に行うことができる。
【0042】
架橋(バルクの発明のポリマーにおける又は発明のポリマーを含むコーティングにおける)は、架橋が主として発明のコポリマー鎖間で形成するように行うことができる。或いは、架橋は、混合物における発明のコポリマー鎖の間、又は一層における発明のコポリマーの間及び下塗り層又はそのほかのポリマー層における分子又はポリマー鎖の間で形成することができる。
【0043】
小型の疎水性薬剤のような従来の治療剤を発明のコポリマーに加えて、それらを生体吸収性の薬剤溶出系にしてもよい。従来の治療剤を発明のコポリマーにグラフトすることができ、又は発明のコポリマーに混合することができる。種々のそのほかの生体有益性ポリマーとの混合物として発明のコポリマーを被覆することができる。さらに、他の生体有益性のポリマー層に対する基剤又は上塗り層としてそれらを役立てることができる。
【0044】
治療剤は、血管平滑筋細胞の活性を阻害するためでありうる。さらに具体的には、治療剤は、平滑筋細胞の異常な又は不適当な移動又は増殖を抑制して再狭窄を防ぐ、抑制する、軽減する又は治療することを目的とすることができる。治療剤はまた、本発明の実践において治療効果又は予防効果を発揮することが可能であるいかなる物質であってもよい活性剤を含むこともできる。そのような活性剤の例には、増殖抑制物質、抗腫瘍物質、抗炎症物質、抗血小板物質、抗凝固物質、抗フィブリン物質、抗血栓物質、有糸分裂抑制物質、抗生物質、及び抗酸化物質並びにこれらの組み合わせが挙げられる。増殖抑制物質の例は、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類縁体(ウィスコンシン州53233、ミルウォーキー、ウエストセントポール通り1001のシグマ−アルドリッチにより製造される、又はメルクから入手可能なコスメゲン)である。アクチノマイシンDの同義語には、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCが挙げられる。抗腫瘍剤の例にはパクリタキセル及びドセタキセルが挙げられる。抗血小板剤、抗凝固性剤、抗フィブリン剤、及び抗血栓性剤の例には、アスピリン、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類縁体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗血栓剤)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗剤、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤(バイオゲンから入手可能)及び7E−3B(登録商標)(セントコールの抗血小板剤)が挙げられる。有糸分裂抑制剤の例には、メソトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン及びムタマイシンが挙げられる。細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例には、アンギオペプチン(イブセンのソマトスタチン類縁体)、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、たとえば、カプトプリル(スクイブから入手可能)、シラザプリル(ホフマン・ラ・ロシュから入手可能)又はリシノプリル(たとえば、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社から入手可能);カルシウムチャンネル遮断剤(たとえば、ニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗剤、ヒスタミン拮抗剤、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、メルク社のコレステロール低下剤)、モノクローナル抗体(たとえば、PDGF受容体)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤(グラゾから入手可能)、セラミン(PDGF拮抗剤)、セロトニン遮断剤、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗剤)及び酸化窒素が挙げられる。適当であってもよいそのほかの治療物質又は治療作用剤には、α−インターフェロン、遺伝子操作を施した上皮細胞、デキサメタゾン、エストラジオール、プロピオン酸クロベタゾール、シスプラチン、インスリン増感剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤及びカルボプラチンが挙げられる。組成物の活性剤への暴露が活性剤の組成又は特徴を有害に変えるべきではない。従って、混合された組成物との相溶性について特定の活性剤を選択する。ラパマイシンは好適な活性剤である。さらに、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン又はその機能的類縁体又はその構造的誘導体も好適である。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの類縁体又は誘導体の例には、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン及び40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンのような活性剤の放出速度は、当該技術で既知のように、種々の方法及びコーティングによって有利に制御することができる。
【0045】
