説明

薬液投与装置

【課題】携行可能なポンプユニットを有する薬液投与装置を実現する。
【解決手段】薬液投与装置1は、薬液を収容するリザーバー60に連通する柔軟性を有するチューブ50とカム20とカム20の回転中心P方向から放射状に配設される複数のフィンガー40〜46とを有するポンプ駆動部11を備え、フィンガー40〜46をカム20によって進退させ、チューブ50を上流側から下流側に向かって圧閉と開放を繰り返して薬液を輸送するポンプユニット10と、ポンプユニット10に薬液投与制御情報を入力するコントローラー200と、が備えられ、薬液投与制御情報に基づき、ポンプ駆動部11が駆動制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニットと、ポンプユニットに薬液投与制御情報を入力するコントローラーと、を有する薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌疾病等の疼痛緩和のための麻薬性鎮痛薬投与や、糖尿病に対するインスリン投与等、継続的にあるいは1日のにうちに何回か薬液投与を行う場合には、シリコンバルーンに薬液を充填するディスポーザブルタイプの薬液投与装置が多く使用されている。
【0003】
しかしながら、これら継続的な薬液投与を必要とする医療現場では、薬液投与量(投与速度や休止時間を含む)をよりきめ細かく、さらに精度よく調整して、薬液投与の効果を高めることや安全性を高めるために小型ポンプを用いた薬液投与装置が求められている。
【0004】
小型ポンプを用いた薬液投与装置としては、モーターモジュールとポンプモジュールとを有する蠕動駆動方式のポンプ装置というものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3177742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1によるポンプ装置は、一度、薬液投与量(投与速度含む)が設定されると、駆動対象のポンプ装置は薬液投与量を任意に変更することができない。従って、患者の容態に応じて薬液投与量や、投与速度等を変更することはできないという課題を有していた。
【0007】
また、薬液の投与経路は、静脈内投与・皮下投与等が想定されるが、薬液注入位置は様々であり、その自由度を有する装着手段を備えていないため、ポンプ装置の装着位置が限定され、患者の行動が制限されることが推測できる。
【0008】
さらに、蠕動型ポンプ装置では、リザーバー内の薬液が減少した場合、リザーバー内部の内部圧力が大気圧とほぼ同等になることが要求されるため、リザーバーは柔軟性を有する材質で形成される。しかしながら、リザーバー単独の形態で人体に装着した場合、リザーバーが外部から圧縮されることにより内部圧力が上昇することに起因する薬液吐出量の変動が発生することが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係る薬液投与装置は、薬液を収容するリザーバーに連通する柔軟性を有するチューブとカムと前記カムの回転中心方向から放射状に配設される複数のフィンガーとを有するポンプ駆動部を備え、前記複数のフィンガーを前記カムによって進退させ、前記チューブを上流側から下流側に向かって圧閉と開放を繰り返して薬液を輸送するポンプユニットと、前記ポンプユニットに薬液投与制御情報を入力するコントローラーと、が備えられ、前記薬液投与制御情報に基づき、前記ポンプ駆動部が駆動制御されることを特徴とする。
【0011】
本適用例による薬液投与装置は、薬液投与制御情報を入力するコントローラーを備えているため、この薬液投与制御情報を患者の様態に応じて任意に変更することにより、ポンプ駆動部の駆動を制御して、適切な薬液投与を行うことができる。
なお、薬液投与情報としては、例えば、薬液投与量、薬液投与速度等が含まれる。
【0012】
また、薬液投与速度はカムの回転速度で律し、薬液投与量は、薬液投与速度と投与時間により決定されることから、薬液投与量及び薬液投与速度を正確に制御することができる。
【0013】
さらに、ポンプユニットとコントローラーとは分離させており、投薬投与制御情報は、コントローラーによって医師のみが設定することが可能であるため。患者自身が勝手に変更できないことから安全性を高めることができる。
【0014】
[適用例2]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記コントローラーが、少なくとも前記薬液投与制御情報を表示する表示部を備えていることが好ましい。
ここで、表示部としては、例えば液晶ディスプレイであって、カラー表示であることがより望ましい。
【0015】
このように、薬液投与制御情報を表示することで、医師はその情報を薬液投与開始時に確認し、また、薬液投与途中においてもポンプユニットがどのような薬液投与制御情報に基づいて駆動させているかを確認でき、さらに安全性を高めることができる。
【0016】
[適用例3]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記コントローラーと前記ポンプユニットとが、前記薬液投与制御情報の入出力を行う通信手段を有していることが好ましい。
なお、通信手段としては、赤外線通信(IrDA)、電波による無線通信、USB(Universal Serial Bus)等の非接触式または有線通信手段を採用できる。
【0017】
非接触式通信手段を採用すれば、コントローラーは、一般のリモートコントローラーと同様な使い方でポンプユニットに薬液投与制御情報を入力することができる。また、USBを採用すれば、通信の信頼性を高めることができる。
【0018】
さらに、ポンプユニットにも送信手段を設ければ、ポンプユニットのカム回転速度や駆動経過時間等の駆動状態をコントローラーに送信することが可能となり、医師がポンプユニットの駆動状態を随時確認することできる。
【0019】
[適用例4]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記リザーバーが、前記ポンプユニットの内部に前記ポンプ駆動部に対して併設されていることが望ましい。
【0020】
