説明

薬物制御送達用の非ポリマー組成物

本発明は、制御様式で生理活性物質を送達するためのデポーシステムのin−situ形成に適した新規液体組成物を提供する。本発明の組成物は、(a)疎水性非ポリマー担体材料;(b)疎水性非ポリマー材料を溶解させる水混和性の生体適合性有機溶媒;(c)両親媒性分子と、水中で中性pHにて正味電荷を有する生理活性物質との間に形成されるイオン性複合体を含む。本発明は、その組成物の製造方法及び使用方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性物質の制御放出送達の分野並びに疎水性非ポリマー材料を担体として使用する生理活性物質の制御放出送達に有用な組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性非ポリマー材料、特に高粘性非ポリマー液体材料が生理活性化合物の制御放出送達用の生分解性システムとして開示されている(Smith and Tipton,Pharmaceutical Research,13(9),S300,1996)。疎水性非ポリマー材料は通常、水に実質的に溶けない。疎水性非ポリマー材料は、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有し、周囲条件又は生理的条件下ではきちんと結晶化しない高粘性液体でありうる。該材料を小量の可塑化溶媒と混合すると、混合物は非ポリマー液体材料のみの粘度よりずっと低い粘度を有する。この低粘度溶液は容易に生理活性化合物と製剤化することができ、結果として生じる低粘度の液体製剤は対象に容易に投与して高粘性デポー(depot)をin−situ形成することができる。
【0003】
疎水性非ポリマー液体担体材料を含む該in−situ形成デポーシステムの代表例は米国特許第5,747,058号;第5,968,542号;第6,051,558号;及び第6,992,065号に開示さている。これらの特許に記載の組成物は、例えばスクロースアセタートイソブチラート(SAIB)、水溶性又は水混和性有機溶媒、及び生理活性物質などの疎水性で高粘性の非ポリマー液体材料を含む。該組成物は容易に調製されて、低粘度溶液の形態で対象に投与することができる。体内に入ると、溶媒は周囲組織中に消散又は拡散し、非ポリマー材料の沈殿又は凝固をもたらして、生理活性物質を被包する高粘性ゲル、半固体、又は固体のデボーを形成する。そしてデボーの溶解、拡散、及び/又は分解によって生理活性物質が放出される。
【0004】
非ポリマー担体材料は、典型的にエステル結合又はエステル様結合の加水分解によって分解される。エステルの開裂は、酵素又は他の生理活性物質内の求核基、例えばアミノ基などによって促進される。この容易な分解性は医薬用途では有利であるが、製剤の分解に対する敏感性は安定な製剤を調製するための主要な問題をも提示する。生理活性物質を非ポリマー液体担体材料と併用するといつでも、生理活性物質と非ポリマー担体材料との相互作用を介して当該同一分解が起こりうる。該相互作用は、組成物の物理的及び化学的特性に悪影響を及ぼすことがあり、非ポリマー材料の望ましくない分解及び生理活性物質の不純物の生成をもたらす。製剤中の担体材料と生理活性物質の不安定性は、妥当な有効期間の貯蔵に適し、投与すると所望の放出特性を有する一貫性デポーを形成するための製剤用途に適した組成物の調製を妨げるだろう。
【0005】
さらに、非ポリマー担体材料の疎水性のため、多くの生理活性薬、特にその荷電及び極性の特徴を備えた親水性ペプチド及びタンパク質は、非ポリマー担体材料と相溶性がなく、不安定な液体製剤をもたらしうる。疎水性非ポリマー担体材料を非複合体化生理活性物質又はその酢酸塩若しくは塩酸塩などの単純塩と混ぜ合わせると、一般的に相分離が観察されている。製剤化、貯蔵及びin situデポー形成中の相分離は、不均質な製剤又はデポーをもたらし、制御されない放出特性につながる。さらに、先行技術である米国特許第5,747,058号及び第5,968,542号で証明されているように、初期バースト放出がこのタイプの液体製剤の典型的な特徴である。制御できない初期バーストは、特に狭い治療指数の生理活性物質にとって望ましくないだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、非ポリマー担体材料と生理活性物質との間の望ましくない相互作用を防止又は最小限にする制御放出組成物を開発することが要望されている。また、非ポリマー担体材料と生理活性物質との単相均質組成物として製剤化及び貯蔵できる制御放出組成物を開発することも要望されている。さらに、初期バースト放出が少ないデポーをもたらすであろう該単相均質組成物を開発することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、制御様式で生理活性物質を送達するためのデポーシステムのin−situ形成に適した新規液体組成物を提供する。本発明の組成物は、(a)疎水性非ポリマー担体材料;(b)前記疎水性非ポリマー担体材料を溶解させ、該組成物の粘度を下げて、調製及び投与の容易さを有意に促進する水混和性の生体適合性有機溶媒;(c)両親媒性分子と、水中で中性pHにて正味電荷を有する生理活性物質との間に形成されるイオン性複合体を含む。ここで、非ポリマー材料は実質的に水に溶けず、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有する高粘性液体であってよく、周囲条件又は生理的条件下ではきちんと結晶化しない。本発明の組成物は、さらに添加剤を含んで所望の放出特性を達成することができる。本発明は、その組成物の製造方法及び使用方法をも提供する。
【0008】
従って、生理活性物質を両親媒性分子と混ぜ合わせて、水又は体液に実質的に溶けないイオン性複合体を形成することが好ましい。次に、生理活性物質のイオン性複合体を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような水混和性溶媒中の疎水性非ポリマー担体材料の溶液に分散させて、均質溶液又は均一懸濁液を形成する。典型的に、非複合化生理活性物質又はその酢酸塩若しくは塩酸塩などの単純塩を、有機溶媒中で疎水性非ポリマー材料と混ぜ合わせると、相分離が起こる。しかし、予想外に、本発明の生理活性物質と両親媒性分子のイオン性複合体を使用すると、相分離を防止又は最小限にして、製剤の物理的安定性を維持できることが見出された。さらに、非複合化生理活性物質又は酢酸塩若しくは塩酸塩などのその単純塩は、製剤化プロセス及びその後の貯蔵中、化学分解に敏感である。本発明の生理活性物質と両親媒性分子の複合体化することによって、該化学分解を防止又は最小限にすることができる。該組成物の向上した化学的及び物理的安定性により、所望の放出特性及び妥当な貯蔵有効期間を備えた安定製品の開発が可能となるであろう。
【0009】
本発明の非ポリマー液体組成物を対象の体内の生体液のような水性環境に接触させると、水溶性又は水混和性溶媒が周囲の水性流体又は体液中に消散又は拡散する。同時に、疎水性非ポリマー液体担体材料が沈殿又は凝固して、生理活性物質を捕捉又は被包する高粘性ゲル又は固体デポーを形成する。溶媒の急速な拡散のため、典型的に、デポー形成プロセス中に生理活性物質の高い初期バースト放出が観察される。しかし、予想外に、本発明の生理活性物質と適切な両親媒性分子の複合体形成が、非複合体化生理活性物質又はその酢酸塩などの単純塩を含む製剤に比し、バースト作用を劇的に低減し、かつ生理活性物質の全体的な放出プロファイルを改善することが分かった。一旦デポーが形成されると、生理活性物質は、非ポリマー担体材料の溶解、拡散及び/又は分解によって非ポリマーマトリックスから放出される。
【0010】
本発明によれば、組成物は任意に、生理活性物質の所望放出プロファイルを達成するため組成物を改変する添加剤を含んでよい。添加剤としては、限定するものではないが、バースト作用低減材料、放出速度遅延剤、放出速度加速剤、可溶化剤などが挙げられる。添加剤は、生分解性又は非生分解性ポリマー、炭水化物又は炭水化物誘導体、有機又は無機化合物を含め、ポリマー材料又は非ポリマー材料であってよい。
