説明

薬液移送装置

【課題】毒性のある薬液の周囲の環境への拡散を抑制できる薬液移送装置を提供する。
【解決手段】薬液移送装置は、開口部10が形成されたバレル1と、バレル1に接続される接続器具2とを備える。バレル1は、開口部10を閉塞する弾性部材121を含む。弾性部材121は、複数の膜体121a,121bが重畳されて形成されている。膜体121a,121bは、バレル1の内部側へ突き出した突起部123を有する。接続器具2は、先端231aが尖鋭な第一針231を含む。第一針231には、第一針231の延在方向に沿って延びる通液穴234が形成されている。第一針231を膜体121a,121bの突起部123に刺通することにより、通液穴234を介してバレル1の内外が連通され、バレル1と接続器具2との間で薬液を移送可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液移送装置に関し、特に、毒性のある薬液を移送する薬液移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から病院などの医療機関において、バイアルなどの薬剤容器に入った粉末薬剤または凍結乾燥薬剤などの乾燥薬剤は、使用時に溶解液を用いて溶解され、輸液として点滴注射に用いられる。これらの薬剤は、薬液の状態にしておくとその効力が失われていくため、薬液の状態で保管することができないからである。溶解液の充填された注射器が薬剤容器に接続され、薬剤容器内に溶解液が注入されることで、薬剤容器に収容された乾燥薬剤が溶解される。
【0003】
抗がん剤のような毒性薬剤を溶解調製する場合において、注射器の接続部が少しでも加圧された状態または薬剤容器内の水圧を受けた状態で注射器の取り外しを行なうと、接続部からの飛沫や液こぼれが発生する虞がある。毒性薬剤の飛沫や液こぼれの発生中または乾燥後にエアロゾルが発生し浮遊することで、環境中に毒性薬剤が長時間曝露されて、医療スタッフや患者の健康に害をもたらす虞があるという問題がある。
【0004】
そこで従来、薬液調製時に飛沫などの液漏れやエアロゾルの周囲への飛散の虞のない薬液調製用キットが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の薬液調製用キットでは、薬剤の調製後に調製薬剤をバレル内に引き込み、移注器具からバレルを分離しても、バレル先端開口に備えられた密閉部材が閉塞することによって調製薬剤が漏れ出すことを防止している。また、バレル内に調製薬液を引き込むと外界に比べ系内が減圧となっているため、飛沫やエアロゾルの噴出が生じた場合においてもバイアル内側に起こるので、系外に飛散することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/148708号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の薬液調製用キットでは、移注器具のバイアル挿着部にバイアルを挿着し、被覆部材により被覆された第1針をバレルの弾性体膜へ刺通してバレル装着部にバレルを装着する。この状態でバイアル内で薬液が溶解調製され、続いて薬液をバレル内に呼び容量まで吸引採取し、バレルから移注器具を取り外す。
【0008】
バレルの弾性体膜から第1針が抜針されるときに、第1針に付着したまま残った毒性薬剤が、被覆部材の先端付近に付着する可能性がある。被覆部材に付着した毒性薬剤がエアロゾル化し、発生したエアロゾルが浮遊し、一部のエアロゾルは浮遊中に乾燥してより小さく薬剤濃度の高い状態に微粒子化してしまうため、医療スタッフや患者が毒性薬剤に被曝してしまう問題があった。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、毒性のある薬液を移送する際に、薬液が周囲の環境へ拡散することを抑制できる、薬液移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る薬液移送装置は、開口部が形成された薬液容器と、薬液容器に接続される接続器具とを備える。薬液容器は、開口部を閉塞する弾性部材を含む。弾性部材は、複数の膜体が重畳されて形成されている。膜体は、薬液容器の内部側へ突き出した突起部を有する。接続器具は、先端が尖鋭な針部を含む。針部には、針部の延在方向に沿って延びる通液穴が形成されている。針部を膜体の突起部に刺通することにより、通液穴を介して薬液容器の内外が連通され、薬液容器と接続器具との間で薬液を移送可能とする。
【0011】
上記薬液移送装置において好ましくは、突起部は、半球面状に形成されている。
上記薬液移送装置において好ましくは、接続器具は、被覆部と、筒部と、弾性膜とを含む。被覆部は、針部を被覆し、弾性変形可能である。筒部は、中空に形成されており、針部および被覆部を内部に収容する。弾性膜は、筒部の、針部の先端側の端部に配置されており、上記端部を覆っている。弾性膜には、スリット開口が形成されている。
【0012】
