説明

薬包中の薬剤個数計数装置

【課題】薬包に表示された文字や図形等からなる情報識別部の大きさによることなく、確実に薬包中の薬剤個数を計数可能な薬包内の薬剤個数計数装置を提供する。
【解決手段】近赤外光を透過させるシートを重ね合わせた状態で周辺が封止されてなる袋部を有する薬包であって、前記シートに近赤外光を透過させる情報識別部を含む薬包、の前記袋部に封入された複数の薬剤の個数を計数する薬包内の薬剤個数計数装置において、前記薬包のシート面に向かって近赤外光を照射する照明部と、前記薬包を透過した前記近赤外光を受光する位置に配置されて前記薬包を撮像する撮像部と、前記撮像部からの濃淡画像に基づいて前記薬剤の個数を計数する薬剤計数手段とを備え、前記撮像部は、その受光部に可視光カットフィルタを備え、前記可視光カットフィルタは、可視光が前記薬包で反射される反射光の前記撮像部への入射を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬包内に封入された薬剤の個数を自動的に計数する薬包内の薬剤個数計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院の薬局や調剤薬局等では患者が一度に服用すべき複数種類の錠剤等からなる薬剤を、例えば公知の自動分包装置を用いて一つの薬包に封止して提供する一袋化が行われる。その際、封入された薬剤の個数を計数して個数が異常な薬包を排除することは、患者に処方箋通りの薬剤を提供する観点から極めて重要である。
【0003】
そのため、例えばCCDカメラで薬包を撮像し、その画像処理を行うことにより薬包中の薬剤の個数を自動的に計数する薬剤検査装置が提案されてきた。
【0004】
ところが、薬包には、例えば患者名や月日等の文字或いは各種の図形が表示されることが多く、これらの文字や図形等の画像が薬剤個数の計数の際の妨げになるという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために様々な提案がされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−200770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、光透過性の薬袋内に封入された複数の錠剤の個数を検出する錠剤検査システムであって、薬袋を裏面から照明する照明手段を配置し、検査位置の薬袋を撮影する撮像手段と、撮像手段から得られる画像を処理して薬袋内の錠剤の個数をカウントする画像認識処理手段を備え、その画像認識処理手段は、撮像手段からの濃淡画像を2値化する手段と、2値化された画像に対して収縮及び膨張からなるノイズ除去処理を施す手段とを具え、薬包表面の印刷部の文字や、他のノイズを画像から除去する錠剤検査システムが開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1によれば、上述したノイズ除去処理を施して薬包表面の印刷部の文字等を除去する際に、例えば文字と同等の大きさの画像の錠剤の場合、その錠剤の画像も除去される虞があるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1によれば、例えば2回ずつ収縮及び膨張からなるノイズ除去処理を施すものであるため、例えばある程度小さいサイズの文字画像は除去できるが、大きなサイズの文字の場合には除去し難いという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬包に表示された文字や図形等からなる情報識別部の大きさによることなく、確実に薬包中の薬剤個数を計数可能とする薬包内の薬剤個数計数装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、近赤外光を透過させるシートを重ね合わせた状態で周辺が封止されてなる袋部を有する薬包であって、前記シートに近赤外光を透過させる情報識別部を含む薬包の前記袋部に封入された複数の薬剤の個数を計数する薬包内の薬剤個数計数装置において、前記薬包のシート面に向かって近赤外光を照射する照明部と、前記薬包を透過した前記近赤外光を受光する位置に配置されて前記薬包を撮像する撮像部と、前記撮像部からの濃淡画像に基づいて前記薬剤の個数を計数する薬剤計数手段とを備え、前記撮像部は、その受光部に可視光カットフィルタを備え、前記可視光カットフィルタは、可視光が前記薬包で反射される反射光の前記撮像部への入射を防止する、薬包内の薬剤個数計数装置である。