本発明の組成物は、注射器又は同様の装置を用いて容易に注入できる粘性若しくは非粘性の液体、又はゲルであってよい。皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内注射によって組成物を投与して、デポーをin−situ形成することができる。組成物を経口又は局所又は経粘膜投与することもできる。対象の体に投与すると、システムの組成に応じて所望の時間、生理活性物質の制御放出を制御することができる。非ポリマー担体材料と他の賦形剤を適切に選択すれば、数週間〜1年までの期間にわたって生理活性物質の制御放出の持続時間を制御することができる。
【0011】
添付図面と関連して検討した以下の詳細な説明から、本発明の他の目的及び特徴が明白になるであろう。しかし、図面は、例示目的のためだけのものであり、本発明の制限の定義として企図されたものでなく、本発明は添付の特許請求の範囲を参照すべきであることを理解すべきである。さらに、図面は、必ずしも縮尺率に合わせて描かれておらず、特に断らない限り、図面は、本明細書で述べる構造及び手順を単に概念的に説明することを意図していることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】製剤を室温で1時間(a)及び24時間(b)放置した後に撮影した写真を示す。
【図2】(a)OCT−Ac;(b)OCT−SDS;(c)OCT−DSSを含むSAIB/NMP製剤からのオクトレオチドのin vitro放出を示す。
【図3】(a)LA−Ac;(b)LA−SDS;(c)LA−DSS;(d)LA−OLを含むSAIB/NMP製剤からのリュープロリドのin vitro放出を示す。
【図4】(a)PPL−HCl及び(b)PPL−SDSを含むSAIB/NMP製剤からのプラミペキソールのin vitro放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、持続及び制御様式で生理活性物質を送達するためのデポーシステムのin−situ形成に適した非ポリマー液体組成物を提供する。本発明の好ましい非ポリマー液体組成物は、少なくとも疎水性非ポリマー担体材料、生理活性物質、両親媒性分子、及び水溶性又は水混和性の生体適合性溶媒の組合せである。好ましくは、生理活性物質は、実質的に水に溶けないイオン性複合体の形態で両親媒性分子と会合している。任意に、組成物を改変して所望の放出特性を達成するために添加剤を含めてよい。組成物は液体形態であり、粘性又は非粘性であってよい。組成物は均質溶液又は均一懸濁液である。本発明の全成分は生体適合性であり、製剤化プロセス中及び適切な条件下の貯蔵中に安定している。
【0014】
本発明の組成物は、好ましくは注射器又はいかなる他の類似の装置を用いても注入可能である。皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内注射によって本組成物を対象の体に投与してデポーをin−situ形成することができる。本組成物を経口又は局所又は経粘膜投与することもできる。対象の体に投与されると、水性環境又は体液と接触して、溶媒が周囲の流体中に消散又は拡散し、疎水性非ポリマー担体材料が沈殿又は凝固して粘性ゲル、半固体又は固体のデポーを形成する。デポーは多孔性又は非多孔性であってよい。組み込まれる生理活性物質はデポー内に実質的に被包されており、経時的に徐々に放出される。好ましくは、本発明の組成物は、24時間以内で20%未満、さらに好ましくは24時間以内で10%未満、最も好ましくは24時間以内で5%未満の初期放出を有する。組成物の非ポリマー担体材料及び他の成分を適切に選択すれば、数週間〜1年の期間にわたって、生理活性物質の制御放出の持続時間を制御することができる。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「1つ(“a”、“an”及び“one”)」は、内容が明白にそうでないと指示していない限り、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」と解釈することを意図されている。
【0016】
担体材料は、生分解性で、生体適合性であり、かつ水及び体液に実質的に溶けない疎水性非ポリマー材料である。疎水性非ポリマー担体材料は、好ましくは周囲環境又は生理的環境下できちんと結晶化しない、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有する高粘性液体である。「疎水性」という用語は、水に溶けないか又は水と混ざらないか又は水によって濡れない傾向がある、分子の物理的性質を表す。特に本明細書で使用する場合、疎水性は、ある材料の水中の溶解度が25℃で1質量%未満であること表す。「非ポリマー」という用語は、エステルの酸部分に本質的に反復単位がないエステル又は混合エステルを表す。疎水性非ポリマー液体担体材料のいくつかの例は、限定するものではないが、先行技術である米国特許第5,747,058号;及び第5,968,542号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0017】
特に、疎水性非ポリマー担体材料は、1種以上の非ポリマーエステル又は混合エスエルであってよい。エステルは典型的に、カルボン酸とエステル化している20個未満のヒドロキシル基を有するポリオールから形成される。適切なポリオールとしては、2〜24個の炭素を有する単官能性及び多官能性アルコール、糖アルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、及びポリエーテルアルコールが挙げられる。さらに詳しくは、ポリオールは、ドデカノール、ヘキサンジオール、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、スクロース、イノシトール、ポリグリセロール、ポリエチレングリコール等であってよい。
【0018】
疎水性非ポリマー担体材料を形成するために使うカルボン酸としては、2個より多くの炭素を有する有機酸、例えば脂肪酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、飽和、不飽和、芳香族(アリール又はアリールアルキル)であってよく、線形又は分岐構造であってよい。これらのカルボン酸は、1つ以上のヒドロキル基又は他の基、例えばハロ、ニトロ等を有してもよい。さらに詳しくは、これらのカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、リポ酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、ε−ヒドロキシカプロン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、及び他の脂肪酸が挙げられる。
【0019】
疎水性非ポリマー担体材料は、生分解性であって、如何なる非生体適合性又は毒性分解物をも生成しないことが好ましい。疎水性非ポリマー担体材料を水混和性溶媒と混合すると、低粘度の溶液を得ることができる。低粘度溶液を容易に生理活性物質と混ぜ合わせて本発明の組成物を調製することができる。低粘度のため、組成物を対象の体に容易に投与することができる。組成物の特性は、例えば溶媒中の非ポリマー材料の混和性、製剤中の非ポリマー材料の濃度、生理活性物質の濃度、及び/又は添加剤の存在などの因子に応じて変化するだろう。組成物のこれらのパラメーターを調整して、所望特性を得ることができる。
【0020】
好ましい実施形態では、疎水性非ポリマー担体材料としてスクロースアセタートイソブチラート(SAIB)を使用する。SAIBは、2個の酢酸基及び6個のイソ酪酸基とエステル化したスクロースの混合エステルである。このエステルは完全に非結晶性であり、30℃で100,000cPを超える粘度を有する。わずかに温度を上げるか又は溶媒を添加することによって、エステルの粘度を劇的に下げることができる。一実施形態では、SAIBを加熱し、生理活性物質と混合して懸濁液を調製する。或いは、SAIBを多数の異なる生体適合性溶媒と混合して、容易に生理活性物質と製剤化できる低粘度溶液をもたらすことができる。
【0021】