チューブを圧閉、開放して薬液を吐出する形式のポンプユニットでは、リザーバーの薬液が減少した場合、リザーバー内部の内部圧力が大気圧とほぼ同等になることが要求されるため、リザーバーは柔軟性を有する材質で形成される。しかしながら、リザーバー単独の形態で人体に装着した場合、リザーバーが外部から圧縮されることにより内部圧力が上昇することに起因する薬液吐出量の変動が考えられる。そこで、リザーバーをポンプユニット内(具体的には筐体内)に配設することで、外部の人為的な圧力上昇に伴う薬液吐出量の変動を排除できる。
【0021】
[適用例5]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記ポンプユニットが、人体の一部または近傍の器材の一部に吊着または装着する装着手段を備えていることが望ましい。
【0022】
薬液の投与経路は、静脈内投与・皮下投与等が想定されるが、薬液注入位置は様々である。そこで、ポンプユニットに吊着紐(ストラップ)やバンド等の装着手段を備えることにより、ポンプユニットの装着位置が限定されず、ポンプユニットを装着(携行)した状態での行動の自由度を増すことができる。
【0023】
[適用例6]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記ポンプユニット及びまたは前記コントローラーを着脱可能に保持するホルダーが、更に備えられていることが望ましい。
ここで、ホルダーとしては、例えば机上置きタイプやポール装着タイプ等がある。
【0024】
このようにホルダーを備え、ポンプユニットまたはコントローラー、またはどちらか一方を保持可能な構成にすることにより、ポンプユニットをホルダーに載置した状態で薬液投与が可能となる。薬液投与量(リザーバーの容量)が大きくポンプユニットを人体に装着しにくい場合や、リザーバーをポンプユニットから分離させるような場合には特に利便性が高い。
【0025】
[適用例7]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記ポンプユニットが、前記ポンプ駆動部の異常を報知するための警報手段を有していることが望ましい。
なお、警報手段としては、ランプ表示やブザー等がある。
【0026】
このような警報手段を備えることにより、薬液投与中にポンプ駆動部が停止してしまったり、カムが所定回転速度を逸脱したような場合に患者自身または医療スタッフに報知し、異常を是正することができる。
【0027】
なお、警報手段が起動した場合に、ポンプユニットからコントローラーに無線通信手段により入力すれば、離間した医師や医療スタッフに報知することができ、より安全性を高める。
【0028】
[適用例8]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記ポンプユニットが、前記ポンプ駆動部を含むポンプ駆動ユニットと、前記リザーバーを含むリザーバーユニットと、からなり、前記ポンプ駆動ユニットと前記リザーバーユニットが着脱可能であって、前記リザーバーユニットを前記ポンプ駆動ユニットに装着した場合に、前記リザーバーと前記チューブとが連通されることが望ましい。
【0029】
つまり、リザーバーユニットをカセット型にし、リザーバー容量を複数種類用意すれば、ポンプ駆動ユニットを共通構成にして、リザーバーユニット交換により、薬液総投与量を変更することができる。このようにすれば、リザーバーの容量毎にポンプユニットを構成する必要がないので経済性を向上させることができるという効果がある。
【0030】
[適用例9]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記ポンプユニットを保持するポンプ駆動ユニットホルダーが、更に備えられていることが望ましい。
【0031】
リザーバーユニットをポンプ駆動ユニットに装着してポンプユニットとして一体化し、ポンプ駆動ユニットホルダーに装着すれば、使用途中にリザーバーユニットとポンプ駆動ユニットとが分離することを防止できる。
【0032】
[適用例10]上記適用例に係る薬液投与装置において、前記ポンプユニットが、ボーラス機能を備えていることが望ましい。
ここで、ボーラス機能とは、薬液が疼痛緩和剤の場合に、患者が自ら薬液を投与することができる機能を意味する。
【0033】
このようにボーラス機能を設けることにより、患者は自己調節鎮痛法(PCA:Patient−Contorolled Analgesia)を持つことができる。従って、ボーラス機能を有する場合、薬液投与制御情報には、ボーラス投与量、ロックアウト間隔等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態1に係る薬液投与装置の概略構成を示す正面説明図。
【図2】実施形態1に係るポンプユニットの概略構造を示す断面図。
【図3】実施形態1に係るコントローラーの概略構造を示す断面図。
【図4】実施形態1に係るホルダーによるポンプユニット及びコントローラーの保持状態を示し、実施例1の斜視図、(b)は実施例2の正面図。
【図5】実施形態1に係る薬液投与装置のシステム構成説明図。
【図6】実施形態1に係るポンプユニットを示す平面機能構成図。
【図7】図6のA−P−Aの切断面を示す部分断面図。
【図8】実施形態2に係るポンプユニットを示し、(a)は平面構成図、(b)は断面構成図。
【図9】実施形態3に係るポンプユニットを示し、(a)は装着説明図、(b)はポンプユニットホルダーを示す平面図。
【図10】実施形態4に係るポンプユニットの装着手段を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
【0036】
図1は、実施形態1に係る薬液投与装置の概略構成を示す正面説明図、図2はポンプユニットの概略構成を示す断面図、図3はコントローラー200の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、薬液投与装置1は、薬液を輸送するポンプユニット10と、ポンプユニット10に薬液投与制御情報を入力するコントローラー200とから構成されている。
【0037】
