説明

薬剤複合体組成物

本発明は、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体を含んでなる、液体組成物および凍結乾燥した組成物を提供する。本発明はさらに、ヒトにおいて細胞を死滅させる方法であって、上記の何れかの組成物をヒトに投与する工程を含み、その結果抗体が細胞の表面に結合し、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化され、これによって細胞を死滅させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイタンシノイド(maytansinoid)と化学的に結合した抗体を含有する複合体、およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療は、より効果的に癌細胞を標的としてそれを殺す薬剤の開発によって飛躍的に進歩してきた。この目的を達成するために、研究者は、腫瘍特異的な抗原あるいは腫瘍関連抗原に結合する抗体をベースとする薬剤を開発すべく、癌細胞によって選択的に発現される細胞表面レセプターおよび抗原を利用してきた。これに関連して、細菌および植物の毒素、放射性核種、ならびにある種の化学療法薬などの細胞毒性分子が、腫瘍特異的あるいは腫瘍関連の細胞表面抗原に結合するモノクローナル抗体に化学的に結合されてきた(例えば、国際(PCT)特許出願公報第00/02587号、同第02/060955号、および同第02/092127号、米国特許公報第5,475,092号、同第6,340,701号、同第6,171,586号、米国特許出願公開公報No.2003/004210A1、および、Ghetie et al.,J.Immunol.Methods,112,267−277(1988)参照)。このような化合物は、一般に毒素(toxin)、放射性核種(radionuclide)、および薬剤“複合体”とそれぞれ呼ばれる。それらはまた、免疫複合体、放射性免疫複合体、免疫毒素と呼ばれることもある。腫瘍細胞の死滅は、腫瘍細胞に上記の薬剤複合体が結合し、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化する際に起こる。薬剤複合体によって得られる選択性は、通常の細胞に対する毒性を最小化させ、これによって患者における薬剤の耐性(tolerability)を増強させる。
【0003】
薬剤複合体によって得られる腫瘍選択性にも関わらず、臨床の状況における薬剤複合体の使用は、多くの因子によって制限される。これに関して、薬剤複合体の剤形は一般に、複合体化した細胞毒性分子が抗体の安定性に対してどんな影響を有し得るかを考慮せずに、薬剤複合体が製造される抗体の公知の剤形に基づく。このように、現状の薬剤複合体組成物は、腫瘍特異的な抗体を単独で含有する組成物よりも不安定となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、上記の点を考慮して、現状で使用可能な薬剤複合体組成物よりも安定で高度に細胞毒性を有する薬剤を含有する薬剤複合体組成物の必要性が存在したままである。また、癌などの細胞増殖に関与するヒトの疾患を治療するために、このような薬剤複合体組成物を使用する方法の必要性も存在したままである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の組成物および方法を提供する。これらおよび他の本発明の利点は、さらなる発明の特徴点と同様に、本明細書で提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【0006】
〔発明の簡単な要約〕
本発明は、(i)メイタンシノイド(maytansinoid)と化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)等張化させる(tonicifying)量の塩化ナトリウム、(iv)水、および、必要に応じて(v)界面活性剤を含有しており、pHが約5〜6である組成物を提供する。本発明はまた、(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)抗凍結剤、(iv)充填剤、および、必要に応じて(v)界面活性剤を含有しており、再構成した(水にもどした)(reconstituted)ときのpHが約5〜6である、凍結乾燥された組成物を提供する。さらに本発明は、ヒトにおいて細胞を死滅させる方法であって、上述の組成物の何れかをヒトに投与する工程を含み、その結果抗体が細胞の表面に結合し、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化され、これによって細胞を死滅させるという方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)必要に応じて界面活性剤、(iv)等張化させる量の塩化ナトリウム、および(v)水を含有しており、pHが約5〜6である組成物を提供する。
【0008】
本発明にかかる組成物は、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有してなる複合体を含む。本明細書で使用される「抗体」という用語は、細胞表面の抗原に結合し得る(例えば、相補性決定領域(CDR)を含んでいる)、あらゆる免疫グロブリン、Fab、F(ab’)、dsFv、sFv、二重特異性抗体(diabody)および三重特異性抗体(triabody)などのあらゆる免疫グロブリン断片、あるいは、免疫グロブリンキメラを意味する。本発明の組成物においては、あらゆる適当な抗体を使用することができる。標的とされる細胞集団に応じて適切な抗体の選択が行われることは、当業者であれば理解できるであろう。これに関して、特定の細胞集団(一般的に好ましくは罹患した細胞集団)において選択的に発現する細胞表面の分子(すなわち、抗原)のタイプおよび数は、本発明の組成物用の適切な抗体の選択を決定付けるであろう。細胞表面発現プロファイルは、腫瘍細胞のタイプを含む細胞のタイプにつき幅広いバライエティがあることが知られている。または、もし上記の発現プロファイルが知られていない場合には、慣用の分子生物学および組織化学技術を使用して決定され得る。
【0009】
抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、最も好ましくはモノクローナル抗体である。本明細書で使用されている“ポリクローナル”抗体という用語は、異種抗体の集団であって、典型的には免疫された動物の血清に含まれているものを意味する。“モノクローナル”抗体という用語は、特定の抗原に特異的な同一の抗体分子の集団を意味する。モノクローナル抗体は、一般的にはBリンパ球(“B細胞”)の単一クローンによって作製される。モノクローナル抗体は、標準的なハイブリドーマ技術(例えば、Koehler and Milstein,Eur.J.Immunol.,5,511−519(1976)、Harlow and Lane (eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)、および、C.A.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5thEd.,Garland Publishing,New York,NY(2001)参照)などの当業者に公知の種々の技術を使用して得ることができる。要するに、モノクローナル抗体を作製するハイブリドーマ法は一般的に、適当な動物、一般的に好ましくはマウスに抗原(すなわち、“免疫原”)を注入するという工程を含む。その後、この動物を屠殺し、脾臓からB細胞を単離してヒトミエローマ細胞に融合する。そして、ハイブリッド細胞(すなわち、ハイブリドーマ)を生産する。ハイブリッド細胞は、無制限に増殖し、インビトロで所望とする特異性を有する高い力価の抗体を連続的に分泌する。当該技術において公知のあらゆる適当な方法を、所望とする特異性を有する抗体を生産するハイブリドーマ細胞を同定するために使用することができる。このような方法は、例えば、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンブロット分析、および、放射免疫測定などである。ハイブリドーマの集団は、個々のクローンを単離するためにスクリーニングされる。該個々のクローンのそれぞれは、抗原に対して単一の抗体種を分泌する。各ハイブリドーマは、単一のB細胞との融合から得られたクローンであり、それが生産する全ての抗体分子は、抗原結合部位およびアイソタイプなどの構造において同一である。モノクローナル抗体は、EBV−ハイブリドーマ技術(例えば、Haskard and Archer,J.Immunol.Methods,74(2),361−67(1984)、およびRoder et al.,Methods Enzymol.,121,140−67(1986)参照)、あるいは、バクテリオファージベクター発現システム(例えば、Huse et al.,Science,246,1275−81(1989)参照)などの他の適当な技術を使用して作製することができる。モノクローナル抗体断片を準備するために、一般的に組換え法を用いる。
【0010】
モノクローナル抗体は、あらゆる適当な動物から単離するか、このような動物中で生産することが可能であるが、好ましくは哺乳動物で生産し、より好ましくはマウスで生産し、最も好ましくはヒトで生産する。マウスにおいて抗体を生産する方法は当業者に周知であり、本明細書で記載する。ヒト抗体に関しては、適当な抗原でワクチン接種されるか、あるいは免疫されたヒト被験者の血清から、ポリクローナル抗体を単離することができることが、当業者であれば理解できるであろう。あるいは、マウスなどのような非ヒト動物においてヒト抗体を生産するために用いられる公知の技術を適合することによってもヒト抗体を作製することができる(例えば、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開公報No.2002/0197266 A1参照)。
【0011】