上記薬液移送装置において好ましくは、薬液容器は、薬液容器の外部側へ突起する管部を含む。弾性部材は、管部内の空洞部を閉塞するように配置されている。管部は、スリット開口を経て筒部内に挿通可能なように、管部の外径が筒部の内径よりも小さく形成されている。管部を筒部内へ挿通することにより、針部が膜体に刺通される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薬液移送装置によると、毒性のある薬液を移送する際に、薬液が周囲の環境へ拡散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1の薬液移送装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す薬液移送装置の部分拡大断面図である。
【図3】図2に示す矢印III方向から見た第二針の模式図である。
【図4】図2に示す矢印IV方向から見た接続器具の平面図である。
【図5】接続器具を介在させてプレフィルドシリンジとバイアルとを接続した状態を示す断面図である。
【図6】バイアル内で薬剤を調製した後の状態を示す断面図である。
【図7】調製薬液をバレル内に再引き込みした状態を示す断面図である。
【図8】調製薬液を封入したバレルを接続器具より分離した状態を示す断面図である。
【図9】実施の形態2の薬液移送装置の構成を示す断面図である。
【図10】図9に示す薬液移送装置の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0016】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の薬液移送装置100の構成を示す断面図である。図2は、図1に示す薬液移送装置100の部分拡大断面図である。図1に示すように、実施の形態1の薬液移送装置100は、溶解液Sの充填されたプレフィルドシリンジPと、このプレフィルドシリンジPに接続される接続器具2とを備える。接続器具2は、プレフィルドシリンジPと薬剤の収納されたバイアルVとに装着されて、これらの内部空間を互いに連通する。接続器具2を介在させてプレフィルドシリンジPとバイアルVとが連通することにより、バイアルVに収納された薬剤が溶解液Sに混合溶解して、薬液が調製される。
【0018】
プレフィルドシリンジPは、薬液容器の一例としての、両端が開口した円筒状のバレル1を備える。バレル1の先端部には、細径のノズル14が形成されている。ノズル14には、密閉部材12が装着されている。密閉部材12は、弾性部材121と、カシメ部材122とを含む。弾性部材121は、カシメ部材122によってノズル14に液密に取り付けられている。カシメ部材122は、ノズル14に脱離不能に装着されている。
【0019】
ノズル14とカシメ部材122とは、中空の管部を形成する。カシメ部材122は、ノズル14の外周側に固定されて、ノズル14とともに一体構造の管部を形成している。バレル1は、バレル1の外部側へ突起する管部を含む。管部の内部には空洞部16が形成されている。弾性部材121は、管部内の空洞部16を閉塞するように配置されている。管部の最先端部(すなわち、カシメ部材122の先端部)には、バレル1の先端開口を形成する開口部10が形成されている。弾性部材121は、開口部10を閉塞する。
【0020】
弾性部材121は、複数の膜体121a,121bが重畳されて形成されている。膜体121aの開口部10側の表面と、膜体121bのバレル1内部側の表面とは、互いに密着している。弾性部材121は、膜体121a,121bが重ねられて隙間なく相密着した、一体の弾性体として形成されている。
【0021】
膜体121a,121bはそれぞれ、バレル1の内部側へ突き出した突起部123を有する。突起部123が形成されているために、弾性部材121は、開口部10に対向する表面が窪んだ形状とされている。膜体121aに設けられた突起部123と、膜体121bに設けられた突起部123とは、同一の形状とされており、そのため膜体121aと膜体121bとは表面の全面に亘って密着可能とされている。図2に示すように、突起部123は、半球面状に形成されている。
【0022】
バレル1の後端開口からは、ガスケット11が液密かつ摺動可能に挿入されている。ガスケット11には、プランジャ13が連結されている。バレル1と、密閉部材12とガスケット11とで形成された空間には、溶解液Sが充填されている。
【0023】
接続器具2は、プレフィルドシリンジPとバイアルVとを連通させる器具であって、隔壁25を中心として、隔壁25の両面にバレル装着部21と、バイアル装着部22とが備えられている。バレル装着部21は、中空の筒形状に形成されている。接続器具2は、筒部の一例としてのバレル装着部21を含む。
【0024】
バレル装着部21の内部には、接続器具2をプレフィルドシリンジPに装着した際に、プレフィルドシリンジPの密閉部材12の弾性部材121を刺通可能な第一針231が配置されている。第一針231は、その先端231aが尖鋭な、針部の一例である。第一針231には、第一針231の延在方向(図2中に示す上下方向)に沿って延びる、通液穴234が形成されている。図2に示すように、第一針231の先端231aにおいて、通液穴234が開口している。第一針231は、第一針231を被覆する被覆部の一例としての、ゴムキャップ232によって被覆されている。ゴムキャップ232は、弾性変形可能に設けられている。第一針231およびゴムキャップ232は、バレル装着部21の内部に収容されている。
【0025】