本発明の組成物で任意に使用するのに適した溶媒は、生体適合性で、水溶性又は水混和性又は水分散性である。本明細書で使用する場合、「水溶性」又は「水混和性」という用語は等価であって、相互交換可能に使用することができ、25℃での水中の溶媒の溶解度が少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも3質量%、さらに好ましくは少なくとも7質量%であることを表す。疎水性非ポリマー担体材料と併用すると、溶媒は混合物の粘度を劇的に下げて、より低い粘度の液体担体材料を形成することができる。このような低粘度の液体組成物を制御放出送達用の生理活性物質とさらに製剤化することができる。適切な溶媒の例としては、限定ではなく、アセトン、ベンジルアルコール、ブチレングリコール、カプロラクタム、カプロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、グリセロール、グリセロールホルマール、グリコフロール(テトラグリコール)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、アルコキシポリエチレングリコール、プロピレンカルボナート、2−ピロリドン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「生理活性物質」は診断特性及び/又は治療特性を有するいかなる材料をも包含することを意味し、限定するものではないが、小分子、巨大分子、ペプチド、タンパク質、又は酵素が挙げられる。治療特性の非限定例は、代謝拮抗、抗真菌、抗炎症、抗高血圧、抗精神病、鎮痛、抗糖尿病、催眠、鎮静、麻酔、抗腫瘍、抗感染、抗菌、抗ウイルス、ホルモン、栄養、アゴニスト、及びアンタゴニスト特性である。
【0023】
さらに詳しくは、本発明の適切な生理活性物質は、イオン化でき、水中で中性pHにて正味の電荷を有し、かつ両親媒性分子とイオン性複合体を形成できるいかなる化合物をも包含する。好ましくは該化合物は、塩基性窒素原子、例えばアミン、イミン又は環窒素のような電子供与塩基性基を含む。本発明の生理活性物質としては、限定するものではないが、ドキソルビシン、4−ヒドロキシ−フェネチルアミン、メチルアンフェタミン、アミトリプチリン、レボキセチン、ブプロピオン、ミルタザピン、ベンラファキシン、ズロキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、カベルゴリン、アポモルヒネ、リスリド、ドキシサイクリン、ジルチアザム、シクロベンザプリン、バシトラシン、ノスカピン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バンコマイシン、ノルトリプチリン、キニジン、エルゴタミン、ベンズトロピン、ベラパミル、フルナリジン、イミプラミン、カナマイシン、ネオマイシン、アモキシシリン、アミカシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、フォーチマイシン、イセパマイシン、ミクロニマイシン、ネチルマイシン、パロマイシン、リボスタマイシン、ラパマイシン、シソマイシン、ストレプトマイシン及びトブラマイシン、ストレプトマイシン及びトブラマイシン、ピリメタミン、ナルトレキソン、リドカイン、プリロカルン、メピバカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ロピバカイン、ハロペリドン及びレスペリドンが挙げられる。
【0024】
本発明の生理活性物質としては、さらにオキシトシン、バソプレッシン、アドレノコルチコトロパ酸ホルモン(ACTH)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体ホルモン、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン(ヒト、ブタ、及びウシを含む)、成長ホルモン放出因子、インスリン、エリスロポイエチン(エリスロポイエチン活性を有する全てのタンパク質を含む)、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンジオテンシン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ−コロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮増殖因子(VEG−F)、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、エキセナチド、ペプチドYY(PYY)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン(その合成類似体及び薬理学的に活性なフラグメントを含む)、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、抗体、糖タンパク質、卵胞刺激ホルモン、キョートルフィン、タフトシン(taftsin)、サイモポイエチン、サイモシン、サイモスチムリン、胸腺体液性因子、血清胸腺因子、コロニー刺激因子、モチリン、ボンベシン、ジノルフィン、ニューロテンシン、セルレイン、ウロキナーゼ、カリクレイン、サブスタンスP類似体及びアンタゴニスト、アンジオテンシンII、血液凝固因子VII及びIX、リゾチーム、グラミシジン、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、ヒト胎盤性ラクトゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、タンパク質合成刺激ペプチド、胃抑制ペプチド、血管作用性小腸ペプチド、血小板由来増殖因子、並びにこれらの合成類似体及び変態及び薬理学的に活性なフラグメントが挙げられる。
【0025】
本発明によれば、生理活性物質は両親媒性分子とイオン相互作用を介して複合体を形成する。両親媒性分子との会合が本発明の組成物中の生理活性物質を安定化する。この複合体と他の製剤成分との組合せが、物理的に一貫した制御可能な送達システムをもたらすのに実際に十分な安定性を有する送達システムを生じさせる。さらに詳しくは、両親媒性分子は、生理活性物質の化学分解を防止又は最小限にするのに役立ち、本発明の組成物の物理化学的安定性を維持するのに役立ち、かつ該組成物から形成されたデポーからの生理活性物質の初期バースト放出を低減させるのに役立つ。該システムを用いて、種々の疾患の患者を一貫して治療することができる。
【0026】
本発明の好適な両親媒性分子は、疎水性部分と親水性部分を有する材料である。両親媒性分子の親水性部分はイオン性、好ましくはアニオン性である。両親媒性分子は、有機硫酸、有機スルホン酸、有機リン酸、又は有機カルボン酸であってよい。特に、有機硫酸及び有機スルホン酸が好ましい。両親媒性分子は、該分子の様々な塩又はイオン(溶解した)の形態であってもよい。両親媒性分子の疎水性部分は、例えばアルキル、アリール、又はアリールアルキル等のいかなる疎水性基であってもよい。疎水性部分は、飽和、不飽和、芳香族(アリール又はアリールアルキル)であってよく、かつ線形又は分岐構造であってよい。疎水性部分は、好ましくは少なくとも4個の炭素原子のアルキル又は置換アルキル基である。両親媒性分子は生理活性物質と会合して、周囲条件下で実質的に水に溶けないイオン性複合体を形成する。「実質的に溶けない」という表現は、周囲条件下で5%未満、好ましくは1%未満の溶解度を有する複合体を表す。
【0027】
本発明の両親媒性分子のいくつかの具体例として、限定するものではないが、モノ−C12−18−アルキル硫酸ナトリウム塩、3〜16個の炭素原子を有するジアルキルエステルスルホコハク酸誘導体、ジオクチルスルホコハク酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、ドデシル硫酸、パラ−トルエンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、コレステロールスルファート、ヘプタンスルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ酸、安息香酸、ステアリン酸、ウンデシレン酸、及びリン脂質が挙げられる。これらの例は、該分子の種々の塩及び/又はイオン(溶解)形態をも包含する。
【0028】
本発明によれば、組成物は、該組成物を改変して生理活性物質の所望放出プロファイルを達成する添加剤を必要に応じて含む。添加剤を含めて放出速度を調節し、生理活性物質を安定化することができる。適切な添加剤は、生分解性又は非生分解性ポリマー、炭水化物又は炭水化物誘導体、有機又は無機化合物を含め、いかなるポリマー又は非ポリマー材料であってもよい。
【0029】
