説明

薬物送達デバイス

【課題】改善された生体適合性の架橋ポリマーおよびその薬物送達デバイスとしての使用を提供すること。
【解決手段】本発明は、生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルと、少なくとも1種の薬物とを含む薬物送達デバイスを提供する。この生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、約0日〜約10日の第一の薬物放出プロフィールと、約0日〜約30日の第二の薬物放出プロフィールと、約0日〜約180日の第三の薬物放出プロフィールとを含む、少なくとも3つの薬物放出プロフィールを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年8月13日に出願された、米国仮特許出願第60/964,488号の利益と、この仮出願に対する優先権を主張し、この仮出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、生体適合性の架橋ポリマー、これらのポリマーの調製法および使用法、ならびに、インビボで薬物を放出するためのこれらのポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
生体適合性の架橋ポリマーは、薬物、および、ヒトを含む動物において見られる種々の疾患状態の外科的処置において使用され得る。生体適合性の架橋ポリマーは、種々の方法により形成され得る。例えば、特許文献1は、生体適合性の架橋ポリマーを形成するための、フリーラジカル光重合可能なモノマーの使用を開示する。医療用途のために使用される他の生体適合性の架橋ポリマーとしては、求電子−求核重合を用いて形成されるポリマー(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6において開示されるポリマーを含む)が挙げられる。
【0004】
薬物の全身投与は公知である。適切な投与経路としては、例えば、口内、非経口、頬、経口、経鼻、経直腸、静脈内、筋肉内、皮下、くも膜下槽内、膣内、腹腔内、嚢内、脳室内、頭蓋内、くも膜下腔内、局所および/または経皮、これらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの場合において、投与は、高い全身性の濃度を必要とし得、これは、有害な副作用を伴い得る。同様に、医薬の持続放出形態の使用も、特定の薬物の作用が観察され得る期間を延長することが望ましい一方で、その医薬の所望の量での放出には非効率な機構またはシステムの使用を必要とし得る。
【0005】
改善された生体適合性の架橋ポリマーおよびその薬物送達デバイスとしての使用に対する必要性が依然として存在する。
【特許文献1】米国特許第5,410,016号明細書
【特許文献2】米国特許第5,296,518号明細書
【特許文献3】米国特許第5,104,909号明細書
【特許文献4】米国特許第5,514,379号明細書
【特許文献5】米国特許第5,874,500号明細書
【特許文献6】米国特許第5,527,856号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改善された生体適合性の架橋ポリマーおよびその薬物送達デバイスとしての使用を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
架橋ポリマー組成物を含む薬物送達デバイスが本明細書において提供される。このデバイスは、一実施形態において、少なくとも2種の薬物放出プロフィールを、一実施形態においては、少なくとも3種の薬物放出プロフィールを有し得る。
【0008】
(要旨)
本開示は、薬物送達デバイスとして使用するために適した組成物を提供する。一実施形態において、本開示の薬物送達デバイスは、生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルと少なくとも1種の薬物とを含み得る。この生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、少なくとも3種の薬物放出プロフィールを備え得、この少なくとも3種の薬物放出プロフィールは、約0日〜約10日の第一の薬物放出プロフィールと、約0日〜約30日の第二の薬物放出プロフィールと、約0日〜約180日の第三の薬物放出プロフィールとを備える。
【0009】
一実施形態において、本開示の薬物送達デバイスにおいて利用される適切なヒドロゲルは、約2000未満の架橋前分子量を有する架橋合成クロスリンカー分子を含有する少なくとも1つの生体適合性クロスリンカー領域と、このクロスリンカー分子の架橋前の分子量の約7倍より大きい架橋前分子量を有する架橋合成ポリマー分子を含有する少なくとも1つの生体適合性官能性ポリマー領域とを備え得る。この生体適合性の架橋ポリマーは、一実施形態において、クロスリンカー領域と官能性ポリマー領域との間に少なくとも3つの結合を備え得、これらの結合は、少なくとも1つの求電子性官能基と少なくとも1つの求核性官能基との反応生成物であり得る。
【0010】
本開示の薬物送達デバイスは、種々の時点で単一の薬物を、種々の時点で異なる薬物を、または、種々の時点で同じかもしくは異なる薬物の組み合わせを放出するために利用され得る。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルと
少なくとも1種の薬物と
を含む薬物送達デバイスであって、該生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、約0日〜約10日の第一の薬物放出プロフィールと、約0日〜約30日の第二の薬物放出プロフィールと、約0日〜約180日の第三の薬物放出プロフィールとを含む、少なくとも3つの薬物放出プロフィールを備える、薬物送達デバイス。
(項目2)
項目1に記載の薬物送達デバイスであって、前記ヒドロゲルが、以下:
約2000未満の架橋前分子量を有する架橋合成クロスリンカー分子を含有する、少なくとも1つの生体適合性クロスリンカー領域と;
該クロスリンカー分子の架橋前の分子量の約7倍より大きい架橋前分子量を有する架橋合成ポリマー分子を含有する、少なくとも1つの生体適合性官能性ポリマー領域と、
を備え、前記生体適合性の架橋ポリマーは、該クロスリンカー領域と該官能性ポリマー領域との間に少なくとも3つの結合を備え、該結合は、少なくとも1つの求電子性官能基と少なくとも1つの求核性官能基との反応生成物であり、該少なくとも1つの求電子性官能基と該少なくとも1つの求核性官能基とが反応して、該ヒドロゲルを形成する、薬物送達デバイス。
(項目3)
前記ヒドロゲルの前記生体適合性クロスリンカー領域が、水溶液中に少なくとも1g/100mlの可溶性を有する、項目2に記載の薬物送達デバイス。
(項目4)
前記生体適合性の架橋ポリマーが、さらに、少なくとも1つの生分解性結合を含む、項目2に記載の薬物送達デバイス。
(項目5)
前記ヒドロゲルの前記クロスリンカー領域と前記官能性ポリマー領域との間の前記結合のうち少なくとも1つが、生分解性である、項目2に記載の薬物送達デバイス。
(項目6)
項目1に記載の薬物送達デバイスであって、前記ヒドロゲルが、架橋された生体適合性材料を含み、該架橋された生体適合性材料は、以下:
少なくとも約1g/100mlの水への溶解度と、約100〜約2000の分子量とを有するクロスリンカーと;
共有結合により該クロスリンカーに接続された水溶性合成ポリマーであって、該合成ポリマーは、該クロスリンカーの該分子量の少なくとも約7倍の分子量を有する、水溶性合成ポリマーと
を含み、該共有結合は、少なくとも1つの求電子剤と少なくとも1つの求核剤との反応生成物である、薬物送達デバイス。
(項目7)
前記求電子剤および前記求核剤により、前記生体適合性材料が、ゲル化時間測定により測定したとき、約2分未満のゲル化時間を有するようになる、項目6に記載の薬物送達デバイス。
(項目8)
前記求電子剤および前記求核剤により、前記生体適合性材料が、約4秒未満のゲル化時間を有するようになる、項目6に記載の薬物送達デバイス。
(項目9)
前記合成ポリマーの分子量が、前記クロスリンカーの分子量の約12倍〜約35倍より大きい、項目6に記載の薬物送達デバイス。
