説明

薬理学的活性剤の経口的送達のための医薬組成物

【課題】カルシトニンなどのペプチドを送達するための経口的組成物のバイオアビリティーを増強する方法の提供。
【解決手段】カルシトニンとクロスポビドンもしくはポビドンと送達剤としてN−(5−クロロサリシロイル)−8−アミノカプリル酸(5−CNAC)を含有する錠剤などの固体医薬組成物。
【効果】クロスポビドンを5−CNACと組合せて使用すると、5−CNACを他の賦形剤と組合せで用いて作製される錠剤と比べて、早い崩壊を引き起こすことを示し、固体製剤からのカルシトニンの放出の改善を示す。カルシトニンの顕著に改善されたバイオアベイラビリティー、良好な崩壊速度および優れた安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、薬理学的活性剤を送達するための経口的組成物に、経口的に投与される薬理学的活性剤のバイオアベイラビリティーを増強する方法に、ならびに本発明にしたがって薬理学的活性剤を経口的に投与することにより、哺乳動物、特にヒト、において疾患を処置するおよび/もしくは予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
一般的に、薬理学的活性剤の経口的送達は、それが簡便で、比較的容易でかつ通常無痛であるために、よく選択される送達経路であって、他の送達方式に比べてより高い患者のコンプライアンスをもたらす。しかしながら、胃腸管において変化するpH、強力な消化酵素、および活性剤不透過性の胃腸管膜のような生物学的、化学的および物理的な障壁が、いくつかの薬理学的活性剤の哺乳動物への経口的送達を多難にし、例えば、哺乳動物では甲状腺の傍濾胞細胞によりならびに鳥類および魚の鰓後腺により分泌される長鎖ポリペプチドホルモンであるところのカルシトニンの経口的送達は、少なくとも部分的には、胃腸管におけるカルシトニンの不十分な安定性ならびにカルシトニンが腸管壁を通って血流中へ容易に輸送されることができないことにより困難であることが立証されている。
【0003】
米国特許第5,773,647号および第5,866,536号は、ヘパリンやカルシトニンのような活性剤と、N−(5−クロロサリシロイル)−8−アミノカプリル酸(5−CNAC)、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノデカン酸(SNAD)、およびN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸(SNAC)のような修飾されたアミノ酸との、経口送達のための組成物を記載している。加えて、WO 00/059863は、カルシトニン、シクロスポリンおよびヘパリンのような活性剤の経口的送達のために特に有効なものとして、式I、
【化1】

〔式中、
、R、RおよびRは、独立して水素、−OH、−NR、ハロゲン、C〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシであり;
は置換もしくは未置換のC〜C16アルキレン、置換もしくは未置換のC〜C16アルケニレン、置換もしくは未置換のC〜C12アルキル(アリーレン)、または置換もしくは未置換のアリール(C〜C12アルキレン)であり;そして
およびRは、独立して水素、酸素もしくはC〜Cアルキルである。〕
の二ナトリウム塩、ならびにその水和物および溶媒和物を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、薬理学的活性剤、例えばカルシトニンのようなペプチド、のさらにより高い経口的バイオアベイラビリティーを提供する医薬組成物を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
したがって、本発明は、まさに驚異的なことに、活性剤、特にペプチド、の経口的バイオアベイラビリティーを大きく増強させるところの医薬組成物に向けられる。特異的には、本発明は、
1.薬理学的活性剤の治療的に有効な量;
2.クロスポビドンもしくはポビドン;および
3.該薬理学的活性剤のための送達剤
を含む、薬理学的活性剤の経口送達に好適な固体医薬組成物を提供する。
【0006】
もう一つの実施態様においては、本発明は、
1.カルシトニンの治療的に有効な量;および
2.クロスポビドンもしくはポビドン;
