説明

薬液投与装置及び薬液投与装置の薬液充填方法

【課題】本発明は、使用者に煩雑な操作を行わせることなく、薬液貯蔵部に適切に薬液を充填しうる。
【解決手段】本発明は、薬液貯蔵部6の内部空間9を広げる方向に封止部材8を駆動させることにより、薬液貯蔵部6内を負圧にして薬液貯蔵部6に接続された薬液容器31から薬液貯蔵部6へ薬液を充填し、その後、薬液貯蔵部6の内部空間9を狭める方向に封止部材8を駆動させることにより、薬液貯蔵部6に充填された薬液に圧力をかけて薬液貯蔵部6の開口部6Bを通して薬液貯蔵部6内の空気を抜くので、使用者に、例えば注射器を用いて薬液を充填させたり、別途空気を抜いたりする操作を行わせることなく、薬液貯蔵部6に薬液を充填し且つ薬液貯蔵部6内の空気を抜くことができ、かくして、使用者に煩雑な操作を行わせることなく、薬液貯蔵部6に適切に薬液を充填することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液投与装置及び薬液投与装置の薬液充填方法に関し、例えばインスリンポンプなどの携帯型の薬液投与装置の薬液貯蔵部に薬液を充填する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
皮下注射や静脈内注射などによって患者の体内に薬液を持続的に注入する治療が行われる場合がある。近年、例えば、糖尿病患者に対して、患者の体内に微量のインスリンを持続的に注入する治療が実施されている。この治療法では、一日中患者に薬液(インスリン)を投与するために、患者の身体又は衣服に固定して持ち運び可能な携帯型の薬液投与装置(いわゆるインスリンポンプ)が用いられている。
【0003】
このような携帯型の薬液投与装置として、例えば、薬液を貯蔵する薬液貯蔵部内で駆動されるピストンが薬液貯蔵部から薬液を押し出すことで使用者に薬液を投与するようになされた、いわゆるシリンジポンプ形式のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−501283公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上述したような携帯型の薬液投与装置は、使用者の手元に届く際、薬液貯蔵部内に薬液が予め充填されていない。そのため、使用者は、別途薬液が貯蔵された容器(例えばバイアルなど)を用意し、当該容器に貯蔵された薬液を薬液投与装置の薬液貯蔵部へ充填する作業を行う必要がある。
【0006】
この作業では、例えば使用者は、当該容器から注射器を用いて薬液を引き抜き、当該注射器を例えば薬液貯蔵部に設けられた穴に刺して、薬液貯蔵部に薬液を充填する。
【0007】
ここで、使用者が注射器を用いて当該容器から薬液を引き抜くには比較的強い力を必要とし、また、薬液を当該容器から注射器に必要量を引き抜くためには熟練した技術が必要であるなど、使用者の負担が大きい。
【0008】
さらに、薬液を充填する際に薬液貯蔵部内に空気が混入してしまう場合がある。薬液貯蔵部内に空気が混入していると、例えば正確な量の薬液を使用者に注入できないなどの問題が起こる可能性があり、適切に薬液が充填されているとはいえない。そのため、使用者は薬液貯蔵部に空気を入れないように注意を払う必要がある。
【0009】
このように、薬液投与装置の薬液貯蔵部内に適切に薬液を充填するためには、使用者は煩雑な操作を行わなければならなかった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、使用者に煩雑な操作を行わせることなく、薬液貯蔵部に適切に薬液を充填しうる薬液投与装置及び薬液投与装置の薬液充填方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明においては、薬液を貯蔵する薬液貯蔵部内で駆動されて薬液貯蔵部の内部空間の容積を変化させる封止部材が薬液を薬液貯蔵部から押しだすことで使用者に薬液を投与する薬液投与装置であって、封止部材を駆動させる駆動制御部と、薬液貯蔵部内における封止部材の位置を検出する位置検出部と、薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことを検出する空気抜き完了検出部とを有し、薬液貯蔵部には、気体のみを薬液貯蔵部の内部から外部へ向かう方向にのみ通過させる制限機構が設けられた開口部が設けられており、駆動制御部は、薬液が収容された薬液容器と薬液貯蔵部が接続され且つ開口部が薬液貯蔵部において上側に位置するようにされた状態で、位置検出部により封止部材が所定位置に駆動されたと検出されるまで薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に封止部材を駆動させ、その後、空気抜き完了検出部により薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことが検出されるまで薬液貯蔵部の内部空間を狭める方向に封止部材を駆動させる。
【0012】
また本発明においては、薬液を貯蔵する薬液貯蔵部内で駆動されて薬液貯蔵部の内部空間の容積を変化させる封止部材が薬液を薬液貯蔵部から押しだすことで使用者に薬液を投与する薬液投与装置の薬液貯蔵部内に薬液を充填させる薬液充填方法であって、薬液が収容された薬液容器と薬液貯蔵部が接続され、且つ、薬液貯蔵部に設けられ、気体のみを薬液の内部から外部へ向かう方向にのみ通過させる制限機構が設けられた開口部が薬液貯蔵部において上側に位置するようにされた状態で、封止部材が所定位置に駆動されるまで薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に封止部材を駆動させる第1の駆動ステップと、第1の駆動ステップの後、薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことを検出するまで薬液貯蔵部の内部空間を狭める方向に封止部材を駆動させる第2の駆動ステップとを有する。空気抜きが完了したことを検出する方法として、薬液貯蔵部の圧力を検出する。
