説明

薬物送達システム

本発明は、水溶性薄膜(ウェファー)の形態である、薬物送達システムであって、エストロゲンレセプターβ(ER−β)選択的アゴニストを含む前記薬物送達システムに関する。本発明のウェファーは、エストロゲンの不十分な内部レベルによって引き起こされる、雌性哺乳動物の身体的疾患を処置、軽減、又は予防するために好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は水溶性薄膜(ウェファー(wafer))の形態である、薬物送達システムであって、エストロゲンレセプターβ(ER−β)選択的アゴニストを含み、特にエストロゲンレセプターβ(ER−β)選択的アゴニストとして8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンを含み、特に、以下の化合物:
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、又はそれらの誘導体
から選択されるER−β選択的アゴニストを含む、前記薬物送達システムに関する。
【0002】
本発明のウェファーは、エストロゲンの不十分な内部レベルによって引き起こされる、雌性哺乳動物の身体的疾患(physical condition)を処置、軽減、又は予防するために好適である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
薬剤、例えばエストロゲンは、従来の標準的な経口用錠剤、又はカプセル製剤に含まれて、正確且つ一定の服用量を提供し得るが、かかる送達形態は、薬剤の投与及び調製の両方において幾つかの欠点を有する。例えば、集団の約50%において、錠剤の飲み込みに問題があると推定されており(Seager,J.Pharmacol.Pharm.1998;50;375−382を参照)、そして錠剤又はカプセルを飲み込むことができない患者、例えば子供又は高齢者の存在は、製薬業界の課題である。製薬業界は、口腔内速崩壊錠、摂取前に液体へと崩壊する錠剤、液剤及びシロップ、ゴム、及び経皮パッチを含む、多くの異なる薬物送達システムを開発することによってこの課題を克服しようとしている。しかし、これらの薬物送達システムは、各々固有の問題を有している。
【0004】
経皮パッチは、不便且つ不快なものであり、及び製造費が高い。さらに、皮膚を通過する薬物溶剤がまた、投与における非常に複雑な問題を有し得る。液剤は子供に特に有用である。しかし、液剤は、成人にとって不便であり、且つ製剤化、包装、及び輸送費が比較的高額となり得る。摂取前に、液体に溶解され得る錠剤は同様に有用である。しかしそれらは、提供されるために液体及び飲料容器を必要とする点で非常に不便である。さらに、発泡錠が使用されるときでさえ、崩壊及び/又は溶解に時間がかかる。最終的に、これらの薬物送達システムは通常、コップに微粒子及び/又はカスを残すために非常に汚いものであり得る。口腔内速崩壊錠、例えば、チュアブル錠又は自己崩壊錠(self disintegrating tablet)は、優れた利便性を提供する。しかし、噛み砕くことにより、保護的コーティングを崩壊させるために、チュアブル錠又は自己崩壊錠は通常、本来の味のマスキングの問題がある。さらに、チュアブル錠又は自己崩壊錠は通常、不快な食感を伴う。さらに、多孔質であり且つ低圧で成形されたかかる錠剤の脆弱性/破砕性のために、それらを運搬し、貯蔵し、取扱い、及び患者へ特に子供及び高齢者に投与することが困難である。
【0005】
したがって、患者に対する改善されたコンプライアンスを有する、信頼性のある送達システム、すなわち、服用が容易であり、且つ患者が必要なときにいつでもどこでも個別に服用することができる送達システムが必要とされている。水溶性膜(ウェファー)は、これらの基準を満たす。通常、かかるウェファーは、口腔内に存在する唾液中で速やかに溶解し、それにより1又は2以上の活性成分を放出し、その後、舌、舌下、頬、及び/又は口蓋経路で順に吸収され得る。
【0006】
製薬業界は、所定の薬物服用量のより優れた利用を行うために、送達システムの改善を常に目指している。別言すれば、薬物負荷がより低くなり、同時に血流中で臨床使用薬剤濃度を生じる送達システムへの必要性が常に存在する。非常に強力な薬剤、例えばステロイドホルモンが投与され得るときに、これは特に関連がある。例えばステロイドホルモンの血流中における臨床利用濃度を維持しながら、当該ステロイドホルモンの投与量を低下させることにより、必要とされる薬剤料がより少量となるために、製薬産業における節約を可能とするだけでなく、患者へ投与されるべきステロイドホルモンの総量をより少なくすることが可能となる。これにより明らかに、過剰投与事例が減少し、且つ顕著な副作用を減少させ得る。ステロイドホルモン、例えばエストロゲンの投与量の減少の重要性はまた、最低可能曝露量で有効性を達成することができる、服薬スケジュール及び薬物送達システムを調査することを推奨しているFDAガイドラインにおいて強調されている(Guidance for Industry:Estrogen and Estrogen/Progestin Drug Products to Treat Vasomotor Symptoms and Vulvar and Vaginal Atrophy Symptoms−Recommendations for Clinical Evaluation;U.S.Department of Health and Human Services;Food and Drug Administration;CDER;January 2003)。
【0007】
高活性の薬剤のための新規剤形を作り出すときにおけるさらに別の目的は、同等の薬剤投与量が、異なる患者へ同等の効果をもたらすことを保証するために、異なる患者における薬剤の結果的血清レベルに関して、個人間の低変動性を達成することである。これは、所定の薬剤の治療濃度域、すなわち所望の治療効果を提供する薬剤の血清レベルと、許容できない副作用をもたらす血清レベルとの間の差が相対的に小さい場合に特に重要である。
【0008】
味感をマスキングされたチュアブル医薬組成物について、US4,800,087に記載されている。
【0009】
味感をマスキングされた口腔崩壊錠(ODT)について、US2006/0105038に記載されている。
【0010】
味感をマスキングされたコーティングシステムについて、WO00/30617に記載されている。
【0011】
味感をマスキングされたウェファーについてWO03/030883に記載されている。
【0012】
選択的エストロゲンは、エストロゲン/プロゲストゲンの組み合わせ製造物に対する新規代替物である。選択的エストロゲンは、それらの部分的な抗子宮肥大(uterotrophic)効果(すなわち抗エストロゲン性効果)のために、脳、骨及び血管系においてエストロゲン様の効果を有するが、子宮内膜において増殖促進効果を有さない化合物であると理解される必要がある。
【0013】
ER−βに対して選択性を有するエストロゲンレセプター・モジュレーター、特にER−β選択的アゴニストはまた、同一の投与量範囲で、肝臓へのエストロゲン効果、又は子宮内膜及び胸に対する刺激効果を有することなく、脳の機能、膀胱、腸、及び血管系において、有益な効果を有し得る。したがって、ER−βアゴニストは、選択的エストロゲン両方に関して、並びに一過性熱感(hot flush)及び気分変動の処置に関して、新たな選択肢を示す。一過性熱感の発症はおそらく、エストロゲンの減少及び閉経の開始により引き起こされる、視床下部の体温調節セットポイントの不安定性に由来する(Stearns V,Ullmer L,Loepez JF,Smith Y,Isaacs C,Hayes DF(2002)Hot flushes.The Lancet 360:1851−1861)。
【0014】
WO01/77139Alには、ラット子宮のエストロゲンレセプター調製物に対してよりも、ラット前立腺のエストロゲンレセプター調製物に対してインビトロにおいてより高い親和性を有する、医薬活性成分としての、8β−置換エストラトリエン(式中、R8は直鎖又は分岐鎖を意味し、場合により、5個までの炭素原子を有する部分的に又は完全にハロゲン化されたアルキル又はアルケニル基、エチニル基又はプロプ−1−イニル基を意味する)、それらの製造、それらの治療用途、及び前記化合物を含む医薬調合形態が記載されている。
【0015】
WO03/104253A2は、ラット子宮のエストロゲンレセプター調製物に対してよりも、ラット前立腺のエストロゲンレセプター調製物に対してインビトロにおいてより高い親和性を有する、好ましくは子宮に対してよりも卵巣に対して優先的に作用する医薬活性成分としての、一般式(I)の新規9α−置換エストラトリエン(式中、R9は直鎖又は分岐鎖であり、場合により2〜6個の炭素原子を含む、部分的に又は完全にハロゲン化されたアルケニル基、又はエチニル基若しくはプロプ−1−イニル基を表す)に関する。