いくつかの適切な添加剤は、参照によってその内容全体を本明細書に引用したものとする米国特許第5,747,058号に記載されている。好ましくは、適切な添加剤は、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーである。該ポリマーとして、限定するものではないが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカルボナート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカルボナート、ポリホスファゼン、スクシナート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸並びにこれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物が挙げられる。
【0030】
本発明によれば、組成物は、必要に応じて還元剤、抗酸化剤、及びフリーラジカルスカベンジャーを含んで組成物を安定化する。例は、限定するものではないが、システイン又はメチオニン、d−αトコフェロールアセタート、dl−αトコフェロール、アスコルビルパルミタート、ブチル化ヒドロキシアニドール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシキノン、ブチルヒドロキシアニソール、ヒドロキシコマリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、セファルム、エチルガラート、プロピルガラート、オクチルガラート、ラウリルガラート、プロピルヒドロキシベンゾアート、トリヒドロキシブチロフェノン、ジメチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、ビタミンE、及びレシチンである。
【0031】
従って、本発明の組成物を容易に調製することができる。一実施形態では、いずれの適切な方法によっても生理活性物質と両親媒性分子の複合体を調製しうる。例えば、溶液の形態であってもなくてもよい適量の両親媒性分子を生理活性物質の適切な溶液、例えば水溶液に添加して、該溶液から沈殿する複合体を形成することができる。次にこの沈殿物を適切な手段、例えば遠心分離又はろ過を用いて回収する。別の実施形態では、生理活性物質と両親媒性分子を両方とも水に溶解させてからその2つの溶液を混ぜ合わせる。接触すると、生理活性物質と両親媒性分子との間で複合体が形成され、沈殿が生じる。さらなる実施形態では、生理活性物質と両親媒性を両方とも有機溶媒に溶解させてから、副生物を除去し、溶媒を蒸発させて除去することによって、複合体を回収する。
【0032】
複合体中の生理活性物質対両親媒性分子の比は、モルベースで表して好ましくは約0.1:1〜約10:1である。さらに好ましくは、この比は、生理活性物質と両親媒性分子の両者上の荷電官能基の数に基づいて化学量論的である。最適の複合体化と引き続く製剤化を果たすため、生理活性物質のイオン化できる(荷電した)基の数で割った生理活性物質の分子量は、好ましくは100ダルトンより大きい。生理活性物質と両親媒性分子との間に結果として生じる複合体は、好ましくは水に実質的に溶けない。該複合体を疎水性非ポリマー担体材料、溶媒及び他の任意的添加剤と混ぜ合わせて、均一製剤を形成することができる。驚くべきことに、両親媒性分子と生理活性物質の会合が生理活性物質の化学分解を防止又は最小限にし、本発明の組成物の物理化学的安定性を維持し、かつ該組成物からの生理活性物質の初期バースト放出を低減させることが見出された。従って、本発明の組成物は、適切な条件下における合理的な有効期間での貯蔵に適している。
【0033】
本明細書で使用する場合、「イオン化できる基」という表現は、1つ以上の電子を添加又は除去することによって、正味の電荷を獲得できる原子又は原子群を表す。
【0034】
本発明によれば、組成物は、好ましくは均一溶液又は均質懸濁液である。組成物の均一性又は均質性の維持は、再現性のある投与を可能にし、生理活性物質の制御放出送達用の一貫したデポーシステムを得るために非常に重要である。実際には、少なくとも投与直前に再構成又は混合することによって、組成物の均一性又は均質性を得ることができる。調製プロセス、貯蔵及び投与を通して一貫して組成物の均一性又は均質性を維持できることが好ましい。
【0035】
本発明によれば、組成物は、組成物の総質量に対して質量で約99.5%〜約5%、好ましくは95%〜25%の疎水性非ポリマー担体材料を含む。組成物は、約0%〜約50%の生体適合性溶媒、約0.1%〜約40%の生理活性物質並びに製剤及び生理活性物質を安定化するのに十分な量の両親媒性分子をも含む。組成物は、約1%〜約25%の1種以上の添加剤をさらに含む。
【0036】
一実施形態では、生理活性物質をまず両親媒性分子と混ぜ合わせて実質的に水に溶けない複合体を形成する。次にこの複合体を本発明の組成物の残りの成分と混ぜ合わせて、包装及び貯蔵用の完成送達システムを形成する。好ましくは、すぐに使える構造の注射器に組成物を詰める。或いは、対象の体に投与する直前にこの複合体を本発明の残りの成分と混ぜ合わせてもよい。
【0037】
好ましい実施形態では、疎水性非ポリマー担体材料としてスクロースアセタートイソブチラート(SAIB)を使用し、溶媒としてNMPを選択する。生理活性物質は、例えばオクトレオチド、リュープロリド、又はグリカゴン様ペプチド−1(GLP−1)等のペプチド及びタンパク質から成る群より選択される。好ましくは生理活性物質を両親媒性分子、好ましくはジオクチルスルホコハク酸又はドデシル硫酸と混ぜ合わせて、実質的に水に溶けない複合体を形成する。結果として生じる複合体をSAIB/NMP溶液と混ぜ合わせて制御送達製剤を形成することができる。
【0038】
別の実施形態では、本発明の組成物の放出速度をin vitroで決定した。4mLのガラスバイアル中の3mLの放出緩衝液(PBS 7.4、0.1%のナトリウムアジドを含む)に約0.1mLの各製剤を注入した。バイアルを37℃でインキュベートし、種々の時点でサンプリングした。各時点で、2mLの放出媒体を除去し、2mLの新鮮な放出媒体で置き換えた。YMC−Pack ODS−120Aカラム又は同等カラムを用いて、HPLCにより、収集サンプルの生理活性物質濃度と完全性を分析した。各製剤について三通りのサンプルを使用した。
【0039】
本発明によれば、生理活性物質の制御放出送達が望まれる対象に、本明細書に記載の組成物を投与することができる。本明細書で使用する場合、用語「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳類、さらに好ましくはヒトを包含するものとする。
【0040】
本明細書で使用する場合、「投与する」という用語は、対象の所望位置に組成物を送達するのに適したあらゆる径路で、対象に組成物(例えば、医薬組成物)を施すこと、送達すること又は適用することを意味するものとする。組成物を局所、皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内投与し、また経口、直腸、膣、又は鼻腔投与によって、生理活性物質による種々の疾患の治療用の既知パラメーターに基づいた所望用量の生理活性物質を与えることができる。
【0041】
用語「制御送達又は制御放出送達」は、本明細書で使用する場合、例えば、投与後一定期間、好ましくは少なくとも数日〜数週間又は数カ月にわたる生理活性物質のin vivoでの連続的送達を包含する。例えば、経時的に持続する該薬剤の治療効果によって、生理活性物質の制御送達又は制御放出送達を実証することができる(例えば、リュープロリドでは、経時的に持続するテストステロンの抑制によって該ペプチドの制御送達を実証することができる)。或いは、経時的にin vivoで薬剤の存在を検出することによって、該薬剤の制御送達を実証しうる。
【0042】
この出願では、液体非ポリマー組成物についての特許請求の範囲に記載の種々の実施形態は、必要なら変更を加えて、該組成物を形成するための方法及びデポーをin situ形成するための方法についてをも想定している。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は、本発明の特徴及び範囲を例証する。以下の実施例は、如何なる限定としても解釈すべきでなく、有用な薬物送達システムを作り上げる方法を単に教示するものと解釈すべきである。
【0044】
実施例1. オクトレオチドアセタートを含む製剤の調製及びin vitro放出