(項目10)
前記少なくとも1種のクロスリンカーが、ジリジン、トリリジンおよびテトラリジンからなる群より選択される、項目6に記載の薬物送達デバイス。
(項目11)
項目1に記載の薬物送達デバイスであって、前記少なくとも1種の薬物が、抗菌剤、タンパク質、ペプチド、解熱剤、消炎剤、鎮痛剤、抗炎症剤、血管拡張薬、抗高血圧剤、抗不整脈剤、低血圧治療薬、鎮咳剤、抗新生物剤、局所麻酔薬、ホルモン製剤、喘息治療剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、抗凝固薬、鎮痙薬、脳循環改善薬、代謝改善薬、抗うつ薬、抗不安剤、ビタミンD製剤、低血糖治療剤、抗潰瘍剤、催眠薬、抗生物質、抗真菌剤、鎮静剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿障害治療剤、グリコサミノグルカン、炭水化物、核酸、生物学的に活性な無機化合物、生物学的に活性な有機化合物、酵素、脈管形成剤、抗脈管形成剤、増殖因子、抗体、神経伝達物質、精神活性薬、抗癌薬、化学療法薬、生殖器官に影響を及ぼす薬物、遺伝子、オリゴヌクレオチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、薬物送達デバイス。
(項目12)
前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、同じ薬物である、項目1に記載の薬物送達デバイス。
(項目13)
前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、少なくとも2種の異なる薬物を含む、項目1に記載の薬物送達デバイス。
(項目14)
前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、3種の異なる薬物を含む、項目1に記載の薬物送達デバイス。
(項目15)
項目14に記載の薬物送達デバイスであって、第一の薬物が、止血剤、局所麻酔薬、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;第二の薬物が、鎮痛剤、抗炎症剤、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして、第三の薬物が、抗癌剤、抗瘢痕化剤、タンパク質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、薬物送達デバイス。
(項目16)
前記第一の薬物放出プロフィールが約2日〜約8日であり、前記第二の薬物放出プロフィールが約9日〜約29日であり、そして前記第三の薬物放出プロフィールが約30日〜約120日である、項目1に記載の薬物送達デバイス。
(項目17)
前記第一の薬物放出プロフィールが、前記薬物の水への溶解度によって決定され、前記第二の薬物放出プロフィールが、前記ヒドロゲルの加水分解により決定され、そして、前記第三の薬物放出プロフィールが、該ヒドロゲルの質量の減少により決定される、項目1に記載の薬物送達デバイス。
(項目18)
少なくとも1種の薬物と;
生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルと
を含む薬物送達デバイスであって、該生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、約2000未満の架橋前分子量を有する架橋合成クロスリンカー分子を含有する少なくとも1つの生体適合性クロスリンカー領域を、該クロスリンカー分子の架橋前分子量の約7倍より大きい架橋前分子量を有する架橋合成ポリマー分子を含有する少なくとも1つの生体適合性官能性ポリマー領域と合わせて含み、
該生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、約0日〜約10日の第一の薬物放出プロフィールと、約0日〜約30日の第二の薬物放出プロフィールと、約0日〜約180日の第三の薬物放出プロフィールとを含む、少なくとも3つの薬物放出プロフィールを備える、薬物送達デバイス。
(項目19)
項目18に記載の薬物送達デバイスであって、前記生体適合性の架橋ポリマーは、前記生体適合性クロスリンカー領域と前記官能性ポリマー領域との間に少なくとも3つの結合を備え、該結合は、少なくとも1つの求電子性官能基と少なくとも1つの求核性官能基との反応生成物であり、該少なくとも1つの求電子性官能基と該少なくとも1つの求核性官能基とが反応して、該ヒドロゲルを形成し、そして、該ヒドロゲルの該生体適合性クロスリンカー領域は、水溶液中少なくとも1g/100mlの可溶性を有する、薬物送達デバイス。
(項目20)
前記生体適合性の架橋されたポリマーが、さらに、少なくとも1つの生分解性結合を含む、項目18に記載の薬物送達デバイス。
(項目21)
項目18に記載の薬物送達デバイスであって、前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、3種の異なる薬物を含み、該3種の異なる薬物は、止血剤、局所麻酔薬、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される第一の薬物;鎮痛剤、抗炎症剤、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される第二の薬物;ならびに、抗癌剤、抗瘢痕化剤、タンパク質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される第三の薬物を含む、薬物送達デバイス。
(項目22)
前記第一の薬物放出プロフィールが約2日〜約8日であり、前記第二の薬物放出プロフィールが約9日〜約29日であり、そして前記第三の薬物放出プロフィールが約30日〜約120日である、項目18に記載の薬物送達デバイス。
(項目23)
前記第一の薬物放出プロフィールが、前記薬物の水への溶解度によって決定され、前記第二の薬物放出プロフィールが、前記ヒドロゲルの加水分解により決定され、そして、前記第三の薬物放出プロフィールが、該ヒドロゲルの質量の減少により決定される、項目18に記載の薬物送達デバイス。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(詳細な説明)
本開示の薬物送達デバイスは、同じかまたは異なる生物活性因子のための種々の放出プロフィールを有し得る。一実施形態において、薬物送達デバイスは、求電子性官能基と求核性官能基とを有する前駆体の反応から形成された生体適合性の架橋ポリマーから形成され得る。これらの前駆体は、水溶性、非毒性で、かつ生物学的に受容可能であり得る。このような組成物を形成するために適切なポリマーとしては、例えば、米国特許6,566,406号(この特許の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0013】
一実施形態において、少なくとも1種の前駆体は、低分子であり得、そして、一実施形態においては、「クロスリンカー」として本明細書中で言及され得る。適切なクロスリンカーは、他の前駆体と反応して本開示の組成物を形成する前に、水溶液中(一実施形態においては、水中)に少なくとも1g/100mLの可溶性を有し得る。クロスリンカーは、約2000未満の分子量、一実施形態においては、約100〜約2000の分子量、他の実施形態においては、約450〜約650の分子量を有し得る。本開示の組成物を形成するために利用される他の前駆体のうちの1つは、高分子であり得、そして、一実施形態においては、「官能性ポリマー」として本明細書中で言及され得る。一実施形態において、官能性ポリマーは、合成ポリマー分子を含み得、一実施形態においては、クロスリンカーの分子量の約7倍より大きい架橋前分子量を有する水溶性の合成ポリマーを含み得、一実施形態においては、クロスリンカーの分子量の約7倍〜約50倍大きい架橋前分子量を有する水溶性の合成ポリマーを含み得、他の実施形態においては、クロスリンカーの分子量の約12倍〜約35倍大きい架橋前分子量を有する水溶性の合成ポリマーを含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、各前駆体は、多官能性であり得、これらが、2以上の求電子性官能基または求核性官能基を含み得、その結果、一方の前駆体上の求核性官能基が、別の前駆体上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成し得ることを意味する。前駆体のうち少なくとも1つは、2以上の官能基を有し得、その結果、前駆体は、求電子−求核反応の結果として、合わさって架橋ポリマー生成物を形成し得る。一実施形態においては、このような反応は、「架橋反応」として言及され得る。