【0013】
このように、薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に封止部材を駆動させることにより、薬液貯蔵部内が負圧となり薬液貯蔵部に接続された薬液容器から薬液貯蔵部へ薬液が吸い込まれ、薬液貯蔵部に薬液が充填される。その後、薬液貯蔵部の内部空間を狭める方向に封止部材を駆動させることにより、薬液貯蔵部に充填された薬液に圧力がかかり薬液貯蔵部において上側に位置するようにされた開口部の制限機構を通して薬液貯蔵部内の空気が追い出される。したがって、使用者に、例えば注射器を用いて薬液貯蔵部に薬液を充填させたり、別途薬液貯蔵部内の空気を抜いたりする操作を行わせることなく、薬液貯蔵部に薬液を充填し且つ薬液貯蔵部内の空気を抜くことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に封止部材を駆動させることにより、薬液貯蔵部内が負圧となり薬液貯蔵部に接続された薬液容器から薬液貯蔵部へ薬液が吸い込まれ、薬液貯蔵部に薬液が充填される。その後、薬液貯蔵部の内部空間を狭める方向に封止部材を駆動させることにより、薬液貯蔵部に充填された薬液に圧力がかかり薬液貯蔵部の開口部の制限機構を通して薬液貯蔵部内の空気が追い出される。したがって、使用者に、例えば注射器を用いて薬液貯蔵部に薬液を充填させたり、別途薬液貯蔵部内の空気を抜いたりする操作を行わせることなく、薬液貯蔵部に薬液を充填し且つ薬液貯蔵部内の空気を抜くことができ、かくして、使用者に煩雑な操作を行わせることなく、薬液貯蔵部に適切に薬液を充填しうる薬液投与装置及び薬液投与装置の薬液充填方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は薬液投与装置全体の垂直断面を示す略線図、(B)は薬液貯蔵部の水平断面を示す略線図である。
【図2】薬液投与装置の回路構成を示す略線図である。
【図3】使用者が行う操作の手順を示すフローチャートである。
【図4】薬液充填処理手順を示すフローチャートである。
【図5】薬液充填処理におけるCPUの機能的構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0017】
〔1.薬液投与装置の構成〕
図1(A)に示すように、薬液投与装置1は、使用者の身体又は衣服などに固定して持ち運び可能な小型サイズの略直方体で形成された筐体2を有し、携帯型の装置として構成されている。
【0018】
筐体2の内部には、モータ3と、モータドライバなどの各種回路が設けられた基板部4と、モータ3及び基板部4に電力を供給する電池5と、使用者に投与する薬液を貯蔵する薬液貯蔵部6とが収納されている。薬剤貯蔵部6に貯蔵される薬液としては、例えばインスリンや各種ホルモン、モルヒネなどの鎮痛薬、あるいは抗炎症薬剤などが挙げられる。
【0019】
薬液貯蔵部6は有底の筒状でなり、図1(B)に示すように断面が略楕円形状でなる。薬液貯蔵部6はその先端側が底部分でありその後端側が開放されている。薬液貯蔵部6の先端部は、その中央部分が先端に向かってすぼまる(漸減する)略円錐台形状に突出する凸部6Aとなっている。凸部6Aの先端部は開口部6Bとなっており、開口部6Bは先端部で外部と連通している。
【0020】
開口部6Bには、制限機構7が取り付けられている。制限機構7は、弁機構7Aと、弁機構7Aよりも内側に設けられたフィルタ7Bとから構成される。弁機構7Aは、例えば一方向弁で構成されており、薬液貯蔵部6の内部から外部へ向かう方向には流体を通過させるものの、薬液貯蔵部6の外部から内部へ向かう方向には流体を通過させないような機構になっている。フィルタ7Bは、例えばエアベントフィルタで構成されており、気体のみを通過させ液体は通過させないような機構となっている。このような構成により制限機構7は、液体を通過させず、且つ前記薬液貯蔵部の内部から外部へ向かう方向には気体は通過させるが、外部から内部へ向かう方向には気体を通過させないようになっている。尚、制限機構7は上述したものに限らず、液体を通過させない機構を有し、且つ薬液貯蔵部6の内部から外部へ向かう方向には気体は通過させるが、外部から内部へ向かう方向には気体を通過させない機構を有するものであれば良い。
【0021】
また薬液貯蔵部6の先端側には、薬液貯蔵部6の内部から外部へ、又は外部から内部へ薬液を通過させる導管部6Cが形成されている。導管部6Cの先端部は開口部となっており、筐体2の外部に露出している。薬液投与装置1によって使用者に薬液を投与させる場合、導管部6Cには、例えば使用者の体内に挿入される穿刺針が先端に設けられたカテーテルチューブ(図示せず)などが接続されるようになっている。
【0022】
さらに薬液貯蔵部6には、その後端側から、薬液貯蔵部6内を摺動可能な略楕円柱状の封止部材8が嵌め込まれている。封止部材8は薬液貯蔵部6の内壁と密閉するようになっており、封止部材8と薬液貯蔵部6の内壁とによって囲まれた空間(すなわち薬液貯蔵部6の内部空間)9に薬液が貯蔵される。封止部材8は、薬液貯蔵部6内で摺動されることで、内部空間9(すなわち薬液が貯蔵される空間)の容積を変化させるようになっている。封止部材8としては、少なくとも外周部が弾性材料であればよく、例えば天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スレンーブタジエンゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマーあるいはそれらの混合物などの弾性材料が挙げられる。また、その外周を例えば、ポリテトラフルオロエチレンまたはその共重合体、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体、四フッ化エチレン、PVdE(ポリビニリデンフロライド)、TFE(テトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)等のフッ素樹脂で構成されたフィルムで被覆しても良い。
