説明

蛍光ランプおよび照明器具

【課題】寿命期間に亘って水銀蒸気の拡散が迅速に行え、かつ適正な水銀蒸気圧を維持可能な放電路長の大きい蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを配設する照明器具を提供する。
【解決手段】蛍光ランプ1は、両端部2a,3aにそれぞれ電極12,12が封装されて屈曲した放電路が形成された管外径が12〜20mm、放電路長が2000mm以上の環形バルブ4と、環形バルブ4の内面側に形成された蛍光体層14と、環形バルブ4内に封入された10〜15mgの水銀15および希ガスを含む放電媒体と、環形バルブ4の一端部が最冷部16となるように環形バルブ4に設けられた最冷部形成手段3bとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環形バルブの両端部にそれぞれ電極を具備する蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを配設する照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力蛍光ランプとして、放電路長(発光長)の大きい蛍光ランプが使用されている。この蛍光ランプは、放電路長が大きくなる分、放射される光量が大きくなる。そして、互いに環径の異なる複数のガラス管を相互に連結してひとつの放電路を形成している多重環蛍光ランプ、特に二重環蛍光ランプが用いられている。例えば、ガラス管(発光管)にアルゴン、クリプトンなどの希ガスおよび水銀が封入され、外側のガラス管の非電極側封止端部から、ガラス管内部に通じている突出した冷却管を設けている二重環蛍光ランプが提案されている(特許文献1参照。)。その冷却管は、ガラス管から離れているためガラス管の熱を受けにくく、かつ外気にさらされるために、冷却管の先端部が最冷部箇所となるので、水銀蒸気圧が適正になって、ランプ光束を最大値に保持できるというものである。
【特許文献1】特開2000−149875号公報(第3頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
冷却管の先端部に最冷部箇所が形成される特許文献1の二重環蛍光ランプであっても、高周波点灯での発光効率が大きくなる細管のガラス管であって放電路長が大きい例えば放電路長が2000mm以上の発光管を具備していると、始動直後、最冷部箇所から発光管内の全域への水銀蒸気の拡散に遅れやむらが発生することがある。すなわち、発光管内が適正な水銀蒸気圧に達するのに時間を要する結果、カタホリシス現象やストライエーション(移動縞)現象が発生することがあるという問題がある。特に、蛍光ランプの低温始動時に、当該現象が顕著に発生することがあった。
【0004】
さらに、蛍光ランプは、累積点灯時間の経過とともに水銀が発光管の内面側に形成された蛍光体層に吸着され次第に減少していく。したがって、前記二重環蛍光ランプは、累積点灯時間の経過とともにカタホリシス現象やストライエーション現象が顕著に発生するとともに、その発生時間が長時間になることがあるという問題を有する。
【0005】
本発明は、寿命期間に亘って水銀蒸気の拡散が迅速に行え、かつ適正な水銀蒸気圧を維持可能な放電路長の大きい蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを配設する照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の蛍光ランプの発明は、両端部にそれぞれ電極が封装されて屈曲した放電路が形成された管外径が12〜20mm、放電路長が2000mm以上の環形バルブと;環形バルブの内面側に形成された蛍光体層と;環形バルブ内に封入された10〜15mgの水銀および希ガスを含む放電媒体と;環形バルブの一端部が最冷部となるように環形バルブに設けられた最冷部形成手段と;を具備していることを特徴とする。
【0007】
本発明および以下の各発明において、特に言及しない限り、各構成は以下による。
【0008】
環形バルブは、放電路が環を形成していればよく、その形状は問わないが、その形状として例えば円形、楕円形または四角形状等の多角形状などが挙げられる。