【0016】
PCT/EP2008/059115は、ラット子宮のエストロゲンレセプター調製物に対してよりも、ラット前立腺のエストロゲンレセプター調製物に対してインビトロにおいてより高い親和性を有し、且つインビボにおいて子宮と比較して卵巣において優先的に作用する、一般式Iの8β−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン誘導体、医薬活性成分としてのそれらの使用、それらの製造、それらの治療的使用、及び当該新規化合物を含む医薬調合形態に関する。
【0017】
インビトロ及びインビボにおける選択的ER−β活性を同定するための所定の試験が、上記引用文献において報告されており、例えばWO03/104253A2の18〜23ページに記載されている。
【0018】
選択的ER−β活性を同定するためのさらなる所定の試験は以下のものがある:エストロゲンレセプターα及びβ活性を決定するためのインビトロ細胞アッセイ。
【0019】
略語:
DMEM:ダルベッコ変法イーグル培地
DNA:デオキシリボ核酸
FCS:ウシ胎仔血清
HEPES:4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
【0020】
ヒト・エストロゲンレセプター−α及び−β(ERα及びERβ)のモジュレーターが同定され、組み換え細胞系列を用いて、本明細書に記載された物質の活性が定量された。これらの細胞は、ハムスター卵巣上皮細胞に元来由来する(Chinese Hamster Ovary,CHO K1,ATCC:American Type Culture Collection,VA20108,USA)。
【0021】
ヒト・ステロイドホルモンレセプターのリガンド結合ドメインが酵母転写因子GAL4のDNA結合ドメインと融合された、確立されたキメラ系がCHO K1細胞系列において使用される。この方法で産生されたGAL4ステロイドホルモンレセプターのキメラは、CHO細胞中にコトランスフェクトされ、そして当該細胞内でレセプター・コンストラクトと共に安定に発現される。
【0022】
クローニング:
GAL4−ステロイドホルモンレセプターのキメラを産生するために、ベクターpFC2−dbd(stratagene製)由来のGAL4DNA−結合ドメイン(アミノ酸1〜147)は、PCR増幅された、エストロゲンレセプターα(ERα,Genbank受入番号NM00125,アミノ酸282〜595)のリガンド結合ドメイン、及びエストロゲンレセプターβ(ERβ,Genbank受入番号AB006590,アミノ酸223〜530)のリガンド結合ドメインと共に、ベクターplRES2(Clontech製)へクローニングされる。特異的アゴニストによる、GAL4−エストロゲンレセプター・キメラの活性化及び結合の後に、チミジンキナーゼプロモーターの上流にあるGAL4結合部位の5つのコピーを含む、レポーター・コンストラクトによって、ホタル・ルシフェラーゼ(Photinus pyralis)の発現が生じる。
【0023】
アッセイ手順:
ERα及びERβ細胞の保存培養を、MEM/F12培地、10%FCS、1%Hepes、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1mg/ml G418、及び5μg/mlピューロマイシン中で通常通り培養する。アッセイ前日に、ERα及びERβ細胞を、96(又は384)ウェルのマイクロタイタープレート中のOpti−MEM培地(Optimem、Invitrogen製、活性炭精製された2.5%FCS(Hyclone製)、1%Hepes)中に撒き、細胞インキュベーター中に保持する(湿度96%、5%v/v CO2、37℃)。アッセイ当日、試験物質を上記培地へ撒き、そして細胞へ添加する。試験物質の可能なアンタゴニスト特性を調べることが意図される場合、試験物質の添加から10〜30分後に、エストロゲンレセプター・アゴニストである17−βエストラジオール(Sigma製)が添加されるが、アゴニスト特性の調査においては、17−βエストラジオールの添加はなされない。5〜6時間さらにインキュベーションした後、luciferin/Triton緩衝液で細胞を溶解し、そして、ビデオカメラを用いてルシフェラーゼ活性が測定される。物質濃度の関数としての測定された相対発光量(relative light unit)は、シグモイドの刺激曲線を与える。EC50及び値は、GraphPad PRISM(バージョン3.02)コンピューター・プログラムで計算される。
【0024】
WO01/77139A1、WO03/104253A2、及びPCT/EP2008/059115は、参照により本特許出願中に組み込まれる。
【発明の概要】
【0025】
発明の概要
第一の態様において、本発明は、水溶性薄膜マトリックスを含む単位剤形(unit dosage form)であって、
a)前記膜マトリックスが、少なくとも1つの水溶性マトリックスポリマーを含み;
b)前記膜マトリックスが、ER−β選択的アゴニスト、又はその誘導体を含み;及び
c)前記膜マトリックスが、300μm未満の厚さを有する
前記単位剤形に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
更なる態様において、本発明は、水溶性薄膜マトリックスを含む単位剤形であって、
a)前記膜マトリックスが、少なくとも1つの水溶性マトリックスポリマーを含み;
b)前記膜マトリックスが、以下の化合物:
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、又はそれらの誘導体
の群から選択される、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンを含み;及び
c)前記膜マトリックスが、300μm未満の厚さを有する
前記単位剤形に関する。
【0027】
本発明の更なる態様に従って、前記膜マトリックスは、5〜5000μg、具体的には10〜3000μg、より具体的には例えば25〜1500μgの、以下の化合物:
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、又はそれらの誘導体
の群から選択される、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンを含む。
【0028】
別の態様において、本発明は、医薬としての使用のための単位剤形に関する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、エストロゲンの不十分な内部レベルによって引き起こされる、雌性哺乳動物の身体的疾患を処置、軽減、又は予防するための本発明の単位剤形に関する。かかる身体的疾患の例は、限定されないが、血管運動症状(特に一過性熱感、及び寝汗)、泌尿生殖器の症状、睡眠障害、記憶障害、不安神経症、鬱病、及び他の気分障害、骨塩量の減少、骨粗しょう症、並びに骨折リスク又は発生の増大を含む。
【0030】
本発明は、改善された許容性を有するウェファーにさらに関し、ここで前記許容性は、長期間処置において投与される薬物送達システムのために最も重要な特徴である。
【0031】
本発明にしたがって、低用量の、ER−β選択的アゴニストとして言及された8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンを含む、(ウェファー形態の)単位剤形が、口腔内経由で雌性哺乳動物に投与され得、且つ、血流中で臨床使用血清レベルをなお生じさせ得る。
【0032】
得られる8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンの血清レベルに関する、投与される用量、及び個人間の変動性は、経口投与と比較して著しく低下され得る。前記活性成分の個人間変動性の減少をもたらすER−β選択的アゴニストの使用は、対抗処置を避けることができるために、特に有益である。対抗処置は、エストロゲン誘導性エストロゲンレセプター・アルファ(ER−α)媒介性子宮内膜増殖に対抗するために、従来のホルモン代替療法に一般的に適用される、プロゲスチンの連続的又は周期的同時投与に関する。対抗処置は、本発明のウェファーを使用するときには絶対に必要なものではない。所望ではないER−α媒介性子宮内膜刺激活性に対する、所望の治療的ER−β媒介性活性の選択性よりも、血清レベルに関する個人間変動性が小さいからである。
【0033】
興味深いことに、所望である効果と所望ではない効果とのこの好ましい比率は、従来の標準的経口錠剤では実現することができない。したがって、プロゲスチン同時投与を省略することができる、かなりの低用量、且つ血清レベルの個人間変動性の減少のために、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンのウェファー製剤は、他の適用形態と比較して、優れた安全特性を実現すると考えられる。
