説明

虚血に対する診断マーカー

【課題】本発明は、虚血の診断およびモニタリングにおける、虚血組織に由来していない分子の血液および/または他の体液中における濃度測定の使用方法を提供する。
【解決手段】本発明は、虚血組織には由来しないが、血液ならびに他の体液中の濃度は、虚血状態の結果として、変化する分子の濃度を測定することによって、これに限定されるものではないが、心筋虚血および脳虚血を含む、虚血の診断ならびにモニターに利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、虚血組織には起因していないが、虚血状態の結果として、血液および他の体液中でその濃度が変化する分子の濃度を測定することによって、これに限定されるものではないが、心筋ならびに脳の虚血を含む虚血の診断およびモニターすることに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
関連技術の説明
虚血は、血流の低下である。この低減は、これに限定されるものではないが、血栓症、塞栓症、動脈瘤、痙攣、または変質に因る血管の崩壊を含む、様々な理由で起こる可能性がある。そうでなければ、栄養供給を受けるべき組織は、血流の低下のために、最早、細胞の本来の状態を維持する上で、十分な滋養物を受け取ることができない可能性があり、さらに、細胞老廃物を十分な量除去できない可能性もあり、そして、また、酸素や二酸化炭素などの血液ガスの不十分な交換に陥る可能性もある。細胞に対する十分な酸素の移送不能(低酸素症)も、虚血と同じ結果の多くを有する可能性があり、そして、本発明がまさに提唱しようとする方法によって検知することができる。
【0003】
虚血が十分な時間持続した際、すなわち、酸素に富んだ血流の復旧がなされないならば、その際、該血流によって通常は潅流される、組織の細胞が死に始める。これは長時間をかけて徐々に起こる可能性があり、その生体の機能が著しく損なわれるような十分な細胞破壊が起こるまで気づかれない可能性がある。一例は、糖尿病において起こる四肢または他の身体部分への漸進的な血行の低下であろう。血流の遮断は、より急性に起こる可能性もある。これには、それに限定されるものではないが、冠状動脈を通る血流の低下をもたらす血栓形成、脳虚血における塞栓症の滞留、ならびに腎臓および四肢における同様な事象が含まれる。
【0004】
漸進的または急性の時間的経過において、より早期に虚血/低酸素状態を検出することができ、そして、より早く緩和治療を適用できれば、それだけ組織および生体における予後はより良いものとなるであろう。例えば、四肢における糖尿病性虚血の早期検出により、切断が回避される可能性があり、また、心臓または脳の急性閉塞の早期検出および緩和は、死亡率および罹患率を著しく低減させる。
【0005】
残念ながら、虚血/低酸素症の早期検出は、多くの場合、可能ではない。例えば、急性冠症候群の主要な早期診断ツールであるECGは、40%未満の感度である。卒中患者に対しては、利用できるツールは、CTスキャンまたはMRIだけであり、いずれも、徴候を発した後、最初の数時間に、患者が出血を有しているかどうかの判定が可能なのみである。虚血性脳卒中の唯一の治療、血栓溶解療法を施すには遅すぎる、遥か後になって、これらの画像診断法は、ようやく、虚血性脳卒中が起こったかどうかを判定することができる。血栓溶解療法は、徴候の3時間以内に施さなければならない。他の器官に関しては、虚血を早期検出する十分に確立された手法はない。従って、患者の診断および治療をするための、感度が良く、正確で、迅速な虚血の試験が求められている。
【0006】
細胞が死に始める(壊死)、虚血の最終段階において、細胞はその内容物の一部を血中に放出する可能性がある。これらは、主として、内容物を封じ込める正常な防壁、細胞膜が、死に伴う生化学的変化によって損傷されるために放出される細胞内タンパク質である。多くの場合、これらの分子は、組織特異的であり、例えば、心臓の場合、心筋トロポニンである。これらの分子は、疾患の存在を正確に反映するが、一般に、血中で有意な濃度に達するまでには、症候が起こった後、数時間を要し、また、それらは、死んだ細胞、または死にかけている細胞からのみ放出される。従って、感度および確度に加えて、虚血の試験における重要な要点は、壊死より十分前に虚血状態を検出できる能力であろう。
【0007】
壊死のマーカーである、虚血組織由来の分子の放出に加えて、虚血の発症は、虚血組織に由来していない、血液または他の体液中における分子濃度の変化をもたらし得る、一連の生化学的変化を生じさせる可能性がある。これらを、本発明において、虚血マーカーと呼ぶ。例えば、虚血組織が、その後非虚血組織によって異なる分子へと変換される分子を産出する、あるいは、虚血組織が、非虚血組織由来の、異なる分子の体液への放出を活性化する分子を産出する際に、虚血マーカーの産出が起こり得る。この例は、虚血性心組織または脳組織による、ノルエピネフリン、TNFα、およびナトリウム利尿ペプチドの生成である。生成された際、ノルエピネフリン、TNFα、およびナトリウム利尿ペプチドは、血中の遊離脂肪酸の上昇をもたらす、脂肪組織における脂肪分解を活性化する。他の例では、虚血心筋層から放出されたスフィンゴシンは、血小板において、スフィンゴシン−1−リン酸に変換され、その後、血中で検出される可能性がある(Yatomi等(1997)Journ.Biol.Chem.vol.272:5291〜5297頁、米国特許第6,210,976号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,210,976号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Yatomi等(1997)Journ.Biol.Chem.vol.272:5291〜5297頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
疾患の存在を診断することに加えて、虚血マーカーの濃度は、将来の有害な事態のリスクを予示する可能性がある。さらには、十分な濃度にある、これらの分子は、それ自体、有害な結果をもたらす細胞作用を媒介する可能性がある。例えば、外見上健康な男性の大規模な長期間の研究では、正常な範囲内ではあるものの、全血清遊離脂肪酸(FFA)の濃度上昇は、22年後の突然死のリスク上昇に関連することが明らかにされた。この死亡率の上昇は、FFA誘発性心不整脈の結果であると推測された。他の例では、急性心筋梗塞を罹患している患者における、グルコース・インスリン・カリウム(GIK)配合物の使用は、GIKを処方されていない患者と対比して、死亡率に有意な低減を生じた。この有益な効果に関する1つの説は、GIKによって生じた、血清中の全FFAの低減である。従って、疾患の長期のリスクを評価し、また、慢性的な虚血状態となり得るものと関連するリスクの上昇を低減するための、治療的処置の種類の決定を助けるために、虚血マーカーのモニターを可能とすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、虚血の診断およびモニタリングにおける、虚血組織に由来していない分子の血液および/または他の体液中における濃度測定の使用を記載する。これらの分子は、虚血マーカーと呼ばれる。非虚血状態と比較して、これらの虚血マーカーの濃度変化は、ある種の虚血を示すものである。
【0012】
一形態において、本発明は、
哺乳動物における虚血を表す健康状態を探知する方法であって、
(a)該哺乳動物の体液由来の検査試料中の虚血マーカー濃度を測定する工程; および
(b)該検査試料中の、測定された前記虚血マーカーの濃度が、該哺乳動物における虚血と互いに関連するかを判定する工程を含んでなる方法をもたらす。好ましい実施態様において、哺乳動物は、ヒトである。試験試料に用いる体液は、これに限定されるものではないが、血液、血清、血漿、唾液、胆汁、胃液、脳脊髄液、リンパ、間質液、または尿を含む群から選択することができる。好ましい実施態様において、試験試料に用いる体液は、血液である。
【0013】