【0009】
管外径が20mm以下であると、環形バルブ内の最冷部箇所から蒸発した水銀蒸気が拡散しにくくなるので、本発明の効果が顕著に現れる。また、管外形が12mm未満のものは、水銀蒸気の拡散が極端に低下するとともに、ランプ効率が低下するので好ましくない。
【0010】
そして、環形バルブの放電路長が2000mm以上であると、点灯直後に最冷部箇所から供給される水銀蒸気が環形バルブの各所に拡散する距離が大きくなることにより、その各所への拡散時間が長くなって、環形バルブ内が所定の水銀蒸気圧になるのに長時間要することがある。この結果、点灯直後にカタホリシス現象やストライエーション現象が発生しやすくなる。特に、蛍光ランプが低温始動されると、水銀の蒸発が低くなるとともに水銀蒸気の拡散速度が遅くなって、さらにカタホリシス現象やストライエーション現象が発生しやすくなる。
【0011】
放電路長の上限値は、特に限定されないが、蛍光ランプの始動電圧やランプ電圧を考慮すると、3000mm程度とするのが好ましい。
【0012】
「環形バルブの内面側に形成された蛍光体層」とは、蛍光体層が環形バルブの内面に直接形成されていてもよく、環形バルブの内面に形成された保護膜等の中間層上に間接的に形成されてもよいことを意味する。
【0013】
水銀は、蛍光ランプが累積点灯されるにしたがい、蛍光体層に吸着される累計量が多くなって、環形バルブ内の水銀量が減少していく。そして、封入量が10mgを下回ると、最冷部箇所から蒸発して供給される水銀蒸気が少なくなり環形バルブ内が所定の水銀蒸気圧に達する時間が長くなって、カタホリシス現象やストライエーション現象が発生しやすくなる。また、封入量が15mgを超えると、環境に与える影響が大きい水銀が環形バルブ内に過剰に封入されることになるので、環境保全の観点から好ましくない。したがって、封入される水銀量は、10〜15mgとする。
【0014】
水銀蒸気は、蛍光ランプの点灯中、環形バルブの一端部に設けられた最冷部に凝集し、消灯後もその状態が保たれる。環形バルブ内に10〜15mgの水銀が封入されていると、その分、最冷部に凝集する水銀量が多くなる。水銀量が多いと、環形バルブの空間に露出する水銀表面積が大きくなり、表面積が大きくなる分、水銀表面から蒸発する水銀蒸気が多くなる。そして、点灯直後、最冷部に凝集した水銀から多量の水銀蒸気が供給されるようになり、この水銀蒸気は、環形バルブ内に迅速に拡散していく。
【0015】
「最冷部形成手段」とは、環形バルブ内の水銀蒸気圧を適正な蒸気圧にするために、環形バルブの一端部に最冷部を設けるものであり、例えば、環形バルブの端部の端面と電極あるいは放電路とを離間させるものである。
【0016】
本発明によれば、管外径が12〜20mm、放電路長が2000mm以上の環形バルブであっても、環形バルブ内に10〜15mgの水銀が封入されるので、消灯時、環形バルブの一端部に設けられた最冷部に多量の水銀が凝集し、点灯直後、最冷部から多量の水銀蒸気が供給されるようになる。この結果、環形バルブ内が迅速に所定の水銀蒸気圧になり、点灯直後のカタホリシス現象やストライエーション現象の発生が抑制される。これらの現象は、封入される水銀量が10〜15mgと多いので、蛍光ランプの寿命期間に亘って抑制される。
【0017】
そして、環形バルブの一端部が最冷部になるので、蛍光ランプの寿命期間に亘り、環形バルブ内の水銀蒸気圧が適正に維持され、環形バルブから所定の光束が放射される。
【0018】
請求項2に記載の蛍光ランプの発明は、請求項1記載の蛍光ランプにおいて、環形バルブは、互いに環の大きさの異なる内側バルブおよび外側バルブの端部側同士が連結管により連結され、この連結側の一端部が最冷部となることを特徴とする。
【0019】
連結管は、放電路となっているので、端部の端面と連結管とを所定距離で離間させることにより、端部の端面側での放電路からの熱影響を小さくして、端部の端面側に最冷部を生じさせることができる。
【0020】
本発明によれば、環形バルブの連結側の一端部が最冷部となっていて、不点時に最冷部に多量の水銀が凝集しているとともに、連結管が放電路の途中に存在しているので、点灯直後に、最冷部に凝集している水銀から蒸発した水銀蒸気の環形バルブの各所に拡散する距離が短くなる。これにより、点灯直後に迅速に環形バルブ内が所定の水銀蒸気圧となり、カタホリシス現象やストライエーション現象の発生がより抑制されるとともに、環形バルブから放射される光束の立ち上がりがより早くなる。