【0015】
一実施形態において、求核性前駆体と求電子性前駆体との両方が架橋反応において使用される限り、各前駆体は、求核性官能基のみ、または求電子性官能基のみを有し得る。したがって、例えば、クロスリンカーがアミンのような求核性官能基を有する場合、官能性ポリマーは、N−ヒドロキシスクシンイミドのような求電子性官能基を有し得る。一方、クロスリンカーがスルホスクシンイミドのような求電子性官能基を有する場合、官能性ポリマーは、アミンのような求核性官能基を有し得る。したがって、いくつかの実施形態においては、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、または、アミン末端二官能性もしくは多官能性ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)のような官能性ポリマーが使用され得る。
【0016】
他の実施形態において、前駆体は、生物学的に不活性かつ水溶性のコアを有し得る。コアが水溶性のポリマー領域である場合、使用され得る適切なポリマーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−コポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コポリエチレンオキシドブロックコポリマーまたはコポリエチレンオキシドランダムコポリマー));ポリビニルアルコール(「PVA」);ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);デキストラン;上記の組み合わせなど。いくつかの実施形態においては、ポリ(オキシアルキレン)またはポリ(エチレンオキシド)のようなポリエーテルが有用であり得る。コアが小さい場合、任意の種々の親水性官能基が、前駆体を水溶性にするために使用され得る。例えば、ヒドロキシル、アミン、スルホン酸およびカルボン酸のような官能基が、前駆体を水溶性にするために使用され得る。さらに、スベリン酸のN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは水に不溶性であるが、スクシンイミド環にスルホン酸基を加えることによって、スベリン酸のNHSエステルは、そのアミン基に対する反応性に影響を及ぼすことなく、水溶性にされ得る。
【0017】
架橋反応は、生理学的条件下で、水溶液中で起こり得る。一実施形態において、架橋反応は、「インサイチュで」起こる。これは、架橋反応が、生きている動物またはヒトの体内の臓器上または組織上のような局所的な部位において起こることを意味する。いくつかの実施形態において、架橋反応は、重合の間に熱を放出しない。ゲル化をもたらす架橋反応は、約10分以内に起こり得、一実施形態においては、約2分以内に起こり得、他の実施形態においては、約1分以内に起こり得、なお他の実施形態においては、約30秒以内に起こり得、他の実施形態においては、約4秒以内に起こり得る。ゲル化時間(gel time)は、当業者の技術常識の範囲内の方法により得られるゲル化時間測定値によって決定され得る。
【0018】
アルコールまたはカルボン酸のような特定の官能基は、通常、生理学的条件下(例えば、pH約7.2〜約11、約37℃の温度)では、アミンのような他の官能基と反応しない。しかし、このような官能基は、N−ヒドロキシルスクシンイミドのような活性化基を用いることによって、より反応性にされ得る。このような官能基を活性化するための方法は、当業者の技術常識の範囲内である。適切な活性化基としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、ハロゲン化アリール、スルホスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなど。一実施形態においては、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基またはN−ヒドロキシスルホスクシンイミド基が、タンパク質、または、アミノ末端ポリエチレングリコール(「APEG」)のようなアミン官能化ポリマーを架橋するために利用され得る。
【0019】
一実施形態において、適切なポリマーとしては、直鎖状で水溶性かつ生分解性の官能性ポリマーのような官能性ポリマーが挙げられ、これは、2つの官能基(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)、エポキシドまたは類似の反応基)で末端がキャップされ得る。水溶性コアは、ポリエチレングリコールブロックコポリマーのようなポリアルキレンオキシドであり得、これは、このポリアルキレンオキシドと各末端官能基との間に少なくとも1つの生分解性結合を伴って伸長され得る。生分解性の結合は、吸収性ポリマーの単結合もしくはコポリマーもしくはホモポリマー、および、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ホスホネート)、これらの組み合わせなどであり得る。
【0020】
他の適切な水溶性の直鎖状ポリマーとしては、第一級アミンおよび/またはチオールのような反応性の末端基が末端にあるポリエチレングリコールが挙げられる。このようなポリマーとしては、Sigma(Milwaukee,Wis.)およびShearwater Polymers(Huntsville,Ala.)から市販されているポリマーが挙げられる。いくつかの他の適切な二官能性ポリマーは、アミン基が末端にあるPLURONIC F68のようなPPO−PEO−PPOブロックコポリマーである。末端にヒドロキシル基を有するPLURONICポリマーまたはTETRONICポリマーが利用可能である。これらのヒドロキシル基は、当業者の技術常識の範囲内の方法を利用して、アミン基へと変換され得る。
【0021】
他の官能性ポリマーは、中心に不活性な水溶性ポリマーを有する、分枝状または星型形状の生分解性官能性ポリマーであり得る。この不活性かつ水溶性のコアは、オリゴマーの生分解性伸長部が末端にあり得、次いで、この伸長部は、反応性官能基が末端にあり得る。
【0022】
いくつかの適切なポリマーとしては、4のアームをもつ、多官能性かつ生分解性の官能性ポリマーが挙げられ得る。これらのポリマーは、中心に、4のアームをもつ四官能性ポリエチレングリコールまたはPEO−PPO−PEOのブロックコポリマーのような、水溶性コアを有し得、水への溶解度を維持するために、生分解性ポリマーの小さなオリゴマー伸長部を伴って伸長され得、そして、カルボジイミド(CDI)またはNHSのような反応性の官能性末端基が末端にあり得る。約6のアーム、8のアーム、10のアーム、12のアームなどを有する、他の複数のアームをもつ多官能性ポリマーが利用され得る。
【0023】
他の適切な官能性ポリマーは、コアに、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、またはポリ(ビニルピロリドン)のような、多官能性の星型または接ぎ木型の生分解性ポリマーを含み、そして、このポリマーは、生分解性ポリマーを伴って、完全にまたは部分的に伸長され得る。一実施形態において、生分解性ポリマーは、反応性の末端基が末端にあり得る。
【0024】
低分子クロスリンカーもまた使用され得、この低分子クロスリンカーにおいて、コアは、低分子様のエトキシ化グリセロール、イノシトール、トリメチロールプロパンなどを含んで、最終的なクロスリンカーを形成する。さらに、生分解性の伸長部は、低分子様のスクシネートもしくはグルタラートまたは2以上のエステルの組み合わせ(例えば、グリコレート/2−ヒドロキシブチラートまたはグリコレート/4−ヒドロキシプロリンなど)を含み得る。4−ヒドロキシプロリンのダイマーまたはトリマーは、分解性を加えるだけでなく、ヒドロキシプロリン部分の一部である、ペンダントの第一級アミンを介して求核性反応部位を加えるために使用され得る。