上述のように、発明のブロックコポリマーは、そのほかのポリマー及び生体ポリマーと共に使用することができる。発明のブロックコポリマーと共に有用なポリマーの代表例には、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリ(ヒドロキシバレレート);ポリ(L−乳酸);ポリカプロラクトン;ポリ(ラクチド−co−グリコリド);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート);ポリジオキサノン;ポリオルソエステル;ポリ無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D,L−乳酸);ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート);ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン;ポリ(アミノ酸);シアノアクリレート;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(イミノカーボネート);コポリ(エーテル−エステル)(たとえば、PEO/PLA);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;たとえば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸のような生体分子;ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレンとエチレンαオレフィンのコポリマー;アクリル系ポリマー及びコポリマー;たとえば、ポリ塩化ビニルのようなビニルハロゲン化ポリマー及びコポリマー;たとえば、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル;たとえば、ポリフッ化ビニリデンポリ塩化ビニリデンのような及びポリビニリデンハロゲン化物;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;たとえば、ポリスチレンのようなポリビニル芳香族系;ポリビニルアセテートのようなポリビニルエステル;ビニルモノマー同士及びオレフィンとのコポリマー、たとえば、エチレン−メチレンメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポリマー、ABS樹脂、及びエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ナイロン66及びポリカプロラクタムのようなポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;セルロース;セルロースアセテート;セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロファン;セルロースニトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル;及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0046】
本発明のための医療用具の例には、自己拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント、ステント移植片、移植片(たとえば、大動脈移植片)、血管移植片、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカーの電極、ガイドワイヤー、補助人工心臓、人工心臓、心肺バイパス経路、血液酸素付加装置、及び心内膜のリード(たとえば、カリフォルニア州、サンタクララのガイダント社より入手可能なフィネリン及びエンドタック)が挙げられる。用具の下に置く構造は、事実上、いかなる設計のものでもよい。用具は、たとえば、コバルトクロム合金(エルギロイ)、ステンレス鋼(326L)、高窒素ステンレス鋼、たとえば、バイオドゥール108、コバルトクロム合金、L−605、「MP35N」、「MP20N」、エラスチナイト(ニチノール)、タンタル、ニッケルチタン合金、白金イリジウム合金、金、マグネシウム又はそれらの組み合わせのような、しかし、これらに限定されない金属物質又は合金から作製することができる。「MP35N」及び「MP20N」は、ペンシルベニア州、ジェンキンタウンのスタンダードプレススチール社から入手可能なコバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンの合金の商標名であり、「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成り、「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成る。生体吸収性又は生体安定性のポリマーから作製される用具も本発明の実施態様と共に使用すればよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を持つポリマーであって、
【化1】

式中、
a)nは2〜250であり;
b)mは10〜4500であり;
c)Lは、架橋基又は水素を表し、
d)Q及びQ’は、同一又は異なった1〜18の炭素原子の炭化水素鎖を表し;
e)Wは、1〜8の炭素原子の炭化水素鎖を表し;
f)Tは、1〜16の炭素原子の炭化水素鎖を表し;且つ
g)BBは生体有益性の部分を表す、ポリマー。
【請求項2】
ポリマーであって
a)脂肪族のジオール、トリオール又はポリオールに由来するアルコール性部分;
b)ポリカルボン酸に由来する酸性部分;及び
c)生体有益性の特徴を有する生体有益性部分、吸着抑制の特徴を有する吸着抑制部分、生体活性の特徴を有する生体活性部分、又は生体有益性、吸着抑制又は生体活性の部分の組み合わせを有する部分
を含むポリマー。
【請求項3】
前記アルコール性部分が1〜25の炭素原子を有するジオール又は糖に由来する請求項2のポリマー。
【請求項4】
前記アルコール性部分が1〜16の炭素原子を有するジオールに由来する請求項3のポリマー。
【請求項5】
