説明

薬液注入装置

【課題】ダブルパッカ方式で薬液を注入して地盤改良を行う地盤改良工法において、ケーシング側係合部をビット側係合部に対して逆方向に回転させて係合状態を解除させるために保持された回転スペース部に、掘削された土砂が堆積するのを回避して、削孔ケーシングを先端ビットからスムーズに取り外して引き抜けるようにする。
【解決手段】先端ビット11には、弁室19からビット本体部23の先端に向けて貫通開口する複数の噴口15の他に、弁座部19bに密着した弁体18の封止位置よりも先端側の部分の弁室19の周壁部を貫通して、洗浄口20が設けられている。洗浄口20は、ケーシング側係合部22をビット側係合部21に対して一方向Xとは逆方向に回転させて取り外すことを可能にする、ケーシング側係合部22の逆方向への回転側に保持された回転スペース部29に向けて開口して、回転スペース部29に洗浄水を吐出できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入装置に関し、特に、ダブルパッカ方式で薬液を注入して地盤改良を行う地盤改良工法において使用される薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば軟弱地盤等を改良するための地盤改良工法として、ダブルパッカ方式で薬液を改良目的地盤に注入して地盤改良を行う工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ダブルパッカ方式による地盤改良工法は、例えば中空パイプ状の削孔ケーシングを一方向に回転させながら、これの先端に取り付けた先端ビットで掘削して改良目的地盤に所定の位置まで削孔ケーシングを推進設置し、設置した削孔ケーシングの内部に注入外管を挿入してこれの先端部を先端ビットに連結した後に、削孔ケーシングを先端ビットから取り外して該削孔ケーシングを改良目的地盤から引き抜き、さらに改良目的地盤に残置した注入外管の内部に、ダブルパッカーを備える注入内管を挿入して、改良目的地盤に薬液を注入することで地盤改良を行う公知の工法である。ダブルパッカ方式による地盤改良工法では、鉛直方向のみならず、横方向や斜め方向にも、相当の長さで削孔ケーシングを地中に推進させて、基盤改良を行うことが可能である。
【0003】
また、ダブルパッカ方式による地盤改良工法をさらに効率良く行うことができるように、削孔ケーシングの発進箇所である口元部において掘削土砂や削孔水が漏れ出ないようにしたり、所定の位置まで推進設置した削孔ケーシングを先端ビットから取り外す作業や、引き抜く作業を容易にするために、種々の改良技術が開発されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−65651号公報
【特許文献2】特公平6−86727号公報
【特許文献3】特公平7−103545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、削孔ケーシングを地中に推進させる工程においては、先端部に取り付けた先端ビットを安定した装着状態で保持できるようにすると共に、所定の位置まで推進させた後に削孔ケーシングを引き抜く際には、先端ビットから削孔ケーシングを容易に取り外すことができるようにする簡易な手段として、例えば図8(a)〜(c)に示すような、ビット側係合部51とケーシング側係合部52とからなる着脱構造が提案されている。図8(a)〜(c)の着脱構造によれば、先端ビット50には、先端側のビット本体部53と、これに後続する縮径された装着内筒部54との間の境界部分に、ビット本体部53の外周部分を切り欠くようにして、幅広の係合導入部51aと、係合導入部51aのビット先端側の部分から周方向片側に鉤形に折れ曲がって形成された係合溝51bとからなるビット側係合部51が設けられている。また、削孔ケーシング55の先端部分には、先端ビット50との接合部材としてのドライブシュー56がネジ部57を介して一体として取り付けられており、このドライブシュー56の装着外筒部58の先端縁部から突出して、基端部52aと、基端部52aの先端部から周方向片側に鉤形に折れ曲がって形成された係合突部52bとからなるケーシング側係合部52が設けられている。
【0006】