【0021】
請求項3に記載の照明器具の発明は、請求項1または2記載の蛍光ランプと;この蛍光ランプを点灯させる点灯装置と;蛍光ランプおよび点灯装置を配設している照明器具本体と;を具備していることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、請求項1または2記載の蛍光ランプを配設する照明器具が提供される。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、環形バルブの外管径が12〜20mm、放電路長が2000mm以上の蛍光ランプであっても、寿命期間に亘って、点灯直後に最冷部から多量の水銀蒸気が供給されて環形バルブ内が迅速に所定の水銀蒸気圧となるので、寿命期間に亘り、点灯直後のカタホリシス現象やストライエーション現象の発生を抑制することができる。また、点灯時に、最冷部の温度により、環形バルブ内が適正な水銀蒸気圧に維持されるので、寿命期間に亘り、所定の光束を得ることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、環形バルブの連結側の一端部が最冷部となるので、最冷部に凝集している水銀から供給される水銀蒸気が環形バルブの各所に拡散する拡散距離が短くなって、点灯直後に、より迅速に環形バルブ内を所定の水銀蒸気圧にすることができる。この結果、カタホリシス現象やストライエーション現象の発生をより抑制することができるとともに、光束の立ち上がりをより早くすることができる。
【0025】
請求項3の発明によれば、請求項1または2記載の蛍光ランプが配設されるので、蛍光ランプの寿命期間に亘り、点灯直後のカタホリシス現象やストライエーション現象の発生が抑制される照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0027】
図1ないし図3は、本発明の第1の実施形態を示し、図1は蛍光ランプの正面図、図2は端部側における概略正面断面図、図3はストライエーション現象の継続時間を示し、(a)は放電路長の相違による変化図、(b)はペレットおよび純水銀の相違による変化図、(c)は純水銀量による変化図である。
【0028】
図1において、蛍光ランプ1は、互いに環の大きさが異なる相似形の四角形状に形成された内側バルブ2および外側バルブ3を連結して形成した環形バルブ4と、内側バルブ2の両端部2a,2bおよび外側バルブ3の両端部3a,3bに跨って設けられた口金5とを有して形成されている。内側バルブ2および外側バルブ3は、それぞれ管外径12〜20mm、肉厚0.8〜1.5mmのソーダライムガラスからなり、それぞれ1本の直管形バルブを4箇所において略直角状に屈曲して形成されている。また、内側バルブ2および外側バルブ3は、平面状に配置されるように適宜の隙間を有して干渉用シリコン材6により複数箇所で固定されて一体化されている。
【0029】
そして、図2に示すように、環形バルブ4の両端部である内側バルブ2および外側バルブ3のそれぞれの一端部2a,3aは、それぞれマウント7が封装され、それぞれの他端部2b,3bは、封止されている。そして、他端部2b,3b側同士は、連結管8により連結されている。
【0030】
マウント7,7は、前記一端部2a,3aにそれぞれ封装されたフレアステム9,9、フレアステム9,9に封着され環形バルブ4内を排気後に一端がチップオフされた排気管10,10、フレアステム9,9にそれぞれ封着されている一対のリード線11,11およびリード線11,11の先端に支持されている電極としてのフィラメント電極12,12を有して形成されている。
【0031】
フィラメント電極12,12間には、連結管8を介して内側バルブ2および外側バルブ3の屈曲した放電路が形成されている。その放電路長は、2000mm以上例えば2800mmとなっている。そして、フレアステム9,9は、フィラメント電極12,12と前記一端部2a,3aの端面2aa,3aaからの距離が30〜40mmとなるようにしている。そして、リード線11,11は、口金5に設けられている接続ピン(図示しない。)に電気的に接続されている。