バイアル装着部22には、接続器具2をバイアルVに装着した際に、バイアルVの栓を刺通可能な第二針233が設けられている。第二針233は、第一針231と同軸に配置されている。第二針233には、第二針233の延在方向に沿って延びる、通液穴237が形成されている。第一針231に形成された通液穴234と、第二針233に形成された通液穴237とは、連通空間235により連通されている。
【0026】
図3は、図2に示す矢印III方向から見た第二針233の模式図である。図2および図3に示すように、第二針233の先端側の通液穴237の端部は、第二針233の外周面に開口している。
【0027】
接続器具2はまた、ポート24を含む。ポート24の内部には、エアロゾルを捕集可能なエアロゾルフィルタ242が配置されている。第二針233の内部には、通液穴237と独立して連通路236が形成されている。連通路236は、第二針233とポート24とを連通している。
【0028】
バレル装着部21の、第一針231の先端231a側の端部26には、キャップ部27が取り付けられている。キャップ部27は、円環形状に形成されており、中央部にキャップ部27を厚み方向に貫通する円形状の貫通孔が形成されている。この貫通孔は、ノズル14とカシメ部材122とが形成する管部の外径に対し、僅かに大きな径を有するように形成される。このように貫通孔を形成することにより、管部をバレル装着部21へ挿通する際に管部を位置決めして第一針231およびゴムキャップ232を確実に管部内へ導くとともに、バレル1と接続器具2との接続時にキャップ部27がバレル1を保持できるようになっている。
【0029】
端部26と、端部26に固定されたキャップ部27との間には、弾性膜238が挟持されている。弾性膜238は、バレル装着部21の端部26に配置されており、端部26を覆うように設けられている。端部26の弾性膜238に対向する側の面と、キャップ部27の弾性膜238に対向する側の面とには、それぞれ複数の突起が形成されている。この突起によって、弾性膜238は、端部26とキャップ部27との間で固定保持される。弾性膜238は、キャップ部27に形成された円形状の貫通孔を介して、外部へ露出する円形状の露出部を有する。
【0030】
図4は、図2に示す矢印IV方向から見た接続器具2の平面図である。図2および図4に示すように、弾性膜238には、スリット開口239が形成されている。スリット開口239は、弾性膜238が外部へ露出する円形状の露出部の直径方向に沿う、真一文字状に形成されている。スリット開口239は、弾性膜238が外部へ露出する露出部の一端から他端に亘るように形成され、露出部を二つの半円形状部に分離する境界を形成している。
【0031】
バレル1は、先端部であるノズル14と基端部とを有する、両端の開口した筒状部材である。バレル1は、通常、ガラスや透明なプラスチック、たとえば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィンなどで形成される。そして、バレル1のノズル14が密閉部材12で密閉されるとともに基端部側の内腔が基端部開口から挿着されたガスケット11で密閉され、密閉部材12とガスケット11で仕切られたバレル1の空間には予め溶解液Sが充填されている。溶解液Sが充填されたときのガスケット11の位置は、薬液を調製し再吸引した際に呼び容量をこえて幾分か気体を引き込めるように、基端部後方に空間がある方が好ましい。溶解液Sとしては、通常、生理食塩水やブドウ糖液が好適に使用される。
【0032】
ガスケット11は通常、筒状体であるバレル1の基端側開口から摺動可能に挿着されるために、挿着されてから容易に傾かない程度以上の厚みを持ち、バレル内周壁の径より僅かに小さい円柱形状に形成される。プランジャ13の先端に雄ねじが形成されているとともに、ガスケット11の内腔にはプランジャ13を受け容れるように雌ねじが形成されている。ガスケット11およびプランジャ13の構造は、上述した一般的な構造のほか、たとえば特開2002−272843号公報や特開2008−307237号公報に示されるような、回動自在な構造を採用してもよい。
【0033】
また、ガスケット11は、その先端部と基端部に、バレル内周壁の径よりも若干大きな環状リブを有する。そのため、プランジャ13を動かしたときに、バレル1の内周壁とガスケット11との間の液密性を損なわないような構成になっている。ガスケット11の形成材料は、バレル1に収納される薬品との適合性に大きく依存し、天然ゴムやブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレンブタジエンゴム、熱可塑性エラストマーなどが望ましい。
【0034】
密閉部材12としては、好ましくは、図2に示されるような弾性部材121とカシメ部材122からなるものが採用される。弾性部材121を形成する膜体121a,121bは、接続器具2の第一針231により刺通、抜針されたときに液密性を損なわず刺通しやすいような、薄膜に形成されている。ノズル14およびカシメ部材122によって形成される管部の先端側、すなわち開口部10側の膜体121bの形成材料は、弾性変形をもとの状態に戻すように働く復元力の大きい材料であれば何でもよい。たとえば、イソプレンゴム、シリコーンゴムなどのゴム材料に代表される弾性材料により膜体121bを形成することができる。
【0035】