【0034】
8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン血清レベルに関する低い個人間変動性、及び生じるER−β媒介性治療効果により、多くの患者において同一の最低有効投与量での投与を可能とし、そして所望ではない副作用効果の潜在性を実質的に減少させる可能性がある。
【0035】
本発明のさらに別の目的は、標準的経口処置と比較して低用量である、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン、特に、
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、又はそれらの誘導体
を含む単位剤形であって、しかし、患者の血流中において、活性成分として8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンの臨床使用濃度をなお生じさせる、前記単位剤形を提供することである。
【0036】
本発明の更なる目的は、標準的経口処置と比較してより少ない副作用を引き起こす、口腔へ適用される単位剤形であって、しかし、エストロゲンの不十分な内部レベルによって引き起こされる雌性哺乳動物の身体的疾患を処置、軽減、又は予防するときになお効果的である、前記単位剤形を提供することである。
【0037】
本発明は、標準的経口処置と比較して、婦人科学的効果に関してより許容される、口腔へ適用される単位剤形であって、しかしエストロゲンの不十分な内部レベルによって引き起こされる雌性哺乳動物の身体的疾患を処置、軽減、又は予防するときになお効果的である、前記単位剤形にさらに関する。
【0038】
本発明は、好ましい厚み及び弾力性を定義することによって、改善された患者許容性を付与する、改善された食感及び味感を有するウェファーを提供する。
【0039】
本発明は、経口へ適用される単位剤形であって、減少した投与量を使用して、経口製剤として同等の平均血清レベルを提供するが、患者コンプライアンスがより高い、前記単位剤形をさらに提供する。本発明の他の態様は、以下の記載及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0040】
発明の詳細な説明
本明細書において、用語「活性成分」は、本発明の剤形中に含まれる、任意の医薬として活性のある化合物、及び具体的にはER−βアゴニストとしての8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン、より具体的には、以下:
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、又はそれらの誘導体
を含む群から選択される化合物を意味することが意図されている。
【0041】
さらに、本明細書において使用されるとき、用語「それらの誘導体」は、具体的には、医薬化学者にとって明らかであり得る、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンのエステル、すなわち、実質的に無毒性であり、且つ同定された化合物の薬物動態特性に、例えば嗜好性、吸収、分配、代謝、及び排泄に好ましい効果を付与し得るもののことである。通常、本発明に関連する当該化合物のエステルは、上記の8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンの3位又は17位に存在する。医薬として許容されるエステルの具体例は、吉草酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、エナント酸エステル、ウンデシル酸エステル、安息香酸エステル、シピオン酸エステル、硫酸エステル、及びスルファミン酸エステルを含む。
【0042】
本明細書において使用される用語「水溶性膜マトリックス」は、水溶性ポリマー及び活性成分、並びに水溶性ポリマー中に溶解若しくは分散される他の補助成分を、含む又はそれらから成る薄膜のことである。具体的な実施形態において、少なくとも一つの活性成分が水溶性ポリマー中に完全に溶解される。
【0043】
本明細書において使用される用語「水溶性ポリマー」は、水中に少なくとも部分的に溶解する、及び特に完全に又は大部分が水中に溶解する、或いは水を吸収するポリマーのことである。水を吸収するポリマーは通常、「水膨潤性ポリマー」と呼ばれる。本発明のために有用である物質は、室温(約20℃)で、及び他の温度、例えば室温を超える温度で水溶性又は水膨潤性であり得る。さらに、当該物質は、大気圧未満の圧力で水溶性又は水膨潤性であり得る。当該水溶性ポリマーは、水溶性又は水膨潤性であって、少なくとも2重量%の水取り込みを有し得る。25重量%以上の水取り込みを有する水膨潤性ポリマーがまた、有用である。特に、かかる水溶性ポリマーから形成される本発明の単位剤形は、体液、特に唾液との接触時に溶解可能である程度に十分に水溶性である。本発明の実施形態に従って、水溶性ポリマーは、粘膜付着性ポリマーである。これにより、活性成分の、特にER−β選択的アゴニストの経粘膜送達を可能とし、そして、初回通過代謝を避けることにより、分子の効率的取り込みを確実なものとし得る。水溶性ポリマーは通常、50〜99.9重量%の、例えば75〜99重量%の水溶性膜マトリックスを構成する。
【0044】
(水溶性膜マトリックスの主要部を構成する)水溶性マトリックスポリマーは、セルロース系物質、合成ポリマー、ゴム、タンパク質、デンプン、グルカン、及びそれらの混合物から成る群から選択され得る。
【0045】
本明細書に記載された目的のために好適であるセルロース系物質の例は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの組み合わせを含む。特に好ましいセルロース系物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースであり、特にヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0046】
合成ポリマーの例は、医薬用の即時放出(immediate release(IR))コーティングとして一般的に使用されるポリマー、例えばPVA−PEGコポリマーを含み、そしてそれは、商標名Kollicoat(登録商標)IRで、異なるグレードで市販されている。合成ポリマーの更なる例は、ポリアクリル酸、及びポリアクリル酸誘導体を含む。
【0047】
水溶性ゴムの例は、アラビアゴム、キサンタンゴム、トラガカント、アカシア、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギネート、及びそれらの組み合わせを含む。
【0048】
有用な水溶性タンパク質ポリマーは、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質、大豆タンパク質単離物、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質単離物、カゼイン、レビン(levin)、コラーゲン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0049】
有用なデンプンの例は、ゼラチン化された、修飾された、又は未修飾のデンプンを含む。デンプン源は変化し得、そしてプルラン、タピオカ、コメ、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、及びそれらの組み合わせを含む。
【0050】
本発明に従って使用され得る追加の水溶性ポリマーは、デキストリン、デキストラン、及びそれらの組み合わせ、並びにキチン、キトサン、及びそれらの組み合わせ、ポリデキストロース、及びフルクトースオリゴマーを含む。
【0051】
本発明の一つの実施形態において、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエンは、9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、又はその誘導体である。
【0052】
上記の通り、本発明の単位剤形は、低用量の、すなわち5〜5000μgの用量の、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン、特に:
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、又はそれらの誘導体
を含む群から選択される化合物を含む。本発明の興味深い実施形態において、膜マトリックスは、10〜3000μgのER−β選択的アゴニストを、例えば25〜1500μgのER−β選択的アゴニストを含む。
【0053】
