説明

薬液散布作業車両

【課題】自動的に上昇又は下降させる制御を安全に行える薬剤散布作業車両を提供すること。
【解決手段】薬液タンク18からの薬液を圃場に散布するセンターブーム43と左右のサイドブーム44と操舵角センサ7の旋回角度が所定値になると自動的に旋回外側のブーム44の上昇を行い、次いで旋回角度がさらに所定値になる自動的に旋回外側のブーム44の下降を行う制御とブーム44の上昇時間と下降時間を区別して設定し、記憶しておく制御装置100を備えた車両であり、ブーム44の上昇時間に応じた上昇量に合わせたブーム44の下降時間を設定できるので、操縦者の車両操縦能力に応じた薬液散布のタイミングを決めることができ、旋回終了してない間にブーム44が下降完了したものとして薬液散布を始めること、ブーム44が下降完了してない間に車両が直進する領域を作る等の不具合がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液タンクに収容された薬液を圃場に散布する薬剤散布作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センターブーム及びその両側に拡げることができるサイドブームからなる薬液の散布ブームを機体の前部にローリング自在に支持して設け、これらの散布ブームから薬液などを圃場で生育中の散布対象の作物に噴霧する薬剤散布作業車両があり、該薬剤散布作業車両の車速を、車体に設けた車速センサの他にGPSを利用して測定する構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−8187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の発明によれば、GPS受信機を搭載してGPSから得た位置情報と速度情報を検出し、得られた位置情報と速度情報に基づき作業車両の走行開始から散布した薬液の使用量を検出し、薬液タンクへの薬液補充タイミングを予測することができる構成が開示されている。
しかし、上記特許文献1記載の薬剤散布作業車両の左右に拡げたサイドブームから薬液を圃場に散布する途中で、該作業車両が畦際で旋回する場合には旋回外側のサイドブームが畦畔に接触しないように上げ操作していた。ところが、薬剤散布作業車両の操縦その他の作業中に畦際に近づくと、旋回外側のサイドブームを畦に接触させないように手動で上げ操作することが面倒で、うっかり忘れてサイドブームが畦に接触して損傷することもあった。そこで、本出願人は、旋回時又は旋回終了時に旋回外側のサイドブームを自動的に上昇又は下降させる制御を安全性を考慮して行える薬剤散布作業車両の開発を行い、それに関する特許出願を行っている。
本発明の課題は、さらに自動的に上昇又は下降させる制御を安全に行える薬剤散布作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題を解決するために次のような解決手段を採用する。
請求項1記載の発明は、薬液を貯留する薬液タンク(18)と、該薬液タンク(18)からの薬液を圃場に散布するセンターブーム(43)と該センターブームの左右に配置したサイドブーム(44)と、車速検出手段(5,6)と、左右のサイドブーム(44)の上下動をそれぞれ行うための上下シリンダ(29)と、左右の車輪(12)の切れ角を検出する操舵角センサ(7)と、薬液タンク(18)と薬液散布ブーム(43,44)との間の薬液流路に設けた薬液を吐出する防除ポンプ(65)と、該防除ポンプ(65)の設置箇所より後流側の薬液流路に設けた薬液の吐出圧力を調整する薬液流量調節弁(73)を設け、薬液流量調節弁(73)の開閉を行う流量制御モータ(10)と、車速と予め設定された単位面積当たりの薬液散布量(A)との関係から防除ポンプ(65)の吐出圧力を計算し、該吐出圧力計算値に一致するように前記流量制御モータ(10)による薬液流量調節弁(73)の開度調整を行う薬剤散布作業車両において、操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値(例;7度)に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の上昇を行い、一旦直進走行の後(又は操舵角センサが略0度になった後、ブーム(44)が長いため一旦直進走行が入ることになる。)、再び操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値(例;7度)に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の下降を行う制御構成と、旋回時におけるサイドブーム44の上昇時間と下降時間を区別して設定し、記憶しておく制御構成を有する制御装置(100)を備えたことを特徴とする薬剤散布作業車両である。
【0006】
請求項2記載の発明は、操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の上昇を行い、一旦直進走行の後(又は操舵角センサが略0度になった後)再び操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の下降を行い、その後操舵角センサ(7)が略0度となり旋回開始から180度の旋回が終了すると、作業での直進走行に入る構成とし、前記旋回外側のサイドブーム(44)を下降させる場合に、サイドブーム(44)の上昇時間に定数(K)を乗算した値を下降時間として設定する制御構成を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項1記載の薬剤散布作業車両である。
【0007】
請求項3記載の発明は、旋回外側のサイドブーム(44)の下降時間としてサイドブーム(44)の上昇時間に定数(K)を乗算した値として設定したときに、前記定数(K)を変更して新たな下降時間の設定が可能な制御構成を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項2記載の薬剤散布作業車両である。
【0008】