【0012】
請求項2の発明は、近赤外光を透過させるシートを重ね合わせた状態で周辺が封止されてなる袋部を有する薬包であって、前記重ね合ったシートのうち一方のシートに情報識別部を含む薬包の前記袋部に封入された複数の薬剤の個数を計数する薬包内の薬剤個数計数装置において、前記一方のシートを下方に向けた状態で所定高さに配置された前記薬包の下方から、前記薬包に向かって近赤外光を照射する照明部と、前記薬包を透過した前記近赤外光を受光する位置に配置され、異なる撮像位置から前記薬包を撮像する第1及び第2のステレオ撮像部と、前記第1及び第2のステレオ撮像部からの濃淡画像に基づき、それぞれの前記撮像位置から同じ被写体を見た場合の視差を利用して前記被写体までの距離を取得する距離取得手段と、前記距離に基づいて前記情報識別部の画像を除去する画像除去手段と、前記除去後の濃淡画像に基づいて前記薬剤の個数を計数する薬剤計数手段とを備え、前記第1及び第2のステレオ撮像部は、それぞれの受光部に可視光カットフィルタを備え、前記可視光カットフィルタは、可視光が前記薬包で反射される反射光の前記第1及び第2のステレオ撮像部への入射を防止する、薬包内の薬剤個数計数装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、近赤外光を透過させるシートを重ね合わせた状態で周辺が封止されてなる袋部を有する薬包であって、前記シートに近赤外光を透過させる情報識別部を含む薬包の前記袋部に封入された複数の薬剤の個数を計数する薬包内の薬剤個数計数装置において、前記薬包のシート面に向かって近赤外光を照射する照明部と、前記薬包を透過した前記近赤外光を受光する位置に配置されて前記薬包を撮像する撮像部と、前記撮像部からの濃淡画像に基づいて前記薬剤の個数を計数する薬剤計数手段とを備え、前記撮像部は、その受光部に可視光カットフィルタを備え、前記可視光カットフィルタは、可視光が前記薬包で反射される反射光の前記撮像部への入射を防止する構成であるから、撮像部に向かう光に、可視光が薬包で反射されてなる反射光成分が含まれている場合であっても、フィルタ部によってその反射光成分を減衰させることにより情報識別部の画像の影響を低減させることで、近赤外光による薬剤のシルエット画像のみを取得可能とするので、薬包に表示された文字や図形等からなる情報識別部の大きさによることなく、確実に薬包中の薬剤個数を計数可能な薬包内の薬剤個数計数装置を提供できる。
【0014】
また、近赤外光を透過させるシートを重ね合わせた状態で周辺が封止されてなる袋部を有する薬包であって、前記重ね合ったシートのうち一方のシートに情報識別部を含む薬包の前記袋部に封入された複数の薬剤の個数を計数する薬包内の薬剤個数計数装置において、前記一方のシートを下方に向けた状態で所定高さに配置された前記薬包の下方から、前記薬包に向かって近赤外光を照射する照明部と、前記薬包を透過した前記近赤外光を受光する位置に配置され、異なる撮像位置から前記薬包を撮像する第1及び第2のステレオ撮像部と、前記第1及び第2のステレオ撮像部からの濃淡画像に基づき、それぞれの前記撮像位置から同じ被写体を見た場合の視差を利用して前記被写体までの距離を取得する距離取得手段と、前記距離に基づいて前記情報識別部の画像を除去する画像除去手段と、前記除去後の濃淡画像に基づいて前記薬剤の個数を計数する薬剤計数手段とを備え、前記第1及び第2のステレオ撮像部は、それぞれの受光部に可視光カットフィルタを備え、前記可視光カットフィルタは、可視光が前記薬包で反射される反射光の前記第1及び第2のステレオ撮像部への入射を防止する構成であるから、撮像部に向かう光に、可視光が薬包で反射されてなる反射光成分が含まれている場合であっても、フィルタ部によってその反射光成分を減衰させることにより情報識別部の画像の影響を低減させるとともに、情報識別部が近赤外光を透過させない場合ないしは情報識別部における近赤外光の透過率が低い場合であっても、薬剤の高さより低い位置にある情報識別部の画像を画像除去手段で除くことにより、近赤外光による薬剤のシルエット画像のみを取得可能とするので、薬包に表示された文字や図形等からなる情報識別部の大きさによることなく、確実に薬包中の薬剤個数を計数可能な薬包内の薬剤個数計数装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