ヒト抗体(特にヒトのモノクローナル抗体)は、ヒトの治療に適用する場合に理想的な選択であるが、一般にマウスのモノクローナル抗体よりも作製するのが困難である。しかしながら、マウスのモノクローナル抗体は、ヒトに投与した場合、急速な宿主の抗体反応を誘導し、抗体−薬剤複合体の治療効果および診断効果を減少させうる。これらの問題を回避するために、モノクローナル抗体はヒト免疫系によって「外来のもの」として認識されないことが好ましい。この目的のために、ファージディスプレイが抗体を作製するために利用され得る。これに関して、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーが、標準的な分子生物学技術および組換えDNA技術を用いて作製され得る(例えば、Sambrook et al.(eds.),Molecular Cloning,A Laboratory Mannual,3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2001)参照)。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージは、所望とする抗原との特異的な結合について選択され、完全なヒト抗体が選択された可変ドメインを含んで再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、ハイブリドーマ生産用に使用されるミエローマ細胞などのような適当な細胞株に導入される。これにより、モノクローナル抗体の特性を有するヒト抗体が上記細胞によって分泌される(例えば、Janewayらの上記文献、Huseらの上記文献、および米国特許第6,265,150号参照)。あるいは、モノクローナル抗体は、特異的なヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるマウスから作製することができる。上記の方法は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、およびJanewayらの上記文献に記載されている。最も好ましくは、この抗体は、ヒト化された抗体である。本明細書で使用される、“ヒト化された”抗体とは、抗体の抗原結合ループを形成するマウスモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)が、ヒト抗体分子のフレームワーク上に移植されているもののことをいう。マウス抗体およびヒト抗体のフレームワークの類似性により、当該技術分野においては、ヒト抗体と抗原性的には同一であるが、CDR配列が由来するマウスモノクローナル抗体と同一の抗原と結合するモノクローナル抗体を生産するという、このアプローチが一般に受け入れられている。ヒト化された抗体を作製する方法は、該技術分野では周知であり、例えば、Janewayらの上記文献、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号および同第5,693,761号、欧州特許番号0239400 B1、および、英国特許第2188638号に詳細に記載されている。ヒト化された抗体は、米国特許第5,639,641号、および、Pedersen et al.,J.Mol.Biol.,235,959−973(1944)に記載された抗体再浮上(resurfacing)技術を使用しても作製することができる。本発明の組成物の複合体に用いられる抗体は、最も好ましくはヒト化されたモノクローナル抗体であるが、上述したヒトモノクローナル抗体、またはマウスモノクローナル抗体も本発明の範囲に含まれる。
【0012】
少なくとも一つの抗原結合部位を有し、これにより、標的となる細胞の表面に存在する少なくとも一つの抗原あるいは受容体を認識して結合する抗体断片も、本発明の範囲に含まれる。これに関して、無傷の抗体分子のタンパク質分解的切断は、抗原の認識能および結合能を維持した種々の抗体断片を作り出すことができる。例えば、プロテアーゼパパインでの抗体分子の限定的な消化によって、3つの断片が一般に作り出される。3つの断片のうちの2つは同一であり、もとの抗体分子の抗原結合活性を維持しているため、Fab断片と呼ばれる。酵素ペプシンによる抗体分子の切断は、通常2つの抗体断片を生産する。そのうちの一つは抗体分子の両方の抗原結合アームを維持しており、従ってF(ab’)断片と呼ばれる。単鎖可変領域断片(sFv)抗体断片は、合成ペプチドを介して抗体軽鎖のVドメインに結合された抗体重鎖の可変(V)ドメインを含んでなる、先端を切り取ったFab断片で構成されており、慣用の組換えDNA技術(例えば、Janewayらの上記文献参照)を使用して作製することができる。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)も、組換えDNA技術で調製され得る(例えば、Reiter et al.,Protein Engineering,7,697−704(1994)参照)。しかしながら、本発明の抗体断片は、これらの例示されたタイプの抗体断片に限定されない。所望とする細胞表面受容体あるいは抗原を認識して結合するあらゆる適当な抗体断片が使用可能である。抗体−抗原結合は、例えば、放射免疫測定(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降、および、競合的阻害解析などの、当該技術分野において公知のあらゆる適切な方法を使用して解析することができる(例えば、Janewayらの上記文献、米国特許出願公開公報No.2002/0197266 A1参照)。
【0013】
さらに、この抗体はキメラ抗体であり得る。キメラとは、少なくとも2つの異なる種から得られたり由来した少なくとも2つの免疫グロブリン、あるいはその断片を有する抗体(例えば、2つの異なる免疫グロブリン、マウスの免疫グロブリン可変領域と結合されたヒト免疫グロブリン定常領域)を意味する。
【0014】
あらゆる適切な抗体が本発明にかかる組成物に使用可能である、特に好ましい抗体は、例えば、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、トラスツズマブ(trastuzumab)、ビバツズマブ(bivatuzumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、および、リツキシマブ(rituximab)などのヒト化されたモノクローナル抗体である(例えば、米国特許第5,639,641号、米国仮特許出願No.60/424,332、国際(PCT)特許出願公開公報第02/16401、Pedersen et al.,J.Mol.Biol.,235,959−973(1944)、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,969−73(1994)、Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,8618−8623(1996)、Nadler et al.,J.Immunol.,131,244−250(1983)、Colomer et al.,Cancer Invest.,19,49−56(2001)、Heider et al.,Eur.J.Cancer,31A,2385−2391(1995),Welt et al.,J.Clin.Oncol.,12,1193−1203(1994)、Maloney et al.,Blood,90,2188−2195(1977)および米国特許第5,665,357号参照)。最も好ましくは、上記抗体はhuN901ヒト化モノクローナル抗体、あるいは、huMy9−6ヒト化モノクローナル抗体である。当該技術分野においては、他のヒト化モノクローナル抗体も公知であり、これらも本発明にかかる組成物に関連して使用可能である。
【0015】
本発明によれば、上述の抗体は、上述の複合体を形成するために、あらゆる適切な細胞毒性剤、特に腫瘍細胞に対して細胞毒性を引き起こす細胞毒性剤と化学的に結合している。通常の薬理学的なクリアランス機構の結果として、薬剤複合体に使用される抗体は、限られた量の標的細胞のみと接触し、結合する。それゆえ、複合体に使用される細胞毒性剤は、治療効果を顕在化させるのに十分な細胞の死滅が起こる程度の高い細胞毒性を有していなければならない。このような細胞毒性剤の例としては、新規のタキサン(例えば、国際(PCT)特許出願公開公報第01/38318号、および、PCT出願番号PCT/US03/02675参照)、DNA−アルキル化剤(例えば、CC−1065アナログ)、アントラサイクリン、ツブリジン(tubulysin)アナログ、デュオカルマイシン(duocarmycin)アナログ、オウリスタチン(auristatin)E、反応性ポリエチレングリコール部分を含む細胞毒性剤が挙げられる(例えば、Sasse et al.,J.Antibiot.(Tokyo),53,879−85(2000)、Suzawa et al.,Bioorg.Med.Chem.,8,2175−84(2000)、Ichimura et al.,J.Antibiot.(Tokyo),44,1045−53(1991)、Francisco et al.,Blood(2003)(印刷物が発行される前に電気通信回線を通じて公開された)、米国特許公報第5,475,092号、同第6,340,701号、同第6,372,738号および同第6,436,931号、米国特許出願公開公報No.2001/0036923 A1、係属中の米国特許出願No.10/024,290および同No.10/116,053ならびに国際(PCT)特許出願公開公報第01/49698号参照)。あるいは、最も好ましくは、上記の抗体は、本発明にかかる組成物の複合体を形成するためにメイタンシノイドと化学的に結合している。
【0016】
当初、メイタンシノイドは、Maytenus属に分類される東アフリカの低木から単離されたが、その後、Actinosynnema pretiosumなどの土壌細菌の代謝産物であることが発見された(例えば、米国特許第3,896,111号参照)。メイタンシノイドは有糸分裂を阻害することによって細胞毒性を誘導する。実験的証拠によって、メイタンシノイドが微小管タンパク質チューブリンの重合を阻害することによって微小管の形成を妨げ、これにより有糸分裂を阻害することが示唆される(例えば、米国特許第6,441,163号、および、Remillard et al.,Science,189,1002−1005(1975)参照)。メイタンシノイドは、細胞培養モデルを使用したインビトロの場合、および、実験動物系を使用したインビボの場合において、腫瘍細胞の増殖を阻害することが示されている。さらに、メイタンシノイドの細胞毒性は、例えば、メトトレキサート、ダウノルビシン、およびビンクリスチンなどの従来の化学療法剤の1,000倍である(例えば、米国特許第5,208,020号参照)。メイタンシノイドは、メイタンシン(maytansine)、メイタンシノール(maytansinol)、メイタンシノールのC−3エステル、およびその他のメイタンシノール類似体および誘導体を含むことが当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,208,020号、および、米国特許第6,441,163号参照)。メイタンシノールのC−3エステルは、自然発生的および合成によって得ることができる。さらに、自然発生的および合成によって得られた両方のメイタンシノールのC−3エステルは、単純なカルボン酸とのC−3エステルあるいはN−メチル−L−アラニン誘導体とのC−3エステルに分類され得、後者は前者よりも細胞毒性が強い。合成メイタンシノイド類似体もまた、当該技術分野において公知であり、例えば、Kupchan et al.,J.Med.Chem.,21,31−37(1978)に記載されている。メイタンシノールならびにその類似体、およびその誘導体を得る方法は、例えば、米国特許第4,151,042号に記載されている。
【0017】
本発明にかかる組成物への使用に適したメイタンシノイドは、当該技術分野において公知の方法を使用して、自然源から単離してもよいし、合成して製造してもよいし、半合成によって製造してもよい。さらに、メイタンシノイドは、最終的な複合体分子が十分な細胞毒性を維持している限り、適当な方法で一部その構成が変更されていてもよい。これに関して、メイタンシノイドは抗体が結合することのできる適当な官能基を欠いている。複合体を形成するために、メイタンシノイドを抗体と結合させるための結合部分を利用することが望ましい。この結合部分は、特定の部位でメイタンシノイドの細胞毒性を活性化させるための化学結合を含んでいる。適当な化学結合は、当該技術分野において周知であり、ジスルフィド結合、酸に不安定な結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合、スルフヒドリル基とマレイミド基との間に形成されるチオエーテル結合、および、エステラーゼに不安定な結合を含む。最も好ましくは、上記結合部分はジスルフィド結合あるいはチオエーテル結合を含む。本発明によれば、上記結合部分は、反応性化学基を含むことが好ましい。特に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。好ましい実施形態では、反応性化学基は、チオール基間のジスルフィド結合を介してメイタンシノイドと共有結合することができる。したがって、本明細書で説明したようにその構成が変更されているメイタンシノイドは、好ましくはチオール基を含む。当業者であれば、チオール基が水素原子に結合した硫黄原子を有し、当該技術分野において一般的にスルフヒドリル基とも呼ばれ、“−SH”あるいは“RSH”と記載され得ることを理解するであろう。
