説明

藻食動物の藻場造成礁侵入防止方法、海藻育成囲い

【課題】 天候や場所や海流の有無や海流の強さなどの条件に左右されることなく、ウニなどの藻食動物の藻礁への侵入を完全に阻止することを可能とする藻場造成礁を提供することを目的としている。
【解決手段】 海藻を育成するための藻場造成礁に、海藻を餌とする藻食動物が侵入するのを防止する藻食動物の藻場造成礁侵入防止方法であって、とりついた藻食動物の重量により沈む浮体を前記藻場造成礁3の周りに予め多数配置し、藻食動物がとりついた浮体4は、当該藻食動物とともに沈み、前記沈んだ浮体4のうち藻食動物が離れた浮体4は前記藻場造成礁3の周りへ戻るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻食動物の藻場造成礁侵入防止方法、海藻育成囲いに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記「特許文献1」「特許文献2」「特許文献3」に次のような技術が開示されている。
【0003】
(1)「特許文献1」
コンクリート製の階段壁で藻礁を囲い、該階段壁の垂直面により該垂直面に上ったウニや巻貝などが自重や海流の作用で登れず落ちて、藻食動物が藻礁内に侵入するのが防止される技術が開示されている。
【0004】
(2)「特許文献2」
藻礁を藻食動物が侵入できないネットで完全に覆い囲う技術が開示されている。
【0005】
(3)「特許文献3」
人工葉状海藻をチェーンに配列し、この人工葉状海藻で藻礁を囲い、人工海藻の海流の揺れ動き動作というウニ類が嫌う動きによりウニ類を撃退し藻礁への侵入を防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−299128(人工藻礁)
【特許文献2】特開平11−137118(藻場・海中林造成増殖場造成礁)
【特許文献3】特開平10−4817(人工海藻とその使用方法)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昆布などの海藻が成長していない段階ではウニ、巻貝、アワビなどの藻食動物を藻礁から排除して、海藻の育成を図ることが必要である。
【0007】
また、アワビ育成礁において、餌を同じにするウニの存在は、アワビ育成の障害となる。特に、海藻が大きな葉状に成長していない段階では、ウニが侵入して食べ尽くしてしまい、アワビの稚貝の餌がなくなりその育成が妨げられる。
【0008】
しかるに、海藻はある程度に大きくなると海流の流れに揺られるようになる。ウニはこの揺れる海藻に棘の間にある何百本もの吸盤機能の管足でよじ登るのであるが、その付着力は数kgにもなり、海藻のその程度の揺れでは落ちないが、ウニの口が付着面の中央にあるために、いざ海藻を食べるときには大半の管足を海藻から外すので、その状態となったとき海藻の揺れでウニは振り落とされてしまう。
【0009】
ウニ類は、海藻が約0.4m/s以上の流速振幅になると、前記理由により振り落とされるので葉状の海藻を食べることができなくなり、流速が低下しない限りウニは再付着することができない。
【0010】
したがって、海藻がウニを振り落とす揺れを得られる程度の大きな葉状に成長するまでは、海藻を育成する藻礁にウニが侵入しないようにして、アワビが海藻の成長までは、捕捉した流れ藻を餌としながら海藻を大きな葉状へと育成する必要がある。
【0011】
上述した従来技術は次に述べるような問題を有している。
【0012】
(1)「特許文献1」に開示されている技術は、垂直壁によりウニの登りを阻止しようとするものであるが、数kgにおよぶウニの管足の付着力はウニ返しなどの天井をも楽に移動できるものであり、多くのウニの侵入を許してしまうという問題を有するものであった。
【0013】
(2)「特許文献2」に開示されている技術は、海流を受ける面積、体積が大きくなるため海流抵抗が大きく、荒波や強い流速によりネットが破壊され易く、最悪ネット覆い全部が流出してしまうという問題を有するものであった。
【0014】
(3)「特許文献3」に開示されている技術は、波の力の弱いと場合や、凪の場合などで海流の流れが殆どない場合などは、人工海藻は揺れずウニの侵入を許してしまうという問題を有するものであった。
【0015】
本発明は以上述べたような従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、天候や場所や海流の有無や海流の強さなどの条件に左右されることなく、ウニなどの藻食動物の藻礁への侵入を完全に阻止することを可能とする藻食動物の藻食造成礁侵入防止方法、海藻育成囲いを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は以下に述べるような構成となっている。