【0023】
封止部材8の中心には封止部材8を貫通する穴部が形成され、当該穴部にシャフト10が挿通されている。封止部材8の穴部の内周面とシャフト10の外周面とにはそれぞれネジが形成されており、これらのネジは螺合するようになっている。
【0024】
またシャフト10は、薬液貯蔵部6の後端側から薬液貯蔵部6の内部に挿入され、筒状でなる薬液貯蔵部6の中心を通りその長さ方向に延びるように配されている。
【0025】
シャフト10の後端部にはギア11が設けられ、ギア11は、モータ3に設けられたギア12と、ギア13を介して接続されている。モータ3としては、例えばDCモータ、ACモータ、ステッピングモータなどを用いることが出来る。
【0026】
また薬液貯蔵部6の後端部には、封止部材8の接触を検出する接触検出センサ14が設けられている。接触検出センサ14としては、例えば光センサ、圧力センサなど接触を検出しうるセンサが適応される。
【0027】
以上の構成において、モータ3を駆動してモータ3を回転させると、モータ3の回転駆動力がギア12、13及び11を介してシャフト10に伝達され、シャフト10が回転される。
【0028】
ここで、シャフト10のネジと封止部材8の穴部のネジとが螺合していることにより、封止部材8が薬液貯蔵部6内でシャフト10の長さ方向に沿って駆動される。尚、本実施形態においては、薬液貯蔵部6及び封止部材8の断面が略楕円形状であることにより、シャフト10が回転するのに伴って封止部材8が回転するのをより防止できる形状となっているが、これに限定されるものではなく、シャフト10の回転に伴って封止部材8が回転するのを防止できる形状、材質を有していれば良いことは言うまでもない。
【0029】
モータ3を正回転させた場合、封止部材8は薬液貯蔵部6の先端部に向かう方向(すなわち薬液貯蔵部6の内部空間9を狭める方向)に駆動される。これにより、封止部材8により薬液貯蔵部6内の薬液に圧力が加えられ薬液が導管部6Cから外部へ押し出される。モータ3の正回転を後述する制御部により制御することで、所定量の薬液を導管部6Cに接続されたカテーテルチューブ及び穿刺針などを通して使用者に投与されるように構成されている。
【0030】
一方、モータ3を逆回転させた場合には、封止部材8は薬液貯蔵部6の後端部に向かう方向(すなわち薬液貯蔵部6の内部空間9を広げる方向)に駆動されるようになっている。
【0031】
封止部材8が薬液貯蔵部6の後端部に向かって駆動された結果、封止部材8が接触検出センサ14に接触すると、接触検出センサ14により封止部材8の接触が検出される。このことは、薬液貯蔵部6の後端側において封止部材8が駆動可能な限界の位置(これを後端限界位置とも呼ぶ)まで駆動されたことを意味している。ゆえにこの場合、これ以上封止部材8が後方へ駆動されないよう、モータ3の逆回転が停止されるようになっている。
【0032】
次に、薬液投与装置1の回路構成について説明する。薬液投与装置1は、図2に示すように、制御部として薬剤投与装置1の制御を司るCPU(Central Processing Unit)20に対して各種ハードウェアを接続することにより構成される。具体的にはROM(Read Only Memory)21、CPU20のワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)22、モータドライバ23、通信回路24、インターフェイス部25、接触検出センサ14がバス26を介して接続される。
【0033】
ROM21には、各種処理を実行するためのプログラムが格納される。インターフェイス部25には、後述する固定台30が接続される。モータドライバ23は、CPU20の制御のもとモータ3を駆動させる。接触検出センサ14は、封止部材8の接触を検出すると、そのことを示す検出信号をCPU20に入力する。
【0034】
通信回路24は、使用者が薬液投与装置1に対して命令を入力するための操作部(図示せず)等が設けられた遠隔制御装置27とCPU20の制御のもと無線通信を行い、遠隔制御装置27から操作信号を受信してCPU20に入力する。
【0035】
CPU20は、ROM21に格納される複数のプログラムのうち、通信回路24を介して遠隔制御装置27から受信した操作信号に対応するプログラムをRAM22に展開し、該展開したプログラムに従って各回路部を適宜制御するようになっている。
【0036】
〔2.薬液貯蔵部に薬液を充填する手順〕
この薬液投与装置1では、使用者自身で薬液貯蔵部6に薬液を充填する作業を行うようになっている。以下、薬液貯蔵部6に薬液を充填する手順について説明する。
【0037】
薬液貯蔵部6に薬液を充填する際には、図1に示すように、薬液投与装置1を固定する固定台30、薬液貯蔵部6に充填するための薬液が予め収容された薬液容器31、薬液容器31と薬液投与装置1とを接続するための接続器具32とが用いられる。
【0038】
固定台30は略直方体の扁平形状であり、上側部分に薬液貯蔵部1の筐体2の一部が嵌め込まれる切欠き部30Aが形成されている。また固定台30は、図2に示すように、固定台30を振動させる振動機構33とインターフェイス部34とを有する。薬液投与装置1及び固定台30は、インターフェイス部25及びインターフェイス部34を介して接続され、薬液投与装置1のCPU20は、固定台30の振動機構33の駆動を制御するようになっている。
【0039】
図1に示すように、薬液容器31は、例えば、薬液が予め収容された市販のバイアルであり、その開口部がゴム栓31Aにより密閉されているものである。
【0040】