薬包内の薬剤個数計数装置を説明する一部断面説明図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る薬包内の薬剤個数計数装置における画像例及び比較画像例を説明する図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る薬包内の薬剤個数計数装置を説明する一部断面説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態における画像除去手段の考え方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る薬包内の薬剤個数計数装置について図を用いて説明する。
以下の説明において、薬剤とは、有効成分等を圧縮成形したタブレット剤並びに粉末状の薬剤をカプセルに封入したカプセル剤等を示す。
また、以下の説明において、近赤外光とは、略0.7μm〜2.5μmの波長の光を意味する。
また、以下の説明において、情報識別部とは、印刷や筆記により薬包に表された文字或いは図形等を意味する(図2参照)。
【0017】
まず、本発明の第1実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置10について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本実施形態の薬剤個数計数装置10を説明する一部断面説明図である。図2は、図1のA−A矢視図である。図3は、本実施形態に係る薬包内の薬剤個数計数装置10における画像例及び比較画像例を説明する図である。
【0018】
本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置10の説明の前に、本実施形態における薬包12及び情報識別部について説明する。
本実施形態の薬包12は、一般の病院や調剤薬局等で薬剤を封入するために使用される公知の袋であり、上述した薬剤を封入する袋部15を有する。袋部15は、上側シートと下側シートとを重ね合わせた状態で周辺が封止されて形成される。具体的には、図1及び図2に示すように、例えば略正方形状の上側シート13と下側シート14を重ね合わせ、その周辺を圧着や溶着させて封止し袋部15が形成されている。この上側シート13並びに下側シート14はポリエチレン、ポリプロピレン或いはポリエチレンテレフタレート等の近赤外光を透過させる合成樹脂材料からなる透明もしくは半透明のシートで形成される。
そして、重ね合った上側シート13と下側シート14のうち一方のシートである下側シート14に後述する情報処理部を含む。
このように形成される薬包12の袋部15内に、図1及び図2に示すように、薬剤としての例えばカプセル剤1、タブレット剤2、タブレット剤2よりやや小さいタブレット剤3が封入されている。
なお、図2において符号7は、薬包12の表面に可視光が当たって乱反射し、薬包の表面でも特に明るく(輝度が高く)なっている高輝度領域を示す。
また、薬包の形状は本実施系形態の略正方形状に限らず長方形状であってもよい。また、薬包12は、例えば長方形状のシートを、その長辺の略中央で折曲して重ね合わせた状態で、前記折曲辺を除いた3辺を封着させたものでもよい。
【0019】
次に、本実施形態の情報識別部は、図2に示すように、例えば図形16やアルファベット文字18からなる。これらの情報識別部(16,18)は、下側シート14に、近赤外光透過性を有する公知のインキ組成物を印刷してなる。発明者は、一般に流通している薬包に用いられる様々な種類のシートを鋭意調査し、これらのシートに印字されている文字や図形部分は大部分が近赤外光を透過することや、病院等で用いられる自動分包装置に用いられるプリンタの印字等も近赤外光を透過するものが多いことを把握した。
なお情報識別部は、青、緑、赤等の様々の色を備えていてもよいし、黒色であってもよいが、近赤外光の透過率は10%以上あることが望ましい。その理由については後述する。
また、情報識別部(16,18)は、本実施形態の下側シート14に限るものではなく、上側シート13又は下側シート14のいずれか一方に含まれていればよい。
【0020】