【0017】
<請求項1記載の発明>
海藻を育成するための藻場造成礁に、ウニや巻貝等の海藻を餌とする藻食動物が侵入するのを防止する藻食動物の藻場造成礁侵入防止方法であって、とりついた藻食動物の重量により沈む浮体を前記藻場造成礁の周りに予め多数配置し、藻食動物がとりついた前記浮体は、当該藻食動物とともに沈み、前記沈んだ浮体のうち藻食動物が離れた浮体は前記藻場造成礁の周りへ戻る藻食動物の藻場造成礁侵入防止方法を構成している。
【0018】
浮体の形態は、球体、多角体、円柱体、変形体など多様な形態を用いることができ、相違する形態の浮体の混合による場合もあるし、その大きさも例えば、球体であるならピンポン球くらいからソフトボール位の大きさ程度が適当と考えられる。また、浮体の比重も1.02以下で0.9以上が望ましい。これより大きいと海水の比重1.02より大きくなり沈んでしまうし、これより小さいと、藻食動物が取り付いた際に、沈むことなく浮いているので目的の効果を果たさない。
【0019】
しかし、本発明は上記に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施することができる。
【0020】
<請求項2記載の発明>
海底に配置された囲い体と、前記囲い体の周囲において浮体を多数配置させた浮体配置部とが設けられてなり、前記浮体にウニや巻貝などの海藻を餌とする藻食動物がとりつくと、前記浮体にとりついた藻食動物が該浮体とともに沈む海藻育成囲いを構成している。
【0021】
<請求項3記載の発明>
請求項2記載の発明の構成において、前記囲い体により囲まれた領域には、海藻を育成するための藻場造成礁が形成されてなる海藻育成囲いを構成している。
【0022】
<請求項4記載の発明>
請求項2又は3記載の発明の構成において、浮体は、該浮体に通された棒体や張られたワイヤなどの支持案内部材により沈み浮き移動可能に支持され、藻食動物が前記浮体にとりつくと前記支持案内部材に支持されながら沈み、藻食動物が離れると、自らの浮力により前記支持案内部材により支持案内されて浮き上がり、浮体配置部に戻るようにしてなる海藻育成囲いを構成している。
【0023】
支持案内部材の形態は、海底から浮体配置部に渡り張った形態、浮き配置部から中途まで下げた形態などいろいろな形態がある。
【0024】
<請求項5記載の発明>
請求項2〜4の何れか1項記載の発明の構成において、浮体は、紐体で繋がれて配置されてなる海藻育成囲いを構成している。
【0025】
紐体で浮体を繋ぐ形態は、浮体を繋いだ紐を浮体配置部の天井に繋ぐ、側壁に繋ぐ、下方に繋ぎ浮かす等多様な形態がある。また、浮体の沈む終点については、海底、中途、囲い体から突き出させた部位など多様な形態がある。
【0026】
<請求項6記載の発明>
請求項2〜5の何れか1項記載の発明の構成において、浮体は、鋼製、生分解性プラスチック、木製などの経時で劣化等でなくなる物で形成されてなる海藻育成囲いを構成している。
【0027】
<請求項7記載の発明>
請求項2〜6の何れか1項記載の発明の構成において、浮体を配置する浮体配置部が藻場造成礁本体の外壁に設けられてなる海藻育成囲いを構成している。
【0028】
多くの場合、浮体配置部までの藻場造成礁本体の壁をメッシュなどで被う必要があるが、経時錆びて消滅して行く鋼製の金網がよい。
【0029】
<請求項8記載の発明>
請求項2〜7の何れか1項記載の発明の構成において、前記囲い体の底面から上方に向って延伸された流れ藻捕捉用棒体をさらに備え、前記海藻捕捉用棒体は、前記囲い体の上面に形成された開口領域からその先端を突出させてなる海藻育成囲いを構成している。
【0030】
<請求項9記載の発明>
請求項2〜8の何れか1項記載の発明の構成において、前記囲い体の内部には、石材やコンクリート等のブロック材が充填されてなること海藻育成囲いを構成している。
【0031】
<請求項10記載の発明>
請求項2〜9の何れか1項記載の発明の構成において、少なくとも前記囲い体並びに前記浮体配置部は移動可能である海藻育成囲いを含む藻場造成礁を構成している。
【発明の効果】
【0032】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0033】
<請求項1記載の発明の効果>
(1)ウニが囲い体の壁を付着し登って浮体配置部に到達し、それ以上進むと浮体に付着することになる。ウニが浮体に付着すると、わずかな浮力で浮いている浮体はウニの重さが加わることにより沈んで行き、海底に到達するか何らかの構造により海底に到達しないで止まるなどにより、ウニを藻場造成礁から離してしまうという構造を実現しているので、海流の有る無し強さに影響されることなく完全にウニが藻場造成礁に侵入するのを阻止することを実現するという効果を得ることができる。
【0034】
(2)藻場造成礁を全部メッシュで被う形態ではなく、藻場造成礁を囲う囲い体や藻場造成礁の外壁の適宜な高さ位置に浮体配置部を設ける構成であるので、波が荒れ強い流速が生じたり、海流が強い流れとなっても、流出することがないという効果を得ることができる。
【0035】
また、浮体配置部を設ける高さを1mや数十cm程度で可能とするものでもあるので、全体を金網で被うものに比べて囲い体を低コストにできる効果を得ることもできる。
【0036】
(3)壁を登った多くのウニは、浮体に付着する前に海流により揺れ動く浮体が衝突して突き落とされてしまうという効果も得ている。
【0037】
(4)ウニのみならず、アワビを食性とするヒトデの侵入も防止することができる。
【0038】
<請求項2記載の発明の効果>
前記請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができる。また、既存の人工藻礁や自然の場所で海藻を育成したい所に囲い体を設置して、ウニの影響を受けずに海藻を育成する、アワビの稚貝の放流を行いその育成を障害少なく図ることができるという効果を得ることができる。
【0039】
人工藻礁を設置後にあるいは同時に囲い体を設置することもできる。
【0040】
また、囲い体および浮体配置部を網体で形成してあるので、海流の抵抗を小さくして囲い体の低コスト化を実現し且つ損傷や流出を防止するとともに、中の藻礁に新鮮な海水を行き届かせるという効果を得ることができる。
【0041】
<請求項3記載の発明の効果>
囲い体により囲まれた領域には、海藻を育成するための藻場造成礁を予め形成しておくことにより、海藻の育成をより促進させることが可能となる。
【0042】
<請求項4記載の発明の効果>
浮体が該浮体に通された支持案内部材により沈み浮き移動可能に支持されているので、藻食動物が浮体に付着して沈み、藻食動物が離れた場合は支持案内部材に支持案内せれて所定の浮体配置部の位置に浮きもどるので、浮体が流出することがないという効果を得ることができる。
【0043】
<請求項5記載の発明の効果>
浮体が、紐体で繋がれているので、浮体が流出してしまうことがないという効果を得ることができる。
【0044】
<請求項6記載の発明の効果>
浮体が鋼製、生分解性プラスチックなどの経時で劣化等してなくなる物で形成されているので、例えば、海藻が十分な大きさの葉状に成長した期間をすぎると、環境に悪影響を与えることなく消滅してしまうので、回収コストが掛からないという効果を得ることができる。
【0045】
<請求項7記載の発明の効果>
浮体配置部が藻場造成礁本体の外壁に設けてなるものであるので、低コストで流出などしないものを実現できるという効果を得ることができる。
【0046】
<請求項8記載の発明の効果>
海藻捕捉用棒体に捕捉された海藻が囲い体内部へと落ちていく結果、囲い体内において育成すべき生物の飼料としてこれを活用することが可能となる。
【0047】
<請求項9記載の発明の効果>
海藻捕捉用棒体に捕捉された海藻を、石材において育成すべきアワビの餌として活用することが可能となる。
【0048】
<請求項10記載の発明の効果>
請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面に示す発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。但し本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0050】
<第1の実施の形態>
図1および図2に示す本発明を実施するための第1の実施の形態において海藻育成囲い1は次のようになっている。
【0051】
ワカメなどの主に海藻2を育成するための藻場造成礁3が基礎18に固定され海底に設置されている。
【0052】
また、この藻場造成礁3を内部に形成している海藻育成囲い1は、海底に固定される場合に限定されるものではなく、海底内の任意の位置に自在に移動させることができる。ちなみに、この海藻育成囲い1において、底板が設けられていることは必須の構成要件とはならない。
【0053】
この藻場造成礁3を囲うように、比重0.9〜1.02の球体からなる浮体4を全周に渡って収納配置してなる浮体配置部5を有する囲い体6が基礎18に固定され配置されている。この囲い体6は全周に渡ってメッシュ7で覆われている。
【0054】
囲い体6の外壁に付着し、さらにその外壁を登ったウニ8は、浮体配置部5の浮体4に付着しなければそれ以上前進することができないので、浮体4に付着する。
【0055】
ウニ8が付着した浮体4+ウニ8は比重が海水より重くなり、ウニ8と一緒に沈んで行く。海底に到達した浮体4に付着したウニ8は浮体4から離れ、浮体4はその浮力により浮き上がり再び浮体配置部5に戻り収納される。
【0056】
浮体4は、鋼材や生分解性プラスチックなどの経時変化により分解して消滅する、環境に悪影響を与えない素材からできている。
【0057】
囲い体6はそれのみを製造して、既存の人工藻礁や海藻を育成したい場所に設置するなどの藻食動物侵入防止囲いとしてなるものもよい。
【0058】
メッシュをウニが登ることはできないが、メッシュを支持する支柱などをウニが付着し登るので、このような部位に個別に浮体配置部を設け浮体を配置する部分配置も、浮体の数を少なくでき経済的で良い。
【0059】
なお、この海藻育成囲い1において、藻場造成礁3が内部に形成されていることは必須とならない。
【0060】
図2は、さらにこの囲い体6の内部に石材20を入れるようにしてもよい。これにより海藻2に加えて、さらにアワビ9等の貝類をも、この海藻育成囲い1内で育成することが可能となる。
【0061】
以下の実施の形態の説明において、前述した実施の形態の構成と同じ構成には同じ符号を付しその説明を省略する。
【0062】
<第2の実施の形態>
図3に示す本発明を実施するための第2の実施の形態において前記第1の実施の形態と主に異なる点は、浮体を正四角体からなる浮体10とし、浮体10の通し孔(図示せず)に通された棒体や張られたワイヤなどの支持案内部材11を設けてなる囲い体12を形成した点にある。
【0063】
浮体配置部13は前方の流出防止壁を設けない構成となっている。
【0064】
浮体10は支持案内部材11により沈み浮き移動可能に支持され、ウニ8が浮体10にとりつくと支持案内部材11に支持されながら沈み移動し、沈んだ浮体10はウニ8が離れると自らの浮力により支持案内部材11により支持案内されながら浮き上がり浮体配置部に戻るようになっている。
【0065】
浮体は球体より多角体や凹面部を有すものの方がウニが吸着し易い。
【0066】
<第3の実施の形態>
図4に示す本発明を実施するための第3の実施の形態において前記第1の実施の形態と主に異なる点は、浮体を変形多角体からなる浮体15として、この浮体15を紐16で繋いで浮かせ状態で浮体配置部5に収納した囲い体17を形成した点にある。
【0067】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態における海藻育成囲い23につき説明をする。図5は、海藻育成囲い23における側面図であり、図6は、海藻育成囲い23における上面図である。
【0068】
これら図5、6に示すように、海藻育成囲い23は、互いに水平方向で交差するように配置された4本の転倒防止材29上に張り合わされた底板30上に構築される囲い体36からなる。
【0069】
この海藻育成囲い23は、底板30上の四隅において略鉛直方向に突設させた支柱24と、この支柱24の周囲において張設されたメッシュ26により、囲い体36を形成するとともに、略正方形状の領域からなり海藻やアワビ等を育成するための槽を囲い体36を内部に形成する。この囲い体36の外周側には、上述の浮体4を収納するための浮体配置部25が形成されている。
【0070】
なお、囲い体36の上面23aには、何らメッシュ等で覆われていない開口領域が形成され、さらに底板30には、略鉛直方向に向って延伸された1以上の棒体27が固着され、この棒体27は、固定金具28によりその根本部分を固定されつつ、上記開口領域からその先端を突出させてなる。
【0071】
棒体27は、海流によって流れてくる海藻を捕捉するためのいわゆる海藻捕捉用棒体である。この棒体27に捕捉された海藻は、海流の大きさや方向が変化した場合において、当該棒体27に沿って下方へ徐々に落下してゆき、囲い体36内へ到達することになる。即ち、この棒体27は、海流によって流れてくる海藻を捕捉する捕捉機能と、捕捉した海藻を囲い体36へと導く案内機能とを有することになる。なお、この棒体27は、この図5、6に示す例において、直径13mmとし、囲い体36の上面23aからその先端に至るまで400mmに亘り突出させた場合を想定しているが、これに限定されるものではなく、いかなる直径で構成してもよいし、また、先端が上面23aから突出するものであれば如何なる長さで構成してもよい。
【0072】
また、この棒体27は、この図6において、正方形状で示される領域内において5×5本で構成した場合を例に説明をしているが、これに限定されるものではなく、1本以上であればいかなる本数で構成してもよいし、また任意の縦横の比で構成される長方形状の領域において離散的に設けられていてもよい。さらに、この棒体27は、楕円、三角、円形を構成するように集合されていてもよい。また、この棒体27は略鉛直方向に延伸されている場合に限定されるものではなく、斜め上方に延伸されているものであってもよい。
【0073】
また、棒27の形状は、丸棒でも角棒でもよいが、流れてくる海藻をより捕捉しやすくるために、凹凸を形成させておくことが望ましい。また、この棒体27として異形棒鋼を用いるようにしてもよい。
【0074】
メッシュ26は、その網目が少なくともウニ8が外部から囲い体36内に侵入できないサイズに調整されるとともに、囲い体36内におけるアワビ等の稚魚が逃げられないようなサイズに調整されており、例えば20mm×20mmからなる網目のサイズで構成される。この囲い体36の外周囲につきメッシュ26を張設することにより、囲い体36内へ海水をよりスムーズに流すことが可能となる。ちなみに、海流によって流れてきた海藻は、このメッシュ26によっても捕捉されることになる。
【0075】
転倒防止材29は、海流により海藻育成囲い23が転倒してしまうのを防止すべく配設されるものであり、例えば囲い体36の周囲から外部へ向って長さ約450mmに亘り延設された、断面が50mm×50mmのサイズで構成される角柱で構成されていてもよい。
【0076】
このような構成からなる海藻育成囲い23において、メッシュ26や支柱24に付着しながら登ってくるウニ8は、上述と同様に浮体配置部25に収納された浮体4に付着することにより、海水の比重よりも重くなることから沈んでいくことになる。ウニ8とともに下に沈んだ浮体4は、ウニ8が離れることにより海水の比重よりも軽くなり、浮力により浮き上がり、再び浮体配置部25に収納されることになる。かかる動作が繰り返される結果、ウニ8の囲い体36内への侵入を防止することが可能となる。ちなみに、この浮体配置部25の裾をより広くすることにより、ウニ8が離れた浮体4がより確実に納めることが可能となる。
【0077】
また、棒体27に捕捉された海藻が囲い体36内部へと案内される結果、囲い体36内において育成すべき生物の飼料としてこれを活用することが可能となる。ちなみ、この海藻育成囲い23では、石が充填されないことから、あくまで海藻を育成することを前提として説明しているが、海藻に限らずいかなる生物を育成してもよいことは勿論である。
【0078】
なお、海藻育成囲い23は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、例えば図7に示すように囲い体36内部に石材41を充填させた藻場造成礁40に適用してもよい。
【0079】
即ち、この石材41を充填することにより、アワビがより成育しやすい環境を作り出すことが可能となる。この石材41に生息するアワビの稚貝は、棒体27により捕捉された海藻を餌として摂取することができる。また、この藻場造成礁40の囲い体36内において、更に海藻を育成することにより、アワビの稚魚が大きくなるに連れて、かかる育成した海藻をも餌にすることが可能となる。
【0080】
また、この石材41を充填することにより、これが重りとして囲い体36に作用するため、囲い体36自身が海流により転倒し、或いは移動するのを防止することも可能となる。ちなみに、この石材41は、図7に示すように囲い体36内部に亘り充填されていてもよいし、囲い体36の内郭に設けられた図示しない枠の中に充填されていてもよい。
【0081】