まず、ポンプユニット10の構成を説明する。図1,2において、ポンプユニット10は、薬液を輸送するための機構部からなるポンプ駆動部11と、薬液を収容するリザーバー60と、を筐体内に収納されて構成される。ポンプ駆動部11とリザーバー60とは、柔軟性を有するチューブ50によって接続される。
【0038】
リザーバー60の外端部には、筐体を貫通するように薬液注入部としてのセプタム80が配設されており、リザーバー60内に薬液を注入(初期注入及び補充注入を含む)、且つ封止するために備えられている。
【0039】
また、ポンプ駆動部11の上方には、ポンプ駆動部11の駆動/停止を司るON/OFFスイッチ12と、ボーラススイッチ13と、ポンプ駆動部11の駆動に異常があることを検出した場合に患者自身または医療スタッフに報知するための警報手段としてのランプ14とが配設されている。なお、警報手段としては、ランプのほかにブザー等の報音装置であってもよい。
【0040】
ボーラススイッチ13は、薬液が疼痛緩和のためのモルヒネやフェンタニル等の麻薬性鎮痛薬の場合に備えられるものであって、患者自身が薬液の投与を選択的に行うことを可能にしている。
【0041】
ON/OFFスイッチ12と、ボーラス(Bolus)スイッチ13と、ランプ14と、駆動制御部100(図5、参照)とは、回路基板121に接続固定されている。また、ポンプ駆動部11と下ケース15との間には、ボタン型またはコイン型の電池120が配設されている。
【0042】
ここで、下ケース15には、電池120を着脱可能にするための電池蓋(図示せず)を設ける構造としてもよく、あるいは充電可能な二次電池としてもよい。二次電池を採用する場合には、駆動制御部100に充電制御回路を含む構成とする。
【0043】
筐体は、下ケース15及び上ケース16からなり、上ケース16には、リザーバー60を外部から視認できるように窓部材81が設けられている。上ケース16(または下ケース15)の両側面の外端部には、吊着紐取付部91,92が形成されており、吊着紐(ストラップ)90が接続される。
【0044】
なお、本実施形態で例示したリザーバー60の薬液容量は10mlであり、ポンプユニット10の体積は概ね9mlである。従って、ポンプユニット10の体積は30ml程度に小型化可能である。
【0045】
チューブ50の先端部は、生体内に薬液を注入するための刺挿部材56(図示は省略)に接続される。薬液の投与経路は、静脈内投与・皮下投与等が想定されるが、薬液注入位置は様々であり、刺挿部材56は投与経路に合わせた使用のものが選択されるため、チューブ50と刺挿針とは着脱可能な構造とする。
【0046】
続いて、コントローラー200の構成について図1、図3を参照して説明する。コントローラー200は、薬液投与制御情報を表示する表示部220と、表示部220の駆動制御等を行う制御部211と、電源としての電池120とが、上ケース201と下ケース202とからなる筐体内部に収納され構成されている。
【0047】
表示部220としては、低消費電流、薄型化可能、表示容量が大きい、タッチスイッチを設けることができる等の理由から液晶ディスプレイを採用することがより好ましい。また、液晶ディスプレイとしては、特に注意すべき情報を色別表示可能なカラー表示であることが望ましい。表示部220の外郭表面側には、窓部材203が上ケース201に貼着固定されている。また、制御部211と、表示部220とはそれぞれ、回路基板210の表裏両面に接続固定される。回路基板210は、薄く、曲げて使用することが可能なフレキシブル基板を用いることが望ましい。
【0048】
コントローラー200には、ON/OFFスイッチ221と送信指令スイッチ222とが備えられている。これらON/OFFスイッチ221と送信指令スイッチ222とは回路基板210に接続される。ON/OFFスイッチ221はコントローラー200の起動及び停止を行い、送信指令スイッチ222はポンプユニット10に薬液投与制御情報のうちのポンプ駆動部11の駆動条件を入力するための操作手段である。
【0049】
ここで、表示部220に表示される薬液投与制御情報としては、少なくとも薬液名、薬液量(ml)、流速(ml/hr:時)、ボーラス投与量(ml)、ロックアウト時間(分)がある。薬液量は投与総量であって、リザーバー60の容量よりも小さく設定される。流速は単位時間当たりの薬液投与量、ボーラス投与量は1回のボーラス投与量であって、ロックアウト時間は、1回のボーラス投与から次のボーラス投与までの禁止時間を表している。
【0050】
また、コントローラー200に用いられる電池は、薄型化するために表示部220に重ならない位置に容量の大きい乾電池(例えば、単4型電池)を複数個(図3では2個)並列に配設される。
以上説明した薬液投与装置1には、ポンプユニット10とコントローラー200を着脱可能に保持するホルダー95をさらに備えていることがより好ましい。
【0051】
図4は、ホルダーによるポンプユニット及びコントローラーの保持状態を示し、(a)は実施例1の斜視図、(b)は実施例2の正面図である。実施例1は、机上等へ載置されるスタンド型のホルダー95を例示している。ポンプユニット10とコントローラー200とは共にスタンド部96に着脱可能に保持される。
【0052】
ポンプユニット10とコントローラー200のホルダー95への保持構造は同じであるため、コントローラー200の保持構造を例示して説明する。スタンド部96には突起96aが形成され、コントローラー200の両側面には溝200aが形成されている。突起96aは溝200aにスライド挿入可能であって、図示矢印で示す方向にコントローラー200をスライドさせることによって、ホルダー95に装着及び取外すことができる。ポンプユニット10とコントローラー200の使用方法については後段で説明する。
【0053】
次に、実施例2について図4(b)を参照して説明する、ポンプユニット10とコントローラー200とは、実施例1と同様な構造で共にスタンド部96に着脱可能に保持されている。そして、ホルダー95はポール300の適切な位置(高さ)に固定される。ホルダー95のポール300への固定構造は、図示は省略するが把持部を有する螺子を用いることができる。
【0054】