管部の基端側、すなわちバレル1の内部側の膜体121aの形成材料は、膜体121bと同一の材料であってもよい。但し、プレフィルドシリンジPのような保存容器の場合、膜体121aの形成材料は、薬液に溶出しない材料である必要がある。たとえば、ブチルゴムなどに代表される、耐薬品性の優れたゴム材料により膜体121aを形成することができる。
【0036】
カシメ部材122の形成材料としては、バレル1先端部のノズル14との間に分離不能となる強固な嵌合または接着性を有するとともに、弾性部材121と協働して液密性を維持するために、ある程度初期弾性率が高い材料である必要がある。このようなものとしては、ポリプロピレンやポリカーボネート、アルミニウムなどが使用される。
【0037】
第一針231は、シリンジ接続用針であり、ゴムキャップ232により被覆されている。第一針231の形成材料としては、ノズル14に装着された密閉部材12の弾性部材121に容易に刺通可能であり、バレル1から接続器具2を取り外したときにゴムキャップ232がリシール(再封止)し易いことが要求される。たとえば、第一針231の形成材料として、ステンレス鋼やABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、SB(Styrene Butadiene)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンが用いられる。
【0038】
第一針231は、半球面状の突起部123の中心部(すなわち、突起部123において、バレル1の内部側へ最も突出し、開口部10から最も離れる部分)に刺通されるように、第一針231の先端231aが第一針231の軸心に位置するように加工されて形成されるのが好ましい。このようにすれば、膜体121a,121bに対して第一針231が周方向基準で均等な力で刺通されるので、第一針231が刺通されたときの膜体121a,121bの歪みを抑制し、薬液の漏出を抑制できるので好ましい。たとえば、第一針231の延在方向に対して斜め方向に切断された斜め切れ口が先端231aに形成されているベベル針である場合、先端231aを曲げ加工することにより、先端231aを第一針231の軸心に配置することができる。
【0039】
ゴムキャップ232は、バレル1の弾性部材121に対し第一針231が刺通または抜針されるときに、毒性薬剤が液漏れしないような液密性を有していることが好ましい。このようなゴムキャップ232の形成材料としては、ある程度柔軟性を有し復元性の高い弾性体であり液密性、リシール性に優れる、天然ゴムや合成ゴムなどに代表される弾性材料が好適に用いられる。
【0040】
第二針233は、バイアルVの口部のゴム栓に容易に刺通可能であることが好ましく、たとえば第二針233の形成材料として、ABS樹脂やSB樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンが好適に用いられる。また第二針233は、バイアルV内への溶解液Sの導入の際に、バイアルV内の乾燥薬剤や液面に対し溶解液Sが直接噴射されることによって長時間浮遊するエアロゾルが発生するのを抑制できるよう、軸心に針穴が形成されていないことが好ましい。また、バイアルV内に溶解液Sを導入するための、通液穴237が第二針233の表面に開口する開口は、調製された薬液をバレル1内に再吸引するときのバイアルV内の残液を極力低減できる位置に、適宜設定することが好ましい。
【0041】
バレル装着部21の端部26に配置された弾性膜238の形成材料は、弾性材料であり、弾性膜238に加えられる荷重が除去されたとき復元可能な材料であれば何でもよい。たとえば、イソプレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムなどに代表されるゴム材料を使用して、弾性膜238を形成することができる。また、弾性膜238が弾性により復元可能であれば、任意の厚みを有する弾性膜238を形成してもよい。
【0042】
弾性膜238に形成されるスリット開口239の形状は、真一文字状に限られず、任意の形状としてもよい。たとえば、十字状にスリット開口239を形成してもよい。但し、真一文字状のスリット開口239とすれば、スリット開口239をより容易に成形できる点で優れている。
【0043】
バレル装着部21は、操作中ぐらついて第一針231の周縁部に隙間ができて毒性薬剤が拡散しないように、バレル1を装着した後に弱くかしめるような突片やロック機構が備わっているものが好ましい。
【0044】
接続器具2のポート24には、連通路236の、第二針233と反対側の開口が形成されている。バレル1と接続器具2とバイアルVとを、バイアルVを下側にした状態で接続し、プランジャ13を押し込んでバレル1内の溶解液SをバイアルV内に導入したときに、バイアルV内に加わる内圧を受けて、連通路236を経由して系外に気体が排出される。連通路236は、気体排出路として作用する。このとき、ポート24から系外へ薬液が漏れ出すことがないよう、ポート24の内部にエアロゾルフィルタ242が配置されている。
【0045】
