説明

蛍光タンパク質マイクロドメインを使用するタンパク質−タンパク質相互作用検出システム

本発明は、フラグメントの会合を駆動するために融合された相互作用ポリペプチドを必要とし、さらに、可溶性かつ安定であり、そしてそれらが融合されるポリペプチドの安定性を変えない蛍光タンパク質および発色団タンパク質に基づく、タンパク質の標識化および相互作用検出のシステムを提供する。1つの実施形態では、試験タンパク質Xが、GFPの16アミノ酸のフラグメント(β鎖10、アミノ酸198〜214)に融合され、融合タンパク質の可溶性を変動させないように操作される。第2の試験タンパク質Yは、GFPの16アミノ酸のフラグメント(β鎖11、アミノ酸215〜230)に融合され、融合タンパク質の可溶性を変動させないように操作される。XとYとが相互作用する場合、それらは、そのGFP鎖を接近させ、そしてGFPアミノ酸1〜198(鎖1〜9)からなる第3のGFPフラグメントとの補完によって検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府によって支援された研究または開発の下でなされた発明に対する権利の陳述)
本発明は、米国エネルギー省によってThe Regents of The University of Californiaに授与された、契約番号第W−7405−ENG−36の下で政府援助によってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
GFPおよびその多くの関連する蛍光タンパク質は、現在、薬剤をタグ化するタンパク質として広範に使用される(概説については、非特許文献1を参照のこと)。さらに、GFPは、末端に融合された試験タンパク質の可溶性レポーターとして用いられている(非特許文献2;「Method for Determining and Modifying Protein/Peptide Solubility」と題する特許文献1)。GFP様タンパク質は、相同な、保存された11のβ鎖「バレル」構造を共有する25〜30kDaのポリペプチドの広範なファミリーである。このGFP様タンパク質ファミリーは、現在、種々のAnthozoa種およびHydrozoa種からクローニングされた約100のメンバーを含み、そして赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質および緑色蛍光タンパク質ならびに種々の非蛍光色素タンパク質を含む(Verkhushaら、前述)。広範な種類の蛍光タンパク質標識アッセイおよび蛍光タンパク質標識キットが市販され利用可能であり、広範なスペクトルのGFPのスペクトル的改変体、およびDsRedおよびその他の赤色蛍光タンパク質(Clonetech、Palo Alto、CA;Amersham、Piscataway、NJ)を含むGFP様蛍光タンパク質を含む。
【0003】
GFPフラグメント再構成システムがタンパク質−タンパク質相互作用を検出するために主に説明されているが、いずれも、支援されない自己アセンブリを正しく折り畳まれた可溶性でありかつ蛍光性の再構成されたGFPにすることができず、そして一般的なスプリットGFP折り畳みレポーターシステムは、これらのアプローチから出現していない。例えば、Ghoshら、2000は、GFP構造のアミノ酸1〜157および158〜238に対応する2つのGFPフラグメントが、個々のフラグメントが逆平行ロイシンジッパーを形成し得るコイルドコイル配列に融合されたとき、インビトロまたはE.coli中の同時発現により蛍光産物を生じ得たことを報告した(非特許文献3)。同様に、特許文献2は、逆平行ロイシンジッパーを形成し得、GFP分子のスプリットフラグメントを接続し得る螺旋コイルの使用を記載している。この特許の明細書は、再構成が、GFPフラグメントに付着された補完性螺旋コイルの非存在下では生じないことを確立している。特に、この明細書は、ロイシンジッパー対を有さないGFPフラグメントが「任意の緑色コロニーを示さず、従って、インビボおよびインビトロにおけるGFPアセンブリを仲介するためのNZジッパーおよびCZロイシンジッパーの両方の存在の必要性を強調する」コントロール実験を記載している。
【0004】
同様に、Huら、2002は、相互作用タンパク質bZIPおよびRelが、GFPの2つのフラグメントに融合されるとき、それらの相互作用によってGFP再構築を仲介し得ることを示した(非特許文献4)。Nagaiら、2001は、カルモジュリンおよびM13に融合された黄色蛍光タンパク質(YFP)のフラグメントがカルシウムの存在下でYFPの再構成を仲介し得たことを示した(非特許文献5)。このアプローチの改変例で、Ozawaらは、カルモジュリンおよびM13を、自己スプライシングインテイン(intein)ポリペプチド配列を経由して2つのGFPフラグメントに融合し、それによってカルシウムの存在下でGFPフラグメントの共有結合再構成を仲介した(非特許文献6;非特許文献7)。これらの研究者の一人は、次いで、このスプライシングを基礎にしたGFP再構成システムの培養された哺乳動物細胞への適用を報告した(非特許文献8)。さらに最近、Zhangら、2004は、C.elegansで同時発現されるとき、Ghoshら、2000、前述の螺旋コイルスプリットGFPシステムを用いてGFP(ならびにYFPおよびCFP)蛍光を再構成し得たことを示し、そしてインビボにおける同時発現を確認することで、このシステムの有用性を示した(非特許文献9)。
【0005】
前述のGFP再構成システムは、2つのスペクトル的に異なる蛍光タンパク質タグの使用よりも利点を提供するが、それらは、フラグメントのサイズ、および対応して乏しい折り畳み特徴(Ghoshら、Huら、前述)、化学的連結工程の必要性(Ozawaら、2001、2002、前出)、および検出可能であり、折り畳まれ、かつ蛍光性のGFP(Ghoshら、2000;Huら、2001、Zhangら、2004、前出)を生成するための同時発現または同時折り畳みによって制限されている。乏しい折り畳み特徴は、フラグメントが同時に発現されるか、または一緒に同時に再折り畳みされる適用にこれらのフラグメントの使用を制限する。このようなフラグメントは、補完の前に個々のフラグメントの長期間の安定性および可溶性を必要とするインビトロアッセイには有用ではない。このようなスプリットタンパク質フラグメントが有用ではないような適用の例は、スプリットタンパク質対のメンバーでタグ化されたポリペプチドの相互作用の定量的分析、そして次いで補完フラグメントの添加によって検出されるポリペプチドの定量であろう。別の例は、タグ化ポリペプチドが同時に発現されないか、または相互作用が低分子エフェクター(例えば、薬物)の添加によって発現後に誘導される場合の、タンパク質相互作用の検出である。
【0006】
理想的なタンパク質相互作用検出システムは、遺伝子によりコードされ、インビボおよびインビトロの両方で働き、高感度の分析信号を提供し、そして外部の化学的試薬または基質を必要としないであろう。特許文献3において、Michnickら、2002年8月6日は、検出されたタンパク質−タンパク質相互作用についての種々のスプリットタンパク質補完アッセイを記載する。しかし、指定されたスプリットタンパク質は、折り畳みが乏しく、そして主として不溶性である(gels of fragments of dihydrofolate reductase、非特許文献3を参照のこと)。その出願において、指定されたGFPのフラグメントもまた、折り畳みが乏しい。特許文献3において、Michnickは、スプリットタンパク質のフラグメントの折り畳みを改良するアプローチを記載し、そのスプリットタンパク質は、既知の相互作用ドメインに融合され、そしてそのスプリットタンパク質は、変異され、そしてライブラリーは、細胞内で同時発現し、かつ再構成されたスプリットタンパク質に関連した機能について選択される。DHFRは、例示的な場合について使用される。しかし、特許請求の範囲の実施形態において使用される指定のDHFRフラグメントが、融合されたコイルドコイルを使用して再構築される場合に補完および酵素活性が可能であるにもかかわらず、別個に発現されるときに主として不溶性であるという事実は、補完フラグメントの同時発現に基づくこの指向性進化アプローチが可溶性かつ安定なフラグメントについて選択するために、十分にストリンジェントではないことを論じる。さらに、共有に係る同時係属中である米国特許出願第10/973,693号(2004年10月25日出願、Waldoら)は、不溶性スプリット−GFPフラグメントの同時発現が補完をもたらし得るが、補完は、そのフラグメントが別個に発現される場合には生じないことを示す。係属中の米国特許出願第10/973,693号において、Waldoらは、スプリットタンパク質のフラグメントの逐次的な発現を使用する指向性進化が、スプリットタンパク質フラグメントのより可溶性で、安定なバージョンを選択するために使用され得ることをさらに示す。この逐次的な発現は、特許文献3(Michnickら、2002年8月6日)によって指定された同時発現に対して著しく異なる。最近、会合する前に凝集せず、かつタグ化ポリペプチドの可溶性を変化させないスプリット蛍光タンパク質タグ化システムが、記載されている(非特許文献10)。しかし、そのフラグメントは、融合された相互作用タンパク質ドメインの必要性なくして自然に自己会合し得る。会合前に可溶性のままであり、そして融合された標的タンパク質の可溶性を変えず、そしてまた補完のための融合された相互作用ドメインに依存するスプリットGFPフラグメントが必要であり、そして本発明によって取り扱われる。
【特許文献1】米国特許第6,448,087号明細書
【特許文献2】米国特許第6,780,599号明細書
【特許文献3】米国特許第6,428,951号明細書
【非特許文献1】Verkhushaら、「GFP−like fluorescent proteins and chromoproteins of the class Anthozoa,Protein Structures:Kaleidescope of Structural Properties and Functions、Research Signpost」、Kerala、India、2003年、第18章、pp.405−439
【非特許文献2】Waldoら 1999、Nat.Biotechnol.第17巻、p.691〜695
【非特許文献3】Ghoshら、「Antiparallel leucine zipper−directed protein reassembly: application to the green fluorescent protein.」、2000年、J.Am.Chem.Soc.第122巻、p.5658〜5659
【非特許文献4】Huら、「Visualization of interactions among bZIP and Rel family proteins in living cells using bimolecular fluorescence complementation.」、Mol.Cell、2002年、第9巻、p.789〜798
【非特許文献5】Nagaiら、「Circularly permuted green fluorescent proteins engineered to sense Ca2+.」、2001年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第98巻、p.3197〜3202
【非特許文献6】Ozawaら、「A fluorescent indicator for detecting protein−protein interactions in vivo based on protein splicing.」、2001年、Anal.Chem.第72巻、p.5151〜5157
【非特許文献7】Ozawaら、「Protein splicing−based reconstitution of split green fluorescent protein for monitoring protein−protein interactions in bacteria:improved sensitivity and reduced screening time.」、2002年、Anal.Chem.第73巻、p.5866〜5874
【非特許文献8】Umezawa、2003年、Chem.Rec.、第3巻、p.22〜28
【非特許文献9】Zhangら、「Combinatorial marking of cells and organelles with reconstituted fluorescent proteins.」、2004年、Cell、第119巻、p.137〜144
【非特許文献10】Cabantousら、「Protein tagging and detection using engineered self−assembling fragments of green fluorescent protein.」、Nature Biotechnology、2004年、DOI 10.1038/Nbt1044
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、フラグメントの会合を駆動するために融合された相互作用ポリペプチドを必要とし、さらに、可溶性かつ安定であり、そしてそれらが融合されるポリペプチドの安定性を変えない蛍光タンパク質および発色団タンパク質に基づく、タンパク質の標識化および相互作用検出のシステムを提供する。本発明のシステムは、Aequorea victoria緑色蛍光タンパク質(GFP)由来のフラグメントの種々の組み合わせで例示され、これらは、インビトロおよびインビボの両方で複数のアッセイフォーマットでタンパク質相互作用を検出および定量するために用いられる。
【0008】
1つの詳細な実施形態では、試験タンパク質Xが、GFPの16アミノ酸のフラグメント(β鎖10、アミノ酸198〜214)に融合され、融合タンパク質の可溶性を変動させないように操作される。第2の試験タンパク質Yは、GFPの16アミノ酸のフラグメント(β鎖11、アミノ酸215〜230)に融合され、融合タンパク質の可溶性を変動させないように操作される。XとYとが相互作用する場合、それらは、そのGFP鎖を接近させ、そしてGFPアミノ酸1〜198(鎖1〜9)からなる第3のGFPフラグメントとの補完によって検出される。GFP鎖10および11がタンパク質XおよびYの相互作用によって1つに保たれる場合、GFP鎖1〜9との自発的な会合は、構造的補完、折り畳み、および付随するGFP蛍光を生じる。
【0009】
このスプリット−GFPシステムは非常に単純で、外部試薬を必要とせず、相互作用するタグ化タンパク質の量に比例する高感度分析信号を提供し、融合タンパク質の折り畳みおよび可溶性を変動させず、そしてインビボおよびインビトロの両方で働く。これらの能力を併せ持った他の現存するタンパク質タグ化および検出システムは存在しない。実施例、後述、に詳細に記載されるように、このスプリット−GFPシステムを用いて、マルチウェルプレートでタンパク質相互作用を定量し、そして生きている細胞(例えば、E.coli細胞、酵母細胞、および哺乳動物細胞)中でタンパク質発現および可溶性をモニタリングし得る。
【0010】
本発明のこのスプリットGFPシステムは、タンパク質を定量するため、タンパク質相互作用をアッセイするため、および特定の相互作用するポリペプチドまたはタンパク質の折り畳みおよび可溶性を改良することを狙う指向性進化ストラテジーの成功をモニタリングするためのレポーターアッセイとして特に有用であり、そして結合リガンドおよび標的を含むタンパク質−タンパク質相互作用の強度を操作するために特に有用である。さらに、本発明のこれらシステムは、特に高スループット薬物開発フォーマットにおいて、タンパク質の相互作用を阻害および/または促進する因子をアッセイするために用いられ得る。
【0011】
折り畳みおよび再構成のために相互作用ドメインを必要とし、かつ可溶性でもあるレポータータンパク質のフラグメントを生成する方法がまた、提供される。これらの方法は、GFPの操作されたフラグメントの生成によって例示され、そして会合および折り畳みのために融合された相互作用ドメインを必要とする他のGFP様蛍光タンパク質および非蛍光タンパク質の可溶性フラグメントを生成するために用いられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
(定義)
他であることが規定されなければ、本明細書で用いられる当該技術分野のすべての用語、表記およびその他の科学的用語法は、本発明が関係する当業者によって共通に理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合には、共通して理解される意味をもつ用語は、本明細書中で明瞭さのため、および/または容易な参照のために定義され、そしてこのような定義を含めることは、当該技術分野で一般に理解されるものに対して実質的な差異を表すと必ずしも解釈されるべきではない。本明細書中で説明され、または参照される技法および手順は、当業者によって従来の方法を用いて一般に良好に理解され、かつ共通に採用され、これには、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausbelら編、John Wiley&Sons、Inc.2001)に記載された広く利用される分子クローニング方法などがある。認識されるように、市販され利用可能なキットおよび試薬の使用を含む手順は、他であることが注記されなければ、一般に、製造業者の規定したプロトコルおよび/またはパラメーターに従って実施される。
【0013】
本明細書で用いられるとき、「蛍光タンパク質」は、Aequorea victoria緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPの構造的改変体(すなわ ち、円順列変異体(permutant)、モノマーバージョン)、GFPの折り畳み改変体(すなわち、より可溶性のバージョン、超折り畳みバージョン)、GFPのスペクトル的改変体(すなわち、YFP、CFP)、およびGFP−様蛍光タンパク質(すなわち、DsRed)である。用語「GFP−様蛍光タンパク質」は、GFPの11−β鎖「バレル」構造を共有するAnthozoa蛍光タンパク質のメンバー、ならびにその構造的、折り畳みおよび構造的改変体をいうために用いられる。用語「GFP−様非蛍光タンパク質」および「GFP−様発色団タンパク質」(または、単に、「発色団タンパク質」または「色素タンパク質」)は、GFPの11−β鎖「バレル」構造を共有するAnthozoa発色団タンパク質およびHydrozoa発色団タンパク質、およびその構造的、折り畳みおよび構造的改変体をいうために用いられる。GFP−様タンパク質はすべて、共通の構造的および機能的特徴を共有し、制限されずに、分子状酸素以外に、アクセサリーコファクター、外部酵素触媒または基質を必要とすることなく、内部発色団を形成する能力を含む。
【0014】
蛍光タンパク質の「改変体」は、「親」蛍光タンパク質に由来し、そして上記11β−鎖バレル構造および内因性蛍光を保持し、そしてこのタンパク質の新規または改変された性質(すなわち、より大きな安定性、改良された可溶性、改良された折り畳み、放射または励起スペクトルにおけるシフト、マルチマーを形成する減少したまたは無くした能力など)を与え得るアミノ酸置換、欠失または挿入をもつ構造、ならびに改変されたN末端およびC末端を有する構造(すなわち、円順列変異体)を含むことが意図される。
【0015】
レポーターポリペプチドを参照して用いられるとき、用語「補完性フラグメント」、または「補完フラグメント」は、個々には不活性であり(すなわち、レポーター表現型を発現しない)、ここで、補完フラグメントの結合が、レポーター活性を回復するポリペプチドのフラグメントをいう。2つ以上の蛍光(または発色団)タンパク質フラグメントを記載するために用いられるとき、用語「自己補完性」、「自己組織化」、および「自然に会合する」は、これらフラグメントが、これら個々のフラグメントが可溶性であるとき、インタクトな、蛍光(または発色団)タンパク質に再構成し得ることを意味する。
【0016】
本明細書で用いられるとき、「MMDB Id:5742構造」は、Molecular Modeling Database(MMDB)、PDB Id:1EMA PDB Authors:M.Ormo&S.J.Remington PDB Deposition:1−Aug−96 PDB Class:Fluorescent Protein PDBタイトル:Aequorea Victoriaからの緑色蛍光タンパク質中、Ormo&Remingtonにより、MMDB Id:5742で開示されるGFP構造をいう。Protein Data Bank(PDB)参照は、Id PDB Id:1EMA PDB著者:M.Ormo&S.J.Remington PDB Deposition:1−Aug−96 PDBクラス:Fluorescent Protein PDBタイトル:Aequorea Victoriaからの緑色蛍光タンパク質である(例えば、Ormoら、「Aequorea victoria緑色蛍光タンパク質の結晶構造」、Siecnce 1996年9月6日;273(5280):1392〜5;Yangら、「緑色蛍光タンパク質の分子構造」Nat Biotechnol.1996 10月、14(10):1246〜51を参照のこと)。
【0017】
「根2乗平均偏差(「RMSD」)」は、根2乗平均重ね合わせ残基をオングストロームでいう。この数は、2つの構造の最適重ね合わせ後、相当するC−α−原子間の2乗平均距離の平方根として算出される。
【0018】
核酸の部分を参照して用いられるとき、用語「異質」は、核酸が本来互いに同じ関係で見出されない2つ以上のサブ配列を含むことを示す。例えば、核酸は、代表的には、新規な機能的核酸を作製するために整列される非関連遺伝子からの2つ以上の配列、例えば、1つの供給源からの蛍光タンパク質をコードする核酸、および別の供給源からのペプチド配列をコードする核酸を有して組換えにより発現される。同様に、異質タンパク質は、タンパク質が、元来、互いに同じ関係で見出されない2つ以上のサブ配列を含むことを示す(例えば、融合タンパク質)。
【0019】
用語「同一」または「同一性」パーセントとは、2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈においては、BLAST配列比較アルゴリズムもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを下記のデフォルトパラメーターとともに使用して測定するかまたは手作業による並置および視認によって測定するように、比較ウィンドウすなわち指定領域の全体にわたって最大の一致について比較および並置した場合に、特定の領域全体にわたって同じである2つ以上の配列もしくは部分配列を指すか、あるいは特定の領域全体にわたって同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドに関して特定の割合(すなわち、約70%同一性、好ましくは、75%同一性、80%同一性、85%同一性、90%同一性、または95%同一性)を有する2つ以上の配列もしくは部分配列を指す。それゆえ、そのような配列は、「実質的に同一である」と言われる。この定義はまた、試験配列の補完性(compliment)を指す。好ましくは、この同一性は、長さが少なくとも約22アミノ酸もしくは少なくとも約22ヌクレオチドである領域にわたって存在するか、またはより好ましくは、長さが30アミノ酸、40アミノ酸、もしくは50アミノ酸〜100アミノ酸または30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、もしくは50ヌクレオチド〜100ヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0020】
配列比較に関して、代表的には、1つの配列が、参照配列の役割を果たし、この参照配列に対して、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列が、コンピューター中に入力され、部分配列座標が、必要な場合には指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが、指定される。デフォルトプログラムパラメーターが、使用され得るか、または代替的パラメーターが、指定され得る。その後、その配列比較アルゴリズムは、上記プログラムパラメーターに基づいて、上記参照配列に対する上記試験配列についての配列同一性パーセントを算出する。
【0021】
「比較ウィンドウ」とは、本明細書中で使用される場合、20〜600、通常は約50〜約200、より通常は約100〜約150から選択される連続位置数のうちのいずれか1つである部分に対する言及を包含し、その部分において、配列は、同じ連続位置数の参照配列に対して、それら2つの配列が最適に並置された後に比較され得る。比較のための配列の並置方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適な並置は、例えば、SmithおよびWaterman(1981、Adv.Appl.Math.2:482)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch(1970,J.Mol.Biol.48:443の相同性アライメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman(1988,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444)の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実施(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package,Genetic Computer Group,575 Science Dr.,Madison.WI)によって、または手作業による並置および視認(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995補遺)を参照のこと)によって、実施され得る。
【0022】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するために適切なアルゴリズムの好ましい例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。これらのアルゴリズムは、それぞれ、Altschulら、1977、Nuc.Acids Res.25:3389〜3402およびAltschulら、1990、J.Mol.Biol.215:403〜410に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、代表的には、本明細書中に記載されるデフォルトを用いて使用されて、本発明の核酸およびタンパク質についての配列同一性パーセントが決定される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して公開された状態で利用可 能である。このアルゴリズムは、まず、問い合わせ配列における長さWの短いワード(word)を同定することによって高スコア配列対(HSP)を同定することを含み、このHSPは、データベース配列中の同じ長さのワードと並置された場合に、ある正の値の閾値スコアTに一致するかまたはそれを満たすかのいずれかである。Tは、近接(neighborhood)ワードスコアの閾値Tと呼ばれる(Altschulら、前出)。これらの初期近接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとしての役割を果たす。次いで、このワードヒットは、累積アラインメントスコアが増大し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメーターM(一致した一対の残基についての報酬(reward)スコア;常に0より大きい)およびN(一致しない残基についてのペナルティースコア;常に0より小さい)を用いて算出される。アミノ酸配列については、スコア付けマトリックスが、上記累積スコアを算出するために使用される。各方向におけるそのワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、達成した最大値から量X減少した場合;1つ以上の負のスコアの残基の整列の蓄積に起因して、累積スコアが、ゼロ以下になる場合;または、いずれかの配列の末端に到達した場合に、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、整列の感度および速さを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア付けマトリクス(HenikoffおよびHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0023】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、KarlinおよびAltschul,1993,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873〜5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の1つは、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小合計確率が、約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列と類似すると考えられる。
【0024】
参照配列番号に言及する文脈における用語「最大一致によって決定される場合」とは、配列が、デフォルトパラメーターに設定されたBLASTなどのアルゴリズムを使用して、参照配列の長さ全体にわたって参照配列番号と最大限に並置されることを意味する。
【0025】
用語「連結(する)」とは、本明細書中で使用される場合、物理的結合ならびに生物学的粒子(例えば、ファージ、細菌、酵母、または他の真核生物細胞)と共存することによって生じる結合を指す。
【0026】
「物理的結合」とは、2つの分子を機能的に接続する(これは、「物理的に結合された」と呼ばれる)ための当該分野で公知の任意の方法を指し、これには、介在ドメインを含む組換え融合または介在ドメインを含まない組換え融合、インテイン媒介性融合、非共有結合、共有結合(例えば、ジスルフィド結合および共有結合)、水素結合;静電結合;ならびに高次構造結合(例えば、抗体−抗原結合、およびビオチン−アビジン結合)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「融合した」とは、共有結合による結合を指す。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「リンカー」または「スペーサー」とは、2つの分子(蛍光結合リガンド、およびディスプレイタンパク質もしくはディスプレイ核酸)を接続してそれらの2つの分子を好ましい構成に配置する、分子または分子群を指す。