請求項4記載の発明は、操舵角センサ(7)の旋回角度に基づき自動的に行う旋回外側のサイドブーム(44)の昇降制御の入り切りを設定可能にするサイドブーム昇降制御の入切設定手段(22)と、該入切設定手段(22)により設定されたサイドブーム(44)の昇降状態を目視できるモニタ画面に画像を表示する画像表示手段(41)を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薬剤散布作業車両である。
【0009】
請求項5記載の発明は、操舵角センサ(7)による旋回検知前に旋回外側のサイドブーム(44)を手動で上昇操作が行われると、前記手動操作時間が一定時間(例2〜3秒)以上継続する場合は、操舵角センサ(7)により旋回が検知されても、旋回外側のサイドブーム(44)を自動的に上昇させない制御構成を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の薬剤散布作業車両である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、サイドブーム44の上昇時間と下降時間を区別して設定し、記憶できることにより、サイドブーム44の上昇時間に応じた上昇量に合わせたサイドブーム44の下降時間を設定でき、オペレータの車両操縦能力に応じた薬液散布のタイミングを決めることができる。そのため、旋回終了してない間にサイドブーム44が下降完了したものとしてから薬液散布をはじめるなどの不具合がなくなる。また、前記サイドブーム44が下降完了してない間に車両が直進する領域を作るような不具合もなくなる。 また、圃場の状況、即ち旋回外側の畦等の障害物が低い場合などにおいては、旋回外側のサイドブームを上昇させすぎないようにすることで、下降する時間も早くなるので、速やかに次工程の散布作業を開始可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明に加えて、上昇時間に定数(K)を乗算した値を下降時間として設定してサイドブーム44の下降時間に応じた適切な下降量とすることで、オペレータの車両操縦能力に応じて薬液散布のタイミングを決めることができ、旋回終了してない間にサイドブーム44が下降完了したものとしてから薬液散布をはじめるなどの不具合がなくなる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明に加えて、サイドブーム(44)の上昇時間に定数(K)を乗算した値を下降時間として設定しても、前記定数(K)を変更して新たな下降時間を設定することができるので、より適切なサイドブーム(44)の下降時間が得られるので、旋回開始から180度の旋回が終了したときの薬液散布の開始タイミングをより適切に設定することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明に加えて、サイドブーム44の昇降制御の入り切りを設定可能にするサイドブーム昇降制御の入切設定手段22によるサイドブーム44の昇降状態をオペレータは画像表示手段41のモニタ画面で目視できるので薬液散布作業性に優れた走行車両が得られる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかに記載の発明に加えて、旋回前に既にサイドブーム44が手動で上昇操作されていると、旋回が始まっても、旋回外側のサイドブーム44の自動的な上昇制御をさせないので旋回外側のサイドブーム44が上昇し過ぎることを防ぐことができる。作業者の意図以上に上昇させないことで、下降が速やかに実施され、次工程の散布作業が容易に実行可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による薬剤散布作業車の側面図である。
【図2】図1の薬剤散布作業車の平面図である。
【図3】図1の薬剤散布作業車のコントローラパネルの平面図である。
【図4】図1の薬剤散布作業車の制御ブロック図である。
【図5】図1の薬剤散布作業車の本機コントローラと防除機コントローラの構成図である。
【図6】図1の薬剤散布作業車の薬剤散布配管系統の構成図である。
【図7】図1の薬剤散布作業車の薬剤散布制御のフローチャートである。
【図8】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図9】図1の薬液散布作業車両の圃場端部での走行様態を説明する図である。
【図10】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図11】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図12】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図13】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図14】図1の薬液散布作業車両の圃場コーナ部での走行様態を説明する平面図である。
【図15】図1の薬液散布作業車両の薬液散布制御のフローチャートである。
【図16】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図17】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図18】図1の薬液散布作業車両のサイドブームの昇降制御のフローチャートである。
【図19】図1の薬液散布作業車両の圃場コーナ部での走行様態を説明する平面図である。
【図20】図1の薬液散布作業車両の薬液散布制御のフローチャートである。
【図21】図1の薬液散布作業車両の薬液散布制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1に薬剤散布装置を前部に取り付けた薬剤散布作業車の側面図を示し、図2には薬剤散布作業装置部分の平面図を示す。なお、本明細書では薬剤散布作業車の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0017】