そして、図8(a)〜(c)の着脱構造では、係合導入部51aを介してケーシング側係合部52をビット側係合部51の内側に配設すると共に、先端ビット50の装着内筒部54をドライブシュー56の装着外筒部58の内側に嵌め込んだ後に、先端ビット50に対してドライブシュー56を周方向片側Xに回転させ、ケーシング側係合部52の係合突部52bをビット側係合部51の係合溝51b(図8(c)参照)に係合させることによって、ドライブシュー56を介在させた状態で先端ビット50を削孔ケーシング55の先端部分に取り付けることができるようになっている(図8(c)参照)。これによって、当該周方向片側Xへの一方向に回転させながら先端ビット50によって地盤を掘削して、所定の位置まで、削孔ケーシング55を地中に推進させることが可能になる。
【0007】
また、削孔ケーシング55を所定の位置まで地中に推進設置した後に、先端ビット50を地中に残置したまま削孔ケーシング55を引き抜く際には、削孔ケーシング55をドライブシュー56と共に周方向片側Xとは反対側の逆方向に回転させれば、ケーシング側係合部52の係合突部52bによるビット側係合部51の係合溝51bへの係合状態が外れるので、係合導入部51aを介してケーシング側係止部52をビット側係合部51の外側に移動させて、先端ビット50から削孔ケーシング55及びドライブシュー56を取り外すことが可能になる。
【0008】
なお、図8(a)〜(c)の着脱構造では、ビット側係合部51やケーシング側係合部52は、先端ビット50やドライブシュー56の周方向に180度の角度間隔をおいた対向する位置に、各々2箇所設けられている。これによって、削孔ケーシング55を地中に推進させる際の先端ビット50による地盤の掘削を、安定した状態で行えるようになっている。
【0009】
しかしながら、図8(a)〜(c)の着脱構造では、先端ビット50に対してドライブシュー56を周方向片側Xに回転させて、ケーシング側係合部52の係合突部52aをビット側係合部51の係合溝51bに係合させた状態で、周方向片側Xへの回転によって削孔ケーシング55を地中に推進する工程においては、ビット本体部53の外周部分を切り欠くようにして形成されたビット側係止部51における、ケーシング側係合部52の周方向片側Xとは逆方向への回転側に保持された、ケーシング側係合部52をビット側係合部51に対して逆方向に回転させせて係合状態を解除させるための回転スペース部59(図8(c)参照)は、先端ビット50の周面に開放されていることになるので、推進中に掘削された土砂がこの回転スペース部59に堆積すると、ケーシング側係合部52を逆方向に回転させ難くなって、削孔ケーシング55を先端ビット50から取り外すことが困難になると考えられる。このため、さらに改良を施すことが望まれている。
【0010】
本発明は、ケーシング側係合部をビット側係合部に対して逆方向に回転させて係合状態を解除させるために保持された回転スペース部に、削孔ケーシングの推進中に掘削された土砂が堆積するのを効果的に回避して、削孔ケーシングを先端ビットからスムーズに取り外して引き抜けるようにすることのできる薬液注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ダブルパッカ方式で薬液を注入して地盤改良を行う地盤改良工法において使用される、削孔水の噴口及び逆止弁が設けられた先端ビットを先端部分に着脱可能に取り付けた削孔ケーシングを備える薬液注入装置において、該薬液注入装置は、前記削孔ケーシングを一方向に回転させながら前記先端ビットにより掘削して改良目的地盤に所定の位置まで前記削孔ケーシングを推進設置し、設置した前記削孔ケーシングの内部に注入外管を挿入してこれの先端部を前記先端ビットに連結した後に、前記削孔ケーシングを逆方向に回転させることで前記先端ビットから取り外して該削孔ケーシングを改良目的地盤から引き抜き、さらに改良目的地盤に残置した前記注入外管の内部に、ダブルパッカーを備える注入内管を挿入して、改良目的地盤に薬液を注入することで地盤改良を行うことが可能な構成を備えており、且つ、前記先端ビットには、前記逆止弁の弁体の封止位置よりも先端側の部分の弁室の周壁部を貫通して、ケーシング側係合部をビット側係合部に対して前記逆方向に回転させて取り外すことを可能にする、前記ビット側係合部における前記ケーシング側係合部の前記逆方向への回転側に保持された回転スペース部に向けて開口する、洗浄口が形成されている薬液注入装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薬液注入装置によれば、ケーシング側係合部をビット側係合部に対して逆方向に回転させて係合状態を解除させるために保持された回転スペース部に、削孔ケーシングの推進中に掘削された土砂が堆積するのを効果的に回避して、削孔ケーシングを先端ビットからスムーズに取り外して引き抜けるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る薬液注入装置の要部の構成を説明する、(a)は先端ビットの側面図、(b)は削孔ケーシング及びドライブシューの部分破断側面図、(c)は削孔ケーシング及びドライブシューの先端に先端ビットを取り付けた状態の側面図である。