【0029】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書中で互換可能に使用される。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣物である、アミノ酸ポリマー;ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー;および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに当てはまる。
【0030】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびにその天然に存在するアミノ酸と類似する様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸、ならびに、後に改変されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造(すなわち、水素に結合しているα炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基)を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。そのようなアナログは、改変型R基を有する(例えば、ノルロイシン)かまたは改変型ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似する様式で機能する、化合物を指す。
【0031】
アミノ酸は、本明細書中では、その一般的に公知である3文字記号によってか、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomencalature Commissionによって推奨される1文字記号によって、言及され得る。ヌクレオチドは、同様に、その一般的に受け入れられている1文字記号によって言及され得る。
【0032】
用語「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、ならびに一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかであるそれらのポリマーを指す。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似する結合特性を有し、かつ天然に存在するヌクレオチドと類似する様式で代謝される、天然ヌクレオチドの公知アナログを含む核酸を包含する。そうではないと示されない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換)および相補配列、ならびに明示的に示される配列を暗示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、選択された1つ以上(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって達成され得る(Batzerら、1991、Nucleic Acid Res.19:5081;Ohtsukaら、1985 J.Biol.Chem.260:2605〜2608;およびCassolら、1992;Rossoliniら、1994、Mol.Cell.Probes 8:91〜98)。用語「核酸」は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によりコードされるmRNAと互換可能に使用される。
【0033】
「保存的に改変された改変体」とは、アミノ酸配列および核酸配列の両方に当てはまる。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のアミノ酸配列もしくは本質的に同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を指し、またはその核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一である配列を指す。遺伝コードの縮重が原因で、多数の機能的に同一な核酸が、所定の任意のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、コドンGCC、コドンGCG、およびコドンGCUは、すべて、アミノ酸であるアラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって特定されるどの位置でも、その子ドンは、コードされるポリペプチドを変化させることなく、記載される対応するコドンのうちのいずれかに変更され得る。そのような核酸バリエーション(variation)は、「サイレントバリエーション」であり、これは、保存的に改変された改変形のうちの一種である。ポリペプチドをコードする本明細書中のどの核酸配列もまた、その核酸のあらゆる可能なサイレントバリエーションを記載する。当業者は、核酸中の各コドン(本来メチオニンについての唯一のコドンであるAUGと、本来トリプトファンについての唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一である分子を生じるように改変され得ることを、認識する。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションが、記載される各々の配列において暗示される。
【0034】
アミノ酸配列に関して、コードされる配列における1つのアミノ酸または少数のアミノ酸を変化、付加、もしくは欠失する、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列に対する個別の置換、欠失、もしくは付加は、その変化が、化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす場合に、「保存的に改変された改変体」であることを、当業者は認識する。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該分野で周知である。そのような保存的に改変された改変体は、本発明の多型改変体、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えて存在し、これらの本発明の多型改変体、種間ホモログ、および対立遺伝子を排除しない。
【0035】
以下の8つのグループの各々は、互いに対して保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K),;5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照のこと)。
【0036】
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造)は、種々の組織化レベルに関して記載され得る。この組織化の一般的考察については、例えば、Albertsら、Molecular Biology of the Cell(第3版、1994)、ならびにCantorおよびSchimmel、Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照のこと。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列を指す。「二次構造」とは、ポリペプチドにおける局所的に秩序立った3次元構造を指す。これらの構造は、一般的にはドメインとして公知である。ドメインは、ポリペプチドの部分であり、この部分は、そのポリペプチドの小型単位(compact unit)を形成する。ドメインは、代表的には、25アミノ酸長〜約500アミノ酸長である。代表的なドメインは、組織化の程度が少ない部分(例えば、一連のβ−シートおよびα−へリックス)から構成される。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な3次元構造を指す。「四次構造」とは、独立した三次単位の非共有結合的会合によって形成される三次元構造を指す。異方性項(anisotropic terms)はまた、エネルギー項(energy term)としても公知である。
【0037】
用語「単離された」および「精製された」とは、その天然状態において見出されるような通常付随する成分を実質的にも本質的にも含まない物質を指す。しかし、用語「単離された」とは、電気泳動ゲルまたは他の分離媒体において存在する成分を指すことは、意図されない。単離された成分は、そのような分離媒体、および別の適用における使用準備ができているかまたは新たな適用/環境において既に使用中である形態を、含まない。
【0038】
(スプリット蛍光タンパク質系およびスプリット発色団タンパク質系)
本発明のタンパク質−タンパク質相互作用アッセイは、スプリット−蛍光タンパク質系およびスプリット−発色団タンパク質系を利用し、それらは、一般に、共有に係る同時係属中である米国特許出願第10/973,693号(2004年10月25日出願、その全体が本明細書によって参考として援用される)に記載される。
【0039】
スプリット蛍光タンパク質フラグメントは、それらのフラグメントが使用されるべき特定のアッセイの環境において折り畳まれ得かつ可溶性であり得る。好ましい実施形態において、個々のフラグメントの折り畳み/溶解度が、試験され、そして代表的には、可溶性「タグ」フラグメントと可溶性「アッセイ」フラグメントを分離するために進化される。好ましい溶解度アッセイ適用において、上記タグフラグメントは、1個と3個との間の個数のβ鎖であり、最も好ましい適用 において、そのタグは、一本のβ鎖である。試験タンパク質が、このタグフラグメントに融合される。このタグフラグメントは、好ましくは、融合した試験タンパク質に対して実質的に変動性ではない。換言すると、その試験タンパク質単独の溶解度および折り畳みは、上記タグと融合した場合の試験タンパク質の溶解度および折り畳みと類似する。
【0040】
スプリットGFP系を使用する実験結果(実施例2を参照のこと)に基づいて、溶解度アッセイにおける最適性能は、比較的大きなアッセイフラグメント(例えば、約8個〜約10個連続するβ鎖)と、試験タンパク質が融合される比較的小さなタグフラグメント(例えば、約1個〜約3個連続するβ鎖)とを使用することによって、達成される。そのアッセイフラグメントは、可溶性であり、そしてタグフラグメント−試験タンパク質融合物にとって補完のために利用可能であり、そのタグフラグメントは、試験タンパク質の溶解度に対して非変動性である。理想的には、ほとんどの適用について、上記試験タンパク質単独の溶解度と、タグフラグメントと融合した状態の試験タンパク質の溶解度とは、ほぼ同じである。そのアッセイフラグメントは、理想的にはモノマーであり、そして自然に凝集することも誤折り畳みされることもない。
【0041】
多くの適用において、非変動性タグフラグメントの使用が好ましいが、それにも関わらず、タグフラグメントは、蛍光と溶解度との間の実質的な比例性が存在する(しかし、必ずしも、正比例しない)限りには、試験タンパク質の溶解度に対して変動性であり得、そして溶解度スクリーニングアッセイにおいて有用なままである。いくつかの実施形態において、非変動性タグフラグメント(下記のサンドイッチ形式アッセイの説明を参照のこと)(例えば、目的は、高可溶性タンパク質をスクリーニングすることである)を使用することが、実際には、望ましくあり得る。この場合、非変動性タグフラグメントの使用は、すべてではないがほとんどの可溶性タンパク質またはタンパク質のバージョンに対して有効に選択され得る。また、そのような適用におけるアッセイフラグメントは、可溶性であるべきである。なぜなら、不溶性バージョンは、可溶性試験タンパク質−タグフラグメント融合物に対する補完のために利用可能ではないからである。
【0042】
(タンパク質−タンパク質相互作用検出システム)
本発明のタンパク質−タンパク質相互作用検出システムは、2以上の相互作用タンパク質または2以上の潜在的な相互作用タンパク質をタグ化する、蛍光タンパク質(例えば、GFP)のマイクロドメインを利用する。一般に、上記マイクロドメインは、上記蛍光タンパク質構造のうちの1以上の隣接するβ鎖に対応する。したがって、例えば、2つの既知の相互作用タンパク質(XおよびY)は、タグ化ポリペプチドのセットs10−Xおよびs11−Y、X−s10およびY−s11などを産生するために、β鎖10および11に対応するGFPマイクロドメインタグに融合され得る。上記融合ポリペプチドは、代表的に、DNAレベルで構築され、そしてそれらの融合ポリペプチドは、当業者によって一般に理解されるように、同時発現されても、別々に発現されてもよい。好ましい実施形態において、各マイクロドメインタグは、単一β鎖に実質的に対応する。
【0043】
本発明の一般概念を示すために、以下は、GFP s1−9に対応するアッセイフラグメントと一緒に、s10およびs11に対応するGFPマイクロドメインタグを利用する、単純な2タンパク質相互作用検出システムの記載である。これらの「タグ」マイクロドメインは、融合された相互作用タンパク質が相互作用する限り、そのマイクロドメインが補完アッセイフラグメント(GFP s1−9)と自発的に自己補完しないように選択される。この単純な場合において、タンパク質XおよびYは、相互作用することが公知である。タンパク質XおよびYは、それぞれ、細胞中でs10タグとの融合物およびs11タグとの融合物として発現される。上記アッセイフラグメントは、細胞において発現されるか、または細胞にトランスフェクトされる。XとYとの相互作用は、上記タグフラグメントを接近させ、このことは、上記アッセイフラグメントとの同時の相互作用に有利であり、この相互作用は、3つのGFPフラグメントの間の自己補完をもたらし、上記GFP分子を再構成し、次いで、そのGFP分子は、タンパク質XおよびYが上記細胞中で相互作用したことを示すその特徴的な蛍光を提示する(図26)。
【0044】
この単純なタンパク質−タンパク質相互作用アッセイは、特定の環境、異なる細胞、異なる物理的条件下、および他のタンパク質因子、薬剤、薬物などの存在下において、タンパク質XとYとの相互作用を評価するために使用され得る。このようなアッセイは、XとYとの間の相互作用をモジュレートする候補薬剤を単離することを目的とした高スループットスクリーニングの試みに、容易に適合可能である。例えば、上記システムは、タンパク質XとYとの間の相互作用を妨げる薬剤についてのスクリーニングのために使用され得る。1つの特定のインビトロアッセイ実施形態において、種々の試験薬剤は、タグ化Xタンパク質およびタグ化Yタンパク質を発現する細胞に添加され得る。次いで上記細胞は、溶解されて、上記アッセイフラグメントと反応され得る。あるいは、上記アッセイフラグメントは、上記細胞内で発現され得るか、または当該分野において周知であるタンパク質トランスフェクション試薬(Chariot reagent)を使用して引き入れられ得る。XおよびYが相互作用する場合、エントロピーは、アッセイフラグメントとの補完に有利であり、そして蛍光が、提示される。上記XとYとの間の相互作用を妨げる薬剤は、このようなベースラインの蛍光と比較して減少した蛍光または検出可能な蛍光が無いことによって同定され得る。このようなアッセイは、高スループットスクリーニングに容易に適合可能であり、多数のウェルは、上記タグ化タンパク質を発現するように操作された細胞を含み、そして多くの異なる試験薬剤が、個々のウェルに添加され得る。
【0045】
本発明のタンパク質−タンパク質相互作用検出システムの種々の実施形態が、想起され、それらのうちの数種は、以下で、実施例によって記載される。
【0046】
本発明の別の局面は、他のタンパク質と相互作用するタンパク質を同定および単離するためのタンパク質−タンパク質相互作用検出システムの使用に関する。種々の実施形態が、想起され、それらとしては、既知のタンパク質Yと相互作用する未知のタンパク質Xを同定し得るアッセイ、未知のタンパク質Yと相互作用する未知のタンパク質Xを同定し得るアッセイ、既知のタンパク質Yと相互作用する既知のタンパク質Xを同定し得るアッセイが挙げられるが、これらに限定されない(それらの相互作用は、既知ではなかった)。
【0047】
本発明の別の局面は、改良された特性または規定された特性(例えば、他のタンパク質に対する、より高い親和性の結合)を有する既知の相互作用タンパク質の対の1つの改変体についてスクリーニングするために、タンパク質−タンパク質相互作用検出システムを利用する。例示の通り、タンパク質Yに結合する抗体Xは、結合の特異性または親和性を改良することを目的とした指向性進化ストラテジーに供され得る。簡単にいうと、その抗体の単鎖が、変異体のライブラリーとして発現され得、そして結合特性(例えば、結合親和性)について評価され得る。したがって、変異タンパク質Xのライブラリーは、GFPマイクロドメイン融合物(すなわち、X’−s10)として発現され、そしてそのライブラリーは、補完アッセイフラグメントs1−9の存在下において融合物Y−s11と反応し得る。野生型X−s10が発現され、そして上記アッセイフラグメントの存在下においてY−s11と反応し得る場合に生成されるものと比較してより強い蛍光は、X’がYに対してXより強い親和性を有するという示唆を提供する。
【0048】
関連した実施形態において、X’−s10は、野生型融合物X−s10と同時発現されても、野生型融合物X−s10の存在下において発現されてもよく、それらの両方は、アッセイフラグメントGFP s1−9の存在下においてY−s11との相互作用に関して競合し得る。色シフト変異体が、Xの変異体およびX’の変異体を区別するために使用され得、それらの変異体は、Yとの相互作用に関して他方に勝って競合する。例えば、GFPにおいて、鎖10は、黄色シフトGFP改変体を産生するために、残基T203Yで変異され得る。したがって、例えば、タンパク質Xは、GFP s10 T203Yによってタグ化され得、そして変異タンパク質X’は、「緑色」s10 T203によってタグ化され得る。上記相互作用タンパク質は、s11によってタグ化される。上記3つのフラグメントは、1つの実施形態において、同じ細胞において同時発現され得る。XまたはX’のいずれもが、Yとの相互作用において、より効率的であり、それは、上記アッセイフラグメントとの補完複合体の一部を形成し、そうして再構成された蛍光タンパク質の色を決定する。したがって、この例示において、緑色蛍光は、X’がYとの結合に関してXに勝って競合するという示唆を提供するのに対して、黄色蛍光は、野生型Xがより良好な結合因子であったという示唆を提供する。このような競合結合アッセイは、より高い結合親和性を有するタンパク質の改変体(すなわち、抗体改変体、アンキリンドメイン融合物に基づく結合因子(Binzら、2004 High−affinity binders selected from designed ankyrin repeat protein libraries、Nature Biotechnology 22:575−582)など)についてのスクリーニングに生産的に使用され得る。
【0049】
(3フラグメントのタンパク質−タンパク質相互作用アッセイシステム)
本発明の1つの局面は、3フラグメント補完システムを利用するタンパク質−タンパク質相互作用アッセイシステムに関する。簡単にいうと、3フラグメントシステムにおいて、2つの相互作用タンパク質が、2つのGFPフラグメントの各々との融合物として発現され、各GFPフラグメントは、1以上の隣接するβ鎖に対応する(すなわち、X−s10およびY−s11、XおよびYは、相互作用タンパク質または潜在的な相互作用タンパク質である)。添加されるか、または発現される、X−s10構築物およびY−s11構築物において示されない上記蛍光タンパク質のβ鎖に対応するアッセイフラグメントの存在下での、宿主細胞における上記2つの融合物の同時発現は、上記3つのフラグメントの間に補完の機会を提供し、XおよびYは、相互作用する。XとYとの間の相互作用の非存在下において、上記3つのフラグメントは、補完しない。補完は、蛍光によって可視化される。したがって、このシステムは、Xと相互作用する未知のタンパク質Yを同定するために使用され得る。
【0050】
上記システムはまた、タンパク質Xに対する改良された親和性を有するYの操作された改変体をスクリーニングするために使用され得る。
【0051】
上記システムはまた、XとYとの間の相互作用を妨げる化学物質についてスクリーニングするために使用され得る。
【0052】
反対に、上記システムは、XとYとの間の相互作用に対する化学物質の妨害効果を回避し得るタンパク質Yについてスクリーニングするために使用され得る。
【0053】
レポーター蛍光タンパク質およびレポーター発色団タンパク質は、自己補完して再構成型レポータータンパク質を形成可能な3つ(またはそれ以上の)個々のフラグメントへと分割され得る。サンドイッチ形式タンパク質検出アッセイの一実施形態において、その蛍光タンパク質または発色団タンパク質の2つのタグフラグメントは、試験タンパク質に融合される。これらのフラグメントは、一緒になって、第三フラグメントによって補完されて蛍光表現型または発色団表現型を再構成することが可能である。例えば、試験タンパク質は、GFPの2つの連続するβ鎖の間に挿入され得る(すなわち、GFP S10−x−GFP S11)。可溶性タンパク質の検出は、GFP1−9による検出可能な補完によって達成される。この実施形態において、その3つのフラグメントの補完は、試験タンパク質を可溶性かつ全長であると同定し、これは、xに融合されたGFPの2つのフラグメントが、xによって機能的に連結されることを示す。特に指向性進化ストラテジーの状況において、このアプローチは、試験タンパク質xが実際に全長でありかつインタクトであることを確実にし(一方、X−GFP S11は、GFP1−10のみを補完し、GFP1−9は補完しない)、試験タンパク質の短縮形または初期リボソーム結合部位を組み込んだバージョンまたはタンパク質分解したバージョンの出現を防ぐという利点を提供する。
【0054】
より厳密な関連する溶解度アッセイ実施形態は、試験タンパク質に融合した2つのタグフラグメントを利用し、それらのフラグメントの各々は、独立した識別可能な第三補完アッセイフラグメントを用いて機能的に再構成することによって、独立して検出され得る。より具体的には、GFP S10−x−GFP S11という融合物において、鎖10は、円順列GFP 11−9Δ10(円順列11−1−2−3−4−5−6−7−8−9(11と1とが連結されており、10を欠いている。数字は、鎖を指す。図3を参照のこと))によって検出可能である。一方、鎖11は、1−10Δ11(1−2−3−4−5−6−7−8−9−10(11を欠いている))によって検出可能である。上記2つのタグを独立して同時に検出することは、1つの補完対または両方の補完対の色シフト改変体を利用することによって容易になり得る(すなわち、GFP11−9Δ10が、シアン色改変体(Y66W)であり得、GFP1−10Δ11が、黄色改変体(T203Y)であり得る)。あるいは、それらのタグフラグメントは、別個のアミノ酸配列を有する複数の蛍光タンパク質から誘導され得、そして対応する適切なアッセイフラグメントを用いて検出され得る。例えば、GFP由来の鎖11は、試験タンパク質XのN末端をタグ化するために使用され得、GFPの鎖1−10を用いて検出され得る。一方、赤色蛍光タンパク質DsRed(Matzら、1999、Nat.Biotechnol.17:969〜973)由来の鎖11は、同じ試験タンパク質XのC末端への融合物として同時に使用され得、そしてDsRedの鎖1−10を用いて検出され得る。
【0055】
代替的な実施形態は、試験タンパク質によって連結された2つの再構成されたGFPの間で示されるFRETを利用する。例えば、CFP11−9Δ10::10−X−11::YFP1−10が、使用され得る。そのような構築物は、CFP−x−YFPに対して機能的に等価である。CFP−x−YFPは、xがインタクトである限りはCFPドナーからYFPアクセプターへのFRETを示し、xが切断された場合にはFRETを失い、近接状態からCFPおよびYFPを遊離させ、FRETの効率は、(1/r)(rは、ドナーとアクセプターとの間の距離である)に依存することが、以前に示されている。
【0056】
(原核生物細胞培養物における適用および真核生物細胞培養物における適用)
本発明のスプリット蛍光タンパク質系およびスプリット発色団タンパク質系が、事実上すべての細胞型(細菌細胞(例えば、E.coli)および哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)が挙げられるが、これらに限定されない)におけるアッセイに適用され得る。1つの限定事項は、GFPタンパク質およびGFP様タンパク質の発現は、高酸性環境(すなわち、pH=4.0以下)では弱められることである。同様に、補完率は、一般的には、pH6.5以下の条件下では非効率的である(下記の実施例8を参照のこと)。
【0057】
当業者によって認識されるように、タグフラグメントおよび/またはアッセイフラグメントを発現するために使用されるベクターは、そのベクターが存在する宿主細胞と適合性でなければならない。同様に、種々のプロモーター系が、利用可能であり、細胞型、株などとの適合性について選択されるべきである。コドン最適化技術が、周知であるような他の細胞において使用するために配列を適合するために使用され得る。
【0058】
本発明の保管アッセイのために哺乳動物細胞を使用する場合、コドン最適化のための代替法は、化学的トランスフェクション試薬(例えば、最近記載された「チャリオット(chariot)」系(Morrisら、2001、A peptide carrier for the delivery of biologically active proteins into mammalian cells.,Nature Biotechnol.19:1173〜1176))の使用である。そのChariotTM試薬は、哺乳動物細胞の細胞質中にタンパク質を直接トランスフェクトするために使用され得る。従って、このアプローチは、インビボタンパク質検出アッセイのために有用である。このアッセイにおいて、そのアッセイフラグメントは、細胞によって遺伝子によりコードされる試験タンパク質−タグフラグメント融合物が発現する前または後のいずれかに、細胞中に導入され得る。
【0059】
(改良されたタンパク質改変体を単離するための方法)
上記のタンパク質相互作用アッセイは、進化していない親タンパク質と比較して改善された特性を有するタンパク質改変体を単離することを目的とする指向性進化ストラテジーと組み合わせて、使用され得る。
【0060】
変異型タンパク質改変体のライブラリーを作製するための当該分野で公知の任意の方法が、タグフラグメントとの融合物として発現され得る候補試験タンパク質を生成するために使用され得る。その標的タンパク質または標的ポリペプチドは、通常は、その核酸を変異させることによって変異される。変異させるための技術は、当該分野で周知である。これらの技術としては、エラープローンPCR、化学的変異誘発、およびカセット変異誘発などの技術が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、宿主細胞のミューテーター株が、変異頻度を増加するために使用され得る(GreenerおよびCallahan(1995)Strategies in Mol.Biol.7:32)。例えば、エラープローンPCR(例えば、上記Ausubelを参照のこと)は、長い配列全体にわたってランダムに低レベルの点変異を導入するために、低忠実度ポリマー化条件を使用する。他の変異誘発方法としては、例えば、組換え(WO98/42727);オリゴヌクレオチド指向性変異誘発(例えば、Smith,Ann.Rev.Genet.19:423〜462(1985);BotsteinおよびShortle,Science 229:1193〜1201(1985);Carter,Biochem.J.237:1〜7(1986);Kunkel「The efficiency of oligonucleotide directed mutagenesis」Nucleic acids & Molecular Biology,EcksteinおよびLilley編,Springer Verlag,Berlin(1987),Methods in Enzymol.100:468〜500(1983)およびMethods in Enzymol.154:329〜350(1987)における概説を参照のこと);ホスホチオエート媒介性DNA変異誘発(Taylorら、Nucl.Acids Res.13:8749〜8764(1985);Taylorら、Nucl.Acids Res.13:8765〜8787(1985);NakamayeおよびEckstein,Nucl.Acid Res.14:9679〜9698(1986);Sayersら、Nucl.Acids Res.16:791〜802(1988);Sayersら、Nucl.Acids Res.16:803〜814(1988));ウラシル含有テンプレートを使用する変異誘発(Kunkel,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 82:488〜492(1985)およびKunkelら、Methods in Enzymol.154:367〜382,1987);ギャップ付き二重鎖DNAを使用する変異誘発(Kramerら、Nucl.Acids Res.12:9441〜9456(1984);KramerおよびFritz,Methods in Enzymol.154:350〜367(1987);Kramerら、Nucl.Acids Res.16:7207(1988));ならびにFritzら、Nucl.Acids Res.16:6987〜6999(1988))が挙げられる。さらなる方法としては、ポイントミスマッチ修復(Kramerら、Cell 38:879〜887(1984))、修復欠損宿主株を使用する変異誘発(Carterら、Nucl.Acids Res.13:4431〜4443(1985);Carter,Methods in Enzymol.154:382〜403(1987))、欠失変異誘発(EghtedarzadenおよびHenikoff、Nucl.Acids Res.14:5115(1986))、制限選択および制限増幅(Wellsら、Phil.Trans.R.Soc.Lond.A 317:415〜423(1986))、完全遺伝子合成による変異誘発(Nambiarら、Science 223:1299〜1301(1984);SakamarおよびKhorana,Nucl.Acids Res.14:6361〜6372(1988);Wellsら、Gene 34:315〜323(1985);ならびにGrundstromら、Nucl.Acids Res.13:3305〜3316(1985)が挙げられる。変異誘発のためのキットが、市販されている(例えば、Bio−Rad,Amersham International)。より最近のアプローチとしては、コドンベースの変異誘発が挙げられ、このアプローチにおいては、Murakamiら、2002,Nature Biotechnology 20:76〜81に記載されるRID方法によって例証されるように、コドン全体が置換され、それによって生じた変異体の多様性が増加する。
【0061】