なお、この石材41の代替として、貝をコンクリートで固めた培養ユニットや、段差が設けられた棚を用いることにより、同様にアワビの稚魚を育成することが可能となる。また、アワビに限らず、牡蠣等の他の貝類を育成してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は人工藻礁を製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態の概観図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の部分図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の部分図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態の断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態の上面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態における他の構成例につき説明するための図である。
【符号の説明】
【0084】
1 海藻育成囲い
2 海藻
3 藻場造成礁
4 浮体
5 浮体配置部
6 囲い体
7 メッシュ
8 ウニ
9 アワビ
10 浮体
11 支持案内部材
12 囲い体
13 浮体配置部
15 浮体
16 紐
17 囲い体
18 基礎
23 海藻育成囲い
24 支柱
25 浮体配置部
26 メッシュ
27 棒体
28 固定金具
29 転倒防止材
30 底板
36 囲い体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻を育成するための藻場造成礁に、ウニや巻貝等の海藻を餌とする藻食動物が侵入するのを防止する藻食動物の藻場造成礁侵入防止方法であって、
とりついた藻食動物の重量により沈む浮体を前記藻場造成礁の周りに予め多数配置し、藻食動物がとりついた前記浮体は、当該藻食動物とともに沈み、
前記沈んだ浮体のうち藻食動物が離れた浮体は前記藻場造成礁の周りへ戻ること
を特徴とする藻食動物の藻場造成礁侵入防止方法。
【請求項2】
海底に配置された囲い体と、
前記囲い体の周囲において浮体を多数配置させた浮体配置部とが設けられてなり、
前記浮体にウニや巻貝などの海藻を餌とする藻食動物がとりつくと、前記浮体にとりついた藻食動物が該浮体とともに沈むことを特徴とする海藻育成囲い。
【請求項3】
前記囲い体により囲まれた領域には、海藻を育成するための藻場造成礁が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の海藻育成囲い。
【請求項4】
浮体は、該浮体に通された棒体や張られたワイヤなどの支持案内部材により沈み浮き移動可能に支持され、藻食動物が前記浮体にとりつくと前記支持案内部材に支持されながら沈み、藻食動物が離れると、自らの浮力により前記支持案内部材により支持案内されて浮き上がり、浮体配置部に戻るようにしてなることを特徴とする請求項2又は3記載の海藻育成囲い。
【請求項5】
浮体は、紐体で繋がれて配置されてなることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項記載の海藻育成囲い。
【請求項6】
浮体は、鋼製、生分解性プラスチック、木製などの経時で劣化等でなくなる物で形成されてなることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項記載の海藻育成囲い。
【請求項7】
浮体を配置する浮体配置部が藻場造成礁本体の外壁に設けられてなることを特徴とする請求項2〜6の何れか1項記載の海藻育成囲い。
【請求項8】
前記囲い体の底面から上方に向って延伸された流れ藻捕捉用棒体をさらに備え、
前記海藻捕捉用棒体は、前記囲い体の上面に形成された開口領域からその先端を突出させてなることを特徴とする請求項2〜7の何れか1項記載の海藻育成囲い。
【請求項9】
前記囲い体の内部には、石材やコンクリートブロック等のブロック材が充填されてなることを特徴とする請求項2〜8の何れか1項記載の海藻育成囲い。
【請求項10】
少なくとも前記囲い体並びに前記浮体配置部は移動可能であること
を特徴とする請求項2〜9の何れか1項記載の海藻育成囲いを含む藻場造成礁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−109727(P2006−109727A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298785(P2004−298785)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000006839)日鐵建材工業株式会社 (371)
【Fターム(参考)】