を含む、カルシトニンの経口的送達に好適な固体医薬組成物を提供する。
【0007】
さらなる実施態様において、本発明は、薬理学的活性剤のバイオアベイラビリティーを増強するための方法であって、本発明にしたがう医薬組成物の有効な量を、該薬理学的活性剤を必要とする対象に投与することを含む、方法に向けられる。
【0008】
なおさらなる実施態様においては、本発明は、骨関連疾患およびカルシウム異常を処置する方法であって、そのような処置を必要とする対象に、薬理学的活性剤がカルシトニンである、本発明にしたがう組成物の治療的に有効な量を投与することを含む、方法に向けられる。
【0009】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明から明白になるであろう。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明における使用に好適な薬理学的活性剤は、治療的ならびに予防的な薬剤の両方を含み、そしてそれ自体は胃腸管粘膜を通過しない、または少量の投与量のみが通過し、そして/もしくは胃腸管における酸および酵素によって開裂を受けやすい、薬剤に特に向けられる。薬理学的活性剤としては、タンパク質;ポリペプチド;ホルモン;ムコ多糖類の混合物を含む多糖類;炭水化物;脂質;およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
薬理学的活性剤の特異的な例としては、合成的、天然的、もしくは組換え型の供給源を含む以下のもの:ヒト成長ホルモン(hGH)、組換え型ヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモンおよびブタ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出ホルモン;α、βおよびγ−インターフェロンを含むインターフェロン;インターロイキン−1;インターロイキン−2;所望によりナトリウム、亜鉛、カルシウムおよびアンモニウムを含む対イオンを有する、ブタ、ウシ、ヒトおよびヒト組換え型を含むインスリン;IGF−1を含むインスリン様成長因子;非分取ヘパリン、ヘパリノイド、デルマタン、コンドロイチン、低、極低および超低分子量ヘパリンを含むヘパリン;サケ、ブタ、ウナギ、ニワトリおよびヒトに含まれるカルシトニン;エリスロポエチン;心房性ナトリウム利尿因子;抗原;モノクローナル抗体;ソマトスタチン;プロテアーゼ阻害剤;副腎皮質刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン;オキシトシン;黄体ホルモン放出ホルモン;卵胞刺激ホルモン;グルコセレブロシダーゼ;トロンボポエチン;フィルグラスチム;プロスタグランジン;シクロスポリン;バソプレッシン;クロモリンナトリウム(クロモグリク酸ナトリウムもしくは二ナトリウム);バンコマイシン;デスフェリオキサミン(DFO);その断片を含む副甲状腺ホルモン(PTH);抗真菌剤を含む抗菌剤;ビタミン;これらの化合物の類縁体、断片、模倣体もしくはこれらの化合物のポリエチレングリコール(PEG)−修飾誘導体;またはそのいかなる組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
好ましい薬理学的活性剤は、薬理的活性ペプチド、特にカルシトニンである。公知のクラスの薬理学的活性剤であるカルシトニンは、多様な医薬用途を有しそして例えば、ページェット病、高カルシウム血症および閉経後骨粗鬆症の処置に普通に使用される。サケ、ブタおよびウナギのカルシトニンを含む種々のカルシトニンが、市販にて入手可能であり、例えばページェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症および骨粗鬆症の処置に普通に使用される。カルシトニンは、天然的、合成的もしくは組換え型のその供給源、ならびに1,7−Asu−ウナギカルシトニンのようなカルシトニン誘導体を含む、いずれのカルシトニンであってもよい。組成物は、単一のカルシトニンまたは二つもしくはそれ以上のカルシトニンのいかなる組合せをも含み得る。好ましいカルシトニンは、合成的なサケカルシトニンである。
カルシトニンは、市販にて入手可能であるかもしくは公知の方法により合成さされ得る。
【0013】