【図2】先端ビットの内部構造を説明する部分破断側面図である。
【図3】注入外管の先端部を先端ビットに連結する構造を説明する、削孔ケーシング及びドライブシューを省略した状態で示す断面図である。
【図4】削孔ケーシングの内部に注入外管を挿入して、これの先端部を先端ビットに連結した状態の部分破断側面図である。
【図5】ドライブシューの他の形態を例示する側面図である。
【図6】(a)先端ビットの他の形態を例示する側面図、(b)は(a)のA部を下方から見た展開図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の好ましい一実施形態に係る薬液注入装置を用いた地盤改良工法(浸透固化処理工法)の説明図である。
【図8】従来の薬液注入装置の要部の構成を説明する、(a)は先端ビットの側面図、(b)は削孔ケーシング及びドライブシューの部分破断側面図、(c)は削孔ケーシング及びドライブシューの先端に先端ビットを取り付けた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい一実施形態に係る薬液注入装置は、ダブルパッカ方式で薬液を注入して地盤改良を行う地盤改良工法として、例えば図7(a)〜(d)に示すような、水平注入による浸透固化処理工法を施工するための装置として用いられる。本実施形態の薬液注入装置は、図7(a)〜(d)に示す浸透固化処理工法において、改良目的地盤30に所定の位置まで推進設置した削孔ケーシング10を、先端ビット11を残して地中から引き抜く際に、推進削孔時とは逆方向に削孔ケーシング10を回転させて先端ビット11から取り外す作業を、スムーズに行えるようにする機能を備えている。
【0015】
ここで、図7(a)〜(d)に示す浸透固化処理工法は、例えば地盤面から地中に掘り下げて構築した作業用の立坑31から、横方向に向けて改良目的地盤30に注入外管12を設置した後に、この注入外管12の内部にダブルパッカー13を備える注入内管14を挿入し、この注入内管14から改良目的地盤30に薬液を注入することで浸透固化改良体32を形成して、地盤改良を行う工法であり、概略以下のような工程によって施工される。
【0016】
すなわち、浸透固化処理工法は、例えば公知の方法によって、立坑31における改良目的地盤30に向けた壁面の所定の位置を口元部として、口元管(図示せず。)を設置した後に、図7(a)に示すように、公知の削孔機33を立坑31の所定の位置にセットする。また、セットした削孔機33によって、先端に先端ビット11を取り付けた例えば120mm程度の外径を備える鋼製の中空パイプ状の削孔ケーシング10を、削孔の角度調整を行った後に、先端ビット11によって地盤30を掘削すると共に、一方向Xに回転させながら推進させて横方向に削孔することで、削孔ケーシング10を例えば20m程度の所定の位置まで推進設置する。
【0017】
かかる水平削孔において、削孔ケーシング10は、公知の方法と同様に、例えば1.5m程度の長さの単位管を、口元部において順次継ぎ足しながら地中に推進させることができる。また、削孔ケーシング10の中空内部に口元部から加圧水を供給し、供給された加圧水を先端ビット11の噴口15(図2参照)から削孔水として吐出させながら、先端ビット11によって地盤30を掘削する。先端ビット11によって掘削された土砂や削孔水は、削孔ケーシング10の外周面と、形成された削孔34の内壁面との間の隙間を介して口元部に送り出されると共に、公知の方法と同様に、例えば口元管に設けられた排出バルブ等を介して排除される。
【0018】