膜マトリックス中に含まれ得るER−β選択的アゴニストの用量の例は、約10、12.5、15、20、25、30、40、50、60、62.5、70、80、90、100、120、150、180、200、250、270、300、350、360、400、450、500、540、600、625、700、800、875、900、1000、1100、1250、1500、1750、2000、2500、又は3000μgの用量のER−β選択的アゴニストを含む。
【0054】
用量の上記例は、特に、上で具体的に記載した化合物、より具体的には17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオールに関する。
【0055】
上記の用量は、好ましくは一日用量に相当する。上記用量は、ステロイド骨格の3位又は7位がエステル化されていない、ER−β選択的アゴニストに関するものを示すと理解されるべきである。医薬として許容される、ER−β選択的アゴニストのエステルが使用される場合、決められた、エステル化されていないER−β選択的アゴニストと治療的に等価である用量が使用されるべきであると理解され得る。ER−β選択的アゴニストの有効用量が既知であるときに、かかる他の形態の、薬理学的/治療的に等価である用量を決定することは当業者にとって日常的なことである。
【0056】
別言すれば、ER−β選択的アゴニストの医薬として許容されるエステルが使用される場合、エステル化されていないER−β選択的アゴニスト又はその誘導体の吸収が同一であることを条件として(以下参照)、決められた、エステル化されていないER−β選択的アゴニストと等モルである用量が使用されるべきであると理解され得る。したがって、「治療的に等価である量のER−β選択的アゴニスト誘導体X」は、以下の式によって計算され得る:
【0057】
【数1】

【0058】
[式中、MWは問題となっているER−β選択的アゴニストの分子量を示す。]
上記されたER−β選択的アゴニストの間隔及び用量は、当該ER−β選択的アゴニストがその誘導体として使用される場合において、(上の式を用いて)対応する間隔及び用量へと変更されるべきであると理解され得る。しかし、上の式はバイオアベイラビリティ及び曲線下面積(AUC)が、ER−β選択的アゴニスト及び問題の誘導体において同一である場合にのみ適用することができることが理解され得る。したがって、問題のER−βアゴニスト誘導体の吸収が、ER−β選択的アゴニストの吸収と異なる場合、所定の用量のER−β選択的アゴニストの平均血清レベルを達成するために必要とされるER−βアゴニスト誘導体の量は、治療的に等価な量を決定するために重要である。
【0059】
Timmer及びGeurtsの論文は、エストロゲンの場合においてどのようにして等価な用量が決定され得るかの指標を提供する(「Bioequivalence assessment of three different estradiol formulations in postmenopausal women in an open,randomized,single−dose,3−way cross−over」,European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics,24(1):47−53,1999を参照)。
【0060】
本発明の単位剤形は、最も好ましくは薄膜形態であり、そしてそれは、主に膜の広い表面領域のために速やかに溶解し、及び湿気のある口腔内環境に曝露される時に速やかに湿る。通常柔らかく、もろく、及び/又は砕けやすい速溶性錠剤とは反対に、当該膜は、硬く且つ強いが、なお柔軟であり、そして特別な包装を必要としない。上記の通り、当該膜は薄く、そして患者のポケット、財布、又は手帳中で運ばれ得る。
【0061】
当該膜は、雌性哺乳動物の、舌の下又は上に、上部口蓋に、頬内側に、又は任意の口腔内粘膜組織に適用され得る。当該膜は、長方形、楕円形、円形、又は所望であれば、舌、口蓋、又は内側の頬の形状に切り取られた、特定の形状で適用され得る。当該膜は速やかに水和し、そして適用部位へと粘着し得る。その後それは速やかに崩壊し、そして溶解して口腔内粘膜への吸収のために、ER−β選択的アゴニストを放出する。
【0062】
本発明の単位剤形の寸法に関して、水溶性膜形成マトリックスは、通常、300μm未満、特に250μm未満、好ましくは200μm未満、例えば150μm未満の厚さを有する、乾燥した膜へと成形される。より具体的には、当該厚さは125μm未満、例えば100μm未満である。別言すれば、当該厚さは通常、10〜300μmの範囲内、特に15〜250μmの範囲内、特に20〜200μmの範囲内、例えば25〜150μmの範囲内である。本発明のさらなる実施形態において、当該厚さは、25〜125μmの範囲内、例えば25〜100μmの範囲内、例えば30〜90μmの範囲内、特に40〜80μmの範囲内である。具体例は、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、又は約100μmの厚さを含む。具体例は、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、又は約80μmの厚さを含む。
【0063】
当該膜マトリックスの表面寸法(表面積)は通常、2〜10cm2の範囲内、例えば2〜9cm2の範囲内、例えば2〜8cm2の範囲内、より具体的には2〜7cm2の範囲内、特に4〜6cm2の範囲内である。表面積の具体的且つ好ましい例は、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7cm2の表面積を含む。
【0064】
当該膜マトリックスの総重量は通常、5〜200mgの範囲内、例えば5〜150mgの範囲内、例えば10〜100mgの範囲内であり得る。より具体的には、当該膜マトリックスの総重量は通常、当該膜マトリックスの総重量は、10〜75mgの範囲内、例えば10〜55mgの範囲内である。当該膜マトリックスの重量の例は、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約50mg、又は約55mgの重量を含む。
【0065】
本発明の興味深い実施形態において、単位剤形は、吸収促進剤をさらに含み得る。吸収促進剤は、一般的に低い頬吸収率を示す高分子量の薬剤、例えばペプチドの送達において効果的であることが実証されている。かかる吸収促進剤は、多くの機構によって、例えば細胞膜流動性の増加、細胞間/細胞内脂質の抽出、細胞タンパク質の変更、又は表面ムチンの変更によって作用し得る。最も一般的に使用される吸収促進剤は、アゾン、脂肪酸、胆汁塩、及び界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムを含む。吸収促進剤の具体例は、限定されないが、2,3−ラウリルエーテル、アプロチニン、アゾン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、シクロデキストリン、硫酸デキストラン、グリコール、ラウリン酸、リソホスファチジルコリン、メントール、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン、ホスファチジルコリン、EDTAナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、及びタウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシドを含む。吸収促進剤は通常、膜マトリックスの0.1〜50重量%、例えば膜マトリックスの1〜20重量%、例えば膜マトリックスの1〜10重量%に相当する量で、膜マトリックスへと組み込まれる。吸収促進剤は通常、膜マトリックス中に含まれ、すなわち当該吸収促進剤は通常、当該膜マトリックス中に溶解されるか又は分散される。
【0066】
水溶性マトリックスポリマー、及びER−β選択的アゴニスト(及び場合により1又は2以上の吸収促進剤)に加え、本発明の単位剤形は、種々の補助成分、例えば矯味剤(taste−masking agent);感覚刺激剤、例えば甘味剤及び香味剤;抗泡剤及び消泡剤;可塑剤;界面活性剤;乳化剤;増粘剤;結合剤;冷却剤;唾液刺激剤、例えばメントール;抗微生物剤;着色剤などを含み得る。かかる種々の補助成分は、膜マトリックス中に含まれ、そして通常、当該膜マトリックス中に溶解されるか又は分散される。
【0067】
好適な甘味剤は、天然甘味剤及び合成甘味剤の両方を含む。好適な甘味剤の具体例は、例えば:
a)水溶性甘味剤、例えば糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類、例えばマルティット(maltit)、キシリット(xylit)、マンニット(mannit)、ソルビット(sorbit)、キシロース、リボース、グルコース(デキストロース)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(果糖)、スクロース(砂糖)、マルトース、転化糖(スクロース由来のフルクトース及びグルコースの混合物)、部分的に加水分解されたデンプン,コーンシロップ固体、ジヒドロカルコン、モネリン、ステビオシド、及び、グリチルリチン;