一般的に、薬理学的活性剤の量は、意図する目的を達成するための有効な量、例えば治療的有効量、である。しかしながら、その量は、複数の組成物が投与されるようなときには、有効量よりも少量であり得る、即ち、全有効量は、累積投与量単位において投与され得る。また、組成物が徐放性の薬理学的活性剤を提供するときには、活性剤の量は有効量よりも多量であり得る。使用される活性剤の全量は、当業者に公知な方法によって決定され得る。しかしながら、この組成物は、従来の組成物よりも効果的に活性剤を送達し得るので、従来の単位剤型もしくは送達システムにおいて用いられるものより少量の活性剤を、同じ血中レベルおよび/もしくは治療効果をなお達成しつつ、対象に投与することができる。
【0014】
薬理学的活性剤がサケカルシトニンであるときは、勿論、適切な投与量は、例えば宿主ならびに処置される異常の性質および重症度に依存して変動するであろう。しかしながら、一般に、満足な結果は、約0.5μg/kg〜約10μg/kg動物体重、好ましくは1μg/kg〜約6μg/kg体重、の一日用量にて全身性で得られるであろう。
【0015】
一般的には、薬理学的活性剤は、全医薬組成物の合計重量に対して0.05〜70重量パーセント、好ましくは0.01〜50重量パーセントの量、より好ましくは全医薬組成物の合計重量と比べて0.3〜30重量パーセントの量で含まれる。
【0016】
クロスポビドンはいかなるクロスポビドンであってもよい。クロスポビドンは、1,000,000もしくはそれ以上の分子量を有し、1−エテニル−2−ピロリジノンとも呼ばれる、N−ビニル−2−ピロリジノンの合成的な架橋ホモポリマーである。市販で入手可能なクロスポビドンとしては、ISPから入手可能なPolyplasdone XL、Polyplasdone XL-10、Polyplasdone INF-10、BASF Corporationから入手可能なKollidon CLが挙げられる。好ましいクロスポビドンは、Polyplasdone XLである。
【0017】
ポビドンは、一般に2,500〜3,000,000の分子量を有する線状1−ビニル−2−ピロリジノン基からなる合成ポリマーである。市販にて入手可能なポビドンとしては、BASF Corporationから入手可能なKollidon K-30、Koliidon K-90FならびにISPから入手可能なPlasdone K-30およびPlasdone K-29/32が挙げられる。
上述のように、クロスポビドンおよびポビドンは市販にて入手可能である。これに代えて、それらは公知の方法により合成され得る。
【0018】
一般的に、クロスポビドン、ポビドンもしくはそれらの組合せは、組成物中に、全医薬組成物の合計重量と比べて0.5〜50重量パーセントの量、好ましくは2〜25パーセントの量、より好ましくは医薬組成物の合計重量と比べて5〜20重量パーセントの量で存在する。
【0019】
本発明における有用な送達剤は、特定の薬理学的活性剤の送達に有用ないかなる試剤でもよい。好適な送達剤は、前述の米国特許第5,866,536号に開示される123個の修飾アミノ酸のいずれか一つ、もしくは米国特許第5,773,647号に開示される193個の修飾アミノ酸のいずれか一つまたはそれらのいずれかの組合せである。前述の米国特許第5,773,647号および第5,866,536号の内容は、全体的な出典明示により本明細書の一部とする。加えて、送達剤は、前述の修飾アミノ酸のいずれかの二ナトリウム塩ならびにそのエタノール溶媒和物および水和物であり得る。好適な化合物としては、式I
【化2】

〔式中、
、R、RおよびRは、独立して水素、−OH、−NR、ハロゲン、C〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシであり;
は置換もしくは未置換のC〜C16アルキレン、置換もしくは未置換のC〜C16アルケニレン、置換もしくは未置換のC〜C12アルキル(アリーレン)、または置換もしくは未置換のアリール(C〜C12アルキレン)であり;そして
およびRは、独立して水素、酸素もしくはC〜Cアルキルである。〕
で示される化合物、ならびにそれらの水和物およびアルコール溶媒和物が挙げられる。式Iの化合物ならびにそれらの二ナトリウム塩およびアルコール溶媒和物と水和物は、それらを作製する方法とともに、WO 00/059863に記載されている。
【0020】