【0032】
そして、内側バルブ2および外側バルブ3のそれぞれの内面には、例えばアルミナ(Al)微粒子からなる保護膜13が形成され、保護膜13上に三波長発光形の蛍光体層14が形成されている。
【0033】
また、環形バルブ4内には、放電媒体として、水銀としての純水銀15およびアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)などの希ガスを単体または混合して封入している。純水銀15は、10〜15mgとなるように封入されている。
【0034】
そして、連結管8は、内側バルブ2および外側バルブ3のそれぞれの他端側2b,3bの端面2bb,3bbからの距離が大きくなるように、例えば30〜40mmとなるようにして設けられている。これにより、外側バルブ3の前記端面3bbの内面側が最冷部16となる。外側バルブ3の他端側3bは、最冷部形成手段を形成している。
【0035】
連結管8が連結された外側バルブ3の他端側(連結側)3bの端面3bb側が最冷部16となると、蛍光ランプ1の消灯時に最冷部16に純水銀15が凝集する。そして、最冷部16は、フィラメント電極12,12間の放電路の略中間の付近に位置している。
【0036】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について述べる。
【0037】
図3(a)は、放電路長が1200mmと2800mmのときの点灯直後に発生するストライエーション現象の継続時間の変化を示したものである。雰囲気温度は5℃、無風状態である。そして、環形バルブ4は、管外径16.5mmであり、放電媒体は、純水銀15に代えて、Zn−Hgアマルガムを球状のペレットにしたものが用いられている。ペレットは、水銀を約8mg含有している。その他、図1に示す蛍光ランプ1と同様に形成されている。
【0038】
図3(a)に示すように、放電路長が1200mmの蛍光ランプは、点灯後、約3分でストライエーション現象が発生しなくなるのに対して、放電路長が2800mmの蛍光ランプは、点灯後、15分間に亘ってストライエーション現象が発生することがあった。これは、最冷部16からの水銀蒸気の環形バルブ4内の各所への拡散が遅く、環形バルブ4内が一定の水銀蒸気圧になるのに時間を要することによると推察される。
【0039】
そして、図3(b)は、放電媒体の水銀がペレットと純水銀15のときの点灯直後に発生するストライエーション現象の継続時間の変化を示したものである。雰囲気温度は5℃、無風状態である。環形バルブ4は、管外径16.5mmであり、放電路長は、約2000mmである。その他、図1に示す蛍光ランプ1と同様に形成されている。
【0040】
図3(b)に示すように、ペレットを封入する蛍光ランプは、点灯後、15分間に亘ってストライエーション現象が発生するのに対して、純水銀15を封入する蛍光ランプは、点灯後、7分でストライエーション現象が発生しなくなった。これは、ペレットよりも純水銀15から蒸発する水銀蒸気が多く、この水銀蒸気が環形バルブ4内の各所へ迅速に拡散していくことを示している。ペレットは、Zn−Hgアマルガムであり、このアマルガムから環形バルブ4の内部空間に純水銀15と同等の水銀蒸気が放出されていないと考えられる。あるいは、ペレットから蒸発した水銀蒸気が再びペレットに吸収される量が多く、ペレットから供給される水銀蒸気が純水銀15よりも少ないと推察される。いずれにしても、ペレットよりも純水銀15を用いることが有利であることが判った。
【0041】
また、図3(c)は、放電媒体の純水銀15が7mgと12mgのときの点灯直後に発生するストライエーション現象の継続時間の変化を示したものである。雰囲気温度は5℃、無風状態である。環形バルブ4は、管外径16.5mmであり、放電路長は、2800mmである。その他、図1に示す蛍光ランプ1と同様に形成されている。
【0042】