【0025】
得られる官能性ポリマーが、低い組織毒性、水への溶解度、および他の官能基との反応性(すなわち、一実施形態においては、官能性ポリマー上の求電子性基が、クロスリンカー上の求核性官能基と反応し得るか、または、官能性ポリマー上の求核性基が、クロスリンカー上の求電子性官能基と反応し得る)といった特性を有する限り、コア、生分解性結合および末端官能基の他のバリエーションが構築され得る。
【0026】
N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(「SNHS」)またはN−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル(「ENHS」)のようなコアはまた、反応性の官能基が末端にあり得、この反応性の官能基はまた、水可溶性である。例えば、適切なオリゴマーおよびポリマーは、水に不溶性のポリ(乳酸)のようなポリ(ヒドロキシ酸)から構成され得る。しかしながら、これらのオリゴマーまたはポリマーの末端カルボン酸基は、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(「SNHS」)基またはN−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル(「ENHS」)基を用いて活性化され得る。スルホン酸の金属塩(例えば、ナトリウム塩)のようなイオン性基、または、スクシンイミド環上のポリエチレンオキシドのような非イオン性基は、水への溶解度を提供し得るが、その一方で、NHSエステルは、アミンに対する化学反応性を提供する。スクシンイミド環上のスルホン酸基(ナトリウム塩)またはエトキシ化基は、アミン基に対する反応性を容易に感知できる程度に阻害することなく、オリゴマーまたはポリマーを可溶化し得る。
【0027】
本明細書中の薬物送達デバイスを形成する際に利用され得る他の前駆体としては、末端アミン基を有する、多官能性の接ぎ木型または分枝型の水溶性コポリマーが挙げられる。例えば、最終的なクロスリンカーを形成するために、低分子クロスリンカー(低分子様のエトキシ化グリセロール、エトキシ化ペンタエリスリトール、イノシトール、トリメチロールプロパン、ジリジン、トリリジン、テトラリジンなどを含む)が利用され得る。
【0028】
生体適合性の架橋ポリマーが生分解性または吸収性であることが望ましい場合、生分解性結合を有する1以上の前駆体が使用され得る。生分解性結合は、官能基の間に存在し得、そしてまた、必要に応じて、1以上の前駆体の水溶性コアとして機能し得る。あるいは、または、これに加えて、前駆体の官能基は、官能基間の反応の生成物が生分解性結合をもたらすように選択され得る。各アプローチについて、生分解性結合は、最終的な生分解性かつ生体適合性の架橋ポリマーが、生理学的条件下で、非毒性生成物へと分解し得るか、所望の時間にわたって吸収され得るように、選択され得る。
【0029】
生分解性結合は、化学的または酵素的に、加水分解可能であるか、または吸収可能であり得る。代表的な化学的に加水分解可能な生分解性結合としては、グリコリド、dl−ラクチド、l−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、これらの組み合わせなどのポリマー、コポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。代表的な酵素的に加水分解可能な生分解性結合としては、メタロプロテイナーゼおよびコラゲナーゼにより切断可能なペプチド結合が挙げられる。さらなる代表的な生分解性結合としては、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ホスホネート)、これらの組み合わせなどのポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0030】
なお他の実施形態において、本開示の組成物において利用され得る、加水分解により分解可能な適切な生分解性結合としては、エステル、無水物、ホスホエステル、これらの組み合わせなどが挙げられるがこれらに限定されない。酵素により分解可能であり得、そして、本開示の組成物中に含まれ得る他の適切な生分解性結合としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:一アミノ酸残基(例えば、−Arg−、−Ala−、−Ala(D)−、−Val−、−Leu−、−Lys−、−Pro−、−Phe−、−Tyr−、−Glu−など);2マー〜6マーのオリゴペプチド(例えば、−Ile−Glu−Gly−Arg−、−Ala−Gly−Pro−Arg−、−Arg−Val−(Arg)−、−Val−Pro−Arg−、−Gln−Ala−Arg−、−Gln−Gly−Arg−、−Asp−Pro−Arg−、−Gln(Arg)−、−Phe−Arg−、−(Ala)−、−(Ala)−、−Ala−Ala(D)−、−(Ala)−Pro−Val−、−(Val)−、−(Ala)−Leu−、−Gly−Leu−、−Phe−Leu−、−Val−Leu−Lys−、−Gly−Pro−Leu−Gly−Pro−、−(Ala)−Phe−、−(Ala)−Tyr−、−(Ala)−His−、−(Ala)−Pro−Phe−、−Ala−Gly−Phe−、−Asp−Glu−、−(Glu)−、−Ala−Glu−、−Ile−Glu−、−Gly−Phe−Leu−Gly−、−(Arg)−);D−グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルマンノサミンまたはこれらのオリゴサッカリド;オリゴデオキシリボ核酸(例えば、オリゴデオキシアデニン、オリゴデオキシグアニン、オリゴデオキシシトシン、およびオリゴデオキシチミジン);オリゴリボ核酸(例えば、オリゴアデニン、オリゴグアニン、オリゴシトシン、オリゴウリジン)、上記のいずれかの組み合わせなど。当業者は、本開示の架橋ポリマー内に、酵素により分解可能な結合を組み込むための反応スキームに容易に想到する。
【0031】
これらのポリマーおよびその前駆体を形成するための方法は、当業者の技術常識の範囲内であり、そして、例えば、米国特許第6,566,406号(この全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。
【0032】
一実施形態において、本開示の組成物を形成するために利用され得る適切な反応性基は、任意のいくつかの方法によって合成され得るN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが挙げられる。例えば、ヒドロキシル基は、ピリジンまたはトリエチルアミンまたはジメチルアミノピリジン(「DMAP」)のような第3級アミンの存在下で、無水コハク酸のような無水物と反応させることによって、カルボン酸基へと変換され得る。無水グルタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などのような他の無水物もまた使用され得る。次いで、最終的な末端カルボキシル基が、ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」)の存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させられて、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを生成し得る(一実施形態においては、NHS活性化として言及される)。
【0033】