ここで、本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置10について説明する。本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置10は、図1に示すように、照明部20と、撮像部30と、画像処理部38と、モニタ42とを備える。なお、図1において照明部20は、断面図で表される。
本実施形態の照明部20は、図1に示すように、複数の光源22と、フレーム26と、拡散板24とを備える直下型バックライトよりなる。
フレーム26は、図1及び図2に示すように、天井部28が開口した直方体状の箱体よりなる。
光源22は、例えば850μmをピークとした近赤外光を発光するLEDランプで構成され、図1に示すように、フレーム26の底部側に収容され、天井部28に向けて近赤外光Iを照射する。光源22は、LEDランプに限らず例えば半導体レーザであってもよい。このように光源22から発光する光を近赤外光としたのは、一般的に近赤外光は透過率が高いため、例えば可視光を用いる場合に比べて、透過像の観察を容易に行うことができるからである。
拡散板24は光源22からの光を透過拡散させる略平坦な薄板からなり、フレーム26の天井部28を施蓋するよう設けられている。拡散板24の材質は特に限定されないが、透過光拡散機能に優れたものが良く、具体的には白色系(乳白色)のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂等が好ましい。
【0021】
そして照明部20は、シート面に向かって近赤外光Iを照射する。具体的には、図1に示すように、拡散板24を略水平にしてその上に薬包12を載置しているので、照明部20は、薬包12の略垂直下方に配置され、シート(14)面に向かって近赤外光Iを照射する。
本実施形態の様に、拡散板24の上に薬包12を直接載置しなくても、例えば近赤外光を透過させる材料で形成されたベルトコンベヤ上に薬包12を載置して薬包12を水平搬送し、そのコンベヤベルトの下方の所定位置に照明部20を配置する構成であってもよい。
【0022】
次に、本実施形態の撮像部30は、例えばCCDイメージセンサ或いはCMOSイメージセンサ等の受光素子(図示せず)を備えるデジタルカメラからなる。なお受光素子は近赤外光に感度が高いものが好ましい。
また撮像部30は、図1に示すように、その先端の受光部34に可視光カットフィルタ32を装着している。本実施形態の可視光カットフィルタ32は、近赤外光は減衰させないものの可視光領域(例えば360μm〜750μm)の光を減衰させる光学フィルタよりなり、受光素子への可視光の入射を防止している。
【0023】
そして撮像部30は、薬包12を透過した近赤外光Iを受光する位置に配置されて薬包12を撮像する。具体的には、図1に示すように、照明部20と対向する上方位置に配置されて薬包12を透過した近赤外光Iを受光して薬包12を撮像する。
撮像部30の位置は、照明部20の上方に限るものではなく、薬包12を透過した近赤外光を受光できる位置であれば、照明部20の向きや薬包12の姿勢に応じた任意の位置に配置することができる。撮像部30で撮像した画像については後述する。
【0024】
次に、画像処理部38は、CPU(図示せず)や画像メモリ(図示せず)等を備え、薬剤計数手段として機能する。
具体的には、画像処理部38は、撮像部30から原画像である濃淡画像を取得する。そして、画像処理部38は、例えば所定の閾値によって情報処理部の画像を前記濃淡画像から除く2値化処理や、公知のラベリング処理等の画像処理を実行し薬剤の個数を計数する。すなわち、画像処理部38は、撮像部30からの濃淡画像に基づいて薬剤1,2,3の個数を計数する薬剤計数手段として機能する。
また、画像処理部38は、前記画像処理の過程をモニタ42に映し出す。
【0025】
次に、本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置10の動作例について説明する。
まず、図1に示すように、カプセル剤1やタブレット剤2,3が封入された薬包12を、下側シート14を下方に向けた状態で照明部20、より詳しくは拡散板24上に載置する。
次に、照明部20から近赤外光Iを薬包12に照射すると薬包12を透過した近赤外光Iを撮像部30が受光し薬包12を撮像する。
【0026】
ここで撮像部30が取得する画像について図3(a)及び図3(b)を参照して説明する。図3(a)は、本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置10における画像例を示し、図3(b)は、可視光カットフィルタ32を装着していない比較画像例を示す。
