説明

薬液塗布装置および薬液塗布方法

【課題】 薬液の使用効率を向上させ、貼付剤の製造コストを低減させることができるとともに、歩留まりを向上させることができる薬液塗布装置および薬液塗布方法を提供する。
【解決手段】 (+X)方向に移動する基材72に向けて薬剤を含む薬液を液滴として吐出するとともに、Y方向に沿って配列された複数のノズルを有する吐出部10と、吐出部10によって吐出され基材72の表面に付着した薬液に向けて気体を供給して、当該薬液を基材72の表面に沿った方向に流動させる気体供給部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布対象とする媒体への薬液塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に貼着して使用される貼付剤には種々の形態が存在するものの、一般には樹脂シートなどの媒体(基材)上に薬剤を含む薬液を塗布したものである。従来より、このような貼付剤は、基材の面上に薬液を展延塗布(いわゆるベタ塗り)して製造され、その塗布工程にはバーコーターやダイコーターなどが用いられている(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、帯状の基材に薬剤を展延塗布し、そこから必要な部分を打ち抜くとともに、不要な部分を除去して個々の貼付剤が製造される(例えば、特許文献2,3参照)。
【0003】
しかしながら、このような貼付剤の製造技術では、不要部分に塗布されていた高価な薬液も除去されることになるため、薬液の使用効率が悪く、貼付剤の製造コストを低減させることができない、という問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−108006号公報
【特許文献2】特開2006−223611号公報
【特許文献3】特開平3−85160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、基材への塗布手段として、例えば液滴ジェット方式のように、必要部分に対して塗布液を効率的に塗布可能な手法を採用することができれば、薬剤を効率的に塗布することができ、薬剤の製造コストの低減を図ることが可能になる。
【0006】
しかしながら、上記液滴ジェット方式では、吐出ヘッドにおいて塗布液の液滴を吐出するノズルが多数設けられているが、これらのノズルの一部が目詰まり等によって不吐出となる可能性がある。このようにノズルの一部に不吐出が発生した吐出ヘッド(吐出部)によって、薬液を基材上に塗布すると、基材上の必要部分内において薬液が塗布されない塗布欠陥が発生する。
【0007】
上述のような塗布欠陥が発生している貼付剤は、美観が損なわれているなどの理由によって不良品となり、歩留まりが低下するという問題が発生する。
【0008】
本発明の目的は、上述のような点に鑑み、薬液の使用効率を向上させ、貼付剤の製造コストを低減させることができるとともに、歩留まりを向上させることができる薬液塗布装置および薬液塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明(薬液塗布装置)は、第1方向に相対移動する基材に向けて薬剤を含む薬液を液滴として吐出するとともに、第1方向と交差する第2方向に沿って配列された複数のノズルを有する吐出部と、吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液に向けて気体を供給して、当該薬液を基材の表面に沿った方向に流動させる気体供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る薬液塗布装置において、吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液の塗布状態を検出する状態検出手段と、状態検出手段による検出結果に基づいて、気体供給手段から気体を供給するか否かを制御する制御手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明(薬液塗布方法)は、第1方向に相対移動する基材に向けて、第1方向と交差する第2方向に沿って配列された複数のノズルを有する吐出部から薬剤を含む薬液を吐出する薬液吐出工程と、吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液に向けて気体を供給して、当該薬液を基材の表面に沿った方向に流動させる気体供給工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る薬液塗布方法において、薬液吐出工程後、気体吐出工程に先立って、吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液の塗布状態を検出する状態検出工程をさらに含み、状態検出工程による検出結果に基づいて、気体供給工程を実行するか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1から請求項4のいずれかに係る発明によれば、薬液の使用効率を向上させ、貼付剤の製造コストを低減させることができるとともに、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る薬液塗布装置1aの要部構成の概略を示す図である。
【図2】吐出部10の側断面図(a)および底面図(b)である。
【図3】第1実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【図4】各動作の様子を示す上面図(a)および正面図(b)である。
【図5】第2実施形態に係る薬液塗布装置1bの要部構成の概略を示す図である。
【図6】第2実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1. 第1実施形態>
図1は、本発明に係る薬液塗布装置1aの要部構成の概略を示す図である。薬液塗布装置1aは、貼付剤とすべき帯状の基材の片面に薬液を塗布する装置である。図1において二点鎖線に囲まれた範囲が薬液塗布装置1aを示し、薬液塗布装置1aは予め粘着剤が塗られた帯状の基材72に薬剤を含む薬液を塗布する。
【0016】
薬液塗布装置1aは、基材ロール70から巻き出され、水平方向(+X方向)に沿って搬送される帯状の基材72に向けて、薬剤を含む薬液を液滴として吐出する複数のノズル12(図2)を有する吐出部10を備える。また、薬液塗布装置1aは、吐出部10によって吐出され基材72の表面に付着した薬液に向けて気体を供給して、当該薬液を基材72の表面に沿った方向に流動させる気体供給部30を備える。さらに、薬液塗布装置1aは、装置に設けられた各要素を制御する制御部40を備える。なお、薬液塗布装置1aの下流側(+X側)には、薬液塗布装置1aにより基材72に塗布された薬液を乾燥させる乾燥ユニット60が設けられている。
【0017】
薬液を担持する基材72は、薬液に対する不透過性を有する樹脂材料にて形成されており、PET(ポリエチレンテレフタレート)にて形成されている。なお、基材72はPP(ポリプロピレン)またはPE(ポリエチレン)にて形成されていても良い。
【0018】
吐出部10は薬剤を含む薬液を微滴化して微小液滴を生成し、その液滴を(+X)方向に搬送される基材72の上面に吹き付ける。吐出部10は、液滴ジェット方式によって薬液を噴出する液滴ジェットヘッドであり、本実施形態では駆動方式が積層ピエゾドロップオンデマンド方式のインクジェットヘッド(例えば、リコープリンティングシステムズ株式会社製の製品型名「GEN3E2」)を用いている。なお、液滴ジェット方式(液滴吐出方式)は、他の方式を採用しても良い。
【0019】
吐出部10の内部構造は、例えば特開2009−23334号公報に開示される構造と同様のものである。図2(a)は吐出部10の内部構成を示す側断面図であり、図2(b)は吐出部10の底面図である。
【0020】
図2(a)に示すように、吐出部10は、共通液室84を形成したフレーム81と、加圧液室85および連通口88を形成した流路板86と、ノズル12を形成するノズル板87と、ダイヤフラム部83aを有する振動板83と、振動板83のダイヤフラム部83aに接合された積層圧電素子82と、積層圧電素子82を固定するベース80と、を備えている。
【0021】
ベース80は、吐出部10に固定設置されており、積層圧電素子82が装着される。積層圧電素子82は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電素子(ピエゾ素子)を複数積層したものである。振動板83は、ダイヤフラム部83aを有しており、そのダイヤフラム部83aが島状凸部を介して積層圧電素子82と接合されている。
【0022】
フレーム81は、樹脂材料にて形成されており、共通液室84を有する。共通液室84には、配管22(図1)と連通接続される図示省略の薬液供給口が形設されている。流路板86は、加圧液室85および連通口88を有する。加圧液室85は、振動板83の開口部を介して共通液室84と連通されている。加圧液室85には振動板83のダイヤフラム部83aが面している。また、連通口88は、加圧液室85とノズル12とを連通接続する。
【0023】
ノズル板87には、薬液の液滴を吐出するための微細な吐出口であるノズル12が穿設されている。ノズル12の内部形状はホーン形状とされている。図2(b)では数を少なく図示しているが、吐出部10は多数(例えば128個)のノズル12を所定ピッチで一列に配列して備えている。
【0024】
図2のような構成を備える吐出部10において、共通液室84から加圧液室85に薬液を充填しつつ、積層圧電素子82のピエゾ素子に所定の波形の電圧を印加して積層方向の変位を生じさせることにより、ダイヤフラム部83aを介して加圧液室85内の薬液が加圧されて液圧が上昇し、その結果ノズル12から薬液の液滴が吐出される。積層圧電素子82のピエゾ素子への電圧を印加するタイミングおよび印加電圧値は制御部40によって制御されている。すなわち、制御部40は、吐出部10からの薬液の吹き付けを制御する。なお、1つのノズル12から吐出される1つの液滴の量は例えば25plであり、ノズル配列ピッチは50μmである。
【0025】
図1に戻り、吐出部10には配管22を介して薬液タンク20が連通接続されている。配管22の経路途中にはフィルタ24および脱気部26が介挿されている。薬液タンク20は、常に一定量の薬液を貯留しており、調合タンク50から適宜薬液タンク20に薬液が配管52を介して補充される。
【0026】
ここで、薬液とは薬剤を含む液体である。本発明による貼付剤に用いられる薬剤は、特に限定されるものではないが、皮膚を通して投与し得るもの、すなわち経皮吸収可能な薬剤が好ましい。そのような薬剤として、より具体的には、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ビロキシカム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l‐メントール、dl‐カンフル、ノニル酸ワリニリルアシド、カプサイシンなどの鎮痛消炎剤があげられる。また、ニトログリセリン、ニフェジピン、イソソルバイドナイトレートなどの冠血管拡張剤、または、プロカテロール、ツロブテロールなどの喘息薬を薬剤として使用しても良い。さらに、上記の他にも薬剤としては、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗てんかん薬、鎮暈薬、精神神経用薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、抗うつ用薬、禁煙補助薬(ニコチン)などを使用することができる。
【0027】
このような薬剤が溶媒中に溶解されて薬液とされている。溶媒としては、薬剤の性質に応じて、水、または、アルコールを用いることができる。なお、薬液には、基材72への密着性を高めるバインダー、および/または、添加剤がさらに含まれていても良い。
【0028】
薬剤が溶媒中に溶解された所定濃度の薬液が調合タンク50にて調合され、その薬液が調合タンク50から供給されて薬液タンク20に貯留される。薬液タンク20に貯留されている薬液は、吐出部10が薬液を噴出したときにノズル内に生じる毛管現象によって各ノズル12に送給される。薬液の送給過程において、配管22を流れる薬液から異物がフィルタ24によって除去され、気泡が脱気部によって除去される。
【0029】
薬液タンク20には、負圧ポンプ28が配管29を介して連通接続されている。負圧ポンプ28は、薬液タンク20から配管22を介して吐出部10に負圧を付与する。負圧ポンプ28は、吐出部10において積層圧電素子82が加圧液室85内の薬液を加圧する前に、ノズル12の先端付近に薬液のメニスカスを形成しておくためのものである。すなわち、連通口88からノズル12に供給された薬液は、そのままでは自重でノズル12の先端付近に液滴ジェット方式に適したメニスカスを形成できないため、負圧ポンプ28によって吐出方向とは逆向きの負圧を薬液に与えて薬液を若干ノズル12内に引き戻して適正なメニスカスを形成する。
【0030】
気体供給部30は吐出部10よりも基材72の搬送方向下流側(+X側)に設けられている。気体供給部30は、吐出部10によって吐出され基材72の表面に付着した薬液に向けて円形の吐出口から気体を供給して、当該薬液を基材72の表面に沿った方向に流動させる。気体供給部30は後述する塗布領域90(図4)に対応するようにY方向に並ぶ2箇所に設けられる。各気体供給部30は配管32を介して気体供給源33に連通接続されている。なお、気体供給部30を設ける箇所は2箇所に限定されず、例えば塗布領域90の数に応じて設ければ良い。
【0031】
制御部40は、薬液塗布装置1aに設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部40のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部40は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび処理プログラムやデータなどを記憶しておく固定ディスクをバスラインに接続して構成されている。RAMには、後述する塗布パターンが記憶されている。
【0032】
乾燥ユニット60は、薬液塗布装置1aの気体供給部30よりも基材72の搬送方向下流側(+X側)に設けられている。乾燥ユニット60は、その内側を通過する基材72に塗布されている薬液を乾燥させる。乾燥ユニット60としては、基材72の表面に常温のドライエアーまたは加熱したドライエアー(温風)を送風するものなど公知の種々の乾燥装置を用いることができる。また、乾燥ユニット60としては、単なる熱風(特段の除湿を行っていない)を供給する熱風乾燥炉や遠赤外線ヒータを用いた乾燥炉を用いるようにしても良い。
【0033】
次に第1実施形態の処理動作について、図3に示すフロー図を参照して説明する。
【0034】
基材ロール70から繰り出され、吐出部10の下方において(+X)方向に搬送される基材72に向けて、吐出部10に設けられた例えば128個のノズル12から薬液の微小液滴がそれぞれ吐出される(ステップS10、薬液吐出工程)。
【0035】