上述の合成架橋ゲルは、生分解性領域の加水分解に起因して分解し得る。合成ペプチド配列を含むゲルの分解は、特定の酵素の作用およびその濃度に依存し得る。いくつかの例において、特定の酵素が、架橋反応の間に添加されて、分解プロセスを加速し得る。適切な酵素としては、例えば、ペプチド加水分解酵素(例えば、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンE、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、トリプシン、ペプシン、キモトリプシン、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−GTP)など);糖鎖加水分解酵素(例えば、ホスホリラーゼ、ノイラミニダーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、リゾチーム、オリゴサッカラーゼなど);オリゴヌクレオチド加水分解酵素(例えば、アルカリフォスファターゼ、エンドリボヌクレアーゼ、エンドデオキシリボヌクレアーゼなど)が挙げられる。酵素が添加されるいくつかの実施形態において、酵素は、リポソームまたはミクロスフェア内に含められて、その放出速度を制御し、それによって、本開示の架橋ポリマーの分解速度を制御し得る。酵素をリポソームおよび/またはミクロスフェア内に組み込むための方法は、当業者の技術常識の範囲内である。
【0034】
クロスリンカーおよび官能性ポリマーが合成物である場合(例えば、クロスリンカーおよび官能性ポリマーがポリアルキレンオキシドベースである場合)、モル当量の反応物を使用することが望ましくあり得る。いくつかの例において、官能基の加水分解に起因する反応のような副反応を相殺するためにモル過剰のクロスリンカーが添加され得る。
【0035】
クロスリンカーおよび架橋可能なポリマーを選択する際、最終的な生体適合性の架橋ポリマーが生分解性であることが望ましい場合、ポリマーのうちの少なくとも1つは、1分子あたり2以上の官能基および少なくとも1つの分解可能な領域を有し得る。一般に、生体適合性の架橋ポリマー前駆体の各々は、2以上の、そして、いくつかの実施形態においては、4以上の官能基を有し得る。
【0036】
上述のように、一実施形態において、本明細書中の薬物送達デバイスを形成するために適切なポリマー組成物は、一方の前駆体上の求電子性基の、第二の前駆体上の求核性基との反応から形成され得る。適切な求電子性基としては、NHS、SNHSおよびENHSが挙げられる。適切な求核性基としては、第一級アミンが挙げられる。NHS−アミン反応は、迅速な(通常は、10分以内、一実施形態においては、1分以内、他の実施形態においては、10秒以内の)ゲル化をもたらす反応速度を有し得る。この迅速なゲル化は、生組織におけるインサイチュ反応に望ましくあり得る。
【0037】
NHS−アミン架橋反応は、副産物としてN−ヒドロキシスクシンイミドの形成をもたらす。N−ヒドロキシスクシンイミドのスルホン化形態またはエトキシ化形態は、その増加した水への溶解度と、それ故の、その体内からの迅速なクリアランスとに起因して有用であり得る。スクシンイミド環上のスルホン酸塩は、NHS基の第一級アミンとの反応性を変更しない。
【0038】
NHS−アミン架橋反応は、水溶液中で、緩衝液の存在下にて行われ得る。適切な緩衝液としては、リン酸緩衝液(pH約5〜約7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH約7.5〜約9)、ホウ酸緩衝液(pH約9〜約12)、および重炭酸ナトリウム緩衝液(pH約9〜約10)が挙げられる。
【0039】
NHSベースのクロスリンカーおよび官能性ポリマーの水溶液は、NHS基の水との反応に起因して、架橋反応の直前に作製され得る。これらの溶液をより低いpH(例えば、pH約4〜約5)に維持することにより、より長い「可使時間(pot life)」が得られ得る。
【0040】
最終的な生体適合性の架橋ポリマーの架橋密度は、クロスリンカーおよび官能性ポリマーの全体的な分子量と、1分子あたりに利用可能な官能基の数とにより制御され得る。架橋間の分子量が小さければ小さいほど(例えば、600Da)、より大きい分子量(例えば、10,000Da)と比較して、より高い架橋密度が得られ得る。弾性のゲルを得るためには、より大きい分子量の(一実施形態においては、約3000Daより大きい分子量を有する)官能性ポリマーが有用であり得る。
【0041】
架橋密度はまた、クロスリンカーおよび官能性ポリマー溶液の全体的な固形物の割合によっても制御され得る。反応性基の数を増やすと、最終的なヒドロゲルにおける分解性の架橋の数が増加する。また、固形物の割合を増加すると、加水分解により不活性化される前に、求電子性基が求核性基と合わさる確率が増加し得る。架橋密度を制御するためのなお別の方法は、求核性基の求電子性基に対する化学量論を調節することによるものである。1対1の比が、より高い架橋密度をもたらし得る。
【0042】
ポリマーを形成するためにタンパク質が利用される場合、最終的な架橋ヒドロゲルは、その分解が、クロスリンカー内の分解性セグメントならびにタンパク質(例えば、アルブミン)の酵素による分解に依存する、半合成ヒドロゲルであり得る。あらゆる分解酵素の非存在下では、架橋ポリマーは、単に分解性セグメントの加水分解によって分解し得る。ポリグリコール酸が分解性セグメントとして使用される場合、架橋ポリマーは、網状組織の架橋密度に依存して、約1日〜約30日の時間にわたって分解し得る。同様に、ポリカプロラクトンベースの架橋された網状組織は、約1ヶ月〜約8ヶ月の時間にわたって分解し得る。分解時間は、使用される分解性セグメントの型にしたがって、以下の順序で変化し得る:
ポリグリコール酸<ポリ乳酸<ポリトリメチレンカーボネート<ポリカプロラクトン。
したがって、適切な分解性セグメントを用いて、数日〜数ヶ月の所望の分解プロフィールをもつヒドロゲルを構築することが可能である。分解速度もまた、単一のエステルについて分解性結合を作製するために選択される無水物によって、以下の順序で変化し得る:
スクシネート<グルタラート<メチルグルタラート。
【0043】
オリゴヒドロキシ酸ブロックのような生分解性ブロックにより生じる疎水性、または、PLURONICポリマーもしくはTETRONICポリマーにおけるPPOブロックの疎水性は、小さな有機薬物分子を溶解させる際に役立ち得る。生分解性または疎水性のブロックを組み込むことにより影響され得る他の特性としては、以下が挙げられる:水分の吸収、機械的特性、および、熱感受性。
【0044】
一実施形態において、最終的な架橋ポリマーは、クロスリンカー領域と官能性ポリマー領域との間に少なくとも1つのエステル結合を含み得、一実施形態においては、クロスリンカー領域と官能性ポリマー領域との間に約1個のエステル結合〜約20個のエステル結合を含み得、他の実施形態においては、クロスリンカー領域と官能性ポリマー領域との間に約3個のエステル結合〜約12個のエステル結合を含み得る。上述のように、一実施形態において、結合は、少なくとも1つの求電子性基の、少なくとも1つの求核性基との反応生成物であり得る。一実施形態において、これらの結合は、生分解性および/または酵素的に分解可能であり得る。
【0045】
本開示によれば、架橋ポリマーは、薬物送達デバイスとして利用され得る。本明細書において使用される場合、用語「薬物」、「生物活性因子」および「生物学的に活性な因子」は、交換可能に使用される。本明細書中の組成物を形成する際に利用されるポリマーおよびクロスリンカーに依存して、薬物は、マトリックスに結合させることなく、単にポリマーマトリックス内に組み込まれ得る。あるいは、または、これに加えて、薬物は、ペンダント結合を介してポリマーマトリックスへと共有結合されても、架橋反応の間に、いずれかの前駆体と別個に、または、いずれかの前駆体の一部としてのいずれかで、ポリマーバックボーン中へと組み込まれてもよい。薬物を、本開示の架橋ポリマー内へと付着または組み込むために複数の手段を利用することで、複数の放出プロフィールを有する薬物送達デバイスを形成することが可能となり得る。例えば、単にポリマーマトリックス内に組み込まれた(ポリマーマトリックスへと共有結合はされない)薬物は、上記マトリックスから、同じマトリックスに共有結合された薬物よりも迅速に放出され得る。同様に、ペンダント結合(すなわち、架橋ポリマーのバックボーンから突出している部分)を介してポリマーマトリックスへと付着された薬物は、架橋ポリマーのバックボーン内に組み込まれた薬物よりも迅速に放出され得る。
【0046】
こうして、一実施形態において、本開示の架橋ポリマー組成物からの薬物の薬物放出プロフィールは、薬物の水への溶解度、ヒドロゲルの加水分解、およびヒドロゲルの質量の減少を含む、種々の機構により決定され得る。
【0047】