薬剤散布作業車の車体(車体フレーム)1は、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持する。また、ハンドルポスト59により支持されたステアリングハンドル14の回転操作により前輪12を操向すると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された薬液タンク18を車体1に対し着脱自在に搭載し、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する防除ポンプ65が車体1の操縦席17の下方に設けられている。
【0018】
操縦席17の左側下方でフロア54の上方に位置する薬液タンク18の左側部には、オペレータ一人が乗り降りできる程度の凹部Sが設けられ、該凹部Sの底面にタンク側ステップ50が設けられている。タンク側ステップ50の外側下方には、本機側ステップ53が設けられている。この本機側ステップ53は、上面53Aが、フロア54と薬液タンク18の底面とほぼ同一高さとなる位置にある。
【0019】
本機側ステップ53の下方には、フロア54から吊り下げ式に設置された梯子部材55が設けられている。梯子部材55は任意の段数、例えば2段のステップを有している。これらの梯子部材55、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50は所定の間隔で配置されている。このような構成によりオペレータは、梯子部材55のステップ、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50を順に登ることにより、安全かつ容易に操縦席17に到達して乗車できる。
【0020】
本機のフロア54に薬液タンク18を搭載する自走型薬剤散布作業車において、薬液タンク18は本機ダッシュパネル56付近まで前方に突出している。一方、薬液タンク18は上面視でオペレータの足元まで完全に覆い囲った略コの字状の構造を有している。このような構造により薬液タンク18の高さを増加させずにタンク容量を増大させると共に後進時の見通しを確保できる。また、薬液タンク18を前方に長くすることにより、薬液タンク18内の水量の変位による機体の重心移動を小さく抑え、薬剤散布作業時の機体バランスを安定させ、走行性能を高めることができ、機体が後傾して沈没するという事態を回避できる。
なお、図2では薬液タンク18の上面が略コの字形状の略直方体形状のものを図示しているが、これに限定されず、タンク側ステップ50を有する形状であれば任意の形状にすることができる。
【0021】
薬液タンク18の先端部形状は、フロア54のフロントに上方へ浮き上がるように湾曲させた傾斜部51と密着するように形成されている。従って、薬液タンク18を後方から前方へ移動させて傾斜部51で合致させて止めることができる。このような構造により前輪12の横揺れ等によるタイヤと薬液タンク18の干渉を防止でき、薬液タンク18の本機のフロア54上での接地性を高め、タンク18の安定性を高めることができる。
【0022】
前記車体1の前部には、ボンネット15の左右両側部に支持されたリフトリンク3が取り付けられている。リフトリンク3は、アッパリンク24とロワリンク25を平行状に配置して、この前端部間をヒッチブラケット4で連結し、後端部間を直立した支柱23に軸支して平行リンク形態に構成され、この平行リンクが昇降シリンダ27,27により先端部が昇降移動することで散布ブーム19の薬剤散布高さを調節することができる。
【0023】
ヒッチブラケット4の下端部には機体左右方向に伸びるセンターブーム43を取り付けている。またその左右端部に上方に突出したシリンダ取付支柱26が設けられ、シリンダ取付支柱26の上端には電気的に作動制御される油圧タンク付ソレノイドバルブ28を介して伸縮するローリングシリンダである上下シリンダ(ローリングシリンダ)29の上端が取り付けられ、上下シリンダ29の下端にはサイドブーム44が回動自在に取り付けられている。従って、上下シリンダ29の伸縮によりサイドブーム44が昇降される。なお、サイドブーム44は機体の両サイドに収納されるときはサイドブーム受け40で機体に支持される。
【0024】
前記散布ブーム19は、センターブーム43と、このセンターブーム43の外側に折畳可能に連結されるサイドブーム44とから構成され、各々薬液噴霧用の噴霧ノズル45(45a,45b)が一定間隔で配置されている。
サイドブーム44はシリンダ取付支柱26を介してセンターブーム43に取り付けられているが、サイドブーム44はセンターブーム43に設けられた開閉シリンダ30により開閉される。サイドブーム44の開閉角度は開閉シリンダ30の基部に設けたブーム角度右センサ138aとブーム角度左センサ138b(図4)によって検出される。また、サイドブーム44は図示しない装置によって長手方向に伸縮可能である。
【0025】
図3には、図1の薬剤散布作業車に設ける防除用コントローラパネル120の平面図を示す。図3(a)には、表示部が小さめのコントローラパネル120を示す。図3(a)に示すように、ボンネット15の上部に設けたコントローラパネル120には、中央上部のディスプレイ(表示部)122の左側に上位から散布設定123、圧力124、流量125、流量累計126等の表示部が表示されていて、複数の異なる散布条件を表示する構成である。ディスプレイ122の左端部に点灯されるインジケータ(三角マーク)122aによって、このディスプレイ122に表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ122の右側には表示切換用の表示切換ボタン128が設けられている。
【0026】
また、これらの下方には、散布条件に基づいて自動的に薬剤を散布する自動薬剤散布モードを設定するための自動スイッチ129が設けられ、この自動スイッチ129を押して自動の散布制御を行うとき(自動スイッチ129がオンのとき)は、パイロットランプ130が点灯する。この状態で、もう一度自動スイッチ129を押すと、パイロットランプ130が消灯して、手動で薬剤を散布する手動薬剤散布モードに切り換わる。手動散布では、防除ポンプ65の入り切りはポンプスイッチ8の入り切りにより行う。また、手動散布では、停車中でも散布することができる。更に、散布設定スイッチ131、増減ボタンスイッチ132、133、累計リセットスイッチ134等が配置されている。