エアロゾルフィルタ242の形成材料は、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレンなどの撥水性樹脂や、表面を撥水加工した樹脂や繊維などの、疎水性の材料が用いられる。エアロゾルフィルタ242の孔径や構造、厚みは適宜選択される。長時間浮遊するエアロゾルは一般的に約10nm〜500nmの径を有し、またエアロゾルの静電特性なども考慮すれば、親水性フィルタや、正または負帯電性のフィルタ、活性炭などを複合的に組み合わせて、エアロゾルフィルタ242を形成してもよい。
【0046】
以上の構成を備える薬液移送装置100の使用方法について説明する。図5は、接続器具2を介在させてプレフィルドシリンジPとバイアルVとを接続した状態を示す断面図である。図5に示すように、まず、接続器具2のバイアル装着部22に、バイアルVをその口部を先にして装着する。次に、バイアルVの底部が下側になり、机の上など安定になる状態で、バレル1の先端部を先にして接続器具2のバレル装着部21に装着する。
【0047】
このとき、バレル1先端のノズル14に取り付けられるカシメ部材122の外径が、バレル装着部21の内径よりも小さく形成されている。つまり、バレル装着部21の内径に対し、ノズル14およびカシメ部材122により形成される管部の外径が相対的に小さくなっている。そのため、ノズル14およびカシメ部材122は、弾性膜238に形成されたスリット開口239を経て、バレル装着部21内に挿通可能とされている。
【0048】
ノズル14およびカシメ部材122により形成される管部をバレル装着部21内へ挿通すると、バレル装着部21内に収容された第一針231およびゴムキャップ232は、開口部10を経由して、管部内の空洞部16内へ進入する。接続器具2は、バレル1の開口部10にその一部である第一針231が挿通されて、バレル1に接続されている。たとえばバレル装着部21の内周面とカシメ部材122の外周面とが微小隙間を介して対向するように形成するなど、管部およびバレル装着部21の寸法を適切に調整することにより、バレル装着部21内に挿通された管部の位置決めを行ない、第一針231とゴムキャップ232とを確実に管部の空洞部16へ挿通させることができる。
【0049】
管部をバレル装着部21へさらに挿通すると、ノズル14の先端に配置された弾性部材121が、ゴムキャップ232に接触する。バレル装着部21に対する管部の相対移動に伴って、弾性部材121に押圧されたゴムキャップ232は弾性変形し、第一針231の先端231aがゴムキャップ232と接触する。そして、第一針231は、ゴムキャップ232を貫通して、弾性部材121を構成する膜体121a,121bに刺通される。
【0050】
管部をバレル装着部21内へ挿通したとき、第一針231が膜体121a,121bに形成された突起部123を刺通するように、弾性部材121と第一針231とは適切な配置に設定されている。たとえば、第一針231を円筒状のバレル装着部21の軸心に配置し、突起部123を管部の軸心に配置すれば、管部の外径をバレル装着部21の内径に対し僅かに小さくすることにより、第一針231が突起部123を確実に刺通できる構成を容易に得ることができる。
【0051】
第一針231を膜体121a,121bに刺通することにより、第一針231の内部に形成された通液穴234を介して、バレル1の内部と外部とが連通される。バレル1、ガスケット11および密閉部材12によって液密に密閉されていたバレル1の内部空間に対し、弾性部材121を貫通するように第一針231を突き刺すことで、第一針231の内部の通液穴234を経由して、バレル1に充填されていた溶解液Sがバレル1の外部へ流出可能となる。第一針231の通液穴234によってバレル1の内外が連通されるので、バレル1から接続器具2へ、溶解液Sを移送可能な状態となる。
【0052】
図6は、バイアルV内で薬剤を調製した後の状態を示す断面図である。図5に示す、接続器具2を介在させてプレフィルドシリンジPとバイアルVとを接続した状態において、バイアルVが下側になるようにしたまま、プランジャ13をゆっくりと押して下方へ移動させる。このプランジャ13の移動によって、バレル1内の溶解液Sが通液穴234、連通空間235、通液穴237を経由して、バイアルV内に、バイアルVの内壁に噴射されるように導入される。同時に、バイアルV内にある気体は、第二針233に形成された連通路236を経由して、ポート24から系外へ排出される。このようにして、バレル1内の溶解液SはバイアルV内へ移送される。溶解液Sの移送後にバイアルVを振れば、バイアルV内の乾燥薬剤M(図5参照)が溶解液Sに溶解して、薬液が調製される。
【0053】
図7は、調製薬液をバレル1内に再引き込みした状態を示す断面図である。バイアルV内で薬液を溶解調製した後に、図7に示すように、薬液移送装置100を上下反転させ、バイアルVを上側に、プレフィルドシリンジPを下側に配置する。この状態で、プランジャ13を下方へ引くことにより、第一針231内の通液穴234を経由してバイアルVからバレル1内へ薬液が移送され、薬液はバレル1内へ呼び容量まで吸引採取される。バイアルV内の調製薬液は、バレル1内へ移送される。通液穴234を経由して、バレル1と接続器具2との間で、薬液が移送されている。
【0054】
図8は、調製薬液を封入したバレル1を接続器具2より分離した状態を示す断面図である。調製薬液をバイアルVからバレル1へ移送しバレル1内に封入した後に、図8に示すように、バレル1から接続器具2を取り外す。その後、バレル1の先端部に図示しない専用の移注針を接続すれば、バレル1内の調製薬液をそのまま点滴容器に混注することができる。