【0018】
特に好ましくは、反応性化学基を有する結合部分を含んでなるメイタンシノイドは、該結合部分がジスルフィド結合を含み、化学反応基がN−スクシンイミジルエステルまたはN−スルホスクシンイミジルエステルを含んでなるメイタンシノールのC−3エステルおよびその類似体である。メイタンシノイドにおける多くの位置が、上記結合部分と化学的に結合する位置として機能し得る。例えば、ヒドロキシ基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルで修飾されるC−14位置、ヒドロキシで修飾されるC−15位置、および水酸基を有するC−20位置は全て利用可能である。最も好ましくは、上記結合部分はメイタンシノールのC−3位置と結合する。最も好ましくは、本発明の組成物と関連して使用されるメイタンシノイドは、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)、あるいは、N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM4)である。
【0019】
他の化学結合を有する結合部分も本発明において使用可能であり、同様に他のメイタンシノイドも使用可能である。他の化学結合の具体的な例には、酸に不安定な結合、チオエーテル結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合、および、エステラーゼに不安定な結合が挙げられる。結合部分を有するメイタンシノイドの製造方法は、例えば、米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、および同第6,333,410号に記載されている。
【0020】
一般に好ましくは、メイタンシノイドの上記結合部分は、抗体とメイタンシノイドとの結合に使用されるより大きなリンカー分子の部分である。本発明では、メイタンシノイドが細胞毒性を保有し、かつ、抗体がターゲティング特性を維持するようなリンカー分子が提供される限り、あらゆる適当なリンカー分子を使用することができる。リンカー分子は、(上述した)化学結合を介してメイタンシノイドと抗体とを結合させ、その結果メイタンシノイドと抗体とは(例えば共有結合などで)化学的に互い結合する。望ましくは、リンカー分子は、ジスルフィド結合あるいはチオエーテル結合を介してメイタンシノイドと抗体とを化学的に結合させる。最も好ましくは、抗体はジスルフィド結合を介してメイタンシノイドと化学的に結合する。
【0021】
特に好ましくは、リンカー分子には例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(例えば、Carlsson et al.,Biochem.J.,173,723−737(1978)参照)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(例えば、米国特許第4,563,304号参照)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(例えば、CAS登録番号341498−08−6参照)、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)(例えば、Yoshitake et al.,Eur.J.Biochem.,101,395−399(1979)参照)、および、N−スクシンイミジル−4−メチル−4−[2−(5−ニトロ−ピリジル)−ジチオ]ペンタノエート(SMNP)(例えば、米国特許第4,563,304号参照)が含まれる。本発明の組成物に使用する最も好ましいリンカー分子は、SPP、SMCC、およびSPDBである。
【0022】
本発明の組成物は、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体を含んでなる。「治療に効果的な量」とは、(例えば、少なくとも一つの態様の腫瘍細胞の細胞毒性を促進すること、あるいは特定の癌に関連する他の病状の治療、回復、予防、または改善などといった)個体中で有意な利益を示す十分な量を意味する。治療に効果的な量は、個体中で望まれる生物学的効果、治療すべき病状(condition)、及び/又は複合体の特異的特性、および個体に依存して変化してもよい。したがって、本明細書で説明した方法によれば、担当医(あるいは、組成物を投与する他の医療専門家)は治療を行う個々の患者ごとに組成物の量を一般に決定するであろう。本発明にかかる組成物における複合体の濃度は、約0.1mg/ml〜約5mg/ml(例えば、約0.5mg/ml、約2mg/ml、又は約5mg/ml)であることが望ましい。好ましい実施形態では、本発明にかかる組成物における複合体の濃度は、約1mg/ml以上(例えば、約2mg/ml以上、約3mg/ml以上、又は約4mg/ml以上)である。最も好ましくは、本発明にかかる組成物における複合体の濃度は、約5mg/mlである。組成物は、少なくとも1mg/mlの複合体を含有するものが特に好ましいが、複合体の濃度が1mg/ml未満であっても(例えば、約0.1mg/ml〜約0.9mg/mlの濃度)、本発明の組成物中で安定に維持できるため、本発明の範囲に含まれる。複合体分子を1mg/mlより多く含有する組成物は、臨床用途および商業用途に有利であり、この濃度であれば、投与のための組成物の単回用量をより便利な(例えば、少ない)量に調製することができる。
【0023】
本発明の組成物は、それが必要とされるヒト宿主へ投与するなどといったような、製薬学的用途に許容できるように調製されることが望ましい。そのために、複合体分子は、生理学的に許容される担体(例えば、賦形剤または希釈剤)を含んで組成物として調製されることが好ましい。生理学的に許容される担体は周知であり、容易に利用することができ、緩衝剤、酸化防止剤、静菌剤、塩、ならびにこの製剤をヒト患者の血液または他の体液と等張にするような溶質、ならびに懸濁化剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液、可溶化剤、増粘剤、例えば界面活性剤などの安定化剤および防腐剤を含む。担体の選択は、少なくとも部分的には、標的となる組織及び/又は細胞の位置、および、組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されるであろう。薬剤複合体の調製に使用される適切な担体および賦形剤は、例えば、国際(PCT)特許出願公開公報第00/02587号、02/060955号および02/092127号、ならびにGhetie et al.,J.Immunol.Mehtods,112,267−277(1988)に開示される。最も好ましくは、本発明の組成物は、緩衝剤、界面活性剤、等張化させる量の塩化ナトリウム、および水を含む。
【0024】
本発明の組成物では、製薬学的に許容されるあらゆる適切な緩衝剤を使用することができる。特に好ましい緩衝剤の例としては、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、リン酸塩およびヒスチジンが挙げられる。しかしながら、本発明の組成物は、これらの例示した緩衝剤に限定されない。緩衝剤は、所望とする条件下で組成物の十分な安定性が得られる限り、あらゆる適当な濃度で本発明の組成物中に含ませることができる。これに関して、組成物中の緩衝剤の濃度は約2〜50mMである(例えば、約2〜10mM、約10〜20mM、約20〜30mM、約30〜40mM、約40〜50mM)ことが好ましい。最も好ましくは、組成物中の緩衝剤の濃度は約5〜15mM(例えば、約10mM)である。緩衝剤は、コハク酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムであることが望ましく、クエン酸ナトリウムであることが最も好ましい。一般に本発明の組成物中に緩衝剤が存在すれば、pHが所望とする範囲内に維持される。これに関して、本発明の組成物のpHは、約5〜6(例えば、約5、5.5、または6)であることが好ましい。pHの高い(例えば、pHが約6以上)組成物は、pHの低い(例えば、pHが約6以下)組成物に比べて安定性に欠けることが考えられている。それゆえ、本発明の組成物のpHは約5.5であることが最も好ましい。
【0025】
上述の緩衝剤に加えて、本発明の組成物は界面活性剤を含んでもよい。本発明では、あらゆる適切な界面活性剤を使用することができる。適切な界面活性剤は当業者には周知である。本発明の組成物によれば、界面活性剤はポリソルベートであることが望ましく、ポリソルベート20またはポリソルベート80であることが好ましい。最も好ましくは、界面活性剤はポリソルベート20である。界面活性剤は、所望とする条件下で組成物の十分な安定性が得られる限り、あらゆる適当な濃度で本発明の組成物中に含ませることができる。これに関して、組成物中の界面活性剤の濃度は、該組成物の全体積の約0.002〜0.1%wt./vol.(例えば、約0.002〜0.01%wt./vol.、約0.005〜0.02%wt./vol.又は約0.01〜0.1%wt./vol.)であることが好ましい。最も好ましくは、組成物中の界面活性剤の濃度は、該組成物の全体積の約0.005〜0.02%wt./vol.(例えば、約0.01%wt./vol.)である。界面活性剤を含んで調製される組成物が好ましいが、界面活性剤を含まないで調製された組成物も本発明の範囲に含まれる。
【0026】
また、本発明の組成物には、さらなる安定剤として塩化ナトリウムが加えられる。これに関して、本発明の組成物は、適切な量、好ましくは等張化させる量の塩化ナトリウム(NaCl)を含有する。「等張化させる量の塩化ナトリウム」という用語は、組成物中のNaClの濃度が、組成物の張性(tonicity)をヒトの血液と同じ張性(すなわち、等張(等浸透圧))にすることを意味する。これに関して、NaClは、本発明の組成物が十分な等張性および安定性を得ることができる限り、あらゆる適当な濃度で本発明の組成物中に含ませることができる。望ましくは、組成物中の塩化ナトリウムの濃度は、約50〜500mM(例えば、約50〜100mM、約100〜150mM、約150〜250mM、約250〜350mM、または、約350〜450mM)である。塩化ナトリウムがより高濃度(例えば、150mM以上)であれば、等張ではなく高浸透圧な本発明の組成物が得られるが、ヒトへ投与する前に、あらゆる適切な等張性溶媒(例えば、好ましくは、5%デキストロース水溶液(“D5W”)、あるいは、生理食塩水(“NS”))で当該組成物を希釈することで、わずかに浸透圧が高いだけの、本発明の使用に適した組成物を得ることができる。好ましくは、組成物中の塩化ナトリウムの濃度は、約100〜200mM(例えば、約100〜140mM、約130〜170mM、または、約160〜200mM)である。最も好ましくは、組成物中の塩化ナトリウムの濃度は、約110〜150mM(例えば、約110〜130mM、または、約120mM)である。
【0027】