削孔ケーシング10を改良目的地盤30の所定の位置まで推進設置したら、好ましくは3次元計測装置(ジャイロ)を削孔ケーシング10に挿入して、削孔ケーシング10による削孔34の位置を3次元で確認した後に、図7(b)に示すように、注入外管12として、例えば外周面に公知のスリーブパッカー16が軸方向に所定のピッチで取り付けられた、例えば40〜60mm程度の外径を備える中空パイプ状の塩化ビニル管を、削孔ケーシング10の内部に挿入して、これの先端部を先端ビット11に連結する。しかる後に、削孔ケーシング10を先端ビット11から取り外して、先端ビット11及び注入外管12を地中に残置したまま、削孔ケーシング10を口元部側に引き抜く。注入外管12の先端部が先端ビット11に連結されていることで、先端ビット11をアンカーとして機能させて、削孔ケーシング10が引き抜かれるのに伴って注入外管12が口元部側に引き抜かれるのを効果的に回避することが可能になる。
【0019】
削孔ケーシング10を地中から引き抜いて撤去したら、図7(c)に示すように、漏水や薬液の逆流を防止するために、例えば口元止水板35によって口元処理を行った後に、注入外管12と、削孔ケーシング10を引き抜いた後の削孔34の内壁面との間のクリアランス部を介した薬液の流出を防止するために、注入外管12の外周面に取り付けたスリーブパッカー16を膨張させる。スリーブパッカー16を膨張させるには、注入外管12にダブルパッカー13を備える注入内管14の挿入して、注入外管12における、各スリーブパッカー16への注入口が形成された部分にダブルパッカー13をセットする。しかる後に、注入内管14及びダブルパッカー13を介して例えばセメントベントナイトからなる充填材をスリーブパッカー16に注入して、削孔34の内壁面に密着するまでスリーブパッカー16を各々膨張させる。これによって、注入外管12の外周面と、削孔34の内壁面との間のクリアランス部を、注入外管12の軸方向に隣接するスリーブパッカー16の間の間隔部分を除いて、強固に閉塞することが可能になる。
【0020】
各スリーブパッカー16を膨張させて注入外管12の外周面と削孔34の内壁面との間のクリアランス部を閉塞したら、図7(d)に示すように、注入外管12の軸方向に隣接するスリーブパッカー16の間の間隔部分を薬液の浸透路として、注入外管12における、これらの浸透路への注入口が形成された部分にダブルパッカー13をセットする。しかる後に、注入内管14及びダブルパッカー13を介して、例えば浸透固化用の薬液を、例えば予め設計された所定の注入圧及び注入速度で、スリーブパッカー16の間の浸透路を経て周囲の改良目的地盤30に浸透注入させる。このような薬液の浸透注入作業は、削孔34の奥部側から口元部に向けて、ダブルパッカー13をセットする位置を順次ステップ移動させながら行うことができる。これによって、改良目的地盤30には、削孔34に沿って連続する浸透固化改良体32が、順次形成されてゆくことになる。
【0021】
薬液を改良目的地盤30に浸透注入させて浸透固化改良体32を形成したら、所定の養生期間を経た後に事後調査を行い、浸透固化改良体32による地盤の改良強度を確認する。
【0022】
そして、本実施形態の薬液注入装置は、上述のような浸透固化処理工法において用いられ、改良目的地盤30に所定の位置まで推進設置した削孔ケーシング10を、先端ビット11を残して地中から引き抜く際に、削孔時とは逆方向に削孔ケーシング10を回転させて先端ビット11から取り外す作業を、スムーズに行えるようにする機能を備えている。
【0023】
すなわち、本実施形態の薬液注入装置は、ダブルパッカ方式で薬液を注入して地盤改良を行う地盤改良工法において使用される、削孔水の噴口15及び逆止弁17(図2参照)が設けられた先端ビット11を先端部分に着脱可能に取り付けた削孔ケーシング10を備える薬液注入用の装置である。本実施形態の薬液注入装置は、上述のように、削孔ケーシング10を一方向Xに回転させながら先端ビット11により掘削して改良目的地盤30に所定の位置まで削孔ケーシング10を推進設置し、設置した削孔ケーシング10の内部に注入外管12を挿入してこれの先端部を先端ビット11に連結した後に、削孔ケーシング10を逆方向に回転させることで先端ビット11から取り外して該削孔ケーシング10を改良目的地盤30から引き抜き、さらに改良目的地盤30に残置した注入外管12の内部に、ダブルパッカー13を備える注入内管14を挿入して、改良目的地盤30に薬液を注入することで地盤改良を行うことが可能な構成を備えており、且つ、先端ビット11には、図1(a)〜(c)及び図2に示すように、逆止弁17の弁体18の封止位置よりも先端側の部分の弁室19の周壁部を貫通して、ケーシング側係合部22をビット側係合部21に対して一方向Xとは逆方向に回転させて取り外すことを可能にする、ビット側係合部21におけるケーシング側係合部22の逆方向への回転側に保持された回転スペース部29(図1(c)参照)に向けて開口する、洗浄口20が形成されている。