【0027】
なお、図3(b)に示すように、表示部が大きめのコントローラパネル120を採用しても良い。図3(a)に示すディスプレイ122とは違って、図3(b)に示すディスプレイ122は圃場番号、圃場面積、散布薬剤の種類、設定散布量、散布圧力、累計値が一つの画面に表示されるため、見やすく、分かりやすい。また、散布量スイッチ136を押すと薬剤の散布量を変更でき、圧力スイッチ137を押すと散布圧力を変更できる。
【0028】
そして、オペレータによって自動スイッチ129が押されて自動制御が選択されると(自動スイッチ129を入りにする)、後述する車速センサ6等からの信号により散布(防除ポンプ65)の入り切りを行う。
また、この薬剤散布作業車は、サイドブーム44,44を自動的に水平に動作させるための自動水平制御機能を有する制御装置100を備えている。ここで自動水平制御動作とは、開閉シリンダ30,30によりサイドブーム44,44をセンターブーム43の延長線上の水平方向(機体の進行方向に向かって左右方向)に開き、さらに上下シリンダ29,29であるローリングシリンダを用いてサイドブーム44,44が前記水平状態になるように制御することをいう。すなわち、機体が左右方向に傾斜してもサイドブーム44,44を水平に維持する制御である。サイドブーム44と一体で傾斜するリフトリンク3にサイドブーム44の傾斜を検出するリンク傾斜センサ82が設けられているので、機体が左右方向に傾斜するとリンク傾斜センサ82が傾斜の検出を開始するが、直ぐにリンク傾斜センサ82の傾斜が無くなる(0度検出)ように、前記上下シリンダ29,29を作動させてサイドブーム44を水平に維持する。もちろん、このとき機体は傾斜した状態である。
【0029】
次に上記構成の薬剤散布作業車の制御部について説明する。図4には、図1の薬剤散布作業車の制御ブロック図を示す。
この制御ブロック図に示すように、制御装置(CPU)100には薬剤散布作業車の車速を検出する車速センサ(車速検出手段)6、左右の前輪12,12の操舵角θ(旋回方向も検出)を検出する操舵角センサ(操舵角検出手段)7、薬剤散布の入り・切り用のポンプスイッチ(ポンプスイッチセンサ)8、ブーム昇降用の上下シリンダ29,29のストロークセンサ9、薬液の散布圧力を検出する圧力センサ11、薬液の流量を制御する流量制御弁73の弁開度センサ16、GPSアンテナ(受信機)81からの信号を受信する入力回路などが接続し、操舵装置(ハンドル14や車輪操舵用の油圧シリンダと該シリンダ作動用のソレノイド等からなる)のソレノイド(本実施例の薬剤散布作業車はFWS、4WS、RWSを装備しており、4輪全て油圧シリンダで動く構成である。)、昇降ソレノイド32(シリンダ29用)、水平ソレノイド34(開閉シリンダ30用)、ブザー36、表示部122への出力回路等が接続している。
なお、図4には全てのセンサ、スイッチ類を表示していない。
【0030】
図5には、図1の薬剤散布作業車の本機コントローラと防除機コントローラの構成図を示す。
図5に示すように、薬剤散布作業車(本機)のコントローラ100と薬液タンク18と薬剤散布用ブーム43,44と薬液ホース61,66などとその流量制御弁73などから構成される防除機B(図6)のコントローラ101から本実施例のコントローラは構成され、本機のコントローラ100にはGPS受信機81が接続される。該GPS受信機81は複数のGPS衛星からの信号を受信し、本機の現在位置データとして記憶すると共に、時計回路で計測する所定時間毎に現在位置データを更新しながら移動距離を算出し、該時計回路による所定時間おきに速度、即ち車速を本機コントローラ100にある車速算出手段5により算出する構成としている。また、本機コントローラ100には車軸の回転数から車速を検出する車速センサ6からも入力がある。
【0031】
本実施例の薬剤散布作業車では、該作業車に搭載して車速に連動して薬液を散布する防除機B(図6)において、薬液濃度と車速等により薬剤散布量を決めて防除ポンプ65の薬液吐出量を決める。なお、前記GPS受信機81はGPSからの車両速度情報と位置情報を得ることができる。
従って、GPSから位置情報と速度情報を受信できるGPS受信機81に基づきコントローラ100の車速算出手段5による算出車速と車輪12、13のいずれかの車軸の回転数を検出する車速センサ6からの検出車速のいずれか又は車速算出手段5及び車速センサ6による両方の車速の平均値などを実車速とすることができる。
【0032】
図6には、図1の薬剤散布作業車の薬剤散布配管系統の構成図を示す。
また、この薬剤散布作業車は、薬液タンク18からの給水路(ホース)61に給水コック62を設け、該給水コック62より下流の給水路(ホース)61に設けたサクションフィルタ64の出口部に防除ポンプ65を設けている。該防除ポンプ65の出口部には吐水ホース66を接続し、該吐水ホース66の先端は薬液路67を介して噴霧コック69の設置部に接続している。前記吐水ホース66と薬液路67の間に上流側から順に安全弁70とエアチャンバー71と流量制御弁73と流量センサ74が設置されている。
【0033】
また安全弁70の圧力設定部の吐水ホース66と薬液タンク18との間に余水ホース75が接続されている。前記安全弁70を開いておくと、吐水ホース66内の余分な薬液を薬液タンク18に還流させることができる。また、余水ホース75の設置部より上流側の吐水ホース66から分岐して薬液タンク18に接続した攪拌ホース79も設けられている。なお、流量制御弁73は図4の制御ブロック図に示す流量制御モータ10により開度が制御される。
【0034】
薬液タンク18内の薬液は噴霧コック69を経由して前記センターブーム43,サイドブーム44に供給される。各ブーム43,44への薬液の単位面積(例えば10アール)当たりの供給量(A)は流量制御弁73で調整できる。