本発明の特に好ましい実施形態では、組成物が、(i)DM1と化学的に結合したhuN901を含有する約5mg/mlの複合体、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウムバッファー、(iii)約0.01%のポリソルベート20、(iv)約120mMの塩化ナトリウム、および(v)水(好ましくは、注射に適した水(WFI))、を含有しており、該組成物のpHは約5.5である。他の好ましい実施形態では、組成物が、(i)DM1と化学的に結合したhuMy9−6を含有する約1mg/ml以上(例えば、約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約5mg/ml、またはこれらの間の範囲)の複合体、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウムバッファー、(iii)必要に応じて約0.01%のポリソルベート20、(iv)約135mMの塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、該組成物のpHは約5.5である。さらに他の好ましい実施形態では、組成物が、(i)DM4と化学的に結合したhuMy9−6を含有する約1mg/ml以上(例えば、約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約5mg/ml、またはこれらの間の範囲)の複合体、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウムバッファー、(iii)必要に応じて約0.01%のポリソルベート20、(iv)約135mMの塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、該組成物のpHは約5.5である。さらなる好ましい実施形態では、組成物が、(i)SMCCリンカーを介してDM1と化学的に結合したhuN901を含有する約1mg/ml以上(例えば、約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約5mg/ml、またはこれらの間の範囲)の複合体、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウムバッファー、(iii)必要に応じて約0.01%のポリソルベート20、(iv)約130mMの塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、該組成物のpHは約5.5である。
【0028】
抗体(あるいは一般にタンパク質)を含む組成物は、酸化によって不安定になる。したがって、本発明の他の実施形態では、組成物はさらに酸化防止剤を含む。あらゆる適切な酸化防止剤が本発明の組成物に使用され得る。適切な酸化防止剤は当該技術分野において公知であり、例えば、スーパーオキシド・ジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、トコトリエノール、ポリフェノール、亜鉛、マンガン、セレン、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、システイン、およびメチオニンが例示される。本発明の組成物で使用される酸化防止剤は、最も好ましくはメチオニンである。酸化防止剤は、あらゆる適切な濃度で組成物中に含まれ得る。望ましくは、組成物中の酸化防止剤の濃度は約100μM〜100mM(例えば、約0.25〜1mM、約0.5〜2mM、約5〜15mM、約20〜70mM、または約60〜90mM)である。最も好ましくは、組成物中の酸化防止剤の濃度は約5〜15mM(例えば、約10mM)である。
【0029】
酸化防止剤に加えて、本発明の組成物はスクロースを添加することによってさらに安定化することができる。抗体製剤を安定化させるためのスクロースの使用は、当業者にとって公知である。本発明の組成物においてはあらゆる適切な量のスクロースを使用することができるが、組成物中のスクロースの望ましい濃度は該組成物の全体積の約0.1〜10%wt./vol.(例えば、約0.1〜1%wt./vol.、約2〜5%wt./vol.又は約7〜10%wt./vol.)である。最も好ましくは、組成物中のスクロースの濃度は該組成物の全体積の約4〜6%wt./vol.(例えば、約5%wt./vol.)である。
【0030】
本発明はさらに、本発明の組成物が中に分散された密封容器、および不活性ガスオーバーレイ(overlay)を含んで構成される、パッケージ化された組成物を提供する。このパッケージ化された組成物は、その内部に本発明の組成物を安定して維持することができる限り、あらゆる適切な不活性ガスでオーバーレイされ得る。好ましくは、不活性ガスは窒素またはアルゴンである。パッケージ化された組成物は、単位用量あるいは複数用量でアンプルまたはバイアルなどの密閉容器中に含まれ得る。
【0031】
本明細書で記載した水を含有する組成物(本明細書中で“液体”組成物、あるいは“水性”組成物とも呼ばれる)のほかに、本発明は、(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)界面活性剤、(iv)抗凍結剤、および(v)充填剤、を含有しており、再構成した(水にもどした)ときのpHが約5〜6である、凍結乾燥された組成物をも提供する。「凍結乾燥された」とは、組成物が真空でフリーズドライされたことを意味する。凍結乾燥化は一般に、溶質が溶媒から分離されるように特定の剤形を凍結させることによって達成される。溶媒は次いで昇華(sublimation)(すなわち、第1の乾燥)およびその後の脱離(すなわち、第2の乾燥)によって除去される。本発明の他の実施形態と関連して上述した複合体(すなわち、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体)、緩衝剤、界面活性剤、およびそれらの成分についての説明も、上述の凍結乾燥された組成物の同じ態様に同様に適用することができる。凍結乾燥された組成物を再構成するのに先立って、本発明の凍結乾燥された組成物を構成する各組成物の相対量が、複合体1mg当たりの賦形剤(例えば、バッファー、界面活性剤、充填剤、抗凍結剤)(mg)という表現で記載され得る。
【0032】
本明細書で説明したあらゆる適切な緩衝剤が本発明の凍結乾燥された組成物に使用可能であるが、緩衝剤はコハク酸ナトリウムバッファーであることが好ましい。緩衝剤は、あらゆる適切な量で本発明の凍結乾燥された組成物中に含ませることができる。特に、凍結乾燥された組成物は、複合体1mg当たり約0.1mg〜約2mgの緩衝剤(例えば、複合体1mg当たり約0.1mg〜約0.5mgの緩衝剤、複合体1mg当たり約0.5mg〜約1mgの緩衝剤、または、複合体1mg当たり約1mg〜約2mgの緩衝剤)を含有することが望ましい。最も好ましくは、凍結乾燥された組成物は、複合体1mg当たり約0.3mgのコハク酸ナトリウムバッファーを含有する。
【0033】
本発明の凍結乾燥された組成物には、本明細書で説明したあらゆる適切な界面活性剤を使用することができるが、界面活性剤は望ましくはポリソルベートであり、好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80である。最も好ましくは、界面活性剤はポリソルベート20である。界面活性剤は、所望とする条件下で凍結乾燥された組成物の十分な安定性が得られる限り、あらゆる適当な量で本発明の凍結乾燥された組成物中に含ませることができる。これに関して、凍結乾燥された組成物は、複合体1mg当たり約0.005〜0.1mgの界面活性剤(例えば、複合体1mg当たり約0.005〜0.01mgの界面活性剤、複合体1mg当たり約0.01〜0.05mgの界面活性剤、または、複合体1mg当たり約0.05〜0.1mgの界面活性剤)を含有することが望ましい。界面活性剤がポリソルベート20の場合、凍結乾燥された組成物は、複合体1mg当たり約0.02mgのポリソルベート20を含有することが好ましい。
【0034】
凍結および乾燥の際に組成物の活性成分が分解するのを防止するために、本発明の凍結乾燥された組成物は、抗凍結剤(好ましくは、無定形の抗凍結剤)をさらに含む。本明細書で使用される「抗凍結剤」という用語は、凍結中に不安定な分子を保護する賦形剤のことをいう。本発明の組成物に使用する適切な抗凍結剤は、当業者に公知のものであり、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、グルコース、トレハロース、および、スクロースなどが例示される。最も好ましくは、抗凍結剤はスクロースである。抗凍結剤は、あらゆる適切な量で本発明の凍結乾燥された組成物中に含ませることができる。凍結乾燥された組成物は、望ましくは、複合体1mg当たり約0.5〜5mg(例えば、0.5〜2mg)の抗凍結剤(例えば、複合体1mg当たり約0.8mgの抗凍結剤、複合体1mg当たり約2mgの抗凍結剤、または、複合体1mg当たり約4mgの抗凍結剤)を含有する。抗凍結剤がスクロースの場合、凍結乾燥された組成物は複合体1mg当たり約0.5〜2mg(例えば、約1mg)のスクロースを含有することが好ましい。
【0035】
本発明の凍結乾燥された組成物は充填剤をさらに含んでもよく、結晶化可能な充填剤を含むことが好ましい。当該技術分野において一般に、充填剤は凍結乾燥の結果として得られる「ケーク(cake)」に構造および重さを提供するために使用される。当該技術分野において公知のあらゆる適切な充填剤が本発明の凍結乾燥された組成物に使用することができる。適切な充填剤としては、マンニトール、デキストラン、およびグリシンなどが例示される。本発明の組成物に使用される最も好ましい充填剤は、グリシンである。凍結乾燥された組成物は、充填剤をあらゆる適切な量で含むことができるが、好ましくは、複合体1mg当たり約2〜20mgの充填剤(例えば、複合体1mg当たり約2〜10mgの充填剤、複合体1mg当たり約5〜10mgの充填剤、複合体1mg当たり約10〜15mgの充填剤、または、複合体1mg当たり約15〜20mgの充填剤)を含有する。充填剤がグリシンの場合、凍結乾燥された組成物は、複合体1mg当たり約3.8mgのグリシンを含有することが好ましい。
【0036】
従って、本発明によれば、5mg/mlの複合体(例えば、好ましくはDM1に化学的に結合したhuN901を含有する複合体)を含むように再構成されるためには、凍結乾燥された組成物の内容物は、好ましくは、(i)複合体1mg当たり約0.3mgのコハク酸ナトリウムバッファー、(ii)複合体1mg当たり約0.02mgのポリソルベート20、(iii)複合体1mg当たり約1mgのスクロース、および(iv)複合体1mg当たり約3.8mgのグリシン、を含有する。水で再構成されると、この凍結乾燥された組成物はpHが約5.5であることが好ましい。さらに、凍結乾燥された組成物が水で再構成された場合、本発明の液体組成物に関して上述した複合体、緩衝剤、および界面活性剤の相対濃度についての説明は、上記の凍結乾燥された組成物にも適用することができる。
【0037】
凍結乾燥の方法は当該分野において周知であり、例えば、Wang,W.,Int.J.Pharm.,203,1−60(2000)に記載されている。例えば、本発明の凍結乾燥された組成物は以下の工程を含む凍結乾燥サイクルを使用して製造することができる。:(1)棚(shelf)温度4℃、周囲室内圧力(ambient chamber pressure)で2.5時間のプレ冷却工程、(2)棚温度−50℃、周囲室内圧力での14時間の凍結工程、(3)棚温度−20℃、周囲室内圧力での6時間のグリシン再結晶化工程、(4)棚温度−50℃、周囲室内圧力での16時間の再凍結工程、(5)棚温度−13℃、圧力100mTorrでの24時間の第1乾燥工程、(6)棚温度24℃、圧力100mTorrでの10時間の第2乾燥工程、および(7)棚温度24℃、周囲室内圧力での停止段階。しかしながら、本発明の凍結乾燥された組成物は、上述の方法で製造されたものに限定されない。実際、本発明の凍結乾燥された組成物を製造するために、あらゆる適切な凍結乾燥方法を使用することができ、凍結乾燥化のパラメータ(例えば、乾燥時間)は、凍結乾燥される溶液の体積などの種々の因子に応じて様々に選択されることは、当業者にとっては明らかであろう。
【0038】