b)水溶性人工甘味剤、例えば溶解性サッカリン塩、すなわち、サッカリンのナトリウム又はカルシウム塩、シクラメン酸塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのナトリウム塩、アンモニウム塩、又はカルシウム塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのカリウム塩(アセサルフェーム(acesulfame)−K)、サッカリンの遊離酸形態など;
c)ジペプチド系甘味剤、例えばL−アスパラギン酸由来甘味剤、例えばL−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム(aspartame))、L−アルファ−アスパルチル−N−(2,2,4,4,5テトラメチル−3−チエタニル)−D−アラニンアミド水和物、L−アスパルチル−Lフェニルグリシンのメチルエステル、L−アスパルチル−L−2,5、ジヒドロフェニルグリシンのメチルエステル、L−アスパルチル−2、5−ジヒドロ−Lフェニルアラニン、L−アスパルチル−L−(1−シクロヘキセン)−アラニンなど;
d)天然の水溶性甘味剤由来の水溶性甘味剤、例えば通常の砂糖(スクロース)のクロロ化誘導体、例えばスクラロース(sucralose)(登録商標)の商品名で知られているもの;並びに
e)タンパク質系甘味剤、例えばthaurnatoccous danielli(ソーマチン(Thaurnatin)I及びII)
を含む。
【0068】
一般的に、甘味剤の有効量は、具体的な組成物のために所望である甘味のレベルを提供するために利用され、そしてこの量は、選択される甘味剤と共に変化し得る。この量は通常、膜マトリックスの約0.01重量%〜約20重量%、特に約0.05重量%〜約10重量%であり得る。これらの量は、使用される任意の香味油から達成される香味レベルから独立した所望の甘味レベルを達成するために使用され得る。
【0069】
有用な香味財剤(又は香味薬剤)は、天然又は人工の香味剤を含む。これらの香味剤は、合成香味油、及び香味芳香油、及び/又は油剤、樹脂油剤、及び植物、花、果実など由来の抽出物、並びにそれらの組み合わせから選択され得る。香味油の非限定的例は:スペアミント油、シナモン油、ペパーミント油、丁子油、ベイ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグ油、セージ油、苦扁桃油を含む。人工、天然、又は合成果実香味剤、例えばバニラ、チョコレート、コーヒー、ココア、並びに、レモン、オレンジ、ブドウ、ライム、及びグレープフルーツを含む、柑橘類の油、並びに、リンゴ、西洋ナシ、桃、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、アプリコットなどを含む果実精が、同様に有用である。これらの香味剤は、単体で、又は組み合わせて使用され得る。香味剤、例えば、シンナミルアセテート、シンナムアルデヒド、シトラール、ジエチルアセタール、ジヒドロカルビルアセテート、オイゲニルホルメート、p−メチルアニソールなどを含む、アルデヒド及びエステルが同様に使用され得る。アルデヒド香味剤の更なる例は、限定されないが、アセトアルデヒド(リンゴ);ベンズアルデヒド(サクランボ、アーモンド);シンナミックアルデヒド(シナモン);シトラール、すなわちアルファ・シトラール(レモン、ライム);ネラール、すなわちベータ・シトラール(レモン、ライム);デカナール(オレンジ、レモン);エチルバニリン(バニラ、クリーム);ヘリオトロピン、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム);バニリン(バニラ、クリーム);アルファ−アミルシンナムアルデヒド(スパイシーな果実味感);ブチルアルデヒド(バター、チーズ);バレルアルデヒド(バター、チーズ);シトロネラル(改変された多くの種類);デカナール(柑橘類果実);アルデヒドC−8(柑橘類果実);アルデヒドC−9(柑橘類果実);アルデヒドC−12(柑橘類果実);2−エチルブチルアルデヒド(ベリー果実);ヘキサナール、すなわち、トランス−2(ベリー果実);トリルアルデヒド(サクランボ、アーモンド);ベラトルアルデヒド(バニラ);12,6−ジメチル−5−ヘプテナール、すなわちメロナール(メロン);2−ジメチルオクタナール(青玉果);並びに2−ドデセナール(柑橘類、マンダリン);サクランボ;ブドウ;エッセンシャルオイルなど;メントール;それらの混合物などを含む。
【0070】
使用される香味剤の量は通常、嗜好の問題であり、香味剤の種類、個々の味感、及び所望の強さのような因子に左右される。当該量は、最終産物で望まれる結果を得るために変化され得る。かかる変化は、過度の実験をする必要もなく、当業者の能力の範囲内である。一般的に、約0.01重量%〜約10重量%の膜マトリックスが使用される。
【0071】
上で議論されたとおり、単位剤形はまた、抗泡剤及び/又は消泡剤、例えば、ポリメチルシロキサンと二酸化ケイ素との組み合わせであるシメチコンを含み得る。シメチコンは、抗泡剤又は消泡剤のいずれかとして作用して、膜組成物から空気を減少させ又は除去する。抗泡剤は組成物への空気の導入を防止するのを補助し、一方で消泡剤は当該組成物から空気を除去することを補助し得る。
【0072】
単位剤形が調製され、そして第二の層、すなわち使用前、すなわち口腔内へ導入される前に、除去される支持体又は裏地層(裏地)へ粘着される。好ましくは、当該支持体又は裏地材は水溶性ではなく、そして好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、又は当業者に周知の好適な物質から成ることができる。吸着剤が使用される場合、好ましくは、それは、体内摂取可能ではなく、且つ1又は2以上の活性成分の特性を変更しない食品グレードの吸着剤であるべきである。
【0073】
本発明の別の実施形態において、本発明の単位剤形は、別の活性薬剤物質、例えばプロゲスチンをさらに含む。当該活性薬剤物質は通常、膜マトリックス中に含まれる。
【0074】
したがって、さらに一般的な態様において、本発明は、水溶性薄膜マトリックスを含む単位剤形であって、
a)前記膜マトリックスが、少なくとも1つの水溶性マトリックスポリマーを含み;
b)前記膜マトリックスが、エストロゲンレセプター・ベータ(ERベータ)選択的アゴニスト、特にエストロゲンレセプター・ベータ(ERベータ)選択的アゴニストとしての8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン、特に以下の化合物:
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、又はそれらの誘導体
から選択されるERベータ選択的アゴニストを含み;並びに
プロゲスチン、特に16,17−カルボラクトン誘導体、例えばドロスピレノン、又は:
レボノルゲストレル、ノルゲストレル、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)、ジエノゲスト、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセテート、エチノジオールジアセテート、ジドロゲステロン、メドロキシプロゲステロンアセテート、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、リネストレノール、キンゲスタノールアセテート、メドロゲストン、ノルゲストリエノン、ジメチステロン、エチステロン、クロルマジノンアセテート、メゲストロール、プロメゲストン、デソゲストレル、3−ケト−デソゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデン、チボロン、シプロテロンアセテート
を含む群から選択されるプロゲスチンを含み;
c)前記膜マトリックスが300μ未満の厚さを有する
前記単位剤形に関する。
【0075】
エストロゲンレセプター・ベータ(ERベータ)選択的アゴニスト及びプロゲスチンを含む上記単位剤形は、対抗処置が必要とされる場合において使用され得る。
【0076】
しかし、本発明の単位剤形を用いて達成される血清レベルの個人間変動性の減少の観点において、所望ではないER−α媒介性子宮内膜刺激活性に対する、所望の治療的ER−β媒介性活性の選択性が得られる。
【0077】
しかし、本発明の興味深い実施形態において、本発明の単位剤形がプロゲスチンを含まないことが理解されるべきである。したがって、本発明の別の興味深い実施形態において、ER−β選択的アゴニスト、又はその誘導体は、単位剤形中に存在する唯一の治療的に活性ある薬剤である。
【0078】