続いて、薬液投与装置1のシステム構成について図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る薬液投与装置のシステム構成説明図である。ポンプユニット10は、前述したようにリザーバー60とポンプ駆動部11と、駆動制御部100とを有して構成される。駆動制御部100は、ポンプ駆動部11のモーターの駆動制御を行うモータードライバー101と、ポンプ駆動部11の駆動時間を管理するタイマー102と、ポンプ駆動部11の実際に駆動した時間を判定するカウンター103と、警報手段としてのランプ14(ここでは、LED(Light Emitting Diode)を用いている)の点灯制御を行うLED制御回路104と、これらに電力を供給する電池120を備えて構成されている。
【0055】
さらに、記憶回路110と、通信手段としての受信制御回路111及び送信制御回路112とが備えられている。記憶回路110では、予め設定されているモーターの駆動波形、駆動周波数、及びコントローラー200から入力される薬液投与制御情報を一端格納する。
【0056】
コントローラー200には、表示部220と、制御部211と、薬液投与制御情報を格納する記憶回路213と、通信手段としての受信制御回路214及び送信制御回路215とが備えられている。
【0057】
次に、薬液投与装置1の薬液投与に係る操作、フローについて図5を参照して説明する。まず、ON/OFFスイッチ221をプッシュ操作してコントローラー200を起動させる。その後、記憶回路213に薬液投与制御情報を入力する。薬液投与制御情報の入力は、PC(Personal Computer)250からキーボード操作により入力制御回路216を回して入力するが、表示部220が液晶ディスプレイの場合はタッチスイッチ機能を付加してタッチ操作で入力してもよい。
【0058】
薬液投与制御情報は表示制御回路(液晶ドライバーを含む)212に入力され、表示部220に所定の薬液投与制御情報を表示させる。薬液投与制御情報としては、図1に示すような、薬液名、薬液量(ml)、流速(ml/hr:時)、ボーラス投与量(ml)、ロックアウト時間(分)である。この表示内容を確認した後、送信指令スイッチ222を操作して、ポンプユニット10にポンプ駆動部11の駆動に必要な情報を通信手段を介して入力する。
【0059】
なお、ポンプ駆動部11の駆動に必要な情報とは、薬液量、流速、ボーラス投与量、ロックアウト時間であって、薬液量はポンプ駆動部11の駆動継続時間(休止時間があってもよい)として入力される。流速は、後述するカム20(図6、参照)の回転速度、つまりステップモーター65(図7、参照)の駆動周波数として記憶回路110に入力される。
【0060】
次に、ON/OFFスイッチ12を操作すると記憶回路110に入力された情報を駆動制御部100が読み出し、この情報に基づきポンプ駆動部11を起動する。ポンプ駆動部11は、入力されている駆動周波数で設定された時間駆動し、リザーバー60内の薬液を指定された投与量、投与速度でチューブ50から送出する。
【0061】
設定された時間が経過すると投与量の投与が完了したと判断して、ポンプ駆動部11は停止する。なお、薬液量を補充し更に薬液投与をする場合は、セプタム80から薬液を注入する。この際、薬液投与継続中の補充の場合は、特別な操作をすることなく設定された時間に至るまでポンプ駆動部11は駆動を継続する。また、薬液投与の1サイクルが終了した後に薬液を補充する場合は、薬液補充後、ON/OFFスイッチ12を操作することで、初期に設定された条件でポンプ駆動部11を駆動し、薬液投与を行うことができる。
【0062】
次にボーラス投与について説明する。患者自身が苦痛により薬液投与を必要としたときには、ボーラススイッチ13を操作することによって、予めコントローラー200から入力されているボーラス投与量に従ってポンプ駆動部11を駆動する。つまり、通常投与の場合よりもローター70(図7、参照)の駆動周波数を高くして所定の時間だけ薬液を投与する。
【0063】
ボーラス投与の場合、ロックアウト時間が設定されているのでロックアウト時間が経過するまで、ボーラス投与は禁止される。
【0064】
ここで、ポンプ駆動部11に異常が生じた場合の警報報知について説明する。ポンプ駆動部11の異常としては、ステップモーター65が停止したり、回転速度が遅くなる場合等を想定している。具体的には、ローター70の単位時間あたりの回転数をカウンター103で計数して、予め設定された回転速度(駆動周波数)との差異を検出して、差異があると判定したときには警報手段としてのLEDランプ14を点灯する。従って、LEDランプ14は赤色ランプとすることが望ましい。
【0065】
なお、警報手段としてLEDランプ14を点灯すると同時に通信手段によりコントローラー200にも警報報知すればなお安全性を高めることができる。
【0066】
本実施形態では、通信手段として赤外線通信等、電波による無線通信等の非接触式通信手段、USB等の有線通信手段を採用することができる。
【0067】
赤外線通信を用いる場合は、ポンプユニット10及びコントローラー200それぞれの受信制御回路111、214には受光素子とその制御回路、送信制御回路112,215には発光素子とその制御回路を含む構成とすればよく、概ね数m範囲の通信が可能で、コントローラー200を一般のリモートコントローラーのように扱うことができる。
【0068】
電波による無線通信の場合は、近接無線方式やブルートゥース(Buluetooth)のような近距離無線方式を用いることができる。これらの無線通信の場合は、受信制御回路及び送信制御回路にアンテナとその制御回路を含む構成とする。
【0069】
近接無線方式では通信距離はごく短いが、他のポンプユニットへの影響を与えないことや小型化、低コストか化がしやすいという利点がある。また、ブルートゥースの場合は、通信距離が数m〜数十mとなるため、特に警報報知が出力されたとき、患者から離れた位置にあるコントローラー200にも報知することができるという利点がある。
【0070】
続いて、ポンプ駆動部11の構成及び作用について図面を参照して説明する。