【0055】
このときのガスケット11の位置は、バレル1内に溶解液Sが充填されていたときに比べて、バレル1の基端側後方にあると好ましい。このようにすると、バイアルV内が減圧の状態でプレフィルドシリンジPを取り外すことができるので、飛沫などの液漏れやエアロゾルが発生したとしても、バイアルV内側へ向かって発生するため、薬液の周囲への飛散を回避することができる。
【0056】
バレル1と接続器具2とが接続されていた状態で弾性部材121に刺通されていた第一針231は、バレル1を接続器具2から分離させるとき、弾性部材121から抜針される。第一針231の通液穴234を通って薬液がバイアルVからバレル1内へ移送されるため、第一針231の先端231aには薬液が付着している。第一針231が弾性部材121から抜針されるとき、第一針231の外周面に対し弾性部材121が密着した状態で、弾性部材121に対して第一針231が摺動する。第一針231が、弾性部材121によって周囲から押えつけられながら、弾性部材121に対して相対移動する。この第一針231の相対移動によって、弾性部材121が第一針231をしごく作用が発生する。
【0057】
第一針231が弾性部材121から抜針されるときに、弾性部材121が第一針231を扱くことによって、第一針231の表面に付着した薬液が除去される。より詳細には、開口部10側の膜体121bが第一針231に付着した薬液をしごき取り、しごき取られた薬液は膜体121a,121bの間に捕捉される。膜体121bがバレル1の内部側へ突き出した突起部123を有し、第一針231が突起部123に刺通されていることにより、膜体121bによるしごき機能が発揮される。複数の膜体121a,121bが重ねられて弾性部材121が形成されていることにより、複数の膜体121a,121bの間に、薬液を捕捉することができる。
【0058】
このように、実施の形態1の薬液移送装置100では、弾性部材121によって第一針231に付着した薬液を除去することができるので、第一針231の表面に薬液が残存することを抑制することができる。弾性部材121によって第一針231からしごき取られた薬液は、複数の膜体121a,121b間に捕捉されるので、第一針231から除去された薬液が弾性部材121から系外に拡散することを抑制することができる。したがって、毒性のある薬液を移送する際に、薬液がエアロゾル化して飛散し周囲の環境へ拡散することを、抑制することができる。その結果、医療スタッフなどの作業者や薬液を処方される患者が、薬剤濃度の高いエアロゾルに被曝されて健康に害をもたらすことを抑制できるので、取り扱いが容易で安全な薬液移送装置100を提供することができる。
【0059】
膜体121a,121bの形成材料が復元力の大きなゴム材料であれば、上述したしごき機能が発揮されるので、第一針231から薬液をしごき取り除去することが可能である。但し、膜体121bの厚みが過小であれば、膜体121bによるしごき機能が低下すると考えられるため、第一針231から薬液を除去するために十分な厚みを有する膜体121bを設けるのが望ましい。
【0060】
膜体121a,121bに形成された突起部123は、半球面状の形状を有している。突起部123は、バレル1の内部側へ突起していれば任意の形状であってもよく、たとえば突起部の形状を円錐状などの錐体形状としても構わない。ただし、実施の形態1の突起部123のように、ドーム形状の突起部123を形成すれば、仮に突起部123の中心から外れた位置に第一針231が刺通されたとしても、膜体121bにより第一針231の表面の薬液をしごき取る機能が安定して発揮されるので、より好ましい。
【0061】
さらに、実施の形態1の薬液移送装置100では、バレル装着部21の端部26を覆う弾性膜238が設けられている。バレル1先端のノズル14およびカシメ部材122は、この弾性膜238に形成されたスリット開口239を貫通して、バレル装着部21内へ挿通される。このようにすれば、仮に第一針231の外表面に残存した毒性薬液が、バレル1を接続器具2から脱離させるときにゴムキャップ232に付着したとしても、バレル装着部21の内部空間は弾性膜238によって覆われているために、ゴムキャップ232に付着した薬液が系外へ拡散することを抑制できる。そのため、薬液のエアロゾルが外部へ飛散することを一層抑制することができる。
【0062】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2の薬液移送装置の構成を示す断面図である。図10は、図9に示す薬液移送装置の部分拡大断面図である。実施の形態2の薬液移送装置は、毒性薬液Tの充填された薬液充填シリンジPと、この薬液充填シリンジPに接続される接続器具3とを備える。接続器具3は、薬液Lの充填された輸液容器Cと薬液充填シリンジPとを装着してこれらを連通する。接続器具3を介在させて薬液充填シリンジPと輸液容器Cとが連通することにより、輸液容器Cに充填された薬液Lと毒性薬液Tとが混合溶解される。
【0063】
薬液充填シリンジPの構成は、実施の形態1のプレフィルドシリンジと同一であるため、その説明は省略する。毒性薬液Tが充填された薬液充填シリンジPは、予め毒性薬液Tが充填されたプレフィルドシリンジでも、実施の形態1の薬液移送装置100を用いて調製された薬剤を充填したシリンジでもよい。