2gのNMPを8gのSAIBと合わせた後、穏やかに混合することによって、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中スクロースアセタートイソブチラート(SAIB)の80質量%濃度の溶液を調製した。清澄な低粘度溶液を得た。次に60mgのオクトレオチドアセタートを100μLのNMPに溶かし、NMP中のSAIB溶液(80%)900μLと合わせて十分に混合し、約6%のオクトレオチドアセタートを含む製剤を得た。
【0045】
約0.1mLのオクトレオチド製剤をガラスバイアル中の3mLの放出緩衝液(PBS 7.4、0.1%のナトリウムアジド含有)に注入した。バイアルを37℃でインキュベートし、種々の時点でサンプリングした。各時点で、2mLの放出媒体を除去して2mLの新鮮な放出媒体で置き換えた。YMC−Pack ODS−120Aカラムを用いて、HPLCにより、放出サンプルのペプチドの濃度と完全性を分析した。
【0046】
知見:NMP中オクトレオチドアセタートの溶液100μLをNMP中のSAIB溶液(80%)900μLと混合すると、驚くべきことに、分厚い凝集体のある不透明な懸濁液が得られた。SAIBとオクトレオチドアセタートは両方ともNMPにかなり可溶性なので、同溶媒(NMP)中で2つの溶液を混合した後には清澄溶液が予測された。このことは、オクトレオチド又はオクトレオチドアセタートがSAIBとあまり相溶性がないことを示唆している。懸濁液を室温で放置すると、数時間以内で相分離の出現が観察され、室温で一晩放置した後に2つの区別される相が得られた。従って、該製剤は、SAIB/NMP溶液中のオクトレオチドの安定した単相製剤の調製には適していない。
【0047】
室温で種々の期間貯蔵した製剤のHPLC分析は、予想外に、クロマトグラム上にいくつかの余分な異なるピークを示した。それらのピークは最初には製剤から観察されなかったので、不純物又はオクトレオチドの分解生成物の発生を示唆している。これらのピークの強度は、時間とともに増加し、一方オクトレオチドのピークは経時的に減少した。この結果は、製剤中の生理活性物質と他の賦形剤の化学的な不安定性が単相安定製品の開発の成功を妨げていることを示唆している。従って、このタイプの製剤は、種々の生理活性物質の制御放出送達に適合するように改変されなければならない。
【0048】
実施例2. オクトレオチドと硫酸ドデシルの複合体(OCT−SDS)の調製
215.2mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS,MW:288.38,98.5%)を20mlの水に溶かした(10.76mg/mL,36.75mM)。251.7mg(0.212mmol)のオクトレオチドアセタート(MW:1019.2+120(アセタート),85.8%)を水(10mL)に溶かした。オクトレオチド溶液を11.56mLのSDS溶液と混合して化学量論的に複合体を形成した。沈殿物を遠心分離で分けてから真空下で乾燥させた。
【0049】
実施例3. リュープロリドと硫酸ドデシルの複合体(LA−SDS)の調製
215.2mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS,MW:288.38,98.5%)を20mLの水に溶かした(10.76mg/mL,36.75mM)。201.4mg(0.142mmol)のリュープロリドアセタート(MW:1209.4,85.1%)を10mLの水に溶かした(14mM)。リュープロリド溶液を7.619mLのSDS溶液と混合して化学量論的に複合体を形成した。沈殿物を遠心分離で分けてから真空下で乾燥させた。
【0050】
実施例4. オクトレオチドとドクサートの複合体(OCT−DSS)の調製
1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホブタン二酸ナトリウム又はナトリウムドクサート(DSS,C2037NaO7S,MW:444.56,506.6mg,1.139mmol)をイソプロパノール(20mL)に溶かし(56.97mM)、201.4mg(0.17mmol)のオクトレオチドアセタート(MW:1019.2,85.8%)を10mLの水に溶かした(17mM)。5.968mLのDSS溶液をオクトレオチド溶液と混合し、約1時間撹拌した。複合体を遠心分離で分け、結果として生じた沈殿物を水で洗浄してから真空下で乾燥させた。
【0051】
実施例5. リュープロリドとドクサートの複合体(LA−DSS)の調製
1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホブタン二酸ナトリウム(DSS,C2037NaO7S,MW:444.56,506.6mg,1.139mmol)をイソプロパノール(20mL)に溶かし(56.97mM)、250mg(0.176mmol)のリュープロリドアセタート(MW:1209.4,85.1%)を水(10mL)に溶かした。6.178mLのDSS溶液をリュープロリド溶液と混合し、1時間撹拌した。遠心分離で複合体を分け、結果として生じた沈殿物を水で洗浄してから真空下で乾燥させた。
【0052】
実施例6. リュープロリドオレアート(LA−OL)の調製
77.4mgのリュープロリドアセタート(MW:1209.4,84.2%)を1mLのDI水に溶かした(0.0539mmol)。31.38mgのオレイン酸(#A0241935,MW:282.46,97%)を添加して1:2モル比のLA:OLを得た。この溶液を混合すると白色沈殿が生じた。遠心分離で複合体を分離し、結果として生じた沈殿物を水で洗浄してから真空下で乾燥させた。
【0053】
実施例7. オクトレオチドを含む製剤の調製及びin vitro特徴づけ
オクトレオチドアセタート(OCT−Ac)、オクトレオチドドデシルスルファート(OCT−SDS)及びオクトレオチドドクサート(OCT−DSS)複合体粉末をNMPに溶かした。次にオクトレオチドの種々の塩形態を含む溶液をNMP中のSAIB溶液(90%w/w)と徹底的に混合した。表1に示すように、全ての製剤についてオクトレオチド含量は約6%であり、SAIB濃度は約70%だった。
【0054】
【表1】

【0055】
OCT−AcをSAIB/NMP溶液と合わせると、即座に相分離が起こった。実施例1で観察されたように、分厚い固体沈殿物が観察され、不均質な製剤が得られた。この不均質製剤は針を塞ぐであろうから注射に適さない。オクトレオチドとドデシル硫酸ナトリウムの複合体(OCT−SDS)をSAIB/NMP溶液と混合すると、均質懸濁液が得られたので、注射に適している。この製剤は、投与直前に調製することができ、或いは製剤パラメーターを調整することによって、一定期間の貯蔵に適しうる。オクトレオチドとドクサートナトリウムの複合体をSAIB/NMP溶液と混合すると、透明の均一溶液が得られ、相分離は起こらなかった。この製剤は、包装して室温で長期間保存することができる。
【0056】
さらに、オクトレオチドは、OCT−Acを含む製剤中で安定でないことが分かり、上記実施例1の知見を確証した。表2に示すように、成分を合わせるとすぐにオクトレオチドの不純物の発生が起こった。2時間後、約4%のオクトレオチドが分解又は反応していた。半分より多くのオクトレオチドが5日後に分解し、このシステムが該ペプチドの制御放出に適さないことを示唆している。しかし、予想外に、OCT−SDS及びOCT−DSSを含む製剤からは室温で7日経過した後でも、オクトレオチドの分解がほとんど又は全く検出されないことが分かった(表2)。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例8. オクトレオチドを含む製剤の調製及びin vitro特徴づけ
オクトレオチドアセタート(OCT−Ac)とオクトレオチドドデシルスルファート(OCT−SDS)複合体粉末をNMPに溶かした。次にオクトレオチドの種々の塩形態を含む溶液をNMP中のSAIB溶液(90%w/w)と徹底的に混合した。表3に示すように、全ての製剤について最終オクトレオチド含量は約6%であり、SAIB濃度は約80%だった。
【0059】
【表3】

【0060】
より高い濃度のSAIB(実施例7の70%に対して80%)を使用したが、OCT−AcをSAIB/NMP溶液と混合すると、実施例7で観察したよりもはるかに早く相分離が起こった。製剤の底部に分厚い凝集体が形成された(図1(a))。この不均質製剤は、制御放出のために一貫したデポーシステムをin situ形成するための注入には明らかに適していない。OCT−SDSをSAIB/NMP溶液と合わせると、均質な乳白色の懸濁液が得られたので注入に適している。24時間後でさえ、懸濁液には有意な相分離が観察されず(図(b))、注射器を用いた注入によよって容易に投与することができた。