本明細書に記載した好ましい実施形態のほかに、本発明の組成物(液体であるか凍結乾燥形態であるかにかかわらず)は、さらなる治療上あるいは生物学上の活性剤を含んでいてもよい。例えば、特定の適応症(例えば、癌)の治療に有用な治療因子を含んでいてもよい。イブプロフェンあるいはステロイドなどの炎症を制御する因子は、インビボでの組成物の投与および生理学的な苦痛に関連した腫脹および炎症を減少させる組成物の一部であり得る。疾患に対する身体の天然の防御機能を上方制御するために、組成物は免疫エンハンサーを含んでもよい。組成物とともに、ビタミンおよびミネラル、酸化防止剤、ならびに微量栄養素を同時投与してもよい。組成物の投与に関連する手順に関する感染および他の障害の危険性を減少させるために、抗生剤、すなわち殺菌剤および抗真菌剤を含んでいてもよい。
【0039】
本発明はさらに、(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)界面活性剤、(iv)等張化させる量の塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、pHが約5〜6である組成物を、ヒトに投与する工程を含み、その結果該抗体が細胞の表面に結合し、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化され、これによって細胞を死滅させるという、ヒトにおいて細胞を死滅させる方法を提供する。本発明の他の実施形態に関して上述した複合体(すなわち、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体)、賦形剤(例えば、緩衝剤、界面活性剤、塩化ナトリウムなど)、およびそれらの成分に関する説明は、上記の本発明の方法の同じ態様にも同様に適用することができる。
【0040】
本発明の方法は、ヒトに本発明の組成物を投与する工程を含む。理想的には、本発明の方法は、疾患(特に、癌などの細胞の上昇したレベルの増殖に関わる疾患)にかかった細胞を標的として死滅させるために使用される。これに関して、本発明の方法は、ヒトにおいて腫瘍細胞を死滅させるために使用されることが好ましく、その結果として癌の予防、改善、及び/又は治療につながる。
【0041】
ヒトに組成物を投与する手段としてはあらゆる適切なものが本発明の範囲内において使用可能であるが、一般に好ましくは本発明の組成物は注射によってヒトに投与され、最も好ましくは注入によって投与される。「注射」という用語は、ヒトの標的組織に組成物が強制的に導入されることを意味する。「注入」という用語は、組成物がヒトの組織(一般に好ましくは静脈)に導入されることを意味する。組成物はあらゆる適切な経路によってヒトに投与することができるが、好ましくはヒトの静脈内、腹腔内に投与される。しかしながら、本発明の方法が腫瘍細胞を死滅させるために用いられる場合には、本発明の組成物を腫瘍内に投与することが特に好ましい。本発明の組成物を注射によって投与する場合、腫瘍に組成物を直接投与するためにあらゆる適切な注射機器を使用することができる。例えば、一般の医療用のシリンジを使用して、皮下の腫瘍に組成物を直接注射することができる。あるいは、本発明の液体組成物に腫瘍を浸すことによって、組成物を腫瘍に局所的に適用することもできる。同様に、あらゆる適切な送達機器(例えば、カテーテル)を使用して、一定時間にわたって、本発明の組成物で腫瘍を灌流することもできる。あまり好ましくないが、ヒトに組成物を送達する他の投与経路も使用可能である。実際、本発明の組成物を投与するために複数の経路が使用可能であるが、特定の経路を使用する方が、他の経路を使用する場合に比べて、より迅速かつ効果的な反応を得ることができる。例えば、特に好ましいわけではないが、本発明の組成物を体腔へ塗布又は点滴注射することもできるし、皮膚から吸収させることもできるし、吸入投与(inhaled)することもできるし、あるいは例えば、筋肉投与又は動脈内投与によって非経口投与することもできる。ヒトに非経口投与される本発明の組成物は、特定の細胞(例えば、癌細胞)を特異的に標的とすることが好ましい。
【0042】
上述したように、複合体は抗体を含んでおり、該抗体は、huN901、huMy9−6、huB4、huC242などのヒト化されたモノクローナル抗体であることが好ましい。他の適切な抗体として、例えばトラスツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ、および、リツキシマブが挙げられる。本発明の方法にこのような複合体を含む組成物が用いられる場合、抗体は、細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面で発現する抗原(例えば、腫瘍特異的抗原)との相互作用を通じて所望とする細胞(例えば、腫瘍細胞)へと複合体を標的化する。腫瘍特異的抗原は、例えば、上皮癌(例えば、MUC1)ならびに乳癌および卵巣癌(例えば、HER2/neu)などといった種々の腫瘍に関する従来技術に広範囲にわたって記載されている(例えば、Bartnes,Tidsskr.Nor.Laegeforen.,121,2941−5(2001)、および、von Mensdorff−Pouilly et al.,Int.J.Biol.Markers,15,343−356(2000)参照)。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、抗体(例えば、huMy9−6)はCD33抗原と結合し、CD33抗原は、例えば、急性骨髄性白血病細胞で発現する。他の好ましい実施形態では、抗体(例えば、huB4)はCD19抗原と結合し、CD19抗原は、例えば、ヒトB細胞リンパ腫細胞で発現する。あるいは、抗体(例えば、huC242)はCanAg抗原と結合し、CanAg抗原は、例えば、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌および他の消化器系の癌、ならびに非小細胞肺癌の大部分などの多くの癌細胞型で発現する。最も好ましくは、抗体(例えば、huN901)はNCAM/CD56抗原に結合し、NCAM/CD56抗原は、例えば、小細胞肺癌(SCLC)細胞および神経内分泌起源の他の癌細胞で発現する。抗体が結合し得る他の抗原には、CD抗原、PSMA、α葉酸受容体、Her2/neu、CD44v6、胎児膵腺房(fetoacinar pancreatic)(FAP)抗原、Cripto−1抗原、CA6抗原、CD20、CA55.1、MN/CA IX、およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(例えば、Chang et al.,Cancer Res.,59,3192−98(1999)、Miotti et al.,Int.J.Cancer,39,297−303,(1987)、Colomerらの上記の文献、Heiderらの上記の文献、Weltらの上記の文献、LePage et al.,American Assn.For Cancer Research(AACR),2003 Annual Meeting,Poster Abstact No.749,Kearse et al.,Int.J.Cancer,88,866−72(2000)、Maloneyらの上記の文献、Opavsky et al.,Genomics,33,480−87(1996)、Behm et al.,Blood,87,1134−39(1996)、および米国特許第5,665,357号参照)が含まれる。本明細書で説明したあらゆる腫瘍特異的抗原あるいは受容体を介して標的(すなわち、腫瘍)細胞が複合体と結合すると、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化される。メイタンシノイドの細胞毒性が活性化され得るメカニズムの一例は、抗体とメイタンシノイドとの間のジスルフィド結合の切断による、細胞内での遊離メイタンシノイドの放出、細胞内での抗体の分解、および細胞表面におけるメイタンシノイドの細胞毒性の活性化を含む。しかしながら、本発明の方法は、本明細書で例示したメイタンシノイドの活性化の形態には限定されない。実際、メイタンシノイドの細胞毒性を活性化するあらゆるメカニズムが、本発明の範囲に包含される。
【0044】
ヒトへ投与するために、本明細書で説明した本発明の液体組成物は、ヒトへ直接投与する(例えば、注入する)こともできるし、投与の直前に適切な希釈剤で希釈することもできる。適切な希釈剤は当業者に公知であり、D5Wおよび生理食塩水(NS)などが挙げられる。適切な希釈剤によって、1:1、1:2、1:3、あるいはそれ以上(例えば、1:5、1:10あるいは1:50でもよい)の希釈が可能である。本発明の組成物の希釈は、組成物中の複合体分子の濃度を約0.1mg/mlより低くしないことが望ましい。本発明の液体組成物を希釈した場合、それに応じて組成物中の各成分(例えば、緩衝剤、界面活性剤、および塩化ナトリウム)の前述した濃度は低下する。
【0045】
本明細書で説明した本発明の凍結乾燥された組成物をヒトに投与する場合、使用の直前に、例えば、注射に適した水、D5W、あるいはNSなどの滅菌液体賦形剤を組成物に加えることによって組成物をまず再構成しなければならない。したがって、本発明はさらに、(a)本明細書で説明した凍結乾燥された組成物を準備する工程、(b)再構成された組成物を準備するために、凍結乾燥された組成物に水を加える工程、および(c)該再構成された組成物をヒトに投与する工程、を含んでなり、その結果抗体が細胞の表面に結合し、メイタンシノイドが細胞によって内在化され、これによって細胞を死滅させる、ヒトにおいて細胞を死滅させる方法を提供する。本発明の他の実施形態に関連して上述した、凍結乾燥された組成物、投与経路、腫瘍特異的抗原、およびそれらの要素の説明は、上記の本発明の方法の同じ態様にも同様に適用することができる。さらに、本明細書で論じたように、本発明の凍結乾燥された組成物を水で再構成した後に、本発明の液体組成物に関連して上述した複合体および賦形剤(例えば、緩衝剤、界面活性剤、抗凍結剤、および充填剤)の相対濃度の説明は、上記の本発明の方法の同じ態様にも同様に適用することができる。
【0046】
本明細書で論じたように、本発明の方法は、液体組成物を使用するか凍結乾燥された組成物を使用するかに関わらず、癌の治療に関連して使用されることが好ましい。本発明の方法は、例えば、肺癌、乳癌、結腸癌、前立腺癌、腎臓癌、膵臓癌、卵巣癌、血液癌、およびリンパ器官癌などのあらゆる種類の癌の治療に使用することができる。あまり好ましくはないが、本発明の組成物を自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチおよび多発性硬化症)、移植片拒絶(例えば、腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心臓移植拒絶および骨髄移植拒絶)、移植片対宿主病、ウイルス感染(例えば、CMV感染、HIV感染、AIDSなど)、寄生虫症(例えば、ランブル鞭毛虫症、アメーバ症、住血吸虫症)などの細胞増殖に関連した他の疾患の治療に使用してもよい。
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定して解釈されるべきではないのは言うまでもない。
【実施例】
【0048】
〔実施例1〕
本実施例では、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する複合体、緩衝剤、界面活性剤、等張化させる量の塩化ナトリウム、および水を含んでなる組成物の製造を実証する。
【0049】