【0064】
接続器具3は、輸液容器Cの栓体に刺通する方向を軸として、上端に第二針33が、下端に出口ポート35が形成され、軸より斜め下方向に、円筒状のバレル装着部31が張り出すように形成されている。バレル装着部31の軸芯位置には、バレル装着部31に薬液充填シリンジPを装着した際にバレル1先端の密閉部材12の弾性部材121を刺通可能な第一針331が形成され、第一針331は、被覆部であるゴムキャップ332により被覆されている。第一針331には、通液穴334が形成されている。第一針331の先端331aにおいて、通液穴334が開口している。
【0065】
バレル装着部31の、第一針331の先端331a側の端部36には、キャップ部37が取り付けられている。端部36と、端部36に固定されたキャップ部37との間には、弾性膜338が挟持されている。弾性膜338は、バレル装着部31の端部36に配置されており、端部36を覆うように設けられている。弾性膜338には、スリット開口339が形成されている。スリット開口339は、弾性膜338が外部へ露出する円形状の直径方向に沿う、真一文字状に形成されている。
【0066】
第二針33には、通液穴333と連通路336とが、それぞれ独立して形成されている。通液穴333は、第一針331の通液穴334と連通するように形成されている。連通路336は出口ポート35と連通するように形成されている。出口ポート35の先端には、輸液ラインの瓶針により刺通される閉鎖部材351が設けられている。
【0067】
バレル装着部31の基端部側には、両方向に一定圧以上で通液する通液弁322が設けられている。通液弁322は、第一針331の通液穴334と第二針33の通液穴333とを連通し、バレル1から輸液容器Cへ毒性薬液Tを移送する圧力によって通液弁322が開通する構造となっている。通液弁322は、液体の圧力が一定圧以上のときにのみ開通する。そのため、接続器具3の出口ポート35に輸液ラインを接続し、輸液容器Cから輸液ラインへ薬液を移送するときに、バレル1内に薬液が戻ることが防止されている。なお、上述した通液弁322に替えて、通液穴334から通液穴333へ向かう流体の流れを許容するとともにその逆方向への流れを禁止し、バレル1から輸液容器Cへ毒性薬液Tを不可逆的に移送可能とする、一方向弁を配置してもよい。
【0068】
第一針331は、ゴムキャップ332により被覆されており、バレル1の弾性部材121が刺通または抜針されるときに毒性薬剤が液漏れしない液密性を有している。第一針331の形成材料としては、ノズル14に装着された密閉部材12の弾性部材121に容易に刺通可能であり、バレル1を取り外したときにゴムキャップ332がリシールし易いことが要求される。たとえば、第一針331の形成材料として、ステンレス鋼やABS樹脂、SB樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンが用いられる。
【0069】
ゴムキャップ332の形成材料としては、ある程度柔軟性を有し復元性の高い弾性体であり液密製、リシール性に優れる、天然ゴムや合成ゴムなどに代表される弾性材料が好適に用いられる。
【0070】
第二針33は、輸液容器Cの栓体に容易に刺通可能であることが好ましく、たとえば第二針33の形成材料として、ABS樹脂やSB樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンが好適に用いられる。また、通液穴333と連通路336とが第二針33の表面に開口する開口は、輸液容器C内での毒性薬液Tの希釈を助けるために、適宜離れた位置に設定することが好ましく、たとえば、第二針33の軸心に針穴が形成されていないことが好ましい。
【0071】
バレル装着部31は、操作中ぐらついて第一針331の周縁部に隙間ができて毒性薬剤が拡散しないように、バレル1を装着した後に弱くかしめるような突片やロック機構が備わっているものが好ましい。バレル装着部31の端部36に配置された弾性膜338の形成材料は、弾性材料であり、弾性膜338に加えられる荷重が除去されたとき復元可能な材料であれば何でもよい。たとえば、イソプレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムなどに代表されるゴム材料を使用して、弾性膜338を形成することができる。
【0072】
接続器具3の出口ポート35は、第二針33に形成された連通路336と連通しており、輸液ラインに接続したときに開通可能なように閉鎖部材351で閉鎖されている。閉鎖部材351は、輸液ラインの瓶針によって刺通可能で、かつ刺通後には容易に瓶針が外れたり液密性を損ねたりしないように、通常、弾性を有する薄膜である。このような性能を満たす閉鎖部材351の形成材料としては、接液される薬品との適合性も考慮し、天然ゴムやブチルゴム、塩素化ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、熱可塑性エラストマーなどが適宜選択される。また、出口ポート35の開口は、輸液ラインの瓶針の保持を助けるために、瓶針よりも若干小さな内径を持つ円筒形状であることが好ましい。
【0073】