前記アルコール性部分が、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、C16までのジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、セリノール、ジエタノールアミン、又は糖類の少なくとも1つに由来する請求項2のポリマー。
【請求項6】
前記糖類が、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、ジヒドロキシアセトン、エリスルロース、キシルロース、アルドース又はケトースから選択される請求項5のポリマー。
【請求項7】
脂肪族のジオール、トリオール又はポリオールに由来する少なくとも3つのアルコール性部分を含む請求項6のポリマー。
【請求項8】
前記酸性部分が、2〜20の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族二酸に由来する請求項2のポリマー。
【請求項9】
前記酸性部分が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザレイン酸、セバシン酸、テレフタル酸、リンゴ酸、フマル酸、クエン酸、シトラマル酸、トリカルバリル酸、酒石酸、イソフタル酸、フタル酸、1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、1,3−ビス(p−フェノキシカルボキシ)プロパン、1,4−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ブタン、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、又は主鎖に無水結合を持つオリゴマー二酸の少なくとも1つに由来する請求項2のポリマー。
【請求項10】
主鎖に無水結合を持つ前記オリゴマー二酸が、ポリ(無水セバシン酸)、ポリ(無水スベリン酸)、ポリ(無水アジピン酸)、ポリ(無水コハク酸)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(1,6−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ヘキサン)、ポリ(1,4−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ブタン)、ポリ(1,3−ビス(p−フェノキシカルボキシ)プロパン)及びポリ(1,4−ジカルボキシベンゼン)から選択される請求項9のポリマー。
【請求項11】
互いに異なるポリカルボン酸に由来する少なくとも2つの酸性部分を含む請求項9のポリマー。
【請求項12】
前記生体有益性部分、前記吸着抑制部分又は前記生体活性部分は、それらが、哺乳類の腎臓を通過することができる放出分子を生じるように選択される請求項2のポリマー。
【請求項13】
前記生体有益性部分、前記吸着抑制部分又は前記生体活性部分は、前記放出分子が40,000ダルトン以下の分子量であるように選択される請求項12のポリマー。
【請求項14】
前記生体有益性部分が、ポリ(エチレングリコール)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー表面、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン、エラスチン、キトサン、ヘパリンの水溶性誘導体、エラスチンの水溶性誘導体、キトサンの水溶性誘導体、トロポエラスチン、アルブミン、ポリ(2−ヒドロキシエチルメチルメタクリレート)、ヘパリン、ヒルジン又はスルホン化ポリスチレンの少なくとも1つである請求項2のポリマー。
【請求項15】
式が下記であり、
【化2】

式中、Lが架橋基又は水素を表す、請求項1のポリマー。
【請求項16】
式が下記である請求項1のポリマー。
【化3】

【請求項17】
式が下記である請求項1のポリマー。
【化4】

【請求項18】
少なくとも2つのブロックを含むブロックコポリマーであって、
a)第1のブロックが
i)ジオール、トリオール又はポリオールに由来する第1のブロックのアルコール性部分及び
ii)ジ−、トリ−、又はポリ酸性のカルボン酸に由来する第1のブロックの酸性部分を含むブロックコポリマーを含み、且つ
b)第2のブロックが
i)ジオール、トリオール又はポリオールに由来する第2のブロックのアルコール性部分及び
ii)ジ−、トリ−、又はポリ酸性のカルボン酸に由来する第2のブロックの酸性部分を含むブロックコポリマーを含み、
その際、第1又は第2のブロックのアルコール性部分或いは第1又は第2のブロックの酸性部分が生体有益性部分である、又は生体有益性部分に結合しているブロックコポリマー。
【請求項19】
請求項18のコポリマーであって
(a)ジオール、トリオール又はポリオールに由来する第3のブロックのアルコール性部分及び
(b)ジ−、トリ−、又はポリ酸性のカルボン酸に由来する第3のブロックの酸性部分
を含む第3のブロックをさらに含むコポリマー。
【請求項20】
前記第1及び前記第2のブロックのアルコール性成分が、それぞれ1〜50の炭素原子の分子に由来する請求項18のコポリマー。
【請求項21】
前記第1及び前記第2のブロックのアルコール性部分が、それぞれ1〜10の炭素原子の分子に由来する請求項20のコポリマー。
【請求項22】
請求項18のコポリマーであって、前記第1及び前記第2のブロックのアルコール性部分が、それぞれエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、C16までのジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、セリノール、ジエタノールアミン、又は糖類の少なくとも1つに由来するコポリマー。
【請求項23】
前記糖類が、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、ジヒドロキシアセトン、エリスルロース、キシルロース、アルドース又はケトースから選択される請求項22のコポリマー。
【請求項24】
前記第1及び第2のブロックの酸性部分が、それぞれ1〜50の炭素原子の分子に由来する請求項18のコポリマー。