図3(c)に示すように、純水銀15を7mg封入する蛍光ランプは、点灯後、12分間に亘ってストライエーション現象が発生するのに対して、純水銀15を12mg封入する蛍光ランプは、点灯後、5分でストライエーション現象が発生しなくなった。これは、純水銀15の封入量が多いと、その分、純水銀15の表面積が広くなって純水銀15から蒸発する水銀蒸気が多くなるためと考えられる。純水銀15から供給される水銀蒸気が多くなると、拡散する水銀蒸気も多くなって環形バルブ4内の各所へ拡散していき、環形バルブ4内が早く所定の水銀蒸気圧になるものと推察される。すなわち、環形バルブ4内に封入する純水銀15を多くすることが有利であることが判った。
【0043】
図3(a)〜図3(c)の結果を踏まえて、管外径が12〜20mm、放電路長が2000mm以上、約3000mm以下の環形バルブ4に、純水銀15を10〜15mgを封入するようにして蛍光ランプ1を形成すると、点灯直後のカタホリシス現象やストライエーション現象の発生が抑制されることが判った。
【0044】
蛍光ランプ1の消灯時、連結管8が連結された他端側(連結側)3bの端面3bb側の最冷部16に多くの純水銀15が凝集する。この最冷部16は、フィラメント電極12,12間の放電路の略中間の付近に位置している。
【0045】
そして、環形バルブ4内に封入される純水銀15が10mg以上であると、蛍光ランプ1の点灯直後に、最冷部16に凝集している純水銀15から多量の水銀蒸気が蒸発し、この水銀蒸気は環形バルブ4内に拡散していく。最冷部16となっている前記他端側3bは、放電路の略中間に位置するので、水銀蒸気の拡散距離は短く、水銀蒸気は、迅速に環形バルブ4の各所に拡散する。これにより、環形バルブ4内が迅速に所定の水銀蒸気圧になって、カタホリシス現象やストライエーション現象の発生時間が短縮化されるようになる。すなわち、純水銀15から蒸発した水銀蒸気の拡散距離が短くなってより迅速に拡散することにより、カタホリシス現象やストライエーション現象の発生がより抑制される。また、環形バルブ4内に水銀蒸気が迅速に拡散することにより、環形バルブ4から放射される光束の立ち上がりがより早くなる。
【0046】
また、純水銀15が10mg以上封入されていると、蛍光ランプ1が点灯されるにしたがい純水銀15が蛍光体層14に吸着されても、蛍光ランプ1の寿命(15000時間)期間に亘って、環形バルブ4内に前記現象を抑制することのできる純水銀量が残存するものである。そして、封入される純水銀15を15mg以下とすることにより、蛍光ランプ1の寿命期間(15000時間)後に残存する純水銀量は過剰とならないものである。
【0047】
そして、蛍光ランプ1の点灯時、環形バルブ4内の過剰な水銀蒸気は、放電路長の大きい環形バルブ4内を最冷部16に向かって移動する。そして、時間の経過とともに環形バルブ4内の過剰な水銀蒸気が最冷部16に集まって純水銀15になる。これにより、環形バルブ4内は、蛍光ランプ1の寿命期間に亘って所定の水銀蒸気圧に維持されるようになり、環形バルブ4から一定の光束が放射されるようになる。
【0048】
なお、内側バルブ2および外側バルブ3のそれぞれの一端部2a,3aの端面2aa,3aaの内側、さらに内側バルブ2および外側バルブ3のそれぞれの他端部3a,3bの端面2bb,3bbの内側に、純水銀15に代えて、それぞれペレットを配設しても、上述と同様な作用、効果が得られる。このとき、それぞれのペレットに含有される水銀量の合計は、環形バルブ4内に封入される純水銀15と同等以上とする。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0050】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す蛍光ランプの正面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0051】
図4に示す蛍光ランプ18は、1本の直管形バルブを屈曲して環形バルブ19が形成されたものであり、環形バルブ19の両端部19a,19bに跨って口金20が配設されている。以下、図1に示す蛍光ランプ1と同様にして形成されている。フィラメント電極12,12に接続されているリード線11,11は、口金20の接続ピン21,21に電気的に接続されている。最冷部16は、環形バルブ19の両端部19a,19bの端面または環形バルブ19の放電路の中間(屈曲部)に形成される。
【0052】