以上の構成を備える薬液移送装置によると、実施の形態1の薬液移送装置100と同様に、弾性部材121によって第一針331に付着した薬液を除去することができるので、第一針331の表面に薬液が残存することを抑制することができる。弾性部材121によって第一針331からしごき取られた薬液は、複数の膜体121a,121b間に捕捉されるので、第一針331から除去された薬液が弾性部材121から系外に拡散することを抑制することができる。したがって、毒性のある薬液を移送する際に、薬液がエアロゾル化して飛散し周囲の環境へ拡散することを、抑制することができる。
【0074】
また、バレル装着部31の端部36を覆う弾性膜338が設けられている。バレル1先端のノズル14およびカシメ部材122は、この弾性膜338に形成されたスリット開口339を貫通して、バレル装着部21内へ挿通される。このようにすれば、仮に第一針331の外表面に残存した毒性薬液が、バレル1を接続器具3から脱離させるときにゴムキャップ332に付着したとしても、バレル装着部31の内部空間は弾性膜338によって覆われているために、ゴムキャップ332に付着した薬液が系外へ拡散することを抑制できる。そのため、薬液のエアロゾルが外部へ飛散することを一層抑制することができる。
【0075】
なお、実施の形態1および2の説明においては、バレル1の弾性部材121が二枚の膜体121a,121bを含む例について説明したが、この構成に限られるものではない。弾性部材121は、バレル1の開口部10側の膜体が第一針に付着した薬液をしごき取り、そのしごき取った薬液を複数の膜体間に捕捉して薬液の拡散を抑制するものであるので、二枚以上の膜体を含み、膜体が二重以上に積み重ねられていればよい。膜体の数をより多くすれば、弾性部材121により第一針から薬液を除去する効果をより顕著に得ることができる。但し、膜体の数を増加させると第一針を弾性部材121へ刺通させにくくなるので、弾性部材121による薬液除去性能と、第一針の弾性部材121への刺通容易性とを考慮して、膜体の数を適切に設定するのが望ましい。
【0076】
また、実施の形態1の接続器具2はプレフィルドシリンジPとバイアルVとを接続しており、実施の形態2の接続器具3は薬液充填シリンジPと輸液容器Cおよび図示しない輸液ラインとを接続したが、本発明の薬液移送装置はこのような例に限られるものではない。本発明の薬液移送装置は、外部に漏洩させたくない任意の液体を移送する場合に使用することが可能である。
【0077】
たとえば、抗がん剤などの危険薬剤のほか、病原菌、耐性を持つと困る菌などを含む液体を移送する場合に、本発明の薬液移送装置を用いることができる。具体的には、プレフィルドシリンジから薬剤バッグへ薬液を移送する場合、輸液ラインからサンプリング用の空のシリンジへ輸液を移送する場合、病原菌を含む液状の検体採取具から検査キットへ検体を移送する場合などに、本発明の薬液移送装置が好適に用いられ得る。また、トリクロロエチレンなどの危険溶剤や、環境ホルモンを含む溶液を移送する場合にも、本発明の薬液移送装置を用いることができる。
【0078】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 バレル、2,3 接続器具、10 開口部、11 ガスケット、12 密閉部材、13 プランジャ、14 ノズル、16 空洞部、21,31 バレル装着部、26,36 端部、27,37 キャップ部、33,233 第二針、100 薬液移送装置、121 弾性部材、121a,121b 膜体、122 カシメ部材、123 突起部、231,331 第一針、231a,331a 先端、232,332 ゴムキャップ、234,237,333,334 通液穴、236,336 連通路、238,338 弾性膜、239,339 スリット開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された薬液容器と、
前記薬液容器に接続される接続器具とを備え、
前記薬液容器は、前記開口部を閉塞する弾性部材を含み、
前記弾性部材は、複数の膜体が重畳されて形成されており、
前記膜体は、前記薬液容器の内部側へ突き出した突起部を有し、
前記接続器具は、先端が尖鋭な針部を含み、
前記針部には、前記針部の延在方向に沿って延びる通液穴が形成されており、
前記針部を前記膜体の前記突起部に刺通することにより、前記通液穴を介して前記薬液容器の内外が連通され、前記薬液容器と前記接続器具との間で薬液を移送可能とする、薬液移送装置。
【請求項2】
前記突起部は、半球面状に形成されている、請求項1に記載の薬液移送装置。
【請求項3】
前記接続器具は、
前記針部を被覆し、弾性変形可能な被覆部と、
前記針部および前記被覆部を内部に収容する中空の筒部と、
前記筒部の、前記針部の前記先端側の端部に配置され、前記端部を覆う弾性膜とを含み、
前記弾性膜には、スリット開口が形成されている、請求項1または請求項2に記載の薬液移送装置。
【請求項4】
前記薬液容器は、前記薬液容器の外部側へ突起する管部を含み、
前記弾性部材は、前記管部内の空洞部を閉塞するように配置されており、
前記管部は、前記スリット開口を経て前記筒部内に挿通可能なように、前記管部の外径が前記筒部の内径よりも小さく形成されており、
前記管部を前記筒部内へ挿通することにより、前記針部が前記膜体に刺通される、請求項3に記載の薬液移送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate