説明

藻類培養装置及び藻類培養方法

【課題】環境負荷を軽減し得る藻類培養装置を提供して、より環境にやさしい藻類培養方法を提供することを課題としている。
【解決手段】藻類培養装置にかかる本発明は、水中に二酸化炭素が供給され該水中において藻類が培養される藻類培養装置であって、有機物を含有する被処理物がメタン発酵され、メタンガスとともに二酸化炭素を含むガスが排出されるメタン発酵装置とともに用いられ、前記ガスが水と接触されて該水に前記二酸化炭素が溶解されることによりメタンガスの精製が実施されるとともに前記二酸化炭素が溶解された水が藻類に供給されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類を培養する水中に二酸化炭素が供給される藻類培養装置と藻類を培養する水中に二酸化炭素を供給する藻類培養方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クロレラなどの微細藻を健康食品として利用したり、ボツリオコッカスなどの微細藻を液体燃料の原料として利用したりすることが行われている。
このような微細藻などをはじめとした藻類の培養は、通常、太陽光が照射される水中において実施されており、該水中に二酸化炭素を供給して実施されている。
例えば、大面積で水深の浅い水槽を用い水面付近で攪拌を実施して空気中の二酸化炭素を水中に溶解させるオープンポンドタイプと呼ばれるものや、屋外に設けられた透明のチューブ内に藻類を含む水を収容させ、このチューブに空気を吹き込んで二酸化炭素を溶解させるチューブラータイプと呼ばれるものが知られている(下記特許文献1)。
【0003】
ところで、地球温暖化などといった環境問題が近年注目されるにつれて、種々の方面において環境負荷の軽減対策が行われるようになってきており、廃棄物の処理方法においては、熱回収や有価物を回収して環境面での利得を得ることが行われている。
また、有機物を含んだ廃棄物(以下「有機性廃棄物」ともいう)を利用してエネルギー源として利用可能なメタンガスを製造することも行われており、嫌気条件下でメタン生成菌を利用するメタン発酵装置が用いられて有機性廃棄物からメタンガスを製造することが行われている。
【0004】
このように環境意識が高まるなかで、藻類の培養は、地球温暖化の要因ともいわれている二酸化炭素の固定がなされて健康食品や燃料といった利用価値の高い産物が得られることから、環境負荷軽減の要望に合致したものであるといえる。
しかし、例えば、オープンポンドタイプの藻類培養装置では、水面の攪拌動力に多くのエネルギーを消費しており環境負荷軽減の観点からは、さらに、改良の余地を残している。
【特許文献1】特開平09−121835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、環境負荷を軽減し得る藻類培養装置を提供して、より環境にやさしい藻類培養方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、メタン生成菌を利用したメタン発酵装置においては、メタン生成菌による有機物の分解反応が利用されていることからメタンガスとともに二酸化炭素が多く発生されることに着目して本発明を完成させた。
【0007】
より具体的には、メタン発酵装置から排出されるガスは、メタンとともに二酸化炭素を多く含有することからそのままの状態ではエネルギー源としての価値が低く、メタンガス製造設備においては、メタン発酵装置から排出されるガス中のメタンガス濃度を向上させるために、メタンガスに比べて二酸化炭素の方が水に対する溶解度が高いことを利用して、前記ガスと水とを接触させて該水に二酸化炭素を溶解させて系外に排出するメタンガスの精製が行われている。そして、本発明者は、この二酸化炭素を含んだ水を藻類の培養に有効活用し得ることを見出して本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、藻類培養装置にかかる本発明は、水中に二酸化炭素が供給され該水中において藻類が培養される藻類培養装置であって、有機物を含有する被処理物がメタン発酵され、メタンガスとともに二酸化炭素を含むガスが排出されるメタン発酵装置とともに用いられ、前記ガスが水と接触されて該水に前記二酸化炭素が溶解されることによりメタンガスの精製が実施されるとともに前記二酸化炭素が溶解された水が藻類に供給されることを特徴としている。
【0009】
また、藻類培養方法にかかる本発明は、水中に二酸化炭素を供給して該水中において藻類を培養する藻類培養方法であって、有機物を含有する被処理物がメタン発酵され、メタンガスとともに二酸化炭素を含むガスが排出されるメタン発酵装置を用い、前記ガスを水と接触させて該水に前記二酸化炭素を溶解させることによりメタンガスの精製を実施するとともに前記二酸化炭素を溶解させた水を藻類に供給することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メタン発酵装置から排出されるガスには、通常、メタンガスとともに高濃度に二酸化炭素が含有されている。
したがって、このガスと水とを接触させることによって水中に容易に二酸化炭素を溶解させることができ、藻類に効率よく二酸化炭素を供給することができる。
したがって、藻類培養装置における環境負荷を従来のものに比べて軽減し得るとともに、より環境にやさしい藻類培養方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、メタンガス製造設備である有機性廃棄物の処理設備において、メタン発酵装置とともに藻類培養装置が用いられる場合を例に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のメタンガス製造設備の構成を示すブロック図であり、この図1に示すとおり、メタンガス製造設備1(有機性廃棄物処理設備1)は、下水処理設備2と併設されており、該下水処理設備における下水処理によって発生した下水汚泥が生ごみなどの有機性廃棄物とともにメタン発酵されてメタンガスが製造されるように構成されている。
前記有機性廃棄物処理設備1には、メタン発酵装置10とメタンガス精製装置20と藻類培養装置30とが備えられている。
【0013】
本実施形態におけるメタン発酵装置10には、有機性廃棄物のメタン発酵において従来公知のものを用いることができ、例えば、有機性廃棄物を可溶化するための可溶化槽11と、該可溶化槽11で可溶化された有機性廃棄物(以下「可溶化液」ともいう)が導入されてメタン生成菌によってメタン発酵されるメタン発酵槽12(消化槽12)とを有するものなどを用いることができる。
また、このメタン発酵槽12も従来公知のものを用いることができ、前記可溶化液を貯留し、内部に収容させたメタン生成菌によってメタン発酵を行う槽本体と、前記メタン生成菌の有機物分解作用によって生じたメタンガスや二酸化炭素などのガスを前記槽本体内で捕集して、前記ガスを排ガスとして系外に排出させるガス排出機構とを有するものなどを用いることができる。
【0014】
前記メタンガス精製装置20には、特開2006−95512号公報、特開2006−83156号公報に記載されているようなものを用いることができ、例えば、前記メタン発酵装置10の排ガスを加圧するガス圧縮機21と、該ガス圧縮機21で加圧された高圧の排ガスと水とを接触させて該水に二酸化炭素を溶解させるための吸収塔22と、該吸収塔22で二酸化炭素が溶解された水を大気圧状態に減圧する減圧タンク23とを有するものが挙げられる。
【0015】
すなわち、前記吸収塔22の内部を加圧条件とすることで、前記水に大気圧における飽和濃度以上に二酸化炭素を溶解させて前記高圧排ガスから殆どの二酸化炭素を除去して、高純度なメタンガスを吸収塔22から排出させるとともに、大気圧における飽和溶解度を超える過飽和な状態で二酸化炭素が溶解されている高圧の排水を吸収塔22から排出させるメタンガス精製装置を本実施形態におけるメタンガス精製装置20として採用することができる。
また、減圧タンク23で吸収塔22からの排水を大気圧状態に減圧し、過飽和に溶解している二酸化炭素の過飽和分を放出させた後の飽和炭酸水を排出し得るように形成されているメタンガス精製装置を本実施形態において採用することができる。
なお、この減圧タンク23で分離された気体状の二酸化炭素を、先の飽和炭酸水とともに前記培養装置に供給させるべく、前記二酸化炭素を貯留するガスホルダー24を有するメタンガス精製装置を好適に採用し得る。
【0016】
前記藻類培養装置30は、藻類を培養可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、オープンポンドタイプのものやチューブラータイプのものが挙げられる。
中でも、チューブラータイプのものはオープンポンドタイプのものに比べて必要な設置面積が少なく、設備の省スペース化を図り得る点において好適である。
なお、チューブラータイプの藻類培養装置としては、例えば、南中時における太陽の方向に面した傾斜状態となり、太陽光の反射性能に優れた素材が用いられて形成された傾斜面を有する架台の前記傾斜面の前面側に、複数本の水を充満させた透明なチューブを互いに間隙を設けて水平に架設し、しかも、互いのチューブの水の行き来を可能にした状態として、下段側に架設されているチューブ側から二酸化炭素を含む気体を導入してエアリフトによる流動をチューブ内に形成させて前記チューブ内で藻類を培養するタイプのものなどが挙げられる。
また、複数本の水を満たした透明なチューブを垂直に立設し、該チューブの下部から二酸化炭素を含む気体を導入するようなチューブラータイプの藻類培養装置もオープンポンドタイプのものに比べて省スペース化が図られる点については同様である。
【0017】
このような藻類培養装置30で培養する藻類としては、光合成により二酸化炭素を炭水化物、炭化水素などの状態で体内に固定化する作用を有するものであれば特に限定されるものではないが、二酸化炭素の固定化に広く用いられており、その用途も広いことから微細藻を用いることが好ましく、該微細藻としては、例えば、ボツリオコッカス(Botryococcus)、クロレラ(Chlorella)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、スピルリナ(Spirulina)、円石藻などが挙げられる。
【0018】
本実施形態の有機性廃棄物処理設備1には、前記メタンガス精製装置20から排出される二酸化炭素を含有する排水が、前記減圧タンク23を通過することによって形成された飽和炭酸水を前記藻類培養装置30に供給するための排水供給機構40がさらに備えられている。
該排水供給機構40としては、特に限定されるものではなく、一般に液体の搬送手段として用いられているものを採用することができ、例えば、前記減圧タンクと前記藻類培養装置30との間に敷設された配管と、該配管中における飽和炭酸水の搬送動力となるポンプと、前記飽和炭酸水の流量を調整する制御機器などによって構成させることができる。
また、前記減圧タンク23で分離されガスホルダー24に貯留された気体状の二酸化炭素を前記藻類培養装置30に供給する場合には、この二酸化炭素を供給する機構50(以下「二酸化炭素供給機構50」ともいう)も一般的な気体の搬送手段にて構成することができる。
【0019】
前記下水処理設備2についても特に限定されるものではなく、活性汚泥法などの生物学的処理によって下水を、条例などにおいて定められた排出基準を満足する処理水として系外に排出させ得るものを例示することができる。
なお、本実施形態においては、この下水処理設備2で生じた下水汚泥を前記可溶化槽11に供給する下水汚泥供給機構2sと、下水処理設備2から排出される処理水を前記吸収塔22に供給して二酸化炭素を溶解させるための水として活用させるための下水処理水供給機構2wとが備えられている。
【0020】
なお、ここでは詳述しないが、メタン発酵を行う有機性廃棄物処理設備(メタンガス製造設備)に従来備えられている各種構成を、本実施形態の有機性廃棄物処理設備にも備えさせることができる。
例えば、生ゴミや下水汚泥などの被処理物の固液分離を行う脱水装置や、ガス中に含まれている液体分を除去するためのミストセパレータ、除湿機などといった各種分離装置、その他の制御機器類などを本実施形態の有機性廃棄物処理設備に備えさせることができる。
【0021】
次いで、このような有機性廃棄物処理設備における藻類培養方法について説明する。
まず、下水処理設備2での下水処理方法について説明する。
下水にはし尿等が含有されていることから、窒素成分やリン成分などが多く含有されており、処理水の生物化学的酸素要求量(BOD)、窒素含有量、リン含有量等の値が条例などに基づく基準値以下の水質となるように、例えば、活性汚泥法などによって下水を生物学的に処理する下水処理方法が従来実施されており、本実施形態における下水処理設備2においてもこのような下水処理方法を実施させ得る。
なお、この生物学的な下水処理においては有機性の物質を栄養源として微生物が増殖し、余剰の汚泥(下水汚泥)が発生することとなるが、本実施形態においては、この下水汚泥を有機性廃棄物処理設備1に供給してメタンガスの原料として利用する。
【0022】
また、後述するが、窒素、リンなどの含有量が低減された処理水も有機性廃棄物処理設備1に供給して、メタン発酵槽12からの排ガス中に含有されている二酸化炭素を溶解させる水として用いる。
すなわち、処理水に含有される窒素、リンなどの成分も藻類の培養に利用する。
本実施形態においては、例えば、前記下水処理設備2において下水が処理され、窒素の濃度が1〜20mgT−N/l、リンの濃度が0.1〜3mgT−P/l、BODが0.5〜15mg/lのいずれかの値となるように窒素やリンが含有されている処理水が二酸化炭素の溶解に用いられ得る。
なお、藻類の生育や、藻類による炭水化物などの有用な物質の生産に最適な窒素やリン、あるいは、BOD(生物分解性の有機性物質)の濃度は、培養する藻類の種類によって異なるので、下水処理設備2の処理水中にこれらの成分が不足する場合は、化学薬品、下水流入水、あるいは、メタン発酵処理液などを添加することにより、これらの成分を補って培養する藻類にとって最適な条件に調整すればよい。
また、処理水中にこれらの成分が過剰に含まれる場合は、処理水に水道水や地下水等を加えてこれらの濃度を低減させ、藻類の培養や藻類による有用物質生産にとって最適な条件となるように調整することができる。
【0023】
前記下水汚泥は、有機性廃棄物処理設備1における可溶化槽11に供給してこの可溶化槽11で可溶化させた後にメタン発酵槽12でメタン発酵させる。
【0024】
より具体的には、まず、この下水汚泥を生ゴミなどとともに被処理物としてメタン発酵装置10に導入して可溶化槽11で可溶化する。
この可溶化方法は、特に限定されるものではなく、アルカリや酸を用いる方法、オゾン等の酸化剤を用いる方法や、酸生成菌や好熱菌等の微生物による可溶化など種々の方法を用いて行うことができる。
【0025】
次いで、この可溶化された被処理物をメタン発酵槽12に導入してメタン生成菌によるメタン発酵をさせる。
このとき、槽内においては、メタン生成菌による有機物の分解反応によって、主として、メタンガスと二酸化炭素を含む気体が発生し、この気体を排ガスとしてガス排出機構を通じてメタン発酵装置10から排出させる。
【0026】
このメタン発酵装置10から排出させた排ガスを、ミストセパレータ(図示せず)を通過させるなどした後、メタンガス精製装置20のガス圧縮機21で数気圧以上(例えば、0.55MPa〜2.0MPa。より具体的な一例として、0.9MPa。)に加圧して吸収塔22に導入させるとともに、前記下水処理設備2の処理水を、下水処理水供給機構2wを通じてこの吸収塔22に導入し、該処理水と前記排ガスとを接触させる。
ここではメタンガスと二酸化炭素との水の溶解性には大きく隔たりを有していることを利用して、メタンガスと二酸化炭素とを含有する排ガスと処理水とを接触させることによって主として二酸化炭素を前記処理水に溶解させてメタンガスを精製(吸収塔内におけるガス中のメタンガス濃度をメタン発酵装置10の排ガス以上に向上)させる。
【0027】
しかも、この吸収塔22においては、前記排ガスを、ガス圧縮機21によって圧縮されたままの加圧状態(0.55MPa〜2.0MPa)に維持させて処理水との接触を実施する。
したがって、二酸化炭素を大気圧における飽和溶解度以上に溶解させた炭酸水(以下「過飽和炭酸水」ともいう)を形成させることができ、この吸収塔22から、前記過飽和炭酸水を排出させるとともに高い純度に精製されたメタンガスを排出させることができる。
なお、このときの処理水や排ガスの導入量、吸収塔22の内の温度や圧力といった諸条件は、メタン発酵装置10からの排ガス中の二酸化炭素含有量などにもよるが、通常、排ガス中の二酸化炭素の殆どを処理水中に溶解させて、吸収塔22からメタンガスのみが排出される条件とすることが好ましい。
【0028】
この吸収塔22から排出される高純度に精製されたメタンガスは、除湿器(図示せず)などを通過させて乾燥した後にガスタンクなどに貯留して、エネルギー源として適宜利用することができる。
一方、過飽和炭酸水は、減圧タンク23に導入して、大気圧状態(1気圧)まで減圧して、過度に溶解されていた二酸化炭素を放出させる。
そして、この二酸化炭素(気体)をガスホルダー24に収容させるとともに過度に溶解されていた二酸化炭素が除去され飽和炭酸水となった処理水を藻類培養装置30に導入させる。
この藻類培養装置30では、藻類に日光が照射する条件とすることで、前記処理水に溶解させた二酸化炭素を、光合成の作用によってその個体内に固定化させる。
しかも、前記処理水には、ある程度の窒素やリンが含有されていることから、この窒素やリンも藻類の培養に有効に活用することができる。
【0029】
なお、藻類培養装置30内の二酸化炭素量が不足するおそれがある場合には、前記減圧タンク23から排出された二酸化炭素を収容するガスホルダー24から、この藻類培養装置30に二酸化炭素を供給すればよく、このようにガスホルダーからの二酸化炭素の供給によって藻類培養装置30への二酸化炭素供給量の調整を行うことにより天候や気温などの関係から藻類の二酸化炭素消費量が変動した場合などにおける対応が容易となる。
【0030】
このようにして、例えば、健康食品などとして市場価値を有するクロレラや、炭化水素が蓄積されバイオ燃料としての期待の高いボツリオコッカスなどを培養することにより、従来、メタンガス製造設備から廃棄されていた二酸化炭素を利用しやすい形で固定化することができる。
【0031】
すなわち、本実施形態に係る藻類培養装置は、メタンガス製造設備からの二酸化炭素の排出量を効率よく削減させ得るとともにこの二酸化炭素を藻類の培養に有効に用いることができ、環境負荷の軽減を可能にするものである。
そして、本実施形態の藻類培養方法は、効率よく藻類の培養ができるのみならず、純度の高い、高品質なメタンガスを製造することもできる。
【0032】
また、本実施形態に係る藻類培養装置は、メタン発酵装置とともに用いられることから、例えば、培養した藻類から炭水化物や炭化水素などの有用なる物質を採取した後の残渣分を再びメタン発酵装置(消化槽や可溶化槽)やその前段などに戻してメタンガスの原料として利用することができる。
具体的には、炭水化物を生産する藻類の場合、藻類そのものを原料として、あるいは藻類から抽出した炭水化物を原料にしてアルコール発酵を行うことなどによりバイオエタノールを生産することが可能であり、炭水化物を抽出する過程やアルコール発酵の過程において残渣分が発生するので、その残渣分を再びメタン発酵槽やメタン発酵槽の前段の可溶化槽に戻すことによってこの残渣をメタンガスの原料として利用することができる。
また、炭化水素を生産する藻類の場合は、有機溶剤を用いて炭化水素を抽出することにより、あるいは藻類を圧搾して炭化水素を回収後オイルスキマーやオイルセパレータ等を用いて油水分離を行うことによりバイオディーゼルフューエルを生産することができ、バイオディーゼルフューエルを生産する過程において残渣分が発生するので、その残渣分を再びメタン発酵槽やメタン発酵槽の前段の可溶化槽に戻すことによってこの残渣をメタンガスの原料として利用することができる。
すなわち、本発明によれば、メタン発酵装置と藻類培養装置とを循環するクローズドループが形成され、系外に排出される二酸化炭素量が抑制されつつメタンガスや炭水化物、炭化水素といった有用なる物質の生産性が向上されうることから、被処理物に含有される有機性物質の多くを、利用が容易なエネルギー源として転化させることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、吸収塔を備えたメタンガス精製装置を用いる場合を例示しているが、例えば、メタン発酵装置の排ガスを直接チューブラータイプの藻類培養装置のチューブ内に供給して、前記排ガス中の二酸化炭素をチューブ内に収容されている水に溶解させて藻類に供給するとともに、前記チューブが大気開放されている箇所において二酸化炭素が除去されて精製されたメタンガスを回収するようにしてもよい。
この場合、装置を簡略化することができ、設置スペースや、設置コストなどの面でメリットを有する。
【0034】
また、本実施形態においては、メタンガス製造設備の省スペース化に有効である点において好適な藻類培養装置としてチューブラータイプのものを例示しているが、本発明は、藻類培養装置をチューブラータイプに限定するものではなく、オープンポンドタイプの藻類培養装置を用いる場合も本発明の意図する範囲である。
また、本実施形態においては、藻類の培養に日光(太陽光)を利用する場合を例示しているが、電灯、蛍光灯、発光ダイオード等の人工的に発生させた光も利用することができる。
【0035】
また、本実施形態においては、藻類培養装置への二酸化炭素の供給量調整が容易である点において、吸収塔から排出された過飽和炭酸水を一旦減圧して過剰に溶解させた二酸化炭素と飽和炭酸水とに分離するする方法を例示しているが、過飽和炭酸水を加圧状態のまま藻類培養装置に供給することもできる。
例えば、藻類培養装置がチューブラータイプのものであれば、この過飽和炭酸水の供給圧力によってチューブ内の水の攪拌を行わせることもできる。
【0036】
また、本実施形態においては、吸収塔においてより多くの二酸化炭素を水中に溶解させて、より高純度なメタンガスを製造しうる点において、加圧条件下においてメタン発酵装置からの排ガスと下水処理設備の処理水とを接触させているが、大気圧下で接触させる場合も本発明の意図する範囲である。
【0037】
また、メタン発酵装置からの排ガスと接触させる水として、下水処理設備の排水処理の手間を軽減できるとともに、処理水中の窒素やリンを藻類の培養に有効利用できることから下水処理設備の処理水を用いているが、他の水であっても良く、例えば、アルカリ性の水を用いて、二酸化炭素の溶解性を向上させることも可能である。
【0038】
さらには、本実施形態においては、上記のように排水処理の手間を軽減しうるとともに下水汚泥をメタンガスの製造に有効に利用できることから下水処理設備と併設されたメタンガス製造設備を例示しているが、本発明は、このような場合に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】メタンガス製造設備(有機性廃棄物処理設備)を示す概略ブロック図。
【符号の説明】
【0040】
1:メタンガス製造設備(有機性廃棄物処理設備)、2:下水処理設備、2s:下水汚泥供給機構、2w:下水処理水供給機構、10:メタン発酵設備、11:可溶化槽、12:メタン発酵槽、20:メタンガス精製装置、21:ガス圧縮機、22:吸収塔、23:減圧タンク、24:ガスホルダー、30:藻類培養装置、40:排水供給機構、50:二酸化炭素供給機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に二酸化炭素が供給され該水中において藻類が培養される藻類培養装置であって、
有機物を含有する被処理物がメタン発酵され、メタンガスとともに二酸化炭素を含むガスが排出されるメタン発酵装置とともに用いられ、前記ガスが水と接触されて該水に前記二酸化炭素が溶解されることによりメタンガスの精製が実施されるとともに前記二酸化炭素が溶解された水が藻類に供給されることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項2】
前記藻類が微細藻である請求項1記載の藻類培養装置。
【請求項3】
チューブラータイプである請求項2記載の藻類培養装置。
【請求項4】
メタン発酵装置から排出されるガスと水とを加圧条件下で接触させて前記水中に二酸化炭素を溶解させるメタンガス精製装置がさらに備えられており、該メタンガス精製装置において二酸化炭素が溶解された水が藻類に供給される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の藻類培養装置。
【請求項5】
下水が生物学的に処理された後の処理水が前記二酸化炭素の溶解に用いられている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の藻類培養装置。
【請求項6】
水中に二酸化炭素を供給して該水中において藻類を培養する藻類培養方法であって、
有機物を含有する被処理物がメタン発酵され、メタンガスとともに二酸化炭素を含むガスが排出されるメタン発酵装置を用い、前記ガスを水と接触させて該水に前記二酸化炭素を溶解させることによりメタンガスの精製を実施するとともに前記二酸化炭素を溶解させた水を藻類に供給することを特徴とする藻類培養方法。
【請求項7】
前記藻類が微細藻である請求項6記載の藻類培養方法。
【請求項8】
下水が生物学的に処理された後の処理水を前記二酸化炭素の溶解に用いる請求項6又は7に記載の藻類培養方法。
【請求項9】
メタン発酵装置から排出されるガスと水とを加圧条件下で接触させることにより大気圧における飽和溶解度を超える二酸化炭素を前記水に溶解させる請求項6乃至8のいずれか1項に記載の藻類培養方法。
【請求項10】
加圧条件下で大気圧における飽和溶解度を超える二酸化炭素を溶解させた水を大気圧状態に減圧することにより、溶解されている二酸化炭素の一部を前記水から放出させ、該水を藻類に供給するとともに前記放出させた二酸化炭素によって藻類への二酸化炭素供給量を調整する請求項9記載の藻類培養方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−88368(P2010−88368A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262629(P2008−262629)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】