GPS受信機81からの速度データや位置データを本機コントローラ100で受信し、該速度、位置データを演算して車速算出手段5により速度を算出し、得られた値を速度信号に変換した後、防除機コントローラ101にシリアル通信で車速算出手段5による車速(第1車速(VG))として送信する。また、前述のように本機には車軸の回転数を車速パルスで計測する車速センサ6が設けられており、該車速センサ6からも車速(第2車速(Vs))を得ることができる。こうしてGPS受信機81から得られる車速算出手段5に基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)を本機側のコントローラ100で計算し、CAN通信により防除機コントローラ101に速度データを送り、薬剤散布制御に利用する構成(薬剤散布機能)とすることもできる。 通常は、車両の発進直後と停止直前は車速センサ6に基づく第2車速(Vs)を車速とし、安定走行時にはGPSによる第1車速(VG)を車速とする場合が多い。
【0035】
ここで本実施例の薬剤散布の基本手順を説明する。
まず、オペレータが10アール当たりの散布量A(リットル/10アール)を決定し、次いで薬剤散布作業を開始すると、GPSに基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)がそれぞれ車速V(m/s)を検知する。そして制御装置100,101が前記第1車速(VG)と第2車速(Vs)(以下、単に車速(VG)、車速(Vs)と言う。)の中のどちらかの車速又は両方の車速に基づく10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した薬液噴霧圧力を計算し、該計算圧力値と実際の吐水ホース66の圧力Pが一致するように流量制御弁73を制御して、ブーム43,44のノズル45a,45bからの薬剤散布量を変化させ、10アール当たりの薬剤散布量Aを設定して作業すれば、車速(VG,Vs)の変動があっても薬液流量が制御され、設定散布量通りに圃場に均一に薬液を散布できる。
【0036】
防除機コントローラ101に車速測定手段がなくても、防除機(薬剤散布装置)Bが連結される本機側の車速測定手段を用いて防除機Bでも車速(Vs)を測定することができるだけでなく、上記図5に示す構成により、本実施例の防除機Bとは別の粉粒体肥料を散布する可変施肥装置等の薬剤散布装置(図示せず)に設けたコントローラを本機コントローラ100とは別に搭載している場合でも、可変施肥装置等の薬剤散布装置は、そのまま車速を使用することができる。
【0037】
図7には、図1の薬剤散布作業車の薬剤散布制御のフローチャートを示す。
このとき得られる車速として図7に示すように前記GPSで得られた車速算出手段5に基づく車速(VG)と本機の車速センサ6から得られる車速(Vs)の平均化を行い、その平均化された車速を防除機Bの車速とすることができる。
【0038】
GPSで得られた車速算出手段5に基づく車速(VG)と本機の車速センサ6から得られる車速(Vs)の平均化を行う理由は、電波の受信が不安定な場合(厚い雨雲、雪雲、地形の影響(谷、山のふもと)など)及びGPSの電波の精度が変更される場合があるためGPSで得られる車速が不安定となる恐れがある一方で、車輪のスリップ時などを除いて車速センサ6の信頼性が高いので、GPSから得られた車速と車速センサ6で得られた車速(車速パルスを読み込んで車速を計算する)を平均化して求めた車速に基づき、圃場10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した計算圧力値と実際の吐水ホース66の圧力Pが一致するように流量制御弁73を制御して、ブーム43,44のノズル45a,45bからの薬剤散布量を変化させることで、車速の変動があっても圃場10アール当たりの薬剤散布量Aを安定して散布することが可能となる。
また、車速センサ6から得られた車速(Vs)が一定値(例えば0.3〜0.4m/s)以下のときは、GPSから得られた車速(VG)は防除機Bの薬剤散布量の算出用の制御に使用しないようにする。例えば、走行開始時の車速変化が不安定なときは、車速センサ6から得られた車速(Vs)を圃場10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した薬剤散布圧力値の計算に利用して、GPSによる車速(VG)は利用しないようにすることで薬剤散布量の変動を抑えることができる。
【0039】
これは所定車速以下の低速での走行時には、GPSによる車速(VG)は車速センサ6による車速(Vs)よりも精度が悪くなるために、薬剤散布量が過剰になりすぎたり、逆に足りない状況が発生する。そこでGPSによる車速(VG)を用いないで、車速センサ6による車速(Vs)を用いる。
なお、走行開始後に車速センサ6で得られた車速(Vs)が一定値(例えば(0.3〜0.4m/s)を超えると、GPSによる車速(VG)に基づいて薬剤散布量を決めて散布を実行する。
【0040】
このように、本実施例の薬剤散布作業車は、GPS受信機81と車速センサ6から、それぞれ得られる速度情報を車速として設定散布量から設定圧力を計算し、車速と連動させてセンターブーム43とサイドブーム44から圃場に散布する薬液量を流量制御モータで駆動する開閉弁73の開度の調整をする構成を備えている。
【0041】
上記薬液散布を行う薬液散布作業車両は、前輪12の操舵角を検出する操舵角センサ7により旋回動作に入ったことを検出すると、旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により上昇させる自動ブーム昇降制御構成を有する制御装置100を備えている。しかし、車速センサ6で計測される車速が所定車速以上のときは、旋回中は旋回外側のサイドブーム44を、自動上昇を行わない制御構成とする。
【0042】
なお、前記所定車速は、例えば副変速2段、主変速4段の構成とする。副変速1速と主変速1速で0.9km/h、副変速2速と主変速4速で13.2km/hの速度となる。圃場の状況により広大な作業平面では高速作業走行し、山間地では低速作業走行するので、一概に数値の特定は難しい。
この場合におけるサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを図8に示す。
このような制御構成により、路上走行等での高速走行時に自動ブーム昇降制御構成によるサイドブーム44の破損等の不具合を防止できる。
【0043】
オペレータの車両操縦能力に応じた薬液散布のタイミングを決めることができるが、旋回終了後にサイドブーム44が下降完了してない間に車両が直進する領域を作ることがなくなる。このため、前記サイドブーム44が下降完了してない間に車両が直進する領域を作ると薬液を散布しない直進領域が出来て、通常苗などを植え付けている車両直進区間に薬液を散布しない領域を生じる不具合がある。
そこで、制御装置100は、操舵角センサ7の旋回角度が所定値(例;7度)に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム44の上昇を行い、次いで前記旋回角度が所定値(例;7度)に下がると、自動的に旋回外側のサイドブーム44の下降を行う制御構成と、前記サイドブーム44の上昇と下降の経過時間を区別して設定し、記憶しておく制御構成を設けている。この制御のフローチャートを図10に示す。
こうして、旋回外側のサイドブーム44の上昇時間と下降時間とが区別して設定され、記憶されるので、サイドブーム44の上昇時間に応じた上昇量に合わせたサイドブーム44の下降時間を設定でき、オペレータの車両操縦能力に応じた薬液散布のタイミングを決めることができる。そのため、旋回終了してない間にサイドブーム44が下降完了したものとしてから薬液散布をはじめるなどの不具合がなくなる。また、前記サイドブーム44が下降完了してない間に車両が直進する領域を作るような不具合もなくなる。また、圃場の状況、即ち旋回外側の畦等の障害物が低い場合などにおいては、旋回外側のサイドブームを上昇させすぎないようにすることで、下降する時間も早くなるので、速やかに次工程の散布作業を開始可能となる。
【0044】
また図9の平面図の旋回走行(1)に示す畦際などで操舵角センサ7の旋回角度が所定値(例;7度)に達すると、旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇させ、操舵角センサ7の旋回角度が0度の走行状態である直進走行(3)に移り、さらに操舵角センサ7の旋回角度に基づき更に所定角度(例;7度)旋回させて旋回走行(2)を行い、最初の旋回走行(1)から180度の旋回が終了したと判断した時(すなわちUターンが完了して直進走行に入ると)に旋回外側のサイドブーム44を下降させる場合に、サイドブーム44の上昇時間に定数(K)を掛けて得た値を下降時間として設定する制御構成を備えることもできる。なお定数(K)は1以下の値である。
【0045】
上記制御構成では、畦際などで180度のUターンをして旋回が終了すると、旋回外側のサイドブーム44を下降させて、初めてサイドブーム44からの薬液散布が可能となるので、サイドブーム44の上昇時間に定数(K)を乗算した値がサイドブーム44の適切な下降量となるように予め定数(K)を設定しておくことで、下降時間に応じた適切な下降量とすることができ、旋回が終了して旋回外側のサイドブーム44を下降させたときのサイドブーム44からの薬液散布の開始タイミングを適切に決めることができる。この制御のフローチャートを図11に示す。
【0046】
また上記サイドブーム44の上昇時間に乗算する定数(K)を変更して新たな下降時間の設定が可能な制御構成にすると、より適切なサイドブーム44の下降時間が得られるので、薬液散布の開始タイミングをより適切に設定することができる。この制御のフローチャートを図12に示す。
【0047】
本実施例の車両が畦際などで旋回により操舵角センサ7の旋回角度に応じて旋回外側のサイドブーム44を自動的に昇降制御する制御構成において、サイドブーム44の自動昇降制御の入り切りを設定可能にする自動昇降入切設定スイッチ145(図2に示すように操縦席の右側にある)と、該スイッチ145より設定されたサイドブーム44の昇降状態を目視できるモニタ画面に画像を表示するコントロールパネル120を有する構成としても良い。図3(b)にはコントロールパネル120のモニタ画面の一例を示す。
自動昇降入切設定スイッチ145でサイドブーム44の昇降を自動的に行うか否かをオペレータは自由に設定可能になり、また前記自動昇降入切設定スイッチ145の入切状態をモニタ画面41で該スイッチ145自体の点灯などにより目視できるので薬液散布作業性に優れた走行車両が得られる。
【0048】
また、操舵角センサ7による旋回検知前に旋回外側のサイドブーム44が手動で上昇操作されると、前記手動操作時間が一定時間(例、2〜3秒)以上継続する場合は、操舵角センサ7による旋回角度の検知をしても旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇させない制御構成としても良い。
この場合の制御のフローチャートを図13に示すが、薬剤散布作業車両が薬液散布中であって、旋回する前にサイドブーム44をオペレータが手動で上昇操作すると、その上昇時間をカウントし、上昇時間が所定時間(例2〜3秒)以上続くと、手動上昇フラグをセットして旋回が始まっても、手動上昇フラグがオンである限り、旋回外側のサイドブーム44の自動的な上昇制御を行わないようにする。こうして車両の旋回時に旋回外側のサイドブーム44が上昇し過ぎることを防ぐことができる。
【0049】
本実施例の制御装置100は、操舵角センサ7の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇させてブーム上昇フラグをセットしているときに、操舵角センサ7による次の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に下降させる前、即ち車両が直進走行中(図9の直進走行(3))に手動によるサイドブーム44を上方向または下方向に動かす昇降制御が行われると、ブーム上昇フラグをクリアにしておき、その後の最初の操舵角センサ7による旋回角度の検知(7度とは限らない)があると、自動上昇制御は行わない制御構成を採用しても良い。
【0050】
これは旋回開始後、畦際などで90度旋回した後に畦等に沿って直進走行中(図9の直進走行(3))に手動によるサイドブーム44の昇降操作が行われるということは、何らかの原因で手動で昇降させたい場合があるからである。例えば、手動で上昇させる場合は、予期しない障害物のため、自動での上昇量(設定量)では足らない場合があるからである。また、手動で下降させる場合は、障害部はほとんど存在しない場合等であり、予めある程度下げておくことにより自動での下降が速やかに可能となるからである。
【0051】
また、畦際などに沿って直進走行した後に、さらに90度旋回して、180度の旋回を終了するときに、操舵角センサ7が所定の旋回角度(例;7度)があったことを検知した場合に、この旋回を制御装置100が畦際に達すると行う車両が最初の90度の旋回が開始されたと誤って判断してサイドブーム44を自動上昇させてしまう誤動作を防ぐためである。この制御のフローチャートを図14に示す。
【0052】
また本実施例の制御装置100は、操舵角センサ7の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇させて、ブーム上昇フラグをセットしているときに、操舵角センサ7による次の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に下降させるとき、180度の旋回が終了したと判断して上昇フラグをクリアとする制御構成としても良い。
これは旋回開始から180度の旋回が終了すると確実に上昇フラグをクリアとしてその後の薬液散布作業時のサイドブーム44の自動上昇降が行われないようにするためである。この制御のフローチャートを図15に示す。
【0053】
また、本実施例の制御装置100は、操舵角センサ7の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇させて、次いで操舵角センサ7による次の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に下降させる制御構成を備えている場合に、前記自動上昇後に手動の昇降操作があると、その手動の昇降操作時間を累計して180度の旋回終了時(復路での作業走行開始時)に、サイドブーム44の自動下降するときに、前記自動上昇時間と累計手動操作時間を合算した値に所定の係数(K)を乗算した値をサイドブーム44の自動下降時間とする制御構成を採用してもよい。
この制御のフローチャートを図16に示す。ここでは、
旋回終了後の自動下降時間=自動上昇時間+累計手動上昇時間×K
となる。
【0054】
また本実施例の制御装置100は、操舵角センサ7の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇させて、次いで操舵角センサ7による次の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に下降させる制御構成を備えている場合に、前記自動上昇後に手動操作があると、その手動操作時間を累計して180度の旋回終了時(復路での作業走行開始時)に、サイドブーム44の自動下降するときに、前記自動上昇時間と累計手動操作時間を合算した値に所定の係数(K)を乗算した値をサイドブーム44の累計手動下降時間を差し引いて自動下降時間とする制御構成を採用してもよい。
この制御のフローチャートを図17に示す。
ここでは
旋回終了後の自動下降時間
=(自動上昇時間+累計手動上昇時間)×K−累計手動下降時間
となる。
【0055】
また本実施例の制御装置100は、操舵角センサ7の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇させて、次いで操舵角センサ7による次の所定の旋回角度(例;7度)の検知に基づき旋回外側のサイドブーム44を自動的に下降させる制御構成を備えている場合に、前記自動上昇後に手動操作があると、その手動操作時間を累計して180度の旋回終了時(復路での作業走行開始時)に、外側のサイドブーム44の自動下降するときに、前記自動上昇時間と累計手動操作時間を合算した値に所定の係数(K)を掛け算した値をサイドブーム44の手動下降時間累計値を差し引いて自動下降時間とする制御構成を採用してもよい。このとき旋回終了時に自動上昇後の手動操作時間より下降時間を計算するとき、自動上昇時間に対応する下降時間を下降時間の初期値として算入する。この制御のフローチャートを図18に示す。
また、畦際などでのサイドブーム44の前記自動上昇中と自動上昇後の両方で手動操作があると、180度の旋回終了時(復路での作業走行開始時)に、サイドブーム44を自動下降させるときの自動下降時間として、自動上昇時間に所定の係数(K)を乗算した値に該サイドブーム44の自動上昇中に操作した時間(上昇中補正値)と自動上昇後に操作した時間(上昇後補正値)を加えた値を用いる。
こうして180度の旋回制御のサイドブーム44の適切な下降時間の設定が出来る。 この制御のフローチャートを図19に示す。
【0056】
また畦際などでのサイドブーム44の前記自動上昇中(自動上昇フラグがオンのとき)、前記旋回とは反対方向にステアリング操作が行われ、その反対方向への操舵角センサ7による所定の旋回角度が所定角度(例;7度)以上の時は、自動上昇フラグをクリアし、再び最初の旋回方向へのステアリング操作が行われても、旋回終了とは判定しない制御構成を備えている。従って、サイドブーム44を下げることはしないし、また自動上昇フラグをクリアしているので自動上昇も行われないので、旋回開始後の正常な旋回終了動作以外の動作が行われると、サイドブーム44の誤動作を防ぐことができる。この制御フローチャートを図20に示す。
【0057】
また、畦際などでのサイドブーム44の前記自動的にサイドブーム44を下降中に手動操作が行われると、自動上昇フラグがクリアする制御構成を備えている。
従って、180度の旋回終了時(復路での作業走行開始時)に確実に自動上昇フラグをクリアすることができる、以後の旋回時にサイドブーム44の誤動作を防止できる。この制御のフローチャートを図21に示す。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、自走型散布機を備えた薬剤散布用の作業車両に限らず、肥料などを散布する作業車両にも利用可能性がある。