【0024】
本実施系形態によれば、薬液注入装置は、削孔ケーシング10を地中に推進させる工程においては、先端部に取り付けた先端ビット11を安定した装着状態で保持できるようにすると共に、所定の位置まで推進させた後に削孔ケーシング11を引き抜く際には、先端ビット11から削孔ケーシング10を容易に取り外すことができるようにする簡易な構造として、図1(a)〜(c)に示すような、ビット側係合部21とケーシング側係合部22とからなる着脱構造が設けられている。
【0025】
図1(a)〜(c)に示す着脱構造では、先端ビット11には、先端側のビット本体部23と、これに後続する縮径された装着内筒部24との間の境界部分に、ビット本体部23の外周部分を切り欠くようにして、幅広の係合導入部21aと、係合導入部21aのビット先端側の部分から周方向片側に鉤形に折れ曲がって形成された係合溝21bとからなる、ビット側係合部21が設けられている。また、削孔ケーシング10の先端部分には、先端ビット11との接合部材としてのドライブシュー26が、ネジ部27を介して一体として取り付けられており、このドライブシュー26の装着外筒部28の先端縁部から突出して、基端部22aと、基端部22aの先端部から周方向片側に鉤形に折れ曲がって形成された係合突部22bとからなる、ケーシング側係合部22が設けられている。
【0026】
そして、係合導入部21aを介してケーシング側係合部22をビット側係合部21の内側に配設すると共に、先端ビット11の装着内筒部24をドライブシュー26の装着外筒部28の内側に嵌め込んだ後に、先端ビット11に対してドライブシュー26を周方向片側Xに回転させ、ケーシング側係合部22の係合突部22bをビット側係合部21の係合溝21bに係合させることによって、ドライブシュー26を介在させた状態で先端ビット11を削孔ケーシング10の先端部分に取り付けることができるようになっている(図1(c)参照)。これによって、当該周方向片側Xへの一方向Xに回転させながら先端ビット11によって改良目的地盤30を掘削させて、所定の位置まで、削孔ケーシング10を地中に推進させることができるようになっている。
【0027】
また、削孔ケーシング10を所定の位置まで地中に推進設置した後に、先端ビット11を地中に残置したまま削孔ケーシング10を引き抜く際には、削孔ケーシング10をドライブシュー26と共に周方向片側Xとは反対側の逆方向に回転させれば、ケーシング側係合部22の係合突部22bによるビット側係合部21の係合溝21bへの係合状態が外れるので、係合導入部21aを介してケーシング側係合部22をビット側係合部21の外側に移動させて、先端ビット11から、削孔ケーシング10及びドライブシュー26を取り外すことができるようになっている。
【0028】
なお、図1(a)〜(c)の着脱構造では、ビット側係合部21やケーシング側係合部22は、先端ビット11やドライブシュー26の周方向に180度の角度間隔をおいた対向する位置に、各々2箇所設けられている。これによって、削孔ケーシング10を地中に推進させる際の先端ビット11による地盤の掘削を、安定した状態で行えるようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態では、先端ビット11には、図2に示すように、削孔水の噴口15及び逆止弁17が設けられている。逆止弁17は、先端ビット11の内部の弁室19に配置されたコイルバネ25と、球状の弁体18とからなる。弁体18は、コイルバネ25による、ビット先端側から後方に向けた付勢力によって、弁室19と装着内筒部24の中空内部とを連通させる連通口19aの内側周縁部分に、当該内側周縁部分を弁座部19bとして密着することで、例えば削孔ケーシング10の推進を停止すると共に、削孔ケーシング10の中空内部を介した加圧水の供給を停止した際に、改良目的地盤30からの被圧水が噴口15を介して削孔ケーシング10の内部に逆流するのを防止できるようになっている。また、先端ビット11で改良目的地盤30を掘削しながら削孔ケーシング10を推進させる際には、削孔ケーシング10を介して供給される加圧水の圧力によって、コイルバネ25からの付勢力に抗して弁体18をビット先端側に押し出すことで、連通口19aを開放させて、加圧水を、削孔水として噴口15から先端ビット11の前方の改良目的地盤30に向けて吐出させることができるようになっている。