細胞ベースの発現系において、改変体を発現するクローンは、上記のインビボアッセイまたはインビトロアッセイを使用して、溶解度について迅速にスクリーニングされ得る。従って、インビボでの実施形態において、クローンのライブラリーが、E.coliにおいて作製され、その各々のクローンは、第一独立誘導性プロモーターの制御下にタグフラグメントに融合した個々の改変体タンパク質をコードする発現可能構築物を保有する。その細胞は、第二の別個に誘導可能なプロモーターの制御下に、補完アッセイフラグメントをコードする発現可能な構築物を同時に保有するか、またはアッセイフラグメントポリペプチド自体を同時に保有する(上記のMorrisら(2001)に記載されるようなタンパク質トランスフェクション方法によって導入される)。
【0062】
あるインビボ実施形態において、細胞は、タグフラグメント−タンパク質改変体融合物を発現するように、そしてその後にその細胞において補完フラグメントを発現するように、誘導される。最も好ましい実施形態において、その融合物の発現は、不溶性融合物の凝集を可能にするために充分な時間の間(すなわち、1時間;下記の実施例4および実施例10を参照のこと)抑制または停止され、その後、補完フラグメントの発現を誘導される。このアプローチのバリエーションにおいて、その細胞は、上記融合構築物のみを、好ましくは誘導性プロモーター/抑制性プロモーターの制御下に保有する。補完フラグメントは、タンパク質トランスフェクション方法論によって導入される。
【0063】
種々のインビトロ実施形態が、可能である。一般的に、これらは、例えば、E.coliにおける、改変体タンパク質−タグフラグメント融合物の発現と、その後の細胞溶解、および補完アッセイフラグメントポリペプチドとの反応を包含する。
【0064】
(事前補完)
GFPフラグメントの補完の間の蛍光形成速度は、その発色団が、適切な発色団アミノ酸を保有するフラグメントにおいて予め形成されたGFPのフラグメントを使用することによって、発色団の環化が全く生じていないフラグメントと比較して、大幅に増加され得る。簡単に述べると、発色団アミノ酸を保有する非蛍光性の事前補完されたGFPフラグメントは、(1)そのフラグメントを、発色団アミノ酸を含まない補完フラグメントと混合すること;(2)補完反応および蛍光形成を完了させること;(3)それらのフラグメントを、例えば、化学的手段によって折り畳みを解いて、折り畳みを解かれた非蛍光GFPフラグメントを生成させること;(4)発色団アミノ酸を含むフラグメントを回収し、それを他のフラグメントから分離すること;(5)発色団アミノ酸を保有するフラグメントを再生することによって、形成され得る。このフラグメントは、たとえ環化発色団を含むが、実質的に非蛍光性のままである。なぜなら、このフラグメントは、非蛍光性であるように化学的手段または他の手段によって実質的に折り畳みを解かれており、補完フラグメントの非存在下では折り畳みを解かれたままであるからである。蛍光の迅速な回復は、発色団に関連する共有結合改変を生じる必要なく、単に、補完性の非発色団含有GFPフラグメントを再添加することによって得られる。このアプローチによると、遅い発色団環化反応が完了するので、補完の間の蛍光の形成は、補完フラグメントの結合速度と、折り畳まれたネイティブのβバレル構造の形成とによってのみ、制限される。
【0065】
(スプリットタンパク質フラグメントの操作)
(可溶性自己補完性フラグメントを単離するための指向性進化ストラテジー)
本発明の別の局面は、フラグメントの指向性進化および連続誘導によって、理想的なスプリットタンパク質相互作用因子(interactor)を作製するための方法に関する。連続的な誘導の組み込みは、スプリットフラグメントの同時誘導を特定する既存の公開されたアプローチとは対照的である。簡単に述べると、連続誘導アプローチにおいて、フラグメント1が、一定に保たれ、そしてフラグメント2が、進化させられる。フラグメント1が一定に保たれてフラグメント2が進化させられる場合、フラグメント2は、まず発現され、その後、発現が停止される。そのフラグメントは、凝集させられるか、または可溶性のままであるようにされる。次に、フラグメント1が、発現される。両方のフラグメントが同時発現される場合、これは、擬陽性をもたらし得る。なぜなら、凝集の前に補完が生じ得るからである。連続発現は、真の陽性(すなわち、改変体)の選択をもたらす。最適なフラグメント2改変体の選択の後、この改変体は、一定に保たれ、その後、フラグメント1が進化させられる。このプロセスは、望ましいフラグメント溶解度が達成されるまで、さらなる連続誘導を使用して継続され得る。このアプローチを使用して、生じるフラグメントは、補完の前にそれ自体が可溶性であるように操作され得る。
【0066】
(検出可能なタンパク質の溶解度変動の減弱)
可溶性フラグメントは、融合したパッセンジャードメイン(試験タンパク質)の溶解度に対するその変動効果を減少するようにさらに操作され得る。簡単に述べると、上記フラグメントに融合された場合には単独で発現された場合よりも溶解度が小さい試験タンパク質が、そのフラグメントを、融合物の溶解度と非融合物の溶解度とが同様であることによってその試験タンパク質の溶解度に対するそのフラグメントの効果を減少するように操作することを目的とする指向性進化アプローチにおいて、「おとり(bait)」ドメインとして使用される。このストラテジーは、小さなGFPフラグメントを最適化する際に使用され、融合されたパッセンジャータンパク質に対する変動効果が減弱した改変体を生じた(下記の実施例4を参照のこと)。このアプローチは、上記融合物の溶解度が単独で発現されたおとりタンパク質より低い適切なおとりタンパク質を使用して、同時かまたは連続してGFPの1以上のフラグメントに適用され得る。
【0067】
(キット)
本発明の別の局面は、上記の種々のアッセイを実施する際に有用なスプリット蛍光タンパク質系およびスプリット発色団タンパク質系を提供する。本発明のキットは、本発明のスプリット蛍光系およびスプリット発色団系の使用を容易にし得る。本発明のアッセイを実施するための種々の材料および試薬が、提供され得る。キットは、試薬を含み得、この試薬としては、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド、細胞形質転換試薬および細胞トランスフェクション試薬、ポリペプチドを精製するための試薬および材料、タンパク質変性試薬およびタンパク質再折り畳み試薬、ならびに本発明のアッセイおよび他の方法を実行する際に有用な他の溶液または緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。キットはまた、コントロールサンプル;本発明のアッセイを較正する際に有用な材料;ならびにアッセイ反応が実施され得る容器、チューブ、マイクロタイタープレートなどを含み得る。キットは、容器中に包装され得、その容器は、そのキットの内容物を収容するための区画、そのアッセイを実施するための指示書などを含み得る。
【0068】
例えば、キットは、本発明の1つ以上のスプリット蛍光タンパク質フラグメント、1つ以上の蛍光タンパク質フラグメントをコードする1つ以上のポリヌクレオチドベクター、そのベクターを増殖するために適切な細菌細胞株、1つ以上の蛍光タンパク質フラグメントをコードする構築物で事前形質転換または安定にトランスフェクトされた細胞、ならびに発現された融合タンパク質の精製のための試薬を提供し得る。
【0069】
本発明のタンパク質検出アッセイの実施を容易にするキットの一実施形態において、そのキットは、タグ蛍光タンパク質フラグメントまたはタグ発色団タンパク質フラグメント(すなわち、GFP S11およびGFP S10)のコード配列を含むレシピエント核酸ベクターを含み、これは、そのタグフラグメントコード配列のN末端にインフレームで試験タンパク質を挿入するためのマルチクローニング部位を含む。必要に応じて、この挿入部位の後には、下流タグ配列のコード配列とインフレームであるリンカーポリペプチドのコード配列が存在し得る。具体的な実施形態は、pTET−SpecRプラスミドである。このプラスミドの操作は、実施例1において記載されており、このプラスミドは、図1において示されている。pTET−SpecRプラスミドの完全ヌクレオチド配列が、図1Bに示される。X−s10およびY−S11は、別々に発現され得るか、または両方とも単一のポリシストロンから発現され得る。
【0070】
これらのレシピエントまたは「タグベクター」は、適切な宿主細胞において試験タンパク質−タグ融合物を生成するために使用される。インビトロアッセイ実施形態において、このキットは、そのタグベクターによって発現される試験タンパク質−タグフラグメント融合物の相互作用を検出するために使用される、予め精製されたアッセイフラグメント(すなわち、GFP1−9ポリペプチド)をさらに含む。インビボアッセイ実施形態において、このキットは、「アッセイベクター」をさらに含む。この「アッセイベクター」は、タグベクターと適合性であり、かつ独立して調節されるプロモーターの制御下にアッセイフラグメントをコードする。別のインビボアッセイ実施形態において、アッセイベクター(すなわち、誘導性プロモーターの制御下にGFP1−9をコードするベクター)を含む細胞が、適合性タグベクターとともにこのキットにおいて提供され、この適合性タグベクター中に試験タンパク質がクローン化され得る。この適合性タグベクターにおいて、発現は、別個に誘導可能なプロモーターによって制御される。このアッセイベクターを含む細胞は、タグベクターで形質転換され得、細胞蛍光が、モニタリングされ得る。
【0071】
本発明のアッセイを較正するための材料が、提供され得る。一実施形態において、このキットは、融合タンパク質試薬として、GFP S10およびGFP S11に融合された精製された相互作用コイルドコイルを含む。別のキットにおいて、GFP S10およびGFP S11は、Mootz & Muir、2002、Protein splicing triggered by a small molecule J.Am.Chem.Soc.124:9044−9045、Standaertら、1990、Molecular cloning and overexpression of the human FK506−binding protein FKBP、Nature 346:671−674;Chenら、1995、Identification of an 11−kDa FKBP12−rapamycin−binding domain within the 289−kDa FKBP12−rapamycin−associated protein and characterization of a critical serine residue、Biochemistry 92:4947−4951にあるような、FKB 12およびFRB(それらの相互作用がラパマイシンの添加によって誘導され得る2つのタンパク質)に融合される。
【0072】
(蛍光タンパク質および発色団タンパク質)
本発明は、スプリット蛍光タンパク質系およびスプリット発色団タンパク質系の設計のための方法および原理を提供し、これは、本明細書において、タンパク質相互作用の検出およびタンパク質相互作用の定量化における使用のための最適なスプリットGFP系の作製および分子進化によって例証される。しかし、他のGFP様タンパク質が、本発明の実施において使用され得る。
【0073】
ある蛍光タンパク質群は、Aequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)、ならびに多数のGFP改変体(例えば、シアン色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質など(Zimmer、2002、Chem.Rev.102:759〜781;Zhangら、2002、Nature Reviews 3:906〜918))を包含する。代表的には、これらの改変体は、配列番号2(または配列番号8)と約80%以上の配列同一性を共有する。これらの色シフトGFP改変体は、青色〜黄緑色の放出色、増加した明るさ、および光安定性を有する(Tsien,1998,Annual Review of Biochemistry 67:509〜544)。そのような1つのGFP改変体(増強型黄色蛍光タンパク質と呼ばれる)は、529nmにおいて発光極大を提示する。最近記載された別の改変体(金色改変体)は、トリプトファンの非天然改変体をシアン改変体に組み込むことによって作製された。これは、充分に赤色にシフトした574nmの発光極大によって特徴付けられる(Baeら、2003、J.Mol.Biol.328:1071〜1081)。
【0074】
改変型励起スペクトルおよび発光スペクトルを有するさらにGFPベースの改変体(Tsienら、米国特許出願第20020123113A1号)、蛍光強度および温度許容性が増大したさらなるGFPベースの改変体(Thastrupら、米国特許出願第2002010736A1号;Bjornら、米国特許出願第20020177189A1号);および減少した酸素レベル下で発色団形成するさらなるGFPベースの改変体(Fisher、米国特許第6,414,119号)もまた、記載されている。花虫綱のRenilla reniformisおよびRenilla kollikeri由来のGFPもまた、記載されている(Wardら、米国特許出願第20030013849号)。
【0075】
さらに、花虫綱(Anthozoa)由来の100種を超えるGFP様蛍光タンパク質および非蛍光色素タンパク質が、現在同定されている(概説について、Verkushaら、2003、GFP−like fluorescent proteins and chromoproteins of the class Anthozoa,Protein Structures:Kaleidoscope of Structural Properties and Functions,pp.405〜439,V.Uversky編,Research Signpost Press,Kereala,Indiaを参照のこと)。この群の花虫綱(Anthozoa)タンパク質としては、Discosoma種のサンゴ由来の赤色蛍光タンパク質DsRed(Matzら、1999、Nat.Biotechnol.17:969〜973)、および種々のDsRed(例えば、DeRed1、DsRed2)が挙げられる。DsRedおよび他の花虫綱(Anthozoa)蛍光タンパク質は、Aequorea victoria由来の野生型GFPに対してたった約26%〜約30%のアミノ酸配列同一性しか有さないが、主要なすべてのモチーフが保存されており、このことは、GFPの11本鎖βバレル構造の形成を示す。DsRedの結晶構造もまた、解明されており、この結晶構造は、GFP MMDB Id:5742の11本鎖βバレル構造の保存を示す。
【0076】
長い波長の赤色蛍光タンパク質DsRedの多数の改変体もまた、記載されている。例えば、発光スペクトルがさらに赤色にシフトしている最近記載されたDsRed改変体が、本発明の実施において使用され得る(Wiehlerら、2001、FEBS Letters 487:384〜389;Terskikhら、2000,Science 290:1585〜1588;Bairdら、2000,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:11984〜11989)。最近、DsRedのモノマー改変体が、記載された(Campellら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:7877〜7882)。この改変体(「mRFP1」と呼ばれる)は、(30時間かけて成熟する野生型DsRedと比較して)急速に成熟し、残留緑色蛍光を有さず、他のDeRed改変体よりも約25nm長い励起波長および発光波長を有する。
【0077】
多数の海洋生物由来の増加する多数の他の蛍光タンパク質が、最近記載されており、Protein Data Bankは、現在、多数のGFPおよびGFP改変体の結晶構造、ならびに種々のGFPアナログの結晶構造を列挙する。サンゴ、シーペン、ホヤ、およびイソギンチャクに由来する、GFPと類似すると推測される構造を有する関連蛍光タンパク質が、記載されており、それは、本発明のスプリット蛍光タンパク質系の生成において使用され得る(概説について、Zimmer、2002、Chem.Rev.102:759〜781;Zhangら、2002、Nature Reviews:3:906〜918を参照のこと)。
【0078】
さらに、Anemonia majano由来の蛍光タンパク質、Zoanthus sp.由来の蛍光タンパク質、Discosoma striata由来の蛍光タンパク質、Discosoma sp.由来の蛍光タンパク質、およびClavularia sp.由来の蛍光タンパク質が、報告されている(Matzら、上記)。イシサンゴ種Trachyphilia geoffroyiからクローニングされた蛍光タンパク質は、緑色光、黄色光、および青色光を発光すること、そしてUV光に暴露されると緑色光発光を青色光発光へと変換することが、報告されている(Andoら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:12651〜12656)。イソギンチャク由来の最近記載された蛍光タンパク質としては、Anemonia sulcataからクローニングされた緑色蛍光タンパク質および橙色蛍光タンパク質(Wiedenmannら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:14091〜14096)、Heteractis magnificaの触手からクローニングされた天然の増強型緑色蛍光タンパク質(Hongbinら、2003、Biochem.Biophys.Res.Commun.301:879〜885)、およびAnemonia sulcataからクローニングされた弱い赤色蛍光を示す概して非蛍光性の紫色色素タンパク質および近赤外シフト発光スペクトル(595nm)を示すその改変体(Lukyanovら、2000、J.Biol.Chem.275:25879〜25882)が挙げられる。
【0079】
イソギンチャクEntacmaea quadricolorから単離された最近記載された赤色蛍光タンパク質EqFP611は、独特の共平面トランス発色団を有する近赤外の非常に蛍光性のタンパク質である(Wiedenmannら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11646〜11651)。EqFP611の結晶構造は、解明されており、これは、GFP MMDB Id:5742の11本鎖βバレル構造の保存を示す(Petersenら、2003、J.Biol.Chem.August 8,2003;M307896200)。
【0080】
色素体特性を有するなおさらなる種類のGFP様タンパク質および蛍光特性を有するなおさらなる種類のGFP様タンパク質が、記載されている。そのような一群のサンゴ由来タンパク質(ポシロポリン)は、広範なスペクトル特徴および蛍光特徴を示す(DoveおよびHoegh−Guldberg,1999,PCT出願WO00/46233;Doveら、2001、Coral Reefs 19:197〜204)。最近、造礁サンゴMontipora efflorescens由来のポシロポリンRtms5の精製および結晶化が、記載されている(Beddoeら、2003、Acata Cryst.D59:597〜599)。Rtms5は、色が深青色であるが、弱く蛍光する。しかし、Rtms5ならびにRtms5に対して配列相同性を有する他の色素タンパク質は、単一アミノ酸置換を介して近赤外蛍光タンパク質へと相互変換され得ることが報告されている(Beddoeら、2003、上記;Bulinaら、2002、BMC Biochem.3:7;Lukyanovら、2000、上記)。
【0081】
ポシロポリンに密接に関連する他の種々のサンゴ由来色素タンパク質もまた、公知である(例えば、Lukyanovら、2000、J.Biol.Chem.275:25879〜82;Gurskayaら、2001、FEBS Letters 507:16〜20を参照のこと)。これらの色素タンパク質が、GFPおよび他の蛍光タンパク質の保存された11本鎖βバレル構造を含む程度まで、これらの色素タンパク質は、本明細書中に記載されるように自己補完性フラグメントへと分割され得、そしてアッセイシステムにおいて使用され得る。
【0082】
MMDB Id:5742の11本鎖βバレル構造から5オングストローム未満、しばしば3オングストローム未満または4オングストローム未満、好ましくは2オングストローム未満の根2乗平均偏差を有する構造を有する任意の蛍光タンパク質が、自己補完性フラグメントの開発において使用され得る。いくつかの場合において、蛍光タンパク質は、マルチマー形態で存在する。例えば、DeRedは、テトラマーである(Cotletら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:14398014403)。当業者によって認識されるように、そのようなマルチマー蛍光タンパク質とGFP(モノマー)との間の構造偏差(structural deviation)は、その蛍光タンパク質の構造のモノマー単位に基づいて評価される。
【0083】
当業者によって認識されるように、そのような蛍光タンパク質または色素タンパク質構造は、当該分野で周知の比較方法論を使用して同定され得る。そのタンパク質を同定する際に、MMDB ID:5742構造に対する並置および比較における重要な特徴は、βバレル構造の保存(すなわち、代表的には、11本のβ鎖を含むが、少なくとも1つの場合には、もっと少ないβ鎖を含む(Wiedenmannら、2000(上記)を参照のこと)、ならびに二次構造エレメントの位相または結合順序(例えば、Ormoら、「Crystal strcuture of the Aequorea victoria green fluorescent protein」,Yangら、1996、Science 273:5280,1392〜5;Yangら、1996 Nat Biotechnol.10:1246〜51)である。代表的には、蛍光タンパク質とGFP構造との間の偏差のほとんどは、重要なβ鎖間の結合鎖またはリンカーの長さにある(例えば、Yarbroughら、2001、Proc.Natl Acad Sci USA 98:462〜7中のthe comparison of DsRed and GFPを参照のこと)。Yarbroughらにおいて、GFPとDsRedとのアラインメントが、図示されている。立体図から、11本鎖バレルが、この2つの構造の間で強く保存されていることが、明らかである。c−α骨格が、169個のアミノ酸にわたって根2乗平均偏差(RMSD)が1オングストローム以内に並置されるが、その配列同一性は、DsRedとGFPとを比較してたった23%である。
【0084】
構造比較において、比較される2つの構造は、当業者に周知のアルゴリズムを使用して、例えば、CCP4プログラムソフトウェアパッケージ(COLLABORATIVE COMPUTATIOAL PROJECT,NUMBER 4.1994,「The CCP4 Suite:Program for Protein Crystallography」,Acta Cryst.D50,760−763)を用いて並置される。このようなプログラムを使用するにあたって、ユーザーは、並置されるべき2つの構造のPDB座標ファイルを入力し、このプログラムは、2つの構造中の原子の位置における全体的な差異を最小にするために剛体変換(回転および並進)を用いて、並置された構造の原子の出力座標ファイルを生成する。各構造についての出力された並置座標は、別個に可視化されてもよいし、容易に入手可能な分子グラフィックプログラム(例えば、RASMOL,SayleおよびMilner−White,September 1995,Trends in Biochemical Science(TIBS),Vol.20,No.9,p.374)またはSwiss PDB Viewer,Guex,NおよびPeitsch,M.C.,1996 Swiss−PdbViewer for Macintosh and PC.Protein Data Bank Quaterly Newsletter 77,p.77)による重ね合わせとして可視化されてもよい。
【0085】
RMSDを考慮する場合、このRMSD値は、構造アラインメントの程度に応じて定められ、このサイズは、全体的な構造類似性の記述子としてRMSDを用いる場合に、考慮に入れられる。RMSDのスケーリングの問題は、代表的には、特定の閾値内で並置されるアミノ酸ブロックを含めることによって処理される。特定の基準を満たす並置された配列の乱れていない(unbroken)ブロックが長いほど、その構造は、よりよく並置される。DsRedの例において、c−α炭素の164は、GFPの1Å内にあるように並置され得る。代表的には、当業者は、例えば、Daliら、Journal of Molecular Biology 1993,233,123−138に記載されるように、剛体変換に基づいて、2つの試験構造を並置し得るプログラムを選択し得る。DALIアルゴリズムの出力は、剛体変換を使用して、2つの構造間で重ね合わせられ得る配列ブロックである。閾値Z=2以上のZスコアを有する領域は、類似していると報告される。このようなブロックの各々について、全体的なRMSDが報告される。
【0086】
本発明において使用するための蛍光タンパク質または色素タンパク質のRMSDは、11本のβ鎖内の配列の少なくとも80%について5Å内である。好ましくは、RMSDは、11本のβ鎖(重ね合わせとして図示された2つの並置された構造の目視およびDALIプログラム出力により報告された並置ブロックとの比較により決定されるβ鎖)内の配列の少なくとも90%について2Å内である。当業者により認められるように、β鎖間のリンカーは、かなり変動し得、必ずしも構造間で重ね合わせできなくてもよい。
【0087】
好ましい実施形態において、蛍光タンパク質または色素タンパク質は、このタンパク質と比較して折り畳み特性または溶解度が改善されている、このタンパク質の変異バージョン、またはこのタンパク質の改変体である。しばしば、このようなタンパク質は、例えば、WO0123602に記載されている方法および増大された折り畳みについて選択するための他の方法を用いて同定され得る。
【0088】
例えば、増大した折り畳み特性を有する蛍光タンパク質を得るために、この蛍光タンパク質の折り畳み効率を減少させる、「おとり」ペプチドまたは「ゲスト」ペプチドが、この蛍光タンパク質に連結され得る。このゲストペプチドは、挿入される場合に、この蛍光タンパク質の折り畳み効率を減少させる任意のペプチドであり得る。変異蛍光タンパク質のライブラリーが作製される。このベイトペプチドは、蛍光タンパク質に挿入され、このタンパク質の蛍光の程度が、アッセイされる。おとりペプチドと親蛍光タンパク質とを含む融合タンパク質と比較して増大した蛍光を示すクローンが、選択される(蛍光強度は、正確に折り畳まれた蛍光タンパク質の量を示す)。ゲストペプチドは、末端で蛍光タンパク質に連結されてもよいし、内部に挿入されてもよい。
【0089】
特定の実施形態において、本発明の実施において有用な、野生型蛍光タンパク質および変異蛍光タンパク質、ならびに野生型変異色素タンパク質および変異色素タンパク質は、極めて安定な「超折り畳み」改変体を生成するために、実験的に進化され得る。同時係属中の共有に係る米国特許出願第10/423,688号(2003年4月24日出願、本明細書に参考として援用される)に記載される方法は、GFP、DsRed、および任意の数の関連蛍光タンパク質ならびに色素タンパク質の指向性進化のために用いられ得る。このような超折り畳み改変体は、自己補完フラグメントに分割され得、このフラグメントをさらに進化させて、単独でまたは試験タンパク質に融合させた場合のこのフラグメントの溶解度特性を調節し得る。
【0090】
スプリット蛍光タンパク質フラグメントまたはスプリット色素タンパク質フラグメントの可溶性改変体および(試験タンパク質溶解度に対して)非変動性改変体の進化のための特定の方法は、小見出し「スプリットタンパク質フラグメント操作」(前出)にて提供される。
【実施例】
【0091】
本発明の種々の局面が、さらに記載され、以下のいくつかの実施例により例示されるが、これらのうちのいずれも、本発明の範囲を制限することは意図されない。
【0092】
(実施例1:プラスミドpTET−SpecRの構築)
市販のtetプロモーターPRO細菌発現システム(Clontech,Palo Alto,CA)は、発現プラスミドとは別個の第2のプラスミド上に調節タンパク質tetRを有し、大規模なライブラリーの作製を非能率的にしている。この制限を克服するために、本発明者らは、標的タンパク質の発現を制御するtetプロモーターと、調節タンパク質tetRとを、テトラサイクリン誘導性プロモーターであるtet、tetプロモーター調節タンパク質tetR、および選択可能な抗生物質マーカーであるSpecRを含む単一のプラスミド(抗生物質スペクチノマイシンに対する耐性を与える)上で組み合わせた。ColE1複製起点は、このプラスミドが、pTETプラスミドを有する細胞内で、適合性の起点(例えば、p15起点)と共存することを可能にする。このことは、一方のタンパク質(例えば、GFPのフラグメントとタグ化されたタンパク質)がプラスミドから発現され、そして、もう一方のタンパク質(例えば、補完GFPアッセイフラグメント)が、第2のプラスミド(たとえば、pETベクター(Novagen,Madison,WI))から発現されることを可能にする。pTET−SpecRプラスミドは、図1Aに図示され、このプラスミドの配列および遺伝的要素は、図1Bに示される。
【0093】
pTET−SpecRプラスミドを、市販のpPROTet.6×HNベクター、pPROLARベクター、およびBL21−PRO株(Clontech,Palo Alto,CA)により保有される自己複製プラスミドからの要素を組み合わせる、オーバーラップPCRにより操作した。クロラムフェニコール耐性遺伝子を、BL21−PRO株により保有される自己複製プラスミドからクローニングしたスペクチノマイシン耐性マーカーで置き換え、pPROLARベクターのカナマイシン耐性マーカーのプロモーターの制御下においた。本発明者らは、BL21−PRO株から単離したスペクチノマイシン耐性の自己複製プラスミドに由来するテトラサイクリンリプレッサー(tetR)タンパク質を、T0転写終結配列の上流にクローニングした。翻訳されたtetRの量は、SacIの下流にある弱いShine−Delgarno配列により調節する。このShine−Delgarno配列は、小さな縮重ライブラリーからShine−Delgarnoの改変体を選択して、無水テトラサイクリンの添加後の漏出を最小にし、そして誘導を最大にすることによって操作される(下記を参照のこと)。市販のバージョンに存在するSpeI制限部位を機能しないようにした(silence)。この新しいプラスミド「pTET−SpecR」を、NcoIおよびXbaIの制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)で消化して、GFP S11スプリットGFPクローニングカセットを得た。この得られたクローニング部位の構造は、Nco−1::6HIS::トロンビン切断部位::Nde−1::フレームシフトスタッファー(frame shift stuffer)::BamHI:(GGGS):SpeI::GFP S11(TAA終止)::KpnIである。クローニングカセットのセンス鎖は、NcoIおよびKpnIに隣接している:
【0094】
【化1】