二ナトリウム塩は、エタノール溶媒和物を当分野において既知の方法により蒸発もしくは乾燥して、無水二ナトリウム塩を形成することにより、エタノール溶媒和物から作製され得る。一般的に、乾燥は、約80〜約120℃、好ましくは約85〜約90℃での温度で、そして最も好ましくは約85℃で行われる。一般的に、乾燥工程は、26”Hgもしくはそれ以上の圧力で実施される。一般的に、無水二ナトリウム塩は、無水二ナトリウム塩の100%全重量を基準にして、約5重量%未満のエタノール、そして好ましくは約2重量%未満のエタノールを含有する。
【0021】
また、水中で送達剤のスラリーを作製し、2モル当量の水酸化ナトリウム水溶液、ナトリウムアルコキシド等を加えることにより、送達剤の二ナトリウム塩を作製することができる。好適なナトリウムアルコキシドには、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドおよびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
二ナトリウム塩を作製するなおさらなる方法は、送達剤を1モル当量の水酸化ナトリウムと反応させて、二ナトリウム塩を生成させることである。
【0022】
二ナトリウム塩を、二ナトリウム塩を含有する溶液を真空蒸留により濃密なペーストに濃縮することにより、固体として単離することができる。このペーストを真空乾燥機で乾燥し、送達剤の二ナトリウム塩を固体として取得してもよい。また、二ナトリウム塩の水溶液をスプレー乾燥することにより、固体を単離することができる。
送達剤を、技術上公知の方法、例えば、上述のように、米国特許第5,773,647号および第5,866,536号に記載されている方法、によって作製してもよい。
【0023】
前述のWO 00/059863に記載されているようなエタノール溶媒和物としては、エタノール溶媒の分子もしくはイオンと送達剤の二ナトリウム塩の分子もしくはイオンとの分子もしくはイオン複合体が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、エタノール溶媒和物は、送達剤の二ナトリウム塩のそれぞれの分子に対して約一個のエタノール分子もしくはイオンを含有する。
【0024】
送達剤の二ナトリウム塩のエタノール溶媒和物は、送達剤をエタノールに溶解することにより作製され得る。典型的には、送達剤のそれぞれ1グラムを、約1〜約50mLのエタノールおよび、一般的には約2〜約10mLのエタノールに溶解する。次いで、送達剤/エタノール溶液を送達剤に対して1モル過剰の一ナトリウム含有塩のようなナトリウム含有塩と反応させると、即ち送達剤のそれぞれの分子に対して2モル以上のナトリウム陽イオンがあると、該エタノール溶媒和物が生成する。好適な一ナトリウム塩としては、水酸化ナトリウム;ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドのようなナトリウムアルコキシド;ならびに前述の事項のいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、少なくとも約二モル当量の一ナトリウム含有塩が、エタノール溶液に加えられる、即ち送達剤の1モルに対して少なくとも約2モルのナトリウム陽イオンがある。一般的には、反応は、混合液の還流温度でもしくはそれ以下で、例えば環境温度で、実施される。次いで、得られたスラリーを常圧蒸留で濃縮し、濃縮されたスラリーを冷却しそして固体をろ過するような、技術上公知な方法により、エタノール溶媒和物を回収する。
【0025】
送達剤の二ナトリウム塩の水和物は、エタノール溶媒和物を、上記のように、乾燥させて無水二ナトリウム塩を形成し、そして無水二ナトリウム塩を水和させることにより作製され得る。好ましくは、二ナトリウム塩の一水和物を形成する。無水二ナトリウム塩は非常に吸湿性であるので、水和物は大気湿気へ曝されると形成する。一般的には、水和工程は、約環境温度〜約50℃の温度で、好ましくは環境温度〜約30℃で、かつ少なくとも50%の相対湿度を有する環境にて実施される。これに代えて、無水二ナトリウム塩を水蒸気により水和してもよい。
【0026】