製造
本発明の単位剤形は、医薬の技術者にとって周知の方法で製造され得る。
【0079】
薬剤溶液は通常、ER−β選択的アゴニスト、又はその誘導体を好適な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は一般的に揮発性溶媒、例えばアルコール、特にエタノールである。マトリックスポリマー溶液はその後、水溶性マトリックスポリマーを、好適な溶媒、例えばアルコール又はアルコールと水との混合物へ添加することによって調製される。特に、当該溶媒はエタノール/水混合物である。理解され得るように、水溶性マトリックスポリマーを溶解するために必要とされる時間及び条件は、使用されるポリマー及び溶媒に依存し得る。したがって、幾つかの場合において、水溶性マトリックスポリマーは、室温で、且つ緩やかに攪拌することで容易に溶解され得るが、他の場合において、当該系へ加熱及び激しい攪拌を適用することが必要となり得る。通常の実施形態において、当該混合物は1〜4時間、好ましくは約2時間、又は溶液が得られるまで攪拌される。当該溶液は通常、60℃〜80℃で、例えば70℃で攪拌される。室温へ冷却後、薬剤溶液はマトリックスポリマー溶液へ注がれ、そして完全に混合される。得られた溶液(コーティング溶液)は、速やかに又は数日以内に、一般的には1日以内にコーティングのために使用され得る。種々の量の溶媒、マトリックスポリマーなどが、約5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に20〜35重量%の、コーティング溶液の固体含量に達するように調整される。
【0080】
代替的実施形態において、当該コーティング溶液は、ER−β選択的アゴニスト、又はその誘導体を、好適な溶媒、好ましくはアルコール、特にエタノールへ添加し、その後水を添加し、その後マトリックスポリマーを添加することによって直接的に調製され得る。当該混合物はその後、溶液が得られるまで上記の通りに処理される。得られた溶液(コーティング溶液)は、速やかに又は数日以内に、一般的には1日以内にコーティングのために使用され得る。種々の量の溶媒、マトリックスポリマーなどが、約5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に20〜35重量%の、コーティング溶液の固体含量に達するように調整される。
【0081】
代替的実施形態において、当該コーティング溶液は、ER−β選択的アゴニスト、又はその誘導体を、好適なポリマー溶液に直接添加し、そして薬剤を前記ポリマー溶液へ溶解することによって調製され得る。この場合において、ポリマー溶液は、先に記載した手順に従って、ポリマーを溶媒/水混合物に溶解することによって事前に調製される。当該ポリマー溶液中への活性成分の溶解後、得られた溶液(コーティング溶液)は、速やかに又は数日以内に、一般的には1日以内にコーティングのために使用され得る。種々の量の溶媒、マトリックスポリマーなどが、約5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に20〜35重量%の、コーティング溶液の固体含量に達するように調整される。
【0082】
他の賦形剤、補助成分、及び/又は活性薬剤物質が、上記の工程のいずれかの間に添加され得る。
【0083】
必要であれば、当該コーティング溶液は、好適な支持体又は裏地層(裏地)上に塗布する前に脱気される。好適な裏地の例は、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)裏地、例えばPerlasic(登録商標)LF75(Perlen Convertingから市販)、Loparex(登録商標)LF2000(Loparex BVから市販)、及びScotchpack(登録商標)9742(3M Drug delivery Systemsから市販)を含む。本発明の一つの実施形態において、コーティング溶液は、好適な裏地上へ塗布箱を用いて塗布され、そして室温で12〜24時間乾燥される。30〜100μmの厚さ、好ましくは40〜80μmの厚さの薄膜がその後製造され、そしてそれはその後、所望の大きさ及び形状の断片へ切り取られる。或いは、当該コーティング溶液は、自動コーティング・乾燥装置(例えばCoatema Coating Machinery GmbH,Dormagen,Germany)を使用して、好適な裏地上へ薄膜として塗布され、そして40〜120℃の乾燥温度でインライン乾燥される。透明薄膜がその後得られ、それはその後、所望の大きさ及び形状の断片へ切り取られるか、又は押し抜きされる。前記膜は、透明、半透明、又は不透明である。
【0084】
治療的使用及び投与
本発明の単位剤形は、口腔内投与されるものと理解され得、すなわち当該単位剤形は口腔内へ投与され、そして活性薬剤物質がその後、1又は2以上の口腔内粘膜経由で吸収されるものと理解され得る。したがって、当該活性成分は、舌投与、舌下投与、頬投与、及び口蓋投与のために好適である。
【0085】
したがって、別の態様において、本発明は、医薬としての使用のための本発明の単位剤形に関する。
【0086】
さらに別の態様において、本発明は、エストロゲンの不十分な内部レベルによって引き起こされる、雌性哺乳動物の身体的疾患、例えば血管運動症状(特に一過性熱感、及び寝汗)、泌尿生殖器の症状、睡眠障害、記憶障害、不安神経症、鬱病、及び他の気分障害、骨塩量の減少、骨粗しょう症、並びに骨折リスク又は発生の増大を処置、軽減、又は予防するための、本発明の単位剤形に関する。
【0087】
エストロゲンの不足レベルは、自然閉経又は外科的閉経、閉経周辺期、原発性卵巣不全、又は閉経前性腺機能低下症をもたらす種々の他の病理学的症状により引き起こされ得る。原因に関係なく、低レベルのエストロゲンにより、女性の生活の質の全体的低下がもたらされる。症候、疾患、及び症状は、不都合であるだけのものから、生活を脅かすものまである。本明細書に記載された単位剤形は、エストロゲン欠乏の生理学的及び心理学的兆候の効果的軽減を提供する。一過性の症状、例えば血管運動性兆候、及び生理学的症状は、確実に処置の範囲内に含まれる。
【0088】
血管運動症状は、限定されないが、一過性熱感、発汗発作、例えば寝汗、及び動悸を含む。血管運動症状は、FDAガイドライン(上記にて引用)によって規定されたとおり、「軽度」、「中等度」、又は「重度」がある。エストロゲン欠乏の心理学的症状は、限定されないが、不眠症及び他の睡眠障害、記憶力貧困、自信喪失、情緒変化、不安神経症、性欲減弱、集中力欠如、決定力欠如、意欲及び活力の低下、興奮性、並びに泣き止まないことを含む。上記症状の処置又は軽減は、閉経周辺期の、又は閉経後、時折閉経から長期間経過後の女性の生活に関連し得る。本明細書に記載された単位剤形は、これら及び閉経周辺期、閉経期、又は閉経後の段階における他の一過性症状に適用可能であると予想される。さらに、上記症状は、エストロゲン欠乏の原因が性腺機能低下症、去勢、又は原発性卵巣不全である場合に軽減され得る。
【0089】
本発明の別の実施形態において、本明細書に記載された単位剤形は、エストロゲン欠乏の持続的効果の処置又は軽減のために使用される。持続性効果は、身体的変化、例えば泌尿生殖器の萎縮、胸の萎縮、心血管疾患、毛髪の分布の変化、毛髪の厚み、皮膚状態の変化及び骨粗しょう症を含む。泌尿生殖器の萎縮、及びそれに関連する症状、例えば膣の乾燥、膣のpHの増大、及びその後の微生物叢における変化、又はかかる萎縮をもたらす事象、例えば血管分布の減少、弾性繊維の断片化、コラーゲン繊維の融合、又は細胞容量の減少は、本明細書に記載された単位剤形を用いて処置され又は軽減されるために特に使用されると考えられる症状である。さらに、本明細書に記載された単位剤形は、エストロゲン欠乏に関連する他の泌尿生殖器の変化、粘液産生の減少、細胞群における変化、グリコーゲン産生の減少、乳酸菌の増殖の減少、又は連鎖球菌、ブドウ球菌、又は大腸菌の増殖の増大に対して使用されると考えられる。本明細書に記載された単位剤形の投与によって予防されると考えられる他の関連性変化は、膣を傷害又は感染の影響を受けやすい状態にするもの、例えば滲出性分泌(exudative discharge)、膣炎、及び性交疼痛である。さらに、尿路の感染及び失禁は、低エストロゲンレベルに付随する、他の一般的症状である。
【0090】