【0095】
フレームシフトスタッファーは、再連結したベクターによるバックグラウンド発現を避けるために、好ましくは、NdeI制限部位とBamHI制限部位の間に加える。
フレームシフトスタッファーの例1:FS0
【0096】
【化2】

【0097】
フレームシフトスタッファーの例2:FS1
【0098】
【化3】

【0099】
C末端スプリットタンパク質フラグメント(例えば、GFP鎖11またはGFP鎖10〜11)を、特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、制限部位SpeIとKpnIとの間にクローニングし、隣接制限部位および所望のフラグメントのコード配列を提供する。このフラグメントはまた、特異的なオリゴヌクレオチドプライマーおよびPCR(当該分野で周知の方法)を使用して、鋳型DNA供給源および組込んだ制限部位から増幅され得る。完成したNcoI/KpnIカセットが、目的のベクター内に、適切な制限部位を操作することによって、他の発現ベクターまたは発現システム(例えば、pETベクター)に移され得ること、および、他の制限部位が採用され得ることは、当業者に明らかである。
【0100】
BL21(DE3)PRO細胞(Clontech,Palo Alto,CA)から単離したプラスミドを使用して、tetR遺伝子を増幅した。遺伝子全体の増幅は、この遺伝子の配列の5’特異的プライマーおよび3’特異的プライマーを使用することにより認識した。センスプライマーは、SacI制限部位、およびその後に続く、tetプロモーターの制御下に組換えタンパク質の最適な抑制/誘導のために最適化されたShine−Delgarno配列を含んだ(この実施例、下記を参照のこと)。下流のプライマーは、PROTetプラスミドのT0転写終結配列に相同な領域を含んだ。得られたPCR産物を、T0終結アンプリコンと組み立てて、最終産物を、当該分野で周知の方法によるPCR媒介性部位指向変異誘発によって、共通の制限部位を機能しないようにすることによって予め改変された、PROTetTM×HNベクター(Clontech,Palo Alto,CA)のSacI/SpeI制限部位を介してクローニングした。スペクチノマイシン耐性遺伝子を、以下の遺伝子特異的なプライマーを使用して、BL21 DE3 PROから単離したプラスミドから増幅した:
【0101】
【化4】

【0102】
P1プライマーおよびP2プライマーは、pPROLarベクター(Clontech,Palo Alto,CA)からのカナマイシンプロモーターの配列を含み、P3プライマーおよびP4プライマーは、カナマイシン部位の末端とSacIとの間に接合部を含んだ。完成したカセットを、AatII/SacI制限部位を介して、新規pTET−SpecRプラスミドに移動させた。
【0103】
【化5】

【0104】
を、重なるプライマーから操作し、NcoIおよびXbaIを介して、pTET−SpecRプラスミドにクローニングして、pTET−SpecR v1プラスミドおよびpTET−SpecR v2プラスミドを得た。tetRタンパク質の翻訳を制御するShine−Delgarno配列を、変異誘発および選択により最適化した。簡単に述べると、折り畳みレポーターGFP遺伝子を、DH10B株に形質転換されたスタッファーv1 pTET−SpecRプラスミドのNdeI−BamHIにクローニングした。tetR遺伝子を、Shine−Delgarno配列の4つのヌクレオチドについての縮重プライマーを用いて増幅し、このカセットを、GFP含有pTET−SpecR受容ベクターのSacI/SpeIにクローニングした。得られたライブラリーを、BL21 DE3株に形質転換した。最適な改変体を、誘導率(誘導後の細胞のGFP蛍光を、誘導前の細胞のGFP蛍光で割ったもの)を計算し、0.25μg/mlの無水テトラサイクリン(AnTET)を添加した際の最大誘導率を有する改変体を選択することによってスクリーニングした(表1)。最大の誘導率を示す最適なtetR配列のためのShine−Delgarno配列は、AATAAACATTAATG[配列番号32]である。
【0105】
【表1】

【0106】
(実施例2:スプリットGFPの実現可能な対の発見)
図2に概説されたスプリットGFPタンパク質のタグ化および検出のスキームを達成するために、本発明者らは、まず、折り畳みレポーターGFP(変異F99S、M153T、V163Aを有するもの(Crameri,Whitehornら、1996)、変異F64LおよびS65Tを有するもの(Patterson,Knobelら、1997))、または、格別に安定な「超折り畳み」GFP(折り畳みレポーターGFP変異、ならびにS30R、Y39N、N105T、Y145F、I171VおよびA206Vを含む)のいずれかに由来するフラグメントのいくつかの対を試験した。本発明者らは、アミノ酸1−145+145−238、1−155+156−238、1−171+171−238、1−195+196−238、1−214+214−238を含む、数種類のGFPフラグメントの対を、E.coli中の適合性プラスミド上に別々に、共発現させた。接合点は、β鎖間のループまたはターンに対応する(Tsien 1998;Baird,Zachariasら 1999)(図3を参照のこと)。超折り畳みレポーターGFPからのフラグメント対は、一貫して、折り畳みレポーターGFPからの同じ対よりもかなり明るいコロニーを生じた。例えば、156および172における超折り畳みGFPフラグメントは、折り畳みレポーターGFPに由来するフラグメントよりも明るかった(図4を参照のこと)。本発明者らの目的は、タンパク質タグとして使用するための1つのフラグメントのサイズを最小にすることであり、従って、本発明者らは、最小のフラグメント(1−214+214−238)を有する実現可能な対に焦点を当てた。タグ化ドメインのサイズをさらに減らすために、本発明者らはまた、1−214(GFP 1−10)を214−230(GFP S11)との補完性について試験し、小さなフラグメントから無秩序な残基231−238(Tsien 1998)を排除した。表2は、野生型および操作した変異体を含むGFP S11構築物の配列を示す。
【0107】
【表2】

【0108】
適合性の起点を有するpETベクター(Novagen,Madison,WI)からの超折り畳みGFPフラグメント1−214(GFP 1−10)および214−230(GFP S11野生型)の共発現は、蛍光のEshcerichia coli(E.coli)コロニーを生じた(図5、挿入部分)。対応する折り畳みレポーターGFPフラグメントでは、検出可能な補完は起こらなかった(図5、挿入部分)。超折り畳みGFP 1−10は、不溶性であったが、再び折り畳まれた封入体(実施例9、下記を参照のこと)を、Pyrobaculum aerophilumに由来する可溶性亜硫酸レダクターゼ(Fitz−Gibbon,Choiら 1997)と共にインキュベートすると、C末端が野生型GFPであるS11野生型とタグ化して、融合タンパク質亜硫酸レダクターゼ−GFP S11野生型を生じ、時間依存的な蛍光の増加を生じた(図5、グラフ)。
【0109】
(実施例3:GFPアッセイフラグメントGFP 1−10の操作)
本発明者らは、DNAシャッフリングにより超折り畳みGFP 1−10を向上し(Stemmer 1994)、その可溶性を向上させ、そして、亜硫酸レダクターゼ−GFP 11によるその補完を増加させた。超折り畳みGFP 1−10のPCRアンプリコンを、出版されたプロトコル(Stemmer 1994)を用いる、DNA断片化およびシャッフリングに供した。GFP 1−10 cDNAライブラリーのプラスミドを、pPROTETベクター(Clontech,Palo Alto,CA)上に亜硫酸レダクターゼ−GFP S11野生型タグ化タンパク質を含む、E.coli BL21(DE3)PRO発現株(Clontech,Palo Alto,CA)に形質転換した。この発現ライブラリーを、1.0OD600nmの凍結した20%グリセロール/Luria−Bertani(LB)ストックの2つの段階400倍希釈を使用して、ニトロセルロース膜の上にプレーティングした。37℃にて一晩増殖させた後、膜を、培地1mlあたり50μgカナマイシンおよび35μgクロラムフェニコール、および50μgスペクチノマイシンを含有するLB/Agarプレートに移し、1mM IPTGを足して37℃にて3時間おき、次いで、上記の抗体+600ng/ml無水テトラサイクリン(AnTET)を含有する新しいプレートの上に移動させた。最も迅速な蛍光の発色を示すクローンをピックアップし、−80℃にて20%のグリセロール凍結ストックとして凍結した。これらのクローンを、増殖させ、1mMイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)で誘導し、そして、可溶性の溶解物を、過剰量の精製した亜硫酸レダクターゼ−GFP S11野生型融合タンパク質を用いるインビトロアッセイ(下記の実施例9を参照のこと)において、補完効率についてスクリーニングした。最良の候補をプールし、もう一ラウンドの進化に供した。変異を、蛍光色素によるターミネーターDNA配列決定により確認した。シャッフリングおよび最も明るいクローンの選択の3回のラウンドの後、最良の改変体(GFP 1−10 OPTと名付けた)の可溶性溶解物のインビトロ補完性は、同じ量の再び折り畳まれた超折り畳みGFP 1−10と比べて80倍向上した(図5、グラフ)。折り畳みレポーターGFP変異(上記を参照のこと)に加え、GFP 1−10 OPTは、超折り畳みGFPからのS30R、Y145F、I171V、A206V、および、7つの新しい変異(N39I、T105K、E111V、I128T、K166T、I167V、S205T)を含み、そして、E.coliにおいて37℃で発現されると、約50%が可溶性である。非蛍光GFP 1−10 OPTの10mg/ml溶液の紫外−可視スペクトルには、レッドシフトしたGFP(Tsien 1998)の480nm吸収帯がなく、GFP 11の付加が、環化されたクロモフォアを作製するために必要とされる折り畳み工程を誘発することを示唆する(Tsien 1998)。精製されたGFP 1−10 OPT、超折り畳みGFP、および折り畳みレポーターGFPを、各々、10mg/mlでロードされる分析用ゲル濾過により研究した。GFP 1−10 OPTは、60%の二量体、35%の単量体、および5%の高次凝集体として溶出したが、全長の折り畳みレポーターGFPおよび超折り畳みGFPは、ともに、95%を超える単量体と、微量の二量体および高次凝集体として溶出した。
【0110】
(実施例4:GFP S11の操作)
C末端野生型GFP S11融合タグは、数個のPyrobaculum aerophilum(Fitz−Gibbon,Choiら 1997)試験タンパク質の可溶性を劇的に減少させた(表3)。3−ヘキスロース 6−ホスファターゼシンターゼ(HPS)は単独では、60%が可溶性であったが、野生型のGFP 11と融合させた場合、不溶性であった(図6、表3)。タンパク質の可溶性を、SDS−PAGE、および以前に記載されたゲルデンシトメトリー分析(Waldo,Standishら 1999;Waldo 2003)により決定した。簡単に述べると、ハイスループットのスクリーニングについて、1mlの細胞培養物を遠心分離によりペレット化し、100mM TRIS(pH7.5)、150mM NaClおよび10%v:vグリセロールを含有する緩衝液(TNG緩衝液)110μlに再懸濁した。他の場合において、3mlの細胞培養物を遠心分離によりペレット化し、300 10μlのTNG緩衝液に再懸濁した。超音波処理した後、サンプルを遠心分離して、可溶性フラクションおよびペレットフラクションを提供した。ペレットを、超音波処理した上清と等量のTNG中に再懸濁した。15μlの可溶性フラクションおよびペレットフラクションを、100mM TRIS、200mMジチオスレイトール、4% SDS、0.2%ブロモフェノールブルー、および20%グリセロールを含有する2×SDS変性緩衝液(15μl)と混合し、15分間100℃にて加熱した。変性したサンプルを、4〜20%勾配のCriterion SDS−PAGE(Biorad,Hercules,CA)上で分離した。タンパク質サンプルを、Gel Code Blue染色試薬(Pierce,Rockford,IL)を使用して染色し、GS−800 Calibrated Densitometer(Biorad,Hercules,CA)を用いて画像化した。較正走査装置(calibrated scanner)は、タンパク質スポットの合成光学密度(integrated optical density)Dを提供した。全ての発現されたタンパク質含量を、可溶性フラクションのタンパク質スポット光学密度(D)とペレットフラクションのタンパク質スポット光学密度(D)とを足すことによって見積もり、可溶性を、S=D/(D+D)として規定した。本発明者らは、E.coliにおける指向性進化の図式において、HPSを「おとり」として使用して、HPS−GFP S11融合物の可溶性が、HPS非融合物の可溶性と一致したGFP S11の変異体を発見した。
【0111】
【表3】