好ましい送達剤は、N−(5−クロロサリシロイル)−8−アミノカプリル酸(5−CNAC)、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸(SNAD)、N−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸(SNAC)ならびにそれらの一ナトリウムおよび二ナトリウム塩、それらのナトリウム塩のエタノール溶媒和物およびそれらのナトリウム塩の一水和物、ならびにそれらの任意の組合せである。最も好ましい送達剤は、5−CNACの二ナトリウム塩およびその一水和物である。
【0027】
典型的には、本発明の医薬組成物は、一つもしくはそれ以上の送達剤の送達有効量、即ち所望の効果のために活性剤を送達するに十分な量、を含有する。一般的に、送達剤は、2.5〜99.4重量%、より好ましくは25〜50重量%の量で存在する。
【0028】
本発明の医薬組成物は、ソフト−ゲルカプセルを含むカプセル剤、錠剤、カプレットもしくは他の固形経口剤型、例えば坐剤、として提供され得、これらはすべて、当分野において周知の方法によって作製することができる。
これに加えて、組成物は慣習的に用いられる量で添加物を含んでもよいが、添加物としては、pH調整剤、保存剤、着香剤、着味剤、芳香剤、湿潤剤、張度剤、着色剤、界面活性剤、可塑剤、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、流動補助剤、圧縮補助剤、可溶化剤、賦形剤、微結晶セルロース、例えばFMC Corporationによって提供されるAvicel PH 102のような希釈剤、もしくはそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。他の添加物としては、リン酸緩衝液塩、クエン酸、グリコールおよび他の分散剤が挙げられ得る。
【0029】
組成物はまた、アクチノニンもしくはエピアクチノニンおよびその誘導体;アプロチニン、トラシロール(Trasylol)およびBowman-Birk阻害剤のような酵素阻害剤の一つもしくはそれ以上を含んでもよい。
さらに、輸送阻害剤、即ちケトプロフィンのようなρ−糖タンパク質が、本発明の組成物中に存在してもよい。
【0030】
好ましくは、本発明の固体医薬組成物は、Avicelのような希釈剤およびステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤を含む。
本発明の固体医薬組成物を、従来の方法により、例えば単一の活性剤もしくは複数の活性剤、送達剤、クロスポビドンもしくはポビドンおよび他の成分の混合物を混合し、練合し、そしてカプセルへ充てんし、またはカプセルへ充てんする代わりに錠剤を得るために、成形し、ひき続きさらに打錠もしくは圧縮成形をすることによって、作製することができる。加えて、固体分散剤を公知の方法により形成し、引き続いてさらなる加工をして、錠剤もしくはカプセルを形成してもよい。
【0031】
好ましくは、本発明の医薬組成物中の成分は、固体剤型の全体にわたって均質に即ち均一に混合される。
本発明の組成物を投与して、げっ歯類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、霊長類、特にヒトのような哺乳動物を非限定的に含む、それを必要とする任意の動物に活性剤を送達し得る。
【0032】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するために役立つ。
【実施例1】
【0033】
実施例1
錠剤は、本発明(実施例A)ならびにクロスポビドンの代わりにAc-Di-Sol (Ac-Di-Solは、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムである)を使用するところの比較実施例BおよびC、ならびに5−CNACおよびサケカルシトニンを含む共凍結乾燥されたカプセルであるところの比較実施例Dにしたがって作成された。
【0034】
特異的には、錠剤は以下のように調製される。
実施例Aの製剤
40メッシュ篩いを通して前−篩い分けされたサケカルシトニン0.502g、35メッシュ篩いを通して前−篩い分けされた5−CNAC二ナトリウム塩120gおよびPolyplasdone XL(クロスポビドン、NF)20gを500mL広口瓶中で混ぜ合わせて、Turbulaミキサーを用いて46RPMの速度で2分間混合する。35メッシュ篩いを通して前−篩い分けされた追加的な5−CNAC二ナトリウム塩125.4gおよびAvicel PH 102の32.5gを広口瓶に加え、46RPMの速度で8分間混合する。Avicelのさらに32.5gを広口瓶に加え、46RPMの速度で5分間混合する。ステアリン酸マグネシウム4.0gを35メッシュ篩いを用いて広口瓶内に篩い落とし、46RPMの速度で1分間混合する。Manesty B3B錠剤成形機を用いて、最終混合物を錠剤に打錠する。錠剤重量は、凡そ400mgである。