本発明の他の実施形態において、本発明は、エストロゲン欠乏に関連する身体的変化、例えば皮膚の変化、毛髪分布の変化、毛髪の厚み、胸の萎縮、又は骨粗しょう症の予防又は軽減を含む。本発明の特に興味深い実施形態は、一過性熱感、発汗発作、動悸、睡眠障害、情緒変化、神経質、不安神経症、記憶力貧困、自信喪失、性欲減弱、集中力欠如、意欲の低下、活力の低下、興奮性、泌尿生殖器の萎縮、胸の萎縮、心血管疾患、毛髪の分布の変化、毛髪の厚み、皮膚状態の変化及び骨粗しょう症(骨粗しょう症の予防を含む)の予防又は軽減を含み、最も顕著には、一過性熱感、発汗発作、動悸、睡眠障害、情緒変化、神経質、不安神経症、泌尿生殖器の萎縮、胸の萎縮の予防又は軽減を、並びに骨粗しょう症の予防又は対応を含む。本発明の別の興味深い実施形態は、一過性熱感、発汗発作、動悸、睡眠障害、情緒変化、神経質、不安神経症、記憶力貧困、自信喪失、性欲減弱、集中力欠如、意欲の低下、活力の低下、興奮性、泌尿生殖器の萎縮、胸の萎縮、心血管疾患、毛髪の分布の変化、毛髪の厚み、皮膚状態の変化、及び骨粗しょう症(骨粗しょう症の予防を含む)の処置又は軽減を目的としており、最も顕著には、一過性熱感、発汗発作、動悸、睡眠障害、情緒変化、神経質、不安神経症、泌尿生殖器の萎縮、胸の萎縮の置又は軽減、並びに骨粗しょう症の予防又は対応を目的とする。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、本発明に従って処置されるべき雌性哺乳動物は、ヒト女性、特に閉経後のヒト女性である。
【0092】
本明細書において使用される用語「閉経前」、「閉経周辺」、「閉経」及び「閉経後」は、従来の意味で使用され、例えば「The Controversial Climacteric」;P.A.van Keep et al.Ed.,MTP Press(1981)の9ページに定義された通りである。より具体的には、用語「閉経」は、最後の(卵巣誘導性)自然月経として理解される。それは1回の事象であり、且つ卵胞の加齢依存性機能障害の結果である。閉経は、性ホルモンであるエストロゲン及びプロゲステロンの産生の減少した卵巣が原因である。卵胞数がある閾値未満に減少するとき、卵巣はもはや成熟な卵胞及び性ホルモンを産生することができない。生殖能力は、閉経で終了する。閉経周辺期は、サイクルが不定期となる更年期症状の開始と共に始まり、そして閉経後1年で終了する。閉経周辺期の終了は、出血しない長期間後に同定され得る。閉経後は、閉経時に始まり、そして死亡するまで持続する期間である。
【0093】
さらに、及び特に好ましい本発明の実施形態において、本発明に従って処置されるべき閉経後の女性は、子宮摘出された閉経後の女性である。
【0094】
子宮摘出は、子宮の外科的除去である。子宮全摘出は、子宮及び子宮頸部の除去である。部分的子宮摘出は、子宮頸部の基部(膣上部とも呼ばれる)を残したままの子宮の除去である。子宮摘出は、卵巣の外科的除去を伴い得る(卵巣摘出)。雌性の性腺、卵巣の除去は、雌性去勢である。両側卵管卵巣摘除(両方の卵巣の除去、すなわち去勢)を伴う子宮全摘出を行う女性は、多くのエストロゲン及びプロゲスチンを含む大部分のホルモン産生を失う。自然閉経している女性は無傷且つ機能的女性組織を有するが、子宮摘出された及び去勢された女性は有しない。したがって、本明細書中における用語「子宮摘出された女性」は、子宮全摘出又は部分的子宮摘出を行った女性のことである。
【0095】
本発明の単位剤形は、経口投与される錠剤よりもかなり高いバイオアベイラビリティを有する。したがって、30%超のバイオアベイラビリティが通常達成され得る。より具体的には、30〜100%、例えば40〜90%の範囲のバイオアベイラビリティが通常達成され得る。本発明の興味深い実施形態において、50%超の、特に60%超のバイオアベイラビリティが通常達成される。これは同様に、経口投与に比較して著しくより低用量のER−βアゴニストが投与されるが、ER−βアゴニストの治療的有効血清レベルが達成され得るという結果を有する。明らかに、達成されるバイオアベイラビリティ、及びER−βアゴニストの血清レベルは、本発明の単位剤形の実際の設計に、並びに、薬物負荷、及び適用されるER−βアゴニスト又はその誘導体に依存している。
【実施例】
【0096】
実施例1−ウェファーの調製
コーティング溶液の調製−オプションA
当該薬剤を236.7gのエタノール(96%)中に攪拌しながら溶解することで、0.75gのER−β選択的アゴニストを含有する薬剤溶液を調製した。289.25gのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を473.3gの水上に撒くことによって、ポリマー溶液を調製した。HPC又はHPMCは、1〜2時間、70℃で攪拌後に溶解された。室温に冷却後、薬剤溶液を当該ポリマー溶液に注ぎ、そして完全に混合した。得られた溶液(コーティング溶液)は、速やかに又は数日以内に、一般的には1日以内にコーティングのために使用され得る。
【0097】
コーティング溶液の調製−オプションB
0.75gのER−β選択的アゴニストを236.7gのエタノール(96%)に撹拌下溶解することによって、コーティング溶液を調製した。473.3gの水を混合した後、289.25gのHPC又はHPMCを添加し、そして2時間、70℃で撹拌して溶解させた。得られた溶液(コーティング溶液)は、速やかに又は数日以内に、一般的には1日以内にコーティングのために使用され得る。
【0098】
ウェファーの調製−オプション1
コーティング溶液を脱気し、ポリエチレンテレフタレート(PET)裏地(例えばScotchpack(登録商標)9742又はPerlasic(登録商標)LF75)上に塗布箱を用いて塗布し、24時間室温で乾燥した。約40μmの厚さである透明薄膜を製造した。試料を2〜7cm2の大きさに押し抜きすることによってウェファーを得た。
【0099】
ウェファーの調製−オプション2
コーティング溶液を脱気し、ポリエチレンテレフタレート(PET)裏地(例えばScotchpack(登録商標)9742又はPerlasic(登録商標)LF75)上に薄膜として塗布し、自動コーティング・乾燥装置(Coatema Coating Machinery GmbH,Dormagen,Germany)を用いてインライン乾燥した。40〜120℃の乾燥温度を適用した。約40μmの厚さである透明薄膜を製造した。試料を2〜7cm2の大きさに押し抜きすることによってウェファーを得た。
【0100】
上記の製造法を用いて、以下の組成を有するウェファーを調製した:
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
【表5】

【0106】
【表6】

【0107】
【表7】

【0108】
理解され得る通り、他の量のER−β選択的アゴニストを含有する、及び/又はER−β選択的アゴニスト誘導体を含有する類似ウェファーは、本明細書に記載された方法を使用して容易に製造され得る。
【0109】
さらに、本発明の単位剤形において使用され得る、エストロゲンレセプター・β(ER−β)選択的アゴニストの非限定の例と考えられるべきである化合物、17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオールを用いて、上記ER−β選択的アゴニスト・ウェファー製剤を調製した。
【0110】
本願において、別に指定されない場合には、パーセンテージ(%)で与えられる任意の量は、重量パーセント(%w/w)を意図する。
【0111】
実施例2−臨床試験(PK試験)
1.試験の概要
試験目的
2つの異なるポリマーマトリックス中の、異なる用量のER−β選択的アゴニストの、2つの適用部位における、薬物動態特性及び耐性を調べるため。
【0112】
試験設計
単一施設、非盲検、逐次的設計
試験群
閉経後の健常女性、45〜75歳
処置
2つの異なるER−β選択的アゴニスト・ウェファー製剤
3つの異なるER−β選択的アゴニスト・ウェファー用量
【0113】
継続期間
2試験パートで3か月まで。個々の処置の間に少なくとも1週間の休薬期間を設けて、3つの1回用量処置の各々を評価。
【0114】
変数
主要:薬物動態標準変数、例えば曲線下面積(AUC)、最大薬剤濃度(Cmax)、最終的半減期
補助:ECG、血圧、脈拍数、標準的実験室パラメーター、適用部位における被刺激性及び耐性、副作用事象
【0115】
予備試験結果:12人の閉経後の女性が第一パートの試験を終了し、予備試験結果が利用可能となった。各々の女性は、逐次的に3つの用量のER−β選択的アゴニストのウェファー製剤を投与された。錠剤と比較して、ウェファー製剤は、かなり高いバイオアベイラビリティをもたらし、且つ薬剤血清レベルに関する個人間変動性が減少した。AUC及びCmaxで測定されるように、血清レベルにおける比例的増大が、評価された用量範囲において観察された。
【0116】
結果:
ウェファー製剤を用いた予備試験結果から、本発明者は、ER−β選択的アゴニストの治療的に意味のある薬剤レベルは、他の投与形態、例えば経口性錠剤を用いたときよりも、かなり低い薬剤負荷量で達成され得ると結論付けた。さらに、血清レベルに関する個人間変動性の減少は、非常に高い薬剤血清レベルが達成される個人の数を減少させ、したがって、潜在的薬剤関連性副作用の減少をもたらした。個人間変動性が、所望のER−β媒介性効果と所望ではないER−α媒介性子宮内膜刺激との間の推定治療濃度域よりも小さいため、子宮のある女性におけるプロゲスチン共投与の省略が可能であると考えられ、したがって、プロゲスチン関連性副作用、例えば子宮出血、乳房痛、乳房の圧痛、気分障害、及び潜在的長期間プロゲスチン関連性安全性リスクを避けることが可能であると考えられる。