【0112】
HPS−GFP 11改変体およびGFP 1−10 OPTのライブラリーを、それぞれ、pTET−SpecRベクター(実施例1、前出を参照のこと)およびpET28ベクターからの配列において発現させた。独立した誘導性の適合性プラスミドを用いるこの連続的な誘導プロトコルは、同時翻訳の折り畳みおよびHPS−GFP S11の不溶性改変体とGFP 1−10 OPTとの補完により生じる偽陽性を回避することに役立った。ヘキスロースリン酸シンターゼ−GFP 11(HPS−GFP S11)融合物を、PCRにより増幅し、刊行されたプロトコル(Stemmer 1994)を用いてシャッフリングした。GFP S11変異体ライブラリーを、AnTET誘導性tetプロモーター(LutzおよびBujard 1997)を有するpTETプラスミドから、N末端6−HISタグを有するおとりタンパク質であるHPSとのC末端融合物として発現させ(図1および実施例1、前出を参照のこと)、そして、p15複製起点を含む改変したpETベクターにおいてGFP 1−10 OPTを発現するBL21(DE3)株へと形質転換した。最適物を、以下のような連続誘導プロトコルを使用してスクリーニングした。37℃において一晩増殖させた後、コロニーを有するニトロセルロース膜を、300ng/mlのAnTetを含有する、選択LB/寒天Bauerプレート上に移し、HPS−GFP S11ライブラリーを発現させ、これを、新しい「休止(resting)」プレートに1時間移して、AnTetをコロニーから拡散させ、HPS−GFP S11の発現を遮断し、そして、最終的に、1mM IPTGを含有するLB/寒天プレートに2時間移して、pETプラスミドから補完GFP 1−10 OPTの発現を誘導した。HPS−GFP S11野生型構築物は、完全に不溶性なので、連続発現プロトコルに従ってHPS−GFP S11野生型およびGFP 1−10 OPTを発現するコロニーは、わずかに蛍光を発するのみであった。より可溶性のHPS−GFP 11最適物に関連する、より明るいコロニーを、96ウェル組織培養プレートの選択液体培地にとり、−80℃の20%グリセロールストックとして保存した。これらのコロニーを、1mlの液体培地中で増殖させ、300ng/ml AnTETで誘導した。可溶性フラクションを、過剰の精製GFP 1−10 OPTを用いるインビトロアッセイ(下記、実施例9を参照のこと)において、補完効果についてスクリーニングした。最速の補完速度を有するクローンを選択し、さらにもう一ラウンドの進化およびスクリーニングのためにプールした。2ラウンドの進化は、2つの別個のGFP S11変異体、L221HおよびT225Nを生じた。本発明者らは、まず、L221H改変体(GFP 11 M1と名付ける)に焦点を当てた。この変異は、インビボにおいて、GFP 1−10 OPTを効率的に補完し、そして、HPS GFP S11野生型と比べて向上した可溶性を有したが、融合タンパク質の溶解度に対するGFP S11の有害な効果を完全には排除しなかった(図6および表3)。GFP S11 M2を、F223S(異なるスプリットGFPフラグメントの可溶性を実質的に増加した変異(実施例11、下記を参照のこと))を、T225Nと合せることによって操作した(表3、前出を参照のこと)。HPS−GFP 11 M2の可溶性は、HPS−GFP 11 M1またはHPS−GFP 11野生型のいずれに対しても大きく向上した(図6、表3)。HPS−GFP 11 M2のGFP 1−10 OPTでの補完率は、HPS−GFP 11 M1と比べて約5倍減少した。これは、可溶性融合タンパク質に匹敵する量である(図7)。本発明者らは、二重のGFP 1−10 OPTのC末端残基であるGFP S11 M2からK214を除去し、そして、縮重プライマーセット(当該分野で周知の方法)を使用してホットスポット位置223において64倍縮重ライブラリーをスクリーニングし、そして、得られたGFP 11 M2の改変体をHPSとのC末端融合物としてクローニングして、より保存的な変異について検索した。約200クローンの可溶性フラクションを、GFP 1−10 OPTを用いるインビトロアッセイ(実施例9、下記を参照のこと)においてスクリーニングした。平衡化した最良のGFP S11構築物(L221H,F223Y,T225N)(GFP S11 M3と称する:アミノ酸配列RDHMVLHEYVNAAGIT[配列番号16]、表2(前出)を参照のこと)は、良好な補完性で(図7)、融合タンパク質の溶解度の揺れを減らした(図6、表2、前出)。本発明者らはまた、GFP S11 M2タグを補完標的として使用して、上記の実施例3において概説した方法に従う指向性進化により、GFP 1−10 OPTの補完を向上させることを試みた。これにより、GFP 1−10 A4と呼ばれる改変体が生成され、この改変体は、GFP 1−10 OPTに比べ、約5速いGFP S11 M2の補完を示した。GFP 1−10 A4は、超折り畳み変異、ならびにさらなる変異R80Q、S99Y、T105N、E111V、I128T、K166T、E172VおよびS205Tを含んだ。A4改変体は、E.coliにおいて主に封入体として発現され、そして、GFP 1−10 OPTに比べ、インビボアッセイにあまり有用ではない。しかし、改変体A4は、インビトロアッセイにおいて有用である。なぜならば、改変体A4は、単に新しいTNG緩衝液に尿素で可溶化したペレットを希釈することによって封入体から再び折り畳まれ得、そして、GFP 1−10 OPTよりも4倍速くGFP S11 M2またはGFP S11 M3を補完するからである。
【0113】
(実施例5:GFP 1−10の可溶性バージョンまたは不溶性バージョンを使用する、連続的な誘導または同時誘導の効果の比較)
同時誘導が、不溶性かつ凝集したGFP 1−10の補完をもたらし得るという仮説を試験するために、本発明者らは、連続誘導プロトコルおよび同時誘導プロトコルを比較した。ColE1起点を有するベクターpTET上の大きなGFP 1−10フラグメント(折り畳みレポーターGFP 1−10、超折り畳みGFP 1−10またはGFP 1−10 OPT)、および、p15起点を有するpETプラスミド上の亜硫酸レダクターゼ−GFP S11野生型で同時形質転換されたBL21(DE3)E.coli細胞を、栄養寒天プレート上のニトロセルロース膜に二連でプレーティングし、直径約1mmまで一晩増殖させた。1つの膜を、連続誘導プロトコル(実施例4、前出を参照のこと)を使用して処理した。簡単に述べると、GFP 1−10を、まず、AnTETを用いて発現させ、その後、新しいプレート上に置いて、AnTETを除き、その後、1mM IPTGを含有する新しいプレート上の亜硫酸レダクターゼ−GFP S11野生型を発現させた。二連のプレートを、別々に同時誘導させた(AnTETおよびIPTGの両方を含有するプレート)。蛍光コロニーを、IllumaTool(LightTools Research,Encinitas,CA)を用いて488nmの光で照射し、そして、Kodak DC290デジタルカメラを使用して、520nmロングパスフィルタを通して画像化した。超折り畳みGFP 1−10を一過性に発現させ、亜硫酸レダクターゼ−GFP S11野生型の誘導前にインビボで凝集させると、細胞はぼんやりしている(図8)。対照的に、部分的に可溶性のGFP 1−10 OPTおよび亜硫酸レダクターゼ−GFP S11構築物を発現する細胞は、予想通りに、同時発現であっても連続発現であっても、明るい(図8)。
【0114】
(実施例6:インビトロで行なったスプリットGFPアッセイの感度)
本発明者らは、マイクロタイタープレートでの200μlの反応において、数個の異なる量の精製亜硫酸レダクターゼ−GFP S11 M3の補完について、蛍光漸増曲線(progress curve)を測定した(図9)。本発明者らは、高濃度かつ大モル過剰のGFP 1−10 OPT(800pmol)を使用して補完を開始させることにより、潜在的なより高次の動力学的効果を避けた。これらの感度実験について、96ウェルマイクロプレートを最初に、TNG緩衝液(100mM TRIS(pH7.5)、150mM NaCl、10%v:vグリセロール)中0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)の溶液で、10分間ブロッキングした。Talon樹脂で精製した(Clontech,Palo Alto,CA)6HIS−亜硫酸レダクターゼ−GFP S11 M3融合タンパク質の2倍の段階希釈を、同じ緩衝液中で行なった。この希釈は、20μlのアリコートあたり、200pmol〜0.1pmolの範囲にわたり、このアリコートを、96ウェルプレートのウェルに添加し、次いで、180μlのアリコートに添加された大過剰(800pmol)のGFP 1−10 OPT(約0.5mg/ml)を用いて実施した。その結果、大きなフラグメントの濃度は制限されなかった。粗製E.coli溶解物の、反応の感度に対する効果を、別個の実験で試験するために、サンプルをまた、GFP 1−10 OPTの添加前に、不適切な非タグ化タンパク質を発現するE.coli BL21(DE3)の溶解物(20μl)を添加することによって、スパイクした。蛍光動力学(λexc=488nm、λem=530nm)を、FL600マイクロプレート蛍光リーダー(Bio−Tek,Winnoski,VT)を用いてモニタリングし、3分間隔で15時間記録した。ブランクサンプル(20μlの不適切なタンパク質を発現するE.coli溶解物、100μlの0.5mg/ml GFP 1−10 OPT、および100μlのTNG緩衝液中0.5% BSA)のバックグラウンド蛍光を、最終蛍光値から減算した。ブランクは、最も低い標的濃度(0.1pmolの亜硫酸レダクターゼ−GFP S11 M3)から、30%未満のシグナルであった。補完蛍光は、分析物濃度の線形関数であった(図9)。10〜200pmol量の亜硫酸レダクターゼ−GFP S11 M3は、GFP 1−10 OPTの添加後15分以内で正確に定量化され得(図9A)、そして、0.1pmol〜10pmolは、約1時間を要した(図9B)。広範な濃度範囲にわたる漸増曲線は、単純な線形スケーリングにより重ね合わされ得(図10)、反応の動力学が、GFP 1−10 OPTの濃度により制限されなかったことを示す。図9に示される曲線にフィットする滑らかな線は、試験サンプルが、既知濃度のサンプルを測定する際に使用されるのと同じ条件下で測定される限りは、GFPタグ化ドメインでタグ化された試験サンプル中のタンパク質の量を決定するための較正曲線に歩み寄ることができる(例えば、この較正曲線は、同じアッセイ試薬濃度のGFP 1−10 OPT、および同じ容量のサンプルを使用して、図9Aの亜硫酸レダクターゼ−GFP S11 M3を例示した)。従って、図9Aにおいて、蛍光(Y)のpmolへの線形フィットは、Y=2.46×(pmol)+22.8により与えられる。本発明者らが、較正曲線と同じ条件下でタグ化タンパク質の未知の濃度を測定すると仮定すると、200単位の蛍光の測定が得られる。pmolについての解法(solving)は、(Y−22.8)/2.46であり、Yを200と置き換え、本発明者らは、pmolを、(200−22.8)/2.46=72.0pmolを計算し得る。
【0115】
(実施例7:スプリットGFPフラグメントの迅速な結合)
スプリットGFPフラグメントの結合動力学と、クロモフォア形成の動力学との間を区別するために、本発明者らは、Talon樹脂に結合させた6HIS GFP 1−10 OPTの、N末端折り畳みレポーターGFPにタグ化したGFP S11 M3による補完を行なった。50%v/vスラリーのTalon樹脂のアリコート(100μl)を、N末端6HIS親和性タグ(2mg/mlタンパク質を200μl)を有するGFP 1−10 OPTで飽和させた。ビーズ(50μlのベッド容量)を、300μlのTNG緩衝液で3回洗浄して、未結合のGFP 1−10 OPTを除去し、残った緩衝液を吸引して破棄し、そして、蛍光を96ウェルマイクロタイタープレートにて測定した(図11、工程1)。過剰の折り畳みレポーターGFP−GFP S11 M3融合タンパク質(5mg/mlタンパク質を200μl)をビーズに添加し、15秒間ピペッティングすることにより混合し、小さな0.2μスピン濾過カラムに迅速に移し、TNGの0.5mlアリコートで3回洗浄して、未結合の折り畳みレポーターGFP−GFP S11 M3タンパク質を除去した。この手順は、約5分を要した。ビーズをマイクロタイタープレートの新しいウェルに移し(図11、工程2)、そして、蛍光を、3分間隔で12時間測定した(図11、工程3)。ビーズの蛍光は、折り畳みレポーターGFP−GFP S11 M3タンパク質が、迅速に6HIS−GFP 1−10 OPTに結合したことを示した(図11、工程2)。洗浄したビーズは、溶液中で観察されたものに匹敵する速度でさらなる蛍光を得(図11、工程3)、蛍光形成の動力学が、GFPフラグメントの会合速度により制限されないことを示した。
【0116】
(実施例8:補完アッセイの頑健性、ならびにアジュバントおよびpHの影響)
本発明者らは、補完反応に対する一般的な化学アジュバントおよびpHの影響を試験した。9Mの尿素の連続的な2倍段階希釈を、TNGを用いて行なった。10の溶液の100μlアリコート(9M尿素から0.019M尿素までの濃度範囲)を、10μlの亜硫酸レダクターゼ−GFP 11 M3、10μlのアッセイフラグメントGFP 1−10 OPT、および80μlのTNG緩衝液と合せた。蛍光データを、FL−600プレートリーダー(BIOTEK,Winooski,VT)を用いて、3分間隔で12時間にわたって集めた。この反応を、2.0Mより上の尿素でクエンチした(図12)。別の実験において、補完速度は、5mMジチオスレイトールにより約30%向上したが、0.1%w/v SDSによりクエンチした。本発明者らは、次に、補完反応の効率に対する、異なるpHの溶液の影響を試験した。10μlの亜硫酸レダクターゼ−GFP S11 M3融合タンパク質、またはS11野生型ペプチドの等モル溶液を、適切な緩衝液MES(pH5〜6.5)、HEPES(pH6.5〜7.5)、TRIS(pH7.5〜8.5)、BICINE(pH8.5〜9.0)を含有する、180μlの0.1M溶液(0.5pH単位の間隔で、5.0〜9.0のpH範囲にわたる)に添加した。補完を、10μlのGFP 1−10 OPT(4mg/ml)を添加することによって開始し、そして、補完の動力学を、FL−600プレートリーダー(BIOTEK,Winooski,VT)を用いて、3分間隔で一晩モニタリングした。補完は、pH6.5より下では非効率的であり、約pH7.3の見かけ上のpKaを有した(図13)。補完後、蛍光GFP部分は、5Mより大きな尿素において蛍光のゆっくりとした時間依存的な減少を示し(t1/2=20時間)、約5.5のpKaは、「増強された」GFPと同様であった(Patterson,Knobelら 1997)。
【0117】
(実施例9:インビトロでのタンパク質の定量化)
スプリットGFPシステムが、インビトロで正確に異なるタンパク質を定量化することができるかどうかを試験するために、本発明者らは、18のPyrobaculumタンパク質を、C末端GFP S11 M3タグを有するpETベクター構築物として液体培養物中で発現させ、次いで、SDS−PAGEおよびスプリットGFP補完システムを使用して、可溶性フラクションおよびペレットフラクションを分析した(図14)。18のPyrobaculumタンパク質の可溶性フラクションを、pET発現タンパク質定量化試験についてアッセイするため、そして、GFP S11およびGFP 1−10改変体の指向性進化の間に、最適物に対してアッセイを行なうために、細胞溶解物の標的タンパク質の可溶性フラクション(20μl)を、96ウェルマイクロプレート(Nunc−ImmunoTMプレート,Nunc,Rochester,NY)中で、180μlの0.35mg/ml再折り畳みGFP 1−10 OPT(約600pmol)と混合した。不溶性のペレットをアッセイするために、50μlの再懸濁した不溶性フラクションの各々を遠心分離し、乾燥したペレットを、50μlの9M尿素の添加により溶解し、次いで、10μlの非折り畳みサンプルを、190μlのTNG中0.35mg/ml GFP 1−10 OPTの迅速な添加によりアッセイした。ペレットアッセイの蛍光値を、2つの因子によりスケール化して可溶性アッセイと比べて低い容量を補償し、可溶性フラクションアッセイとの直接的な比較を可能にした。アッセイ中の尿素の最終濃度は、約0.4Mであった(実施例8、前出、および図12を参照のこと)。SDS−PAGEにより、可溶性フラクションおよびペレットフラクションのサンプルを定量化するために、15μlの可溶性フラクションおよびペレットフラクションを、15μlの2×SDS変性緩衝液(100mM TRIS、200mMジチオスレイトール、4% SDS、0.2%ブロモフェノールブルー、および20%グリセロールを含有する)と混合し、100℃にて15分間加熱した。変性したサンプルを、4〜20%勾配のCriterion SDS−PAGE(Biorad,Hercules,CA)上で分離した。ゲル上のタンパク質スポットを、Gel Code Blue染色試薬(Pierce,Rockford,IL)を用いて染色し、画像化して、GS−800較正スキャニングデンシトメーター(Biorad,Hercules,CA)を用いて、タンパク質スポットの光学密度を定量化した。クーマシー色素は染色効率のタンパク質依存性のバリエーションを示すものの(Tai,Silbersteinら 1985)、補完および折り畳みの完了後(約6時間後)、測定される蛍光値と、SDS−PAGEにより可視化したタンパク質の量との間には強い相関があった(図14)。9M尿素中に溶解し(この実施例、前出を参照のこと)、過剰のGFP 1−10 OPTを含有する緩衝液で20倍希釈した不溶性タンパク質は、SDS−PAGEにより可視化された不溶性タンパク質の量と良好に相関する蛍光を生じた(図14)。対照的に、可溶化されたペレットを、濃縮したGFP 1−10 OPTのアリコートを添加する前に、新しい緩衝液で希釈した場合、十分に発現された不溶性タンパク質のいくつか(すなわち、ポリスルフィドレダクターゼおよびヌクレオチド二リン酸キナーゼ、表3および図14)は、検出可能な補完を与えなかった。おそらく、これらのタンパク質は、希釈の際に折り畳みを誤り、凝集し、引き続くGFP 1−10 OPT部分の前に、GFP 11 M3タグをアクセス不能にしている。
【0118】
(実施例10:スプリットGFPアッセイシステムを使用する、インビボでの可溶性タンパク質および総タンパク質の推定)
実用的なスプリットタンパク質タグ化システムは、可溶性タンパク質または不溶性タンパク質のいずれかを標識および検出するために、インビボで使用され得る。本発明者らは、可溶性タンパク質が、まず、タグ化タンパク質を限られた時間だけ発現させ、次いで、この発現を停止して、同じ細胞区画において補完GFPフラグメントの引き続く発現の前に、タグ化タンパク質が、その固有の溶解表現型を現すことを可能にすることによって、生きているE.coli細胞においてアッセイされ得るという仮説を立てた。インビトロペレットアッセイ(実施例9、前出を参照のこと)における本発明者らの同時再折り畳みの結果から、本発明者らは、GFP S11 M3タグ化タンパク質およびGFP 1−10 OPTを同時発現させることによって、インビボでの試験タンパク質の凝集前の構造的な補完およびGFP蛍光の発色に対する確約をもたらし、発現される総タンパク質の見積もりを可能にすることが期待された。N末端6HISを有するPyrobaculum試験タンパク質と、pTET−SpecRプラスミド(図1、前出を参照のこと)に由来するC末端GFP S11 M3タグと、pETベクター(Novagen,Madison,WI)に由来するGFP 1−10 OPTとを同時に発現するE.coli BL21(DE3)細胞を、50μg/mlのカナマイシンおよび70μg/mlのスペクチノマイシンを含有するLB中で飽和まで増殖させ、−80℃のフリーザーストック用に、20%グリセロール中に、OD600nm=1.0にて希釈した。細胞を、LB中2つの400倍希釈で、段階希釈し、ニトロセルロース膜にプレートした。32℃にて一晩増殖させた後、これらの細胞を、連続的(実施例4、GFP S11の操作、前出を参照のこと)、または同時に誘導した。連続的な誘導について、一晩のコロニーを有する膜上の細胞を、250ng/mlのAnTetを含有するプレート上で1.5時間、静止プレートで1時間、そして、1mM IPTGプレート上で最後に1時間インキュベートした(GFP S11の操作、実施例4に使用した時間と比べ、誘導時間が短いことに注意されたい)。同時誘導プロトコルについて、一晩のコロニーを有する膜を、600ng/mlのAnTETおよび1mMのIPTGの両方を含有するプレートに移し、37℃にて4時間インキュベートして、GFP S11融合物、および大きなGFPフラグメント1−10の両方を同時に発現させた。プレート上で誘導されたコロニーを、488nm励起フィルタを備えるIllumatool Lighting System(登録商標)(LightTools Research,Encinitas,CA)を用いて照射し、DC290デジタルカメラ(Kodak)を用いて、有色ガラスフィルタ(520nmロングパス,LightTools Research,Encinitas,CA)を通して写真撮影した。蛍光のコロニーを、同時発現の後、または連続的な発現の後に画像化し、同じ構築物の可溶性フラクションおよびペレットフラクションを、液体培養物中での連続的な誘導の後に、SDS−PAGEにより分析した(図15)。本発明者らは、SDS−PAGE分析の前に、可溶性フラクションを過剰のTalon樹脂(Novagen,Madison,WI)に結合することによって、有用な凝集していない6HISタグ化タンパク質の量を評価した。簡単に述べると、インビボ全細胞プレート補完アッセイにおいて使用したものと同じクローンの可溶性フラクションおよびペレットフラクションを分析するために、コロニーを、別個に、96ウェル培養プレートの1ml中で、37℃にて増殖させた。細胞を、250ng/ml AnTETを含む対数期に1時間誘導し、新しいLBで3回洗浄し、次いで、1mM IPTGで1.5時間誘導した。誘導後、培養ペレットを、110μlのTNG緩衝液で再懸濁し、超音波処理によりばらばらにした。溶解物を、遠心分離によりフラクションして、可溶性フラクションおよびペレットフラクションを得た。連続的に誘導した液体培養物の40μlの可溶性抽出物を、TNG緩衝液中50%v/vの金属親和性樹脂ビーズ(Talson樹脂,Palo Alto,CA)の等容量のスラリーと混合し、簡単に遠心分離した。未結合のフラクションを、ピペッティングにより除去し、ビーズを、過剰のTNG緩衝液で連続的に2回洗浄した。最後の遠心分離工程の後、緩衝液を捨てた。40μlの2×SDS変性緩衝液を添加し、100℃にて15分間加熱した。不溶性フラクションを、記載されたように変性した(実施例4、前出を参照のこと)。Talon結合し、かつ変性したサンプルを、各々、4〜20%勾配のCriterion SDS−PAGEゲル(Bio−Rad,Hercules,CA)上で分離した。タンパク質サンプルを、Gel Code Blue染色試薬(Pierce,Rockford,IL)を用いて染色し、GS−800較正デンシトメーター(Biorad,Hercules,CA)を用いて画像化した。同時誘導によるインビボコロニー蛍光は、SDS−PAGEと一致する総タンパク質を報告したが、その一方で、連続的な誘導によるコロニー蛍光は、Talon結合した可溶性タンパク質のSDS−PAGEと一致した(図15)。高度に可溶性のタンパク質を発現するコロニーは、GFP 1−10が同時に誘導されていようと、連続的に誘導されていようと(タンパク質2、4および5、図15)、明るかった。不溶性タンパク質を発現するコロニーは、GFP 1−10が同時に誘導されたとき(タンパク質8、11、15、16および18、図15)、かなり明るかった。タンパク質1、4、5、7、9、12および14は、各々、pTETプラスミド(図15)のより弱いtetプロモーター(LutzおよびBujard 1997)から発現された場合よりも、pETシステム(表3および図14、前出)の非常に強力なT7プロモーター(Studier,Rosenbergら 1990)から発現されたときに、溶けにくかった。タンパク質の発現レベルおよび溶解度に対するプロモーターの強度の影響は、以前に注目されている(Makrides 1996;Baneyx 1999;Gerstein,Edwardsら 2003;Yokoyama 2003;Fahnert,Lilieら 2004)。
【0119】
(実施例11:GFP S10−11タグフラグメントおよびGFP 1−9アッセイフラグメントからなるスプリットGFP補完対の操作)
実施例2(前出)の方法に従って、本発明者らは、超折り畳みGFPアミノ酸198−238から構成される実現可能なスプリットGFP対(GFP S10−11)、および超折り畳みGFPアミノ酸1−198から構成される補完アッセイフラグメント(GFP1−9)を同定した。これらは、2つのフラグメントがE.coliにおいて同時に発現される場合に、蛍光細胞を産生した。GFP 1−9は、E.coliにおいて単独で発現されると不溶性であった。単独で発現されたフラグメントはいずれも、蛍光ではなかった。実施例3(前出)の記述に従って、そして、亜硫酸レダクターゼ−GFP S10−11融合タンパク質を補完標的として使用して、本発明者らは、指向性進化によるGFP 1−9の折り畳みおよび溶解度を向上させて、新規改変体GFP 1−9 OPTを生じ、これは、超折り畳みGFPの変異(実施例2、前出を参照のこと)、およびさらなる変異S2R、T43S、A87V、F114SおよびK166Tを含んだ。このフラグメントは、pET 28ベクター(Novagen,Madison,WI)からE.coliにおいて37℃にて発現されると、約50%可溶性であった。次に、本発明者らは、実施例4(前出)の記述に従って、進化したGFP 1−9 OPTを補完標的として使用して、GFP S10−11の溶解度を向上させ、そして、融合タンパク質の折り畳みおよび溶解度の揺れを減少させた。超折り畳みGFP S10−11タグは、以下の配列:
【0120】
【化6】

【0121】
を有し、一方で、最適化されたGFP S10−11は、以下の配列:
【0122】
【化7】

【0123】
(変異N198D、S205T、V206I、K214E、F223S)を有する。これらのフラグメントを使用する、インビトロスプリットGFPアッセイの感度を、実施例6、前出に従って試験したが、GFP 1−9 OPTの量は制限された(2.5μMのGFP 1−9 OPT)。これらの条件下で、蛍光は、予測どおり、2.5μM以上のタグ化フラグメント濃度において、プラトーに達した(図16)。
【0124】
(実施例12:(GFP S10)−X−(GFP S11)サンドイッチタグ形式の操作、およびアッセイフラグメントGFP 1−9 OPTを用いた検出)
標的タンパク質の両端が結合しているときを厳密に試験するため、そして、標的タンパク質の一端のみがタグ化された状態で結合している潜在的なアーチファクト(例えば、タンパク質分解または内部リボソーム結合部位により生じた短いフラグメント)を減らすために、本発明者らは、試験タンパク質が、GFPの二つの小さなドメイン間の融合物として発現されるサンドイッチ形式を操作し、これを次いで、GFPの第3のドメインで補完させる。この実施形態において、試験タンパク質Xは、(GFP S10)−X−(GFP S11)のようなGFP鎖10とGFP鎖11との間のサンドイッチとして発現される(図17)。この種は、GFPの第3のドメインであるGFP 1−9 OPTを補完して、インタクトなGFPを生成する。本発明者らは、当該分野で周知の方法を使用して、超折り畳みGFP S10−11タグ中のGFP S10とGFP S11との間に試験タンパク質を挿入することによって、構築物(GFP S10)−L1−X−L2−(GFP S11)を操作した。ここで、L1およびL2は、各々アミノ酸GGGSから構成されるリンカーである(図18A)。本発明者らは、GFP 1−9 OPTを使用して、(GFP S10)−L1−亜硫酸レダクターゼ−L2−(GFP S11)を首尾よく検出したが、補完は、C末端がGFP S11 M3+GFP 1−10 OPT形式と同じくらいの効率である、わずか約1/30であった。本発明者らはまた、他の部分的に可溶性のタンパク質が、このサンドイッチ形式で発現されると不溶性になることを発見した。まず、本発明者らは、溶解度とは無関係に補完効率を改善した。本発明者らは、(GFP S10)−L1−NdeI::GGGSGSGG::BamHI−L2−(GFP S11)から開始し、ここで、鎖GFP S10および鎖GFP S11は、超折り畳みGFPに由来するものであり(図18A)、短いアミノ酸配列GGGSGSGG[配列番号37]が、2つのGFP鎖の間に柔軟なリンカーを提供する。これを、DNAシャッフリングにより変異させ、GFP 1−10 OPTの補完が向上した改変体のライブラリーを、pTETベクターからのライブラリーの連続的な誘導によりインビボでスクリーニングし、その後、(実施例4、前出に概説した方法に従って)プレート上のコロニーとして、E.coli内でpETベクターからGFP 1−9 OPTを発現させた。6つの最も明るいコロニーを、3回の進化のラウンドの後に配列決定した(図18A)。本発明者らは、6つのセットのうちの5番目の変異体に焦点をあて、この構築物を、(GFP S10 SM5)−L1−X−L2−(GFP S11 SM5)(SM5=サンドイッチ変異体番号5)と名付けた。この最適物は、以下の配列:
【0125】
【化8】

【0126】
を有し、ここで、GFP S10鎖およびGFP S11鎖には下線を付し、アスタリスクは終止コドンである。最初の斜体の配列は、NdeIクローニング部位CATATGに由来するものであり、アミノ酸HMをコードする。第2の斜体の配列は、BamHI制限部位GGATCCに由来するものであり、アミノ酸GSをコードする。NdeI部位およびBamHI制限部位をインフレームで有する試験タンパク質を、当該分野で周知の方法を使用して、NdeI制限酵素およびBamHI制限酵素で前もって消化した構築物を含むベクターにクローニングする。代表的に、この構築物を含むクローニングカセット中のNdeI部位とBamHI部位との間のインフレームの領域は、フレームシフトスタッファーにより終止コドンで置き換えられ、消化されていないベクターまたは優先順位の低いベクターにより生じる偽陽性を防ぐ(代表的なフレームシフトスタッファー配列については、実施例1、前出を参照のこと)。このようなアプローチは、当該分野で周知である。このカセットを、pTETベクターへのクローニングするために、NcoI制限部位およびXhoI制限部位により隣接させる。開始鎖構築物と比べ、Nde−1/BamH−1部位にクローニングされた可溶性亜硫酸レダクターゼは、補完速度が約20倍増加したが、(実施例4、前出のように)部分的に可溶性のHPSタンパク質を用いて試験した場合、タンパク質の溶解度に対する有害な効果がまた増加した。続いて、向上した補完、および融合タンパク質の溶解度の摂動の減少について同時に選択するために、本発明者らは、GFP S11の溶解度および補完を向上するために用いたものと同じおとりタンパク質であるリン酸シンターゼ(HPS)(実施例4、前出)を使用した。HPSは、pTETベクターから単独で発現されると、約60%可溶性であった(図15、タンパク質番号9)が、(GFP S10 SM5)−L1−HPS−L2−(GFP S11 SM5)融合タンパク質として発現されると、不溶性であった。本発明者らは、シャッフリングおよびプライマードーピング変異誘発(14の合成オリゴヌクレオチドプライマーのプール)を用いて、上流の(GFP S10 SM5)ドメインに焦点をあてた(図18B)。各プライマーを、GFP S10 SM5ドメインの14のアミノ酸の1つに集中させた。中心の標的アミノ酸は、NNNがコードする縮重を含み、そして、クローニングベクターの前後関係において、GFP S10 SM5に対する相同物(homology)と隣接する(図18Bおよび図19に示される標的配列)。縮重プライマーのプールを、組立て反応(実施例4、前出において実施した再組立て)の間に、断片化したDNAに添加した。このようなプライマードーピング変異誘発技術は、当該分野で周知である。本発明者らは、上流でNcoI、そして下流でBamHIに隣接されたドメインNco1:(GFP S10 SM5)−L1−Nde−1::HPS::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)をシャッフルして増幅し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるフラグメントの再組立ての間に、縮重プライマーミックスを添加した。本発明者らは、PCRによって、再組立てした変異型構築物に由来するドメインを再増幅し、次いで、変異型(GFP S10)プールを含むNco1/Nde−1フラグメントを消化して切り出し、標準的な技術を使用してゲル精製し、そして、Nco1//Nde1::HPS::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)を含む受容ベクターにクローニングした。(この実施例、前出、および、この実施例中の中間体フラグメントを使用する、インビトロ補完アッセイについて、実施例4、前出に概説された方法に従う)pTETプラスミドおよびpETプラスミドからの連続的な誘導形式を使用する、3回の選択ラウンドの後、最良の8クローンの各々の配列を、蛍光色素ターミネーター配列決定により決定した(図19)。最良のパフォーマンスを示すクローン((GFP S10 A10)−L1−Nde1::HPS::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)と名付ける)は、E.coli中で発現させると、約45%が可溶性であり、これは、不溶性での開始構築物に対して顕著な改善である。そして、補完シグナルは、ここで、サンドイッチ構築物(前出)においてGFP S11 SM5タグのみを検出するためにGFP 1−10 OPTを使用した場合の補完シグナルの、約1/5〜1/4であった。次に、本発明者らは、18のPyrobaculum試験タンパク質(同一性および非融合物の溶解度については、表3、前出を参照のこと)を用いて、アッセイを試験した。可溶性フラクションおよびペレットフラクションを、以前に記載したように(実施例9、前出)、本実施例の即時のフラグメントを用いてアッセイした。本発明者らは、参照物として(GFP S11 SM5)タグのみを特異的に検出するために、GFP 1−10 OPTを用いて、そしてまた、サンドイッチ形式でタグ化したタンパク質の(GFP S10 A10)鎖および(GFP S11 SM5)鎖の両方の結合を必要とするGFP 1−9 OPTを使用して、これらのサンドイッチ形式でタグ化したタンパク質をアッセイした。予想どおりに、補完は、一方の鎖のみが検出に必要とされる場合(GFP 1−10 OPTの場合)に、より効率的であり、そして、尿素可溶化ペレットを用いたペレットフラクションの検出は、GFP 1−10 OPTでの検出の場合に最も効率的であった(図20)。それにもかかわらず、GFP 1−9 OPTを用いて検出されるサンドイッチについての可溶性フラクションの蛍光は、GFP 1−10での検出を用いたときのシグナルと十分に相関し、可溶性タンパク質が予想どおりであったことを記録した。同様に、インビボでの連続的な誘導は、GFP S11 M3融合物を用いた可溶性pTETの発現と相関した(図20、また、実施例9(前出)および図15も参照のこと)。好ましい最適物は、以下のアミノ酸配列:
【0127】
【化9】