図6は、実施形態1に係るポンプユニットを示す平面機能構成図であり、図7は、図6のA−P−Aの切断面を示す部分断面図である。なお、図6、図7はポンプユニットが定常駆動している状態を表し、図6は、筐体を透視して機能部のみを表している。図6、図7において、ポンプユニット10は、基本構成として、ポンプ駆動部11と、薬液を収容するリザーバー60とから構成されている。
【0071】
ポンプ駆動部11は、リザーバー60と連通し薬液を流動するチューブ50と、カム20と、複数のフィンガー40〜46とを有し、カム20を矢印R方向に回転してフィンガー40〜46を進退させることにより、チューブ50を薬液の上流側(リザーバー60側)から下流側に順次圧閉と開放を繰り返しながらリザーバー60内の薬液を送出する。
【0072】
カム20は、カム駆動車71の回転軸部72に軸止されており、回転軸部72の中心を回転中心Pとして回転される。カム駆動車71はステップモーター65を構成するローター70の回転を図示しない減速ギアを介して回転される。
【0073】
なお、図7に示すように、カム駆動車71は、第1機枠17に植立される軸部材に軸支され、カム20は、カム駆動車71と第2機枠27によって軸支されている。また、ローター70は、第1機枠17と第3機枠28とによって軸支されている。
【0074】
フィンガー40〜46は、チューブ50の円弧形状部とカム20との間に介在され、回転中心P方向から放射状に配設されている。フィンガー40〜46は互いに等角度を有して配設される。
【0075】
カム20は、中心部がカム駆動車71の回転軸部72に軸止され、外周部に4箇所の突出部を備え、これら突出部は4つのフィンガー押圧部21a〜21dを構成している。フィンガー押圧部21a〜21dは、回転中心Pから等距離の同心円上に形成される。
【0076】
フィンガー押圧部21aとフィンガー押圧部21b、フィンガー押圧部21bとフィンガー押圧部21c、フィンガー押圧部21cとフィンガー押圧部21dの互いの周方向ピッチと外形形状は等しく形成されている。
【0077】
フィンガー押圧部21a〜21dはそれぞれ、フィンガー押圧斜面22と、回転中心Pとを中心とする同心円上の円弧部23と、が連続して形成されている。この円弧部23は、フィンガー40〜46を押動しない位置に設けられる。また、フィンガー押圧部21a,21b,21c,21dそれぞれ一方の端部と円弧部23とは、回転中心Pから延長した直線部24で連続されている。
【0078】
チューブ50は、フィンガー40〜46によって押圧される範囲が、回転中心Pに対して同心円となるように形成されたチューブ案内溝182内に装着されている。
【0079】
フィンガー40〜46はそれぞれ、同じ形状で形成されているので、フィンガー44を例示して説明する(図7も参照する)。フィンガー44は、円柱状の軸部44aと、軸部44aの一方の端部に設けられる鍔部44cと、他方の端部が半球状に丸められた当接部44bと、によって形成されている。
【0080】
鍔部44cがチューブ50を押圧する押圧部であり、当接部44bがカム20または第2カム30によって押圧される押圧部である。これらフィンガー40〜46は、チューブ枠18に設けられるフィンガー案内溝181内に装着され、第2機枠27によって断面方向が保持される。
【0081】
フィンガー40〜46は、フィンガー案内溝181に沿って回転中心Pに向かって進退が可能であり、カム20によって外側方向に(つまり、チューブ50に向かって)押動され、チューブ案内壁186との間でチューブ50を押圧して薬液流動部51を圧閉する。従って、フィンガー40〜46の断面方向の中心位置は、チューブ50の断面中心位置とほぼ一致している。
【0082】
リザーバー60は、本実施形態ではチューブ50と同材質で一体に形成され、チューブ50と反対側の端部には、薬液注入部としてのセプタム80が接続されている。セプタム80は、図1及び図2に示すように一部が筐体の外側に臨み、開閉部82から薬液を注入または封止することが可能な構成としている。
【0083】
続いて、本実施形態による薬液の輸送に係る作用について、図6、図7を参照して説明する。なお、図6、図7に示す状態は薬液輸送の途中の一部を表しており、カム20のフィンガー押圧部21dでフィンガー44を押動し、フィンガー45は、フィンガー押圧部21dとフィンガー押圧斜面22との接合部に当接している。従って、フィンガー44,45はチューブ50を圧閉している。また、フィンガー46は、フィンガー押圧斜面22上でチューブ50を押圧しているが、フィンガー44,45の押圧量より小さく、チューブ50を完全には圧閉していない。
【0084】
フィンガー41〜43は、カム20の円弧部23の範囲にあり、押動されない初期位置にある。また、フィンガー40は、カム20のフィンガー押圧斜面22に当接しているが、この位置では、まだチューブ50を圧閉していない。
【0085】
この位置から、さらにカム20を矢印R方向に回転すると、カム20のフィンガー押圧部21dが、フィンガー45,46の順に押動してチューブ50を圧閉していく。その際、フィンガー44は、フィンガー押圧部21dとの係合から解除されチューブ50は開放される。チューブ50のフィンガーによる圧閉が開放される位置またはまだ圧閉されていない位置には、薬液流動部51に薬液が流入してくる。
【0086】
カム20をさらに回転すると、フィンガー押圧斜面22が、フィンガー40,41,42,43の順に、順次押圧していき、フィンガー40,41,42,43の順にフィンガー押圧部21cが当接部に達したときに順次チューブ50を圧閉する。
このような動作を繰り返すことにより、薬液を上流側から下流側に向けて流動し、刺挿部材56から吐出する。
【0087】
この際、カム20フィンガー押圧部21a〜21dには、フィンガー40〜46のうちの2本が当接し、次のフィンガーがチューブ50を圧閉する位置に移動するときには、そのフィンガーのうちに1本がチューブ50を圧閉する。このように、フィンガー40〜46のうちの2本がチューブ50を圧閉する状態と、1本がチューブ50を圧閉する状態と、を繰り返すことにより、少なくとも1本のフィンガーがチューブ50を常時圧閉している状態を形成する。
【0088】
このことにより、カム20がフィンガーを順次押圧していくときに、各フィンガーによる圧閉と開放の切換時においても、必ず1本のフィンガーがチューブ50を圧閉し、薬液の逆流を防止すると共に、薬液を連続流動することを可能にする。