【0061】
実施例9. 種々の製剤からのオクトレオチドのin vitro放出
オクトレオチドアセタート(OCT−Ac)、オクトレオチドドデシルスルファート(OCT−SDS)及びオクトレオチドドクサート(OCT−DSS)複合体粉末をNMP中のSAIB溶液(90%w/w)と混合することによって製剤を調製した。表4に示すように、各製剤中のオクトレオチド含量は約6%だった。
【0062】
【表4】

【0063】
in vitro放出のため一定分量の懸濁液を用いた。オクトレオチドを含む約0.1mLの各製剤を4mLのガラスバイアル中の3mLの放出緩衝液(PBS 7.4、0.1%のナトリウムアジド含有)に注入した。バイアルを37℃でインキュベートし、種々の時点でサンプリングした。各時点で、2mLの放出媒体を除去して2mLの新鮮な放出媒体で置き換えた。YMC−Pack ODS−120Aカラムを用いて、HPLCにより、収集したサンプルのペプチド濃度と完全性を分析した。各製剤について三通りのサンプルを用いた。
【0064】
図2に示すように、OCT−Acを含む製剤からのOCTの放出は、非常に高い初期バースト放出を示した。24時間以内で60%より多くのオクトレオチドが放出され、2週間後には90%より多くのオクトレオチドが放出された。しかし、驚くべきことに、OCT−SDS及びOCT−DSSを含む製剤からのOCTの放出はほとんど初期バースト放出を示さなかった。OCT−SDS及びOCT−DSSを含む両製剤からは24時間以内で10%未満のオクトレオチドが放出され、その後、経時的に徐々に放出された。
【0065】
実施例10. 種々の製剤からのリュープロリドのin vitro放出
リュープロリドアセタート(LA−Ac)、リュープロリドドデシルスルファート(LA−SDS)、リュープロリドドクサート(LA−DSS)及びリュープロリドオレアート(LA−OL)複合体粉末をNMP中のSAIB溶液(90%w/w)と混合することによって製剤を調製した。表5に示すように、各製剤中のリュープロリド含量は約6%だった。
【0066】
【表5】

【0067】
in vitro放出のため一定分量の懸濁液を使用した。4mLのガラスバイアル中の3mLの放出緩衝液(PBS 7.4、0.1%のナトリウムアジド含有)に約0.1mLの各リュープロリド製剤を注入した。バイアルを37℃でインキュベートし、種々の時点でサンプリングした。各時点で、2mLの放出媒体を除去して2mLの新鮮な放出媒体で置き換えた。YMC−Pack ODS−120Aカラムを用いて、HPLCにより、収集したサンプルのペプチド濃度と完全性を分析した。各製剤について三通りのサンプルを用いた。
【0068】
図3に示すように、LA−Ac及びLA−OLを含む製剤からのリュープロリドの放出は、非常に高い初期バースト放出を示した。80%より多くのリュープロリドが24時間以内で放出され、2週間後にはほとんど全てのリュープロリドが放出された。リュープロリドとオレアートの複合体化が水不溶性の複合体をもたらしたが、それはリュープロリドの初期バースト及び全体的な放出を低減しなかった。しかし、驚くべきことに、LA−SDS及びLA−DSSを含む製剤からのリュープロリドの初期バースト放出は劇的に減少した。LA−SDS及びLA−DSSを含む両製剤からは24時間以内で10%未満のリュープロリドが放出され、その後は経時的な漸次のゼロ次放出だった。
【0069】
実施例11. ドキソルビシンドクサート(DOX−DSS)及びドキソルビシンドデシルスルファート(DOX−SDS)の調製
1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホブタン二酸ナトリウム(DSS,C2037NaO7S,MW:444.56,235.3mg,0.53mmol)をイソプロパノール(2mL)に溶かし、200mg(0.53mmol)のドキソルビシン塩酸塩(DOXHCl,C2729NO11・HCl,MW:579.98,>98.0%)を水(20mL)に溶かした。DSS溶液をドキソルビシン塩酸塩溶液と混合し、1時間撹拌した。3500RPMにて遠心分離で複合体を分離し、結果として生じた沈殿物を真空下で凍結乾燥させた。
【0070】
実施例12. 種々の製剤からのドキソルビシンのin vitro放出
ドキソルビシン−HCl(DOX−HCl)及びドキソルビシンドクサート(DOX−DSS)複合体粉末を用いて製剤を調製した。DOX−HCl及びDOX−DSSをNMP中のSAIB溶液と混合することによって製剤を調製して、表6に示すように6%のDOX装填を達成した。
【0071】
【表6】

【0072】
種々の製剤からのDOXのin vitro放出を研究するため一定分量の懸濁液を用いた。約0.1mLの各DOX製剤を4mLのガラスバイアル中の3mLの放出緩衝液(PBS 7.4、0.1%のナトリウムアジド含有)に注入した。バイアルを37℃でインキュベートし、種々の時点でサンプリングした。各時点で、2mLの放出媒体を除去して2mLの新鮮な放出媒体で置き換えた。YMC−Pack ODS−120Aカラムを用いて、HPLCにより、収集したサンプルのペプチド濃度と完全性を分析した。各製剤について三通りのサンプルを用いた。
【0073】
表7に示すように、DOX−HClを含む製剤からのDOXの放出は非常に高い初期バースト放出を示した。24時間以内で70%より多くのDOXが放出された。しかし、驚くべきことに、DOX−DSSを含む製剤からのDOXの放出はほとんど初期バースト放出を示さなかった。DOX−DSSを含む製剤からは24時間以内で8%未満のDOXが放出された。この結果は、DOXとDSSの複合体化は、DOXの初期バースト放出を有意に低減し、ほぼ10倍減少させることを示している。複合体化が、長期間にわたるDOXの送達を可能にするだろう。
【0074】
【表7】

【0075】
実施例13. プラミペキソール(PPL)とSDSの複合体(PPL−SDS)の調製
80.7mgのプラミペキソール(PPL,MW:302.27)を2mLのDI水(0.267mmol)に溶かした。2.662mLのSDS溶液(MW:288.38,57.83mg/mL)をPPL:SDS=1:2比となるように添加し(0.534mmol)、溶液をよく混合した。白色沈殿が生じた。NaOHでpHを4から7にに調整した。溶液を凍結させて一晩凍結乾燥機上に置いた。白色粉末を得た。
【0076】
実施例14. SAIB製剤からのプラミペキソールのin vitro放出
PPLをNMP中90%のSAIB溶液と混合することによって、異なる塩形態の約6%のPPLを含む製剤を調製した。ほぼ100mgを、3mLのPBS緩衝液と0.1%のNaN3を含むバイアル中に注入した。ゲル様ペレットが生じた。バイアルを37℃にて振とう機上に置いた。所定時間に2mLの放出媒体を除去し、それを2mLの新鮮な緩衝液で置き換えることによってPPLの放出を測定した。放出媒体中の濃度を逆相HPLCで決定した。
【0077】
【表8】

【0078】
図4に示すように、PPL−HClを含む製剤からのプラミペキソールの放出は非常に高い初期バースト放出を示した。24時間以内で60%より多くのプラミペキソールが放出され、1週間後には約90%のプラミペキソールが放出された。しかし、驚くべきことに、PPL−SDSを含む製剤からのプラミペキソールの初期バースト放出は劇的に減少した。PPL−SDSを含む製剤からは24時間以内で5%未満のプラミペキソールが放出され、その後は経時的な漸次のゼロ次放出だった。
【0079】
実施例15. ゲンタマイシンドクサート(GEN−DSS)の調製
79.7mgのゲンタマイシン(2−[4,6−ジアミノ−3−[3−アミノ−6−(1−メチルアミノエチル)テトラヒドロピラン−2−イル]オキシ−2−ヒドロキシ−シクロヘキソキシ]−5−メチル−4−メチルアミノ−テトラヒドロピラン−3,5−ジオール、MW:477.6g/mol及び5つのイオン化できる(帯電)基)硫酸塩(GEN硫酸塩,MW:694−723,88.2%)を2mLのDI水(0.125mmol)に溶かした。4.877mLのDSS溶液(MW:444.55,57.11mg/mL)を加えて5:1比のDSS:GENを得た。DSS溶液を添加すると即座に白色沈殿が生じた。溶液を凍結させ、一晩凍結乾燥機内に置いた。
【0080】
実施例16. GEN−DSSを含む製剤の調製