【0030】
本実施形態では、先端ビット11には、弁室19からビット本体部23の先端切削面に向けて貫通開口する複数の噴口15の他に、弁座部19bに密着した状態の弁体18の封止位置よりも先端側の部分に、弁室19の周壁部を貫通して、洗浄口20が設けられている。洗浄口20は、ケーシング側係合部22をビット側係合部21に対して逆方向に回転させて取り外すことを可能にする、ビット側係合部21におけるケーシング側係合部22の一方向Xとは逆方向への回転側に保持された回転スペース部29(図1(c)参照)に向けて開口するようになっている。これによって、先端ビット11で改良目的地盤30を掘削しながら削孔ケーシング10を推進させる際に、加圧水を削孔水として噴口15から改良目的地盤30に向けて吐出させるのに伴って、加圧水を、洗浄水として洗浄口20から回転スペース部29に吐出させることができるようになっている。
【0031】
また、本実施形態では、先端ビット11の装着内筒部24の内側面には、図3にも示すように、これの周方向全周に亘ってリング状に連続して、略半円の断面形状を備える連結係止溝36が形成されている。一方、図4に示すように、削孔ケーシング10の中空内部に挿入される注入外管12の先端部には、連結アダプター37が一体として接合されており、この連結アダプター37の先端部分には、図3にも示すように、例えばバネによる径方向外方への付勢力によって径方向に進退可能な球状ポッチ38aを備えるプランジャー38が、周方向に90度の角度間隔をおいて4箇所に設けられている。連結アダプター37のプランジャー38が設けられたヘッド部37aを、先端ビット11の装着内筒部24の中空内部に押し込むことで、プランジャー38の球状ポッチ38aを連結係止溝36に係止させて、注入外管12の先端部を先端ビット11に容易に連結させることができるようになっている。
【0032】
さらに、本実施形態では、ドライブシュー26のネジ部27が設けられた部分の内側面には、後部にガイドテーパー部39aが形成された案内リブ39が、ドライブシュー26の軸方向に延設すると共に、周方向に間隔をおいて複数設けられている。ドライブシュー26の内側面に案内リブ39が設けられていることにより、注入外管12や連結アダプター37の軸心を、先端ビット11の装着内筒部24の軸心と略合致するように誘導して、注入外管12の先端部を先端ビット11に連結させる操作を、よりスムーズに行えるようにすることが可能になる。
【0033】
本実施形態では、図5に示すように、ドライブシュー26に設けられたケーシング側係合部22の係合突部22bと、装着外筒部28の先端縁部との間の間隔部分を外側から覆って、被覆プレート40を取り付けておくこともできる。被覆プレート40は、周方向片側Xにドライブシュー26を回転させてケーシング側係合部22の係合突部22bをビット側係合部21の係合溝21bへ係合させる操作の邪魔にならないように、係合突部22bの外周面よりも僅かに高い位置に延設させて設けられている。係合突部22bと装着外筒部28の先端縁部との間の間隔部分を覆って被覆プレート40が取り付けられていることにより、係合状態となったケーシング側係合部22の係合突部22bとビット側係合部21の係合溝21bとの間の隙間に土砂が咬み込むのを防止して、削孔ケーシング10を先端ビット11から取り外す操作を、さらに容易に行えるようにすることが可能になる。
【0034】
また、本実施形態では、図6(a)、(b)に示すように、先端ビット11のビット側係合部21の係合溝21bのビット後端側に隣接配置されて、係合溝21bにケーシング側係合部22の係合突部22bが係合された際に、係合突部22bと装着外筒部28の先端縁部との間の間隔部分に係合されるビット側突部41は、係合溝21bの機能に支障がない範囲で、その長さLをできるだけ短かくしておくことができる。また、ビット側突部41の係合溝21b側の先端角部は、面取り部41aとして、好ましくは湾曲形状に面取りしておくこともできる。これらによっても、削孔ケーシング10を先端ビット11から取り外す操作を、さらに容易に行えるようにすることが可能になる。
【0035】
そして、上述の構成を備える本実施形態の薬液注入装置によれば、ケーシング側係合部22をビット側係合部21に対して一方向Xとは逆方向に回転させて係合状態を解除させるために保持された回転スペース部29に、削孔ケーシング10の推進中に掘削された土砂が堆積するのを効果的に回避して、削孔ケーシング10を先端ビット11からスムーズに取り外して引き抜けるようにすることが可能になる。