放電路長が2000mm以上である一重環の環形バルブ19であっても、最冷部16に凝集している純水銀15から水銀蒸気が供給され、この水銀蒸気が迅速に環形バルブ19内に拡散するので、カタホリシス現象やストライエーション現象の発生が抑制される。また、最冷部16の温度により、環形バルブ19内の水銀蒸気圧が適正に維持されて、環形バルブ19から所定の光束が放射される。
【0053】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0054】
図5は、本発明の第3の実施形態を示す照明器具の斜視図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0055】
図5に示す照明器具22は、天井などの造営物に設置される直付け照明器具であり、照明器具本体23が造営物に取り付けられている。照明器具本体23は、反射板24を配設しているとともに、この反射板24に露出するようにして一対のランプホルダー25,25および一対のランプホルダー26,26、さらにランプソケット27,28を配設している。また、照明器具本体23は、両側の内部に点灯装置29,30を配設している。
【0056】
図1に示す蛍光ランプ1は、口金5がランプソケット27に装着され、環形バルブ4がランプホルダー25,25に支持されることにより明器具本体23に配設されている。また、蛍光ランプ31は、同様に、ランプソケット28、ランプホルダー26,26により照明器具本体23に配設されている。蛍光ランプ31は、蛍光ランプ1よりも放電路長が短く、環の大きさも小さいものである。蛍光ランプ1は、点灯装置29により高周波点灯され、蛍光ランプ31は、点灯装置30により高周波点灯される。
【0057】
蛍光ランプ1および蛍光ランプ31は、寿命期間(15000時間)に亘り、点灯直後にカタホリシス現象やストライエーション現象の発生を抑制することができ、点灯時に所定の光束を放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す蛍光ランプの正面図。
【図2】同じく、端部側における概略正面断面図。
【図3】同じく、ストライエーション現象の継続時間を示し、(a)は放電路長の相違による変化図、(b)はペレットおよび純水銀の相違による変化図、(c)は純水銀量による変化図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す蛍光ランプの正面図。
【図5】本発明の第3の実施形態を示す照明器具の斜視図。
【符号の説明】
【0059】
1,18…蛍光ランプ
3b…最冷部形成手段としてのバルブ端部
4,19…環形バルブ
8…連結管
14…蛍光体層
15…水銀としての純水銀
22…照明器具
23…照明器具本体
29,30…点灯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部にそれぞれ電極が封装されて屈曲した放電路が形成された管外径が12〜20mm、放電路長が2000mm以上の環形バルブと;
環形バルブの内面側に形成された蛍光体層と;
環形バルブ内に封入された10〜15mgの水銀および希ガスを含む放電媒体と;
環形バルブの一端部が最冷部となるように環形バルブに設けられた最冷部形成手段と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
環形バルブは、互いに環の大きさの異なる内側バルブおよび外側バルブの端部側同士が連結管により連結され、この連結側の一端部が最冷部となることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
請求項1または2記載の蛍光ランプと;
この蛍光ランプを点灯させる点灯装置と;
蛍光ランプおよび点灯装置を配設している照明器具本体と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−12460(P2007−12460A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192321(P2005−192321)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】