【請求項25】
前記第1及び第2のブロックの酸性部分が、それぞれ1〜10の炭素原子の分子に由来する請求項24のコポリマー。
【請求項26】
請求項18のコポリマーであって、前記第1及び前記第2のブロックの酸性部分が、それぞれシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザレイン酸、セバシン酸、テレフタル酸、リンゴ酸、フマル酸、クエン酸、シトラマル酸、トリカルバリル酸、酒石酸、イソフタル酸、フタル酸、1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、1,3−ビス(p−フェノキシカルボキシ)プロパン、1,4−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ブタン、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、又は主鎖に無水結合を持つオリゴマー二酸の少なくとも1つに由来するコポリマー。
【請求項27】
請求項26のコポリマーであって、主鎖に無水結合を持つオリゴマー二酸が、ポリ(無水セバシン酸)、ポリ(無水スベリン酸)、ポリ(無水アジピン酸)、ポリ(無水コハク酸)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(1,6−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ヘキサン)、ポリ(1,4−ビス(p−フェノキシカルボキシ)ブタン)、ポリ(1,3−ビス(p−フェノキシカルボキシ)プロパン)及びポリ(1,4−ジカルボキシベンゼン)から選択されるコポリマー。
【請求項28】
前記生体有益性分子が、生体有益性である特徴を付与する分子から選択される請求項18のコポリマー。
【請求項29】
前記生体有益性分子が、ポリ(エチレングリコール)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー表面、ヒドロキシ官能ポリ(ビニルピロリドン)、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヘパリン、エラスチン、キトサン、水溶性ヘパリン誘導体、水溶性エラスチン誘導体、水溶性キトサン誘導体、トロポエラスチン、アルブミン、ポリ(2−ヒドロキシエチルメチルメタクリレート)、ヘパリン、ヒルジン又はスルホン化ポリスチレンの少なくとも1つである請求項28のコポリマー。
【請求項30】
請求項1のポリマーの調製方法であって、
a)BBに基づいて重合可能な生体有益性部分を調製すること;
b)前記重合可能な生体有益性部分と共に、Qに基づいたポリカルボン酸を重合させること;
c)次いで、Q’に基づいたポリカルボン酸、Tに基づいたジオール、トリオール又はポリオール及び(b)の生成物の混合物を重合させること
を含む方法。
【請求項31】
BBに基づいた重合可能な生体有益性部分の調製が、生体有益性部分、BBをWに基づたジオール、トリオール又はポリオールに結合させることを含む請求項30の方法。
【請求項32】
請求項1のポリマーの調製方法であって、
a)重合可能な生体有益性部分、BBと共に、Qに基づいたポリカルボン酸を重合させること;並びに
b)Q’に基づいたカルボン酸、Wに基づいたジオール、トリオール又はポリオール及び(a)の生成物を共重合させること
を含む方法。
【請求項33】
請求項2のポリマーを含む医療用具。
【請求項34】
請求項3のポリマーを含む医療用具。
【請求項35】
請求項12のポリマーを含む医療用具。
【請求項36】
請求項18のポリマーを含む医療用具。
【請求項37】
請求項2のポリマーと混合した第1のポリマーを含む組成物。
【請求項38】
前記第1のポリマーが生物学的結果を調節する請求項38の組成物。
【請求項39】
前記第1のポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリ(D,Lラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−L−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−ヒドロキシバレレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリ(チロシンアリーレート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(オルソエステル)またはポリ(エステルアミド)を含む請求項37の組成物。
【請求項40】
前記第1のポリマーが、ポリカプロラクトン、ポリ(D,Lラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−L−ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−ヒドロキシバレレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリ(チロシンアリーレート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(オルソエステル)またはポリ(エステルアミド)を含む請求項38の組成物。
【請求項41】
以下の式を持つポリマーであって、式中Sがイオウを表すポリマー。
【化5】


【公表番号】特表2007−501893(P2007−501893A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533151(P2006−533151)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015446
【国際公開番号】WO2005/000939
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】