本開示によれば、架橋ポリマーは、インサイチュでの架橋ポリマーの形成の後の種々の時点において、同じかまたは異なる薬物を放出するために利用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、第一の薬物は、さらなる薬物が共有結合された架橋ポリマーによって形成されたマトリックス内に組み込まれ得る。上述のように、いくつかの実施形態において、架橋ポリマーに共有結合された薬物は、ペンダント結合により結合されるか、架橋ポリマーのバックボーン内に組み込まれるか、またはこの両方であり得る。したがって、同じ薬物について、架橋ポリマーからのこの薬物の少なくとも2つの異なる放出プロフィールが存在し得る:本開示の架橋ポリマーによって形成されたポリマーマトリックスによって結合されず、単にこの中に組み込まれた薬物の最初の放出(一実施形態においては、薬物の水への溶解度に依存する);および、架橋ポリマーに共有結合された薬物の第二の放出(一実施形態においては、ヒドロゲルの加水分解および/またはヒドロゲルの質量の減少に依存する)。上述のように、架橋ポリマーへの薬物の共有結合は、ペンダント結合によってか、または、ポリマーのバックボーンへの組み込みによってなされ得る。
【0048】
一実施形態において、ペンダント結合により付着された薬物は、複数の放出プロフィールを有し得る。分解性の結合(例えば、架橋ポリマー上のエステル(一実施形態においては、薬物上のアミンに結合する))により付着される薬物は、エステルが加水分解されるときに放出される。非分解性の結合(例えば、架橋ポリマー上のアミン(一実施形態においては、薬物上のNHSのようなエステルに結合する))により付着された薬物を介して付着された薬物は、本開示の架橋ポリマーの質量の減少により放出される。
【0049】
他の実施形態において、架橋ポリマーからの薬物の少なくとも3つの異なる放出プロフィールが存在し得る:本開示の架橋ポリマーによって形成されたポリマーマトリックスに結合されず、単にこの中に組み込まれた薬物の最初の放出;分解性のペンダント結合により架橋ポリマーに共有結合された薬物の第二の放出;および、ポリマーのバックボーン中に組み込まれるか、または、非分解性のペンダント結合により架橋ポリマーに共有結合されることによって架橋ポリマーに共有結合された薬物の第三の放出。一実施形態において、第一の放出プロフィールは、薬物の水への溶解度に依存し得、第二の放出プロフィールは、ヒドロゲルの加水分解に依存し得、そして、第三の放出プロフィールは、ヒドロゲルの質量の減少に依存し得る。
【0050】
なお他の実施形態において、異なる時点において、架橋ポリマーから単一の薬物のみが放出される代わりに、複数の薬物が、異なる時点で、本開示の架橋ポリマーから放出され得る。このように、ポリマーマトリックス内に単に組み込まれただけで、ポリマーマトリックスに結合されない第一の薬物は、インサイチュで架橋ポリマーが形成された直後、またはそのすぐ後のいずれかに放出され得、一方、ペンダント結合により架橋ポリマーに共有結合されたか、またはポリマーのバックボーン中に組み込まれた第二の薬物は、後に放出され得る。同様に、本開示の架橋ポリマー内に3種の薬物が含まれる場合、ポリマーマトリックス内に組み込まれてはいるが、ポリマーマトリックスに結合されない第一の薬物は、インサイチュで架橋ポリマーが形成された直後またはそのすぐ後のいずれかに放出され得;ペンダントのエステル結合のような分解性の結合により架橋ポリマーに共有結合された第二の薬物は、後に加水分解により放出され得;そして、ペンダントの非分解性の結合(例えば、アミン結合)により架橋ポリマーに共有結合されたか、またはポリマーのバックボーン中に組み込まれた第三の薬物は、最後に放出され得る。
【0051】
上述のように、薬物の組み合わせが、本開示の組成物から、種々の時点において放出され得る。例えば、1種以上の薬物が、第一の放出プロフィール、第二の放出プロフィール、第三の放出プロフィールの間に放出され得る、などである。
【0052】
本開示の架橋ポリマーにより送達され得る適切な薬物の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗菌剤、タンパク質およびペプチド調製物、解熱剤、消炎鎮痛剤、抗炎症剤、血管拡張薬、抗高血圧剤および抗不整脈剤、低血圧治療薬(hypotensive agent)、鎮咳剤、抗新生物剤、局所麻酔薬、ホルモン製剤(hormone preparation)、喘息治療剤および抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、抗凝固薬、鎮痙薬、脳循環改善薬(cerebral circulation improver)および代謝改善薬、抗うつ薬および抗不安剤、ビタミンD製剤(vitamin D preparation)、低血糖治療剤、抗潰瘍剤、催眠薬、抗生物質、抗真菌剤、鎮静剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿障害治療剤、グリコサミノグルカン、炭水化物、核酸、生物学的に活性な無機化合物および有機化合物、これらの組み合わせなど。特定の生物学的に活性な因子としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:酵素、脈管形成剤、抗脈管形成剤、増殖因子、抗体、神経伝達物質、精神活性薬、抗癌薬、リファンピンのような抗生物質を含めた抗菌剤、化学療法薬、生殖器官に影響を及ぼす薬物、遺伝子、オリゴヌクレオチド、これらの組み合わせなど。
【0053】
一実施形態において、これらの生物活性因子はまた、クロスリンカー、官能性ポリマーまたはこの両方と反応し得る官能基を有し得る。これらの生物学的に活性な因子もまた、官能基を含む場合、生物活性因子の官能基は、本開示の架橋ポリマー組成物の成分と反応し得、それにより、この架橋ポリマー組成物へとペンダント結合により付着されるか、または、最終的な架橋ポリマーのバックボーン中へと組み込まれるかのいずれかになり得る。
【0054】
上述のように、一実施形態においては、第一の薬物が1つの放出プロフィールを有し得、第二の薬物および/または任意の第三の薬物は、異なる放出プロフィールを有する。一実施形態において、本開示の架橋ポリマー組成物と、このような薬物に所望され得る種々の放出プロフィールとを利用して投与され得る薬物の非限定的な例は、以下の表1に要約される。
【0055】
【表1】

したがって、一実施形態において、第一の薬剤の放出時間は、約0日〜約10日であり得、第二の薬剤の放出時間は、約0日〜約30日であり得、そして、第三の薬剤の放出時間は、約0日〜約180日であり得る。他の実施形態において、第一の薬剤の放出時間は、約2日〜約8日であり得、第二の薬剤の放出時間は、約9日〜約29日であり得、そして、第三の薬物の放出時間は、約30日〜約120日であり得る。
【0056】
上記薬物および異なる放出プロフィールの種々の組み合わせが利用され得る。したがって、処置される状態に依存して、所望の薬物を選択し、このような薬物の所望の放出速度を決定し、次いで、物理的組み込みまたは化学的組み込みによって、上記のように本開示の架橋ポリマー中にこの薬物を組み込み、それにより、本開示の架橋ポリマーからの所望の放出速度を達成することが可能である。例えば、創傷治癒について、本開示の架橋ポリマーを含む薬物送達デバイスが、最初に止血剤、抗癒着剤またはこれらの組み合わせを放出し、次いで、抗炎症剤を放出し、その後、抗瘢痕化剤を放出するようにすることが望ましくあり得る。心臓外科手術については、本開示の架橋ポリマーを含む薬物送達デバイスが、最初に抗癒着剤を放出し、その後、抗不整脈剤を長期にわたり放出するようにすることが望ましくあり得る。
【0057】
さらに、一実施形態において、架橋ポリマー自体が、抗癒着特性を有し、このような特性は、上記のような追加の薬物と組み合わせて利用され得る。したがって、一実施形態において、他の適応症のために架橋ポリマー内部に組み込まれたか、または架橋ポリマーに結合された追加の薬物と共に、架橋ポリマー自体が抗癒着剤、接着剤またはシーラントとして使用され得る。
【0058】