近赤外光Iはシート(13,14)を透過するものの、厚みを有する薬剤1,2,3を透過しないので、撮像部30が取得する画像は、図3(a)及び図3(b)に示すように、薬剤部分の画像4,5,6の輝度より、近赤外光を透過させるその他の薬包部分の画像36の輝度が高い濃淡画像となる。なお、図3(a)及び図3(b)において、符号4はカプセル剤1の画像、符号5はタブレット剤2の画像、符号6は、タブレット剤3の画像を示す。
【0027】
ところが、一般の調剤薬局などの可視光環境下で薬包12を撮像すると、図1示すように、可視光が薬包12によって反射される反射光Rが撮像部30に入射する。したがって、可視光カットフィルタ32を撮像部30に備えていない場合、撮像部30で得られる濃淡画像は、図3(b)に示すように、近赤外光の透過画像による濃淡画像に加えて、反射光Rによる図形画像17、文字画像19及び上述した高輝度領域7に対応する画像21も含まれる。図3(b)において符号17は、図形16の反射光Rによる画像を示し、符号19はアルファベット文字18の反射光Rによる画像を示す。そうすると、例えばこれらの識別情報部の画像17,19と薬剤の画像(4)が重なった場合に、薬剤の画像(4)を誤って認識してしまい、薬剤個数の計数の精度が低下するという問題や、上述した画像21の影響で2値化のための閾値設定が困難になるという画像処理上の問題が生じる。
【0028】
これに対して、可視光カットフィルタ32を撮像部30に備えることで、撮像部30で得られる濃淡画像を、近赤外光による透過画像(薬包のシルエット画像)のみで形成できる。すなわち撮像部30で得られる濃淡画像は、図3(a)に示すように、上述した反射光Rによる識別情報部の画像17,19及び高輝度領域7に対応する画像21を含まない濃淡画像とすることができる。
【0029】
次に、薬剤計数手段としての画像処理部38が、撮像部30から濃淡画像を取得し、この画像に基づき、上述した2値化処理によって近赤外光による薬剤のシルエット画像(図3(a))のみを取得し、さらに前記シルエット画像に基づいてラベリング処理等の画像処理を実行して薬剤の個数を計数する。
このように本実施系形態の薬包内の薬剤個数計数装置10によれば、薬包12に表示された情報識別部の影響を確実に排除でき、薬包中の薬剤個数を精度高く計数できるのである。
【0030】
次に、情報識別部の近赤外光の透過率は10%以上あることが望ましいとした理由について述べる。
薬包を形成するシート(13,14)の近赤外光の透過率を略100%とし、情報識別部における近赤外光の透過率が10%より小さくなればなるほど、撮像部30で取得した濃淡画像において、情報識別部の画像の輝度と薬剤の画像の輝度とが近くなる。そうすると、図3(a)に示すような、薬剤の画像(4,5、6)と薬包部分の画像36とに2値化するための所定の閾値、すなわち前記原画像から情報識別部の画像を除くための閾値を見出すことが困難になるからである。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置50について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る薬包内の薬剤個数計数装置50を説明する一部断面説明図である。図5は、本実施形態における画像除去手段の考え方の説明図である。
第1実施形態との主な相違点は、薬包12を複数の異なる撮像位置から撮像し、薬剤と情報識別部との高さの違いを利用して情報識別部の画像を除く点である。図4及び図5において、第1実施形態と同じ部材は同じ符号を付してその説明を省略する。また、本実施形態において、文字や図形等の情報識別部は、薬包12の下側シートにのみ含まれる。
【0032】
本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置50は、図4に示すように、照明部20と、第1及び第2のステレオ撮像部51,52と、画像処理部60と、モニタ42とを備える。
【0033】
本実施形態の照明部20は、図4に示すように、拡散板24を上方に向けた状態で所定の高さ位置に配置される。そして、薬包12は、下側シート14を拡散板24に向けた状態で拡散板24の上に載置される。すなわち、照明部20は、一方のシートである下側シート14を下方に向けた状態で所定高さに配置された薬包12の下方から、下側シート14面に対して略垂直方向に近赤外光を照射する構成となっている。
本実施形態の様に、拡散板24の上に薬包12を直接載置しなくても、例えば近赤外光を透過させる材料で形成された略平坦なベルトコンベヤ上に薬包12を載置して薬包12を所定の高さで水平搬送し、そのコンベヤベルトの下方の所定位置に照明部20を配置する構成であってもよい。
【0034】
次に、第1及び第2のステレオ撮像部51,52は、それぞれ第1実施形態の撮像部30と同じデジタルカメラで構成される。
より詳しくは本実施形態の第1及び第2のステレオ撮像部52は、それぞれが同じ焦点距離を有するデジタルカメラで構成される。そして、図4に示すように、照明部20の上方の所定の高さで所定距離dだけ水平方向に離隔させて配置され、近赤外光Iを受光して薬包12を撮像する。すなわち、第1及び第2のステレオ撮像部51,52は、前記薬包を透過した近赤外光Iを受光する位置に配置され、異なる撮像位置から薬包12を撮像する構成となっているのである。
【0035】
そして、第1及び第2のステレオ撮像部51,52は、図4に示すように、可視光カットフィルタ32をそれぞれの受光部34に備える。
【0036】
次に、画像処理部60は、第1実施形態の画像処理部38と同様に、CPU(図示せず)や画像メモリ(図示せず)等を備え、第1及び第2のステレオ撮像部51,52から濃淡画像等を取得する。
そして、画像処理部60は、距離取得手段として機能し、いわゆるステレオ方式による画像処理を実行して被写体までの距離を求める処理を実行する。具体的には、第1及び第2のステレオ撮像部51,52のそれぞれの撮像位置から同一被写体(薬剤や情報識別部)を見た場合に生じる視差から、第1の及び第2のステレオ撮像部52の取り付け位置や焦点距離等のカメラパラメータを用いて三角測量の原理により、例えば第1のステレオ撮像部51の焦点から被写体(薬剤や情報識別部)までの距離を求める。
【0037】
次に、画像処理部60は、その求めた距離に基づいて、図5に示すように、第1のステレオ撮像部51の焦点の高さを基準の高さZとし、基準の高さZから被写体(薬剤や情報識別部)まの垂直距離A,B,C,Dを求める。図5において、Aは基準の高さZからタブレット剤3の略上端部までの垂直距離、Bは基準の高さZから識別情報部(文字、図形)までの垂直距離、Cは基準の高さZからタブレット剤2の略上端部までの垂直距離、Dは基準の高さZからカプセル剤1の略上端部までの垂直距離を示す。
【0038】
その際、公知の3次元復元技術を用いて薬剤及び情報識別部を3次元仮想空間に復元させ、その3次元仮想空間において第1のステレオ撮像部51の焦点から被写体(薬剤や情報識別部)までの距離を求めてもよい。
例えば、基準となる図形が表示されたキャリブレーション治具を所定の位置に配置し、第1及び第2のステレオ撮像部52のそれぞれで前記キャリブレーション治具を撮像した基準画像や、上記カメラパラメータ等をあらかじめ前記画像メモリに記憶させる。次に、薬包12を撮像して得られた薬剤の画像、情報識別部の画像、前記基準画像及びカメラパラメータ等に基づいて薬剤及び情報識別部を3次元仮想空間に復元させるのである。
そして、距離取得手段(画像処理部60)は、図5に示すように、例えば第1のステレオ撮像部51の焦点の高さを基準の高さZとし、その基準の高さZから被写体(薬剤や情報識別部)までの垂直距離を求める。
【0039】
また、画像処理部60は、画像除去手段として機能し、上述のようにして求めた垂直距離に基づいて、薬剤、情報識別部を含む濃淡画像から、情報識別部の画像を除去する処理を実行する。
より詳しく説明すると、薬包12の下側シート14は、図4及び図5に示すように、拡散板24と略同じ所定の高さに配置されている。そうすると、基準の高さZから被写体である情報識別部までの垂直距離Bは、基準の高さZから拡散板24までの垂直距離Eと略等しくなる。したがって、画像除去手段は、距離取得手段が求めた被写体までの垂直距離が垂直距離Eを中心とした所定の範囲内か否かを判断し、所定の範囲内に入っていると判断した場合に、その被写体の画像を濃淡画像から除去する処理を行うことで、情報識別部の画像を濃淡画像から除去するのである。
【0040】
さらに、画像処理部60は、画像除去手段によって情報識別部の画像が除去された濃淡画像に基づいて、例えば上述した2値化処理や公知のラベリング処理等の画像処理を実行し薬剤の個数を計数する薬剤計数手段として機能する。
【0041】
このように、本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置50によれば、例えば近赤外光の情報識別部の透過率が10%より小さいために、情報識別部(文字や図形)が近赤外光を殆ど透過させない場合であっても、情報識別部の画像を確実に除去することができる。
その際、図4に示すように、下側シート全体を拡散板24の表面に当接させる態様で載置することが望ましい。薬剤1,2,3の上端部より情報識別部を下側に配置するためである。
また、本実施形態において、基準の高さZを第1のステレオ撮像部51の焦点の高さとして説明したが、これに限らず例えば拡散板24の上面の高さを基準の高さに設定してもよい。
【0042】
これまで説明したように本実施形態の薬包内の薬剤個数計数装置10,50によれば、薬包12に表示された文字や図形等からなる情報識別部の大きさによることなく、確実に薬包中の薬剤個数を計数可能な薬包内の薬剤個数計数装置を提供できる。
【0043】
以上、本発明の実施形態のうちいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3 薬剤
10,50 薬包内の薬剤個数計数装置
12 薬包
13 上側シート
14 下側シート
15 袋部
16 図形(情報識別部)
18 文字(情報識別部)
20 照明部
30 撮像部
32 可視光カットフィルタ
34 受光部
38 画像処理部(薬剤計数手段)
51,52 第1及び第2のステレオ撮像部
60 画像処理部(距離取得手段,画像除去手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外光を透過させるシートを重ね合わせた状態で周辺が封止されてなる袋部を有する薬包であって、前記シートに近赤外光を透過させる情報識別部を含む薬包の前記袋部に封入された複数の薬剤の個数を計数する薬包内の薬剤個数計数装置において、
前記薬包のシート面に向かって近赤外光を照射する照明部と、
前記薬包を透過した前記近赤外光を受光する位置に配置されて前記薬包を撮像する撮像部と、
前記撮像部からの濃淡画像に基づいて前記薬剤の個数を計数する薬剤計数手段とを備え、
前記撮像部は、その受光部に可視光カットフィルタを備え、
前記可視光カットフィルタは、可視光が前記薬包で反射される反射光の前記撮像部への入射を防止することを特徴とする薬包内の薬剤個数計数装置。
【請求項2】
近赤外光を透過させるシートを重ね合わせた状態で周辺が封止されてなる袋部を有する薬包であって、前記重ね合ったシートのうち一方のシートに情報識別部を含む薬包の前記袋部に封入された複数の薬剤の個数を計数する薬包内の薬剤個数計数装置において、
前記一方のシートを下方に向けた状態で所定高さに配置された前記薬包の下方から、前記薬包に向かって近赤外光を照射する照明部と、
前記薬包を透過した前記近赤外光を受光する位置に配置され、異なる撮像位置から前記薬包を撮像する第1及び第2のステレオ撮像部と、
前記第1及び第2のステレオ撮像部からの濃淡画像に基づき、それぞれの前記撮像位置から同じ被写体を見た場合の視差を利用して前記被写体までの距離を取得する距離取得手段と、
前記距離に基づいて前記情報識別部の画像を除去する画像除去手段と、
前記除去後の濃淡画像に基づいて前記薬剤の個数を計数する薬剤計数手段とを備え、
前記第1及び第2のステレオ撮像部は、それぞれの受光部に可視光カットフィルタを備え、
前記可視光カットフィルタは、可視光が前記薬包で反射される反射光の前記第1及び第2のステレオ撮像部への入射を防止することを特徴とする薬包内の薬剤個数計数装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−29702(P2012−29702A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161240(P2010−161240)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【特許番号】特許第4652480号(P4652480)
【特許公報発行日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(501339458)オオクマ電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】