【0128】
を有し、ここで、GFP S10鎖およびGFP S11鎖には下線を付し、アスタリスクは終止コドンである。最初の斜体の配列は、NdeIクローニング部位CATATGに由来するものであり、アミノ酸HMをコードする。第2の斜体の配列は、BamHI制限部位GGATCCに由来するものであり、アミノ酸GSをコードする。NdeI制限部位およびBamHI制限部位をインフレームで有する試験タンパク質を、当該分野で周知の方法を使用して、NdeI制限酵素およびBamHI制限酵素で前もって消化した構築物を含むベクターにクローニングする。カセットは、pTETベクターにクローニングするために、NcoI制限部位およびXhoI制限部位に隣接される。代表的に、この構築物を含むクローニングカセット中のNdeI部位とBamHI部位との間のインフレームの領域は、フレームシフトスタッファーにより終止コドンで置き換えられ、消化されていないベクターにより生じる偽陽性を防ぐ(代表的なフレームシフトスタッファー配列については、実施例1、前出を参照のこと)。
【0129】
(実施例13:スプリットGFPフラグメントの再構成の同時発現を使用する、存在するタンパク質−タンパク質相互作用検出システムの作用のモデル)
従来のスプリットGFPシステムは、折り畳みが乏しく、そして主として不溶性である。フラグメントの多くは、凝集体に分配(partition)する。少量は、シャペロンの活性によってレスキュー(rescue)されるが、相互作用ドメインの非存在下において、レスキューされた一過性の可溶性フラグメントが凝集体に再分配する前に結合し得る確率は、低い(図21a)。相互作用ドメインを付加する工程は、それらのフラグメントを係合(tether)し得、新しく再折り畳みされた一過性の可溶性フラグメントの相互作用の確率を上昇させる(図21b)。したがって、このシステムは、エントロピーの理由からではなく、むしろ安定性の欠如に起因して自発的に補完しないようである。
【0130】
(実施例14:別々に発現されるスプリットGFPフラグメントの再構成を使用する、存在するタンパク質−タンパク質相互作用検出システムの作用のモデル)
融合された相互作用ドメインを有する場合でさえ、従来のスプリットGFPシステムは、(時間的か、または空間的に)別々に発現した場合に、効率的に補完することができない。上記フラグメントは、同時に発現されないので、新しく再折り畳みされた一過性の可溶性フラグメントの相互作用の確率は、非常に低い(図22)。したがって、このシステムは、融合された相互作用ドメインを有する場合でさえ、エントロピーの理由からではなく、むしろ安定性の欠如に起因して自発的に補完しないようである。これは、融合された相互作用コイルドコイルを有するGFPフラグメントは同時発現した場合にのみ補完が可能であるというZhangおよびChalfie、2004、前出による観察と一致し、そしてHuら、2003、前出は、封入体から再折り畳みしたか、または同時発現した場合にのみ、コイルドコイル融合GFPフラグメントの補完を観察した(Hu,CD.&Kerppola,T.K.、2003、Simultaneous visualization of multiple protein interactions in living cells using multicolor fluorescence complementation analysis.Nat Biotechnol 21、539−545)。
【0131】
(実施例15:再構成のために相互作用ドメインをレスキューする、可溶性の、非変動性スプリット蛍光タンパク質フラグメントの操作)
先に記載されたスプリットGFPフラグメントは、折り畳みが乏しく、凝集し、したがって効率的に補完しなかった(図23a)。上記の実施例(実施例1〜12)は、可溶性のままであり、かつ凝集しない可溶性の、安定なGFPフラグメントを操作するための技術およびアプローチを示す(図23b)。これらのフラグメントは、同時か、または別々に発現され得、そして可溶性のままであり、かつ融合されたポリペプチドの可溶性および折り畳みを変動させない。これは、タンパク質フラグメントの再構成に基づく一般的に有用なタンパク質−タンパク質相互作用検出システムについての、重要な必要条件である。しかし、これらのフラグメントは、融合された相互作用ドメインに対する必要性を伴わずに自己会合する(図23b)。タンパク質−タンパク質相互作用検出因子として有用であるために、上記フラグメントは、必ず、再構成のための融合された相互作用ドメインを必要とする。1つのアプローチにおいて、可溶性の操作されたフラグメントF1を、一定に保ち、そしてそのフラグメントF1を、フラグメントF2の改変体のライブラリーをスクリーニングするためのアッセイフラグメントとして使用して、自発的な補完および蛍光の形成を排除または廃絶するF2の変異を同定する。広いライブラリーを、例えば、非蛍光性である多数の改変体(すなわち、>10)を見出し、そして収集するためにフローサイトメトリーを使用して、E.coliにおいてスクリーニングし得る(図23c)。これらの非蛍光改変体は、折り畳みの欠損を有する変異体、融合された相互作用ドメインを有する場合でさえ補完が不可能な変異体、不溶性である変異体などのような望ましくない改変体を含み得る。したがって、上記非蛍光改変体のライブラリーを、次いで、公知の相互作用タンパク質(例えば、コイルドコイル)を有する融合物として発現される変異体を生じるベクターにサブクローニングする(このようなコイルドコイルは、Hu、2002、前出;Ghoshら、2000、前出に記載される)。また、上記ライブラリーを、相互作用タンパク質にのみ融合した場合に、そのまま補完する変異体を同定するために、フローサイトメトリーによってスクリーニングするか、プレート上でスクリーニングする。必要な場合、最適物の最終的なライブラリーを、そのまま、補完のための融合された相互作用ドメインに対する依存性を確かめるために、相互作用タンパク質を含まないベクターにサブクローンし得る。フラグメントの安定性および可溶性をさらに改良するための変異のさらなるラウンドを、必要とされる場合、実施例3および実施例4(上記)にあるように行ない得る。さらに、最適以下の凝集し易いGFPフラグメントに融合した場合に、減少した可溶性を有するおとりタンパク質を、この本発明の実施例(実施例15)の融合物に組み込んで、自発的な会合を排除する変異体についてスクリーニングする間の、可溶性についてのストリンジェントな選択を維持し得る。さらに、相互作用GFPフラグメントの間の界面に特異的に関与するアミノ酸を、当該分野において周知の方法であるプライマー特異的変異誘発(変質したオリゴドーピング)(定義、変異誘発の方法、前出を参照のこと)を使用し、全体として、骨格と比較して上昇したレベルの変異誘発の標的とし、それによってGFPフラグメントの間の相互作用がそれらのGFPフラグメントの折り畳みに悪影響を与えることなく減少し得る見込みを増大し得る。GFPの界面のアミノ酸を、三次元構造の検査(Yang、1996、前出)によって容易に同定し得る(位相幾何図の図3も参照のこと)。
【0132】
(実施例16:相互作用が低分子エフェクターによって誘導可能な誘導されたタンパク質ドメインを使用する、再構成のための相互作用ドメインをレスキューする可溶性の、非変動性スプリット蛍光タンパク質フラグメントの操作)
この実施例は、上記融合されたタンパク質ドメインの相互作用が、例えば、Mootz & Muir、2002、Protein splicing triggered by a small molecule J.Am.Chem.Soc.124:9044−9045、Standaertら、1990、Molecular cloning and overexpression of the human FK506−binding protein FKBP、Nature 346:671−674;Chenら、1995、Identification of an 11−kDa FKBP12−rapamycin−binding domain within the 289−kDa FKBP12−rapamycin−associated protein and characterization of a critical serine residue、Biochemistry 92:4947−4951にあるような、FKB 12およびFRB(それらの相互作用がラパマイシンの添加によって誘導され得る2つのタンパク質)によって誘導可能であること除いて、実施例15(上記)に類似する。したがって、図24cにおいて、自発的な補完を排除するF2の変異体を、そのエフェクター(ラパマイシン、この実施例において)の非存在下においてスクリーニングし得、次いで相互作用ドメインに融合した場合に首尾よく補完するF2変異体を、図24dにあるようなエフェクターを添加することによって同定し得る。
【0133】
(実施例17:3体補完)
GFP s10およびGFP s11を、試験タンパク質Xに融合する。これらの種とアッセイ鎖GFP s1−9とを接触させる工程は、GFP s1−9とのGFP S10鎖およびGFP S11鎖の補完をもたらし、それによってXが可溶性であること、ならびにGFP s10およびGFP s11をXにおいて係合することを示す(図25a)。GFP s10およびGFP s11を、図25bにあるように、係合する場合、そのエントロピーを、GFP s1−9との補完を可能にするには高すぎる。
【0134】
(実施例18:2つのタンパク質の相互作用の検出)
GFP s10を、GFP s10−XまたはX−GFP s10のように、試験タンパク質Xに融合する。GFP s11を、GFP s11−YまたはY−GFP s11のように、試験タンパク質Yに融合する。代替的な構造GFP s10−Y、Y−GFP s10またはGFP s11−X、X−GFP s11を、使用し得る。上記融合タンパク質を、細胞内、細胞区画内、またはインビトロで発現させ、そしてその融合タンパク質を、互いに接触させる。XおよびYが相互作用し、そしてそれらが互いに結合する場合、それらは、GFP s10とGFP s11との係合を引き起こし、GFP s10およびGFP s11の構造エントロピーを減少させる(図26a)。これらの種と上記アッセイ鎖GFP s1−9とを接触させる工程は、GFP s10鎖およびGFP s11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、XおよびYが相互作用することを示す。XおよびYが相互作用しない場合、GFP s10およびGFP S11は係合されず、GFP s1−9アッセイフラグメントの補完は非効率的であり、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。相互作用タンパク質Xおよび相互作用タンパク質Yの例は、コイルドコイル、抗体およびその同族(cognate)のペプチドまたはタンパク質抗原もしくは結合パートナー(ヘテロマルチマーを形成するタンパク質)を含む。
【0135】
(実施例19:2つのタンパク質と第3のタンパク質との相互作用の検出)
GFP s10を、GFP s10−XまたはX−GFP s10のように、試験タンパク質Xに融合する。GFP s11を、GFP s11−YまたはY−GFP s11のように、試験タンパク質Yに融合する。代替的な構造GFP s10−Y、Y−GFP s10またはGFP s11−X、X−GFP s11を、使用し得る。上記融合タンパク質を、細胞内、細胞区画内、またはインビトロで発現させ、そしてその融合タンパク質を、互いに接触させる。XおよびYは、自発的に相互作用しないか、または互いに結合しない。XおよびYが、相互作用し、そしてそれらが、第3のタンパク質Zに結合する場合、Zを添加する工程は、XおよびYの結合、GFP s10とGFP s11との係合を引き起こし、GFP s10およびGFP s11の構造エントロピーを減少させる(図26b)。これらの種と上記アッセイ鎖GFP s1−9とを接触させる工程は、GFP s10鎖およびGFP s11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、XおよびYがZと相互作用し、そしてZが存在することを示す。XおよびYがZと相互作用しないか、またはZが存在しない場合、GFP s10およびGFP S11は、係合されず、GFP s1−9アッセイフラグメントの補完は非効率的であり、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。Zと相互作用するタンパク質Xおよびタンパク質Yの例は、ヘテロメリックかまたはホモメリックなトリブリッド(tribrid)のコイルドコイル、抗原(Z)と結合する抗体の対(XおよびY)およびその同族のペプチドまたはタンパク質抗原もしくは結合パートナー(ヘテロマルチマーを形成するタンパク質)を含み得る。
【0136】
(実施例20:2つのタンパク質とエフェクター低分子との相互作用の検出)
GFP s10を、GFP s10−XまたはX−GFP s10のように、試験タンパク質Xに融合する。GFP s11を、GFP s11−YまたはY−GFP s11のように、試験タンパク質Yに融合する。代替的な構造GFP s10−Y、Y−GFP s10またはGFP s11−X、X−GFP s11を、使用し得る。上記融合タンパク質を、細胞内、細胞区画内、またはインビトロで発現させ、そしてその融合タンパク質を、互いに接触させる。XおよびYは、自発的に相互作用しないか、またはエフェクター低分子に結合する。XおよびYが相互作用し、そしてそれらがエフェクター低分子に結合する場合、エフェクター低分子を添加する工程は、XおよびYの結合、GFP s10とGFP s11との係合を引き起こし、GFP s10およびGFP s11の構造エントロピーを減少させる(図27b)。これらの種と上記アッセイ鎖GFP s1−9とを接触させる工程は、GFP s10鎖およびGFP s11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、XおよびYが上記エフェクターと相互作用し、そしてそのエフェクターが存在することを示す。XおよびYが上記エフェクターと相互作用しないか、またはそのエフェクターが存在しない場合、GFP s10およびGFP S11は、係合されず、GFP s1−9アッセイフラグメントの補完は非効率的であり、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない(図27b)。エフェクターと相互作用するタンパク質Xおよびタンパク質Yの例は、例えば、Mootz & Muir、2002、Protein splicing triggered by a small molecule J.Am.Chem.Soc.124:9044−9045、Standaertら、1990、Molecular cloning and overexpression of the human FK506−binding protein FKBP、Nature 346:671−674;Chenら、1995、Identification of an 11−kDa FKBP12−rapamycin−binding domain within the 289−kDa FKBP12−rapamycin−associated protein and characterization of a critical serine residue、Biochemistry 92:4947−4951にあるような、FKBPおよびFRBを含み得る。低分子を感知する種々の2成分システムもまた、使用し得る。
【0137】
(実施例21.ランダムな遺伝的スクリーニングを使用する、相互作用パートナーの同定)
GFP s10を、GFP s10−XまたはX−GFP s10のように、試験タンパク質Xに融合する。Xとの潜在的な相互作用因子を含むランダムライブラリーYLIBを、YLIB−GFP s11またはGFP s11−YLIBのように、GFP s11との融合物として発現させる。GFP s10−Y、Y−GFP s10またはGFP s11−X、X−GFP s11からなる代替的な構造を、使用し得る。上記タンパク質を、細胞区画内、細胞内または細胞を含まない抽出物内で発現させ、そしてその融合タンパク質を、YLIBの単一のメンバーi(すなわち、YLIBi−GFP s11またはGFP s11−YLIBi)にGFP s10−XまたはX−GFP s10と相互作用させるように、互いに接触させる。XおよびYLIBiが相互作用し、そしてそれらが互いに結合する場合、それらは、GFP s10とGFP s11との係合を引き起こし、融合されたGFP s10および融合されたGFP s11の構造エントロピーを減少させる。これらの種と上記アッセイ鎖GFP s1−9とを接触させる工程は、GFP s10鎖およびGFP s11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、XおよびYLIBiが相互作用することを示す。XおよびYLIBiが相互作用しない場合、GFP s10およびGFP s11は、係合されず、GFP s1−9アッセイフラグメントの補完を非効率的にし、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。
【0138】
(実施例22.ランダムな遺伝的スクリーニングを使用する、相互作用する折り畳みパートナーの同定)
Xは、XとYとから構成される真正の折り畳みの対の部分であり、ここで同じ区画内でのXおよびYの同時発現は、Yとの接触およびYとの同時折り畳みによって、Xの適切な折り畳みをもたらす。次いで、XおよびYは、XおよびYから構成される正しい折り畳みの可溶性ヘテロダイマーを形成する、ここでXおよびYは、互いと会合したままである。Yの非存在下において、Xは、折り畳みを誤り、そして凝集体を形成する。GFP 10を、GFP S10−XまたはX−GFP S10のように、試験タンパク質Xに融合する。タンパク質Xは、それだけで発現した場合、折り畳みが乏しく、GFP S10−XまたはX−GFP S10を凝集体中に隔離させる。Xの折り畳みをレスキューする折り畳みパートナーYを見出すために、Xとの潜在的な相互作用する折り畳みパートナーを含むランダムライブラリーYLIBを、YLIB−GFP S11またはGFP S11−YLIBのように、GFP S11との融合物として発現させる。GFP S10−Y、Y−GFP S10またはGFP S11−X、X−GFP S11からなる代替的な構造を使用し得ることは、明らかである。上記タンパク質を、細胞区画内、細胞内または細胞を含まない抽出物内で発現させ、そしてその融合タンパク質を、YLIBの単一のメンバーi(すなわち、YLIBi−GFP S11またはGFP S11−YLIBi)にGFP S10−XまたはX−GFP S10と相互作用させるように、互いに接触させる。XおよびYLIBiが相互作用し、同時折り畳みを行い、そしてそれらが互いに結合する場合、それらは、GFP S10とGFP S11との係合を生じる正しく折り畳まれた可溶性ヘテロダイマーを生じ、融合されたGFP S10および融合されたGFP S11の構造エントロピーを減少させる。次いで、これらの会合した融合種と上記アッセイ鎖GFP 1−9とを接触させる工程は、GFP S10鎖およびGFP S11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、XおよびYLIBiが相互作用することを示す。XおよびYLIBiが、相互作用する会合した折り畳みパートナーを形成しない場合、GFP S10およびGFP S11は、係合されず、GFP 1−9アッセイフラグメントの補完を非効率的にし、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。上記融合タンパク質XおよびYが、上記tetプロモーターの制御下で発現され、例えば、そして上記GFP 1−9アッセイフラグメントが、独立誘導性プロモーター(例えば、IPTG誘導性T7プロモーター)の制御下で発現される場合、X、Y、およびGFP 1−9の発現の順番は、独立して調節され得る。上記GFP 1−9アッセイフラグメントがX融合タンパク質およびYLIB融合タンパク質と同時に発現される場合、そのXとYとの間の相互作用は、XおよびYの可溶性にかかわらずに検出され得る。上記GFP 1−9アッセイフラグメントが上記XおよびYの後に発現される場合、会合した相互作用し、また可溶性であるXタンパク質およびYタンパク質のみが、検出される。連続誘導に依存するこの可溶性レポーターの局面は、X−GFP S10−S11およびGFP 1−9、ならびにGFP S10−X−GFP S11およびGFP 1−9を使用して、先に示されている。
【0139】
(実施例23.ランダムな遺伝的スクリーニングを使用する、相互作用パートナーの同定)
GFP 10を、GFP S10−XまたはX−GFP S10のように、試験タンパク質Xに融合する。Xとの潜在的な相互作用因子を含むランダムライブラリーYLIBを、YLIB−GFP S11またはGFP S11−YLIBのように、GFP S11との融合物として発現させる。GFP S10−Y、Y−GFP S10またはGFP S11−X、X−GFP S11からなる代替的な構造を使用し得ることは、明らかである。上記タンパク質を、細胞区画内、細胞内または細胞を含まない抽出物内で発現させ、そしてその融合タンパク質を、YLIBの単一のメンバーi(すなわち、YLIBi−GFP S11またはGFP S11−YLIBi)にGFP S10−XまたはX−GFP S10と相互作用させるように、互いに接触させる。XおよびYLIBiが相互作用し、そしてそれらが互いに結合する場合、それらは、GFP S10とGFP S11との係合を引き起こし、融合されたGFP S10および融合されたGFP S11の構造エントロピーを減少させる。これらの種と上記アッセイ鎖GFP 1−9とを接触させる工程は、GFP S10鎖およびGFP S11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、XおよびYLIBiが相互作用することを示す。XおよびYLIBiが相互作用しない場合、GFP S10およびGFP S11は、係合されず、GFP 1−9アッセイフラグメントの補完を非効率的にし、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。
【0140】
(実施例24.ランダムな遺伝的スクリーニングを使用する、相互作用する折り畳みパートナーの同定)
Xは、XとYとから構成される真正の折り畳みの対の部分であり、ここで同じ区画内でのXおよびYの同時発現は、Yとの接触およびYとの同時折り畳みによって、Xの適切な折り畳みをもたらす。次いで、XおよびYは、XおよびYから構成される正しい折り畳みの可溶性ヘテロダイマーを形成する、ここでXおよびYは、互いと会合したままである。Yの非存在下において、Xは、折り畳みを誤り、そして凝集体を形成する。GFP 10を、GFP S10−XまたはX−GFP S10のように、試験タンパク質Xに融合する。タンパク質Xは、それだけで発現した場合、折り畳みが乏しく、GFP S10−XまたはX−GFP S10を凝集体中に隔離させる。Xの折り畳みをレスキューする折り畳みパートナーYを見出すために、Xとの潜在的な相互作用する折り畳みパートナーを含むランダムライブラリーYLIBを、YLIB−GFP S11またはGFP S11−YLIBのように、GFP S11との融合物として発現させる。GFP S10−Y、Y−GFP S10またはGFP S11−X、X−GFP S11からなる代替的な構造を使用し得ることは、明らかである。上記タンパク質を、細胞区画内、細胞内または細胞を含まない抽出物内で発現させ、そしてその融合タンパク質を、YLIBの単一のメンバーi(すなわち、YLIBi−GFP S11またはGFP S11−YLIBi)にGFP S10−XまたはX−GFP S10と相互作用させるように、互いに接触させる。XおよびYLIBiが相互作用し、同時折り畳みを行い、そしてそれらが互いに結合する場合、それらは、GFP S10とGFP S11との係合を生じる正しく折り畳まれた可溶性ヘテロダイマーを生じ、融合されたGFP S10および融合されたGFP S11の構造エントロピーを減少させる。次いで、これらの会合した融合種と上記アッセイ鎖GFP 1−9とを接触させる工程は、GFP S10鎖およびGFP S11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、XおよびYLIBiが相互作用することを示す。XおよびYLIBiが、相互作用する会合した折り畳みパートナーを形成しない場合、GFP S10およびGFP S11は、係合されず、GFP 1−9アッセイフラグメントの補完を非効率的にし、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。上記融合タンパク質XおよびYが、上記tetプロモーターの制御下で発現され、例えば、そして上記GFP 1−9アッセイフラグメントが、独立誘導性プロモーター(例えば、IPTG誘導性T7プロモーター)の制御下で発現される場合、X、Y、およびGFP 1−9の発現の順番は、独立して調節され得る。上記GFP 1−9 アッセイフラグメントがX融合タンパク質およびYLIB融合タンパク質と同時に発現される場合、そのXとYとの間の相互作用は、XおよびYの可溶性にかかわらずに検出され得る。上記GFP 1−9 アッセイフラグメントが上記XおよびYの後に発現される場合、会合した相互作用し、また可溶性であるXタンパク質およびYタンパク質のみが、検出される。連続誘導に依存するこの可溶性レポーターの局面は、X−GFP S10−S11およびGFP 1−9、ならびにGFP S10−X−GFP S11およびGFP 1−9を使用して、先に示されている。