【0117】
実施例3−プラセボ・ウェファーのインビボ評価
取扱性及び投与に関して、ヒト試験パネル(n=8)で、添加剤(例えば安定剤、可塑剤)を含むポリマーマトリックスのプラセボ・ウェファーを評価した。両方の特性に関して、以下の特徴が評価された:
【0118】
【表8】

【0119】
特に、味及び崩壊時間が、長期間使用における製剤の許容性に関する最も関連性のあるパラメーターであると考えられる。
【0120】
膜の厚さ及び柔軟性は付随的に定量され、そしてインビボ評価と相関された。
【0121】
膜の厚さをMiniTest 600,Erichsen,Hemer,Germanyで測定した。伸長強度及び伸張性を測定(Zwick Material Testing,Ulm,Germany)することによって、機械的特性を定量し、そして弾性率Eを以下の等式で計算した:
【0122】
【数2】

【0123】
【表9】

【0124】
【表10】

【0125】
本明細書の「実施例3」に記載された単位剤形に関して、ポリマー+添加剤組成物は以下のものである:
HPMC+20%PG(プロピレングリコール)
HPMC+20%TE(クエン酸トリエチル)
HPMC+5%ガンマCD(ガンマ−シクロデキストリン)
HPMC+2.3%没食子酸プロピル
【0126】
本願において、パーセンテージ(%)で与えられる任意の量は、重量パーセント(%w/w)を意図する。含有される添加剤の量は、全体の製剤に基づいて与えられる。
【0127】
ポリマー及び添加剤は、エタノール/水 2:1で溶解されて、コーティング溶液を得た。上記の手順「ウェファーの調製−オプション1」に従って、プラセボ・ウェファーをこのコーティング溶液から製造した。
【0128】
HPCをポリマーマトリックスとして使用して得られたウェファーは、HPMCをポリマーマトリックスとして含有するウェファーよりも、そしてそれに可塑剤(例えばポリエチレングリコール(PG)又はクエン酸トリエチル(TEC))を含有させたものよりも、はるかに柔軟性を有した。機械的特性の測定により、他の全ての製剤と比較して、HPCに関して、弾性率が著しく減少し、且つ%伸張(ΔL/L0)が非常に増大することが確認された。
【0129】
【表11】

【0130】
ウェファーが完全に崩壊するまでの時間の平均値は20.3秒であった(S.D.±5.3秒)。液体添加剤(例えば可塑剤)の使用量の添加により、崩壊時間が減少した(例えばHMPC vs.HMPC+PG)。しかし、幾つかのポリマーはまた、崩壊時間が顕著に延長した(例えばHPC)。
【0131】
【表12】

【0132】
一般的に、製剤の味感は、ポリマーマトリックスに関連した。大部分の添加剤は、製剤の味感を著しく変更し、その結果味感が悪化するか又は許容不能となった(例えばクエン酸トリエチル(TEC)、ガンマ−シクロデキストリン(ガンマCD))。
【0133】
【表13】

【0134】
結果の全評価は、驚くべきことに、製剤の感じ取られる味感とそれらの柔軟性との相関を明らかにした。したがって、膜の柔軟性は、感じられる味感において重大な影響を有すると考えらえる。
【0135】
さらに、製剤の柔軟性を改善することで、口蓋への粘着性も改善された。
【0136】
結論として、味感の改善及び口蓋への粘着に由来する、投与中におけるより高い快適性のために、より柔軟性のある膜は、患者に対してより高い許容性を有するウェファーをもたらし得る。
【0137】
本発明のウェファーは、好ましい厚さ及び弾力性を定めることによって、患者への改善された許容性を付与することができる、食感及び味感の改善を実証し、これは特に膜マトリックスが、弾性率が<200MPas、又は具体的には<150MPas、又はより具体的には<100MPas、及び%伸張が>15%、具体的には>20%である場合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性薄膜マトリックスを含む単位剤形であって、
a)前記膜マトリックスが、少なくとも1つの水溶性マトリックスポリマーを含み;
b)前記膜マトリックスが、エストロゲンレセプター・ベータ(ER−β)選択的アゴニスト、又はその誘導体を含み;及び
c)前記膜マトリックスが、300μm未満の厚さを有する
前記単位剤形。
【請求項2】
前記膜マトリックスが、ER−β選択的アゴニストとして、8β−又は9α−置換エストラ−1,3,5(10)−トリエン、又はその誘導体を含む、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項3】
前記ER−β選択的アゴニストが、以下の化合物:
9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
17β−フルオロ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
18α−ホモ−9α−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,16α−ジオール、
16α−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17α−ジオール、
8β−ビニル−16α−フルオロ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
16β−フルオロ−8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
8β−ビニル−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール、
又はそれらの誘導体の内の1つである、請求項1又は2に記載の単位剤形。
【請求項4】
前記水溶性マトリックスポリマーが、セルロース系物質、合成ポリマー、ゴム、タンパク質、デンプン、グルカン、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項5】
前記セルロース系物質が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから成る群から選択される、請求項4に記載の単位剤形。
【請求項6】
前記膜マトリックスが、5000μgまで、好ましくは3000μgまで、最も好ましくは1500μgまでのER−β選択的アゴニスト、又はその誘導体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項7】
前記膜マトリックスが、200μm未満の、又は100μm未満の厚さを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項8】
前記膜マトリックスが、2〜10cm2の、又は3〜7cm2の、又は4〜6cm2の表面積を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項9】
前記膜マトリックスが、5〜200mgの範囲内、又は10〜100mgの範囲内、又は10〜50mgの範囲内の重量を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項10】
前記膜マトリックスが、<200MPas、又は<150MPas、又は<100MPasの弾性率を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項11】
前記膜マトリックスが、>15%、又は>20%の%伸張を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項12】
吸収促進剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項13】
前記吸収促進剤が、前記膜マトリックス中に溶解されるか、又は分散される、請求項12に記載の単位剤形。
【請求項14】
前記膜マトリックスが、プロゲスチンをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項15】
医薬としての使用のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の単位剤形。

【公表番号】特表2012−509286(P2012−509286A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536762(P2011−536762)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008080
【国際公開番号】WO2010/057594
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】