【0089】
続いて、フィンガーがチューブ50を圧閉する構造の詳細について図7を参照して説明する。なお、フィンガー44がチューブ50を閉塞する状態を例示して説明する。チューブ50は、チューブ枠18に設けられたチューブ案内溝182内に断面方向の大部分が挿入されて、その位置に保持されている(図中、二点鎖線で表す)。
【0090】
フィンガー44は、チューブ枠18に設けられたフィンガー案内溝181内に軸方向に進退可能に装着される。このフィンガー案内溝181とチューブ案内溝182とが接続する部分には、フィンガー44に設けられる鍔部44cが移動可能な凹部185が穿設されている。さらに、チューブ案内溝182に対して垂直に設けられるチューブ案内壁186の下部には、チューブ50が圧閉された際の変形可能な領域となる凹部が形成されている。
【0091】
チューブ50の上方には、第2機枠27が設けられ、第2機枠27には、チューブ案内溝182に対向する位置にチューブ50が装着可能な大きさの溝と、凹部185に対向する凹部271と、チューブ50が閉塞されて変形可能な領域となる凹部とが形成されている。チューブ50は、カム20のチューブ押圧部がフィンガーを押動していないときには、薬液流動部51は開放されている(このときのフィンガー44の位置を二点鎖線で表す)。
そして、フィンガー押圧部21dがフィンがー44の当接部44bに達すると、フィンガー44(鍔部44c)がチューブ50を圧閉する。
【0092】
従って、本実施形態による薬液投与装置1は、薬液を輸送するポンプユニット10と薬液投与制御情報を入力するコントローラー200を別体で備えているため、医師がこの薬液投与制御情報を患者の様態に応じて任意に変更することにより、ポンプ駆動部11の駆動を制御して、適切な薬液投与を行うことができる。
【0093】
また、薬液投与速度はカム20(つまり、ステップモーター65)の回転速度で律せられ、薬液投与量は、薬液投与速度と投与時間により決定されることから、薬液投与量及び薬液投与速度を正確に制御することができる。
【0094】
さらに、ポンプユニット10とコントローラー200とは分離しており、投薬投与制御情報は、コントローラー200によって医師のみが設定することが可能であるため。患者自身が勝手に変更できないことから安全性を高めることができる。
【0095】
また、コントローラー200が、表示部220を備え、少なくとも薬液投与制御情報を表示することから、医師はその情報を薬液投与開始時に確認し、また、薬液投与途中においてもポンプユニット10がどのような薬液投与制御情報に基づいて駆動させているかを確認できるため、さらに安全性を高めることができる。
【0096】
また、コントローラー200とポンプユニット10とが、薬液投与制御情報の入出力を行う通信手段を有している。赤外線通信、電波による無線通信等の非接触式通信手段を採用すれば、コントローラー200は一般のリモートコントローラーと同様な使い方で、ポンプユニット10に薬液投与制御情報を入力することができる。また、USBを採用すれば、通信の信頼性を高めることができる。
【0097】
さらに、ポンプユニット10にも送信手段を設ければ、ポンプユニット10のカム回転速度や駆動経過時間等の駆動状態をコントローラー200に送信することが可能となり、医師がポンプユニット10の駆動状態を随時確認することできるという効果がある。
【0098】
チューブ50を圧閉及び開放して薬液を吐出する形式のポンプユニットでは、リザーバー60の薬液が減少した場合、リザーバー60内部の内部圧力が大気圧とほぼ同等になることが要求されるため、リザーバー60は柔軟性を有する材質で形成される。しかしながら、リザーバー60単独の形態で人体に装着した場合、リザーバー60が外部から圧縮され内部圧力が上昇することに起因する薬液吐出量の変動が考えられる。そこで、リザーバー60をポンプユニット10内(具体的には筐体内)に収納することで、外部からの人為的な圧力上昇に伴う薬液吐出量の変動を排除できる。
【0099】
また、ポンプユニット10が、人体の一部または近傍の器材の一部に吊着または装着する装着手段としての吊着紐90を備えている。薬液の投与経路は、静脈内投与・皮下投与等が想定されるが、薬液注入位置は様々である。そこで、ポンプユニット10に吊着紐(ストラップ)を備えることにより、患者は、吊着紐を首に吊り下げて使用することが可能となり、ポンプユニットを装着(携行)した状態での行動の自由度を増すことができる。
【0100】
また、患者が静止状態の場合には、ホルダー95の一部に吊り下げて使用することや、ポール300に吊り下げて使用することができる。
【0101】
また、薬液投与装置1は、ポンプユニット10とコントローラー200の両方、またはいずれか一方を着脱可能に保持するホルダー95を更に備えている。このようにホルダー95にポンプユニット10またはコントローラー200を保持可能な構成にすることにより、ポンプユニット10をホルダーに載置した状態で薬液投与が可能となる。薬液投与量(リザーバー60の容量)が大きくポンプユニット10を人体に装着しにくい場合には、患者または医療スタッフにとって利便性が高まる。
【0102】
また、ポンプユニット10は、ポンプ駆動部11の異常を報知するための警報手段としてのランプ14(または、ブザー等)を有している。このような警報手段を備えることにより、薬液投与中にポンプ駆動部11が停止していたり、カム20が所定回転速度を逸脱したような場合に患者自身または医療スタッフに報知し、異常を是正することができる。
【0103】
なお、警報手段が起動した場合に、ポンプユニット10からコントローラー200に無線通信手段により報知すれば、離間した医師や医療スタッフに報知することができ、より安全性を高める。
【0104】
さらに、ポンプユニット10は、ボーラス機能を備えている。このようにボーラス機能を設けることにより、患者は自己調節鎮痛法により、疼痛を緩和したいときに、ボーラススイッチ13を操作して薬液投与量を増加させることができる。なお、ボーラス機能を有する場合、コントローラー200によりロックアウト時間を設定するため、過度な鎮痛剤の投与を防止できる。
(実施形態2)
【0105】