【0035】
比較実施例B
5−CNAC二ナトリウム塩14gおよびCabOSilの0.56gを混ぜ合わせ、40メッシュ篩いを通して篩い分けする。5−CNAC二ナトリウム/CabOSi混合物0.3g、40メッシュ篩いを通して前−篩い分けされたサケカルシトニン0.028g、30メッシュ篩いを通して前−篩い分けされたAc-Di-Sol0.56gを1クォートV−混合機シェルの中で混ぜ合わせる。混合物を2分間混合する。5−CNAC二ナトリウム/CabOSil混合物凡そ14.3gを、V−混合機シェルに幾何学的に加え、それぞれの添加(凡そ0.8、1.7、3.2および8.6gを逐次的に加える)後2分間混合する。40メッシュ篩いを通して前−篩い分けされたAvicel PH 102の12.43gおよびステアリン酸マグネシウム0.42gをV−混合機シェルに加え、5分間混合する。次いで、最終混合物を、40メッシュ篩いを通して篩い分けし、例えばManesty F3成形機を用いて、錠剤に打錠する。錠剤重量は凡そ400mgである。
【0036】
比較実施例C
40メッシュ篩いを通して前−篩い分けされたサケカルシトニン0.1224g、35メッシュ篩いを通して前−篩い分けされた5−CNAC二ナトリウム塩30gおよびAc-Di-Solの4gを500mLのPyrex[登録商標]広口瓶中に置き、Turbulaミキサーを用いて46RPMの速度で2分間混合する。35メッシュ篩いを通して前−篩い分けされた追加的な5−CNAC二ナトリウム塩31.35gおよびAvicel PH 102の15gを広口瓶に加え、46RPMの速度で8分間混合する。CabOSilの2gおよびAvicelの16.15gを混ぜ合わせ、18メッシュ篩いを通して篩い分けする。CabOSil/Avicel混合物を広口瓶に加え、そして46RPMの速度で5分間混合する。ステアリン酸マグネシウム1.5gを35メッシュ篩いを用いて広口瓶内に篩い落とし、46RPMの速度で2分間混合する。Manesty B3B錠剤成形機を用いて、最終混合物を錠剤に打錠する。錠剤重量は凡そ400mgである。
【0037】
比較実施例D
注射用水18kgおよび水酸化ナトリウム、NF、0.16kgを容器に加え、溶解するまで混合する。5−CNACの遊離酸0.800kgを容器に加え、400〜600RPMで最低10分間撹拌する。容器のpHを、10N水酸化ナトリウムを用いて凡そ8.5に調整する。10N水酸化ナトリウムのそれぞれの添加後に、容器を最低10分間撹拌する。10N水酸化ナトリウムは、水酸化ナトリウム、NF、40gを注射用水100mLに加えて調製される。配合溶液の最終重量を、注射用水(密度1.016)の追加により20.320kgに調整する。400〜600RPMで容器を最低30分間撹拌する。蠕動ポンプ、シリコンチューブおよびDuraPoreの0.45μm MPHL膜カプセルフィルターを用いて、配合溶液を他の容器内へろ過する。
【0038】
リン酸一ナトリウム一水和物、USP、13.8gを注射用水900gに加え、1.0Nリン酸溶液を使用してpH4.0に調整することにより、リン酸緩衝溶液を調製する。リン酸溶液は、リン酸、NF、0.96gを注射用水25mLに加えて調製される。注射用水を用いて、リン酸緩衝溶液の最終重量を1007g(密度1.007)に調整し、5分間撹拌する。
【0039】
サケカルシトニン1.6gをリン酸緩衝溶液660gに加えて、緩衝化されたサケカルシトニン溶液を調製する。リン酸緩衝溶液を用いて、溶液の最終重量を最終重量806.4g(密度1.008)に調整し、250RPMもしくはそれ以下の速度で最低5分間混合する。
緩衝化されたサケカルシトニン溶液0.800kgを、5−CNAC溶液20kgへ250RPMもしくはそれ以下の速度で一定に撹拌しながら最低5分間で滴下する。
【0040】
サケカルシトニン/5−CNAC溶液凡そ0.75Lを、最終の溶液深さ0.8〜0.9cmでステンレス鋼凍結乾燥トレイ(30.5×30.5cm)内に充てんする。凡そ29個のトレイをサケカルシトニン/5−CNAC溶液21.75Lを充てんする。トレイをEdward凍結乾燥機内に置き、以下の方法にしたがって凍結乾燥する:
1.トレイを装填しそしてReeze乾燥機を密封してから、棚を1℃/分の速度で冷却する。
2.一旦棚温度が−45℃に到達すると、棚温度を−45℃で最低120分間保持する。
3.コンデンサーを−50℃もしくはそれ以下に冷却する。
4.チャンバーを真空にし、そして300ミクロンの真空を保持してから、棚温度を毎分1℃の速度で−30℃に上昇させる。
5.棚温度を−30℃で180分間保つ。
6.チャンバー内の圧力を200ミクロンに低下させ、そして200ミクロンの真空を保持してから、棚温度を毎分1℃の速度で−20℃に上昇させる。
7.棚温度を−20℃で200分間保つ。
8.棚温度を毎分1℃の速度で−10℃に上昇させる。
9.棚温度を−10℃で360分間保つ。
10.棚温度を毎分1℃の速度で0℃に上昇させる。
11.棚温度を0℃で720分間保つ。
12.チャンバー内の圧力を100ミクロンに低下させ、そして100ミクロンの真空を保持してから、棚温度を毎分1℃の速度で+10℃に上昇させる。
13.棚温度を+10℃で540分間保つ。
14.棚温度を毎分1℃の速度で+25℃に上昇させる。
15.棚温度を+25℃で440分間保つ。
16.真空を解除し、トレイを取り出す。
【0041】
共凍結乾燥されたサケカルシトニン/5−CNACをトレイから取り除き、ポリエチレン/ホイル袋中で冷蔵保存する。共凍結乾燥品凡そ400mgを、投与のためカプセル(サイズAA)に充てんする。
【実施例2】
【0042】
実施例2
霊長類投与
実施例1において作製した錠剤もしくはカプセルを、以下のようにアカゲザルへ投与する:一群4頭から6頭のサルに、実施例1のカプセル1個もしくは錠剤2個のいずれかを以下のようにそれぞれ投与する:
アカゲザルを投与前の一夜絶食させ、試験期間の継続中は完全覚醒にて椅子に拘束する。強制栄養管を経由しカプセルもしくは錠剤を投与し、続いて水10mLを与える。
【0043】
投与後0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、5および6時間にて、血液試料を採集する。ラジオイムノアッセイにより血漿サケカルシトニンを測定する。それぞれの群のサルからの霊長類血漿サケカルシトニン(sCT)の結果を平均し、そして最大平均血漿カルシトニン濃度および曲線下面積(AUC)の結果を計算して、表1に報告する。
【表1】

【0044】
表1のデータから分かるように、サケカルシトニンのCmaxおよびサケカルシトニンのAUCは、クロスポビドンを含有しないところの比較組成物に対してクロスポビドンを含有する本発明にしたがう組成物(実施例A)では、よりはるかに大であり、本発明にしたがう製剤の経口的バイオアベイラビリティーの大幅な増強をもたらす。
【実施例3】
【0045】
実施例3
加速安定性試験
sCT0.065mg、0.400mgおよび2.500mgを含有する錠剤を、比較実施例Cおよび実施例Aにしたがい、目標とする力価を得るためにsCTおよびAvicelを調整して、それぞれ作製する。乾燥剤付きHDPEびんに錠剤を入れてから、誘導密封とキャップをする。安定性試料を25℃で60%相対湿度の環境室に置くことにより加速安定性試験を実施する。試料を特定された時点、即ち3、4および6週間で取り出し、HPLCでsCTを分析する。結果を表2に示す。
【表2】

【0046】
両方ともに室温における、4週間後(sCT定量で約10%の低減)の比較実施例Cと6週間後(sCT定量で約5%の低減)の本発明にしたがう実施例Aを比較すると、本発明にしたがう製剤は、本発明にしたがって作製された錠剤の安定性の改善をもたらすことを実証する。
【実施例4】
【0047】
実施例4
60%5−CNAC二ナトリウム、29%Avicel、1%ステアリン酸マグネシウムを含有するが、sCTを除外した、錠剤を、実施例1にしたがい作製することにより、固体製剤の錠剤崩壊を測定した。錠剤崩壊をUSP崩壊試験<701>にしたがい測定する一方で、錠剤硬度を、検定されたVector/Schleuniger 6D錠剤硬度試験器を用いて測定した。結果を表3に示す。
【表3】

【0048】
表3の結果は、Polyplasdone XL(クロスポビドン)を5−CNACと組合せて使用すると、5−CNACを他の賦形剤と組合せで用いて作製される錠剤と比べて、最も早い崩壊を引き起こすことを示し、本発明にしたがう固体製剤からの薬理学的活性剤の放出の改善を示している。