【0141】
(実施例25.エフェクターの存在下におけるタンパク質相互作用のモニタリング)
GFP 10を、GFP S10−XまたはX−GFP S10のように、試験タンパク質Xに融合する。GFP 11を、GFP S11−YまたはY−GFP S11のように、試験タンパク質Yに融合する。GFP S10−Y、Y−GFP S10またはGFP S11−X、X−GFP S11からなる代替的な構造を、使用し得る。上記融合タンパク質のXドメインとYドメインとの相互作用効率を、最初に、上記アッセイフラグメントGFP 1−9および記録された蛍光を使用して、エフェクター分子Eの非存在下において評価した。そのエフェクター分子Eは、低分子(例えば、薬物、ホルモン、またはペプチド)、または大きい分子(例えば、タンパク質または高分子複合体)であり得る。次にそのエフェクター分子Eを、上記融合タンパク質に接触させ、そしてその融合タンパク質のドメインXとドメインYとの相互作用の効率を、GFP 1−9との補完を使用して評価する。Eが、上記XとYとの間の相互作用を増大させる場合、上記蛍光は、Eの非存在下における蛍光より明るい。Eが、上記XとYとの間の相互作用を低下させる場合、上記蛍光は、Eの非存在下における蛍光よりぼんやりしている。Eが、上記XとYとの間の相互作用に対して、中立であるかまたは効果を有さない場合、上記蛍光は、Eの非存在下における蛍光と同じである。
【0142】
(実施例26.ランダムな遺伝的スクリーニングを使用する、タンパク質相互作用に作用し得る潜在的なエフェクタータンパク質の同定)
GFP 10を、GFP S10−XまたはX−GFP S10のように、試験タンパク質Xに融合する。GFP 11を、GFP S11−YまたはY−GFP S11のように、試験タンパク質Yに融合する。GFP S10−Y、Y−GFP S10またはGFP S11−X、X−GFP S11からなる代替的な構造を、使用し得る。上記融合タンパク質のXドメインとYドメインとの相互作用効率を、最初に、上記アッセイフラグメントGFP 1−9および記録された蛍光を使用して、エフェクター分子Eの非存在下において評価した。この実施例において、上記エフェクター分子Eは、遺伝子によりコードされるペプチド、タンパク質または高分子複合体である。上記XとYとの間の相互作用の潜在的なエフェクターを含むランダムライブラリーELIBを、X融合タンパク質およびY融合タンパク質として、同じ区画内で発現させる。上記タンパク質を、細胞区画内、細胞内または細胞を含まない抽出物内で発現さ得、そしてその融合タンパク質を、ELIBの単一のメンバーi(すなわち、ELIBi)を上記X融合タンパク質およびY融合タンパク質と接触させるように、互いに接触させる。上記融合タンパク質におけるXとYとの間の相互作用の強度を測定するために、これらの種を、上記アッセイフラグメントGFP 1−9に接触させる。Eが、上記XとYとの間の相互作用を増大させる場合、融合されたGFP S10ドメインと融合されたGFP S11ドメインとの係合は、増大し、そして上記蛍光は、ELIBiの非存在下における蛍光よりも明るく、それによって、ELIBiがそのXとYとの間の相互作用を増強することを示す。一方で、ELIBiが、上記XとYとの間の相互作用を低下させる場合、上記蛍光は、ELIBiの非存在下における蛍光よりもぼんやりとしており、それによって、ELIBiがそのXとYとの間の相互作用を低下させることを示す。ELIBiが、上記XとYとの間の相互作用に対して、中立であるかまたは効果を有さない場合、上記蛍光は、ELIBiの非存在下における蛍光と同じであり、このことは、ELIBiがそのXとYとの間の相互作用に対して効果を有さないことを示す。
【0143】
(実施例27.細胞小器官特異的なタンパク質相互作用を検出するための細胞小器官の着色(organelle painting))
これは、上記アッセイフラグメントGFP 1−9が、局在タグを使用して特定の細胞区画を指向することを除いて、実施例18および実施例21(前出)に類似する。したがって、特定の区画内で生じる相互作用を、GFP 1−9をその区画に送ることによって、特異的に検出する。GFP 10を、GFP S10−XまたはX−GFP S10のように、試験タンパク質Xに融合する。Xとの潜在的な相互作用因子を含むランダムライブラリーYLIBを、YLIB−GFP S11またはGFP S11−YLIBのように、GFP S11との融合物として発現させる。GFP S10−Y、Y−GFP S10またはGFP S11−X、X−GFP S11からなる代替的な構造を、使用し得る。上記タンパク質を、細胞区画内、細胞内または細胞を含まない抽出物内で発現させ、そしてその融合タンパク質を、YLIBの単一のメンバーi(すなわち、YLIBi−GFP S11またはGFP s11−YLIBi)をGFP S10−XまたはX−GFP S10と相互作用させるように、互いに接触させる。XおよびYLIBiが相互作用し、そしてそれらが互いに結合する場合、それらは、GFP S10とGFP S11との係合を引き起こし、融合されたGFP S10および融合されたGFP S11の構造エントロピーを減少させる。上記相互作用が特定の区画C内で生じるか否かを決定するために、GFP 1−9を、区画CへのT−GFP 1−9またはGFP 1−9−Tの局在を指揮する局在タグTと融合する。XおよびYが、区画Cにおいて相互作用する場合、T−GFP 1−9 またはGFP 1−9−Tが区画Cを指向するときに、区画Cは、XとYとの融合種と、上記アッセイ鎖T−GFP 1−9またはGFP 1−9−Tとを接触させ、GFP S10鎖およびGFP S11鎖と、GFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成することで蛍光になる。このことは、XおよびYLIBiが区画Cにおいて相互作用することを示す。XおよびYLIBiが、区画Cにおいて相互作用しない場合、GFP S10およびGFP S11は、区画C内で係合されず、T−GFP 1−9アッセイフラグメントまたはGFP 1−9−Tアッセイフラグメントの補完を非効率的にし、このことは、区画Cにおいて弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。複数の区画を、異なる色のGFP 1−9によってタグ化し得、1つより多い区画がGFP S−10およびGFP S−11と融合された潜在的な相互作用タンパク質XおよびYについてモニタリングされるようにする。例えば、Y66Wシアン変異体を含むGFP 1−9のシアン改変体は、公知のゴルジ体標的性融合シグナルを使用して、ゴルジ体を標的とし得る。同時に、Y66を含むGFP 1−9の緑色バージョンは、融合するミトコンドリア標的性ドメインを使用して、ミトコンドリアを標的とし得る。シアン蛍光の量および緑色蛍光の量のモニタリングは、それぞれ、ゴルジ体およびミトコンドリア内で生じる、タンパク質XとYとの間の相互作用の量を報告する。
【0144】
(実施例28.エフェクター媒介性の細胞小器官特異的なタンパク質相互作用を検出するための、細胞小器官の着色)
これは、実施例20および実施例25(上記)に関し、ここでGFP 1−9のスペクトル的に異なる改変体は、局在タグを使用して1つ以上の特定の細胞区画を指向する。特定の区画内で生じる、GFP−S10およびGFP−S11によって各々標識したタンパク質XとYとの間の相互作用を、その区画を指向するGFP 1−9のスペクトル特徴によって、特異的に検出する。各区画内の上記融合タンパク質のXドメインとYドメインとの相互作用効率を、最初に、上記アッセイフラグメントGFP 1−9、およびGFP 1−9の各スペクトル改変体について記録された蛍光を使用して、エフェクター分子Eの非存在下において評価した。そのエフェクター分子Eは、低分子(例えば、薬物、ホルモン、またはペプチド)、または大きい分子(例えば、タンパク質または高分子複合体)であり得る。次にそのエフェクター分子Eを、そのアッセイを実施する細胞または区画に接触させ、そして上記融合タンパク質のドメインXとドメインYとの相互作用の効率を、その細胞区画を標的とするGFP 1−9のスペクトル的に異なるバージョンの各々について評価する。Eが、指定された細胞区画内で上記XとYとの間の相互作用を増大させる場合、その区画の蛍光は、Eの非存在下における蛍光より明るい。Eが、上記XとYとの間の相互作用を低下させる場合、その区画の蛍光は、Eの非存在下における蛍光よりぼんやりしている。Eが、上記XとYとの間の相互作用に対して、中立であるかまたは効果を有さない場合、その区画の蛍光は、Eの非存在下における蛍光と同じである。標的とされた各区画内での補完の効率を、その区画を標的とするGFP 1−9改変体の蛍光特徴をモニタリングすることによって評価する。例えば、XおよびYは、ゴルジ体およびミトコンドリア内で相互作用することが公知のタンパク質であり得る。シアンGFP 1−9は、ゴルジ体を標的とし得、そして緑色GFP 1−9は、ミトコンドリアを標的とし得る。種々のエフェクター薬物を、ミトコンドリアと比較して、ゴルジ体内でのXおよびYの補完を増加させる薬物について試験し得る。したがって、所望の効果を有する薬物は、ゴルジ体において補完を増加させ、効果を有さなかった薬物、またはミトコンドリアと比較して、ゴルジ体内でのXおよびYの補完を低下させた薬物と比較して、シアン蛍光 対 緑色蛍光の増大した比をもたらす。GFP S10−Y、Y−GFP S10またはGFP S11−X、X−GFP S11からなる代替的な構造を、使用し得る。
【0145】
(実施例29.結合リガンド−抗原相互作用の操作)
この実施例は、実施例18および実施例19と機能的に類似する。GFP 10を、融合構築物GFP S10−BまたはB−GFP S10のように、結合リガンドB(例えば、抗体)に融合する。GFP 11を、GFP S11−AまたはA−GFP S11のように、試験タンパク質抗原Aに融合する。GFP S10−A、A−GFP S10またはGFP S11−B、B−GFP S11からなる代替的な構造を使用し得ることが、明らかである。上記融合タンパク質を、細胞内、細胞区画内、またはインビトロで発現させ、そしてその融合タンパク質を、互いに接触させる。抗体または結合リガンドB、および抗原Aが相互作用し、そしてそれらが、互いと結合する場合、それらは、GFP S10とGFP S11との係合を引き起こし、GFP S10およびGFP S11の構造エントロピーを減少させる。これらの種と上記アッセイ鎖GFP 1−9とを接触させる工程は、GFP S10鎖およびGFP S11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、このことは、BおよびAが相互作用することを示す。BおよびAが相互作用しない場合、GFP S10およびGFP S11は、係合されず、GFP 1−9アッセイフラグメントの補完は非効率的であり、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。
【0146】
(実施例30.ランダムな遺伝的スクリーニングを使用する、相互作用する結合リガンドの同定)
GFP 10を、GFP S10−AまたはA−GFP S10のように、遺伝子によりコードされる抗原Aに融合する。Aとの潜在的な結合リガンドを含むランダムライブラリーBLIBを、BLIB−GFP S11またはGFP S11−BLIBのように、GFP S11との融合物として発現させる。GFP S10−BLIB、BLIB−GFP S10またはGFP S11−A、A−GFP S11からなる代替的な構造を使用し得ることは、明らかである。上記タンパク質を、細胞区画内、細胞内または細胞を含まない抽出物内で発現させ、そしてそのタンパク質を、BLIBの単一のメンバーi(すなわち、BLIBi−GFP S11またはGFP S11−BLIBi)をGFP S10−AまたはA−GFP S10と相互作用させるように、互いに接触させる。AおよびBLIBiが相互作用し、そしてそれらが互いと結合する場合、それらは、GFP S10とGFP S11との係合を生じ、融合されたGFP S10および融合されたGFP S11の構造エントロピーを減少させる。これらの種と上記アッセイ鎖GFP 1−9とを接触させる工程は、GFP S10鎖およびGFP S11鎖とGFP 1−9との補完を生じ、それによって蛍光発色団を形成し、このことは、AおよびBLIBiが相互作用することを示す。AおよびBLIBiが相互作用しない場合、GFP S10およびGFP S11は、係合されず、GFP 1−9アッセイフラグメントの補完を非効率的にし、このことは、弱い蛍光補完を生じるか、または蛍光補完を生じない。
【0147】
(実施例31.競合性結合リガンドを使用する、結合リガンド選択のストリンジェンシーの増大)
この実施例は、実施例29の延長である。この実施例において、競合的結合リガンドBcを、区画内で同時発現させる。Bcは、抗原Aに対する結合に関してBLIBと競合する。Bcを、GFPフラグメントタグと融合せず、したがってBcによるAの結合は、BLIBi−GFP S11またはGFP S11−BLIBiのメンバーによるAの結合を妨げる。したがってGFP S10−AまたはA−GFP S10におけるAと、Bcとの相互作用がBLIBi−GFP S11またはGFP S11−BLIBiの置換をもたらすので、Bcは、蛍光補完を低下させ、係合されないGFP S10およびGFP S11を生じ、GFP 1−9との補完を非効率的にする。Bcより強力にAに結合するBLIBi−GFP S11またはGFP S11−BLIBiのメンバーのみが、Bcを置換し得、AとBLIBiとの相互作用をもたらし、融合されたGFP S10ドメインと融合されたGFP S11ドメインとを係合し、このことは、GFP 1−9との増大した蛍光補完をもたらす。Bcが、例えば、無水テトラサイクリン誘導性tetプロモーター(Clontech)を使用して、GFP S10−AまたはA−GFP S10およびBLIBi−GFP S11またはGFP S11−BLIBiのように同じプロモーターエレメントから発現され得る一方で、上記アッセイフラグメントGFP 1−9は、IPTG誘導性T7プロモーターのような別個の誘導性プロモーターエレメントから発現され得る。tetプロモーター構築物を逐次的に発現し、次いで無水テトラサイクリンを除去し、次いでGFP 1−9アッセイフラグメントのその後の発現を行なうことは、Bc−抗原相互作用より厳密であり、かつ可溶性でもある結合リガンド−抗原相互作用因子を検出する。
(実施例33:再構成のための相互作用ドメインを必要とする可溶性の非変動性酵素レポータータンパク質の操作)
先に記載されたスプリットDHFRフラグメントは、折り畳みが乏しく、凝集し、したがって不溶性の凝集体をする(USPTO番号6,428,951を参照のこと)。その中で、Michnickらは、相互作用ドメインに融合したDHFRのフラグメントの操作、およびDHFRのより良好な折り畳みのバージョンを示す増加した抗生物質耐性についての選択によって、DHFRのより良好な折り畳みのフラグメントを選択するストラテジーを記載する。このアプローチは、上記フラグメンが可溶性であることを保証しない。なぜなら上記フラグメントは、継続した細胞生存を与えるために同時発現されなければならないからである。融合された相互作用ドメインにも依存するDHFRの非変動性の可溶性フラグメントを選択するために、DHFR活性に特異的なアッセイを使用することを除き、特に、上記フラグメントが、安定な可溶性改変体について選択するために別々に発現される連続誘導様式を使用して、上記の実施例15および実施例16において使用した同じアプローチに従う。さらに、マルチウェル培養プレートにおいて、各々がDHFRの改変体を含む小さい培養物を、増殖させる。DHFR活性に対する色素形成基質を使用する種々の活性アッセイは、当該分野において周知であり、そしてこれらは、補完が生じている場合を決定するために使用される。第1の工程において、DHFRの自己補完性フラグメントを、インビボの細胞生存のための融合された相互作用ドメインを有さないDHFRフラグメント変異体のライブラリーをスクリーニングすることによって選択し得る。上記フラグメントを、DHFRの凝集し易い改変体に融合した場合に低下した可溶性を示すタンパク質(凝集おとりドメイン)に融合し得、それによってDHFRフラグメントの可溶性改変体を選択するストリンジェンシーを増大させる。所望される場合、上記DHFRフラグメントの1つ以上(融合されたおとりドメインを有するか、またはそれを有さない)をまた、GFPマイクロドメインに融合し得、そしてDHFRフラグメント変異体の可溶性を、連続誘導プロトコルを用いたGFPアッセイフラグメントを使用するインビトロの高スループット様式においてアッセイし、DHFRフラグメントを、実施例9および実施例10にあるようなGFPスプリット補完レポーターシステムを使用して増加した可溶性について進化させるための標的タンパク質として処理する。一旦可溶性の候補を見出すと、それらを、細胞生存のための同時発現を行なうか、またはインビトロで別々に発現した候補の可溶性の進化したDHFRフラグメントを混合し、そして再構成され、最適化された可溶性DHFRフラグメントが、補完後に依然として酵素的に活性なDHFRを提供することを確認するために、当該分野において周知であるインビトロDHFR酵素活性アッセイを使用することによってスクリーニングし得る。これらのフラグメントは、同時かまたは別々に発現され得、可溶性のままであり、そして融合されたポリペプチドの可溶性および折り畳みを変動させない。これは、タンパク質フラグメントの再構成に基づく一般的に有用なタンパク質−タンパク質相互作用検出システムについての、重要な必要条件である。しかし、これらのフラグメントは、融合された相互作用ドメインに対する必要性を伴わずに自己会合する。タンパク質−タンパク質相互作用検出因子として有用であるために、上記フラグメントは、必ず、再構成のための融合された相互作用ドメインを必要とする。1つのアプローチでは、融合された相互作用ドメインの非存在下において、可溶性の操作されたフラグメントDHFR F1を、一定に保ち、そしてそのフラグメントDHFR F1を、フラグメントDHFR F2の改変体のライブラリーをスクリーニングするためのアッセイフラグメントとして使用して、自発的な補完およびDHFR活性の形成を排除または廃絶するF2の変異を同定する。同様に、一定の変異していないDHFR F1を、GFP s−10に融合し得、変異したライブラリーDHFR F2を、GFP s11に融合し得、そしてその変異したライブラリーDHFR F2を、アッセイフラグメントGFP s1−9の補完の低下によって例示される、DHFRフラグメントの自発的な会合を廃絶するDHFR F2における変異を同定するためにGFP s1−9を使用してスクリーニングした。広いライブラリーを、例えば、非蛍光性である多数の改変体(すなわち、>10)を見出し、そして収集するためにフローサイトメトリーを使用して、E.coliにおいてスクリーニングし得る。これらの非相互作用DHFR改変体は、折り畳みの欠損を有する変異体、融合された相互作用ドメインを有する場合でさえ補完が不可能な変異体、不溶性である変異体などのような望ましくない改変体を含み得る。DHFR F2 GFP s−11融合物を、それらが依然として可溶性であることを確認するために、GFP s1−10アッセイフラグメントを使用してインボビでスクリーニングし得、したがってDHFR F1と自発的に集合することもできない可溶性DHFR F2変異体を、同定する。次いで、自発的に会合しない可溶性DHFR F2改変体のライブラリーを、公知の相互作用タンパク質(例えば、コイルドコイル)を有する融合物として発現される変異体を生じるベクターにサブクローニングする(このようなコイルドコイルは、Hu、2002、前出;Ghoshら、2000、前出に記載される)。また、上記ライブラリーを、相互作用タンパク質にのみ融合した場合に、そのまま補完する変異体を同定するために、フローサイトメトリーによってスクリーニングするか、プレート上でスクリーニングする。次いで二次的なDHFR酵素活性スクリーニングを、上記可溶性DHFRフラグメントがまた、相互作用タンパク質に融合した場合に酵素活性を保持することを決定するために、インビトロで適用し得る。必要な場合、最適物の最終的なライブラリーを、そのまま、補完のための融合された相互作用ドメインに対する依存性を確かめるために、相互作用タンパク質を含まないベクターにサブクローンし得る。フラグメントの安定性および可溶性をさらに改良するための変異のさらなるラウンドを、必要とされる場合、実施例3および実施例4(上記)にあるように行ない得る。さらに、最適以下の凝集し易いDHFRフラグメントに融合した場合に、減少した可溶性を有するおとりタンパク質を、この本発明の実施例(実施例33)の融合物に組み込んで、自発的な会合を排除する変異体についてスクリーニングする間の、可溶性についてのストリンジェントな選択を維持し得る。さらに、相互作用DHFRフラグメントの間の界面に特異的に関与するアミノ酸を、当該分野において周知の方法であるプライマー特異的変異誘発(変質したオリゴドーピング)(定義、変異誘発の方法、前出を参照のこと)を使用し、全体として、骨格と比較して上昇したレベルの変異誘発の標的とし、それによってDHFRフラグメントの間の相互作用がそれらのDHFRフラグメントの折り畳みに悪影響を与えることなく減少し得る見込みを増大し得る。DHFRの界面のアミノ酸を、三次元構造の検査(Filman、1982、Oefner、1988、Bystroff、1991)によって容易に同定し得る。上記のアプローチを、補完のための融合された相互作用ドメインにも依存する可溶性フラグメント改変体を同定するために、他の酵素タンパク質(例えば、スプリットβ−ラクタマーゼまたはスプリットβ−ガラクトシダーゼ)に適用し得ることは、当業者にとって明らかである。
【0148】
(実施例34:インビトロ相互作用アッセイ)
(マイクロGFPタグ化タンパク質の発現)
10−FRBタンパク質融合物およびFkbp12−11タンパク質融合物を、それぞれ、C−6HIS pET 28ベクターおよびN−6his pET 28ベクター(Novagen、Madison、Wl)から発現させた。各構築物を発現するBL21(DE3)の50ml培養物を、OD600 約0.5まで増殖させ、そして1mM IPTGと一緒に27℃にて5時間インキュベートした。その培養ペレットを、1ml TNG中に再懸濁し、そして超音波処理した。10−FRBの封入体を、0.5mlの9M尿素中で変性し、そして5mlのTNG緩衝液中で再折り畳みした。10−FRBの乏しい可溶性は、予想された。なぜなら、同様の条件下で発現したFRB−GFP融合物が主として不溶性であり、そして単独で発現したFRBが著しく不溶性であるからである。可溶性Fkbp12_11融合物を、さらに精製することなく使用した。pTetベクターに由来するバイシストロニック構築物を使用して、10−FRBおよびFkbp12−11をそれぞれ、独立したリボソーム結合部位から同時発現させた。代替的なトポロジー10−Fkbp12+FRB−11を、同様に構築した。構築物を、上記と同じ条件を使用したが、誘導剤として300ng/ml無水テトラサイクリンを使用して誘導した。可溶性フラクションを、補完アッセイのために使用した。
【0149】
(補完アッセイおよびラパマイシンを用いたタンパク質−タンパク質相互作用の誘導)
異なる構築物を、大フラグメント1−9optの存在下で、100nMラパマイシンを添加したか、またはそれを添加せずに、補完について試験した。20μlの同時発現した10−FRBおよびFkbp12−11可溶性フラクション(図28、行1)、または20μlの同時発現した10−Fkbp12およびFRB−11(図28、行2)を、80μlの1−9optと混合した。個別に発現したタンパク質(図28、行3)については、20μlの再折り畳みした10−FRBおよび10μlの可溶性Fkbp12_11を、70μlの1−9optと混合した。1つの例において、ラパマイシンを、添加しなかった(図28、「−」を付した第1の列)。別の例において、100nMのラパマイシンを、添加した(DMSOに希釈した10μlの1μMストック溶液、図28、「+」を付した第2の列)。一晩インキュベートした後、そのプレートを、写真撮影(λexc=488nm、λem=520nm)した(図28)。最終的な蛍光値を、FL600マイクロプレート蛍光リーダー(Bio−Tek、Winooski、VT)と一緒に(λexc=488nm、λem=520nm)を使用して、一晩インキュベートした後に測定した(図29)。
【0150】
本明細書中に引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかもそれぞれ個別の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参考として援用されることが示されたかのように、本明細書中に参考として援用される。
【0151】
本発明は、本明細書中に開示された実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、それらの実施形態は、本発明の個々の局面の単なる例示として意図され、そして機能的に等価であるあらゆる実施形態は、本発明の範囲内である。本発明の方式および方法に対する種々の改変は、本明細書中に記載されるものに加えて、上述の記載および教示から当業者に明らかとなり、そしてそれらの改変は、同様に、本発明の範囲内に含まれることが、意図される。このような改変または他の実施形態は、本発明の真の範囲および精神から逸脱することなく実施され得る。
【0152】
(引用した文献)
【0153】
【化10】