約6%及び2%のGEN−DSSとNMP中90%のSAIBを含む製剤を調製した。ほぼ100mgを、3mLのPBS緩衝液と0.1%のNaN3を含むバイアル中に注入した。室温でゲル様ペレットが生じた。しかし、バイアルを37℃でインキュベートした後、ペレットが崩壊し始め、数時間以内でバラバラになった。
【0081】
実施例17. リゾチームドクサート(LYZ−DSS)の調製
50.5mgのリゾチーム(MW:18,000)を1mLのDI水(0.0028mmol)に溶かした。148.2μLのDSS溶液(MW:444.55,58.86mg/mL)を加えて7:1比のDSS:LYZを得た。DSS溶液を添加すると即座に白色沈殿が生じた。溶液を凍結させ、一晩凍結乾燥機上に置いた。
【0082】
実施例18. リゾチームドクサート(LYZ−DSS)を含む製剤の調製
約6%のLYZ及びLYZ−DSS(85.2%LYZ)とNMP中90%のSAIBとを含む製剤を調製した。ほぼ100mgを、3mLのPBS緩衝液と0.1%のNaN3をを含むバイアル中に注入した。室温でゲル様ペレットが生じた。37℃にて振とう機上に置いた。LYZを含むペレットは1日後に相分離し、ペレットは透明な層で囲まれた白色の不透明な中心を有していた。LYZ−DSSを含むペレットは、均一な白色ペレットとして1つの相のままだった。リゾチームと両親媒性分子DSSの複合体化によって、改良されたデポーシステムが達成された。
【0083】
実施例19. ナルトレキソンドクサート(NT−DSS)の調製
1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホブタン二酸ナトリウム(DSS,C2037NaO7S,MW:444.56,235.3mg,0.53mmol)をイソプロパノール(2mL)に溶かし、200mg(0.53mmol)のナルトレキソン塩酸塩(NT,C2023NO4・HCl,MW:377.86,>99.0%)を水(20mL)に溶かした。DSS溶液をナルトレキソン塩酸塩溶液と混合して1時間撹拌した。3500RPMにて遠心分離で複合体を分離し、結果として生じた沈殿物を真空下で凍結乾燥させた。
【0084】
本発明は、単に例として提示される上記実施形態によって制限されず、添付の特許請求の範囲によって定義される保護範囲内で種々の方法で修正されうる。
【0085】
従って、本発明の好ましい実施形態に当てはまるように本発明の基本的な新規特徴を示し、記載し、指摘したが、当然のことながら、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、例示した装置の形態及び詳細、並びにそれらの操作に種々の省略及び置換及び変更を行なうことができる。例えば、同一結果を得るための実質的に同一の手段で実質的に同一の機能を果たす当該要素及び/又は方法工程の全ての組合せが本発明の範囲内であることを明確に意図している。さらに、本発明のあらゆる開示形態又は実施形態と関連して示し、及び/又は述べた構造及び/又は要素及び/又は方法工程は、設計選択の一般的事項としていかなる他の開示又は記載又は示唆した形態又は実施形態にも組み込まれ得るものであることを認識すべきである。従って、本明細書に添付された特許請求の範囲によって示されるようにのみ制限されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性物質の徐放用液体組成物であって、
(a)疎水性非ポリマー担体材料;
(b)水混和性である医薬的に許容しうる溶媒;及び
(c)水中で中性pHにて正味電荷を有する生理活性物質と両親媒性分子との間に形成されるイオン性複合体、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記疎水性非ポリマー液体担体材料が、1種以上の非ポリマーエステル又は混合エステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水性非ポリマー担体が、周囲条件又は生理的条件下できちんと結晶化せず、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有する高粘性液体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記疎水性非ポリマー液体担体材料が、カルボン酸とエステル化している20個未満のヒドロキシドル基を有するポリオールから形成される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオールが、2〜24個の炭素原子を有する単官能性及び多官能性アルコール、糖アルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、並びにポリエーテルアルコールから成る群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオールが、ドデカノール、ヘキサンジオール、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、スクロース、イノシトール、ポリグリセロール、ポリエチレングリコール等から成る群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記カルボン酸が、脂肪酸などの、2個より多くの炭素を有する有機酸を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記カルボン酸が、飽和、不飽和、芳香族(アリール又はアリールアルキル)であってよく、かつ線形又は分岐構造であってよい、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記カルボン酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、リポ酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、ε−ヒドロキシカプロン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、及び/又は他の脂肪酸から成る群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記疎水性非ポリマー担体材料が、スクロースアセタートイソブチラート(SAIB)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記医薬的に許容しうる溶媒が、水中25℃で少なくとも1質量%の混和性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記医薬的に許容しうる溶媒が、アセトン、ベンジルアルコール、ブチレングリコール、カプロラクタム、カプロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、グリセロール、グリセロールホルマール、グリコフロール(テトラグリコール)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、アルコキシポリエチレングリコール、プロピレンカルボナート、2−ピロリドン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記生理活性物質が、小分子、巨大分子、ペプチド、タンパク質、又は酵素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記生理活性物質上のイオン化できる基の数で割った前記生理活性物質の分子量が、100ダルトンより大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記生理活性物質が、4−ヒドロキシ−フェネチルアミン、メチルアンフェタミン、アミトリプチリン、レボキセチン、ブプロピオン、ミルタザピン、ベンラファキシン、ズロキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、カベルゴリン、アポモルヒネ、リスリド、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、ジルチアザム、シクロベンザプリン、バシトラシン、ノスカピン、エリスロマイシン、ポリミキシン、バンコマイシン、ノルトリプチリン、キニジン、エルゴタミン、ベンズトロピン、ベラパミル、フルナリジン、イミプラミン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