接続器具32は本体部35を有し、本体部35は、その上側部分がカバー部35Aでなり、下側部分が、カバー部35Aを支える支持部35Bでなる。支持部35Bは、上側部分が略円柱形状で下側部分が先端に向かうにつれすぼまる略円錐台形状でなる。カバー部35Aは、略円筒形状でなり、薬液容器31の口部(ゴム栓31A及びゴム栓31Aが取り付けられている首部分)を挿入可能な大きさでなる。本体部35には、薬液を通過させるための薬液用管部36と空気を通過させるための空気用管部37とが設けられている。薬液用管部36及び空気用管部37はそれぞれ上端部が鋭利な中空の針である。また薬液用管部36及び空気用管部37は、薬液用管部36及び空気用管部37の上端部の両方を薬液容器31の内部へ挿入しうるよう、薬液容器31の口部及びゴム栓31Aの幅よりも狭い所定の間隔をおいて設けられている。
【0041】
薬液用管部36は、支持部35Bを上下に貫通し、薬液用管部36の上端部が支持部35Bから突出してカバー部35A内に位置され、下端部が支持部35Bから突出し外部に開放されている。尚、薬液用管部36の下端部は、薬液貯蔵部6の導管部6Cと接続される。また薬液用管部36の流路の途中には、例えば一方向弁で構成される、弁機構38が取り付けられている。この弁機構38は流体(液体及び気体)を薬液用管部36の上端部から下端部へ向かう方向には通過させるものの、下端部から上端部へ向かう方向には通過させないようになされている。
【0042】
空気用管部37は、本体部35の支持部35B内で折れ曲がるように形成され、空気用管部37の上端部が支持部35Bから突出してカバー部35A内に位置され、上端部と反対側の端部が支持部35Bの側面から突出し外部に開放されている。空気用管部37の流路の途中には、空気のみを通過させるフィルタや細菌をろ過する細菌フィルタ39が取り付けられている。
【0043】
ここで薬液投与装置1の薬液貯蔵部6に薬液を充填するために使用者が行う操作の手順について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ステップSP1において、使用者は、遠隔制御装置27を操作することにより、薬液投与装置1の電源をオンにする。
【0045】
ステップSP2において、使用者は、図1に示すように、薬液投与装置1の薬液貯蔵部6の先端部が上側となり後端部が下側となるようにして、薬液投与装置1を固定台30の切欠部30Aに嵌め込んで載置する。これにより、使用者が手を離しても、薬液投与装置1は固定台30によって薬液貯蔵部6の開口部6Bが上側となる状態に固定される。またこれにより、薬液投与装置1と固定台30とが端子(図示せず)を介して接続される。
【0046】
ステップSP3において、使用者は、接続器具32の薬液用管部36の下端部を薬液貯蔵部6の導管部6C内に挿入させることにより、薬液投与装置1に接続器具32を装着させる。尚、このとき使用者は、接続器具32によって薬液貯蔵部6の開口部6Bを塞がないようにして、接続器具32を筐体2の上側となっている面に載置する。
【0047】
ステップSP4において、使用者は、薬液容器31のゴム栓31Aを接続器具32のカバー部35A内に挿入して、薬液用管部36及び空気用管部37の上端部をゴム栓31Aに刺しこみ、薬液用管部36及び空気用管部37の上端部を薬液容器31内に挿入させることにより、薬液容器31を接続器具32に装着する。尚、薬液用管部36及び空気用管部37の上端部は接続器具32のカバー部35A内に収容されているので、このとき、薬液用管部36及び空気用管部37の上端部の鋭利な針部分が使用者に触れることはなく、使用者に安全に作業をさせることができる。
【0048】
ステップSP5において、使用者は、遠隔制御装置27を操作することにより、薬液投与装置1に薬液充填処理を実行させる。具体的に薬液投与装置1のCPU20は、遠隔制御装置27から薬液充填処理の実行命令を受信すると、ROM21から薬液充填処理プログラムを読み出してRAM22に展開し、薬液充填処理プログラムに従って薬液充填処理を実行する。
【0049】
ここで、CPU20が実行する薬液充填処理の手順について図4に示すフローチャートを用いて説明する。この処理においてCPU20は、図5に示すように、駆動制御部20A、位置検出部20B、振動制御部20C、空気抜き完了検出部20Dとして機能する。
【0050】
尚、使用者は、薬液投与装置1の使用開始時に薬液充填処理を実行することが考えられる。したがって、薬液充填処理が開始される際、封止部材8は薬液貯蔵部6の先端部に位置している。
【0051】
CPU20は、薬液充填処理を開始するとステップSP11に移る。ステップSP11において、CPU20の駆動制御部20Aは、モータ3を逆回転させて薬液貯蔵部6の後端部へ向かう方向(すなわち薬液貯蔵部6の内部空間9を広げる方向)への封止部材8の駆動を開始させ、次のステップSP12に移る。尚ここでは、薬液貯蔵部6の後端部が下側となる状態に固定されているため、封止部材8は下方向に駆動されることとなる。
【0052】
このように薬液貯蔵部6の内部空間9が広げられることにより、薬液貯蔵部6内が負圧となり、薬液が、薬液容器31から接続器具32の薬液用管部36を通って、導管部6Cから薬液貯蔵部6内に流入する。このとき、接続器具32の空気用管部37を通って薬液容器31内に空気が吸い込まれるため薬液容器31内は負圧とならず、薬液容器31から負圧となった薬液貯蔵部6へ薬液が吸い込まれるようになっている。尚、薬液用管部36の一方向弁38は、このとき薬液が薬液容器31から薬液貯蔵部6へと流れるのを妨げない。
【0053】
ステップSP12において、CPU20の位置検出部20Bは、接触検出センサ14から入力される検出信号をもとに、封止部材8が後端限界位置まで駆動されたか否かを判別する。このステップSP12において肯定結果が得られるまで、駆動制御部20Aは、封止部材8を下方向へ駆動させ続ける。
【0054】
接触検出センサ14から検出信号が入力されると、位置検出部20Bは、封止部材8が後端限界位置まで駆動されたことを検出し、ステップSP12において肯定結果を得る。すると、駆動制御部20Aは、モータ3の逆回転を停止させて封止部材8の下方向への駆動を終了させ、次のステップSP13に移る。
【0055】
この結果、封止部材8が後端限界位置に位置する状態における薬液貯蔵部6の内部空間9に薬液が充填される。しかしながらこの状態では薬液貯蔵部6内に空気が混入している場合がある。空気は薬液よりも軽いため、このとき、混入した空気は薬液貯蔵部6内の上側に集まっていく。
【0056】
ステップSP13において、CPU20の振動制御部20Cは、固定台30の振動機構33を制御して、例えば所定時間の間、固定台30を振動させて、次のステップSP14に移る。
【0057】
これにより、固定台30に載置された薬液投与装置1の全体が振動し、薬液貯蔵部6が振動する。この結果、薬液貯蔵部6に充填された薬液内の気泡が薬液貯蔵部6の内壁や封止部材8などに付着している場合であっても、当該気泡がはがれて、薬液貯蔵部6内の上側の方へ浮かんでいく。
【0058】
ステップSP14において、駆動制御部20Aは、モータ3を正回転させて薬液貯蔵部6の先端部へ向かう方向(すなわち薬液貯蔵部6の内部空間9を狭める方向)への封止部材8の駆動を開始させ、次のステップSP15に移る。尚、ここでは、薬液貯蔵部6の先端部が上側となる状態に固定されているため、封止部材8は上方向に駆動されることとなる。
【0059】
このように薬液貯蔵部6の内部空間9が狭められることにより、薬液貯蔵部6に充填された薬液に圧力がかかる。このとき、接続器具32の薬液用管部36の一方向弁38は、薬液が薬液貯蔵部6から薬液容器31へ流入するのを妨げる。また、薬液貯蔵部6のフィルタ7は、開口部6Bから薬液が外部に流出するのを妨げる一方、空気が外部に流出するのを妨げない。この結果、薬液貯蔵部6内で上側に集まった空気が、薬液貯蔵部6において上側に位置された開口部6Bを通して薬液貯蔵部6から抜けていく。
【0060】
ステップSP15において、CPU20の空気抜き完了検出部20Dは、薬液貯蔵部6内の空気抜きが完了したか否かを判別する。具体的に、薬液貯蔵部6内から空気が抜けて薬液が充満すると、薬液貯蔵部6内の圧力が増加する。薬液貯蔵部6内の圧力が増加すると、封止部材8にかかるシャフト10の長さ方向の荷重が増加するため、シャフト10を回転させるためには大きなモータトルクが必要となり、モータ3を流れる電流が増加する。
【0061】
そこで空気抜き完了検出部20Dは、モータ3を流れる電流を監視し、当該電流が所定閾値以上か否かを判別する。モータ3を流れる電流が所定閾値以上となったことは、薬液貯蔵部6内の圧力が所定値以上となったことを意味し、薬液貯蔵部6内から空気が抜け薬液で満たされたことを意味する。したがって空気抜き完了検出部20Dは、モータ3を流れる電流が所定閾値以上であると判別すると、薬液貯蔵部6内の圧力が所定値以上となったと判別して空気抜きが完了したことを検出し、このステップSP15において肯定結果を得る。
【0062】
このステップSP15において肯定結果が得られるまで、駆動制御部20Aは、封止部材8を上方向へ駆動させ続ける。そして、ステップSP15において肯定結果が得られると、駆動制御部20Aは、モータ3の正回転を停止させて封止部材8の上方向への駆動を終了させ、次のステップSP16に移る。この結果、薬液貯蔵部6の内部空間9は、空気が抜けた分だけ狭められる。
【0063】
ステップSP16において、駆動制御部20Aは、モータ3を逆回転させて薬液貯蔵部6の下方向への封止部材8の駆動を開始させ、次のステップSP17に移る。
【0064】
このように薬液貯蔵部6の内部空間9が広げられることにより、ステップSP11と同様に、薬液貯蔵部6内が負圧となり薬液容器31から薬液貯蔵部6へ薬液が吸い込まれる。この結果、抜けた空気の分の薬液が薬液貯蔵部6に充填されていく。
【0065】
ステップSP17において、位置検出部20Bは、接触検出センサ14から入力される検出信号をもとに、封止部材8が後端限界位置まで駆動されたか否かを判別する。このステップSP17において肯定結果が得られるまで、駆動制御部20Aは、封止部材8を下方向へ駆動させ続ける。
【0066】
接触検出センサ14から検出信号が入力されると、位置検出部20Bは、封止部材8が後端限界位置まで駆動されたことを検出し、ステップSP17において肯定結果を得る。すると、駆動制御部20Aは、モータ3の逆回転を停止させて封止部材8の下方向への駆動を終了させ、薬液充填処理を終了する。
【0067】
この結果、封止部材8が後端限界位置に位置する状態における薬液貯蔵部6の内部空間9に、限りなく空気が混入していない状態で薬液を充填することが可能となる。
【0068】
〔3.薬液を投与する手順〕
以上のように構成された薬液投与装置1で、薬液貯蔵部6内の内部空間9に空気が混入していない状態で薬液が充填された後、使用者は薬液投与装置1の開口部6の導管部6Cにカテーテルチューブを取り付ける。
【0069】
カテーテルチューブを取り付けた後、カテーテルチューブ先端の穿刺針を使用者の身体の所定部位に留置する。
【0070】
その後、薬液投与装置1を操作し、制御部であるCPU20に指令を出すことで、CPU20がモータ3の正回転を制御し、所定量の薬液が薬液貯蔵部6内から導管部6Cを通じて使用者に投与される。
【0071】
〔4.動作及び効果〕
以上の構成において薬液投与装置1では、薬液貯蔵部6の開口部6Bに気体のみを薬液貯蔵部6の内部から外部へ向かう方向にのみ通過させる制限機構7が取付けられている。
【0072】
薬液投与装置1は、薬液が貯蔵された薬液容器31に薬液貯蔵部6が接続され、且つ薬液貯蔵部6の開口部6Bが上側に位置するようにされた状態で、封止部材8が後端限界位置に駆動されるまで、薬液貯蔵部6の内部空間9を広げる方向に封止部材8を駆動させる。
【0073】
これにより、薬液貯蔵部6内が負圧となり薬液容器31から薬液貯蔵部6へ薬液が吸い込まれ、薬液貯蔵部6に薬液が充填される。
【0074】
その後、薬液投与装置1は、薬液貯蔵部6内の圧力をもとに薬液貯蔵部6内の空気抜きが完了したことを検出するまで、薬液貯蔵部6の内部空間9を狭める方向に封止部材8を駆動させる。
【0075】
これにより、薬液貯蔵部6に充填された薬液に圧力がかかり、このとき制限機構7は気体のみを薬液貯蔵部6の内部から外部へ向かう方向にのみ通過させるので、開口部6Bを通して薬液貯蔵部6内の空気のみが外部へ追い出される。
【0076】
したがって、薬液投与装置1は、使用者に、例えば注射器を用いて薬液貯蔵部6に薬液を充填させたり、別途薬液貯蔵部6内の空気を抜いたりする操作を行わせることなく、薬液貯蔵部6に薬液を充填し且つ薬液貯蔵部6内の空気を抜くことができる。
【0077】
また薬液投与装置1は、薬液貯蔵部6内の空気抜きが完了したことを検出するまで、薬液貯蔵部6の内部空間9を狭める方向に封止部材8を駆動させた後、さらに封止部材8が後端限界位置に駆動されるまで薬液貯蔵部6の内部空間9を広げる方向に封止部材8を駆動させる。
【0078】
これにより、抜けた空気の分の薬液を薬液貯蔵部6に充填でき、封止部材8が後端限界位置に位置する状態における薬液貯蔵部6の内部空間9一杯に空気が混入していない状態で薬液を充填することができる。すなわち、使用者に特別な操作を行わせることなく、薬液貯蔵部6に所定量の薬液を充填することができる。
【0079】
さらに接続器具32は、一端が薬液容器31内に挿入され他端が薬液貯蔵部6内に挿入される薬液用管部36と、一端が薬液容器31内に挿入され他端が外部に露出される空気用管部37とを有し、薬液用管部36には一端から他端に向かう方向にのみ流体を通過させる一方向弁38が取付けられているようにした。そして薬液投与装置1は、当該接続器具32を介して薬液容器31と接続されるようにした。
【0080】
これにより薬液容器31が密閉容器であっても、薬液容器31に接続された薬液貯蔵部6内が負圧となったときに空気用管部37から空気が吸い込まれることで薬液容器31内が負圧とならず、薬液容器31から負圧となった薬液貯蔵部6へ薬液を吸い込むことができる。また薬液貯蔵部6から空気を抜く際に、一方向弁38により薬液貯蔵部6から薬液容器31へ薬液が逆流するのを防止することができる。
【0081】
さらに薬液投与装置1は、開口部6Bが薬液貯蔵部6において上側に位置する状態に薬液投与装置1を固定させる固定台30により、固定されるようにした。これにより、使用者に薬液投与装置1を手で固定するような操作を行わせることなく、薬液投与装置1を開口部6Bが薬液貯蔵部6において上側に位置する状態に固定させることができる。
【0082】
さらに薬液投与装置1は、固定台30に設けられた振動機構33を介して固定台30を振動させるようにした。これにより、薬液投与装置1は、薬液貯蔵部6に充填された薬液内の気泡を上方に浮かばせて薬液貯蔵部6内から空気を抜くことができる。
【0083】
さらに薬液投与装置1では、薬液貯蔵部6の導管部6Cが薬液貯蔵部6に薬液を充填する際に薬液を流入させる開口部となると共に、使用者に薬液を投与する際に薬液を流出させる開口部となるようにした。
【0084】
これにより使用者に薬液を投与する際に薬液を流出させる開口部のほかに、薬液貯蔵部6に薬液を充填する際に薬液を流入させる開口部を別途形成しなくてもよく、薬液貯蔵部6の構成を簡易にすることができる。
【0085】
以上の構成によれば薬液投与装置1は、薬液貯蔵部6の内部空間9を広げる方向に封止部材8を駆動させることにより、薬液貯蔵部6内を負圧にして薬液貯蔵部6に接続された薬液容器31から薬液貯蔵部6へ薬液を充填できる。その後、薬液投与装置1は、薬液貯蔵部6の内部空間9を狭める方向に封止部材8を駆動させることにより、薬液貯蔵部6に充填された薬液に圧力をかけて薬液貯蔵部6の開口部6Bを通して薬液貯蔵部6内の空気を抜くことができる。したがって、薬液投与装置1は、使用者に、例えば注射器を用いて薬液貯蔵部6に薬液を充填させたり、別途薬液貯蔵部6内の空気を抜いたりする操作を行わせることなく、薬液貯蔵部6に薬液を充填し且つ薬液貯蔵部6内の空気を抜くことができ、かくして、使用者に煩雑な操作を行わせることなく、薬液貯蔵部6に適切に薬液を充填することができる。
【0086】
〔5.他の実施の形態〕
なお上述した実施の形態においては、CPU20は、接触検出センサ14からの検出信号が入力されると、封止部材8が後端限界位置まで駆動されたことを検出するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、薬液貯蔵部6の後端部に、封止部材8がこれ以上後方に駆動されないようにするための当て止めを設けるようにしてもよい。
【0087】
この場合、封止部材8が当て止めに接触すると、封止部材8にかかるシャフト10の長さ方向の荷重が増加するため、シャフト10を回転させるためには大きなモータトルクが必要となり、モータ3を流れる電流が増加する。ゆえにこの場合、CPU20は、封止部材8を下方向に駆動させている際に、モータ3を流れる電流を監視し、当該電流が所定閾値以上になると、封止部材8が後端限界位置まで駆動されたと判別する。
【0088】
また上述した実施の形態においては、封止部材8を駆動させる駆動機構として、薬液貯蔵部6内に配されたシャフト10、ギア11、12及び13、モータ3を設けるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、封止部材8を駆動させる駆動機構であれば上述した構成に限らない。例えば、シャフト10が薬液貯蔵部6の外部に配された構成であってもよい。
【0089】
さらに上述した実施の形態においては、封止部材8を上方向に駆動させている際に、モータ3を流れる電流が所定閾値以上になると、薬液貯蔵部6内の圧力が所定値以上となったと判別し、薬液貯蔵部6内の空気抜きが完了したことを検出するようにした。本発明はこれに限らず、例えば、薬液貯蔵部6内の圧力を検出する圧力センサを設け、CPU20は、圧力センサにより検出された圧力が所定閾値以上になると、薬液貯蔵部6内の空気抜きが完了したことを検出するようにしてもよい。
【0090】
さらに上述した実施の形態においては、封止部材8を後端限界位置まで下方向に駆動させるようにしたが、後端限界位置に限らずこの他種々の所定位置まで下方向に駆動させるようにしてもよい。例えば、CPU20は、遠隔制御装置27により充填させる薬液の量が指定された場合、指定された量に対応する位置まで封止部材8を下方向に駆動させるようにしてもよい。
【0091】
さらに上述した実施の形態においては、空気抜きが完了したことを検出した後、封止部材8を後端限界位置まで下方向へ駆動させるようにした場合について述べたが、これに限らず、空気抜きが完了したことを検出したら薬液充填処理を終了させてもよい。
【0092】
さらに上述した実施の形態においては、薬液が貯蔵された薬液容器31と薬液貯蔵部6とが接続器具32を介して接続される場合について述べた。本発明はこれに限らず、薬液が貯蔵された薬液容器31と薬液貯蔵部6とが接続されるのであれば、上述した接続方法に限らない。例えば、薬液容器31内が負圧とならないよう構成されているのであれば、薬液用管部36のみを有する接続器具を介して薬液容器31と薬液貯蔵部6とが接続されてもよい。
【0093】
さらに上述した実施の形態においては、薬液投与装置1は固定台30により固定されるようにした場合について述べたが、これに限らず、例えば、使用者が手で固定するようにしてもよい。
【0094】
さらに上述した実施の形態においては、CPU20は封止部材8を下方向に駆動させた後、上方向に駆動させる前に、振動機構33を介して固定台30を振動させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、固定台30を種々のタイミングで振動させるようにしてもよい。またこれに限らず、固定台30を振動させなくてもよい。
【0095】
さらに上述した実施の形態においては、薬液貯蔵部6の導管部6Cが、使用者に薬液を投与する際には薬液を流出させる開口部となり、薬液貯蔵部6に薬液を充填する際には薬液を流入させる開口部となるようにした。すなわち、薬液貯蔵部6において、使用者に薬液を投与する際に薬液を流出させる開口部と、薬液貯蔵部6に薬液を充填する際に薬液を流入させる開口部とが同一であるようにした場合について述べた。
【0096】
これに限らず、使用者に薬液を投与する際に薬液を流出させるための流出用開口部と、薬液貯蔵部6に薬液を充填する際に薬液を流入させるための流入用開口部とが別々に設けられていてもよい。この場合、例えば、流入用開口部には薬液を外部から内部へ向かう方向にのみ通過させる一方向弁を設けるようにしてもよい。また例えば、流出用開口部は、薬液貯蔵部6に薬液を充填する際には薬液が流出しないよう閉じられるようにしてもよい。
【0097】
さらに、上述した実施の形態においては、空気抜きが完了したことを検出した後、封止部材8を後端限界位置まで下方向へ駆動させるようにした場合について述べたが、これに限らず、空気抜きを行う際に、薬液容器31が空であるかどうかを判定するようにしてもよい。
【0098】
いったん空気抜きが完了した後は本来ならば空気が混入しないはずではあるが、例えば、封止部材8を後端限界位置まで下方向へ駆動させて薬液を充填している間に薬液容器31が空になることで薬液容器31から薬液貯蔵部6に空気が混入してしまう可能性がある。
【0099】
そこでCPU20は、上述したステップSP15において薬液容器31が空であるかどうかを判定する。空気抜きを行う際、モータ回転数が規定回転数以下で空気抜きが完了した場合、CPU20は、薬液容器31が空にならず薬液貯蔵部6に所定量薬液が充填されたことを検出し、SP16へと移行する。
【0100】
一方、規定回転数以上にモータが回転し空気抜きを完了した場合、CPU20は、薬液容器31が空になったことを検出し、薬液充填処理を終了させる。尚この場合、封止部材8は後端限界位置よりも先端側に位置し、充填された薬液は所定量よりも少ない。ゆえにこの場合、CPU20は、例えば、出力部(図示せず)を介して充填された薬液が所定量よりも少ないことを使用者に通知するようにしてもよい。
【0101】
さらに上述した実施の形態においては、使用者は薬液投与装置1を固定台30に載置する前に薬液投与装置1の電源をオンにする場合について述べたが、これに限らず、薬液投与装置1に薬液充填処理を実行させる前であれば種々のタイミングで薬液投与装置1の電源をオンにするようにしてもよい。
【0102】
さらに上述した実施の形態においては、薬液投与装置1は、操作部を有する遠隔制御装置27から受信した操作信号に応じて制御される場合について述べたが、これに限らず、例えば、薬液投与装置1自体が操作部を有し、当該操作部を介して入力される操作信号に応じて制御されるようにしてもよい。
【0103】
さらに上述した実施の形態においては、CPU20がROM21に格納されているプログラムに従い、上述した各種処理を行うようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば遠隔制御装置27から受信したプログラムなど、その他種々のルートによって取得したプログラムに従って上述した各種処理を行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えばインスリンポンプ等の携帯型の薬液投与装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1……薬液投与装置、3……モータ、6……薬液貯蔵部、7……制限機構、7A……弁機構、7B……フィルタ、8……封止部材、10……シャフト、20……CPU、20A……駆動制御部、20B……位置検出部、20C……振動制御部、20D……空気抜き完了検出部、30……固定台、31……薬液容器、32……接続器具、33……振動機構、36……薬液用管部、37……空気用管部、38……一方向弁。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容されている薬液容器の該薬液を貯蔵する薬液貯蔵部と、