【0154】
【化11】

【0155】
【化12】

【0156】
(配列表)
【0157】
【化13】

【0158】
【化14】

【0159】
【化15】

【0160】
【化16】

【0161】
【化17】

【0162】
【化18】

【0163】
【化19】

【0164】
【化20】

【0165】
【化21】

【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1A】図1Aは、pTET−SpecRプラスミドの概略図を示し、これは、Clontech(Palo Alto、CA)から入手可能なpPROTet.6xHNベクターの改変バージョンである。クロラムフェニコール耐性遺伝子が、pPROlar耐性マーカーのカナマイシンプロモーターの制御下のスペクチノマイシン耐性マーカー(Clontech、Palo Alto、CAからのpPROlarプラスミド)によって置換された。同一シストロン上に、T0転写終結配列の上流のテトラサイクリンリプレッサーがコードされている。翻訳されるリプレーサーの量は、SacIの下流の弱いShine−Delgarno配列によって調節される。
【図1B】図1Bは、操作されたpTET−SpecRプラスミドの異なる要素を示す。太字=NcoI CCATGG、およびKpnI GGTACCによって隣接される、tetプロモーター下の発現遺伝子のためのv1クローニングカセット。ボックス1=SpecR−tetRシストロンのためのT0転写ターミネーター;ボックス2=terRリプレッサー遺伝子;ボックス3=tetR翻訳を制御するRBS;ボックス4=スペクチノマイシン(specR)遺伝子;ボックス5=PROLARベクター(Clontech、Palo Alto、CA)からのカナマイシンプロモーター要素。
【図2】図2は、スプリットGFP補完の原理を示す。目的のタンパク質(X)が、柔軟なリンカー(L)を経由して小GFPフラグメント(β鎖11、残基215〜230)に融合される。補完GFPフラグメント(β鎖1〜10、残基1〜214)は別個に発現される。単独で蛍光を発するフラグメントはない。混合されるとき、小GFPフラグメントおよび大GFPフラグメントは自然に会合し、GFP折り畳みおよび蛍光発色団の形成を得る。誤折り畳みまたは凝集のような、小GFPタグを接近させないプロセスは、補完を防ぎ得る。
【図3】図3は、11のβ鎖のGFPファミリーメンバーのトポロジー的二次構造図を示す。(A)アミノ酸の鎖および番号付け。丸で囲った番号は、鎖間の曲がりの指標(およびこのタンパク質を分離するために好ましい部位)に対応する。塗りつぶしの丸は、折り畳みレポーター変異であり、そして白丸は超折り畳みGFP変異である。(B)は、11のβ鎖の番号付けの慣例を示す。(C)は、短い柔軟性のリンカーによってN末端およびC末端を連結することにより作製され、そしてアミノ酸173における新たな開始コドン、およびアミノ酸172の後の停止コドンを提供する、円順列変異体GFPを示す。
【図4】図4は、スプリット位置157または172における示されたGFPフラグメント(すなわち、1〜156+157〜238および1〜171+172〜238)による、プレート上のE.coliコロニー中の適合プラスミドから同時発現された、インビボ補完の蛍光イメージを示す。左のカラムは、折り畳みレポーターGFP由来のフラグメントを、右のカラムは、超折り畳みGFP由来の同じフラグメントを示す。予期されるように、この超折り畳みフラグメントは、確かに働き、そしてより明るいコロニーを与え、超折り畳みGFP 対 折り畳みレポーターGFPの改良された折り畳みと一致する。
【図5】図5は、GFP1−10改変体のインビトロ補完効率を示す。野生型GFP11に融合された1mg/mlの可溶性亜硫酸レダクターゼを含む180μlの緩衝液の添加後の、1mg/mlの再折り畳みされた超折り畳みGFP1−10の20μl(下のトレース)、または等量の可溶性最適化GFP1−10 OPTフラグメント(上のトレース)の補完についての蛍光進行曲線。挿入画は、GFP1−10改変体のインビボ補完を示す。野生型GFP S11と融合された亜硫酸レダクターゼとともに、超折り畳みGFP(上)、または折り畳みレポーターGFP(下)からの同時発現するGFP1−10ニトロセルロースメンブレン上のE.coli BL21(DE3)コロニーの蛍光イメージ。
【図6】図6は、単独もしくはGFP S11野生型(WT)へのN末端融合としてタンパク質ヘクスロースホスフェートシンターゼ(HPS)、または3つのGFP S11最適物(M1、M2、M3)に融合されたHPSを発現するE.coli BL21(DE3)の可溶性フラクション(S)およびペレットフラクション(P)のSDS−PAGEを示す。HPS−GFP S11野生型融合物は不溶性であり、その一方、HPS単独は、約60%可溶性であることに注目のこと。
【図7】図7は、組織培養プレート中、インビロで過剰のGFP1−10 OPT(800pmol)の添加後の、亜硫酸レダクターゼ(50pmol)に融合された3つのGFP S11変異体M1、M2およびM3の蛍光補完動力学的トレースを示す。各アッセイの最終容量は200μlであった。
【図8】図8は、3つの異なるGFP1−10構築物を用いる逐次的(左カラム)または同時誘導プロトコル(右カラム)の効果を示す。GFP1−10構築物を発現するE.coliクローンの3つの行の蛍光イメージは、漸次良好な性能および可溶性を有し:折り畳みレポーター(FR、第1の行)、超折り畳み(SF、第2の行)、または最適化GFP1−10改変体(OPT、第3の行)である。超折り畳みGFP1−10は、単独で発現されるとき不溶性である。第1のカラム:亜硫酸レダクターゼGFP S11融合物の発現が続くGFP1−10の一時的発現。第2のカラム:亜硫酸レダクターゼGFP S11野生型とのGFP1−10の同時発現。超折り畳みGFP1−10は不溶性であり、そして細胞は、一時的誘導プロトコル後、かすかに蛍光を発し、おそらく、超折り畳みGFP1−10が、亜硫酸レダクターゼGFP S11野生型融合物の発現の前に凝集し得、補完効率を減少するからである。同時発現は、明るい細胞を与え、おそらく、超折り畳みGFP1−10と亜硫酸レダクターゼGFP S11との間の結合および補完が迅速に起こり、GFP1−10を誤折り畳み、および凝集からレスキューするためである。対照的に、部分的に可溶性のGFP1−10 OPTを発現する細胞は、これら構築物が逐次的に発現されるか、または同時発現されるか否かにかかわらず明るい。
【図9A】図9は、GFP S11 M3タグフラグメントおよびGFP1−10 OPTアッセイフラグメントを用いるスプリットGFP補完の感受性を示す。0.1〜200pmolの亜硫酸レダクターゼGFP S11 M3融合タンパク質を含む20μlのアリコートを、800pmolのGFP1−10 OPTを含む180μlのアリコートと混合し、補完を開始した。(A)GFP1−10 OPTの添加15分後、各溶液について測定された蛍光。(B)GFP1−10 OPTの添加1時間後、各溶液について測定された蛍光。
【図9B】図9は、GFP S11 M3タグフラグメントおよびGFP1−10 OPTアッセイフラグメントを用いるスプリットGFP補完の感受性を示す。0.1〜200pmolの亜硫酸レダクターゼGFP S11 M3融合タンパク質を含む20μlのアリコートを、800pmolのGFP1−10 OPTを含む180μlのアリコートと混合し、補完を開始した。(A)GFP1−10 OPTの添加15分後、各溶液について測定された蛍光。(B)GFP1−10 OPTの添加1時間後、各溶液について測定された蛍光。
【図10】図10は、GFP S11 M3に融合された亜硫酸レダクターゼの50pmol、25pmol、12.5pmol、6.25pmol、3.13pmol、および1.56pmolの補完の進行曲線を示す。これらデータは、小定数を引き、そしてEXCELデータ分析ツールSolver(Microsoft,Inc.)を用いて非線形最小自乗法によって算出された、スケーリング因子を適用することにより50pmolの進行曲線に適合された。優れた重ね合わせは、この進行曲線の形状が、タグ化タンパク質の濃度、または非結合GFP1−10 OPTフラグメントのプールの枯渇に依存しないことを示す。
【図11】図11は、C−末端GFP S11 M3でタグ化されたレポーターGFPを折り畳みすることによる、Talon樹脂−結合6HIS GFP1−10 OPTへの結合およびその補完を示す。(1)結合した6HIS GFP1−10 OPTをもつTalon樹脂、(2)融合したC−末端GFP S11 M3を経由する折り畳みレポーターGFPの結合によるビーズ−結合蛍光における迅速な増加、(3)補完に起因するゆっくりとした蛍光形成。
【図12】図12は、補完反応に対する尿素濃度の影響を示す。反応は、2M以上の尿素で停止される。
【図13】図13は、補完反応に対するpHの影響を示す。(A)GFP1−10 OPTの添加6時間後の亜硫酸レダクターゼGFP S11 M3に対 する最終蛍光のpH依存性。(B)GFP1−10 OPTの添加6時間後の合成ペプチドGFP S11の最終蛍光のpH依存性。蛍光補完は、pH6.5未満で非効率的に見える。
【図14】図14の棒グラフは、スプリットGFPシステムを用いる、C−末端GFP S11 M3タグをもつ18のPyrobaculum試験タンパク質のインビトロタンパク質定量を示す(前述、表3を参照のこと)。GFP1−10 OPTを用いる可溶性(黒い棒)および非折り畳みペレットフラクション(灰色の棒)のGFPフラグメント補完アッセイ蛍光。SDS−PAGEゲルは、対応する可溶性(S)、およびペレットフラクション(P)を示す。タンパク質番号8、酒石酸デヒドロゲナーゼ−βサブユニットは、約13kDの第2のより低いバンドを示すことに注目のこと。
【図15】図15は、スプリットGFPアッセイシステムを用いるインビボ可溶性および発現スクリーニングを示す。tet−プロモータープラスミドからのN−末端6HISタグおよびC−末端GFP S11 M3タグとともに発現された18のPyrobaculum試験タンパク質(表3、前述を参照のこと)は、GFP−1−10 OPTを発現するpETプラスミドを含むE.coli BL21(DE)株中にクローン化された。タグ化構築物およびGFP1−10 OPT(上)の同時誘導後、またはタグ化構築物、次いでGFP1−10 OPT(逐次的誘導、中央)の発現が続くタグ化構築物の一時的発現のプレート上のコロニーの蛍光イメージ。液体培養中で逐次的に誘導された細胞からのTalon樹脂ビーズ−結合可溶性(B)およびペレットフラクション(P)のSDS−PAGE(下)。付随的に結合されたGFP1−10 OPT(見かけの分子量約29kD)は矢印によって示される。ヌクレオシドジホスフェートキナーゼ(タンパク質番号7)は部分的に可溶性であることに注目のこと(Talon樹脂−結合フラクション中のGFP1−10に対応するバンドの僅かに下のバンドを参照のこと)。ポリスルフィドレダクターゼ−GFP S11 M3融合物(表3、前述を参照のこと)は、488nmの励起光を吸収し、そしてこのタンパク質の良好な発現にもかかわらず同時発現の間に総細胞蛍光を減少する強い赤色のコロニーを生成した。
【図16】図16は、GFP S10−11 OPTタグフラグメントおよびGFP1−9 OPTアッセイフラグメントを用いるスプリットGFP補完の感受性を示す。亜硫酸レダクターゼGFP S10−11 OPT融合タンパク質を含む20μlのアリコートを、250μMのGFP1−9 OPTを含む180μlのアリコートと混合し、補完を開始した。蛍光は、GFP1−10の添加6時間後、各溶液について測定された。GFP1−9 OPTの濃度は制限的であるので、蛍光は、約250μMを超える亜硫酸レダクターゼGFP S10−11でプラトーになる。
【図17】図17は、試験タンパク質Xが、GFPの2つのドメイン(鎖10および鎖11)の間の融合物として発現され、そしてGFPの第3のドメインによって検出されるサンドイッチタグフォーマットの原理を示す。(a)補完は、これらタグ鎖がインタクトな標的タンパク質Xによって両者連結されるとき、効率的に起こる。(b)補完は、これらタグ鎖が分離されると非効率的であり得る。
【図18A】(A)は、開始配列(下の配列)が続く、補完標的としてGFP1−9 OPTを用いる(GFP S10)−L1−NdeI::GGGSGSGG::BamHI−L2−(GFP S11)の進化からの6つの最適物の配列を示す。GFP S10およびGFP S11は、下線および青の強調表示で示される。開始配列に対する6つの最適物中の変異は黄色の強調表示で示される。第5の最適物が好ましく、そして(GFP S10 SM5)−L1−Nde−1::X::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)と称され、ここで、Xは目的の標的タンパク質である。(B)は、GFP S10の標的部位に変異を導入するために用いられた14の変異誘発縮重プライマーを示す。
【図18B】(A)は、開始配列(下の配列)が続く、補完標的としてGFP1−9 OPTを用いる(GFP S10)−L1−NdeI::GGGSGSGG::BamHI−L2−(GFP S11)の進化からの6つの最適物の配列を示す。GFP S10およびGFP S11は、下線および青の強調表示で示される。開始配列に対する6つの最適物中の変異は黄色の強調表示で示される。第5の最適物が好ましく、そして(GFP S10 SM5)−L1−Nde−1::X::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)と称され、ここで、Xは目的の標的タンパク質である。(B)は、GFP S10の標的部位に変異を導入するために用いられた14の変異誘発縮重プライマーを示す。
【図19】図19は、参照配列(GFP S10)−L1−NdeI::GGGSGSGG::BamHI−L2−(GFP S11)、図18Aからの最適配列(GFP S10 SM5)−L1−Nde−1::X::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)、および8つの最適物(GFP S10)−L1−Ned−1::HPS::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)の配列を示す。開始配列(GFP S10 SM5)−L1−Ned−1::HPS::BamH1−L2−(GFP S11 SM5)の可溶性を改良する標的鎖GFP S10中の変異は、赤色の強調表示で示される。8つの最適物配列の各々は、HPSコード配列を通って続き、そしてBamHI部位で再開し、柔軟なリンカー配列およびGFP S11 SM5が続く(リスト中の第2の配列の端部を参照のこと)。
【図20】図20は、(GFP S10 A10)−GGGS−NedI−X−BamHI−GGGS−(GFP S11 SM5)をもつpTETベクターのNedI/BamHIクローニング部位中にクローン化され、そしてp15オリジンをもつpET28ベクター上にGFP1−9 OPTを含むBL21(DE3)株中に形質転換された18のPyrobaculumコントロールタンパク質Xのインビトロおよびインビボ補完アッセイを示す。インビトロアッセイには、液体培養がAnTETでのみ誘導された。(a)GFP1−10 OPTでアッセイされた20μlの可溶性アリコート(b)GFP1−10 OPTでアッセイされた10μlの尿素可溶化ペレットのアリコート(c)GFP1−9 OPTでアッセイされた10μlの尿素可溶化ペレットのアリコート。(e)AnTET試薬を用いるpTETからのサンドイッチタグ構築物の一時的誘導、次いでIPTGを用いるGFP1−9の誘導後のE.coliの蛍光イメージ。
【図21】図21は、従来の乏しい折り畳みのGFPフラグメントを使用する、GFPフラグメントの同時発現の間の、2体スプリットGFP補完を示す。タンパク質のほとんどは、凝集され(Agg.経路)、そして少量の誤折り畳みのタンパク質は、レスキューされ、そしてシャペロンによって一過性に可溶性にされる(Chap.経路)。(a)において、相互作用タンパク質ドメインは存在せず、したがって非常に少ないそのタンパク質は、シャペロン媒介経路によって補完し得る。なぜならそのフラグメントが相互作用ドメインによって1つに保たれず(所与のフラグメントがシャペロンによって可溶化された後に)、それが第2の直近に再折り畳みされたフラグメントと相互作用しないようであるからである。その係合されていないフラグメントは、それらが生産的に相互作用し得る前にシャペロンから放出された後、再凝集するようである。(b)において、相互作用ドメインを付加する工程は、それらのフラグメントを、それらがシャペロンによって再折り畳みされる間に近くに保ち、シャペロンによって一過性に可溶化される間にそれらのフラグメントが互いに到達する確率を上昇させることによって、補完されたタンパク質の量を増加させ得る。したがって、存在する乏しい折り畳みのGFPフラグメントは、そのタンパク質のほとんどが、誤折り畳みされ、そして凝集しても、蛍光の形成のために相互作用ドメインを必要とするようである。
【図22】図22は、従来の乏しい折り畳みのGFPフラグメントを使用する、GFPフラグメントの連続的な発現または異なる分離した区画における発現の間の、2体(two−body)スプリットGFP補完を示す。図21にあるように、タンパク質のほとんどは、凝集され(Agg.経路)、そして少量の誤折り畳みのタンパク質は、レスキューされ、そしてシャペロンによって一過性に可溶性にされる(Chap.経路)。(a)において、相互作用タンパク質ドメインは存在せず、したがって非常に少ないそのタンパク質は、シャペロン媒介経路によって補完し得る。なぜならそのフラグメントが相互作用ドメインによって1つに保たれず(所与のフラグメントがシャペロンによって可溶化された後に)、それが第2の直近に再折り畳みされたフラグメントと相互作用しないようであるからである。その係合されていないフラグメントは、それらが生産的に相互作用し得る前にシャペロンから放出された後、再凝集するようである。(b)において、相互作用ドメインを付加する工程が、補完されたタンパク質の量を増加させることができなくても、そのフラグメントは、同時に発現されないか、または異なる区画において発現されるので、相互作用ドメインを有する場合でさえ、シャペロンによって一過性に可溶化される間にそれらのフラグメントが互いに到達する確率を劇的に減少させる。したがって、存在する乏しい折り畳みのGFPフラグメントは、相互作用ドメインと融合される場合でさえ、同時に発現されるか、または同時に折り畳まれるときに補完し損なう。
【図23】図23は、可溶性の、非変動性GFPフラグメントを見出すためのストラテジーを示し、そのGFPフラグメントはまた、再構成および折り畳みに相互作用ドメインを必要とする。(a)存在するGFPフラグメントF1およびF2は、乏しい折り畳みであり、そして補完し損なう。(b)F1およびF2は指向性進化によって操作されて、可溶性のままであり、凝集せず、そして融合タンパク質の折り畳みおよび可溶性を変動させず、したがって、自発的な会合が可能である良好な折り畳みのバージョンを見出す。これらの変異は、白色の点に示される。(c)において、自発的な会合を減少させるか、またはそれを排除するさらなる変異が、見出される(黒色の点)。もはや蛍光性ではない改変体の大プールが、フローサイトメトリーまたはプレートに対するスクリーニングによって細胞から単離される。(d)これらの改変体は、ベクターにサブクローニングされ、そしてベクターは、相互作用ドメインに融合される場合にのみ、結合し、そして折り畳まれ蛍光性になる非蛍光変異体のサブセットを見出すために使用され得る融合された公知の相互作用タンパク質ドメイン(例えば、コイルドコイル)と一緒に発現される。これは、融合されたドメインの存在下においてさえ、誤折り畳みされるかまたは補完が不可能な、工程(c)における偽陰性を排除する。
【図24】図24は、可溶性の、非変動性GFPフラグメントを見出すための代替的なストラテジーを示し、そのGFPフラグメントはまた、再構成および折り畳みに相互作用ドメインを必要とする。(a)存在するGFPフラグメントF1およびF2は、乏しい折り畳みであり、そして補完し損なう。(b)F1およびF2は指向性進化によって操作されて、可溶性のままであり、凝集せず、そして融合タンパク質の折り畳みおよび可溶性を変動させず、したがって、自発的な会合が可能である良好な折り畳みのバージョンを見出す。これらの変異は、白色の点に示される。(c)において、自発的な会合を減少させるか、またはそれを排除するさらなる変異が、見出される(黒色の点)。その改変体は、小エフェクターの存在下において相互作用するドメインに融合される。そのエフェクターの非存在下で蛍光性ではない改変体の大プールが、フローサイトメトリーまたはプレートに対するスクリーニングによって細胞から単離される。(d)これらの改変体は、次いで、そのエフェクターに曝され、そしてそのエフェクターの存在下において蛍光性になる改変体が、単離される。これらは、結合し、そして折り畳まれて、相互作用ドメインに融合される場合にのみ蛍光性になる。これは、融合されたドメインの存在下においてさえ、誤折り畳みされるかまたは補完が不可能な、工程(c)における偽陰性を排除し、そしてその変異体が工程cと工程dとの間に新しいベクターにサブクローニングされる必要がないという利点を有する。
【図25】図25は、3体補完ストラテジーを示す。(a)において、GFP s11およびGFP s10が、ドメインXにおいて係合される場合、それらは、自発的に結合し、そしてGFP s1−9と補完し得る。(b)において、GFP s11およびGFP s10は、係合されず、そしてエントロピーは、効率的な補完には高すぎる。
【図26】図26は、タンパク質相互作用を検出するために使用される3体補完ストラテジーを示す。(a)において、GFP s10およびGFP s11は、相互作用タンパク質XおよびYに融合される。XとYとの相互作用の際に、GFP s10およびGFP s11は、係合され、そしてエントロピーは十分に低められて、蛍光GFPを産生するための、GFP s1−9との結合および折り畳みを可能にする。(b)において、XおよびYは、第3のタンパク質または標的Zと相互作用し、GFP s10およびGFP s11の係合を引き起こし、そしてそのエントロピーを十分に減少させて、GFP s1−9との効率的な補完および折り畳まれた蛍光GFPの形成を可能にする。
【図27】図27は、エフェクター−誘導タンパク質相互作用を検出するために使用される3体補完ストラテジーを示す。(a)において、GFP s10およびGFP s11は、エフェクターの存在下で相互作用するタンパク質XおよびYに融合される。そのエフェクターの非存在下において、GFP s10およびGFP s11は、係合されず、そしてそのエントロピーは、GFP s1−9との効率的な補完には高すぎる。(b)において、そのエフェクター分子の添加は、XおよびYの結合を引き起こし、GFP s10およびGFP s11を係合し、そしてそのエントロピーは十分に低められて、蛍光GFPを産生するための、GFP s1−9との結合および折り畳みを可能にする。
【図28】(記載無し)
【図29】(記載無し)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのタンパク質XとYとの相互作用を検出するためのアッセイであって、
(a)タンパク質Xのコード配列と融合した蛍光タンパク質の可溶性の第1マイクロドメインタグフラグメントのコード配列を含む第1のポリヌクレオチド構築物を適切な細胞において発現させる工程;
(b)タンパク質Yのコード配列と融合した蛍光タンパク質の可溶性の第2マイクロドメインタグフラグメントのコード配列を含む第2のポリヌクレオチド構築物を該細胞において発現させる工程、または該コード配列によってコードされる融合タンパク質Y−マイクロドメインタグを該細胞に導入する工程;
(c)(a)および(b)のマイクロドメインタグフラグメントに補完的な可溶性アッセイフラグメントのコード配列を含む第3のポリヌクレオチド構築物を該細胞において発現させる工程、または該アッセイフラグメントを該細胞に導入する工程;
(d)該細胞において蛍光を検出し、それによってタンパク質XとYとの相互作用を検出する工程;
を包含し、選択された該2つのマイクロドメインタグフラグメントが、それに融合される相互作用タンパク質の非存在下において、該アッセイフラグメントと自己補完性でない、アッセイ。
【請求項2】
前記第1の可溶性マイクロドメインタグフラグメントは、単一β鎖GFPもしくはGFP様蛍光タンパク質またはその円順列変異体に対応し、前記第2の可溶性マイクロドメインタグは、該同じ蛍光タンパク質の隣接するβ鎖に対応し、そして前記アッセイフラグメントは、該同じ蛍光タンパク質の残りの9個のβ鎖に対応する、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
前記第1の可溶性マイクロドメインタグフラグメントは、GFPのβ鎖s10もしくはGFP様蛍光タンパク質またはその円順列変異体に対応し、前記第2の可溶性マイクロドメインタグは、該同じ蛍光タンパク質のβ鎖s11に対応し、そして前記アッセイフラグメントは、該同じ蛍光タンパク質のβ鎖s1−9に対応する、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項4】
タンパク質XおよびYは、前記マイクロドメインタグフラグメントのN末端に融合される、請求項1または2に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記タンパク質XおよびYは、リンカーポリペプチドを介して前記マイクロドメインタグフラグメントのN末端に融合される、請求項4に記載のアッセイ。
【請求項6】
タンパク質XおよびYは、エフェクター分子の存在下においてのみ相互作用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記アッセイフラグメントは、化学的トランスフェクションによって前記細胞に導入される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項8】
前記融合タンパク質Y−マイクロドメインタグは、化学的トランスフェクションによって前記細胞に導入される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアッセイ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2008−521447(P2008−521447A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544582(P2007−544582)
【出願日】平成17年12月3日(2005.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/043874
【国際公開番号】WO2006/062882
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507182597)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア (1)
【Fターム(参考)】