一実施形態において、ヨウ素または硫酸バリウムまたはフッ素のような造影剤もまた、本開示の組成物と組み合わされ得、X線、MRIおよびCATスキャン機器を含む造影用機器を使用する間中、投与の時点またはその後に、ポリマーの可視化を可能にし得る。含まれ得る他の造影剤は、当業者の技術常識の範囲内であり、そして、医療上移植可能な医療用デバイスにおける使用に適切な物質(例えば、FD&C色素3および6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン)、または全身性の外科縫合において通常見られる着色色素が挙げられるがこれらに限定されない。適切な色としては、緑色および/または青色が挙げられる。というのも、このような色は、血液の存在下、または、ピンク色もしくは白色の組織の背景において、より良い可視性を有し得るからである。
【0059】
造影剤は、少量(一実施形態においては、約1%重量/容積未満の濃度、他の実施形態においては、約0.01%重量/容積未満の濃度、そしてなお他の実施形態においては、約0.001%重量/容積未満の濃度)で添加され得る。
【0060】
一実施形態において、上記の生体適合性の架橋ポリマーを含む薬物送達デバイスは、体内の外科手術部位において「インサイチュで」形成され得る。他の実施形態において、成分および薬物は、適用前に合わせられ、したがって、薬物のペンダント基による付着、または、前駆体のバックボーン中への薬物の組み込みが、最初にエキソビボで起こり、残りの薬物の組み込みおよびポリマーの形成がインサイチュで起こり得る。
【0061】
上述のような薬物送達のために架橋組成物を使用する際、宿主に導入される官能性ポリマー、クロスリンカーおよび生物活性因子の量は、特定の薬物および処置される状態に依存し得る。投与は、シリンジ、カニューレ、トロカール、カテーテルなどのような任意の従来の手段によってなされ得る。フィブリンのりまたはシーラントの用途のような他の接着剤またはシーラントのシステムのために開発された、「インサイチュ」ゲル化を行うための方法およびデバイスが、本明細書において使用され得る。一実施形態において、米国特許第4,874,368号、同第4,631,055号、同第4,735,616号、同第4,359,049号、同第4,978,336号、同第5,116,315号、同第4,902,281号、同第4,932,942号、および国際出願公開WO 91/09641(この各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されるもののような、前駆体溶液を適用するための、専門のデバイスを使用することが可能である。
【0062】
本明細書中の薬物送達デバイスを調製するために、上記の生物活性因子は、ポリマーを架橋する前、または、官能性ポリマー、クロスリンカーもしくはこの両方の無菌的な製造の間に、架橋可能なポリマー前駆体と混合され得る。一実施形態において、PLURONIC成分、TETRONIC成分またはTWEEN成分のような不活性なポリマーから作製された官能性ポリマーは、低分子の疎水性薬物を放出するのに適切であり得る。上記のように、生物活性因子は、単に最終的なポリマーマトリックス内に物理的に組み込まれても、ポリマーマトリックスに共有結合されても、またはこの両方であってもよい。
【0063】
一実施形態において、活性因子はまた別々の相に存在し得、クロスリンカーと、架橋可能な官能性ポリマーとが反応するときに、架橋ポリマーの網状構造またはゲルを生じる。この相の分離は、NHSエステルとアミン基との間の反応のような、化学的な架橋反応における生物活性物質の関与を防止し得、このことは、いくつかの実施形態においては、望ましくあり得る。別々の相はまた、架橋物質またはゲルからの活性因子の放出速度を調節するのに役立ち得る。ここで、「別々の相」とは、油(水中油エマルジョン)、生分解性ビヒクルなどであり得る。中に活性因子が存在し得る生分解性ビヒクルとしては、微粒子、ミクロスフェア、マイクロビーズ、マイクロペレットなどのような被包ビヒクルが挙げられ、ここで、活性因子は、生体腐食性または生分解性のポリマー(例えば、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)−co−ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(カプロラクトン)のポリマーおよびコポリマー);架橋された生分解性ヒドロゲル網状構造様のフィブリンのりまたはフィブリンシーラント、シクロデキストリン、分子篩のような囲い込み分子(caging molecule)および包接分子(entrapping molecule)などの中に、被包される。ポリ(ラクトン)およびポリ(ヒドロキシ酸)のポリマーおよびコポリマーから作製されたミクロスフェアは、生分解性の被包ビヒクルとして有用であり得る。
【0064】
一実施形態において、官能性ポリマーは生物活性因子と共に、当量のクロスリンカーおよび水性緩衝液と一緒に、被包ビヒクルを伴ってか、または伴わずに、宿主に投与され得る。クロスリンカーと官能性ポリマー溶液との間の化学反応は容易に起こって、架橋ゲルを形成し、患者に活性因子を放出するためのデポーとして機能する。上述のように、他の実施形態においては、生物活性因子は、ペンダント結合によりポリマーに結合され得るか、または、他の実施形態においては、架橋の間にポリマーのバックボーン中に組み込まれ得る。このような薬物送達の方法は、活性因子の全身投与および局所投与の両方に有用であり得る。
【0065】
薬物送達速度の制御もまた、生物活性分子を生分解性かつ共有結合的に架橋ヒドロゲル網状組織に付着することによって、本開示のシステムと共に達成され得る。共有結合性の付着の性質は、数時間〜数週間またはそれ以上の放出速度の制御を可能にするように制御され得る。一定範囲の加水分解時間を有する結合から作製される複合材料を用いることによって、制御放出プロフィールが、より長い期間にわたり延長され得る。
【0066】
上に開示される種々のもの、そして、その他の特徴および機能または代替物は、多くの他のシステムまたは用途と所望されるように組み合され得ることが理解される。また、本発明における現在予測不可能であるかまたは予期できない代替物、修正、改変または改良が、後に当業者によってなされ得、そしてまた、添付の特許請求の範囲により包含されることも意図される。特許請求の範囲において具体的に言及されていない限り、請求項の工程または構成要素は、任意の特定の順序、数、位置、サイズ、形状、角度、色または物質に関して、明細書または任意の他の請求項によって含意されるべきでも、これらから持ち込まれるべきでもない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルと
少なくとも1種の薬物と
を含む薬物送達デバイスであって、該生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、約0日〜約10日の第一の薬物放出プロフィールと、約0日〜約30日の第二の薬物放出プロフィールと、約0日〜約180日の第三の薬物放出プロフィールとを含む、少なくとも3つの薬物放出プロフィールを備える、薬物送達デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の薬物送達デバイスであって、前記ヒドロゲルが、以下:
約2000未満の架橋前分子量を有する架橋合成クロスリンカー分子を含有する、少なくとも1つの生体適合性クロスリンカー領域と;
該クロスリンカー分子の架橋前の分子量の約7倍より大きい架橋前分子量を有する架橋合成ポリマー分子を含有する、少なくとも1つの生体適合性官能性ポリマー領域と、
を備え、前記生体適合性の架橋ポリマーは、該クロスリンカー領域と該官能性ポリマー領域との間に少なくとも3つの結合を備え、該結合は、少なくとも1つの求電子性官能基と少なくとも1つの求核性官能基との反応生成物であり、該少なくとも1つの求電子性官能基と該少なくとも1つの求核性官能基とが反応して、該ヒドロゲルを形成する、薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記ヒドロゲルの前記生体適合性クロスリンカー領域が、水溶液中に少なくとも1g/100mlの可溶性を有する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記生体適合性の架橋ポリマーが、さらに、少なくとも1つの生分解性結合を含む、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記ヒドロゲルの前記クロスリンカー領域と前記官能性ポリマー領域との間の前記結合のうち少なくとも1つが、生分解性である、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の薬物送達デバイスであって、前記ヒドロゲルが、架橋された生体適合性材料を含み、該架橋された生体適合性材料は、以下:
少なくとも約1g/100mlの水への溶解度と、約100〜約2000の分子量とを有するクロスリンカーと;
共有結合により該クロスリンカーに接続された水溶性合成ポリマーであって、該合成ポリマーは、該クロスリンカーの該分子量の少なくとも約7倍の分子量を有する、水溶性合成ポリマーと
を含み、該共有結合は、少なくとも1つの求電子剤と少なくとも1つの求核剤との反応生成物である、薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記求電子剤および前記求核剤により、前記生体適合性材料が、ゲル化時間測定により測定したとき、約2分未満のゲル化時間を有するようになる、請求項6に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
前記求電子剤および前記求核剤により、前記生体適合性材料が、約4秒未満のゲル化時間を有するようになる、請求項6に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記合成ポリマーの分子量が、前記クロスリンカーの分子量の約12倍〜約35倍より大きい、請求項6に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1種のクロスリンカーが、ジリジン、トリリジンおよびテトラリジンからなる群より選択される、請求項6に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
請求項1に記載の薬物送達デバイスであって、前記少なくとも1種の薬物が、抗菌剤、タンパク質、ペプチド、解熱剤、消炎剤、鎮痛剤、抗炎症剤、血管拡張薬、抗高血圧剤、抗不整脈剤、低血圧治療薬、鎮咳剤、抗新生物剤、局所麻酔薬、ホルモン製剤、喘息治療剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、抗凝固薬、鎮痙薬、脳循環改善薬、代謝改善薬、抗うつ薬、抗不安剤、ビタミンD製剤、低血糖治療剤、抗潰瘍剤、催眠薬、抗生物質、抗真菌剤、鎮静剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿障害治療剤、グリコサミノグルカン、炭水化物、核酸、生物学的に活性な無機化合物、生物学的に活性な有機化合物、酵素、脈管形成剤、抗脈管形成剤、増殖因子、抗体、神経伝達物質、精神活性薬、抗癌薬、化学療法薬、生殖器官に影響を及ぼす薬物、遺伝子、オリゴヌクレオチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、同じ薬物である、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、少なくとも2種の異なる薬物を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、3種の異なる薬物を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の薬物送達デバイスであって、第一の薬物が、止血剤、局所麻酔薬、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;第二の薬物が、鎮痛剤、抗炎症剤、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして、第三の薬物が、抗癌剤、抗瘢痕化剤、タンパク質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記第一の薬物放出プロフィールが約2日〜約8日であり、前記第二の薬物放出プロフィールが約9日〜約29日であり、そして前記第三の薬物放出プロフィールが約30日〜約120日である、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項17】
前記第一の薬物放出プロフィールが、前記薬物の水への溶解度によって決定され、前記第二の薬物放出プロフィールが、前記ヒドロゲルの加水分解により決定され、そして、前記第三の薬物放出プロフィールが、該ヒドロゲルの質量の減少により決定される、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項18】
少なくとも1種の薬物と;
生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルと
を含む薬物送達デバイスであって、該生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、約2000未満の架橋前分子量を有する架橋合成クロスリンカー分子を含有する少なくとも1つの生体適合性クロスリンカー領域を、該クロスリンカー分子の架橋前分子量の約7倍より大きい架橋前分子量を有する架橋合成ポリマー分子を含有する少なくとも1つの生体適合性官能性ポリマー領域と合わせて含み、
該生体適合性の架橋ポリマーヒドロゲルは、約0日〜約10日の第一の薬物放出プロフィールと、約0日〜約30日の第二の薬物放出プロフィールと、約0日〜約180日の第三の薬物放出プロフィールとを含む、少なくとも3つの薬物放出プロフィールを備える、薬物送達デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の薬物送達デバイスであって、前記生体適合性の架橋ポリマーは、前記生体適合性クロスリンカー領域と前記官能性ポリマー領域との間に少なくとも3つの結合を備え、該結合は、少なくとも1つの求電子性官能基と少なくとも1つの求核性官能基との反応生成物であり、該少なくとも1つの求電子性官能基と該少なくとも1つの求核性官能基とが反応して、該ヒドロゲルを形成し、そして、該ヒドロゲルの該生体適合性クロスリンカー領域は、水溶液中少なくとも1g/100mlの可溶性を有する、薬物送達デバイス。
【請求項20】
前記生体適合性の架橋されたポリマーが、さらに、少なくとも1つの生分解性結合を含む、請求項18に記載の薬物送達デバイス。
【請求項21】
請求項18に記載の薬物送達デバイスであって、前記3つの薬物放出プロフィールの間に前記ヒドロゲルから放出される前記少なくとも1種の薬物が、3種の異なる薬物を含み、該3種の異なる薬物は、止血剤、局所麻酔薬、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される第一の薬物;鎮痛剤、抗炎症剤、抗癒着剤、抗生物質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される第二の薬物;ならびに、抗癌剤、抗瘢痕化剤、タンパク質およびこれらの組み合わせからなる群より選択される第三の薬物を含む、薬物送達デバイス。
【請求項22】
前記第一の薬物放出プロフィールが約2日〜約8日であり、前記第二の薬物放出プロフィールが約9日〜約29日であり、そして前記第三の薬物放出プロフィールが約30日〜約120日である、請求項18に記載の薬物送達デバイス。
【請求項23】
前記第一の薬物放出プロフィールが、前記薬物の水への溶解度によって決定され、前記第二の薬物放出プロフィールが、前記ヒドロゲルの加水分解により決定され、そして、前記第三の薬物放出プロフィールが、該ヒドロゲルの質量の減少により決定される、請求項18に記載の薬物送達デバイス。


【公開番号】特開2009−46473(P2009−46473A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187933(P2008−187933)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(507156015)コンフルエント サージカル, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】