【実施例5】
【0049】
実施例5
化学的安定性
(表4に示した成分の比率を用いて上の実施例1のおけるものと同様に作製された)錠剤をキャップをした琥珀色瓶中に入れることにより、極限苛酷安定性試験のための試料を作製する。試料を、検定された電気炉中に60℃で置くことにより、苛酷安定性試験を実施する。特定されるように、開始時および3日もしくは4日後のいずれかにおいて、HPLCにより試料のsCTを分析する。結果を表4に示す。
【表4】

【0050】
表4から分かるように、極限苛酷条件下におけるsCTの化学的安定性は、クロスポビドンなしの比較製剤と比較するとき、クロスポビドン(Polyplasdone XL-10)を含有する本発明(実施例F)の製剤では改善された。
【0051】
前述の事項は、本発明にしたがう組成物が、他の経口的製剤と比べて、活性剤、特にカルシトニン、の顕著に改善されたバイオアベイラビリティー、良好な崩壊速度および優れた安定性を有することを明白に示す。
【0052】
前述の実施態様および実施例は、本発明を単に例示するために提示されるもので、限定することを意図するものではない。他の多数の実施態様および変形例は、本発明の範囲内にありかつ当業者にとって容易にアクセス可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.薬理学的活性剤の治療的に有効な量;
b.クロスポビドンもしくはポビドン;および
c.該薬理学的活性剤のための送達剤、
を含む薬理学的活性剤の経口的送達に好適な固体医薬組成物。
【請求項2】
活性剤がペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ペプチドがカルシトニンである、請求項1もしくは2に記載の組成物。
【請求項4】
カルシトニンがサケカルシトニンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
クロスポビドンを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
送達剤が5−CNACである、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
送達剤が5−CNACの二ナトリウム塩である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
希釈剤を追加的に含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
希釈剤が微結晶セルロースである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
滑沢剤を追加的に含む、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
薬理学的活性剤の経口的バイオアベイラビリティーを増強するための方法であって、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を、薬理学的活性剤を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項13】
骨関連疾患およびカルシウム異常を処置する方法であって、薬理学的活性剤がカルシトニンである、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物の治療的に有効な量を、そのような処置を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項14】
カルシトニンがサケカルシトニンである、請求項13に記載の方法。

【公開番号】特開2009−185052(P2009−185052A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97262(P2009−97262)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願2002−547536(P2002−547536)の分割
【原出願日】平成13年12月5日(2001.12.5)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】