該薬液貯蔵部内で駆動されて該薬液貯蔵部の内部空間の容積を変化させる封止部材と、
を有し、該封止部材により該薬液を該薬液貯蔵部から押しだすことで使用者に該薬液を投与する薬液投与装置であって、
前記封止部材を駆動させる駆動制御部と、
前記薬液貯蔵部内における前記封止部材の位置を検出する位置検出部と、
前記薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことを検出する空気抜き完了検出部と
を具え、
前記薬液貯蔵部には、液体を通過させず、且つ前記薬液貯蔵部の内部から外部へ向かう方向には気体は通過させるが、外部から内部へ向かう方向には気体を通過させない制限機構が取付けられた開口部が設けられており、
前記駆動制御部は、
前記薬液容器と前記薬液貯蔵部が接続され、且つ前記開口部が前記薬液貯蔵部において上側に位置するようにされた状態で、前記位置検出部により前記封止部材が所定位置に駆動されたと検出されるまで前記薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に前記封止部材を駆動させる薬液移送状態と、
前記空気抜き完了検出部により前記薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことが検出されるまで前記薬液貯蔵部の内部空間を狭める方向に前記封止部材を駆動させる空気抜き状態と、
を有することを特徴とする薬液投与装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、
前記薬液容器に前記薬液貯蔵部が接続され且つ前記開口部が前記薬液貯蔵部において上側に位置するようにされた状態で、前記位置検出部により前記封止部材が所定位置に駆動されたと検出されるまで前記薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に前記封止部材を駆動させ、その後、前記空気抜き完了検出部により前記薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことが検出されるまで前記薬液貯蔵部の内部空間を狭める方向に前記封止部材を駆動させ、その後、前記位置検出部により前記封止部材が所定位置に駆動されたと検出されるまで前記薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に前記封止部材を駆動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項3】
前記空気抜き完了検出部は、
前記薬液貯蔵部内の圧力を基にして前記薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことを検出している
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項4】
前記薬液貯蔵部は、
一端側が前記薬液容器内と接続され他端側が前記薬液貯蔵部内と接続される第1の管部と、一端側が前記薬液容器内と接続され、他端側が外部に開放される第2の管部とを有し、前記第1の管部には前記一端側から前記他端側に向かう方向にのみ流体を通過させる弁機構が取付けられている接続器具を介して、前記薬液容器と接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項5】
前記開口部が前記薬液貯蔵部において上側に位置する状態に前記薬液投与装置を固定させる固定台により前記状態に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項6】
前記固定台に設けられた振動機構を介して前記固定台を振動させる振動制御部を
さらに具えることを特徴とする請求項5に記載の薬液投与装置。
【請求項7】
前記薬液貯蔵部では、
使用者に前記薬液を投与する際に薬液を流出させる開口部と、前記薬液貯蔵部に薬液を充填する際に前記薬液を流入させる開口部とが同一である
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項8】
薬液を貯蔵する薬液貯蔵部内で駆動されて該薬液貯蔵部の内部空間の容積を変化させる封止部材が該薬液を該薬液貯蔵部から押しだすことで使用者に該薬液を投与する薬液投与装置の該薬液貯蔵部内に薬液を充填させる薬液充填方法であって、
薬液が収容された薬液容器に前記薬液貯蔵部が接続され、且つ、前記薬液貯蔵部に設けられ、気体のみを前記薬液貯蔵部の内部から外部へ向かう方向にのみ通過させる制限機構が取付けられた開口部が前記薬液貯蔵部において上側に位置するようにされた状態で、
前記封止部材が所定位置に駆動されるまで前記薬液貯蔵部の内部空間を広げる方向に前記封止部材を駆動させる第1の駆動ステップと、
前記第1の駆動ステップの後、前記薬液貯蔵部内の圧力をもとに前記薬液貯蔵部内の空気抜きが完了したことを検出するまで前記薬液貯蔵部の内部空間を狭める方向に前記封止部材を駆動させる第2の駆動ステップと
を有することを特徴とする薬液投与装置の薬液充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196342(P2012−196342A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63157(P2011−63157)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】