【符号の説明】
【0059】
1 車体 1a フック
3 リフトリンク 4 ヒッチブラケット
5 車速算出手段 6 車速センサ
7 操舵角センサ 8 ポンプスイッチ
9 ストロークセンサ 10 流量制御モータ
11 圧力センサ 12 前輪
13 後輪 14 ステアリングハンドル
15 ボンネット 16 弁開度センサ
17 操縦席
18 薬液タンク 19 散布ブーム
23 支柱 24 アッパリンク
25 ロワリンク 27 昇降シリンダ
26 シリンダ取付支柱
28 油圧タンク付ソレノイドバルブ
29 上下シリンダ(ローリングシリンダ)
30 開閉シリンダ 32 ブーム昇降ソレノイド
34 ブーム水平ソレノイド 36 ブザー
40 サイドブーム受け
43 センターブーム 44 サイドブーム
45(45a,45b) 噴霧ノズル
50 タンク側ステップ 51 傾斜部
53 本機側ステップ
54 フロア 55 梯子部材
56 本機ダッシュパネル 59 ハンドルポスト
61 給水路(ホース)
62 給水コック 64 サクションフィルタ
65 防除ポンプ 66 吐水ホース
67 薬液路 69 噴霧コック
70 安全弁 71 エアチャンバー
73 流量制御弁 74 流量センサ
75 余水ホース 79 攪拌ホース
81 GPS受信機 82 リンク傾斜センサ
83 リンク傾斜角速度センサ 100 本機コントローラ
101 防除機コントローラ 102 メモリ
120 コントローラパネル 122 ディスプレイ
122a インジケータ 123 散布設定表示
124 圧力表示 125 流量表示
126 流量累計表示
128 表示切換ボタン 129 自動スイッチ
130 パイロットランプ 131 散布設定スイッチ
132、133 増減ボタンスイッチ
134 累計リセットスイッチ
136 散布量スイッチ 137 圧力スイッチ
138a ブーム角度右センサ 138b ブーム角度左センサ
140 下降時間設定スイッチ 142 手動昇降スイッチ
145 自動昇降スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留する薬液タンク(18)と、該薬液タンク(18)からの薬液を圃場に散布するセンターブーム(43)と該センターブームの左右に配置したサイドブーム(44)と、車速検出手段(5,6)と、左右のサイドブーム(44)の上下動をそれぞれ行うための上下シリンダ(29)と、左右の車輪(12)の切れ角を検出する操舵角センサ(7)と、薬液タンク(18)と薬液散布ブーム(43,44)との間の薬液流路に設けた薬液を吐出する防除ポンプ(65)と、該防除ポンプ(65)の設置箇所より後流側の薬液流路に設けた薬液の吐出圧力を調整する薬液流量調節弁(73)を設け、薬液流量調節弁(73)の開閉を行う流量制御モータ(10)と前記車速センサ(6)により得られる車速と予め設定された単位面積当たりの薬液散布量(A)との関係から防除ポンプ(65)の吐出圧力を計算し、該吐出圧力計算値に一致するように前記流量制御モータ(10)による薬液流量調節弁(73)の開度調整を行う薬剤散布作業車両において、
操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の上昇を行い、一旦直進走行の後、再び操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値に達すると、自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の下降を行う制御構成と、旋回時におけるサイドブーム44の上昇時間と下降時間を区別して設定し、記憶しておく制御構成を有する制御装置(100)を備えたことを特徴とする薬剤散布作業車両。
【請求項2】
操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の上昇を行い、一旦直進走行の後、再び操舵角センサ(7)の旋回角度が所定値に達すると自動的に旋回外側のサイドブーム(44)の下降を行い、その後操舵角センサ(7)が略0度となり旋回開始から180度の旋回が終了すると作業での直進走行に入る構成とし、前記旋回外側のサイドブーム(44)を下降させる場合に、サイドブーム(44)の上昇時間に定数(K)を乗算した値を下降時間として設定する制御構成を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項1記載の薬剤散布作業車両。
【請求項3】
旋回外側のサイドブーム(44)の下降時間としてサイドブーム(44)の上昇時間に定数(K)を乗算した値として設定したときに、前記定数(K)を変更して新たな下降時間の設定が可能な制御構成を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項2記載の薬剤散布作業車両。
【請求項4】
操舵角センサ(7)の旋回角度に基づき自動的に行う旋回外側のサイドブーム(44)の昇降制御の入り切りを設定可能にするサイドブーム昇降制御の入切設定手段(22)と、該入切設定手段(22)により設定されたサイドブーム(44)の昇降状態を目視できるモニタ画面に画像を表示する画像表示手段(41)を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薬剤散布作業車両。
【請求項5】
操舵角センサ(7)による旋回検知前に旋回外側のサイドブーム(44)を手動で上昇操作が行われると、前記手動操作時間が一定時間以上継続する場合は、操舵角センサ(7)により旋回が検知されても、旋回外側のサイドブーム(44)を自動的に上昇させない制御構成を制御装置(100)が備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の薬剤散布作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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