、アモキシシリン、アミカシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、フォーチマイシン、イセパマイシン、ミクロニマイシン、ネチルマイシン、パロマイシン、リボスタマイシン、ラパマイシン、シソマイシン、ストレプトマイシン及びトブラマイシン、ストレプトマイシン及びトブラマイシン、ピリメタミン、ナルトレキソン、リドカイン、プリロカルン、メピバカイン、ブピバカイン、テトラカイン、ロピバカイン、及びレスペリドンから成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記生理活性物質が、オキシトシン、バソプレッシン、アドレノコルチコトロパ酸ホルモン(ACTH)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体ホルモン、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン(ヒト、ブタ、及びウシを含む)、成長ホルモン放出因子、インスリン、エリスロポイエチン(エリスロポイエチン活性を有する全てのタンパク質を含む)、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンジオテンシン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ−コロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮増殖因子(VEG−F)、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、エキセナチド、ペプチドYY(PYY)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン(その合成類似体及び薬理学的に活性なフラグメントを含む)、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、抗体、糖タンパク質、卵胞刺激ホルモン、キョートルフィン、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモスチムリン、胸腺ホルモン因子、血清胸腺因子、コロニー刺激因子、モチリン、ボンベシン、ジノルフィン、ニューロテンシン、セルレイン、ウロキナーゼ、カリクレイン、サブスタンスP類似体及びアンタゴニスト、アンジオテンシンII、血液凝固因子VII及びIX、リゾチーム、グラミシジン、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、ヒト胎盤性ラクトゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、タンパク質合成刺激ペプチド、胃抑制ペプチド、血管作用性小腸ペプチド、血小板由来増殖因子、並びにこれらの合成類似体及び変態及び薬理学的に活性なフラグメントから成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記両親媒性分子の親水性部分がイオン性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記両親媒性分子が、スルファート、スルホナート、又はスルホスクシナート並びにこれらのイオン形態及び溶解生成物から成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記両親媒性分子が、3〜16個の炭素原子を有するジアルキルエステルスルホコハク酸誘導体、ジオクチルスルホコハク酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー10−スルホン酸、ドデシル硫酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、コレステロール硫酸、ヘプタンスルホン酸、又はこれらの塩若しくはイオン(溶解)形態から成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、さらに添加剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記添加剤が、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカルボナート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカルボナート、ポリホスファゼン、スクシナート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸並びにこれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物から成る群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記添加剤が、システイン又はメチオニン、d−αトコフェロールアセタート、dl−αトコフェロール、アスコルビルパルミタート、ブチル化ヒドロキシアニドール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシキノン、ブチルヒドロキシアニソール、ヒドロキシコマリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、セファルム、エチルガラート、プロピルガラート、オクチルガラート、ラウリルガラート、プロピルヒドロキシベンゾアート、トリヒドロキシブチロフェノン、ジメチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、ビタミンE、及びレシチンから成る群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
生理活性物質の徐放用組成物であって、
(a)スクロースアセタートイソブチラート;
(b)水混和性である医薬的に許容しうる溶媒;及び
(c)水中で中性pHにて正味電荷を有する生理活性物質と両親媒性分子との間に形成されるイオン性複合体、
を含む、組成物。
【請求項24】
前記医薬的に許容しうる溶媒が、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、乳酸エチル、グリセロール、グリセロールホルマール、グリコフロール(テトラグリコール)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、アルコキシポリエチレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、又はこれらの組合せから成る群より選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記生理活性物質が、ドキソルビシン、プラミペキソール、オクトレオチド、リュープロリド、又はグリカゴン様ペプチド−1(GLP−1)から成る群より選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記両親媒性分子が、ジオクチルスルホコハク酸又はドデシル硫酸から成る群より選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
スクロースアセタートイソブチラート対溶媒の比が、50:50〜95:5である、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
スクロースアセタートイソブチラート対溶媒の比が、70:30〜90:10である、請求項23に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−511088(P2011−511088A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545996(P2010−545996)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/033226
【国際公開番号】WO2009/100222
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(508218132)キューピーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】