ステップ10において、制御部40は、RAMに記憶されている塗布パターンに従って吐出部10からの液滴吹き付けを制御する。具体的には、塗布パターンには基材72上に薬液を吹き付ける領域のパターンが記述されている。制御部40は、そのパターンを読み取って全てのノズル12についてオン/オフのタイミングを制御する。すなわち、ある領域に薬液を吹き付けるときには、その領域に対応するノズル12の積層圧電素子82に電圧を印加して当該ノズル12から薬液を噴出させる。
【0036】
例えば、ステップS10において、制御部40は、図4(a)に示すように、X方向に搬送される基材72上の塗布領域90に、Y方向に並んだ2個の円形パターン(塗布パターン)92を、X方向に間隔を空けて形成するように吐出部10を制御する。
【0037】
なお、塗布パターンは、演算により生成してRAMに記憶させるようにしても良いし、記録媒体から読み出してRAMに記憶させるようにしても良い。塗布パターンを演算により生成する際には、基材の大きさ、形状、吐出部10の解像度(ノズル配列ピッチ)、パターン形状を、いわゆるレシピデータとして入力装置(図示せず)から入力する。そして、このレシピデータに基づいてCPUが演算を行って塗布パターンを算出し、その演算結果をRAMに記憶させるようにすれば良い。
【0038】
ここで、128個のノズル12の一部が目詰まり等によって不吐出となった場合、図4に示すように、不吐出となったノズル12に対応する箇所に薬液が塗布されずX方向に筋状に延びる塗布欠陥94が塗布パターン92内に発生する。
【0039】
次にステップS30において、基材72上に付着した薬液によって形成された塗布パターン92に向けて気体供給部30が気体を供給する。気体供給部30から吐出された気体は、図4(b)に示すように基材72に向かいながら基材72の上面(表面)に沿った方向に広がる気流96を形成する。この気流96によって、基材72の上面に付着した薬液が基材72の表面に沿った方向に押されて若干、流動する。流動した薬液は塗布欠陥94を越えて、塗布欠陥94を挟んで対向する薬液と接液し、互いに一体となる。この結果、塗布欠陥94は薬液によって埋められて、塗布欠陥のない一様な塗布パターン92が形成される。
【0040】
薬液が塗布された基材72は、乾燥ユニット60に搬送されて薬液の乾燥処理が行われる。さらにその後、基材72に対して塗布パターン92を挟んで剥離ライナーが貼り合わされ、基材72および剥離ライナーが塗布パターン92より若干、大きいサイズに裁断されて貼付剤とされる。
【0041】
第1実施形態においては、液滴ジェット方式の薬液塗布装置1aによって薬剤を含む薬液を微滴化して液滴を生成し、その液滴を基材72の一部領域のみに吹き付けている。液滴ジェット方式の薬液塗布装置1aであれば、塗布パターンに従って薬液吹き付けのオン/オフを切り替えることが可能であり、容易に基材72の一部領域のみに薬液を塗布することができる。基材72の一部領域のみに薬液を塗布することができれば、後工程において不要部分に塗布されていたために無駄に除去される薬液を無くすことができ、薬液の使用効率を向上させることができる。
【0042】
また、液滴ジェット方式の薬液塗布装置1aであれば、薬液塗布の定量精度にも優れているため、医療用の貼付剤の製造に好適である。また、塗布パターンの設定を変更することによって自在にパターニングが可能である。さらには、塗布パターンの大きさを変更することによって塗布領域の大きさをも自在に調整することが可能である。また、薬液塗布装置1aは非接触にて薬剤を含む薬液を塗布するため、従来の展延塗布方式に比較して薬液塗布装置1aからのコンタミネーションを確実に防止することができる。
【0043】
第1実施形態の薬液塗布装置1aにより塗布処理が行われた貼付剤は、塗布欠陥のない一様な塗布パターン92からなる薬剤層を有するので、美観に優れており製品不良とはならない。この結果、貼付剤の製造における歩留まりを向上させることができる。
【0044】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態の貼付剤製造装置1bの要部構成の概略を示す図である。同図において、第1実施形態と同一の要素については同じ符号を付している。第2実施形態の薬液塗布装置1bが第1実施形態と相違するのは、カメラ54およびバルブ56を備え、制御部40がカメラ54により取得された画像データに基づいてバルブ56を制御する点である。その他の要素については第1実施形態と同一の符号が示すものは第1実施形態と同様の機能を有するので、その詳細な説明を省略する。
【0045】
カメラ54は、X方向における吐出部10と気体供給部30との間であって、基材72の上方に配置されている。バルブ56は、配管32に介装され、制御部40からの指示に従って配管32の流路を開閉する。なお、カメラ54および制御部40が本発明の状態検出手段に相当する。
【0046】
次に第2実施形態の処理動作について、図6に示すフロー図を参照して説明する。
【0047】
まず、第1実施形態と同様に、基材ロール70から繰り出され、吐出部10の下方において(+X)方向に搬送される基材72に向けて吐出部10に設けられた128個のノズル12から薬液の液滴をそれぞれ吐出して塗布パターン92を形成する(ステップS10、薬剤吐出工程)。なお、このときバルブ56は閉状態であり、気体供給部30から気体は供給されていない。
【0048】
次のステップS20では、ステップS10によって基材72上に形成された塗布パターン92(図4)を撮影して画像データを取得する。カメラ54は取得した画像データを制御部40に送信する。制御部40は、カメラ54から送信された画像データを処理して塗布パターン92の塗布状態、すなわち、塗布パターン92に塗布欠陥94が存在するか否かを検出する(状態検出工程)。ステップS20にて、塗布欠陥94が存在すると判定された場合(YESの場合)、ステップS30に移行する。ステップS20にて、塗布欠陥94が存在しないと判定された場合(NOの場合)、塗布処理を完了する。
【0049】
ステップS30において、制御部40がバルブ56を開けて、ステップS20によって塗布欠陥94が存在すると判定された塗布パターン92に向けて、気体供給部30が気体を供給する。第1実施形態と同様に、気体供給部30から供給された気体により、塗布欠陥94は薬液によって埋められて、塗布欠陥のない一様な塗布パターン92が形成される。
【0050】
第2実施形態によれば、塗布欠陥94が存在する塗布パターン92に対してのみ気体供給部30から気体が供給されるので、気体の使用量を削減することができて製造コストを低減させることができる。
【0051】
上記状態検出工程(ステップS20)において、その後の気体供給工程(ステップS30)によっても埋めることができないほど大きな塗布欠陥94が存在することを検出しても良い。この場合、制御部40は吐出部10等の異常であると判断して、操作者に異常を報知する。
【0052】
なお、上述の各実施形態を以下のように変形実施しても良い。
気体供給部30により気体を供給する方式は、上述のように円形の吐出口から気体を吐出するノズル方式に限定されず、例えばスリットノズル方式、整流板方式または拡散方式などの各種ノズル方式を用いても良い。また、1つの塗布パターン92に対して複数のノズル(気体供給部)を配置しても良い。気体を供給する方向も塗布パターン92の真上からに限定されず、例えば塗布パターン92を挟んで斜め上方に配置された2つのノズルからそれぞれ気体を供給する構成でも良い。
【0053】
形成すべき塗布パターンに応じて、吐出部10をY方向やX方向に複数、配置しても良い。また、Y方向におけるノズル12の配列ピッチを小さくするために、水平面内において吐出部10は斜めに配置しても良い。
【0054】
予め円形等に整形された基材をベルトコンベア等で水平搬送しつつ、当該基材に向けて吐出部10から薬液の微小液滴を吐出して、基材上に塗布パターンを形成しても良い。
【0055】
固定配置された基材に対して、ノズルの配列方向と交差する方向に吐出部を移動させつつ、基材に向けて吐出部から薬液の微小液滴を吐出して、基材上に塗布パターンを形成しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1a,1b 薬液塗布装置
10 吐出部
12 ノズル
30 気体供給部
40 制御部
54 カメラ
72 基材
92 塗布パターン
94 塗布欠陥
96 気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に相対移動する基材に向けて薬剤を含む薬液を液滴として吐出するとともに、第1方向と交差する第2方向に沿って配列された複数のノズルを有する吐出部と、
吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液に向けて気体を供給して、当該薬液を基材の表面に沿った方向に流動させる気体供給手段と、
を備えることを特徴とする薬液塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載される薬液塗布装置において、
吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液の塗布状態を検出する状態検出手段と、
状態検出手段による検出結果に基づいて、気体供給手段から気体を供給するか否かを制御する制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする薬液塗布装置。
【請求項3】
第1方向に相対移動する基材に向けて、第1方向と交差する第2方向に沿って配列された複数のノズルを有する吐出部から薬剤を含む薬液を吐出する薬液吐出工程と、
吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液に向けて気体を供給して、当該薬液を基材の表面に沿った方向に流動させる気体供給工程と、
を含むことを特徴とする薬液塗布方法。
【請求項4】
請求項3に記載される薬液塗布方法において、
薬液吐出工程後、気体吐出工程に先立って、吐出部によって吐出され基材の表面に付着した薬液の塗布状態を検出する状態検出工程をさらに含み、
状態検出工程による検出結果に基づいて、気体供給工程を実行するか否かを判断することを特徴とする薬液塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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