ジスルフィド結合を介してメイタンシノイドDM1と化学的に結合したhuN901モノクローナル抗体を含んでなる複合体(“huN901:DM1”)の産出については、上述した通りである(例えば、米国特許第6,441,163号参照)。上記の各賦形剤を存在させた状態で、huN901:DM1複合体を1mg/mlまたは5mg/ml含む製剤をそれぞれ調製した。各製剤の安定性を以下の解析法を使用して評価した:粒子を検出するための目視検査、遊離の薬物関連種を測定するためのクロマトグラフ法、ならびに高分子量および低分子量の複合体関連種を検出するためのHPLCサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)。目視検査において、粒子の存在が認められることは不安定度の指標となるため、望ましくないことである。一方、清浄な溶液は、安定した製剤の指標となる。クロマトグラフィー解析は、4℃および25℃での遊離薬物の量を測定するために使用した。これらの各解析の結果は、約5mg/mlのhuN901:DM1複合体、約10mMのクエン酸ナトリウム、約0.01%のポリソルベート、および塩化ナトリウムを含み、pHが5.5である製剤(すなわち、本発明の液体組成物)は、優れた安定性を有するであろうということを示唆した。
【0050】
二量体形成も不安定度の指標となるため、二量体形成に関する上記の製剤の安定性を確認するために、huN901:DM1複合体を濃縮し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS),pH6.5(製剤1A〜1C)、あるいは、10mMクエン酸ナトリウム,0.01%ポリソルベート20,60mM NaCl,pH5.5(製剤1D)の何れかで製剤化した。4℃あるいは25℃で6か月保存した後、サンプルをSEC−HPLCで解析した。この解析結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
これらの結果は、本発明の組成物(製剤1Dで表すもの)が複合体の二量体形成に対して保護されたことを証明するものである。従って、目視検査解析、クロマトグラフィー解析およびSEC−HPLC解析の結果を総合すると、試験した製剤のうち本発明の組成物が最も安定な製剤であることが示された。
【0053】
〔実施例2〕
本実施例では、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有した複合体、緩衝剤、界面活性剤あるいはスクロース、等張化させる量の塩化ナトリウム、および水を含んでなる組成物の製造を実証する。
【0054】
本明細書中に記載した方法および当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第6,441,163号参照)を用いて、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)リンカーを介してメイタンシノイドDM1と化学的に結合したhuN901モノクローナル抗体を含んでなる複合体(“huN901−SPP−DM1”)を調製した。huN901−SPP−DM1複合体は、(a)PBS,pH6.5(製剤2Aおよび2B)、または、(b)10mMクエン酸ナトリウム,0.01%ポリソルベート20,135mM NaCl,pH5.5(製剤2C)の何れかを用いて種々の濃度で製剤化した。各製剤サンプルを4℃および25℃で6か月インキュベートした後、該製剤中の遊離薬物および複合体二量体の存在をクロマトグラフィー解析でテストした。これらの解析結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示す結果に加えて、上記の製剤について粒子の目視検査を行った。本発明の製剤(製剤2C)は、4℃で6か月保存した後にも外観上清浄であった。一方、比較例としての製剤(2Aおよび2Bで表すもの)には、粒子および沈殿物が観察された。
【0057】
これらの結果は、本発明の組成物のより高い安定性を証明するものである。
【0058】
〔実施例3〕
本実施例では、メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する複合体、緩衝剤、界面活性剤、等張化させる量の塩化ナトリウム、酸化防止剤、および水を含んでなる組成物の製造を実証する。
【0059】
本明細書中に記載した方法および当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第6,441,163号参照)を用いて、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)リンカーを介してメイタンシノイドDM1と化学的に結合したhuN901モノクローナル抗体を含んでなる複合体(“huN901−SMCC−DM1”)を調製した。huN901−SMCC−DM1複合体1mg/mlは、(a)リン酸緩衝生理食塩水(PBS),pH6.5(製剤3A)、(b)10mMクエン酸ナトリウム,0.01%ポリソルベート20,130mM NaCl,pH5.5(製剤3B)、または(c)10mMクエン酸ナトリウム,0.01%ポリソルベート20,130mM NaCl,10mMメチオニン,pH5.5(製剤3C)の何れかを用いて製剤化した。各製剤サンプルを25℃および37℃で3.5か月インキュベートした後、該製剤中の複合体二量体の存在をクロマトグラフィー解析でテストした。これらの解析結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
これらの結果は、本発明の組成物(製剤3Bおよび3Cで表すもの)がより高い安定性を有することを証明するものである。
【0062】
〔実施例4〕
本実施例では、メイタンシノイドDM1と化学的に結合したモノクローナル抗体huMy9−6を含有する複合体、緩衝剤、等張化させる量の塩化ナトリウム、および水を含む組成物であって、界面活性剤およびスクロースを含むものおよび界面活性剤およびスクロースを含まないものの製造を実証する。
【0063】
本明細書中に記載した方法および当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第6,441,163号参照)を用いて、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)リンカーを介してメイタンシノイドDM1と化学的に結合したhuMy9−6モノクローナル抗体を含んでなる複合体(“huMy9−6−SPP−DM1”)を調製した。huMy9−6−SPP−DM1複合体1mg/mlは、(a)リン酸緩衝生理食塩水(PBS),pH6.5(製剤4A)、(b)10mMクエン酸ナトリウム,135mM NaCl,pH5.5(製剤4B)、(c)10mMクエン酸ナトリウム,0.01%ポリソルベート20,135mM NaCl,pH5.5(製剤4C)、または(d)10mMクエン酸ナトリウム,5%スクロース,60mM NaCl,pH5.5(製剤4D)の何れかを用いて製剤化した。各製剤サンプルを4℃あるいは25℃で3か月インキュベートした後、該製剤中の高分子量(HMW)種を測定するためにSEC−HPLCで解析を行い、該製剤中の遊離薬物種を測定するためにクロマトグラフィー解析で解析を行った。これらの解析結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
さらに、製剤4Aおよび4Bのサンプルを4℃および25℃で3か月インキュベートした。その後、上述の方法で複合体二量体の形成をテストした。この解析結果を表5に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
これらの結果は、本発明の組成物(製剤4B、4C、および4Dで表すもの)がより高い安定性を有すること、および、スクロースがさらなる安定化作用を付加することを証明するものである。
【0068】
〔実施例5〕
本実施例では、メイタンシノイドDM4と化学的に結合したモノクローナル抗体huMy9−6を含有する複合体、緩衝剤、等張化させる量の塩化ナトリウム、および水を含む組成物であって、界面活性剤を含むものおよび界面活性剤を含まないものの製造を実証する。
【0069】
本明細書中に記載した方法および当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第6,441,163号参照)を用いて、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)リンカーを介してメイタンシノイドDM4と化学的に結合したhuMy9−6モノクローナル抗体を含んでなる複合体(“huMy9−6−SPDB−DM4”)を調製した。huMy9−6−SPDB−DM4複合体1mg/mlは、(a)リン酸緩衝生理食塩水(PBS),pH6.5、(b)10mMクエン酸ナトリウム,135mM NaCl,pH5.5、または、(c)10mMクエン酸ナトリウム,0.01%ポリソルベート20,135mM NaCl,pH5.5の何れかを用いて製剤化した。上記の各製剤の安定性を確認するために、各製剤サンプルを−80℃で6か月インキュベートした後、HIAC粒子計測器を使用して各製剤中に存在する粒子を確認するためのテストを行った。各製剤サンプルを4℃あるいは25℃で6か月インキュベートした後、上述した方法で製剤中の遊離薬物種の存在を確認するためのテストを行った。これらの解析結果を表6に示す。
【0070】
【表6】

【0071】
これらの結果は、本発明の組成物(製剤5Bおよび5Cで表すもの)が遊離薬物種および粒子の形成に対して保護されたことを証明するものである。また、これらの結果は、ポリソルベートによって微粒子の形成が回避され、より安定性が増すことを証明するものである。
【0072】
〔実施例6〕
本実施例では、メイタンシノイドDM1と化学的に結合したモノクローナル抗体huN901を含有する複合体を含む凍結乾燥された組成物の製造を実証する。
【0073】
ジスルフィド結合を介してメイタンシノイドDM1と化学的に結合したhuN901ヒトモノクローナル抗体を含んでなる複合体(“huN901:DM1”)の産出については、上述した通りである(例えば、米国特許第6,441,163参照)。製剤6A〜6Dという4種の製剤を調製した。表7に示すように、各製剤は、(a)1mg/mlのhuN901−DM1、(b)10mMクエン酸ナトリウムあるいは10mMコハク酸ナトリウムの何れか、(c)0.5%wt./vol.スクロース、(d)250mMグリシン、および(e)水、を含み、さらに、0.01%wt./vol.のポリソルベート20を含み(または含まず)、pHが5.5であった。
【0074】
【表7】

【0075】
1mlの各製剤サンプル6A〜6Dを、表8に示す凍結乾燥スキームに従って1mlのバイアルで凍結乾燥した。
【0076】
【表8】

【0077】
凍結乾燥後、各製剤サンプル6A〜6Dは固体状の均一な白いケークとなった。そして、蒸留水で再構成すると、全ての製剤サンプルは即座に再懸濁した(すなわち、20秒未満で完全に溶解した)。再構成されたサンプルについて、目視検査および高分子量種を解析するためのHPLCサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)によって解析を行った。粒子及び/又は高分子量種の存在は、不安定度の指標となるため、望ましくないことである。一方、清浄な溶液は、安定した製剤の指標となる。この解析の結果を表9に示す。
【0078】
【表9】

【0079】
これらの結果により、本発明の凍結乾燥された組成物(すなわち、製剤6D)が、凍結乾燥の際の粒子および高分子量種の形成を有効に回避する唯一の組成物であることがわかった。テストした製剤の中で、本発明の凍結乾燥された組成物が最も安定であった。
【0080】
〔実施例7〕
本実施例では、メイタンシノイドDM1と化学的に結合したモノクローナル抗体huN901を含有する複合体を含む凍結乾燥された組成物の安定性を実証する。
【0081】