【0036】
すなわち、本実施形態によれば、先端ビット11には、弁室19からビット本体部23の先端切削面に向けて貫通開口する複数の噴口15の他に、弁座部19bに密着した状態の弁体18の封止位置よりも先端側の部分に、弁室19の周壁部を貫通して、洗浄口20が設けられている。この洗浄口20は、ケーシング側係合部22をビット側係合部21に対して逆方向に回転させて取り外すことを可能にする、ビット側係合部21におけるケーシング側係合部22の一方向Xとは逆方向への回転側に保持された回転スペース部29(図1(c)参照)に向けて開口するようになっている。これによって、先端ビット11で改良目的地盤30を掘削しながら削孔ケーシング10を推進させる際に、加圧水を削孔水として噴口15から改良目的地盤30に向けて吐出させるのに伴って、加圧水を、洗浄水として洗浄口20から回転スペース部29に吐出させることが可能になるので、回転スペース部29に土砂が堆積するのを効果的に防止して、削孔ケーシング10を先端ビット11からスムーズに取り外せるようにすることが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、ケーシング側係合部やビット側係合部は、上記実施形態のような構成を有するものに限定されるものではなく、推進時における一方向への回転方向とは逆方向に回転させることで、削孔ケーシングを先端ビットから取り外すことを可能にする、その他の種々のケーシング側係合部やビット側係合部を備える薬液注入装置に本発明を適用することができる。また、本発明は、水平注入による浸透固化処理工法以外の、ダブルパッカ方式で薬液を注入して地盤改良を行うその他の種々の地盤改良工法に適用できる他、水平方向以外の、斜め方向や鉛直方向に削孔ケーシング推進させて地盤改良を行う地盤改良工法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 削孔ケーシング
11 先端ビット
12 注入外管
13 ダブルパッカー
14 注入内管
15 噴口
16 スリーブパッカー
17 逆止弁
18 弁体
19 弁室
19a 連通口
19b 弁座部
20 洗浄口
21 ビット側係合部
21a 係合導入部
21b 係合溝
22 ケーシング側係合部
22a 基端部
22b 係合突部
23 ビット本体部
24 装着内筒部
25 コイルバネ
26 ドライブシュー
27 ネジ部
28 装着外筒部
29 回転スペース部
30 改良目的地盤
32 浸透固化改良体
34 削孔
X 周方向形側へ回転方向(一方向への回転方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルパッカ方式で薬液を注入して地盤改良を行う地盤改良工法において使用される、削孔水の噴口及び逆止弁が設けられた先端ビットを先端部分に着脱可能に取り付けた削孔ケーシングを備える薬液注入装置において、
該薬液注入装置は、前記削孔ケーシングを一方向に回転させながら前記先端ビットにより掘削して改良目的地盤に所定の位置まで前記削孔ケーシングを推進設置し、設置した前記削孔ケーシングの内部に注入外管を挿入してこれの先端部を前記先端ビットに連結した後に、前記削孔ケーシングを逆方向に回転させることで前記先端ビットから取り外して該削孔ケーシングを改良目的地盤から引き抜き、さらに改良目的地盤に残置した前記注入外管の内部に、ダブルパッカーを備える注入内管を挿入して、改良目的地盤に薬液を注入することで地盤改良を行うことが可能な構成を備えており、
且つ、前記先端ビットには、前記逆止弁の弁体の封止位置よりも先端側の部分の弁室の周壁部を貫通して、ケーシング側係合部をビット側係合部に対して前記逆方向に回転させて取り外すことを可能にする、前記ビット側係合部における前記ケーシング側係合部の前記逆方向への回転側に保持された回転スペース部に向けて開口する、洗浄口が形成されている薬液注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−167497(P2012−167497A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30041(P2011−30041)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】