一実施態様において、虚血マーカーは、脂質である。この脂質は、これに限定されるものではないが、スフィンゴリピド、リソリピド、糖脂質、ステロイド、ならびに、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、およびトロンボキサンを含むエイコサノイドを含む群から選択することができる。一実施態様において、虚血マーカーとして用いるスフィンゴリピドは、スフィンゴシン、あるいは、例えば、セラミド(Cer、N−アシルスフィンゴシン)、スフィンゴシン−1−リン酸、スフィンゴシルホスホリルコリン、またはジヒドロスフィンゴシンを含むその代謝産物であってよい。より好ましい実施態様において、脂質は、脂肪酸である。
【0014】
開示される方法は、これに限定されるものではないが、心臓、脳、腎臓、または四肢を含む、器官または組織の何れかにおける、虚血の検出のために利用することができる。
【0015】
本発明の一実施態様においては、水性緩衝液に可溶性である、虚血マーカーの成分が検出される。別の実施態様においては、水性緩衝液に可溶性でない、虚血マーカーの成分が検出される。
【0016】
該虚血マーカーは、これに限定されるものではないが、UV/VIS、赤外線、マイクロ波、放射線、吸収、または発光分光器を含む分光学的手段によって検出されてもよい。これに限定されるものではないが、HPLC、低圧クロマトグラフィ、中圧クロマトグラフィ、およびガスクロマトグラフィを含むクロマトグラフィ手法も本発明に包含される。スピン標識を用いる電子スピン共鳴による虚血マーカーの検出も本発明に包含される。別の実施態様において、虚血マーカーは、抗体または受容体分子、イムノアッセイあるいは酵素アッセイによって検出されてもよい。
【0017】
好ましい実施態様において、この方法は、虚血の症候を示している哺乳動物を選択する最初の工程を含むことができる。いくつかの実施態様において、この方法は、さらに、前記哺乳動物において、虚血マーカーの濃度が虚血と相関する際には、抗虚血治療を施す工程を含むこともできる。抗虚血療法には、血清脂肪酸の濃度を低下させる手段が含まれてもよい。いくつかの実施態様においては、該抗虚血療法は、再潅流療法、抗血栓溶解療法、脈管形成療法、または手術である。
【0018】
いくつかの実施態様において、判定工程は、前記虚血マーカーの前記測定された濃度と、前記マーカーの濃度の規定値との間の比較である。いくつかの実施態様において、マーカー濃度の規定値は、非虚血状態を示すものである。
【0019】
一実施態様において、虚血マーカーは、非結合または水溶性遊離脂肪酸である。好ましい実施態様において、非結合または水溶性遊離脂肪酸は、脂肪酸を結合するタンパク質によって検出される。好ましい実施態様において、非結合または水溶性遊離脂肪酸を結合するタンパク質は、蛍光性であり、脂肪酸が結合している際には、結合していない際とは、異なっている蛍光を示す。いくつかの実施態様において、該タンパク質は、約13,000〜16,000ダルトンの間の分子量を有する、細胞内の脂肪酸結合性タンパク質(FABP)のファミリーの1種である。好ましい実施態様において、FABPは、ラット腸FABPである。好ましい実施態様において、このFABPは、27位において、アクリロダンで共有結合的に標識されている。より好ましい実施態様において、アクリロダン標識のFABPは、ロイシン72をアラニンへの変異体である。
【0020】
いくつかの実施態様において、非虚血集団に基づき決定された非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度の平均値よりも、2標準偏差単位を超えて高い非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示すものである。いくつかの実施態様において、非虚血集団に基づき決定された非結合または水溶性遊離脂肪酸レベルの平均値の約2倍を超える非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示すものである。いくつかの実施態様において、約5nMより高い非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示すものである。
【0021】
別の実施態様において、非結合または水溶性遊離脂肪酸を結合するタンパク質は、アルブミンである。好ましい実施態様において、該アルブミンは、7−ヒドロキシクマリン、またはアントラニロイルで共有結合的に標識されている。
【0022】
別の実施態様において、虚血マーカーは、全遊離脂肪酸である。別の実施態様において、非虚血集団に基づき決定された全遊離脂肪酸濃度の平均値よりも、2標準偏差単位を超えて高い全遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示すものである。別の実施形態において、非虚血集団に基づき決定された全遊離脂肪酸濃度の平均値の約2倍を超える全遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示すものである。他の実施態様において、虚血マーカーは、全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比である。
【0023】
いくつかの実施態様において、非虚血集団に基づき決定された全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比の平均値よりも、約2標準偏差単位を超えて高い全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比は、虚血状態を示すものである。いくつかの実施態様において、非虚血集団に基づき決定された全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比の平均値の約2倍を超える全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比は、虚血状態を示すものである。
【0024】
一形態において、上記に従って虚血を探知する工程、そして、虚血マーカー濃度が、非虚血状態におけるマーカー濃度に向かっているかを判定する工程を含んでなる、虚血の治療に対する患者の応答を判定する方法が記載される。一実施態様において、この治療は再潅流療法であり、これに限定されるものではないが、血管形成術、または血栓溶解剤の投与が含まれる。
【0025】
一形態において、再潅流療法を受けた後も、出血リスクの高い患者を判別する方法であって、
該患者由来の体液試料中の脂質成分濃度を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、該閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、再潅流療法後の出血の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法が記載される。好ましい実施態様において、脂質成分は、非結合遊離脂肪酸、全遊離脂肪酸、ならびに全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比を含む群から選択される。
【0026】
一形態において、虚血現象の後、3年以内の死亡リスクの高い患者を判別する方法であって、
該患者由来の体液試料中の脂質成分濃度を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、該閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、虚血現象後、3年以内の死亡の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法が記載される。好ましい実施態様において、脂質成分は、非結合遊離脂肪酸、全遊離脂肪酸、ならびに全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比を含む群から選択される。
【0027】
一形態において、出血リスクの高い患者を判別する方法であって、
該患者由来の体液試料中の脂質成分を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、該閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、出血の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法が記載される。好ましい実施態様において、脂質成分は、非結合遊離脂肪酸、全遊離脂肪酸、ならびに全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比を含む群から選択される。
【0028】
本発明の他の形態において、再潅流療法を受けた後の出血リスクの高い患者を治療する方法であって、
上記の方法を用いて、再潅流療法を受けた後の出血リスクの高い患者を特定する工程;および
前記高リスクの患者を抗虚血療法によって治療する工程を含んでなる方法が記載される。一実施態様において、抗虚血療法は、グルコース・インスリン・カリウム組成物およびアルブミン組成物を含む群から選択される。
【0029】
他の形態において、虚血現象後、3年以内の死亡リスクの高い患者を治療する方法であって、
上記の方法を用いて、虚血現象後3年以内の死亡リスクの高い患者を特定する工程;および
該高リスクの患者を抗虚血療法によって治療する工程を含んでなる方法が記載される。一実施態様において、抗虚血療法は、グルコース・インスリン・カリウム組成物およびアルブミン組成物を含む群から選択される。
【0030】
他の形態において、出血リスクの高い患者を治療する方法であって、
上記の方法を用いて、出血リスクの高い患者を特定する工程;および
該高リスクの患者を抗虚血療法によって治療する工程を含んでなる方法が記載される。一実施態様において、抗虚血療法は、グルコース・インスリン・カリウム組成物およびアルブミン組成物を含む群から選択される。
【0031】
一形態において、非急性期患者における長期リスクを評価する方法であって、
該患者由来の体液試料中の脂質成分濃度を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、該閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、死亡の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法が記載される。好ましい実施態様において、脂質成分は、非結合遊離脂肪酸、ならびに全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比を含む群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】急性心筋梗塞(AMI)を患う患者の、心筋梗塞における血栓溶解II(TIMI II)研究で得られた血液試料中の非結合遊離脂肪酸濃度を示す図である。症候の発現から4時間以内に救急部へ現れた患者のみが、この研究に含まれる。ヒストグラム図は、250人の第一群の各患者に関する、ADIFAB2を用いて測定した、時刻0(救急部に入院時)、50分、5時間、および8時間経過時点での採取血液中の[FFAu]測定の結果を示す。
【図2】AMIを患う患者の、TIMI II研究におけるFFAuの結果を示す図である。ヒストグラム図は、ADIFAB2を用いて測定した、250人の第二群の患者に関する結果を示す。この結果は、図1中の250人の第一群の患者に関するものと実質的に一致している。
【図3】時刻0(受け入れ時)(黒塗り四角、−■−)、および4時間経過時点(黒塗り三角、−▲−)での、TIMI IIの患者におけるクレアチンキナーゼ(CK)濃度を示す図である。値は、群1および2に相当する患者に関して、TIMIの研究者によって測定された。健常者の上限値は、各日の測定および各研究部署において、都度測定した(白抜き四角、−□−)。
【図4】TIMI IIの患者における受け入れ時の[FFAu]値に付随する、死亡率の上昇を示す図である。この群の500人の患者中、約400人が入院時に採血を受けた。FFAu濃度を区分し、4分割区分のそれぞれの死亡数を求めた。結果は、最低から最高の4分割区分までに2倍を超えて、上昇する、正の相関を示す(p<0.042)。各4分割区分の[FFAu]中心値を、棒グラフ内に示す。
【図5】TIMI IIの患者における、受け入れ時の[FFAu]と重症な出血現象との相関を示す図である。FFAu値の各4分割区分毎の重症な出血現象の数を示す。棒グラフ内の数字は、単位nMで示す[FFAu]中心値である。結果は、p<0.01で、最低から最高の4分割区分までにおいて、3倍を超えるリスクの上昇を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のさらなる形態、特徴、および利点は、以下の好ましい実施態様の詳細な記載から明らかとなるであろう。

本発明のこれらのならびにその他の特徴を、好ましい実施態様の図面を参照して、記載するが、それらは本発明を例示することを意図するもので、限定するものではない。
【0034】
(好ましい形態の詳細な説明)
記載される態様は、本発明の好ましい実施形態を代表するが、当業者には本発明の要旨から逸脱することなく、変更がなされ得ることは理解される。従って、本発明の技術的範囲は、添付の請求の範囲によってのみ定められる。
【0035】
本発明は、虚血の診断およびモニタリングにおける、虚血組織に由来していない分子の血液および/または他の体液中における濃度測定の使用を記載する。これらの分子は、虚血マーカーと呼ばれる。非虚血状態と比較して、これらの虚血マーカーの濃度変化は、ある種の虚血を示すものである。マーカーは、ある部分は、虚血組織に起源している場合であっても、その部分は、試料中に存在しているマーカーの少数部分、例えば、20%、10%、5%、2%、1%、またはそれ未満である限り、虚血組織に由来しているとは見做さない。
【0036】
一実施態様において、虚血マーカーは、脂肪酸などの脂質成分である。全脂肪酸は、参照により本明細書の一部とする、米国特許第4,071,413号、第5,512,429号、第5,449,607号、および第4,369,250号に教示されているものなど、当分野で周知の手法によって定量することができる。これらの手法によって得られた全脂肪酸の濃度は、個体における虚血状態を探知するために、正常な個体から得られた濃度と比較してもよい。好ましい実施態様において、全脂肪酸のアルブミンに対する比を決定した上で、正常な集団と比較する。
【0037】
他の実施態様においては、以下に記載の通り、体液中の非結合遊離脂肪酸濃度が測定される。非結合遊離脂肪酸(FFAu)は、水相に可溶な遊離脂肪酸の部分である。大半の体液中において、遊離脂肪酸(FFA)は、大部分は、タンパク質、例えば、アルブミン、ならびに膜に結合しているが、重要な少数部分は、非結合(FFAu)であり、水相に可溶である。FFAuは、水溶性遊離脂肪酸とも呼ばれる。
【0038】
体液は、脳脊髄液、血液、血清、血漿、尿、唾液、リンパ、胃液、間質液、または胆汁を含む群から選択することができる。好ましい実施態様においては、試験試料に利用する体液は、血液から採取される。
【0039】
一実施態様においては、無症候性集団と対比した、体液中の非結合遊離脂肪酸(FFAu)濃度の指標を提供するアッセイの何れもが、虚血状態を探知するための診断方法において、利用することができる。好ましくは、閾値は、虚血状態を有さない正常集団に基づき決定する。一実施態様においては、閾値は、虚血状態を有さない対照集団の体液中のFFAu濃度よりも有意に高い、体液中のFFAu濃度である。一実施態様においては、閾値は、虚血状態を有さない対照集団の体液中のFFAu平均濃度よりも、少なくとも約2標準偏差高い、体液中のFFAu濃度である。他の実施態様においては、体液中のFFAuの閾値濃度は、少なくとも約5nMである。他の実施態様においては、体液中のFFAu閾値濃度は、虚血状態を有さない対照集団の体液中のFFAu平均濃度の少なくとも約2倍である。
【0040】
本発明の方法は、選択された患者集団に適用する際、特に有用である。従って、一実施態様において、該方法は、糖尿病患者、または手術患者、あるいは家族性あるいは生活危険因子を有する患者など、虚血に対するリスクのある個体に由来する試料に適用される。他の実施態様においては、該方法は、虚血に一致する徴候、または虚血症状を示す患者、あるいは虚血を有することが懸念される患者に適用される。選択可能な患者の特定の部分集団には、心虚血、脳虚血、腎虚血、四肢虚血、または臨床的に重要な他の虚血に一致する症候を有する患者が含まれる。該方法は、ある特定の型の虚血に一致する、または一致しない症候を示す患者に、選択的に適用することができる。非限定的な例は、心虚血以外の虚血症候、または脳虚血以外の症候、あるいは末梢または糖尿病関連虚血以外の症候を有する患者の選択である。本発明の方法は、同様に、適切な患者集団を選択することによって、心筋梗塞のない心疾患患者における虚血を探知するために利用することができる。本発明の方法の何れにおける、一実施態様において、患者は、哺乳動物であり、特定の実施態様において、患者はヒトである。
【0041】
本発明の更に他の形態において、本発明の方法は、さらに治療工程を含む。すなわち、患者は、本明細書中に論じるマーカーの1つの上昇によって表される、虚血状態に対して、先ず検査される。マーカー濃度が上昇している患者は、次いで、何れかの適切な種類の抗虚血療法、例えば、再潅流療法、抗血栓溶解療法、脈管形成療法、手術などによって処置される。例えば、患者は、好適には、虚血発症または症候より10時間、7時間、5時間、または3時間以内に検査されることができ、次いで、検査から3時間、2時間、好ましくは1時間以内に抗虚血療法を受けることができる。
【0042】
一実施態様において、本発明は、蛍光標識した脂肪酸結合性タンパク質(FABP)を利用して、FFAu分子の蛍光標識FABPへの結合に伴う蛍光のシフトを定量的に検出することによって、虚血状態に関連する体液試料中の非結合遊離脂肪酸(FFAu)の量増加を測定する。血清中で、遊離脂肪酸(FFA)は、大部分アルブミンに結合しているが、重要な少数部は、非結合(FFAu)であり、水相に可溶である。本発明は、参照により本明細書の一部とする、米国特許第5,470,714号に実質的に記載されるような方法を利用する。多様なFABPおよび蛍光標識が、血液などの体液中のFFAu濃度検出において、利用可能である。これには、それに限定されるものではないが、ラット腸FABP(I−FABP)、ヒト脂肪細胞FABP(A−FABP)、およびラット心臓FABP(H−FABP)が含まれる。1つまたは複数のアミノ酸残基が改変されている(挿入、削除、および/または置換されている)、これらのFABPの部位特異的変異体もこの方法に有用であり、例えば、I−FABPの27、81、82、84位のCys置換、I−FABPの残基72のAla置換、ならびにH−FABPの残基27のLys置換が含まれる。FABP分子は、これに限定されるものではないが、アクリロダン、アンジルアジリジン、4−[N−[(2−ヨードアセトキシ)エチル]−N−メチルアミノ]−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾールエステル(IANBDE)、および4−[N−[(2−ヨードアセトキシ)エチル]−N−メチルアミノ]−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(IANBDA)を含む、様々な公知の標識を用いて蛍光標識することができる。本発明の実施において、遊離脂肪酸を結合した際、測定可能な相違が検出される限り、何れの標識を利用することができる。例えば、波長、シグナル強度、分極、または寿命における相違をモニターしてもよい。利用することのできる標識の更なる例には、これに限定されるものではないが、吸光度または光学活性における変化を起こす発色団、およびその変化が電子スピン共鳴によって検出可能なスピン標識が含まれる。好ましい実施態様においては、該蛍光標識FABPは、アクリロダン修飾・組換えラット腸脂肪酸結合性タンパク質(ADIFABと略称する)である。アクリロダンによる修飾は、実質的に、前に記載されている(米国特許第5,470,714号、およびRichieri G.V.等、J.Biol.Chem.(1992)276:23495〜23501)公知の方法を用いて実施したが、さらに、ADIFABは市販され入手可能である(FFA Sciences LLC、San Diego、CA)。FFAuの濃度は、蛍光標識脂肪酸結合性タンパク質(FABP)に対するFFAuの結合によって決定することが可能である。FFAが蛍光標識FABPに結合してない際には、異なる蛍光が示される。FFAuの濃度は、蛍光の差異により決定することが可能である。蛍光標識FABPによって発光される波長は、用いる標識およびタンパク質に依存する。一実施態様において、標識がアクリロダンである場合、タンパク質はI−FABP、または72位でLeuがAlaに置換されたI−FABPである。これらの種は、それぞれADIFAB、およびADIFAB2と呼ばれる。
【0043】
簡単に述べると、ADIFAB2は次のように得た。先ず、Ala72変異および適切な相補端を保持する制限断片を、I−FABPcDNA配列(Alpers等(1984)Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.81:313〜317)の211位のSalI部位および部位特異的突然変異誘発によって導入された291位のPmeI部位に及ぶ野生型制限断片と置換した。所望の配列を有する相補的な合成オリゴヌクレオチドを部分的にアニーリングし、1本鎖領域をDNAポリメラーゼによって「埋め」てKlenow断片とし、適切な末端を得るためにSalIおよびPmeIで消化することによって、この変異制限断片を構築した。Ala72置換したI−FABPcDNAをpET11ベクターに挿入し、BL21(DE3)株中で発現させた。この変異I−FABPを、本質的にLowe等の方法(Lowe等(1987)J.Biol.Chem.262:5931〜5937頁)で精製し、大腸菌培養物1l当たり精製タンパク質約100mgを得た。前にADIFABについて記載されているように(参照により本明細書の一部とする、米国特許第5,470,714号を参照のこと)、アクリロダン修飾を行った。Lipidex−5000クロマトグラフィを用いて、遊離アクリロダンを除去した。
【0044】
ADIFAB2の結合親和力は、ADIFABより約10倍強いことが見出された。これらの蛍光標識FABPによる発光波長は、約420〜470nmである。蛍光標識FABPに結合したFFAに対する発光波長は、約495〜580nmである。開示したアッセイにおいて、当業者は容易に他の蛍光標識FABPで置き換え得ることが理解されるであろう。
【0045】
水性試料中のFFAu濃度を定量するアッセイは、FFAが結合していない際、該修飾FABPが蛍光を発する第1の波長から、FFAの分子が結合している際、該修飾FABPが蛍光を発する第2の波長への蛍光のシフトの強度を測定し、次いで、共に参照により本明細書の一部とする、米国特許第5,470,714号、およびRichieri等(1995)J.Lipid Research、vol.36:229〜240頁に記載の通りに、該2つの蛍光波長の強度比(「R」値)より、FFAuの濃度を決定する。簡単に述べると、この比は、次の式を用いて算出される。
【0046】
【数1】

【0047】
式中、I(1)およびI(1)blankは、それぞれ波長「1」において、ADIFABあるいはADIFAB2を含有する試料、ならびにADIFABまたはADIFAB2以外の全ての試薬を含むブランク試料に関して測定された蛍光強度であり、I(2)およびI(2)blankは、波長「2」における、対応する蛍光強度である。ADIFABに対しては、波長「1」は、好ましくは(絶対的にではない)495〜515nmの範囲であり、波長「2」は、422〜442nmの範囲である。蛍光強度の測定は、常法によって達成できる。当業者に認識される通り、適切な条件下では、上記の等式中のIblankの強度は、無視することが可能である。

正常で健康な個体で認められた体液FFAu濃度より上昇している体液FFAu濃度の定量的な検出は、虚血状態を診断するために利用することが可能である。一実施態様において、虚血状態は、虚血状態を有さない対照集団の体液試料中の非結合または水溶性遊離脂肪酸の濃度よりも、有意に高い体液試料中の非結合または水溶性遊離脂肪酸の濃度によって示唆される。一実施態様において、虚血状態は、体液試料中の非結合または水溶性遊離脂肪酸の平均正常濃度よりも、約2標準偏差超える体液試料中の非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度によって検出される。他の実施態様において、約5nMを超える非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示す。他の実施態様において、非虚血集団の体液試料に基づき決定された非結合または水溶性遊離脂肪酸の平均値の約2倍を超える体液試料中の非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示す。体液試料中の非結合または水溶性遊離脂肪酸の大幅に高くなっている上昇濃度を検出してもよい。
【0048】
本発明の診断方法は、虚血状態にある患者は、健康な個体における体液FFAuの正常濃度に比べて、血液などの体液中の、FFAuなどの脂質の上昇した濃度を示すという発見に基づいている。この診断方法は、任意の時点で実施することができるが、好ましくは、該検査は、虚血発症の24時間以内に行う。より好ましくは、試験は、虚血発症の10時間以内に行う。最も好ましくは、最も好ましくは、試験は虚血発症の3時間以内に行うことで、治療に着手できる。心虚血などの虚血症状に対する治療の多くは、効果を発揮するために、迅速に(数時間のうちに)着手しなければならない。一方、正確な診断がされていない治療は、患者にとって非常に有害であり得る。虚血状態を迅速に診断できることは、ここに記載の本発明の利点である。
【0049】
簡単に述べると、FFAuアッセイおよび判定は、次のように行った。血液試料を、緩衝液(20mMのN−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、150mMのNaCl、5mMのKCl、および1mMのNa2HPO4、pH7.4に調整)中で100倍に希釈し、血清アルブミン濃度を約6μMとする。ADIFABまたはADIFAB2を添加した脂肪酸を含まないアルブミンの溶液を、陰性対照とした。各ドナーについて、血清の2分液:1%血清の「バックグラウンド」または「ブランク」試料、およびADIFABまたはADIFAB2を添加した1%血清の「実験」試料を用意した。陰性対照、ブランク、および実験試料は、22℃または37℃で測定した。
【0050】
各試料に関して、ADIFABに対しては、約432nmと505nm、ADIFAB2に対しては、約450nmと550nmにおける、一対の強度の複数の測定値を採取して、ブランク試料の強度を減じた後、R値を決定した。各血清試料に関して、異なる日に、少なくとも2つの別個の測定を行い、FFAu濃度の平均値および標準偏差を求めた。測定の各群間における差異の確度を鑑定するために、平均値の差異を、スチューデントt検定を用いて評価し、0.05未満のp値を有意とみなした。
【0051】
ここに開示される虚血を探知する方法は、さらに、虚血マーカーの濃度を低減する処置を取る工程を含むことができる。さらに、本明細書に開示のように虚血を検出し、虚血マーカーの濃度が非虚血状態におけるマーカーの濃度に向かっているかどうかを判定することによって、虚血治療後の患者の予後を判定する方法をも、本開示に包含される。開示した方法は、さらに、これらのマーカーは潜在的な病的状態を反映し、かつ/または虚血マーカーはそれ自体が有害であるため、虚血マーカーの上昇に伴うリスクの評価をも含む。
【実施例】
【0052】
実施例1:救急部(ED)を訪れる、様々な形態の心筋虚血を有する患者においては、トロポニンIに先立って[FFAu]が上昇している
広範な「自然」虚血発作を罹患している患者の非結合遊離脂肪酸[FFAu]の濃度を定量するために、本発明者等は、Hennepin County Medical Center(Minneapolis、MN)の救急部(ED)を訪れる患者におけるFFAu濃度を測定した。試料は、29人の患者から、受け入れ時、および、その後数回採取した。これらの患者はそれぞれ、主としてST部分の変化によって、心虚血を有すると診断された。これらの患者の診断には、急性心筋梗塞(AMI)、うっ血性心不全(CHF)、不安定狭心症、心挫傷、心臓手術、高血圧、およびコカイン誘発性虚血が含まれる。心虚血と診断された患者の全てにおいて、FFAuは、正常者(本研究には、平均FFAu濃度が3nMである、48人の「正常な」患者も含まれている)よりも、平均して20倍高く、有意に上昇していた。
【0053】
この研究においては、9人のAMI患者を含む、何れの患者において、最も早期採取(ED受け入れ時)では、FFAu濃度は上昇していた(表)。対照的に、これら9人のAMI患者のうち7人は、受け入れ時には、心臓マーカー、トロポニンI(TnI)の上昇を示していない。これら7人の患者では、受け入れ後4時間〜32時間の間に、TnIが上昇した。さらに、大半の非AMI患者は、壊死前虚血のマーカーである[FFAu]と同じく、TnIレベルの上昇を示さなかった。
【0054】
これらの結果のもう一つの注目すべき特徴は、再潅流療法を行わない際には、FFAu濃度は、最初の虚血発症後、長い期間(数日間まで)上昇したままであることである(表)。すなわち、FFAuは、虚血発症に対して迅速に応答するが、(恐らくは、虚血の消散につれて)緩やかにしか基準値に戻らず、その結果、独特の長い診断可能な期間を提供する。
【0055】
【表1】

【0056】
これらの結果は、FFAuアッセイの潜在的な能力を示している。重篤な虚血発症を、現行の心臓マーカーが疾患を示唆するより、数時間から数日前に探知することが可能であり、より早期の処置、および患者予後の重要な向上の可能性を高める。

実施例2.心筋梗塞における血栓溶解II(TIMI−II)の試験における結果は、[FFAu]測定を用いるAMIの探知における高い感度および特異性を示す。
【0057】
急性心筋梗塞におけるFFAu応答について、より詳細な情報を得るために、本発明者等は、TIMI II試験(TIMI Study Group、New England Journal of Medicine(1989)vol.320、618〜625頁)の血液検体を利用した。これらの検体は、National Heart Lung Blood Instituteによって保存されていたものであり、本発明者等の虚血におけるFFAu濃度の研究に提供された。患者は、初期症候の4時間以内に胸痛によってEDを訪れ、ST部分の上昇を示した場合に、TIMI II試験に登録された。すべての患者は、登録の約10分以内に開始して、6時間かけて、静脈内に、100mg(処置患者3262人の90.5%)または150mg(処置患者3262人の9.5%)のt−PAを用いて処置した。血液試料を、受け入れ時(t−PA直前)、t−PA後50分、ならびにt−PA処置開始後5時間および8時間に採取した。約2500人の各患者に関して、かかる4つの試料の組を−70℃で保存した。各患者に関して、TIMIの研究者は、約825の臨床的、理学的、および化学的所見を記録した。
【0058】
最初の患者500人に対する結果は、急性心虚血とFFAu濃度と間の関係に重要な見識を提供する(試料は、試料1000個(患者250人)ずつ、個別便にて、受領した。図1および2は、それぞれ便1および2の結果を示す)(Kleinfeld等(2002)J.Am.Coll.Cardiol.39:312A)。
【0059】
受け入れ時の平均FFAu(ADIFAB2)値は、正常値(2.8±0.7nM)より14標準偏差を超えて高い、13nMであった。この結果は、虚血発症の初期において、[FFAu]が大いに上昇することを明瞭に例証する。5nMの区分を用いることによる、受け入れ時のFFAuを利用するAMI検出の予測感度は、91%であった(受け入れ時および50分時点のFFAuを用いると、感度は>98%に上昇する)。結果は、最初の2時点を含めたとき、患者の>98%(最初の1時点のみの場合は>91%)が、正常値より>3標準偏差高いFFAu濃度を有することを示す。
【0060】
同時に、0時点でのCK値は、概して正常の上限値未満である(図3)。受け入れ時のクレアチンキナーゼ濃度は19%未満の患者のみで上昇し、また、これらの患者においても、該検査の正常の上限値よりも平均して、<50%高いのみで、上昇は小幅であった。受け入れ後の4時間まで、大多数の患者において、クレアチンキナーゼ濃度は実質的に上昇しなかった。
【0061】
50分の時点で、平均FFAu(22nM)は、既に上昇している初期値よりも実質的に高い。これらの試料は、t−PA投与の約50分後に得た(図1および2)。この有意により高い平均FFAu濃度は、再潅流作用、および時間の増加に伴う虚血の媒介する[FFAu]の上昇を反映している可能性がある。いずれの場合においても、5時間および8時間でのFFAu濃度は再潅流に従って有意な減少を示すので、この時間的経過はt−PA処置によって突然に変化するように思われる。8時間での平均値は、受け入れ時のFFAu濃度より有意に(p<0.05)低い。再潅流療法を受けなかったHennepinの研究におけるAMI患者は、[FFAu]が24時間を超える間上昇したままであったことを示すので(データは示していない)、この二相応答は再潅流と相関するように思われる。FFAuが再潅流に応答して上昇し、次いで、5時間以内に低減する可能性があるという知見は、FFAu濃度は再潅流療法の成功を評価するために利用できるかもしれないことを示す。
【0062】
これらの患者の[FFAu]応答は、この病変の内因的で、独自な特性であるように思われる。図1および2は、それぞれ4つの異なるサンプリング時間における[FFAu]分布の測定は、患者250人ずつの2つの異なる組の分布に関して実質的に同一のパラメータを与えることを示す。便1および2内の試料は、2組の異なる患者である。さらに、確認された心筋梗塞を有さない約3.3%の患者のほとんどでは、[FFAu](50分)≦[FFAu](受け入れ時)であるが、確認された心筋梗塞を有する、ほぼ全ての患者は、FFAu(50分)>[FFAu](受け入れ時)を示した。

実施例3.受け入れ時のTIMI−II試験の試料における[FFAu]の高濃度は、受け入れ3年後の高い死亡率に相関する。
【0063】
受け入れ時の[FFAu]値は、2倍を超える死亡率の上昇に相関する。受け入れ時に採取した検体(500人の患者のうち約400人)の[FFAu]値を分類し、4区分に分割した。受け入れ後約3年までの、任意の原因による死亡数を、各4区分について数えた。死亡の主たる原因(75%)は心血管疾患であった。結果は、p値<0.025で、最小の4分画区分から最大の4分画区分までで、2倍を超える死亡率の上昇を示す(図4)。対照的に、心臓マーカー、クレアチンキナーゼは、これらの患者のほとんど(>80%)で、受け入れ時に正常であった(図3)。さらに、[FFAu]値は、受け入れ時の、年齢、性別、人種、体重、他の疾患、投薬、または最高血圧に相関しなかった。これらの結果は、他の診断項目に加えて、ED受け入れ時に測定されたFFAu濃度は、死亡リスクに従って、患者を区分するために利用できることを示している(Kleinfeld等(2002)J.Am.Coll.Cardiol.39:312A)。

実施例4.受け入れ時のTIMI−II試験の試料における、高濃度の[FFAu]はt−PA療法後の重症出血率の上昇に相関する。
【0064】
受け入れ時の[FFAu]は、さらに、t−PA療法後の重症出血発症率の増加を予測する。死亡率(実施例3)と類似する分析を、重症出血発症に関しても行った。重症出血発症を経験した患者数を、各4区分に関して求めた(図5)。結果は、p値<0.01で、受け入れ時(t−PA投与の開始前)における[FFAu]値分布の最小の4分画区分から最大4分画区分までで、3倍を超える重症出血発症率の上昇を示す。これらの結果によって提示される一つの可能性は、t−PAによって媒介される出血の頻度は、FFAu濃度が低減されたならば、減少する可能性のあることである。
【0065】
図4および5の結果は、FFAuレベルの上昇が直接的かつ独立に死亡率および出血率の上昇に寄与するかどうかは示していないが、多数のin vitroの研究は、FFAの上昇が多くの細胞機能の強力な攪乱因子であることを例証している。加えて、FFAの直接の役割に関する臨床的証拠は、それらの不整脈惹起性役割、および心血管疾患における潜在的役割を示す多くの研究によって強く示唆される。本発明者らのTIMI II試験に基づく結果も、また、[FFAu]が有害な結果を招く強力な独立要因であることを示唆する。従って、[FFAu]は、患者集団の人口統計を単純に反映せず、例えば、年齢、性別、人種、または体重と相関は認められなかった。さらに、受け入れ時の[FFAu]と、死亡率および出血イベントとの相関は独立性であると思われる。重症出血発症を経験した患者の死亡率は高かったが(全患者では11%であるのに対して、22%)、死亡のうち15%のみが、出血によるものであった。

実施例5.虚血患者におけるFFAの血液濃度は虚血組織に由来していない。
【0066】
ヒトの脳虚血および心筋虚血は、正常より7倍を超える血漿FFA濃度の上昇をもたらす(Kleinfeld等(1996)Amer.J.Cardiol.78:1350〜1354、Kurien等(1966)The Lancet 16:122〜127、Oliver等(1994)The Lancet 343:155〜158)。また、FFAは、少なくとも摘出器官に関して、虚血組織の細胞内に蓄積することがよく知られている(Bazan等(1970)Biochim.Biophys Acta 218:1〜10、Van der Vusse等(1997)Prostaglandins,Leukotrienes and Essential Fatty Acids 57:85〜93)。しかしながら、この虚血組織によるFFAの産生は、虚血において観測される血漿FFAの上昇を説明できない。虚血組織によって産生されたFFAの量は、器官全体の完全虚血の条件下であっても、虚血患者に観測される7倍を超える増加は言うまでもなく、正常血漿FFA濃度に比べて無視できる量であるためである。例えば、正常条件下で、血漿FFAは2分毎に転換し、これは約500μMの(正常)血漿全[FFA]では、約0.2gFFA/分に換算される。虚血組織で産生されるFFAは、リン脂質に由来し(Bazan等(1970)Biochim.Biophys Acta 218:1〜10、Goto等(1988)Stroke 19:728〜735、Jones等(1989)Am.J.Pathol.135:541〜556)、これは典型的な(非脂肪)細胞の1(湿)重量%未満となる。従って、全FFAが正常濃度より2〜7倍高い、虚血条件下では、観測されるFFA濃度を維持するために、20g/分を超える組織が用いられなければならない。これ、は生命に適合せず、血漿FFAの上昇は、非虚血組織に由来することを示す。
【0067】
完全脳虚血(断頭)の特別な例において、30分かけてラットの脳に蓄積する全FFAの量は、約0.8μモルである(Ikeda等(1986)J.Neurochem.47:123〜132)。300gのラットにおける血漿FFAの総量は、5μモルを超える(FFA 500μMの血漿 >10ml)。可逆性中大脳動脈虚血(断頭に比べてはるかに軽い虚血発作)のラット・モデルにおいて、全血漿FFAは約2倍上昇し、従って、2分毎にに、余剰のFFA5μモル、または30分で約75μモルが、血漿に添加される。すなわち、完全虚血の30分で産生される0.8μモルは、虚血で観測されるまで、血漿濃度を上げるために必要なFFA量に比べて、無視できる。脳虚血で観測される多量のFFAを産生する十分な能力を備える、最も可能性のある組織源は、脂肪組織である。本発明者等は、脳虚血の数分以内に、脂肪分解の有力な活性因子(Ryden等(2002)J.Biol.Chem.277:1085〜1091)である、TNFαの血漿中濃度の上昇が観測さえ、さらに、このTNFαが血漿中のFFAuの上昇と高く相関することを見出した。
【0068】
当業者は、本発明の要旨から逸脱することなく、多数かつ多様な変更を加えることができることを理解するであろう。従って、本発明の形態は、単に例示的なものであり、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではないことが明瞭に理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、虚血組織には起因していないが、虚血状態の結果として、血液および他の体液中でその濃度が変化する分子の濃度を測定することによって、これに限定されるものではないが、心筋ならびに脳の虚血を含む虚血の診断およびモニターする目的に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における虚血を表す健康状態を探知する方法であって、
(a)前記哺乳動物の体液由来の検査試料中の虚血マーカー濃度を測定する工程; および
(b)前記検査試料中の、測定された前記虚血マーカーの濃度が、前記哺乳動物における虚血と互いに関連するかを判定する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
体液は、血液、血清、血漿、唾液、胆汁、胃液、脳脊髄液、リンパ液、間質液、および尿からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
体液は、血液であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
虚血マーカーは、脂質であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
脂質は、脂肪酸であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
脂質は、スフィンゴリピド、リソリピド、糖脂質、ステロイド、およびエイコサノイドからなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
脂質は、スフィンゴシン、セラミド、スフィンゴシン−1−リン酸、スフィンゴシルホスホリルコリン、およびジヒドロスフィンゴシンからなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
心臓が、虚血していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
脳が、虚血していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
腎臓が、虚血していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
肢が、虚血していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
測定される虚血マーカーは、水性緩衝液に可溶性であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
測定される虚血マーカーは、水性緩衝液に可溶性でないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
虚血マーカーは、UV/VIS、赤外線、マイクロ波、放射線、吸収、または発光用分光器によって検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
虚血マーカーは、クロマトグラフィ法によって検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
クロマトグラフィ法は、HPLC、低圧クロマトグラフィ、中圧クロマトグラフィ、およびガスクロマトグラフィからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
虚血マーカーは、スピン標識を利用する電子スピン共鳴によって検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
虚血マーカーは、抗体または受容体分子の、イムノアッセイまたは酵素アッセイによって検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
さらに、虚血の症候を示している哺乳動物を選択する最初の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
該虚血マーカーの濃度が、前記哺乳動物における虚血と互いに関連するならば、抗虚血治療を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
抗虚血治療は、血清脂肪酸の濃度を低減する手段を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗虚血治療は、再潅流療法、抗血栓溶解療法、脈管形成療法または手術であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記判定工程が、測定された前記虚血マーカーの濃度と、前記マーカー濃度の予め定めた値との比較であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記マーカー濃度の予め定めた値は、非虚血の健康状態を表すことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該虚血マーカーは、非結合または水溶性遊離脂肪酸であることを特徴とする請求項25に記載の虚血を判定する方法。
【請求項27】
非結合または水溶性遊離脂肪酸は、脂肪酸を結合するタンパク質によって検出されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
非結合または水溶性遊離脂肪酸を結合する前記タンパク質は蛍光性であり、かつ、脂肪酸が結合されている際、結合していない場合とは相違している蛍光を示すことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
タンパク質は、約13,000から16,000ダルトンの分子量を有する、細胞内脂肪酸結合性タンパク質(FABP)ファミリー中の一つであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該FABPは、ラット腸FABPであることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
該FABPが、27位において、アクリロダンで共有結合的に標識されていることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該アクリロダン標識FABPが、ロイシン72をアラニンへの変異体であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
非虚血群に基づき決定された、非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度の平均値よりも、2標準偏差単位を超えて高い非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示唆していることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
非虚血群に基づき決定された、非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度の平均値の約2倍を超える非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示唆していることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項35】
約5nMを超える、非結合または水溶性遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示唆していることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項36】
タンパク質は、アルブミンであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項37】
アルブミンは、7−ヒドロキシクマリン、またはアントラニロイルで共有結合的に標識されていることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該虚血マーカーは、全遊離脂肪酸であることを特徴とする請求項25に記載の虚血を探知する方法。
【請求項39】
非虚血群に基づき決定された、全遊離脂肪酸濃度の平均値よりも、2標準偏差単位を超えて高い全遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示唆していることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
非虚血群に基づき決定された、全遊離脂肪酸濃度の平均値の約2倍を超える全遊離脂肪酸濃度は、虚血状態を示唆していることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
該虚血マーカーが、全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項42】
非虚血群に基づき決定された、全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比の平均値よりも、約2標準偏差単位を超えて高い全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比は、虚血状態を示唆していることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
非虚血群に基づき決定された、全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比の平均値の約2倍を超える全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比は、虚血状態を示唆していることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
請求項26に記載に従って虚血を探知し、そして、虚血マーカー濃度が、非虚血の健康状態における前記マーカー濃度に向かっているかを判定することによって、虚血の治療に対する患者の応答を判定する方法。
【請求項45】
前記治療は、再潅流療法であることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記再潅流療法は、血管形成術を含んでなることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記再潅流療法は、血栓溶解剤の投与を含んでなることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項48】
再潅流療法を受けた後も、出血リスクの高い患者を判別する方法であって、
前記患者由来の体液試料中の脂質成分濃度を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、前記閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、再潅流療法後の出血の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法。
【請求項49】
虚血現象の後、3年以内の死亡リスクの高い患者を判別する方法であって、
前記患者由来の体液試料中の脂質成分濃度を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、前記閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、虚血現象後、3年以内の死亡の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法。
【請求項50】
出血リスクの高い患者を判別する方法であって、
前記患者由来の体液試料中の脂質成分を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、前記閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、出血の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法。
【請求項51】
該脂質成分が、非結合遊離脂肪酸、全遊離脂肪酸、および全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比からなる群から選択されることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項52】
該脂質成分が、非結合遊離脂肪酸、全遊離脂肪酸、および全遊離脂肪酸とアルブミンの比からなる群から選択されることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項53】
該脂質成分が、非結合遊離脂肪酸、全遊離脂肪酸、および全遊離脂肪酸とアルブミンの比からなる群から選択されることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項54】
再潅流療法を受けた後の出血リスクの高い患者を治療する方法であって、
請求項48の方法を用いて、再潅流療法を受けた後の出血リスクの高い患者を特定する工程;および
前記高リスクの患者を抗虚血療法によって治療する工程を含んでなる方法。
【請求項55】
虚血現象後、3年以内の死亡リスクの高い患者を治療する方法であって、
請求項49の方法を用いて、虚血現象後3年以内の死亡リスクの高い患者を特定する工程;および
前記高リスクの患者を抗虚血療法によって治療する工程を含んでなる方法。
【請求項56】
出血リスクの高い患者を治療する方法であって、
請求項50の方法を用いて、出血リスクの高い患者を特定する工程;および
前記高リスクの患者を抗虚血療法によって治療する工程を含んでなる方法。
【請求項57】
該抗虚血療法は、グルコース・インスリン・カリウム組成物、およびアルブミン組成物からなる群から選択されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項58】
該抗虚血療法は、グルコース・インスリン・カリウム組成物、およびアルブミン組成物からなる群から選択されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
該抗虚血療法は、グルコース・インスリン・カリウム組成物、およびアルブミン組成物からなる群から選択されることを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項60】
非急性期患者における長期リスクを評価する方法であって、
前記患者由来の体液試料中の脂質成分濃度を測定する工程;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度を、脂質成分の閾値濃度と比較する工程、なお、前記閾値濃度は、虚血を有さない健常者群の体液中の脂質成分測定に基づき決定されている;
測定された、該患者由来の脂質成分濃度の、閾値濃度に対するの比を求める工程、 および
高い比は、高いリスクを示すように、その比を、死亡の相対リスクと相関させる工程を含んでなる方法。
【請求項61】
該脂質成分は、非結合遊離脂肪酸、および全遊離脂肪酸のアルブミンに対する比からなる群から選択されることを特徴とする請求項60に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−223972(P2010−223972A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149527(P2010−149527)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2003−529149(P2003−529149)の分割
【原出願日】平成14年9月16日(2002.9.16)
【出願人】(503173168)
【氏名又は名称原語表記】KLEINFELD, Alan
【Fターム(参考)】