本明細書中に記載した方法で、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)リンカーを介してメイタンシノイドDM1と化学的に結合したhuN901モノクローナル抗体を含んでなる複合体(“huN901−SPP−DM1”)を調製した。huN901−SPP−DM1複合体5mg/mlは、(a)PBS,pH6.5を用いて製剤化し、液体の状態で保存するか、または、(b)10mMコハク酸ナトリウム,0.5%スクロース,0.01%ポリソルベート20,250mMグリシン,pH5.5を用いて製剤化し、実施例6で説明したように凍結乾燥した。サンプルを4℃および25℃で6か月インキュベートした後、該サンプル中の粒子、複合体二量体、および遊離薬物種の存在を上述の方法でテストした。これらの解析結果を表10に示す。
【0082】
【表10】

【0083】
PBSで製剤化された液体組成物と比較して、粒子、複合体二量体、および遊離薬物が減少することから明らかなように、これらの結果は、本発明の凍結乾燥された組成物の安定性を証明するものである。
【0084】
本明細書で挙げた刊行物、特許出願公開公報、および特許公報などの全ての参考文献は、各参考文献が個々かつ具体的に参考として援用されることが示され、その全体が本明細書中に示されるのと同等の程度まで、参考として本明細書中に援用される。
【0085】
本発明の説明における(特に請求項における)“a”および“an”および“the”という単語、ならびに同様の指示語の使用は、特にことわりがないか、又は文脈から明らかに否定されない限り、単数および複数の両方を包含するように解釈されるべきである。“含む”(“comprising”、“having”、including“、および“containing”)という単語は、特にことわりのない限り、開放型の(制約のない)用語に解釈される(すなわち、「〜を含むが、これに限定されない」を意味する)。本明細書での数値範囲の列挙は、特にことわりのない限り、その範囲内の各別個の数値について個々に言及するための簡単な方法として役立つに過ぎず、各別個の数値は本明細書で個々に列挙されているのと同様に明細書中に含まれることが意図される。本明細書で説明した全ての方法は、特にことわりがないか、又は文脈から明らかに否定されない限り、あらゆる適当な順序で実施することが可能である。本明細書で使用される何れか又は全ての例、あるいは、例示の用語(例えば、“such as(例えば、のような、などの)”)は、単に本発明をよりよく説明するものに過ぎず、他に特許請求していないのであれば、本発明の範囲を限定するものではないことが意図される。明細書中のいかなる語も、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施のために不可欠であるとして示すと解釈するべきではない。
【0086】
本発明の好ましい実施形態は、発明者らが知っている本発明を実施するためのベストモードを含んで本明細書中に記載されている。当業者には、上述の記載を読むことによって、これらの好ましい実施形態のバリエーションが明らかとなるであろう。発明者らは、当業者であればバリエーションを使用することができることを期待し、本明細書で特に説明した以外のこのような本発明の実施が可能であることを意図する。したがって、添付の特許請求の範囲に記載した対象の全ての改良品、および同等物が、関係法令によって許容される限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、全ての可能なバリエーションにおける上述した要素のあらゆる組み合わせは、特にことわりがないか、又は文脈から明らかに否定されない限り、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)界面活性剤、(iv)等張化させる量の塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、pHが約5〜6である、組成物。
【請求項2】
上記組成物中の上記複合体の濃度が約0.1mg/ml〜約5mg/mlである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
上記組成物中の上記複合体の濃度が約1mg/ml以上である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
上記組成物中の上記複合体の濃度が約5mg/mlである、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
上記緩衝剤がクエン酸塩バッファー、酢酸塩バッファー、コハク酸塩バッファー、リン酸塩バッファー、およびヒスチジンバッファーからなる群から選択される、請求項1〜4の何れかに記載の組成物。
【請求項6】
上記組成物中の上記緩衝剤の濃度が約2mM〜約50mMである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
上記組成物は、クエン酸ナトリウムバッファーを約10mMの濃度で含有し、そのpHが約5.5である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
上記界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項1〜7の何れかに記載の組成物。
【請求項9】
上記組成物中の上記界面活性剤の濃度が、該組成物の全体積の約0.002%〜約0.1%である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
上記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
上記組成物中のポリソルベート20の濃度が、該組成物の全体積の約0.01%である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
上記組成物中の塩化ナトリウムの濃度が約50mM〜約500mMである、請求項1〜11の何れかに記載の組成物。
【請求項13】
上記組成物中の塩化ナトリウムの濃度が約100mM〜約200mMである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
上記組成物中の塩化ナトリウムの濃度が約120mMである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
上記組成物が、(i)DM1と化学的に結合したhuN901を含有する約5mg/mlの複合体、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウムバッファー、(iii)約0.01%のポリソルベート20、(iv)約120mMの塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、pHが約5.5である、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
上記組成物が、(i)DM1と化学的に結合したhuMy9−6を含有する約1mg/ml以上の複合体、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウムバッファー、(iii)約0.01%のポリソルベート20、(iv)約135mMの塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、pHが約5.5である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
上記組成物が、(i)DM4と化学的に結合したhuMy9−6を含有する約1mg/ml以上の複合体、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウムバッファー、(iii)約0.01%のポリソルベート20、(iv)約135mMの塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、pHが約5.5である、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
上記組成物がさらに酸化防止剤を含有する、請求項1〜17の何れかに記載の組成物。
【請求項19】
上記組成物中の上記酸化防止剤の濃度が約100μM〜約100mMである、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
上記酸化防止剤がスーパーオキシド・ジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、トコトリエノール、ポリフェノール、亜鉛、マンガン、セレン、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、システイン、およびメチオニンからなる群から選択される、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
上記酸化防止剤がメチオニンである、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
上記組成物中のメチオニンの濃度が約10mMである、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
上記組成物がスクロースを含有する、請求項1〜22の何れかに記載の組成物。
【請求項24】
上記組成物中のスクロースの濃度が、該組成物の全体積の約0.1%〜約10%である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
上記組成物中のスクロースの濃度が、該組成物の全体積の約5%である、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
密封容器およびその中に分散された請求項1〜26の何れかに記載の組成物、ならびに不活性ガスオーバーレイを含有してなる、パッケージ化された組成物。
【請求項27】
上記不活性ガスが窒素またはアルゴンである、請求項26記載のパッケージ化された組成物。
【請求項28】
(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)界面活性剤、(iv)等張化させる量の塩化ナトリウム、および(v)水、を含有しており、pHが約5〜6である組成物を、ヒトに投与する工程を含み、
その結果該抗体が細胞の表面に結合し、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化され、これによって細胞を死滅させる、ヒトにおいて細胞を死滅させる方法。
【請求項29】
上記組成物中の上記複合体の濃度が約0.1mg/ml〜約5mg/mlである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
上記組成物中の上記複合体の濃度が約1mg/ml以上である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
上記組成物中の上記複合体の濃度が約5mg/mlである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
上記界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項28〜31の何れかに記載の方法。
【請求項33】
上記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項29記載の方法。
【請求項34】
上記組成物がさらに酸化防止剤を含有する、請求項28〜33の何れかに記載の方法。
【請求項35】
上記酸化防止剤がスーパーオキシド・ジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、トコトリエノール、ポリフェノール、亜鉛、マンガン、セレン、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、システイン、およびメチオニンからなる群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