続いて、実施形態2について図面を参照して説明する。前述した実施形態1は、リザーバー60の容量が10ml程度の場合の構成を例示したが、実施形態2はリザーバー容量が100ml程度の大きさの場合の構成であることを特徴としている。従って、同じ機能を有する構成要素には実施形態1と同じ符号を附して説明し、共通部分の説明は省略する。
図8は、実施形態2に係るポンプユニットを示し、(a)は平面構成図、(b)は断面構成図である。
【0106】
図8(a),(b)において、本実施形態によるポンプユニット10は、ポンプ駆動部11と容量が100mlのリザーバー60を有して構成されている。ここで、ポンプ駆動部11は、前述した実施形態1のポンプ駆動部と共通仕様のものを用いることができる。また、ON/OFFスイッチ12、ボーラススイッチ13、警報手段としてのランプ14、通信手段(図示せず)を有しており、これらの機能も実施形態1と同機能を有している。
【0107】
本実施形態では、スタート/ストップスイッチ19を備えている。スタート/ストップスイッチ19は必ずしも必須ではないが、リザーバー60の容量が大きいため、投薬途中で休止し、再投薬するような場合に便利である。なお、実施形態1にこのスタート/ストップスイッチ19を設ける構成としてもよい。
【0108】
本実施形態では、電池として大容量の電池120(例えば、単4電池2本使用の場合を例示)を搭載している。この際、電池120はポンプ駆動部11と重ねて配設することが望ましい。
【0109】
なお、これらポンプ駆動部11、リザーバー60、電池120は、上ケース16及び下ケース15からなる筐体内部に収納されている。また、リザーバー60の上方には透明な窓部材81が設けられている。
【0110】
このように、リザーバー60の薬液収容容量を大きくしても、ポンプ駆動部11は、リザーバーが小容量の場合と共通にすることができ、薬液の注入量が大きい場合にも対応可能となる。
【0111】
また、リザーバー60が大容量の場合は、ポンプ駆動部11を長時間にわたって駆動する必要があるが、大容量の電池120を使用することで、長時間継続駆動を可能にする。さらに、ポンプ駆動部11が小型且つ薄型のため、電池120をポンプ駆動部11と重ねて配設することを可能にし、リザーバー60を大容量化してもスペースの有効活用によりポンプユニット10として小型化できる。
【0112】
なお、本実施形態においても、ポンプ駆動部11及びコントローラー200を保持するホルダー95を備える構成とすること、ポンプ駆動部11に吊着紐90を取り付けることが可能である。
(実施形態3)
【0113】
続いて、実施形態3について図面を参照して説明する。前述したポンプユニット10がポンプ駆動部11とリザーバー60とが筐体内に併設されていることに対し、実施形態3は、リザーバーユニットとポンプ駆動ユニットとが着脱可能に構成されていることを特徴としている。実施形態1との相違箇所を中心に説明する。
【0114】
図9は、本実施形態に係るポンプユニットを示し、(a)は装着説明図、(b)はポンプユニットホルダーを示す平面図である。リザーバーユニット130は、筐体131と筐体内に収納されるリザーバー60とから構成されている。リザーバー60の一方の端部には接続チューブ134が接続されている。
【0115】
筐体131のポンプ駆動ユニット140側端部には装着突起部132と接続部133とが形成されている。そして接続チューブ134の先端部が接続部133の端部まで延在されている。
【0116】
ポンプ駆動ユニット140は筐体141と筐体内に収納されるポンプ駆動部11とから構成されている。筐体141のリザーバーユニット130側端部には、凹部142とさらに穿設される接続部143とが形成されている。そして、チューブ50の一方の先端部が、接続部143の端部まで延在されている。
【0117】
ここで、リザーバーユニット130を矢視方向にポンプ駆動ユニット140に装着させる。装着突起部132と凹部142とはほぼ同形状であって、リザーバーユニット130とポンプ駆動ユニット140との位置規制を行い、接続部133を接続部143に嵌着させることによりリザーバー60とチューブ50とが接続チューブ134を介して連通される。なお、チューブ50とリザーバー60との接続は、既知の接続部材を用いる構成としてもよい。
【0118】
このように構成されるポンプユニット10は、リザーバーユニット130とポンプ駆動ユニット140とを装着した状態で、ポンプユニットホルダー150に装着される構成とすることがより好ましい。
【0119】
ポンプユニットホルダー150は、平面形状がポンプユニット10の平面形状とほぼ同形状であって、2箇所のポンプユニット取り付け部153,154が設けられている。ポンプユニット取り付け部153,154は、本実施形態では取り付け孔を例示している。ポンプユニット10のポンプユニットホルダー150の取り付け方法としては、ポンプユニット10をポンプユニットホルダー150の所定の位置に配設した後、固定ねじを用いて螺着固定する構造を採用できる。
【0120】
なお、ポンプユニットホルダー150には、吊着紐取り付け部151,152が形成されており、吊着紐90が取り付けられている。従って、ポンプユニット10をポンプユニットホルダー150に装着した状態でホルダー95に装着可能な構成とすることもでき、前述した実施形態1と同様に首等に吊り下げて使用することができる。
【0121】
従って、本実施形態によれば、リザーバーユニット130をカセット型にし、リザーバー容量を複数種類用意すれば、ポンプ駆動ユニット140を共通構成にしながらリザーバーユニット130の交換により、継続投与可能な薬液総投与量を変更することができる。このようにすれば、リザーバー60の容量毎にポンプ駆動ユニット140を用意する必要がないので経済性を向上させることができるという効果がある。
【0122】
リザーバー60の容量をさらに大きくする必要がある場合には、点滴用の輸液バッグをリザーバーユニットとしてポンプ駆動ユニット140に接続することも可能である。
【0123】
また、リザーバーユニット130をポンプ駆動ユニット140に装着してポンプユニット10として一体化し、ポンプユニットホルダー150に装着すれば、使用途中にリザーバーユニット130とポンプ駆動ユニット140とが分離してしまうことを防止できる。
(実施形態4)
【0124】
続いて、実施形態4に係る薬液投薬装置について図面を参照して説明する。実施形態4は、前述した実施形態1〜実施形態3によるポンプユニットが、装着手段として吊着紐を有していることに対して、バンドによる装着としていることに特徴を有している。なお、ポンプユニットの形態としては、実施形態1〜実施形態4に示した形態のいずれにも適合可能であるが、実施形態1によるポンプユニットを例示して説明する。
【0125】
図10は、実施形態4に係るポンプユニットの装着手段を示す斜視図である。図10において、装着手段は帯状のバンド160と、バンド160に取り付けられたホルダー部161とから構成されている。バンド160は、装着対象(例えば、腕、胴または脚等)に合わせた長さを選択使用する。そしてバンド160の両端部には、マジックテープ163(登録商標)が設けられ着脱を容易にしている。
【0126】
ポンプユニット10には、両側面にホルダー部取付け溝10aが形成されている。また、ホルダー部161には突起部162が形成されており、ホルダー部取付け溝10aに突起部162をスライド挿着することで、ポンプユニット10をバンド160に装着することができる。
なお、バンド160の形態及びポンプユニット10のバンド160への装着構造は1例であって、生体の一部にポンプユニット10を装着する目的を達成できる範囲で変形または改良等は本実施形態に含まれるものである。
【0127】
このような構成にすれば、ポンプユニット10に吊着紐90のほかにバンド160にも取付け可能な構成とすることによって、ポンプユニット10の装着位置が限定されず、ポンプユニット10を装着(携行)した状態での行動の自由度を増すことができる。
【0128】
なお、ポンプユニット10には、吊着紐90を取り付けるための吊着紐取付部91,92と、バンド160に取り付けるためのホルダー部取付け溝10aの両方を備える構成とすれば、吊着紐90及びバンド160のいずれかを適宜選択して使用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1…薬液投与装置、10…ポンプユニット、12…ON/OFFスイッチ、13…ボーラススイッチ、14…警報手段としてのランプ、20…カム、40〜46…フィンガー、50…チューブ、60…リザーバー、200…コントローラー、220…表示部、221…ON/OFFスイッチ、222…送信指令スイッチ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容するリザーバーに連通する柔軟性を有するチューブとカムと前記カムの回転中心方向から放射状に配設される複数のフィンガーとを有するポンプ駆動部を備え、前記複数のフィンガーを前記カムによって進退させ、前記チューブを上流側から下流側に向かって圧閉と開放を繰り返して薬液を輸送するポンプユニットと、
前記ポンプユニットに薬液投与制御情報を入力するコントローラーと、
が備えられ、
前記薬液投与制御情報に基づき、前記ポンプ駆動部が駆動制御されることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液投与装置において、
前記コントローラーが、少なくとも前記薬液投与制御情報を表示する表示部を備えていることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薬液投与装置において、
前記コントローラーと前記ポンプユニットとが、前記薬液投与制御情報の入出力を行う通信手段を有していることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項4】
請求項1に記載の薬液投与装置において、
前記リザーバーが、前記ポンプユニットの内部に前記ポンプ駆動部に対して併設されていることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項5】
請求項1に記載の薬液投与装置において、
前記ポンプユニットが、人体の一部または近傍の器材の一部に吊着または装着する装着手段を備えていることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項6】
請求項1に記載の薬液投与装置において、
前記ポンプユニット及びまたは前記コントローラーを着脱可能に保持するホルダーが、更に備えられていることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項7】
請求項1に記載の薬液投与装置において、
前記ポンプユニットが、前記ポンプ駆動部の異常を報知するための警報手段を有していることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項8】
請求項1に記載の薬液投与装置において、
前記ポンプユニットが、前記ポンプ駆動部を含むポンプ駆動ユニットと、前記リザーバーを含むリザーバーユニットと、からなり、
前記ポンプ駆動ユニットと前記リザーバーユニットが着脱可能であって、前記リザーバーユニットを前記ポンプ駆動ユニットに装着した場合に、前記リザーバーと前記チューブとが連通されることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項9】
請求項8に記載の薬液投与装置において、
前記ポンプ駆動ユニットを保持するポンプユニットホルダーが、更に備えられていることを特徴とする薬液投与装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の薬液投与装置において、
前記ポンプユニットが、ボーラス機能を備えていることを特徴とする薬液投与装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−19563(P2011−19563A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164965(P2009−164965)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】