上記酸化防止剤がメチオニンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
上記組成物がスクロースを含有する、請求項28〜36の何れかに記載の方法。
【請求項38】
(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)界面活性剤、(iv)抗凍結剤、および(v)充填剤、を含有しており、水で再構成したときのpHが約5〜6である、凍結乾燥された組成物。
【請求項39】
上記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜14または請求項38の何れかに記載の組成物。
【請求項40】
上記抗体がヒト化されたモノクローナル抗体である、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
上記抗体が、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、トラスツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ、および、リツキシマブからなる群から選択される、請求項39記載の組成物。
【請求項42】
上記メイタンシノイドがチオール基を有する、請求項1〜14または請求項38〜41の何れかに記載の組成物。
【請求項43】
上記メイタンシノイドがDM1である、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
上記メイタンシノイドがDM4である、請求項42記載の組成物。
【請求項45】
上記抗体が、ジスルフィド結合、酸に不安定な結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合、チオエーテル結合、およびエステラーゼに不安定な結合からなる群から選択される化学結合を介してメイタンシノイドと化学的に結合している、請求項1〜14または請求項38〜44の何れかに記載の組成物。
【請求項46】
上記緩衝剤がクエン酸塩バッファー、酢酸塩バッファー、コハク酸塩バッファー、リン酸塩バッファー、およびヒスチジンバッファーからなる群から選択される、請求項38〜45の何れかに記載の組成物。
【請求項47】
複合体1mg当たり約0.1mg〜約2mgの緩衝剤を含有する、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
複合体1mg当たり約0.3mgのコハク酸ナトリウムバッファーを含有する、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
上記界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項38〜48の何れかに記載の組成物。
【請求項50】
複合体1mg当たり約0.005mg〜約0.1mgの界面活性剤を含有する、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
上記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項50記載の組成物。
【請求項52】
複合体1mg当たり約0.02mgのポリソルベート20を含有する、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
複合体1mg当たり約0.5mg〜約5mgの抗凍結剤を含有する、請求項38〜52の何れかに記載の組成物。
【請求項54】
上記抗凍結剤がスクロースである、請求項53記載の組成物。
【請求項55】
複合体1mg当たり約1mgのスクロースを含有する、請求項54記載の組成物。
【請求項56】
複合体1mg当たり約2mg〜約20mgの充填剤を含有する、請求項38〜55の何れかに記載の組成物。
【請求項57】
上記充填剤がグリシンである、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
複合体1mg当たり約3.8mgのグリシンを含有する、請求項57記載の組成物。
【請求項59】
(i)DM1と化学的に結合したhuN901を含有する複合体、(ii)複合体1mg当たり約0.3mgのコハク酸ナトリウムバッファー、(iii)複合体1mg当たり約0.02mgのポリソルベート20、(iv)複合体1mg当たり約1mgのスクロース、および(v)複合体1mg当たり約3.8mgのグリシン、を含有する、請求項38記載の組成物。
【請求項60】
(a)請求項38〜59の何れかに記載の凍結乾燥された組成物を準備する工程、(b)再構成された組成物を得るために該凍結乾燥された組成物に水を加える工程、および(c)再構成された組成物をヒトに投与する工程、を含み、
その結果抗体が細胞の表面に結合し、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化され、これによって細胞を死滅させる、ヒトにおいて細胞を死滅させる方法。
【請求項61】
上記細胞が腫瘍細胞である、請求項28〜37または請求項60の何れかに記載の方法。
【請求項62】
上記抗体がモノクローナル抗体である、請求項28〜37または請求項60〜61の何れかに記載の方法。
【請求項63】
上記抗体がヒト化されたモノクローナル抗体である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
上記抗体が、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、トラスツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ、および、リツキシマブからなる群から選択される、請求項62記載の方法。
【請求項65】
上記メイタンシノイドがチオール基を有する、請求項28〜37または請求項60〜64の何れかに記載の方法。
【請求項66】
上記メイタンシノイドがDM1である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
上記メイタンシノイドがDM4である、請求項65記載の方法。
【請求項68】
上記抗体が、ジスルフィド結合、酸に不安定な結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合、チオエーテル結合、およびエステラーゼに不安定な結合からなる群から選択される化学結合を介してメイタンシノイドと化学的に結合している、請求項28〜37または請求項60〜67の何れかに記載の方法。
【請求項69】
上記抗体が細胞の表面に存在する抗原と結合する、請求項28〜37または請求項60〜68の何れかに記載の方法。
【請求項70】
上記抗原が、NCAM/CD56、CD33、CD19、GD、CanAg、PSMA、α葉酸受容体、Her2/neu、CD44v6、胎児膵腺房(FAP)抗原、Cripto−1、CA6、CD20、CA55.1、MN/CA IX、およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンからなる群から選択される、請求項69記載の方法。
【請求項71】
上記再構成された組成物中の上記複合体の濃度が約0.1mg/ml〜約5mg/mlである、請求項60〜70の何れかに記載の方法。
【請求項72】
上記再構成された組成物中の上記複合体の濃度が約1mg/ml以上である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
上記再構成された組成物中の上記複合体の濃度が約5mg/mlである、請求項71記載の方法。
【請求項74】
上記緩衝剤がクエン酸塩バッファー、酢酸塩バッファー、コハク酸塩バッファー、リン酸塩バッファー、およびヒスチジンバッファーからなる群から選択される、請求項60〜73の何れかに記載の方法。
【請求項75】
上記再構成された組成物中の上記緩衝剤の濃度が約2mM〜約50mMである、請求項74記載の方法。
【請求項76】
上記再構成された組成物は、コハク酸ナトリウムバッファーを約10mMの濃度で含有し、そのpHが約5.5である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
上記界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項60〜76の何れかに記載の方法。
【請求項78】
上記再構成された組成物中の上記界面活性剤の濃度が、該再構成された組成物の全体積の約0.002%〜約0.1%である、請求項77記載の方法。
【請求項79】
上記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
上記再構成された組成物中のポリソルベート20の濃度が、該再構成された組成物の全体積の約0.01%である、請求項79記載の方法。
【請求項81】
上記再構成された組成物中の抗凍結剤の濃度が、該再構成された組成物の全体積の約0.1%〜約3%である、請求項60〜80の何れかに記載の方法。
【請求項82】
上記抗凍結剤がスクロースである、請求項81記載の方法。
【請求項83】
上記再構成された組成物中のスクロースの濃度が、該再構成された組成物の全体積の約0.5%である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
上記再構成された組成物中の充填剤の濃度が、約50mM〜約500mMである、請求項60〜83の何れかに記載の方法。
【請求項85】
上記充填剤がグリシンである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
上記再構成された組成物中のグリシンの濃度が、約250mMである、請求項85記載の方法。
【請求項87】
上記組成物が、ヒトの静脈内、腹腔内、あるいは腫瘍内に投与される、請求項28〜37または請求項60〜86の何れかに記載の方法。
【請求項88】
(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)等張化させる量の塩化ナトリウム、および(iv)水、を含有しており、pHが約5〜6である、組成物。
【請求項89】
(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)等張化させる量の塩化ナトリウム、および(iv)水、を含有しており、pHが約5〜6である組成物を、ヒトに投与する工程を含み、
その結果該抗体が細胞の表面に結合し、メイタンシノイドの細胞毒性が活性化され、これによって細胞を死滅させる、ヒトにおいて細胞を死滅させる方法。
【請求項90】
(i)メイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含有する治療に効果的な量の複合体、(ii)緩衝剤、(iii)抗凍結剤、および(iv)充填剤、を含有しており、水で再構成したときのpHが約5〜6である、凍結乾燥された組成物。


【公表番号】特表2007−533631(P2007−533631A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533133(P2006−533133)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015376
【国際公開番号】WO2004/110498
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(502116335)イムノゲン インコーポレーティッド (8)
【Fターム(参考)】